説明

小片部材の運搬装置およびその運搬方法

【課題】小片部材を浮上させて安定保持し運搬すること出来る運搬装置およびその運搬方法を提供する。
【解決手段】気体の噴出により小片部材を浮上させて所定の位置へ運搬する小片部材の運搬装置であって、小片部材の外周近傍を小片部材の厚さ方向に移動可能に配置されるとともに先端付近の側面に設ける気体噴出孔を有する気体噴出体と、気体噴出体を小片部材の外周部の近傍に移動させた状態において、気体噴出孔から小片部材の下面側に気体を噴出して小片部材を浮上させる小片部材浮上手段と、気体噴出体により小片部材を浮上支持した状態で気体噴出体を所定の位置に移動させることにより小片部材を所定の位置に運搬する運搬手段と、所定の位置で噴出する気体を停止して小片部材を落下させる小片部材落下手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小片部材の運搬に関して、特に時計用の回路基板や半導体ICの素材に用いられる半導体ウエハー等の板形状をしているものを運搬する運搬装置とその運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
時計用の回路基板や半導体ウエハーなどの板形状をしている小片部材は、表面に接触する取り扱いをすると、異物の付着や表面の微小破損などの不具合が発生しやすいということから移動運搬を行う際には特定の部位を上方から吸着することで持ち上げて搬送する板状片の供給装置の例が開示されている。図14は、従来例の板状片の供給装置におけるパーツフィーダの部品供給位置付近の側面図である。図14に示すように、パーツフィーダに投入された板状片2は整列して順次に前進して、部品供給1の位置に達する。この位置において板状片12は下方から第1の吸引機構3によって吸引され、上方からは第1の吸引機構3の吸引力に対して勝る吸引力に設定されている第2の吸引機構6によって吸引される。そして板状片2を吸引した第2の吸引機構6は、図示しない搬送機構によって所定の位置へ移動して吸引力を消勢して板状片2を解放することによって板状片2を搬送するようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、移動運搬を行う際に板状物を下方から吹き上げて空気圧で板状物を浮上させて非接触状態に保ちながら所定方向へ搬送する板状物搬送装置が開示されている。図15は、従来例における板状物搬送装置の主要部を示す断面図である。図15に示すように、この板状物搬送装置は複数の気体供給室47を形成したセルフレーム48と、気体供給室47の夫々の上方に配されるようにセルフレーム48に装着された複数のセル42と、セル42が、複数の気体噴出孔を穿設したノズル板43と、気体供給室47からの気体を気体噴出孔から噴出せしめるように各気体噴出孔に対応してノズル板43の上面側に装着された弁体44とを備えている。これにより、図示していない気体供給管路を経て供給される加圧気体を、弁体44による気体噴出孔の開閉制御により所定方向へ噴出せしめて板状物45を浮上搬送するものである。(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、時計に用いられる指針、特に腕時計用の指針は、主に金属板をプレス加工して表面処理を施し、意匠性の高い装飾品の一部としての機能を備えており、このような表面処理を施した表面はメッキ膜や塗装膜、酸化被膜をはじめとする装飾層が形成されている。従来、この腕時計用の指針を取り扱う場合、完成品時計としたときに見え難くなる指針側面をピンセットなどで挟持して移動運搬を行い、装飾層が形成されている表面にキズや接触痕をつけないように取り扱う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−278849号公報(第2−3頁、図1参照)
【特許文献2】特開平10−139160号公報(第3頁、図3参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、表面に異物が付着すると品質が劣化する半導体ウエハーや表面全面に表面処理が施されている時計用指針等の小片部材においては、先行技術文献の特許文献1に開示されているような移動運搬を行う際に特定の部位を上方から吸着することで持ち上げて搬送することは困難である。
また、先行技術文献の特許文献2に開示されているような非接触状態で半導体ウエハーや時計用回路基板等の小片部材を保持して搬送する場合、低く浮かせて同一治具上を移動させる事は可能だが、互いに離間した装置間や治具間の移動は非常に困難であった。
【0007】
