説明

屈折率が異なる二つのドメインを有するオブジェクトを分散した状態で含む反射防止コーティング

本発明は、電磁放射に対する反射防止特性が基板の表面に付与され得る表面処理方法に関する。5μm未満の寸法を有する複数のオブジェクトを層内に分散した状態で含有し、該電磁放射に対して透明なコーティングが、該表面上に積層される。該オブジェクトは、第一の屈折率nを有するコアと、このコアの屈折率nとは異なる第二の屈折率nを有し、コアを囲むスキンと呼ぶ層とを備えている。また、コア/スキンのアッセンブリーの寸法に対するコアの寸法の比は、1:1.5〜1:5である。さらに、本発明は、この方法に従って得られるコーティングされた基板に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の表面に反射防止特性を付与することによって、この表面の光学的な特性を改良し得る方法に関する。特に、本発明は、透明な基板(具体的にはガラス基板またはポリカーボネート基板)上に塗布されると、これら透明な基板の光の透過を改善することを可能にする、このタイプの反射防止コーティングに関する。本発明は、反射防止コーティングで被覆された基板であって、上記に関連して得られる基板にも関し、この場合、基板の代表例としては、透光性が最適化された透明な光学的デバイス(例えば光学レンズ)が挙げられる。
【0002】
ここでは、「反射防止特性を付与する表面処理」とは、少なくとも或る電磁波の反射特性を、固体基板の改良された表面において紫外線から赤外線の範囲(通常、150nm〜2500nmの波長)の波長領域で低減できる可能性がある、固体基板の表面の改良を意味している。さらに具体的には、本発明の文脈において、「反射防止」処理という概念は、透明な基板に塗布すると、その物質を透過する電磁波の少なくとも一部の反射を阻害する一方で、透明な基板を通過する電磁波の透過量を増加させる、といったタイプの処理法を指している。このタイプの反射防止特性は、特にさまざまな工業分野、中でも光学分野で求められている(レーザを用いる種類のデバイスの場合、例えば、できる限り最適化した透過特性を有するレンズの開発が最も注目されている)。
【0003】
前記のタイプの反射防止効果を付与することができる各種の表面処理が、特にガラスまたはポリカーボネート基板に反射防止効果を付与する場合について、既に開示されている。
【0004】
このような技術的範囲において開発された表面処理方法は、一般には異なる屈折率を有する複数の連続層、通常は少なくとも三つの層(一般に、屈折率がiの層、屈折率がiの層(但しi<i)、および屈折率がiの層(但しi>i))を代わる代わる積層させることからなる。このタイプの多層コーティングに関する詳細については、特に、Advances in nanomaterials and processing, parts 1 and 2; Solid State America, Vol. 124-126, p. 559-562, Solar Energy Materials and Solar Cells, Vol. 90 Nov. 2006 、さらに欧州特許出願第1433809号および米国特許出願第2004/71889号を参照すればよい。
【0005】
前記の反射防止タイプのコーティングは、特に眼鏡のガラスの反射防止効果を保証するために使用される場合、特に、複数の連続層を積層させなければならず、よってコストが高くなり、製造時間も長くなるので、適用し辛いという短所がある。さらに、各層の連続する積層は真空中で実施される方法によって一般に実施されるが、このような方法を適用すると製造コストがさらに増加する。
【0006】
また、処理済みの基板上に複数の連続層を積層しなければならないので、最終的に得られる積層体の厚さが比較的厚くなり、これが透過特性に対して悪影響を及ぼす可能性がある(電磁波の一部が多層コーティングで吸収されてしまう)。これらの吸収の現象は、眼鏡のガラスでは比較的あまり目立たないかも知れないが、例えばレーザ等の、透過がほんの僅か低下してもデバイスの最終的な効率に対して非常に大きな影響がある光学的デバイスにおいては、実質的な影響を及ぼす。
【0007】
本発明の目的の一つは、透明な基板に、非常に高い透光性、好ましくは、前記の多層コーティング法によって付与される透光性と等価若しくはより高い透光性を与える新規な反射防止処理法であって、前記の多層コーティング法と比較して少なくとも同様に効率的、好ましくはより効率的であり、かつ該透明な基板(特にガラスまたはポリカーボネート製の基板)の改良を簡単に低コストで行うことを可能にする反射防止処理法を提供することである。
【0008】
