説明

少なくとも一つの変形可能な膜マイクロポンプの製造方法及び変形可能な膜マイクロポンプ

本発明は、互いに取り付けられる第1の基板(10)及び第2の基板(20)を備えている少なくとも一つの変形可能な膜マイクロポンプの製造方法に関連しており、前記第1の基板(10)は少なくとも一つのキャビティ(12−2)を備えており、及び前記第2の基板(20)は前記キャビティ(12−2)に面して配置された少なくとも一つの変形可能な膜(22−2)を備えている。前記方法は、前記第1の基板(10)内に前記キャビティ(12−2)を作るステップと、前記第1の基板(10)と前記第2の基板(20)とを取り付けるステップと、前記第2の基板(20)内に前記変形可能な膜(22−2)を作るステップと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、マイクロ流体の一般的分野に関連しており、及び少なくとも一つの変形可能な膜マイクロポンプの製造方法、及び変形可能な膜マイクロポンプに関連している。
【背景技術】
【0002】
マイクロポンプはマイクロチャネル内の流体の制御された流れを提供する。それらは、例えば、ラボオンチップ、医療物質注入システム、または流体冷却回路の電子チップのような数多くの微小流体システムにおいて利用されることができる。
【0003】
流体流動は、機械的作用が対象の流体に実行されるかどうかに依存して、異なる方法で得られうる。様々な技術の概説が非特許文献1の記事において見出されることができる。
【0004】
変形可能な膜マイクロポンプは、マイクロチャネルにおいて流体を排出させるように、機械的作用が膜を通して流体に適用されるような、マイクロポンプの第1のカテゴリーに属している。
【0005】
特許文献1は、一つの中心のポンプ膜と二つの上流及び下流の二次膜を含む三つの変形可能な膜を備えているマイクロポンプの例を説明している。
【0006】
図1に図示されるように、マイクロポンプ1は、マイクロチャネルを形成するように共に取り付けられた第1の基板10と第2の基板20とを備えている。
【0007】
前記第1の基板10は、前記基板の上面11Sに形成された三つのキャビティ12−1、12−2、12−3を備えており、一連に接続されている。
【0008】
前記第2の基板20は、前記キャビティに面して配置された三つの変形可能な膜22−1、22−2、22−3を備えている。前記第2の基板20が単一片から形成されており、それ故前記変形可能な膜は前記基板の一部であり、追加された部分ではないことに注意すべきである。
【0009】
前記中心の膜22−2及び対応するキャビティ12−2は、前記マイクロポンプ1のポンプチャンバを共に定義している。前記上流22−1及び下流22−3は、対応するキャビティ12−1及び12−3と共に、アクティブバルブを形成している。
【0010】
前記膜の変形は、前記膜の上面21S上に配置された圧電性チップ31を用いて得られる。
【0011】
マイクロポンプのマイクロチャネル内の対象の流体の流動は、前記上流及び下流バルブの作用と連動して、ポンプチャンバの体積を増大または減少させる膜の制御された変形により得られる。
【0012】
そのようなマイクロポンプを製造する方法は、キャビティと膜を製造する段階と、続いて、前記基板を取り付ける段階と、を備えている。
【0013】
前記キャビティ及び膜はそれぞれ、従来のマイクロ電子技術、例えばフォトリソグラフィとそれに続く複数のエッチング段階を用いて、第1及び第2の基板内に最初に製造される。前記第2の基板の膜は、一般的に、数十ミクロンの範囲で厚さを有していることに注意すべきである。
【0014】
第1及び第2の基板がシリコンで作られるとき、シリコン直接接合(SDB)として参照されている分子結合によって共に取り付けられうる。
【0015】
当業者に周知のこの取り付け技術は、非特許文献2において特に説明されている。
【0016】
事前の基板面洗浄の段階と、続いて基板の整列と互いに接触させる段階と、を備えている。それから、全体が1000℃の範囲にある高温に、数分から数時間の間さらされる。
【0017】
しかしながら、この製造方法は、特に第2の基板に関して欠点をもたらす。
【0018】
実際、取り付けの段階の前及び間、特に、直接接合の場合においては洗浄段階の間の前記第2の基板の処理は、第2の基板、特に、薄さに起因した膜に高い機械的ストレスが生じる。それ故、膜劣化(破断、破裂など)の危険は高い。
【0019】
それ故、これらの危険を抑えるために、前記第2の基板は、エンボス加工された形状を有するようにエッチングされた。図1に示すように、膜22−1、22−2、22−3は第2の基板の上面21Sに作製されたリセスによって形成されている。このようにして、非エッチング部分は、前記膜を互いに分離する厚い部分、またはリブ25を形成し、及びその厚さ及び配列に起因して、基板の要求される剛性を提供している。
【0020】
しかしながら、第2の基板の上面内のリブの存在は、スピナーで感光性樹脂を堆積させることができないので、後続のフォトリソグラフィステップの達成を妨げる。
【0021】
さらに、第2の基板の上面上への後続の誘電体または金属層の堆積の間、リブの存在により誘起された顕著な高さの変動に起因する、連続性の問題が生じる。
【0022】
最後に、前記方法が、第1及び第2の基板を形成するプレートを用いて複数のマイクロポンプを同時作製することに関連しているとき、これらの様々な欠点は特に顕著となる。実際、これらのプレートは、厚さについて百ミリメートルの範囲の直径を有しており、第2の基板を形成するウェーハに関しては、膜上で数十マイクロメートルの範囲である。このアスペクト比は、取り付けの前及び間での処理の間、第2の基板を形成するウェーハを特に脆弱にさせることが理解できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0123420号明細書
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】“MEMS−Micropumps: A Review” Nguyen et al., J.Fluid.Eng., Vol.124, 384−392
【非特許文献2】“An introduction to microelectromechanical system engineering” Maluf and Williams, Artech House, 2004
【非特許文献3】“Grinding of silicon wafers: A review from historical perspectives” Pei et al., Int.J.Mach.Tool.Manu.,48(2008), 1297−1307