さらに従来技術においては、時計用指針や時計用回路基板などの板形状をしている小片部材を自動機で取り扱う場合、小片部材の大きさ、重さ、形状等は多品種にわたるため、治具であらかじめ位置方向をそろえて自動機に投入しても、これらを機械的に挟持しようとすると傾いて保持されてしまうおそれがあり、特に時計用指針においては、たわみ等が発生して破損するおそれもある。このため角度や保持強度の微細な設定が必要となり、量産性のきわめて低いものとなっていた。
【0008】
(発明の目的)
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、時計用の回路基板や半導体ウエハー等の板状の小片部材を気体の圧力を利用して浮上させて所定方向へ運搬するとともに安定保持することができ、組立を行う自動機で取り扱うことが可能な運搬装置およびその運搬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明における小片部材の運搬装置は、気体の噴出により小片部材を浮上させて所定の位置へ運搬する小片部材の運搬装置であって、前記小片部材の外周近傍を小片部材の厚さ方向に移動可能に配置されるとともに先端付近の側面に設ける気体噴出孔を有する気体噴出体と、前記気体噴出体を前記小片部材の外周部の近傍に移動させた状態において、前記気体噴出孔から前記小片部材の下面側に気体を噴出して前記小片部材を浮上させる小片部材浮上手段と、前記気体噴出体により前記小片部材を浮上支持した状態で前記気体噴出体を所定の位置に移動させることにより前記小片部材を所定の位置に運搬する運搬手段と、前記所定の位置で前記噴出する気体を停止して前記小片部材を落下させる小片部材落下手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、前記気体噴出体を複数備えたことを特徴とする。
【0011】
また、前記気体噴出体は複数の気体噴出孔を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明における小片部材の運搬方法は、気体の噴出により小片部材を浮上させて所定の位置へ運搬する小片部材の運搬方法であって、前記小片部材の外周近傍に気体噴出体を移動させ、該気体噴出体に設ける気体噴出孔から前記小片部材の下面側に気体を噴出して前記小片部材を浮上させ、前記気体噴出体を所定の位置に移動させることにより前記小片部材を運搬し、前記所定の位置で前記噴出する気体を停止して前記小片部材を落下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、小片部材を簡単な装置で確実に浮上させることができ、小片部材を安定保持するとともに所定方向へ運搬することができる。これにより組立を行う自動機で取り扱うことが可能な運搬装置およびその運搬方法を提供することができる。
また、複数の気体噴出体を設けることにより小片部材の位置決めを確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態における小片部材の運搬装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における小片部材の運搬装置における気体の噴出方向を示す平面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における小片部材の運搬装置の主要部を示す図で、図3(a)は小片部材を浮上させた状態を示す断面図、図3(b)は小片部材を落下させた状態を示す断面図、図3(c)は小片部材と気体噴出体との隙間を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における気体噴出体を示す図で、図4(a)は部分側面図、図4(b)は図4(a)におけるA−A断面図、図4(c)は図4(a)におけるB−B断面図、である。
【図5】本発明の第1の実施形態における小片部材の運搬方法を示す斜視図である。
【図6】図5におけるD−D断面状態を示し、気体噴出体を小片部材の外周部の近傍に移動させた状態を示す断面図である。 本発明の第1の実施形態における小片部材の運搬方法を示す断面図で、小片部材
【図7】本発明の第1の実施形態における小片部材の運搬方法を示す断面図で、小片部材を浮上させる状態を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態における小片部材の運搬方法を示す断面図で、小片部材を落下させる状態を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態における小片部材の運搬装置の主要部を示す斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施形態における気体噴出体の主要部を示す図で、図10(a)は側面図、図10(b)は図10(a)におけるA−A断面図、図10(c)は図10(a)におけるB−B断面図である。