この目的を実現するために、第一の態様によれば、本発明の目的は、電磁放射に対する反射防止特性が基板の表面に付与され得る表面処理方法である。この電磁放射に対して透明なコーティングが該表面上に堆積され、このコーティングは、5μm未満、好ましくは2μm未満の寸法を有する複数のオブジェクトを層内に分散した状態で含有する。また、該オブジェクトは、該電磁放射に対して透明な互いに異なる二つの基板からなり、下記のように異なる屈折率を有する少なくとも二つの領域を備えている。即ち、コアは第一の屈折率nを有し、コアを囲む層(「スキン」と表記)は、コアの屈折率nとは異なる第二の屈折率nを有する。さらに、コア/スキンのアッセンブリーの寸法に対するコアの寸法の比は、1:1.5〜1:5である。
【0009】
本発明の方法に従って積層させたコーティング、およびこのコーティング中に含まれるオブジェクトは、紫外線域から赤外線域までの波長領域の少なくとも或る電磁波に対しては透明である。特に、反射防止効果が求められる電磁波に対しては透明である。代表的な構成としては、これらのコーティングおよびオブジェクトは、視覚的には透明であってもよい(つまり、可視光全体またはその一部に対しては透明であってもよい)。或いは光学的にのみ透明、つまり、或る非可視放射(UVおよび/または赤外線)に対してのみ透明であってもよい。
【0010】
特定の実施形態によれば、本発明の方法に従って表面が改良された上記基板は、透明な基板である。この透明な基板は、例えば、ガラス基板またはポリカーボネート基板である。
【0011】
本明細書において、コーティング、オブジェクト、物質、または基板は、或る任意の波長λの電磁放射の流束を(好ましくは吸収しないで、または僅かに吸収するだけで)通過させるときに、この電磁放射に対して「透明」であると描写される。波長λにおいて透明であると描写される物質または基板は、好ましくは、この波長におけるモル吸収係数ができるだけ小さいほうがよく、このモル吸収係数(モル「吸光」係数とも称する)は、関連する波長において、好ましくは200L・mol−1・cm−1以下、さらに好ましくは100L・mol−1・cm−1以下である。
【0012】
本発明の方法に従って積層させたコーティング中に分散した状態で存在するオブジェクトのコアおよびスキンは、反射防止効果が求められる電磁放射に対しては特に透明な基板からなる。本記載において言及する、これらの分散したオブジェクトのコアおよびスキンを構成する要素である基板の屈折率、つまり、コアの第一の屈折率nおよびコアを囲む層の第二の屈折率nは、反射防止処理が求められる電磁放射の波長(または波長域)における基板の屈折率を表している。
【0013】
本発明の方法に従って堆積させた透明な反射防止コーティングは、好ましくは単一層のコーティングであって、改良したい表面上への唯一の層の堆積を基にして形成される。通常、堆積させたコーティングの厚さは、10nm〜10μmであり、さらに好ましくは50nm〜5μmである。本発明に係る反射防止特性は、数十〜数百ナノメートル(例えば10nm〜900nm、および特に50nm〜500nm)の薄い層およびマイクロメートルのオーダーの厚さ(例えば1μm〜10μm、特に1μm〜5μm)の層の、どちらの場合にも得られる。
【0014】
特に、透過を増加させることを目的として反射防止に適用する(通常、レンズの表面処理を行う)場合、中でもUV域および/または可視光域の電磁放射に関連するタイプの反射防止に適用する場合、(特に堆積させた層による如何なる寄生吸収現象をも限定するために)堆積させた透明なコーティングの厚さが未満1μm、好ましくは800nm未満、さらに好ましくは500nm未満であることが一般に好ましく、この厚さは好適には10nm〜600nm、特に好適には50nm〜500nm、例えば100nm〜400nmである。赤外線域の電磁放射に関連する反射防止に適用する場合、より大きな厚さ(最大で数μmまでの範囲)が望ましいことがある。尚、このことに関して、反射防止効果が求められる放射の波長が長いので、本発明に係る堆積させたコーティング中に存在するオブジェクトの大きさはより大きいことが好適である(通常、任意の波長λの電磁放射の場合、オブジェクトのコアの寸法はλ/4より大きく、コア上の堆積の厚さもλ/4より大きいことが好適である)。不透明な物質の表面に反射防止特性を付与することを所望する場合には、マイクロメートルのオーダーの厚さの層(つまり、1μm以上の厚さの層)も好ましい。
【0015】