【非特許文献4】“A novel artificial sphincter prosthesis driven by a four−membrane silicon micropump”, Doll et al., Sensor.Actuat.A−phys., 2007, vol.139、 203−209
【非特許文献5】“Design of a polysilicon−on−insulator pressure sensor with original polysilicon layer for Harsh environment” Malhaire and Barbier, 2003, Thin Solid Film, 427, 362−366
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、基板を取り付けるステップの間及び前に、基板、特に変形可能な膜を備えるための基板の劣化の危険を制限するために、共に取り付けられる二つの基板を備えている少なくとも一つの変形可能な膜マイクロポンプを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この目的のために、本発明は、共に取り付けられる第1の基板及び第2の基板を備えている少なくとも一つの変形可能な膜マイクロポンプを製造する方法に関連しており、前記第1の基板は、少なくとも一つのキャビティを備えており、前記第2の基板は、前記キャビティに面して配置された少なくとも一つの変形可能な膜を備えており、前記第1及び第2の基板は、前記キャビティ及び前記変形可能な膜が位置するところで共にマイクロチャネルの一部を画定しており、
前記方法は、
−前記第1の基板内に前記キャビティを形成するステップと、
−前記第2の基板内に前記変形可能な膜を形成するステップと、
−前記第1の基板と前記第2の基板とを取り付けるステップと、
を備えている。
【0027】
本発明によると、前記変形可能な膜を形成するためのステップは、前記取り付けのステップの後に実施される。
【0028】
両基板は、前記変形可能な膜を形成するステップの前に共に取り付けられる。前記第2の基板は、前記取り付けのステップの前及び間に、変形可能な膜を備えておらず、これによって局所的に脆弱な区間を備えていない。
【0029】
それ故、前記取り付けのステップの前及び間に、処理の間に生じた過度の機械的ストレスに起因して、一般的に基板、特に第2の基板の劣化(破損、破裂、割裂など)の危険は、上で説明した従来技術による方法に存在する危険に関連して実質的に減少する。
【0030】
さらに、利用する取り付けの技術の選択はもはや限定されていない。従来技術とは違って、操作条件、特に圧力及び温度に関する操作条件が基板に高い機械的及び熱的ストレスを負わせるものから取り付けの技術を選択することが可能である。取り付けのステップの間の変形可能な膜の欠如に起因して、第2の基板の劣化の危険が実質的に減少するか、無視できる。
【0031】
前記第2の基板は上部面及び下部面を備えており、前記基板は下部面上で前記第1の基板に取り付けられている。有利的に、前記変形可能な膜を製造するためのステップは、前記上部面から前記第2の基板を薄化することにより実施され、前記薄化は、機械的研磨、化学機械的研磨、及び/またはエッチングにより実施されている。
【0032】
好ましくは、前記変形可能な膜を備えている前記第2の基板は、単一片から作られる。それ故、変形可能な膜は、第2の基板に堅く接続された追加の要素ではなく、前記第2の基板の構造部分である。
【0033】
前記取り付けのステップは、分子結合、陽極、共晶結合、または接着により実施されうる。好ましくは、前記取り付けのステップは、分子結合によって実施される。この技術は、時としてシリコン直接結合(SDB)として参照されている。
【0034】
好ましくは、第1の基板は第1のキャビティに連絡している管を備えており、第1の基板の少なくとも一部をエッチングすることによる後続の薄化のステップは、前記管が貫通管を提供するように、下部面からなされる。
【0035】
前記取り付けのステップは、有利的に、真空下で実施される。この方法において、マイクロチャネル部が第2の基板によって密閉された閉じた容積を形成する場合、前記容積内に存在するガスの熱膨張が生じる危険もなく、高温を印加することが可能である。この膨張は、特に取り付けを弱める高い機械的ストレスを前記基板内に生じさせる。
【0036】
有利的に、前記変形可能な膜を製造するためのステップを受けて、第2の基板は、全体の表面で実質的に平坦な上部面を有している。
【0037】
それ故、従来技術と違って、平面上で従来的に実施されるミクロ電子工学法は、第2の基板の上部面上で実施されうる。これらの方法は、後続のスピナーによる堆積、特に感光性樹脂の堆積、フォトリソグラフィ、及びエッチングのステップを備えうる。
【0038】
複数のマイクロポンプは、前記第1及び第2の基板から実質的にに作られることができ、前記第1及び第2の基板は、それぞれ単一片から形成される。
【0039】
前記製造方法は、前に作られたマイクロポンプを互いに分離する最終のステップを備えている。
【0040】
本発明は同様に、共に取り付けられる第1の基板及び第2の基板を備えている変形可能な膜マイクロポンプに関連しており、前記第1の基板は、少なくとも一つのキャビティを備えており、前記第2の基板は、前記キャビティに面して配置された少なくとも一つの変形可能な膜を備えており、前記第1及び第2の基板は、前記キャビティ及び前記変形可能な膜が位置するところで共にマイクロチャネルの一部を画定している。
【0041】
本発明によると、前記第2の基板は、前記マイクロチャネル部に沿って、実質的に一定の厚さを有している。
【0042】
実質的に一定の厚さとの用語は、問題になっている区間において、最大値の10%以下、及び好ましくは、5%、または1%以下の局所的変化を示す傾向にある値の厚さを参照している。
【0043】
前記第2の基板は、上部面及び下部面を備えており、前記基板は下部面上で前記第1の基板に取り付けられている。
【0044】
有利的に、第2の基板は、全体の表面上で実質的に平坦な上部面を有している。
【0045】
前記変形可能な膜は、300μm以下、及び好ましくは100μmより小さく、または50μmより小さい厚さを有しうる。
【0046】
