説明

小胞体ストレスまたは酸化ストレス由来細胞死抑制剤

【課題】小胞体ストレス由来細胞死、および/または酸化ストレス由来細胞死の抑制に有用な医薬組成物の提供。
【解決手段】下記一般式(I)


〔式中、R1は、水素原子、C−Cアルコキシ基; R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基、C−Cハロゲン化アルキル基、シアノ基などを示す。〕で表されるカルバゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバゾール誘導体、及びその医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、加齢に伴いヒトの体内で起こる変化、或いは癌・心疾患・脳卒中(いわゆる3大疾病)に代表される多くの疾患の発症過程で、細胞内ストレスが重要な役割を担っていることが明らかになってきている。
【0003】
細胞内に存在する小器官のうち、呼吸を司るミトコンドリアの機能障害が細胞死に結びつくことは以前より言われてきた。しかし、最近になって、分泌系蛋白質の生合成の場である小胞体に障害が起こった場合も、ストレスに対して応答が出来ずに、小胞体の機能障害や細胞死を引き起こすことが明らかになってきた(非特許文献1、非特許文献2)。
【0004】
小胞体は、分泌系蛋白質や膜蛋白質が規則正しく折りたたまれ、その立体構造を整える場であるとともに、細胞内カルシウムの貯蔵庫として、また脂質代謝の主要器官として、多岐にわたる生理作用を有している。しかし、虚血、低酸素、熱ショック、遺伝子変異などの物理化学的ストレスにより、小胞体内に正常な折りたたみ構造を持たない蛋白質(unfolded protein)が増加してしまい、小胞体の機能障害を引き起こすことが知られている(非特許文献3)。
【0005】
これに対抗するために小胞体においては、その内部にある分子シャペロン等を増加することで蓄積された蛋白質を保護したり、流入蛋白質を減らして負荷を軽減させたり、蛋白質を分解することで対応している。しかしそれにもかかわらずこの強い小胞体ストレスの状態が継続してしまうと、細胞がストレスに抵抗しきれず、自ら細胞死(アポトーシス)を選択することが明らかになってきている(非特許文献4)。
【0006】
このような小胞体ストレス由来細胞死は、脳虚血あるいはアルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン病のような神経変性疾患、多発性硬化症などの炎症性神経疾患、躁鬱病などの精神疾患、緑内障などの眼疾患、動脈硬化や虚血性心疾患、胃潰瘍、ウイルス性肝炎、脂肪肝、糖尿病、糖尿病合併症、糸球体腎炎や腎不全などの腎疾患、癌等、様々な疾患の発症・病態進行に関与していることが指摘されている(非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7)。
【0007】
その為に、これらの小胞体ストレスを抑制することにより小胞体ストレス由来の細胞死を制御する為のシステムの開発が進んでいる。
【0008】
例えば、特定構造を有するジリノレオイルホスファチジルエタノールアミン(脂肪酸として2つのリノール酸を含む)が、細胞死誘導抑制活性、特に小胞体ストレス抑制活性を有することが示され、これを有効成分として含有する医薬組成物が提案されている(特許文献1)。
【0009】
また、ある特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドが小胞体ストレス誘導性の細胞死抑制作用を有することが示されている(特許文献2)。
【0010】
また、ヤマブシダケ由来の脂溶性抽出成分が小胞体ストレス誘導性の細胞死抑制作用を有することが示されている(特許文献3)。
【0011】
しかし、いずれの特許文献に開示されているシステムや化合物等についても未だ十分な小胞体ストレス制御に対する効果を得ることが出来ていないのが現状である。したがって、より効果が高く且つ簡便に入手可能な化合物の開発が期待されている。
【0012】
一方、酸化ストレスについても小胞体ストレスと同様に神経変性疾患や虚血性疾患、糖尿病など各種疾患の原因となっていることが知られており(非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10)、酸化ストレス由来細胞死を有効に抑制することができる化合物の開発が期待されている。
【0013】
【非特許文献1】Mori, K,Cell. 2000年,第101巻,:p 451-454
【非特許文献2】Oyadomari, S, and M. Mori, Cell Death Differ., 2004年、第11巻、p 381-389
【非特許文献3】Takano K, Tabata Y, Kitao Y, Murakami R, Suzuki H, Yamada M, Iinuma M, Yoneda Y, Ogawa S, Hori O. Methoxyflavones protect cells against endoplasmic reticulum (ER) stress and neurotoxin. Am J. Physiol (Cell Physiol) 2006 Sep 13; [Epub ahead of print]
【非特許文献4】Hori O, Ichinoda F, Yamaguchi A, Tamatani T, Taniguchi M, Koyama Y, Katayama T, Tohyama M, Stern DM, Ozawa K, Kitao Y, Ogawa S. Role of Herp in the endoplasmic reticulum stress response. Genes Cells. 2004 May;9(5):457-69.
【非特許文献5】親泊政一、実験医学, Vol.23, No.18, 2005 :2778-83
【非特許文献6】高橋良輔、田代善崇、実験医学, Vol.23, No.18, 2005 :2789-94
【非特許文献7】加藤忠史、垣内千尋、林朗子、笠原和起、実験医学, Vol.23, No.18, 2005 :2795-98
【非特許文献8】浅沼幹人、小川紀雄、別冊・医学のあゆみ 酸化ストレス−フリーラジカル医学生物学の最前線、p177-181
【非特許文献9】大塚正史、小室一成、別冊・医学のあゆみ 酸化ストレス−フリーラジカル医学生物学の最前線、p189-192
【非特許文献10】武田智美、井原裕、清野裕、別冊・医学のあゆみ 酸化ストレス−フリーラジカル医学生物学の最前線、p262-265
【特許文献1】特開2005−247728号公報
【特許文献2】特開2005−082557号公報
【特許文献3】特開2003−212790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、小胞体ストレス由来細胞死、または酸化ストレス由来細胞死を抑制する薬剤として有用な化合物、またはその薬学的に許容される塩、及び小胞体ストレス由来細胞死、または酸化ストレス由来細胞死を抑制する薬剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は、これら小胞体ストレス由来細胞死を制御することによる新たな創薬及び機能性食品の開発を目的として、F9 Herp欠損細胞を用いた評価系を見出した(特開2005−245247号公報)。なお、Herpは、小胞体内に蓄積した不要なタンパクの除去に関連していると考えられている、小胞体におけるユビキチン様ドメインを持つ遺伝子である。
【0016】
上記評価系を用いた予備実験の結果から、小胞体からのCa++流出を抑制するDantroleneや、α−tocopherolやβ−carotene等、一部の抗酸化剤にも同細胞に於ける小胞体ストレス由来細胞死を抑制する効果を認めたため、実際に約300種類の化合物(天然物100種類、合成化合物200種類)についてスクリーニングを行った。
【0017】
その結果、特定の構造を有するカルバゾール誘導体が強い小胞体ストレス由来細胞死抑制効果、および/または酸化ストレス由来細胞死抑制効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は以下を含む。
〔1〕下記一般式(I)
【化2】