透明なコーティング中に分散しているオブジェクトは、等方性または異方性のオブジェクトであって、好ましくは寸法が2μm未満、通常は2nm〜1μmである。特に、これらの分散したオブジェクトが、屈折率が互いに明確に異なるコア領域およびスキン領域を有するために、オブジェクトの寸法は、好ましくは3nm以上、さらに好ましくは5nm以上である(この寸法は好適には10nm以上、または20nm以上であってもよく、例えば、50nm以上である)。通常、本発明に係る透明なコーティング中に分散しているオブジェクトの寸法は、10nm〜800nm、例えば20nm〜600nmである。透明なコーティングに求められる厚さが小さいので、これらの寸法は、より小さな寸法が選択されるべきである(透明なコーティングの厚さは、一般に、コーティングに含まれる分散したオブジェクトの寸法に少なくとも等しい)。従って、透明な物質内におけるUV域または可視域の放射の透過を増加させるようにうまく構成された薄いコーティング層を得るためには、通常、寸法が400nm未満、例えば300nm未満、さらに好ましくは200nm未満、またはさらに100nm未満の、分散したオブジェクトを有する層を堆積させることに着目すべきであることが判る。
【0016】
本発明の方法の技術的範囲における堆積させた透明なコーティング中に分散しているオブジェクトは、一般に、第二の屈折率nを有するスキンによって囲まれた、第一の屈折率nを有する前記のタイプのコアによって形成される。
【0017】
但し、上記の構成の代わりに、分散したオブジェクトが、このコア/スキンのアッセンブリーの周囲に少なくとも一つの追加的なコーティング層を備えていてもよい。必要であれば、各追加的なコーティング層が、反射防止効果が求められる電磁放射に対して透明な物質材によって形成され、好ましくは、各追加的なコーティング層が、接触している単数または複数の層とは異なる屈折率を有する。
【0018】
本発明の技術的範囲における堆積させた透明なコーティング中に分散した状態で存在するオブジェクトでは、コアを囲むスキンは、必要に応じて設けられる単数または複数のコーティング層を伴って、有機性および/または無機性を有する基板によって形成される。透明なコーティング中に分散した状態で存在するオブジェクトのコアは、それ自身も無機基板および/または有機基板によって形成されることが最も多い。別の特定の実施形態によれば、コアは空であってもよい(特定の実施形態によれば、分散したオブジェクトは、中空の粒子のタイプのオブジェクトであって、この場合、コアの屈折率nは1にほぼ等しい)。
【0019】
本発明の方法の技術的範囲における堆積させた透明なコーティング中に分散しているオブジェクトにおいて、コアを囲むスキンの平均の厚さは、コアの平均の厚さと同じオーダーであって、第二の屈折率nを有するスキンによって囲まれた、第一の屈折率nを有するコアによって形成されるコア/スキンのアッセンブリーの寸法に対するコアの寸法の比は、1:1.5〜1:5である。この比は、好適には1:2.5のオーダーである。本明細書では、「コア/スキンのアッセンブリーの寸法に対するコアの寸法の比」という表現は、等方性を有する粒子の場合にはコア/スキンのアッセンブリーの特徴的な寸法に対するコアの特徴的な寸法の比を表わし、それ以外の場合、つまり異方性を有する粒子の範囲ではコアの特徴的な寸法とコア/スキンのアッセンブリーの特徴的な寸法との比を表わす。つまり、等方性の粒子の範囲では、この比は、コア/スキンのアッセンブリーの平均の直径に対するコアの平均の直径の比であると規定されてもよい。
【0020】
通常、本発明に係る分散したオブジェクトは、例えば、平均寸法dC+Eが2nm〜1μmの等方性を有する形態(例えばほぼ球状)のコア/スキンのアッセンブリーを、オブジェクトを囲む第二の屈折率nの層で形成する、等方性を有する形態(例えばほぼ球状)のコアとなってもよい。尚、この平均寸法dC+Eは、例えば5nm〜800nm、特に10nm〜500nmである。また、比d/dC+Eは好適には1:1.5〜1:5、例えば1:1.8〜1:4であり、通常は1:2.5のオーダーである。
【0021】
本明細書において言及する、分散した状態のオブジェクトの寸法は、例えばMalvern型(Zetasizer)の装置を用いて、光の散乱、特に光の動的散乱によって測定される、異なる(別種の)寸法を指す。通常、光散乱によって測定される寸法は、分散した状態のオブジェクトについて決定される。こうするためには、必要であれば、寸法を決定することが求められているオブジェクトを、適切な溶媒(水、エタノール、水/エタノールの混合物、テトラヒドロフラン、またはジメチルスルホキシド)中に、例えば通常、0.1mg/lから20mg/lの範囲の濃度で分散させることができる。分散した状態のオブジェクトを含有する分析対象のサンプルに、レーザビームを入射させ、90°の角度で散乱を測定する。この光散乱法で測定した寸法の解像度は高い(通常、測定は±0.4nmまでの精度で実施される)。