前記第1及び第2の基板は、好ましくはシリコーン、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、またはガラスで作られる。好ましくは、前記第1の基板は、シリコンで作られ、第2の基板は、SOIで作られる。
【0047】
前記第1の基板は、変形可能な膜に面して前記キャビティ内に配置された、前記膜から受台を形成する少なくとも一つの突起を備えうる。このように、膜の製造の間に、利用する技術に起因して、第2の基板は、第1の基板に向かってたわみを引き起こす歪みを受けうる。突起の存在は、第2の基板に対する受台の形成により、たわみを制限することを可能にしている。このようにして、たわみに関連する機械的ストレスは同様に制限される。
【0048】
有利的に、第1の基板は第2のキャビティを備えており、及び第2の基板は前記第2のキャビティに面して配置された第2の変形可能な膜を備えており、前記第2のキャビティ及び前記第2の変形可能な膜は、前記マイクロチャネル部内部に位置されており、前記第1の基板は、前記第2のキャビティ内部で突出しているリップによって画定された開口を経て、前記第2の変形可能な膜と平行にある前記第2のキャビティ内部を開口している管を備えている。
【0049】
リップとの用語は、突出した硬いリブを参照している。
【0050】
好ましくは、前記リップ及び前記第2の変形可能な膜は、相互に関連して、0.01μmから3μmのギャップ備えている。好ましくは、前記ギャップは0.01μmから3μmである。
【0051】
このようにして、高温が印加される取り付け技術の場合において、基板のどちらかの熱変形の危険がない。第1の基板の特定の区間と第2の基板の特定の区間との間に特定の小さなギャップを作ることが可能である。
【0052】
有利的には、ストレスの加えられた層が変形可能な膜に面して前記第2の基板の上部面に配置されており、それにより前記膜がアイドル位置で変形している。
【0053】
有利的には、前記膜の変形を測定するために、変形可能な膜に面して前記第2の基板の上部面上に、歪みゲージが配置されている。
【0054】
本発明のさらなる利点及び特徴は、以下の非限定的な詳細な説明において明らかとなる。
【0055】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して、非限定的な例としてここで説明される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】上で説明された図1は、従来技術の例による変形可能な膜マイクロポンプの断面図である。
【図2A】図2Aは、本発明による製造方法の様々な段階が示された変形可能な膜マイクロポンプの断面図である。
【図2B】図2Bは、本発明による製造方法の様々な段階が示された変形可能な膜マイクロポンプの断面図である。
【図2C】図2Cは、本発明による製造方法の様々な段階が示された変形可能な膜マイクロポンプの断面図である。
【図2D】図2Dは、本発明による製造方法の様々な段階が示された変形可能な膜マイクロポンプの断面図である。
【図2E】図2Eは、本発明による製造方法の様々な段階が示された変形可能な膜マイクロポンプの断面図である。
【図3】図3は、キャビティを形成するためのステップの後であって、取り付けのステップより前の第1の基板の上面図である。
【図4】図4は、入口管及び出口管が、上流キャビティ及び下流キャビティの外側に部分的に配置されているところの、本発明によるマイクロポンプの別の実施形態の長手方向断面図である。
【図5】図5は、図4で示された第1の基板の上面図である。
【図6】図6は、本発明によるマイクロポンプの別の実施形態の縦断面図であり、圧力を加えられた層が第2の基板の膜に配置されている。
【図7】図7は、変形可能な膜センサーを備えている本発明によるマイクロポンプの別の実施形態の上面図である。
【図8】図7に示されたセンサーの出力信号の展開を示している。
【発明を実施するための形態】
【0057】
ここで説明される製造方法は、三つの変形可能な膜を備えているマイクロポンプに適用されるが、同様に、変形可能な膜マイクロポンプ、例えば、少なくとも一つの膜、及び前記膜の上流及び下流に配置されたチェックバルブまたは集束パイプを備えているようなマイクロポンプの如何なるタイプに適用されてもよい。前記方法は、本発明によるn個の膜を備えているマイクロポンプに適用されてもよく、nは1以上であり、好ましくは3に等しい。nが1に等しいとき、前記方法は、アクティブバルブの作製を導き、膜は入口管及び出口管の間に配置される。
【0058】
さらに、前記方法は、単一のマイクロポンプの製造を参照することで説明されるが、複数のマイクロポンプの同時製造に適用されてもよい。
【0059】
図2Aから2Eは、好ましい実施形態による製造方法の様々なステップに対する変形可能な膜マイクロポンプの断面図を図示している。
【0060】
図の明確性のため、尺度は守られていないことに注意すべきである。
【0061】
以下の説明を通して、図2で示された正規直交座標()が利用される。
【0062】
さらに、以下で使用される用語「下部」及び「上部」は、この場合、図2Aで示された正規直行座標()の方向に沿った方向の用語として理解される。
【0063】
用語「厚さ」、「高さ」、及び「深さ」は、前記正規直行座標()の方向に沿った距離の用語として理解される。
【0064】
例えば両面研磨シリコンウェーハから形成された第1の基板10が考慮される。
【0065】
例えばシリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウェーハから形成された第2の基板が考慮される。このようにして、SiOの層23−2は、二つの上部シリコン層23−1及び下部シリコン層23−3の間に存在している。
【0066】
第1及び第2の基板の厚さは、数百マイクロメートル、例えば700μmの範囲である。
【0067】
第1及び第2の基板の直径及び対角は、数ミリメートルから数十センチメートル、例えば、10、15、20、または30cmの範囲であってもよい。複数のマイクロポンプの同時製造の場合、基板は、数十センチメートルの範囲の直径及び対角を有しうる。前記製造方法に従って得られたマイクロポンプは、例えば寸法1cm×3cmの長方形を形成しうる。
【0068】
前記第2の基板20の下部シリコン層23−3の厚さは、後続して作られる前記変形可能な膜の厚さに実質的に等しい。この厚さは、数十から数百マイクロメートルの範囲であり、例えば、10μmから300μm、及び好ましくは、100μmより小さく、または50μmより小さくてもよい。以下に詳述するように、前記第2の基板の下部層23−3は、正確に作られる変形可能な膜の厚さを画定することを可能にしている。