〔式中、Rは、水素原子、またはC−Cアルコキシ基を示す; R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基、C−Cハロゲン化アルキル基、またはシアノ基を示す。〕
で表されるカルバゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、小胞体ストレス由来細胞死または酸化ストレス由来細胞死の抑制剤。
〔2〕Rが、水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基、またはC−Cハロゲン化アルキル基である、〔1〕に記載の抑制剤。
〔3〕Rが、水素原子、ハロゲン原子、またはC−Cアルキル基である、〔1〕または〔2〕に記載の抑制剤。
〔4〕前記一般式(I)記載の化合物が、下記の群から選択されるいずれか1つである、〔1〕〜〔3〕に記載の抑制剤;
(1)1A;
9−(2−メチルベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
(2)1B;
9−(4−メチルベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
(3)1C;
9−(3−トリフルオロメチルベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
(4)1D;
9−(3−シアノベンジル)−1,4−ジメチルカルバゾール、
(5)1E;
9−(3−シアノベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
(6)1F;
9−(2,5−ジメチルベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
(7)1G;
9−(3,4−ジフルオロベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
(8)1H;
9−(2−ヨードベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
(9)1I;
9−(4−トリフルオロベンジル)−1,4−ジメチルカルバゾール、および
(10)1J;
9−(3−ブロモベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール。
〔5〕〔1〕〜〔4〕に記載の小胞体ストレス由来細胞死または酸化ストレス由来細胞死の抑制剤を含有する、小胞体ストレスまたは酸化ストレス関連疾患の予防または治療剤。
〔6〕前記小胞体ストレスまたは酸化ストレス関連疾患が、糖尿病、糖尿病合併症、神経変性疾患、躁鬱病、緑内障、胃潰瘍、脂肪肝、ウイルス性肝炎、慢性糸球体腎炎、腎不全、またはアレルギー性疾患である、〔5〕に記載の小胞体ストレスまたは酸化ストレス関連疾患の予防または治療剤。
〔7〕9−(4−トリフルオロベンジル)−1,4−ジメチルカルバゾール、またはその薬学的に許容される塩。
〔8〕下記一般式(I)
【化3】