【図11】図9における小片部材の下面側から見た平面図で、気体噴出体から噴出される気体の噴出方向を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施形態における小片部材の運搬装置の主要部を示す図で、図12(a)は平面図、図12(b)は図12(a)におけるC−C断面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態における気体噴出体の主要部を示す図で、図13(a)は斜視図、図13(b)は図13(a)におけるA−A断面図、図13(c)は図13(a)におけるB−B断面図である。
【図14】従来技術における板状片を吸引保持して所定の位置に移動する板状片供給装置を示す側面図である。
【図15】従来技術における板状物を浮上搬送する搬送装置の主要部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1から図8は第1の実施形態における小片部材の運搬装置と運搬方法を示す図、図9から図11は第2の実施形態における小片部材の運搬装置を示す図、図12から図14は第3の実施形態における小片部材の運搬装置を示す図である。以下、本発明の各実施形態における小片部材の運搬装置およびその運搬方法について図に基づいて説明する。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態における小片部材の運搬装置を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態における小片部材の運搬装置は、板状片12をパーツフィーダ等により整列させて順次に供給する小片部材としての半導体ウエハー15を3個の気体噴出体11a、11b、11cのそれぞれの気体噴出孔13a、13b、13cから噴出する空気によって浮上させて保持した状態で所定の容器18へ運搬するものである。
【0017】
図2は半導体ウエハー15を気体噴出体11で浮上させた状態において、半導体ウエハー15の下面側から見た平面図で、半導体ウエハー15と空気の噴出方向との位置関係を示す。図2に示すように、3個の気体噴出体11a、11b、11cのそれぞれの気体噴出孔13a、13b、13cから噴出する空気の噴出方向は半導体ウエハー15の中心Pに向かう方向に設定されている。なお、気体噴出体の数は、3個に限定されるものではなく対向する2個としても浮上させることが可能であるが安定性を考慮すると3個とするのが好ましい。
【0018】
図3は第1の実施形態における小片部材の運搬装置の主要部を示し、図3(a)は小片部材を浮上させた状態を示す断面図、図3(b)は小片部材を落下させた状態を示す断面図である。なお、図3は説明の都合で図2におけるA−A断面を示す。図3(a)に示すように本実施形態における小片部材の運搬装置は、半導体ウエハー15の外周近傍を半導体ウエハー15の厚さ方向に移動可能に配置される気体噴出体11a、11b、11cを備えている。気体噴出体11a、11b、11cには先端付近の側面に気体噴出孔13a、13b、13cが設けられており、気体噴出体11a、11b、11cを半導体ウエハー15の外周近傍に移動し、気体噴出孔13a、13b、13cが半導体ウエハー15の下面15a側に位置した状態において、気体噴出孔13a、13b、13cから半導体ウエハー15の下面15a側に気体としての空気を噴出して半導体ウエハー15を矢印Aに示す方向に浮上させる浮上手段を備えている。
【0019】
さらに図3(b)に示すように半導体ウエハー15を浮上保持した状態で気体噴出体11a、11b、11cを所定の位置(図1に示す容器18の位置)に移動させる運搬手段と、所定の位置で噴出する空気を停止して半導体ウエハー15を落下させる小片部材落下手段とを備えている。なお気体噴出体11a、11b、11cを上下方向及び水平方向に移動させる運搬手段としては、従来技術における機械方式または油圧方式等を採用することができる。
【0020】
図2(c)は、半導体ウエハー15を気体噴出体11a、11b、11cで浮上させた状態における半導体ウエハー15の外周部と気体噴出体11aとの位置関係を示すものである。本実施形態においては半導体ウエハー15の外周部と気体噴出体11aとの隙間dの値が0.1mmに設定されている。また、図示していないが半導体ウエハー15の外周部と気体噴出体11b、11cとの隙間についても同様の値に設定されている。この隙間dの値は0.5mm程度でも浮上させることができるが、小さいほど噴出させる空気圧を小さくでき好ましい。