【0022】
光散乱を用いて得られるこれらの測定値は、光散乱によって全体的な寸法が決定されるオブジェクトの構成部分(特にコアおよびスキン)の寸法の測定をさらに可能にする電子顕微鏡法を用いた測定法によって裏付けられる。分散した状態のオブジェクトおよびオブジェクトの構成部分の寸法の測定に特に適した分析方法は、SEM型(走査型電子顕微鏡)およびTEM型(透過型電子顕微鏡)の電子顕微鏡を用いた方法である。これらのタイプの顕微鏡の原理については、特にASTM standards, Digital library, Chapter 72, JG Sheehan (1995)に記載されている。
【0023】
本発明の技術的範囲において、発明者は、前述のタイプのマイクロメートル以下のオブジェクトを含む透明なコーティング、つまり屈折率nおよびnを有するコアおよびコーティング層を備える透明なコーティングを基板の表面上に積層することにより、反射防止効果が、この層を積層させるだけで、このように処理した表面上で得られるという予測不能であった事実を上記に(now) 説明した。
【0024】
特定の理論によって制限されるわけではないが、本発明の技術的範囲において発明者が実施した作業を考慮すれば、分散した各オブジェクトが一種の「ナノドメイン」として振る舞うという事実によって、この反射防止効果が少なくとも部分的に説明されると言ってもよかろう。「ナノドメイン」とは、局所的に多層型の構造を有し、このことによって、通常の(よりマクロ的な)多層積層体で観察される効果と同様の効果を局所的に保証するもので、これらの局所的な効果を付加することによって特に興味深い全体的な反射防止特性を物質に付与することができるものである。
【0025】
発明者によって実施された実験からは、堆積させたコーティング中にこの「局所的な多層構造」を有するオブジェクトを分散させることによって、通常の多層堆積物で観察される効果に比べて、例え改善はできなくても、同程度の反射防止効果は保証されることが判る。
【0026】
本発明に従って製作される反射防止コーティングは、さらに、少なくとも現在の技術的状況において公知の多層堆積物と同様の透明性を有する。この透明性がさらに高い場合もある(実際に、単一層としての単一の堆積物しか要求されていないのであれば、本発明に係る複数の反射防止用堆積物は、放射吸収現象が発生する可能性が高い、より厚さが厚い多層コーティングに比べて、透明であることになる可能性が高い)。これらの透明性は複雑な方法を一切適用しなくても得られ、本発明の反射防止用堆積物は、これらの透明性によって多層コーティングの代替物としての最適な解決策になり、該反射防止用堆積物を用いれば、UV域から赤外線域までの電磁波に対する高い透過性を有する透明な物質を、簡単に利用することが可能になる。
【0027】
また、求められる反射防止効果を得るために単一層の堆積しか要求されていないのであれば、本発明の方法は、多層堆積物を用いる方法に比べて、塗布がより低コストでおよび時間が掛からないで済む。このことは、本発明のさらにもう一つの効果である。
【0028】
本発明に係る、求められるタイプの反射防止を実現するためには単一層の堆積物で充分ではあるが、本発明の方法の特定の実施形態によれば、反射防止を目的とした堆積を処理済みの基板表面上で連続して複数回実施し、そのうちの少なくとも一つの反射防止用堆積物が、前記コア・スキン構造のオブジェクトを分散した状態で含有するようにすることが可能である(例えば少なくとも2回または少なくとも3回)。このタイプの多層堆積物は、特に際立った反射防止特性を付与するために、および/または反射防止効果を保証するために特に使用されてもよい。
【0029】
コアおよびコアを囲むコーティング層(スキン)の屈折率nおよび屈折率nが互いに異なるので、前記の効果は一般に一層際立つ。本技術的範囲においては、反射防止効果が求められる電磁放射の波長(または波長域)において、コアの屈折率とコアを囲むコーティング層の屈折率との差(n−n)が絶対値で0.01を超えることが一般に好適であることが判る。また、この差は好適には少なくとも0.1であり、さらに好適には少なくとも0.2である。0.3以上の差があると、さらに興味深い結果が得られる。
【0030】
本発明の方法において分散したオブジェクトのキャリアの役割を果たす透明なコーティングは、サイズが10μm未満、さらに好ましくは5μm未満、さらに好適には1μm未満の層として堆積可能な任意のタイプのコーティングであってもよい。これは、例えばワニスまたは重合体の層であってもよい。
【0031】