〔式中、Rは、水素原子、C−Cアルコキシ基を示す; R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基、C−Cハロゲン化アルキル基、シアノ基を示す。〕
で表されるカルバゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩の医薬的に有効な量を、小胞体ストレスまたは酸化ストレス関連疾患の患者に投与する段階を含む、小胞体ストレスまたは酸化ストレス関連疾患の治療方法。
〔9〕小胞体ストレス由来細胞死または酸化ストレス由来細胞死の抑制剤の調製のための、下記一般式(I)
【化4】

〔式中、Rは、水素原子、C−Cアルコキシ基を示す; R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基、C−Cハロゲン化アルキル基、シアノ基を示す。〕で表される化合物の使用。
【0019】
本明細書において、「アルキル基」とは、脂肪族炭化水素から任意の水素原子を1個除いて誘導される一価の基であり、骨格中にヘテロ原子または不飽和炭素−炭素結合を含有せず、水素および炭素原子を含有するヒドロカルビルまたは炭化水素の部分集合を有する。アルキル基は直鎖状または分枝鎖状の構造を含み、「C−Cアルキル基」とは、炭素原子数が1〜6のアルキル基であることを意味する。
【0020】
具体的には例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2,3−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、2,3−ジメチルヘキシル基、1,1−ジメチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられ、好ましくは、メチル基である。
【0021】
本明細書において、「アルコキシ基」とは、前記定義の「アルキル基」が結合したオキシ基であることを意味し、「C−Cアルコキシ基」とは、炭素原子数が1〜6のアルコキシ基であることを意味する。
【0022】
具体的には例えば、具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロピルオキシ基、2−プロピルオキシ基、2−メチル−1−プロピルオキシ基、2−メチル−2−プロピルオキシ基、1−ブチルオキシ基、2−ブチルオキシ基、1−ペンチルオキシ基、2−ペンチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、2−メチル−1−ブチルオキシ基、3−メチル−1−ブチルオキシ基、2−メチル−2−ブチルオキシ基、3−メチル−2−ブチルオキシ基、2,2−ジメチル−1−プロピルオキシ基などが挙げられ、好ましくはメトキシ基である。
【0023】
本明細書において、「ハロゲン原子」は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味し、好ましくは、フッ素原子、ヨウ素原子、臭素原子である。
【0024】
本明細書において、「ハロゲン化アルキル基」とは、同一又は異なる1乃至5個の前記「ハロゲン原子」が前記「C−Cアルキル基」に結合した基を示す。
【0025】
具体的には例えば、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、フルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−ブロモエチル、2−クロロエチル、2−フルオロエチル、2−ヨードエチル、ペンタフルオロエチル、3−クロロプロピル、4−フルオロブチル、6−ヨードヘキシル又は2,2−ジブロモエチル基であり、好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0026】
細胞死にはアポトーシスとネクローシスがある。アポトーシスとは細胞自殺、プログラム細胞死、あるいは能動的細胞死と呼ばれ、生理的要因、病理的要因で発現する細胞死である。形態的には核や細胞は縮小するが、ミトコンドリア等の細胞質内の小器官は正常で、炎症を伴わないことを特徴とする。一方、ネクローシスは、細胞他殺、偶発的細胞死、あるいは受動的細胞死と呼ばれ、病理的要因で発現する細胞死である。形態的には細胞全体もミトコンドリアも膨化し、炎症を伴うことを特徴とする。しかしながら、アポトーシスとネクローシスは対立する概念ではなく、同一要因、同一細胞で、段階に応じてアポトーシスとネクローシスが混在することもある。
【0027】
小胞体ストレスに由来する細胞死は、形態的にはアポトーシスの様相を呈するが、本発明における「小胞体ストレス由来細胞死」は、必ずしもアポトーシスに限定されるものではなく、小胞体ストレスが原因となって引き起こされる全ての細胞死を含む。
【0028】
また、本明細書において「酸化ストレス由来細胞死」とは、前記「小胞体ストレス由来細胞死」と同様、酸化ストレスが原因となって引き起こされる全ての細胞死を含む。
【0029】
本明細書において、「小胞体ストレス関連疾患」とは、小胞体ストレス由来細胞死が原因となって引き起こされる全ての疾患を意味し、例えば、脳虚血あるいはアルツハイマー病、パーキンソン病、ポリグルタミン病のような神経変性疾患、多発性硬化症などの炎症性神経疾患、躁鬱病などの精神疾患、緑内障などの眼疾患、動脈硬化や虚血性心疾患、胃潰瘍、ウイルス性肝炎、脂肪肝、糖尿病、糖尿病合併症、糸球体腎炎や腎不全などの腎疾患、癌等などが挙げられる。
【0030】
本明細書において、「酸化ストレス関連疾患」とは、酸化ストレス由来細胞死が原因となって引き起こされる全ての疾患を意味し、例えば、神経変性疾患、虚血性心疾患、糖尿病などが挙げられる。
【0031】
本明細書において、「薬学的に許容される塩」とは、本発明に係る化合物と塩を形成し、かつ薬理学的に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば、無機酸塩、有機酸塩、酸性アミノ酸塩などがあげられる。無機酸塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などが挙げられ、有機酸塩としては、例えば酢酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩などが挙げられ、酸性アミノ酸塩としては、例えばアスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などが挙げられる。
【0032】
本明細書の化合物は、大気中に放置しておくことにより、水分を吸収し、吸着水が付いたり、水和物となる場合があり、そのような塩も本発明に含まれる。
【0033】
さらに、本明細書で用いる化合物に溶媒分子が配意した溶媒和物も、本発明の塩に包含される。
【0034】
以下に、本発明に係る小胞体ストレス由来細胞死、または酸化ストレス由来細胞死の抑制に用いうる化合物について説明する。
【0035】
本発明で用いる化合物は、下記一般式(I)で表される。
【0036】
【化5】