【0021】
図4は本実施形態における気体噴出体11aを示す図で、図4(a)は部分側面図、図4(b)は図4(a)におけるA−A断面図、図4(c)は図4(a)におけるB−B断面図である。図4(a)、図4(b)に示すように気体噴出体11aは略円筒形形状をなし、内部に空気供給路12aが設けられている。この空気供給路12aの一方は空気圧発生装置(図示せず)に接続されており、他方は気体噴出孔13aに接続されている。気体噴出孔13aは円形形状をなし気体噴出体11aの先端付近の側面に設けられており、空気供給路12aから側面に向かって貫通されている。また、図4(c)に示すように気体噴出孔13aは1個設けられており、空気供給路12aから側面に向かって一方向に貫通されている。なお、気体噴出体11b、11cについても気体噴出体11aと同様であり、説明を省略する。
【0022】
図5から図8は本実施形態における小片部材としての半導体ウエハーの運搬方法を示す図である。図5は気体噴出体11a、11b、11cが第1の容器17に配置されている半導体ウエハー15の上方に配置されている状態を示す斜視図、図6、図7は半導体ウエハーを浮上させて移動させる工程を示し図5におけるD−D線での断面状態を示す図である。また図8は同様に半導体ウエハーを落下させて所定の容器に載置する工程を示す断面図である。図5、図6に示すように気体噴出体11a、11b、11cを矢印Aで示す方向に下降させて、第1の容器17上に配置されている半導体ウエハー15の外周近傍に移動させる。第1の容器17には半導体ウエハー15の外周近傍で気体噴出体11a、11b、11cに対応する位置に凹部17a、17b、17cが設けられており、気体噴出体11a、11b、11cに設ける気体噴出孔13a、13b、13cが半導体ウエハー15の下側となる位置まで気体噴出体11a、11b、11cを挿入することができるようになっている。なお、図6には気体噴出体11bは図示されていない。
【0023】
次に図7(a)に示すように気体噴出孔13a、13b(図示せず)、13cから半導体ウエハー15の下面15a側に空気を噴出して半導体ウエハー15を気体噴出体11a、11b(図示せず)、11cに沿って矢印Bに示す上方に浮上させて所定の位置で保持する。噴出される空気の圧力は、予め所定の値に設定しておけば運搬中に調整する必要はない。
次に図7(b)に示すように半導体ウエハー15を保持した気体噴出体11a、11b(図示せず)、11cを矢印Bで示す上方に移動させ、次に矢印Cで示す第2の容器18(図示せず)方向に運搬する。
【0024】
次に図8(a)に示すように半導体ウエハー15を保持した気体噴出体11a、11b(図示せず)、11cを矢印Aで示す方向に下降させ第2の容器18上の所定の位置に停止させる。
次に図8(b)に示すように気体噴出体11a、11b(図示せず)、11cに設ける気体噴出孔13a、13b(図示せず)、13cからの空気の噴出を停止して浮上していた半導体ウエハー15を第2の容器18上に落下させる。
次に図5(c)に示すように気体噴出体11a、11b(図示せず)、11cを矢印Bで示す方向に上昇させる。これによって、半導体ウエハー15が第2の容器18の所定の位置に載置される。
【0025】
以上のように本実施形態の運搬装置によれば、半導体ウエハー15を簡単な装置で浮上させ、上面の被膜形成面とは非接触状態で所定の位置へ運搬することができる。なお、運搬中、半導体ウエハー15は安定保持されている。
【0026】
(第2の実施形態)
第2の実施形態における小片部材の運搬装置は小片部材が時計用地板の例であり、4個の気体噴出体の形状が角柱状で、気体噴出孔の形状が四辺形形状である点が第1の実施形態と異なり、その他は第1の実施形態とほぼ同様である。したがって第1の実施形態と同様の点については、説明を省略する。以下、図9から図11に基づいて第2の実施形態における小片部材の運搬装置について説明する。
【0027】
図9は第2の実施形態に小片部材の運搬装置の主要部を示す斜視図である。図9に示すように、本実施形態における小片部材の運搬装置は小片部材としての時計用地板25の外周近傍を時計用地板25の厚さ方向に移動可能に配置される4個の気体噴出体21a、21b、21c、21dを備えている。4個の気体噴出体21a、21b、21c、21dには先端付近の側面にそれぞれ気体噴出孔23a、23b、23c、23dが設けられており、4個の気体噴出体21a、21b、21c、21dを時計用地板25の外周近傍に移動させ、気体噴出孔23a、23b、23c、23dが時計用地板25の下面側に位置した状態において、気体噴出孔23a、23b、23c、23dから時計用地板25の下面側に気体としての空気を噴出して時計用地板25を浮上させて保持した状態で所定の位置へ運搬するものである。