特に興味深い実施形態によれば、このコーティングはゾル/ゲルのコーティングである。ゾル/ゲルのコーティングは、例えばシリコンアルコキシド、チタンアルコキシド、または亜鉛アルコキシド等の鉱物アルコキシド(mineral alkoxide)を加水分解して鉱物種の重合と同様の反応を引き起こし、第一の段階では鉱物の酸化物(例えばシリカ、TiOまたはZrO)の粒子のゾルを形成し、次に媒体を徐々にゲル化し、最終的に鉱物種全体の架橋結合をガラスに相応する堅固な構造の形態で実現することによって得られる、周知の種類のコーティングである。いわゆる「ゾル/ゲル」堆積とは、本タイプの反応媒体の層をゲル化していない状態または部分的にゲル化したゾル状態で基板上に堆積させ、次に、層が硬化するまでゲル化を継続させることによって実施される堆積である。これらの堆積は、任意の適した従来の方法によって、特に周知の手法である、いわゆる浸漬コーティング法またはスピンコーティング法によって実施されてもよい。これらのコーティング法については、特にProcess Engineering Analysis in Semiconductor Device Fabrication, S. Middlemann & A. Hochberg, Mcgraw-Hill College, p. 313 (1993)、または欧州特許出願第1712296号明細書に記載されている。
【0032】
前記ゾル/ゲル法を用いた本発明に係る反射防止コーティングの堆積は、好適にはゲル化の終了時の熱処理(乾燥)ステップを含む。このステップによって、堆積したゾル/ゲル層の硬化が最適化され、こうすることによって得られるコーティングに対する良好な接着性が最終的に得られる可能性がある。この熱処理は、高温の空気および赤外線の放射のどちらも用いて実施されてもよい。この処理は、好ましくは、反射防止コーティングが形成された基板を20℃〜200℃、さらに好ましくは50℃〜150℃の温度でオーブン内に設置することによって実施される。興味深い一実施形態によれば、この熱処理は、ゾル/ゲルのコーティングの基板上での堆積温度(通常、10℃〜25℃)を熱処理温度(通常、低くても50℃)まで、通常、+0.5℃/分〜+5℃/分の温度上昇率で徐々に上昇させることによって徐々に実施される。
【0033】
本発明の方法において、前記ゾル/ゲル法によって堆積される透明なコーティングを適用する場合、使用される鉱物アルコキシドは、好適にはテトラアルコキシシラン、好ましくはテトラメトキシシラン(化学式Si(OCHで表わされる化合物であり、一般にはTMOSという略称で表記され、テトラメチルオルトケイ酸塩と称されることもある)、またはテトラエトキシシラン(つまり、化学式Si(OCで表わされるTEOS)。特に好ましい方法では、使用される鉱物アルコキシドは、テトラメトキシシランTMOSである。他の構成としては、使用される鉱物アルコキシドは、チタンアルコキシド(イソプロポキシドチタン酸)または亜鉛アルコキシド(例えば亜鉛イソプロポキシド)であってもよい。
【0034】
一般に興味深い特定の実施形態によれば、本発明の方法において分散したオブジェクトのキャリアの役割を果たす透明なコーティング、好適には、初期段階において(i)少なくとも一つの鉱物アルコキシド、好ましくは前記のタイプの少なくとも一つの鉱物アルコキシドと、(ii)少なくとも一つのUVによって架橋結合可能または熱処理の影響下において(通常は自由ラジカルのソースの存在下で)架橋結合可能な単量体とを含んだ混合物から得られる、ゾル/ゲル型の特定のコーティングであってもよい。この場合、その際のコーティングの合成過程に以下の二つの硬化段階が含まれれば、特に高い接着性を有するコーティングが一般に得られる。つまり、第一の硬化がゾル/ゲル法による鉱物アルコキシドの加水分解および凝縮によって達成され、および/または、架橋結合可能な単量体をこの架橋結合される単量体の正確な特性に応じて通常、UV照射および/または加熱下で架橋結合することによって、追加的な硬化が補足的に起こる。
【0035】
本発明のこの特定の代替方法によれば使用されてもよい架橋結合可能な単量体は、この単量体をUVによってまたは熱によって架橋結合可能にすることができる官能基を有する、重合していない単量体種であってもよい。或いは、該架橋結合可能な単量体は、この単量体をUVによってまたは熱によって架橋結合可能にできる官能基を有する巨大分子種(例えば、オリゴマーまたは重合体)であってもよい。本実施形態に従って使用される、UVによって架橋結合可能または熱的ルートを経由して架橋結合可能な単量体は、通常、メタクリレート、アクリレート、エポキシ、またはビニルエーテル基を有する化合物である。或いは、互いに相補的な官能基を有し、凝縮によって架橋結合するために接触すると互いに反応する二つのタイプの単量体の混合物を使用することができる(この代替方法の技術的範囲では、例えば、反応性の官能基を有する、以下に示す対を使用することができる。即ち、エポキシとアミン、アクリレートとアミン、イソシアネートとアルコール、チオールとエン(ene)、またはエポキシとイソシアネートの対を使用することができる。