【0037】
式中、Rは、水素原子、C−Cアルコキシ基を示し、R、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基、C−Cハロゲン化アルキル基、シアノ基を示す。
【0038】
前記RにおけるC−Cアルコキシ基としては、好ましくはメトキシ基である。また、前記R、R及びRにおけるハロゲン原子として、好ましくは、フッ素、臭素、ヨウ素であり、C−Cアルキル基として、好ましくはメチル基であり、C−Cハロゲン化アルキル基として、好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0039】
前記Rとして好ましくは、水素原子、またはメトキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0040】
前記Rとして好ましくは、水素原子、フッ素原子、臭素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、シアノ基であり、特に好ましくは、シアノ基である。
【0041】
前記Rとして好ましくは、水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基であり、特に好ましくは、水素原子である。
【0042】
前記Rとして好ましくは、水素原子、ヨウ素原子、メチル基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0043】
このような式(I)で表される化合物は、具体的には、下記の化合物(1A)〜(1J)が挙げられる。
【化6】

1A:9−(2−メチルベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
【化7】

1B:9−(4−メチルベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
【化8】

1C:9−(3−トリフルオロメチルベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
【化9】

1D:9−(3−シアノベンジル)−1,4−ジメチルカルバゾール、
【化10】

1E:9−(3−シアノベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
【化11】

1F:9−(2,5−ジメチルベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
【化12】

1G:9−(3,4−ジフルオロベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
【化13】

1H:9−(2−ヨードベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
【化14】

1I:9−(4−トリフルオロベンジル)−1,4−ジメチルカルバゾール、
【化15】

1J:9−(3−ブロモベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール。
【0044】
本発明で用いる式(I)で表される化合物で表される化合物は、1,4−ジメチルカルバゾール(J.Chem.Soc、1962年、第3482頁に記載の方法により製造)、または6−アルコキシ−1,4−ジメチルカルバゾール(J. Chem. Soc、1962年、第3482頁に記載の方法に準じて製造)と、下記式IIで表される置換ベンジルハロゲン化物とを反応させることにより製造することができる。
【化16】