【0028】
図10は本実施形態における気体噴出体21aを示す図で、図10(a)は部分斜視図、図10(b)は図10(a)におけるA−A断面図、図10(c)は図10(a)におけるB−B断面図である。図10(a)、図10(b)に示すように気体噴出体21aは略直方体形状をなし、内部に空気供給路22aが設けられている。この空気供給路22aの一方は空気圧発生装置(図示せず)に接続されており、他方は気体噴出孔23aに接続されている。気体噴出孔23aは断面形状が四辺形形状をなし気体噴出体21aの先端付近の側面に設けられており、空気供給路12aから側面に向かって貫通されている。また、図10(c)に示すように気体噴出孔23aは第1の実施形態と同様に気体噴出体21aの1側面に1個設けられている。なお、気体噴出体21b、21c、21dについては、気体噴出体21aと同様であり、説明を省略する。
【0029】
図11は、図9における時計用地板25を4個の気体噴出体21a、21b、21c、21dで浮上させた状態において、時計用地板25の下面側から見た平面図で、時計用地板25と4個の気体噴出体21a、21b、21c、21dから噴出する空気の噴出方向との位置関係を示す。図11に示すように、4個の気体噴出体21a、21b、21c、21dの空気の噴出方向は時計用地板25の中心Qを通るように設定する。即ち、気体噴出孔23aは矢印A方向、気体噴出孔23bは矢印B方向、気体噴出孔23cは矢印C方向、気体噴出孔23dは矢印D方向となるように、気体噴出孔23a、23b、23c、23dの位置を設定して気体噴出体21a、21b、21c、21dを配置する。
【0030】
この気体噴出体21aと気体噴出体21c、気体噴出体21bと気体噴出体21dは互いに略対抗するように配置するとよい。また、時計用地板25の外周部と気体噴出体21aとの隙間dの値は、第1の実施形態と同様に設定すれば良い。その他の気体噴出体21b、21c、21dと時計用地板25の外周部と隙間についても同様である。これにより時計用地板25を確実に浮上させ安定保持することができる。
なお、時計用地板25は略長方形の形状をなしメッキ処理が施された金属板からなり、その表面には種々の部品が取り付けられている。
【0031】
以上のように本実施形態の運搬装置によれば、時計用地板のように比較的大きい面積を有する小片部材においても確実に浮上させ、回路形成面とは非接触状態で安定保持して所定の位置へ運搬することができる。なお、本実施形態における時計用指針の運搬方法は、第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。
【0032】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の小片部材の運搬装置は小片部材が時計用指針の例であり、複数の気体噴出体のそれぞれに複数の気体噴出孔を設けた点が第2の実施形態と異なり、その他は第2の実施形態とほぼ同様である。したがって第2の実施形態と同様の点については、説明を省略する。以下、図12、図13に基づいて第3の実施形態における小片部材の運搬装置について説明する。
【0033】
図12は第3の実施形態に小片部材の運搬装置の主要部を示す図で、図12(a)は平面図、図12(b)は図12(a)におけるC−C断面図である。図12(a)、図12(b)に示すように、本実施形態における小片部材の運搬装置は小片部材としての時計用指針35の長手方向両側面近傍を時計用指針35の厚さ方向に移動可能に配置される2個の気体噴出体31a、31bを備えている。また、2個の気体噴出体31a、31bにはそれぞれの先端付近側面の3箇所に気体噴出孔33a、33bが設けられている。この2個の気体噴出体31a、31bを時計用指針35の長手方向両側面近傍に移動させ、気体噴出孔33a、33bが時計用指針35の下面側に位置した状態において、気体噴出孔33a、33bから時計用指針35の下面側に気体としての空気を噴出して時計用指針35を浮上させて保持した状態で所定の位置へ運搬するものである。
【0034】
2個の気体噴出体31a、31bは、時計用指針35を挟むように時計用指針35の長手方向両側面近傍に配置された状態において、気体噴出孔33a、33bは時計用指針35と対向する側に設けられる。また、気体噴出孔33a、33bが設けられている気体噴出体31a、31bの側面と、これと対抗する時計用指針35の側面とは、ほぼ平行となるように配置し、時計用指針35の側面と気体噴出体31a、31bとのそれぞれの隙間dは略均一となるように設定する。なお、隙間dの値は第1の実施形態と同様に設定すれば良い。これにより時計用指針35を確実に浮上させ安定保持することができる。なお、時計用指針35については、従来例と同様であるため説明は省略する。