【0036】
一般に、本発明の方法において使用される透明なコーティングがゾル/ゲル型である場合、このゾル/ゲルのコーティングが、少なくとも一つの界面活性剤、特にSol-Gel Sciences: Sol-Gel: The Physics and Chemistry of Sol Gel Processing, C. Jeffrey Brinker and George W. Scherer, Academic Press (1990)、またはJournal of Colloids and Interface Science, Vol. 274, Issue 2, 355-361に記載されたタイプの少なくとも一つの界面活性剤の存在下で合成されることが好適である。このタイプの界面活性剤を使用すると、アルコキシドの加水分解によって得られるゾル中の粒子の大きさを限定することが可能になり、それゆえ、最終的に得られるコーティング層の厚さを制御することが可能になる。この技術的範囲において非常に適した界面活性剤としては、特にポリオキシエチレンの界面活性剤(特にポリオキシエチレンエステル)、例えばTWEEN85を挙げることができる。
【0037】
ゾル/ゲル中で使用される鉱物アルコキシドの加水分解によって生成されたゾル中で、形成された粒子の大きさを制御することを可能にするもう一つの手段は、四つの加水分解可能な基を有する複数のアルコキシドと、多くとも三つ(例えば二つ、または一つでもよい)の加水分解可能な基を有する複数のアルコキシドとを含めた複数のアルコキシドの混合物を用いることからなる。この技術的範囲において、上記ゾル/ゲルのコーティングは、通常、加水分解可能な基を有する少なくとも一つのシラン(例えばテトラメトキシシランTMOSまたはテトラエトキシシランTEOS)と、四つ未満の加水分解可能な基を有する少なくとも一つのシランとを有する複数のアルコキシドの混合物を鉱物アルコキシドとして使用することによって、合成されてもよい。尚、この四つ未満の加水分解可能な基を有する少なくとも一つのシランは、好ましくは化学式RSiX4−nで表わされる。式中において、nは1,2または3に等しい整数である。また、各基Rは加水分解不可能な有機基を示し、互いに同じであっても異なっていてもよく、必要に応じて官能基であってもよい。さらに、Xは加水分解可能な基(通常は、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、γ−プロピルトリメトキシシラン、γ−プロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ポリジメチルシロキサンα−ω−ジシラノール、ポリジエチルシロキサンα−ω−ジシラノールなどのハロゲンアルコキシ基;または−Cl、−Br等のハロゲン基)である。
【0038】
本実施形態によれば、例えば単一の加水分解可能な基を有するシラン、またはこのような官能基を一つ有するシランの前駆体化合物(例えば、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等の、加水分解反応を経て官能基を一つ有するシランを生成する化合物、またはトリメチルクロロシラン等のクロロシラン)を使用することができる。
【0039】
他方で、ゾル/ゲルプロセスが本発明に係るコーティングの形成に適用される場合、このコーティングの合成媒体は水と、必要に応じて関連する一つ以上の水に対する混和性を有する溶媒(例えばエタノール)とを含有している。この場合、水は、好ましくはゾル/ゲル配合物中の加水分解可能なシランの官能基の半分に等価な量が存在する。
【0040】
本発明の方法において、分散したオブジェクトのキャリアの役割を果たす透明なコーティングの本質に関わらず、該コーティングが含有するオブジェクトは、好適には、下記において規定する三つの代替選択肢のうちの一つの好ましい特性を有する。
【0041】
本発明の第一の代替選択肢によれば、本発明に従って処理される基板上に堆積した透明なコーティング中に存在するオブジェクトのコアは、有機性を有している。
【0042】
本発明のこの第一の代替選択肢の技術的範囲において、コアは、例えば、少なくとも一つの直鎖状若しくは(好適には)分岐鎖状の炭化水素の重合体(重合体鎖は必要に応じてヘテロ原子を担持する)、またはモル質量が小さな(通常、250g/mol未満)、少なくとも一つの成分若しくは複数の成分の混合物(例えば溶媒または油性体(oily bodies) )を備えていてもよく、或いは、これらの重合体若しくは成分(の混合物)からなっていてもよい。