(式中、R、RおよびRは、前記と同意義であり、Xはハロゲン原子である。)
【0045】
本反応は、反応に不活性な溶媒(例えば、ベンゼン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水など、またはこれらの混合物)中もしくは無溶媒で、塩基性化合物(例えば、ピリジン、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水素化ナトリウムなど)の存在下、または前記塩基性化合物と相関移動触媒(硫酸水素テトラブチルアンモニウムなど)の存在下、氷冷下〜使用される溶媒の還流温度で攪拌することにより行われる。
【0046】
前記溶媒、および塩基性化合物は、使用する式IIの化合物の種類により適宜選択される。反応終了後、通常水を加えると結晶が析出し、ろ過により目的物を得ることができる。また、結晶が析出しない場合には、適当な溶媒(例えば、ベンゼン、クロロホルム、酢酸エチルなど)で抽出し、常法により処理して目的物を得ることができる。
【0047】
本発明で用いる化合物がフリー体として得られる場合、前記化合物が形成していてもよい塩、またはそれらの水和物、溶媒和物の状態に、常法に従って変換することができる。また、本発明で用いる化合物が、化合物の塩、水和物、または溶媒和物として得られる場合、化合物のフリー体に常法に従って変換することができる。
【0048】
このような、本発明で用いる前記式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩は、小胞体ストレス由来細胞死、または酸化ストレス由来細胞死を抑制する活性を有するため、小胞体ストレス由来細胞死もしくは酸化ストレス由来細胞死の抑制剤、または、小胞体ストレス関連疾患、もしくは酸化ストレス関連疾患の予防剤または治療剤として用いられる。
【0049】
また、本発明は、前記式(I)で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩の有効量を小胞体ストレス関連疾患、または酸化ストレス関連疾患の患者に投与する段階を含む、小胞体ストレス関連疾患、または酸化ストレス関連疾患の治療方法にも関する。
【0050】
さらに、本発明は、小胞体ストレス由来細胞死、または酸化ストレス由来細胞死の抑制剤の調製のための、前記式(I)で表される化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用にも関する。
【0051】
本発明にかかる医薬組成物を投与する場合、その形態は特に限定されず、通常用いられる方法により経口投与でも非経口投与でもよい。具体的には、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、トローチ剤、吸入剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、眼軟膏剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、パップ剤、ローション剤などの剤として製剤化し、投与することができる。
【0052】
上記製剤化には通常用いられる賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤や、および必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調製剤、防腐剤、抗酸化剤などを使用することができ、一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製剤化される。
【0053】
経口製剤を製造するには、例えば、本発明にかかる化合物またはその薬理学的に許容される塩と賦形剤、さらに必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤などを加えた後、常法により散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤等とすることができる。
【0054】
賦形剤としては、例えば乳糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、二酸化ケイ素などがあげられる。
【0055】
結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックポリマー、メグルミンなどがあげられる。
【0056】
崩壊剤としては、例えばデンプン、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、カルボキシメチルセルロース・カルシウム等があげられる。
【0057】
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油等があげられる。
【0058】
着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものがあげられ、矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、桂皮末などが用いられる。
【0059】
矯味矯臭剤としては、例えば通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。
【0060】
シロップ剤や注射用製剤等の液剤を製造する際には、本発明にかかる化合物またはその薬理学的に許容される塩にpH調整剤、溶解剤、等張化剤などと、必要に応じて溶解補助剤、安定化剤などを加えて、常法により製剤化する。
【0061】
本発明にかかる医薬組成物の投与量は、症状の程度、年齢、性別、体重、投与形態・塩の種類、疾患の具体的な種類等に応じて適宜選ぶことができる。例えば、通常成人として1日あたり、約0.03−1000mg、好ましくは0.1−500mg、さらに好ましくは0.1−100mgを1日1−数回に分けて投与することができ、注射剤の場合は、通常約1μg/kg−3000μg/kgであり、好ましくは約3μg/kg−1000μg/kg投与することができる。
【0062】
本発明の別の態様は、下記の構造式を有する新規化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【化17】

1I:9−(4−トリフルオロベンジル)−1,4−ジメチルカルバゾール
【0063】
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明は実施例に何ら限定されるものではない。
【0064】
[実施例1]
9−(4−トリフルオロベンジル)−1,4−ジメチルカルバゾール(化合物:1I)の製造
窒素雰囲気下、60%水素化ナトリウム0.46gとジメチルスルホキシド5mlを60℃で一時間攪拌し、氷冷後、1,4−ジメチルカルバゾール2.25gの無水テトラヒドロフラン溶液を12ml加え、室温にて30分間攪拌した。これに4−トリフルオロベンジルクロリド2.33gの無水テトラヒドロフラン溶液を15mlを氷冷下加え、さらに室温にて12時間攪拌した。反応液に水を加え、析出した結晶を濾取し、水洗、乾燥後、ベンゼン−n−ヘキサンにて再結晶し、目的物3.58gを得た。
mp: 113-115℃
1H NMR (300MHz, CDCl3): d 2.61 (3H, S), 2.90 (3H, s), 5.84 (2H, s), 6.95 (1H, d, J=7 Hz), 7.04 (1H, d, J=7 Hz), 7.08 (1H, d, J=7 Hz), 7.24-7.49 (6H, m), 8.24 (1H, d, J=7 Hz)
【0065】
下記表1に記載の他の化合物(化合物1A〜1H、1J)も上記と同様の方法により製造した。
【化18】