【0069】
方法の第1のステップによると、複数のキャビティ12−1、12−2、12−3は、前記第1の基板10の上面11S内に、連絡管13に沿って作られる。
【0070】
キャビティとの用語は、固体表面内に作られたリセスまたはノッチを参照している。
【0071】
三つのキャビティ12−1、12−2、12−3がこのようにして得られ、一つの中心キャビティ12−2と二つの上流キャビティ12−1及び下流キャビティ12−3は、連絡管13を経て一連に連結されている。前記中心キャビティ12−2は、ポンプチャンバを形成することを助け、二つの上流キャビティ12−1及び下流キャビティ12−3は、アクティブバルブを形成することを助ける。
【0072】
前記キャビティ12−1、12−2、12−3は、円盤、リング、多角形、または同様な種類の任意の他の形状の形を有しており、数ミリメートル、例えば3mmまたは6mmの直径または対角、及び数マイクロメートルから数百マイクロメートルの範囲、例えば50μmから100μmの深さを有している。実際、膜によって排出された流体の体積と、膜に面して位置されたキャビティの体積との間の比に対応する圧縮率が決定されうる。この圧縮率を出来る限り高くすることが好ましい。加えて、キャビティの深さは、好ましくは100μm以下である。
【0073】
入口管14及び出口管15が、上流キャビティ12−1及び下流キャビティ12−3の内部に、井戸型開口の形態で、しかし、好ましくは前記第1の基板10に対して完全に貫通しないで作られる。それらは前記キャビティの中心に位置している。それらは数百マイクロメートルの範囲、例えば600μmの直径、及び数百マイクロメートルの範囲、例えば300μmの深さを有している。
【0074】
前記入口管14及び出口管は、環状リップ16によって、縁のある穴を経て前記キャビティ内に開いている。前記リップ16は、それらが位置しているキャビティの深さに実質的に等しい高さを有しうる。
【0075】
この場合、対応するリップ16に面することを目的として、前記基板20の下部面21I内にアンダーカット24−1、24−3が作られる。前記アンダーカットは、環状であるか、または円環形状を有しており、浅く、数マイクロメートルの範囲、例えば、2μm、または10分の数マイクロメートル、例えば、0.1μmである。
【0076】
アンダーカットとの用語は、数十マイクロメートルの範囲、例えば50または100μmのキャビティに面している、一般的に0.1μmから3μmの間の浅いリセスまたはノッチを参照している。前記第2の基板20の下部面21Iは、実質的に平面であると考慮されることができる。この例において、「実質的に」との用語は、数マイクロメートル、例えば3μmを超えない前記基板の厚さの変動を参照している。
【0077】
これらのアンダーカット24−1、24−3は、後続の基板取り付けのステップの間に、前記リップ16の上部が、前記第2の基板の下部面21Iに触れないことを確保することを可能にしている。さらに、これらのアンダーカット24−1、24−3は同様に、膜が機械的ストレスを受けない場合、入口管14及び出口管15と、それらが開口しているキャビティ12−1、12−3との間に流体連絡を提供する。
【0078】
さらに、前記第1の基板10の上面11S内に突起17が作られ、及び前記中心キャビティ12−2の中心に実質的に位置されることができる。前記第2の基板20の下部面21Iと前記突起17の上部の間の接触を避けるために、アンダーカット24−2が前記下部面21I内に有利的に作られる。
【0079】
前記第1の基板10内に前記キャビティ12−1、12−2、12−3、連絡管13及び入口管14及び出口管15、及び第2の基板20内にアンダーカット24−1、24−2、24−3の作製が、従来のミクロ電子工学技術、例えば、いくらかのエッチングステップが続くフォトリソグラフィを用いて実行されうる。エッチングはRIE(反応性イオンエッチング)を利用して実行され、垂直な壁を得ることを可能にさせている。「垂直な」との用語は、位置()のベクトルに沿って配向されることを意味している。
【0080】
別の実施形態において、第2の基板20の下部面21I内でアンダーカットを作製しないで平面を維持することが可能である。前記リップ16の高さは、それらが位置している前記上流キャビティ12−1と前記下流キャビティ12−3の深さより小さい。後続の基板取り付けのステップの間に、前記リップ16の上部は、前記第2の基板の下部面21Iに接触しない。さらに、機械的ストレスを受けない膜の場合、入口管14及び出口管15と、それらが開いているキャビティ12−1、12−3との間の流体連通が同様に提供される。同様に、突起17を作ることが可能であり、その高さは、それが位置している中心キャビティ12−2の深さより小さい。
【0081】
方法の第二のステップにより、前記基板は共に取り付けられる。
【0082】
好ましい実施形態によれば、第1及び第2の基板10、20は、それぞれシリコン及びSOIから作られ、分子結合により取り付けを実施することが可能である。この種の結合は特に、Si−SiまたはSi−ガラスのタイプの取り付けに適している。この技術は、融合結合または直接結合として参照されている。
【0083】
この分子結合の取り付けのステップは、取り付けられる基板10、20の面を処理するための、より具体的には洗浄及び水和のための第1の段階を備えている。
【0084】
前記基板10、20はRCA洗浄のような、特に、非特許文献2において説明されている湿式処理により洗浄される。この洗浄技術は、高いOH基密度を有して、クリーンで汚染されていない表面を得ることを可能にしている。
【0085】
図2Bにおいて示されるように、前記基板は整列され、互いに接触される。
【0086】
最後に、高温結合のアニーリングが所定の時間で実施される。前記温度は、500℃と1250℃の間、例えば、1000℃の範囲であってもよく、アニーリングの時間は、1時間の範囲であってもよい。得られる基板アセンブリはこのように、抵抗性があり耐久性がある。
【0087】
両基板の取り付けは、接着、共晶接合、または陽極接合のような他の方法を利用して実施されうる。
【0088】
取り付けのステップの間に、前記第2の基板20は、変形可能な膜の製造のステップをまだ受けていない。第2の基板20の厚さは、その最初の厚さ、すなわち数百マイクロメートルに実質的に等しい。前記下部面21I内に任意的に作られたアンダーカット24−1、24−2、24−3は、前記第2の基板20の全体の厚さに関して無視できる厚さを有しており、及びこのようにして、基板20の全体の剛性は変わらない。それ故、取り付けのステップの前及び間の前記第2の基板20の処理は、破壊または破断に起因する劣化の低い危険を含んでいる。