【0035】
図13は本実施形態における気体噴出体31aを示す図で、図13(a)は部分斜視図、図13(b)は図13(a)におけるA−A断面図、図13(c)は図13(a)におけるB−B断面図である。図13(a)、図13(b)に示すように気体噴出体31aは略直方体形状をなし、内部に空気供給路32aが設けられている。この空気供給路32aの一方は空気圧発生装置(図示せず)に接続されており、他方は気体噴出孔33aに接続されている。気体噴出孔33aは円形形状をなし気体噴出体31aの先端付近で、且つ長手方向の側面に設けられており、空気供給路32から側面に向かって貫通されている。また、図13(c)に示すように気体噴出孔33aは長手方向の一方の側面に所定の間隔をおいて3個設けられている。また空気供給路32aの横断面形状は略長方形形状となっており3個の気体噴出孔33aと接続されている。なお、気体噴出体31b、気体噴出孔33bについては気体噴出体31aと同様であり説明を省略する。
【0036】
以上のように本実施形態の運搬装置によれば、時計用指針35においても確実に浮上させ、上面の装飾層とは非接触状態で安定保持して所定の位置へ運搬することができる。なお、本実施形態における時計用指針35の運搬方法も第1の実施形態と同様であり説明を省略する。
【0037】
なお、各実施形態における気体噴出体に設ける気体噴出孔の数は特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜選択することができる。
また、各実施形態において気体噴出体に設ける気体噴出孔の断面形状は、円形、四辺形を例として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、楕円形、三角形等必要に応じて適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0038】
11a、11b、11c 気体噴出体
12a、22a、32a 気体供給路
13a、13b、13c 気体噴出孔
15 半導体ウエハー
15a 下面
17 第1の容器
17a、17b、17c 凹部
18 第2の容器
21a、21b、21c、21d 気体噴出体
23a、23b、23c、23d 気体噴出孔
25 時計用地板
31a、31b 気体噴出体
33a、33b 気体噴出孔
35 時計用指針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体の噴出により小片部材を浮上させて所定の位置へ運搬する小片部材の運搬装置であって、
前記小片部材の外周近傍を小片部材の厚さ方向に移動可能に配置されるとともに先端付近の側面に設ける気体噴出孔を有する気体噴出体と、
前記気体噴出体を前記小片部材の外周部の近傍に移動させた状態において、前記気体噴出孔から前記小片部材の下面側に気体を噴出して前記小片部材を浮上させる小片部材浮上手段と、
前記気体噴出体により前記小片部材を浮上支持した状態で前記気体噴出体を所定の位置に移動させることにより前記小片部材を所定の位置に運搬する運搬手段と、
前記所定の位置で前記噴出する気体を停止して前記小片部材を落下させる小片部材落下手段とを備えたことを特徴とする小片部材の運搬装置。
【請求項2】
前記気体噴出体を複数備えたことを特徴とする請求項1に記載の小片部材の運搬装置。
【請求項3】
前記気体噴出体は複数の気体噴出孔を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の小片部材の運搬装置。
【請求項4】
気体の噴出により小片部材を浮上させて所定の位置へ運搬する小片部材の運搬方法であって、
前記小片部材の外周近傍に気体噴出体を移動させ、該気体噴出体に設ける気体噴出孔から前記小片部材の下面側に気体を噴出して前記小片部材を浮上させ、前記気体噴出体を所定の位置に移動させることにより前記小片部材を運搬し、前記所定の位置で前記噴出する気体を停止して前記小片部材を落下させることを特徴とする小片部材の運搬方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−124286(P2011−124286A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278762(P2009−278762)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(591021279)シチズン東北株式会社 (21)
【Fターム(参考)】