【表1】

【0066】
[実施例2]
1次スクリーニング(F9 Herp欠損細胞)
Genes Cells. 2004 May;9(5):457-69、及び特開2005−245247号に記された方法にて、F9 Herp欠損細胞の作製、及び培養を行った。次に、予備実験として、Dantrolene、α−tocopherol及びprobucolを含む各種化合物の、F9 Herp欠損細胞に於ける小胞体ストレス由来細胞死抑制効果を判定し、Positive controlとして使用できる化合物を決定した。次に、約300種の化合物(天然物100種類、合成化合物200種類)について、F9 Herp欠損細胞に於ける、小胞体ストレス由来細胞死抑制効果を測定した。
【0067】
Positive controlとしてDantrolene、probucol、及び申請者らが既に報告したフラボノイドの一種tangeretin (Am J. Physiol (Cell Physiol) 2006 Sep 13)を用いた。具体的なプロトコールは、以下のように進めた。
【0068】
(1)96穴、或いは24穴培養皿をゼラチンコートした後、野生型F9細胞及びHerp欠損F9細胞を播種する。
(2)2日間、細胞が培養面積の50−60%を占めるまで培養を行う(DMEM培地+20% FBS:Sigma,St.Louis,MO)。
(3)上記細胞に、ツニカマイシン0.8μg/mlと被験物質を同時に加えて48時間培養した後、細胞生存率をcell counting−8アッセイ(生存細胞数を評価する方法:同仁化学研究所、熊本)にて評価する。
【0069】
[実施例3]
2次スクリーニング(PC12細胞)
1次スクリーニングの結果、Dantrolene以上の細胞保護効果を認めた化合物について、ラット神経系細胞株PC12細胞を用いて、同様の小胞体ストレス由来細胞死抑制効果、及び酸化ストレス由来細胞死抑制効果を測定した。
【0070】
小胞体ストレス誘導方法としてはツニカマイシン(Tm:0.75μg/ml、38hr)を用い、酸化ストレス誘導方法として細胞内グルタチオンを枯渇させるbuthionine sulfoximine(BSO、1mM、38hr)を用いた。
【0071】
また、酸化ストレス及び小胞体ストレスを同時に誘導させるため、細胞をツニカマイシン(Tm:0.75μg/ml)及びBSO(1mM)で24hr処理した。細胞保護効果判定のための被験化合物は、各ストレス誘導剤と同時に投与した。細胞生存率の判定は、MTTアッセイにより行った。
【0072】
[実施例4]
小胞体ストレスに対する作用の解析
2次スクリーニングの結果、小胞体ストレスに対する細胞保護効果を強く認めた化合物について、その作用メカニズムを以下の方法により検討した。
【0073】
PC12細胞を、Positive controlのDantrolene又は被験化合物存在下で15時間培養し、その後ツニカマイシン(Tm:2μg/ml,6hr)にて処理し、小胞体ストレスを誘導した。細胞内よりRNAを抽出後、GRP78,CHOP,β−actin特異的なプローブを用いて、Genes Cells. 2004 May;9(5):457-69に記載の方法に従いノーザンブロット解析を行った。
【0074】
[実施例5]
酸化ストレスに対する作用の解析
2次スクリーニングの結果、酸化ストレス由来細胞死抑制効果を認めた化合物について、その抗酸化作用について、以下の方法により検討した。
【0075】
PC12細胞を、Positive controlのDantrolene又は被験化合物存在下で24時間培養し、その後1mM BSOで15hr処理し、蛍光試薬HDCFDA(molecular probes社製)を用いて、酸化ストレスの程度を測定した。また、BSO投与による細胞内グルタチオン量の減少(枯渇)は、グルタチオンアッセイキット(cayman chemical社製)を用いて測定した。
【0076】
〔結果〕
F9 Herp欠損細胞を用いた1次スクリーニングで、複数のカルバゾール誘導体(化合物1A〜1J)に強い小胞体ストレス由来細胞死抑制効果を認めた(図1,図2)。
【0077】
次に、1次スクリーニングにおいて「++」以上の細胞死抑制効果を認めた化合物、1C、1D、1E、1I、1Jについて、PC12細胞においても小胞体ストレス由来細胞死抑制効果を有するか検討した(2次スクリーニング、図3)。その結果、1D、1I、1J(1D>1I=1J)に、やはりDantrolene以上の細胞保護効果を認めた。
【0078】
続いて、小胞体ストレスに対する1D、1H、1J及びDantroleneの影響を、小胞体ストレスに対するストレス応答、UPRの活性化を比較することで行った。
【0079】
PC12細胞に1D、1H、1J、又はDantroleneを加えて15時間インキュベートし(前処理)、その後、ツニカマイシン(2μg/ml、6hr)にて小胞体ストレスを誘導したところ、UPRの標的遺伝子GRP78及びCHOPの発現は、1D>1J=Dantrolene>1Hの順に減少した(図4)。
【0080】
小胞体ストレスの制御には、フラボノイドの一種tangeretinの様に、ストレス防御系であるUPRをあらかじめ活性化することにより、ストレス抵抗性を増強している場合(Takano K, Tabata Y, Kitao Y, Murakami R, Suzuki H, Yamada M, Iinuma M, Yoneda Y, Ogawa S, Hori O. Methoxyflavones protect cells against endoplasmic reticulum (ER) stress and neurotoxin. Am J. Physiol (Cell Physiol) 2006 Sep 13)と、小胞体環境を改善し、小胞体ストレス自体を減少させる場合(この場合、結果として小胞体ストレスに対するUPRの活性化は抑制される)がある。