【0043】
上記において規定した第一の代替選択肢の技術的範囲において、通常、有機コアを囲む層(スキン)は、通常、乳濁液中での重合法、分散液中での重合法、ミニエマルション中での重合法、または自然乳濁液(spontaneous emulsion)の重合法によって有機コアの周囲に形成されてもよい重合体の層である。これらの方法およびその適用法は、当業者にとって公知である。これらの方法および適用法に関するさらなる詳細については、例えばSoft Matter, Vol. 2, pp. 940-949 (2006) or to Chem.Phys.Chem. Vol. 6, pp 209-215 (2006) を参照すればよい。
【0044】
本発明の第一の変形例によって得られるコア/スキン構造を有するオブジェクトは、通常、スキンを構成して有機コアの素材を閉じ込めた重合体シェルを有するカプセルである(回転楕円体のカプセルであることが多いが、必ずしも回転楕円体のカプセルである必要はない)。尚、この有機コアの素材は、好ましくは前記のタイプ(例えばスキンの重合体とは異なる重合体または重合していない有機化合物)である。これらのオブジェクトの正確な構造に関わらず、オブジェクトの寸法は、通常、50nm〜2μmであり、好ましくは1μm未満、さらに好適には800nm未満、または500nm未満であってもよい。
【0045】
本発明の第一の変形例に係るコア/スキン構造を有するオブジェクトは、例えば、ヘキサデカンのコアを囲む、ポリウレタンまたはポリアミドのスキンを備えたカプセルであってもよい。
【0046】
本発明の第一の代替選択肢に係るコア/スキン構造を有するその他の興味深いオブジェクトは、同じタイプの二種類の重合体(例えば二種類のメタクリレート)をコア形成重合体およびスキン形成重合体として備え、一方の重合体が、他方の重合体が有しない特定の基(例えばフッ素基−F)を有している。この場合、コア/スキン構造は、通常、対応する単量体の重合を実施することによって、つまり、先ず複数の単量体だけを含有する重合媒体から出発してコア形成重合体(例えば特定の基を有していない)を形成し、そして重合媒体に単量体をさらに添加してスキン形成重合体(例えば特定の基を有する)を形成することによって得られる。第一の実施形態によれば使用されてもよいコア/スキン構造を有するオブジェクトは、例えばMacromolecules, Vol. 30, 123-129 (1997) に記載されている、ブチルアクリレートの共重合体およびトリフルオロエチルメチルメタクリレートの共重合体のタイプであってもよい。
【0047】
本発明の第一の代替選択肢によれば、使用されてもよいコア/スキン構造を有するその他のオブジェクトは、ジブロック構造を備えた配列重合体が(ジブロック構造を備えた重合体が配列して)自己組織化したものである。尚、このジブロック構造は、在る任意の溶媒に対して親和性を有する第一のブロックを備え、この第一のブロックは、該溶媒に対してより低い親和性を有する、好ましくは親和性を有しない第二のブロックに結合している。これらの重合体が溶媒内に導入される場合、重合体はコア/スキン型のオブジェクトの形態(溶媒に対して高い親和性を有するブロックが内部のコアを囲む外側の層を形成し、該溶媒に対してより低い親和性を有するブロックが集団を形成する)で自己組織化する。溶媒媒体中でこのタイプの自己関連付け(自己組織化)を引き起こす配列共重合体(配列をする共重合体)の例は、特にLangmuir, Vol. 22, pp. 4534-4540 (2006) (ポリ(エチレンオキサイド)のブロック−(N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート)のブロック)、またはAdv. Funct. Mater., Vol. 16, pp. 1506-1514 (2006) (ポリオキシエチレンのブロック−ポリ(ε−カプロラクトン)のブロックのタイプの配列ジブロック共重合体)に記載されている。これらの文献に記載された配列重合体は、一方の配列重合体に基づくコアと、もう一方の配列重合体に基づくスキンとを備えたオブジェクトを形成するために溶媒媒体中に入れられると、共に組織化する。
【0048】
本発明の第二の代替選択肢によれば、本発明に従って処理される基板上に堆積した透明なコーティング中に存在するオブジェクトのコアは、無機性を有している。
【0049】
本発明のこの第二の代替選択肢の技術的範囲において、コアは、例えば、鉱物の酸化物(特にシリカまたは金属酸化物)、金属硫化物、金属窒化物、金属ハロゲン化物、金属のうち、一つ以上の物質を備えていてもよく、或いは、これらの物質からなっていてもよい。