【0089】
さらに、前記第1及び第2の基板10、20は、特に、結合が選択的に真空で実施される時に、前記結合の間に如何なる変形を無視させる十分な厚さを有している。前記第1の基板10のリップ16の上部と、前記第2の基板の下部面21Iとの間のギャップは、非常に小さくてもよく、例えば、上述したように1マイクロメートルまたは10分の1マイクロメートルである。それ故、前記基板のどちらかが熱変形を受けて、前記リップ16と、前記第2の基板20の下部面21Iとが互いに接触して、前記表面の結合が起こるような危険はない。同様の理由のため、前記突起17の上部と前記下部面21Iとの間のギャップは同様に、1マイクロメートルまたは10分の1マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0090】
前記アンダーカットの代わりに、またはそれとの組み合わせで、前記リップ16及び前記突起17の上部と、前記第2の基板の下部面21Iとの間で局所的に結合することを妨げる表面処理を実施することを可能にしている。第2の基板の下部面21I上であって前記リップ16及び突起17と面する表面上で好ましくは実施されるこの表面処理は、粗い表面状態を作るマイクロマシニング、低接着強度を有する疎水性材料の堆積、または化学表面処理、またはイオンプレーティングであってもよい。
【0091】
最後に、この取り付けのステップの間に、前記入口管14及び出口管15は、図2A及び図2Bにおいて見られるように貫通していなくてよい。この場合、前記取り付けのステップは、有利的には真空で実施される。周囲圧力は、例えば、数10−4mbarから数10−2mbarの間でありうる。これは、キャビティ12−1、12−2、12−3及び管13、14、15により形成された閉じた体積内に捕らえられるガスの熱膨張を避け、顕著な圧力上昇が、前記基板内部の過度な機械的ストレスを引き起こさないことを可能にしている。
【0092】
方法の第3のステップによると、変形可能な膜が最終的に第2の基板内に作られる。
【0093】
図2B及び2Cで示すように、この実施形態は、上部面21Sから表面全体にわたって第2の基板20を薄化することにより実施されうる。
【0094】
研削のような第1の機械的研磨段階が実施されうる。この技術は、非特許文献3に具体的に説明されている。
【0095】
前記研磨は、中間SiO層23−2上で、数マイクロメートルまたは数十マイクロメートルで止められてもよい。
【0096】
前記中間層23−2までの薄化は、周知の化学機械的研磨(CMP)によって得られうる。あるいは、またはこの技術との組み合わせで、RIEドライエッチング及び/またはKORまたはTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)によるウェットエッチングが実施されてもよい。ドライまたはウェットエッチングの場合、前記SiO層は、正確に形成されるべき膜の最終厚さを制御することを可能にするバリア層として機能する利点を提供している。
【0097】
最後に、前記第2の基板20の中間SiO層23−2は、RIE(反応性イオンエッチング)ドライエッチングまたはフッ化水素酸(HF)エッチングまたは周知の還元手段によりエッチングされうる。
【0098】
図2Cに図示されたように、前記第2の基板20は、実質的に平面な上部面21Sを備えており、及び初期SOIの下部層23−3を本来備えている。
【0099】
これは、上部面21Sが実質的に平面である第2の基板をもたらし、厚さは実質的に均質である。「実質的に」との用語は、第2の基板20の下部面21I上に作られるアンダーカット24−1、24−2、24−3から0.1μmから3μmの範囲で、厚さのいかなる変動を占めている。
【0100】
この実施形態によると、第2の基板20は、変形可能な膜を形成するための幾何学的に画定された区間を有していない。数十から数百マイクロメートルの範囲、例えば10μmから300μm、及び好ましくは50μm、の厚さに起因して、第2の基板における任意の区間は、それが下部基板内に作られたキャビティと面して位置されるとき、変形可能な膜を形成する傾向がある。それにもかかわらず、第2の基板20の前記キャビティ12−1、12−2、12−3に面して位置された区間は、変形可能な膜22−1、22−2、22−3を形成することを目的としている。
【0101】
キャビティが真空内で閉じた体積をさらに形成している間、薄化のステップが周囲圧力で実施されてもよいことに注目すべきである。圧力が第2の基板20の上部面21S上に印加され、キャビティ12−1、12−2、12−3の内部に湾曲をもたらす傾向がある。有利的に、中心キャビティ12−2内に配置された突起17は、第2の基板20に対して受台を形成し、及びこのようにして曲げ偏向に制限を適用する。上流キャビティ12−1及び下流キャビティ12−3内に位置されたリップ16は同様に、第2の基板20に対して受台を形成し、及び同様に、第2の基板の最大可能屈曲を制限することを支援する。
【0102】
さらに、変形可能な膜マイクロポンプの作製を終えるための後続のステップが実施されうる。
【0103】
第2の基板20の上部面21S内に突出したリブがないことに起因して、堆積、感光性樹脂によるフォトリソグラフィ、及びエッチングよりなるステップのような、従来のマイクロ製造を、この面で実施することが可能である。
【0104】
図2Dで示されたように、導電レベルが第2の基板20の上部面21S上に作られうる。この導電レベルは、金属層、例えば、金、アルミニウム、チタン、プラチナ、合金(例えばAlSi)などの堆積により作られる。クリーンルーム内で利用可能ないかなる種類の従来の材料堆積が適しうる。
【0105】
誘電性パッシベイション層(図示せず)がマイクロポンプの面上に堆積されうる。材料は、数ナノメートルの厚さを有するSiO、SiN、Siでありうる。この層は、前記導電層の保護と部分的な隔離を提供する。
【0106】
前記導電層及び前記パッシベイション層は、導電性トラック及び変形可能な活性化手段の電源供給区間を形成するために部分的にエッチングされる。
【0107】
膜の作動手段は、圧電性チップであってもよい。層は、外部システムでマイクロポンプの電力供給を提供するための接点ブロック32と、該接点ブロックを導電性ディスクに接続させるための導電性トラック及び圧電性チップを受けるための導電性ディスク33、を形成するためにエッチングされる。
【0108】