【0081】
上記の結果から、化合物1D、1J、1Hは、Dantorolenと同様、後者に該当すると考えられ、小胞体ストレス負荷後比較的早期に小胞体環境を改善してストレスを軽減し、細胞死を抑制していることが示唆された。
【0082】
小胞体ストレスに対して最も強い細胞保護効果を示した1Dについて、酸化ストレスに対する細胞保護作用を検討してみたところ、buthionine sulfoximine (BSO、1mM、38hr)にて細胞内グルタチオンを枯渇させることにより酸化ストレスを誘導した場合、Dantroleneと同様に細胞保護効果を示した(図5A)。
【0083】
このとき、細胞内グルタチオンは回復していなかったが(図5B)、細胞内の酸化ストレスは減少していた(図5C)。
【0084】
酸化ストレス及び小胞体ストレスを同時に誘導させるため、細胞をツニカマイシン(Tm:0.75μg/ml)、及びBSO(1mM)で24hr処理したところ、Dantrolene及び1Dとも細胞死抑制作用を示した(図6)。
【0085】
以上の結果より、化合物1Dの生理活性は、小胞体からのCa++流出を抑え、小胞体環境の維持に寄与しているDantroleneと非常に類似していることが判明した。
【0086】
つまり、化合物1Dは、細胞内Ca++制御に関与することにより、小胞体ストレスの制御や酸化ストレスの制御に貢献していると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、小胞体ストレス由来細胞死もしくは酸化ストレス由来細胞死の抑制、または小胞体ストレス関連疾患もしくは酸化ストレス関連疾患の予防または治療に有用な医薬組成物、機能性食品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、F9 Herp欠損細胞を用いた1次スクリーニングにおける、小胞体ストレス由来細胞死抑制活性を示す図である。図中、「+」は、抗酸化剤の一種probucol、「++」はDantrolene、「+++」はフラボノイドの一種tangeretin(Am J. Physiol (Cell Physiol) 2006 Sep 13)の細胞抑制効果と同程度であることを示す。
【図2】図2は、F9 Herp欠損細胞を用いた1次スクリーニングにおける、小胞体ストレス由来細胞死抑制活性を示す図である。図中、横軸の上段の「+」は、ツニカマイシンを加えた場合を、「−」は加えない場合を意味し、下段は、被検化合物の濃度(μM)を示す。なお、下段における「−」は、被検化合物を加えない場合を意味する。また、縦軸は、F9 Herp欠損細胞の細胞生存率(%)を示す。
【図3】図3は、PC12細胞を用いた2次スクリーニングにおける、小胞体ストレス由来細胞死抑制活性を示す図である。図中、横軸の上段の「+」は、ツニカマイシンを加えた場合を、「−」は加えない場合を意味し、下段は、被検化合物の濃度(μM)を示す。なお、下段における「−」は、被検化合物を加えない場合を意味する。また、縦軸は、PC12細胞の細胞生存率(%)を示す。
【図4】図4は、GRP78、CHOP、β−actin特異的なブローブを用いたPC12細胞抽出RNAのノーザンブロット解析を表す図である。図中、上段の「+」は、ツニカマイシンを加えた場合を、「−」は加えない場合を意味し、下段は、被検化合物の濃度(μM)を示す。なお、下段における「−」は、被検化合物を加えない場合を意味する。また、図中「Dan」はDantroleneを意味する。
【図5a】図5aは、PC12細胞を用いた、酸化ストレス由来細胞死抑制活性を示す図である。図中、横軸の上段の「+」は、BSOを加えた場合を、「−」は加えない場合を意味し、下段は、被検化合物の濃度(μM)を示す。なお、下段における「−」は、被検化合物を加えない場合を意味する。また、縦軸は、PC12細胞の細胞生存率(%)を示す。
【図5b】図5bは、BSO投与による細胞内グルタチオン量を示す図である。図中、横軸の上段の「+」は、BSOを加えた場合を、「−」は加えない場合を意味し、下段は、被検化合物の濃度(μM)を示す。なお、下段における「−」は、被検化合物を加えない場合を意味する。また、縦軸は、細胞内グルタチオン量(nmol/μg)を示す。
【図5c】図5cは、蛍光試薬HDCFDA(molecular probes社製)を用いて、PC12細胞における酸化ストレスの程度を測定した写真である。図中、Iは対照を、IIは、BSOのみを加えたケースを、IIIは、Dantrolene(30μM)をBSO(1mM)で24時間処理したケースを、IVは、化合物1D(30μM)をBSO(1mM)で24時間処理したケースを示す。
【図6】図6は、PC12細胞を用いた、小胞体ストレス及び酸化ストレス由来細胞死抑制活性を示す図である。図中、横軸の上段の「+」は、BSOを加えた場合を、「−」は加えない場合を意味し、中段の「+」は、ツニカマイシンを加えた場合を、「−」は加えない場合を意味し、下段は、被検化合物の濃度(μM)を示す。なお、下段における「−」は、被検化合物を加えない場合を意味する。また、縦軸は、PC12細胞の細胞生存率(%)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】

