説明

居眠り防止装置

【課題】運転者の居眠り状態を正確に検出できる、安価な居眠り防止装置の提供。
【解決手段】運転席ヘッドレストに横方向に沿って設けられた複数個の静電容量式センサと、該静電容量式センサからのそれぞれの出力信号を検出する検出回路と、該検出回路で検出した出力信号のモードを、予め記憶させておいた居眠りモードと比較して、運転者が居眠り状態かどうかを判定し、居眠り状態と判定した場合に警報出力を発するプログラムを有する演算装置とを有することを特徴とする居眠り防止装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の運転席に設置することによって、運転者の居眠り状態を検出して警報を発する居眠り防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の居眠り状態を検出するための手法として、例えば、特許文献1,2に開示された技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、車両上ドライバを撮影する2次元撮像手段;警報手段;前記2次元撮像手段が撮影した画像上の、眼像を検出する像検出手段;前記2次元撮像手段が繰返し撮影する画面上における眼像の位置を追跡する追跡手段;前記2次元撮像手段が繰返し撮影した、時間的に前後する異なった画面上の、前記追跡手段が追跡した位置を中心とする所定領域の画像情報の相違度を算出し該相違度より瞬きの有無を判定する瞬き判定手段;および、瞬き判定手段の瞬き無し判定が所定時間の間継続すると前記警報手段を付勢する警報制御手段;を備える居眠り運転警報装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、車両運転中の運転者または車両の挙動から居眠り運転を検出する居眠り検出装置と、前記車両の窓ガラスを電動で開閉する窓ガラス開閉装置と、前記居眠り検出装置が運転者の居眠りを検知したとき前記窓ガラス開閉装置を開操作すべく制御信号を前記窓ガラス開閉装置に送出して窓ガラスを開ける制御装置と、を具備したことを特徴とする居眠り運転防止装置が開示されている。
【特許文献1】特開平6−270710号公報
【特許文献2】特開2002−114054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した従来技術のように画像情報に基づいた居眠り検出の手法は、画像認識を実施するために、カメラ、画像演算用計算機など高価な装置が必要であるため、装置が高価なものになってしまう問題がある。
また、画像から居眠り状態を検知するためのアルゴリズムを作成することが難しく、誤作動の防止が技術的に困難であるという問題もある。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、運転者の居眠り状態を正確に検出できる、安価な居眠り防止装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、運転席ヘッドレストに横方向に沿って設けられた複数個の静電容量式センサと、該静電容量式センサからのそれぞれの出力信号を検出する検出回路と、該検出回路で検出した出力信号のモードを、予め記憶させておいた居眠りモードと比較して、運転者が居眠り状態かどうかを判定し、居眠り状態と判定した場合に警報出力を発するプログラムを有する演算装置とを有することを特徴とする居眠り防止装置を提供する。
【0008】
本発明の居眠り防止装置において、前記静電容量式センサは、可撓性シートに導電性材料で回路を作製してなる可撓性静電容量式センサであり、該センサは人体の近接の程度によって出力が変化するものであることが好ましい。
【0009】
本発明の居眠り防止装置において、前記警報出力が発せられた時に、警報音、警報メッセージ、警報ランプの点灯、ディスプレイ上の警報表示、人体への直接刺激からなる群から選択される1種又は2種以上の警報を発する警報手段をさらに有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の居眠り防止装置は、運転席ヘッドレストに横方向に沿って設けられた複数個の静電容量式センサと、該静電容量式センサからのそれぞれの出力信号を検出する検出回路と、該検出回路で検出した出力信号のモードを、予め記憶させておいた居眠りモードと比較して、運転者が居眠り状態かどうかを判定し、居眠り状態と判定した場合に警報出力を発するプログラムを有する演算装置とを有する構成としたので、運転者の居眠り状態を正確に検出できる、安価な居眠り防止装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の居眠り防止装置の実施形態を説明する。
図1は、本発明の居眠り防止装置の一実施形態を示す構成図である。本実施形態の居眠り防止装置1は、運転席7のヘッドレスト3に横方向に沿って設けられた複数個の静電容量式センサ2と、該静電容量式センサ2からのそれぞれの出力信号10を検出する検出回路4と、該検出回路4で検出した出力信号10のモードを、予め記憶させておいた居眠りモードと比較して、運転者11が居眠り状態かどうかを判定し、居眠り状態と判定した場合に警報出力9を発するプログラムを有する演算装置5と、警報出力9が発せられた時に、警報音、警報メッセージ、警報ランプの点灯、ディスプレイ上の警報表示、人体への直接刺激からなる群から選択される1種又は2種以上の警報を発する警報手段6とを備えて構成されている。
【0012】
本実施形態において、静電容量式センサ2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)シートなどの可撓性シートに、銅や銀の薄膜などの導電性材料で回路を形成してなる可撓性静電容量式センサであり、この静電容量式センサ2は、運転者11の頭部8が近接するほど、出力が高くなるものが好ましい。このような静電容量式センサ2としては、例えば、特開2001−264194号公報に開示された着座検知装置などが挙げられる。薄い可撓性静電容量式センサをヘッドレスト3の内側に貼り付けて設置すれば、頭部8が接触した際の違和感を無くすことができることから好ましい。
【0013】
図2及び図3は、本実施形態の居眠り防止装置1における静電容量式センサ2の配置状態の一例を示し、図2は正面図、図3は平面図である。本例では、2つの静電容量式センサ2をヘッドレスト3の中央を境に左右に近接配置し(以下、センサA及びセンサBと記す。)、頭部8の左右方向、前後方向のゆれを検出できるようにしている。
【0014】
図3に示すように、運転者の頭部8がヘッドレスト3に対して中心位置から左右方向、前後方向にゆれる場合、2つのセンサA,Bのそれぞれのセンサ出力が変化する。その一例を表1に記す。
【0015】
【表1】