前記導電性ディスク33は、圧電性チップの直径と実質的に等しい直径を有している。この直径は、ディスクが配置されて面しているキャビティの直径の0.5から0.85倍の範囲でありうる。
【0109】
図2Eで示されるように、チップ31は、第2の基板20の上部面21S上に作られ、及び変形可能な膜22−1、22−2、22−3上に配置される。それらは、導電性ディスク33上に置かれており、及び導電性接着剤を利用してそれと共に取り付けられている。圧電性チップの厚さは、百マイクロメートルの範囲、例えば、125マイクロメートルから200マイクロメートルであってもよい。利用に適した圧電性材料の概略は、非特許文献4において見つけられる。
【0110】
代わりに、前記チップは、化学気相堆積(CVD)またはソル−ゲル堆積の後に得られうる。この場合、前記チップの厚さは、1マイクロメートルまたは数マイクロメートルより小さくてもよい。
【0111】
最後に、電気ワイヤ34が圧電性チップの上面に溶接され、導電性トラックに接続される。電圧が各々の圧電性チップに独立に印加されうる。圧電性チップの変形は、対応する変形可能な膜の変形を引き起こす。前記圧電性チップは、前記膜を変形させる膜作動手段として利用されうる。それらは、膜移動、または、変形により誘発された位置を測定するためのセンサーとして利用されうることに注目すべきである。
【0112】
本発明による方法の好ましい実施形態において、入口管14及び出口管15は完全に貫通していない。前記管の貫通を提供するために、任意的にフォトリソグラフィを伴うエッチングステップが、第1の基板10の下部面11I上で実施される。入口管14及び出口管15、キャビティ12−1、12−2、12−3、及び連絡管13から形成されたマイクロポンプのマイクロチャネルはそれから開口し、外部環境と繋がる。
【0113】
このステップは、前記製造方法に続いて有利的に実施される。これは、あらゆる種類の残留物または不純物により、前記マイクロポンプのマイクロチャネル内部が汚染することを防ぐことを可能にしている。上流及び下流バルブの閉塞または質の悪い操作の危険がこのようにして除外される。
【0114】
最終的に、複数のマイクロポンプが第1の基板を形成するウェーハ及び第2の基板を形成する第2のウェーハから同時に作られる場合、ウェーハは、作られたマイクロポンプを分離するために切断される。
【0115】
図4及び5は、マイクロポンプの代わりの実施形態を図示しており、入口管及び出口管が上流キャビティ及び下流キャビティの外側に位置されている。
【0116】
同一の参照番号は、図2Aから2Eにおいて参照されたものと同一の、または類似の要素を参照している。
【0117】
この場合、入口管14及び出口管15は、上流キャビティ12−1及び下流キャビティ12−3に実質的に隣接して配置されており、及び連絡管13を経て連絡している。
【0118】
図4によると、出口管は第2の基板の内部に延在しているのに対して、入口管は第1の基板の内部に延在している。この配置は、単にここで例として与えられている。入口管を第2の基板内に、及び出口管を第1の基板内に配置すること、または前記両管を第2の基板内に配置することが可能である。
【0119】
図5に示されたように、アクティブバルブとして作用するように、各々のリップは、対応するキャビティ12−1、12−3の内部に延在し、及び前記第1の基板10内に形成された真っ直ぐな(または湾曲した)リブ18により置き換えられてもよい。対応する膜22−1、22−3は、リブと膜との間の対象の流体の如何なる流れを防ぐために、リブ18と接触しうる。
【0120】
上で述べた好ましい実施形態の代わりの実施形態において、導電層の堆積の前に、ストレスの与えられた層が、作られる膜のどちらかの上面上に直接堆積されうる。このストレスの与えられた層は、問題となっている膜にストレスを印加し、変形を生じさせる。例えば、このストレスの与えられた層は、上流膜及び下流膜上に堆積され、及び膜の反対のリップとの接触を生じさせる。それ故、圧電性チップの場合、膜が作動手段によって作動されないとき、膜はアイドル位置に変形される。それらは、アイドル状態のとき閉ざされている上流及び下流バルブを形成する。
【0121】
このストレスの与えられた層は、数百メガパスカルの範囲、例えば、700MPaで内部の引張応力を有して、PECVDにより堆積された、例えば、Siであってもよい。厚さは、0.1μmから1μmの範囲でありうる。図6に図示されたように、ストレスの与えられた層35により誘導された膜22−1の偏向は、数マイクロメートルであり、及び膜と対向するリップ16との接触を誘発するのに十分である。
【0122】
代わりの実施形態において、歪みゲージが第2の基板の上部面上に作られ、変形可能な膜の上に配置されてもよい。これらのゲージは、膜の変形を測定し、それに関する位置(高い、低い、または中間の位置)を決定し、マイクロポンプのマイクロチャネル内の局所の圧力を測定するために利用される。例えば、上流キャビティと下流キャビティの間の圧力の差を測定し、及びそのようにして流体の流量を測定し、漏れを検出することが可能である。
【0123】
前記歪みゲージは、高いゲージ係数を有する導電材料、例えば白金のような金属、または好ましくは、ボロンイオンの注入により得られたpドープシリコンのような半導体材料から作られうる。ボロンイオンの注入は、Si膜上で直接実施されうる。
【0124】
対向する測定方向を有する四つのゲージで、ホイートストン・ブリッジを製造することが可能である。そのようなブリッジは、非特許文献5において具体的に説明されている。
【0125】
集積センサー100の例は、図6で説明されたものと類似の、ポンプの上部面図に対応している図7で与えられる。センサー100及び電気素子32は、少なくとも一つの電気的レベル、一般的に、図2Dを参照して上で説明されたような金属層によって形成される。金属ディスク33、ブロック32、及び様々な電線、及びセンサー100は、同一の金属材料で形成され、及び堆積、フォトリソグラフィ、エッチングのような単一のステップにより成形される。複数の電気レベルを集積しているより多くの複雑な実施形態が同様に構想されてもよい。例えば、ドープシリコンの圧電性抵抗器が構想されてもよい。
【0126】