〔式中、R1は、水素原子、またはC−Cアルコキシ基を示す; R2、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基、C−Cハロゲン化アルキル基、またはシアノ基を示す。〕
で表されるカルバゾール誘導体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、小胞体ストレス由来細胞死または酸化ストレス由来細胞死の抑制剤。
【請求項2】
が、水素原子、ハロゲン原子、C−Cアルキル基、またはC−Cハロゲン化アルキル基である、請求項1に記載の抑制剤。
【請求項3】
が、水素原子、ハロゲン原子、またはC−Cアルキル基である、請求項1または2に記載の抑制剤。
【請求項4】
前記一般式(I)記載の化合物が、下記の群から選択されるいずれか1つである、請求項1〜3に記載の抑制剤;
(1)1A;
9−(2−メチルベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
(2)1B;
9−(4−メチルベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
(3)1C;
9−(3−トリフルオロメチルベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
(4)1D;
9−(3−シアノベンジル)−1,4−ジメチルカルバゾール、
(5)1E;
9−(3−シアノベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
(6)1F;
9−(2,5−ジメチルベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
(7)1G;
9−(3,4−ジフルオロベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
(8)1H;
9−(2−ヨードベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール、
(9)1I;
9−(4−トリフルオロベンジル)−1,4−ジメチルカルバゾール、および
(10)1J;
9−(3−ブロモベンジル)−6−メトキシ−1,4−ジメチルカルバゾール。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の小胞体ストレス由来細胞死または酸化ストレス由来細胞死の抑制剤を含有する、小胞体ストレスまたは酸化ストレス関連疾患の予防または治療剤。
【請求項6】
前記小胞体ストレスまたは酸化ストレス関連疾患が、糖尿病、糖尿病合併症、神経変性疾患、躁鬱病、緑内障、胃潰瘍、脂肪肝、ウイルス性肝炎、慢性糸球体腎炎、腎不全、またはアレルギー性疾患である、請求項5に記載の小胞体ストレスまたは酸化ストレス関連疾患の予防または治療剤。
【請求項7】
9−(4−トリフルオロベンジル)−1,4−ジメチルカルバゾール、またはその薬学的に許容される塩。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図4】
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【図5c】
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【公開番号】特開2008−239538(P2008−239538A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81200(P2007−81200)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000006138)明治乳業株式会社 (265)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】