【0016】
表1に示したように、図2及び図3のセンサA,Bの配置、即ち2つのセンサA,Bを左右に配置した場合には、運転者の頭部8が左右方向にゆれた場合には、センサAとセンサBの出力が交互に強弱を繰り返すモードとなる。また、運転者の頭部8が前後方向にゆれた場合には、センサAとセンサBの出力が同期して強弱を繰り返すモードとなる。図4は、運転者の頭部8が左右方向にゆれた場合のセンサA,Bの出力変動を例示するグラフであり、また図5は、運転者の頭部8が前後方向にゆれた場合のセンサA,Bの出力変動を例示するグラフである。
【0017】
車両の運転時、運転者が居眠りした際、頭部8の位置がヘッドレスト3に対し、前後/左右もしくはその複合状にゆっくりとゆれるモードがある。
本実施形態の居眠り防止装置1では、このような運転者の頭部8の動きを的確に検出するために、センサA,Bの出力を検出回路4によって検出し、出力信号10を演算装置5に送る。演算装置5には、予めセンサA,Bの出力の強弱、強弱の振幅、各センサA,B相互の出力変動の差を基に、1つ以上のモードが記憶されており、検出回路4から送られた出力信号10のモードを、記憶されたモード(居眠り状態と判定される出力のモード)と比較して、運転者が居眠り状態かどうかを判定するプログラムが設けられている。
【0018】
前記プログラムに従い、検出回路4から送られた出力信号10のモードは、随時又は一定間隔毎に、記憶されたモードと照合される。そして、検出回路4から送られた出力信号10のモードが、演算回路5に記憶されたモードのうち、居眠り状態のモードと合致した場合又は類似していた場合、演算回路5は運転者が居眠り状態にあるものと判定し、警報出力9を発する。
【0019】
本実施形態において、この警報出力9は、演算装置5と別体の警報手段6に送られ、この警報手段6において何らかの警報が発せられる構成としているが、演算装置5に警報手段6の機能を持たせることもできる。
【0020】
警報手段6は、演算装置5から警報信号9が発せられた時に、運転者に対して確実に、且つ瞬時に認知される警報を発するものである必要がある。この警報としては、例えば、警報音、警報メッセージ、警報ランプの点灯、ディスプレイ上の警報表示、人体への直接刺激からなる群から選択される1種又は2種以上の警報であることが好ましい。但し、ディスプレイ上の警報表示は、居眠り状態にある運転者に対し、瞬時に認知される効果が不十分である場合があるため、大きな警報音などと組み合わせて用いることが好ましい。また、人体への直接刺激としては、腕に巻いた振動発生器による振動付与、電気パルス刺激などが挙げられる。
【0021】
この居眠り防止装置1は、運転席7のヘッドレスト3に横方向に沿って設けられた複数個の静電容量式センサ2と、該静電容量式センサ2からのそれぞれの出力信号10を検出する検出回路4と、該検出回路4で検出した出力信号10のモードを、予め記憶させておいた居眠りモードと比較して、運転者が居眠り状態かどうかを判定し、居眠り状態と判定した場合に警報出力を発するプログラムを有する演算装置5とを有する構成としたので、運転者の居眠り状態を正確に検出できる。
また、従来技術と比較して、画像認識を実施するために、カメラ、画像演算用計算機などの高価な装置を必要としないので、安価な居眠り防止装置を提供することができる。
さらに、静電容量式センサ2として、可撓性の静電容量式センサを用いることによって、このセンサをヘッドレストの内側に貼り付けて配置することができ、運転者の頭部8がヘッドレスト3に接触した場合に、違和感を感じることなく、センサを設置できる。
また、この居眠り防止装置1は、カメラ等が不要であり、センサ2も薄いシート状としてヘッドレスト3の内側に設置可能なので、極めて小型、軽量化でき、設置のための余分なスペースが不要である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の居眠り防止装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】本発明の居眠り防止装置におけるセンサの配置例を示す正面図である。
【図3】本発明の居眠り防止装置におけるセンサの配置例を示す平面図である。
【図4】本発明の居眠り防止装置において頭が左右にゆれた場合の各センサの出力変動を例示するグラフである。
【図5】本発明の居眠り防止装置において頭が前後にゆれた場合の各センサの出力変動を例示するグラフである。
【符号の説明】
【0023】
1…居眠り防止装置、2…静電容量式センサ、3…ヘッドレスト、4…検出回路、5…演算装置、6…警報手段、7…運転席、8…頭部、9…警報出力、10…出力信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席ヘッドレストに横方向に沿って設けられた複数個の静電容量式センサと、該静電容量式センサからのそれぞれの出力信号を検出する検出回路と、該検出回路で検出した出力信号のモードを、予め記憶させておいた居眠りモードと比較して、運転者が居眠り状態かどうかを判定し、居眠り状態と判定した場合に警報出力を発するプログラムを有する演算装置とを有することを特徴とする居眠り防止装置。
【請求項2】
前記静電容量式センサは、可撓性シートに導電性材料で回路を作製してなる可撓性静電容量式センサであり、該センサは人体の近接の程度によって出力が変化するものであることを特徴とする請求項1に記載の居眠り防止装置。
【請求項3】
前記警報出力が発せられた時に、警報音、警報メッセージ、警報ランプの点灯、ディスプレイ上の警報表示、人体への直接刺激からなる群から選択される1種又は2種以上の警報を発する警報手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の居眠り防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−287561(P2008−287561A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132756(P2007−132756)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】