図7の例において、材料は100nmから500nmの金層であり、標準のマイクロテクノロジー法によって堆積される。前記センサーは、同一の形状を有する四つのピエゾ抵抗器を有するホイートストン・ブリッジから形成される。例えば、抵抗器101は数マイクロメートル幅(3から10μm)及びおおよそ1mm長さのコイルから形成される。ブロック32に接続されたライン102はブリッジに電力を供給し、及び測定をするために利用される。抵抗器103の一つは、膜22−3に面して位置される。好ましくは、前記抵抗器103は、膜が変形するときにストレス及び最大変形区域に位置するように、膜22−3の埋め込みに位置されている。三つの別のホイートストン・ブリッジの抵抗器は、膜変形の状態に関わらず、一定の抵抗値を保持するように、膜の外側に位置されている。膜22−3は、膜の二つの面の間の圧力差の作用の下、及び/または圧電性チップの作用の効果の下で変形される。これらの変形は、ピエゾ抵抗効果に起因して、抵抗器103の値に変化を生じさせる。この抵抗器の変化は、(当業者に周知である)ホイートストン・ブリッジ上で電気計測によって正確に測定される。例えば、前記ブリッジは、1Vの電圧Vinで起動され、及び電圧Voutが図7及び8において示されたように測定される。
【0127】
例の結果が図8で与えられる。曲線は、電圧測定Voutの進行を与えている。この電圧測定の値の変化は、ブリッジの不均衡からもたらされ、直接膜変形(位置)と関連付けられている。より具体的に、膜22−3上に設置された前記圧電性チップは、方形波形態の電気信号により作動される。図8において、オン−オフ表示は、圧電性チップが作動しているかアイドル状態かの範囲をそれぞれ指定している。動作サイクルがセンサーの測定曲線に明確に見られることが検証されている。膜状態の変化は、このようにして電気的手段を用いて容易に検証され、視覚化され、定量化されることができる。センサーはこのようにして、ポンプ作動の間に膜の満足のいくふるまいを検証することを可能にしている。また、膜変形の大きさを決定することも可能である(変形の大きさは、圧電性チップに印加された電圧に実質的に比例している)。
【0128】
次に(図8のAを参照)、100mbarの圧力がポンプ出口に印加される。この圧力(Pout)は、0から100mbarへ突然変化する。この変化は、図8で記録されたセンサー信号に明確に見られる。これは、センサーがポンプの満足のいく作動を検証するために、しかし同様にポンプ出口の圧力を測定するために利用されることができることを実証している。センサーは、ポンプから下流への流体流路の遮断を検出するために、またはより一般的に、ポンプ出口でシステムの水圧インピーダンスを測定するために利用される。明らかに、同様のセンサーが二つの他の膜22−1、22−2上に位置されうる。ポンプ入口での膜上の一つのセンサーで、圧力測定がポンプから上流でなされてもよい。
【0129】
センサーの製造は比較的微細な解像度を必要とする(例えば1から10μmの製図)。さらに、センサーは、膜の明確に画定された区間に正確に位置されるべきである。ポンプの上面が従来技術のようにエンボス加工されている場合(図1)、そのようなセンサーの製造は可能でない。フォトリソグラフィによってこれらのセンサーを製造するために、ポンプの上面が平面であることが必須である。これは、本願発明の利点を実証し、本発明により製造されたポンプにMEMS技術の利用の付加価値を示している。
【0130】
上で説明した好ましい実施形態の別の実施形態において、受台を形成する複数の突起が、上流及び/または下流の中心キャビティ内に、または連絡管内に製造され及び配置されうる。上で説明したように、これらの突起は、第2の基板の薄化ステップの間に対応するキャビティでの生産の間に膜の変形を制限する。それらは、より一般的に、マイクロポンプ構造を強めることを助けうる。
【0131】
突起の高さは、対応するキャビティの深さに等しくてもよく、その場合、アンダーカットが第2の基板の下部面内に作られ、及びそれぞれの突起に面して配置される。あるいは、突起の高さは、1マイクロメートルまたは数十マイクロメートルの範囲の差と共に、対応するキャビティの深さより実質的に小さくてもよい。
【0132】
代わりの実施形態において、第1及び第2の基板はシリコンまたはガラスで作られうる。基板が、一つはシリコン(またはSOI)で作られ、もう一つはガラスで作られる場合、周知の陽極結合技術を利用して前記基板を共に取り付けるためのステップを実施することが可能である。
【0133】
さらに、キャビティ、膜、及び圧電性チップは、上で説明したような円形状を有しうる。それらは任意の他の形状、例えば、長方形、正方形、多角形を有しうる。
【0134】
中心の膜は、上流及び下流の膜に対して異なる大きさを有しうることに注意すべきである。対応するキャビティの大きさは、それに応じて適用される。このようにして、図のように、ポンプチャンバは、上流及び下流のチャンバが3mmの大きさを有しているのに対して、おおよそ6mmの大きさを有しうる。
【0135】
上で説明した方法とは別の実施形態において、第2の基板は、上面から、全体の面ではなく、前記基板の一部だけ薄化されうる。例えば、各々のマイクロポンプの第2の基板は、その縁部に配置されたリブを上面上に有してもよく、実質的に平坦な中心面を画定している。
【0136】
非限定的な例として単に上で説明した発明に対して、当業者によって様々な修正がなされうることは明らかである。
【0137】
上で説明した変形可能な膜マイクロポンプは、形成されたアクティブバルブを備えており、各々は変形可能な膜を備えている。しかしながら、本発明は、上流及び下流膜バルブに代わって、チェックバルブ及び収束管を備えうる。
【0138】
最後に、更なる種類の膜作動、例えば、周知の空気圧、磁気、または静電気の作動方法が実現可能である。
【符号の説明】
【0139】
10 基板
11I 下部面
12−1、12−2、12−3 キャビティ
13 連絡管
14 入口管
15 出口管
16 リップ
17 突起
18 リブ
20 基板
21I 下部面
22−1、22−2、22−3 膜
23−1 上部シリコン層
23−2 中間層
23−3 下部シリコン層
24−1、24−2 アンダーカット
25 リブ
31 圧電性チップ
32 接点ブロック
33 導電性ディスク
34 電気ワイヤ
35 層
100 センサー
101 抵抗器
102 ライン
103 抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共に取り付けられる第1の基板及び第2の基板を備えている少なくとも一つの変形可能な膜マイクロポンプを製造する方法であって、前記第1の基板(10)は、少なくとも一つのキャビティ(12−2)を備えており、前記第2の基板(20)は、前記キャビティ(12−2)に面して配置された少なくとも一つの変形可能な膜(22−2)を備えており、前記第1及び第2の基板(10,20)は、前記キャビティ(12−2)及び前記変形可能な膜(22−2)が位置するところで共にマイクロチャネルの一部を画定しており、
前記方法は、
−前記第1の基板(10)内に前記キャビティ(12−2)を作るステップと、
−前記第2の基板(20)内に前記変形可能な膜(22−2)を作るステップと、
−前記第1の基板(10)と前記第2の基板(20)とを取り付けるステップと、
を備えており、前記変形可能な膜を作るためのステップは、前記取り付けのステップの後に実施されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2の基板(20)は、上部面(21S)と下部面(21I)を備えており、前記基板は、前記下部面(21I)上で前記第1の基板(10)に取り付けられており、前記変形可能な膜(22−2)を作るためのステップは、前記上部面(21S)から前記第2の基板(20)を薄化することにより実施され、前記薄化は、機械研磨、化学機械研磨、及び/またはエッチングにより実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記取り付けのステップは、分子結合、陽極、共晶結合、または接着により実施されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の基板(10)は、前記第1のキャビティ(12−2)と連絡している管(14;15)を備えており、前記第1の基板(10)の少なくとも一部をエッチングすることによる後続の薄化のステップは、前記管(14;15)に貫通管を提供するために、前記下部面(11I)から成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記取り付けのステップは、真空下で実施されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記変形可能な膜を作るためのステップの直後に、前記第2の基板(20)は実質的に平坦な上部面(21S)を全面に有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
後続の堆積、フォトリソグラフィ、及びエッチングのステップが前記第2の基板の前記上部面(21S)上で実施されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
互いに取り付けられる第1の基板(10)及び第2の基板(20)を備えている変形可能な膜マイクロポンプであって、前記第1の基板(10)は少なくとも一つのキャビティ(12−2)を備えており、及び前記第2の基板(20)は前記キャビティ(12−2)に面して配置された少なくとも一つの変形可能な膜(22−2)を備えており、前記第1及び第2の基板(10、20)は、前記キャビティ(12−2)及び前記変形可能な膜(22−2)が位置されるところで共にマイクロチャネルの一部を画定し、前記第2の基板(20)は、前記マイクロチャネル部に沿って実質的に一定の厚さを有していることを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項9】
前記第2の基板(20)は、上部面(21S)及び下部面(21I)を備えており、前記基板は前記下部面(21I)上で前記第1の基板(10)に取り付けられ、前記第2の基板(20)は実質的に平坦な上部面(21S)を全面に有していることを特徴とする請求項8に記載のマイクロポンプ。
【請求項10】
前記変形可能な膜(22−2)は、300μm以下の厚さを有していることを特徴とする請求項8または9に記載のマイクロポンプ。
【請求項11】
前記第1の基板(10)及び前記第2の基板(20)は、好ましくは、シリコーン、シリコン・オン・インシュレータ(SOI)、またはガラスで作られていることを特徴とする請求項8ないし10のいずれか一項に記載のマイクロポンプ。
【請求項12】
前記第1の基板(10)は、前記変形可能な膜(22−2)に面して前記キャビティ(12−2)内に配置され、前記膜に対して受台を形成する少なくとも一つの突起(17)を備えていることを特徴とする請求項8ないし11のいずれか一項に記載のマイクロポンプ。
【請求項13】
前記第1の基板(10)は第2のキャビティ(12−1;12−3)を備えており、及び前記第2の基板(20)は前記第2のキャビティ(12−1;12−3)に面して配置された第2の変形可能な膜(22−1;22−3)を備えており、前記第2のキャビティ(12−1;12−3)及び前記第2の変形可能な膜(22−1;22−3)は、前記マイクロチャネル部の内部に位置しており、前記第1の基板(10)は、前記第2のキャビティ(12−1;12−3)内で突出しているリップ(16)により画定された開口を経て、前記第2の変形可能な膜(22−1;22−3)と平行な前記第2のキャビティ(12−1;12−3)内部に開口している管(14;15)を備えていることを特徴とする請求項8ないし12に記載のマイクロポンプ。
【請求項14】
前記リップ(16)及び前記第2の変形可能な膜(22−1;22−3)は、相互に関連して、0.01μmから3μmのギャップを備えていることを特徴とする請求項13に記載のマイクロポンプ。
【請求項15】
前記第2の基板(20)は上部面(21S)及び下部面(21I)を備えており、前記基板は前記下部面(21I)上で前記第1の基板(10)に取り付けられ、ストレスが加えられた層(35)は、変形可能な膜(22−1;22−2;22−3)に面して前記第2の基板(20)の上部面に配置されており、前記膜がアイドル位置で変形していることを特徴とする請求項8ないし14のいずれか一項に記載の変形可能な膜マイクロポンプ。
【請求項16】
前記第2の基板(20)は上部面(21S)及び下部面(21I)を備えており、前記基板は前記下部面(21I)上で前記第1の基板に取り付けられ、前記膜の変形を測定できるように、変形可能な膜(22−1;22−2;22−3)に面して前記第2の基板(20)の前記上部面(21I)上に歪みゲージが配置されていることを特徴とする請求項8ないし15のいずれか一項に記載の変形可能な膜マイクロポンプ。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−510987(P2013−510987A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538349(P2012−538349)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067390
【国際公開番号】WO2011/058140
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】