【0050】
さらに好ましくは、第二の代替選択肢に係るオブジェクトの無機コアは、シリカ、金属酸化物、金属硫化物、および/または金属、さらに好ましくはシリカ、金属酸化物(特にTiOまたはアルミナ)または金属(例えば金、銀)からなる。
【0051】
この第二の代替選択肢の技術的範囲において、第一の実施形態によれば、無機コアを囲む層(スキン)は、重合体の層であり、この重合体のスキンは、下記の二つの大きな利用ルートによって作製されてもよい。
【0052】
〔(1)「何かにグラフトする」タイプの方法〕
この第一の方法によれば、事前に用意した無機コア(通常、無機コロイド状粒子)から出発し、事前に用意した重合体鎖(または事前に用意したグラフト)がこれらの無機コアの表面上に固定される。こうするためには、固定することが望ましい重合体鎖またはグラフトは、一般に無機コアの表面と共有結合または静電結合を形成する、またはコアの表面上に存在する基と共有結合または静電結合を形成する、化学的な官能基を有する。
【0053】
例えばJ. Am. Chem. Soc., Vol. 120, 12696 (1998) に記載された方法によれば、例えば、コロイド状の金の粒子から出発し、チオール末端を有する重合体鎖を、この粒子上にグラフトすることが可能である。この方法によれば、α−メトキシ−ω−メルカプト−ポリ(エチレングリコール)重合体が金の粒子上にグラフトされる。
【0054】
〔(2)「何かからグラフトする」タイプの方法〕
この第二の方法によれば、重合体鎖が、有機基を有する、官能基が付加されたコアの粒子から成長する。
【0055】
この技術的範囲において広く使用される方法は、表面が重合を開始させる基で改良された無機コア(好ましくはコロイド状粒子)から重合を開始することからなる。好適には、無機コアの表面に導入される官能基は、ATRPタイプの制御されたラジカル重合反応を可能にする制御剤である。例えば、チオ基で官能化された金の粒子が使用されてもよい。臭化された重合開始剤が、リガンドを交換する方法によってグラフトされてもよく、例えばAngew. Chem. Int. Ed., 40, 4016 (2001)またはMacromol. Chem. Phys., 1941-1946 (2005) に記載された方法によれば、(メタ)アクリル系単量体(メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート等)等の単量体の存在下で、重合が開始されてもよい。この二つ目の記事の方法によって得られるオブジェクト(ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)で被覆された金のコア)は、赤外線域における反射防止効果を基板の表面上に付与するために、本発明によって特にうまく構成されている。
【0056】
ATRPによる重合体のスキンの合成も、例えばMaterials Letters, Vol. 62, Issue 8-9, (2008) またはComposites Science and Technology, Vol. 66, Issue 9, July 2006に記載されているタイプの方法に従って、鉱物の酸化物の無機コア、特にシリカ酸化物またはチタン酸化物の無機コアに対して(特にコロイド状粒子として)使用されても構わない。
【0057】
好適には、(例えばジチオールとジエステルとの間の)重縮合反応から、−OHおよび/または−SH官能基を有する事前に形成した無機オブジェクト(例えばチオ基で官能化された金の粒子)の表面上に重合体鎖をグラフトすることも可能である。これは、好適には−OH官能基および/または−SH官能基を有する、事前に形成した無機オブジェクトを単量体および触媒(C)に接触させることによって行うことができる。
【0058】
尚、この単量体は、以下の反応基(i)および/または(ii)および/または(iii) を備えている。即ち、反応基(i)は、α−β不飽和カルボニル基C=C−C=O(例えばアクリル基、メタクリル基、またはアクリルアミド基)および/またはα−β不飽和チオカルボニル基C=C−C=Sを含む少なくとも一つの基である。また、反応基(ii)は、環状エーテル、環状チオエーテル、およびアジリジン環から選択される三つ〜五つのリンク(好ましくは三つまたは四つのリンク)を備えた、少なくとも一つの複素環基である。この複素環基は、好ましくは少なくとも一つのエポキシ基、チオエポキシ基、またはアジリジン基であって、さらに好ましくは少なくとも一つのエポキシ基またはチオエポキシ基である。反応基(iii) は、イソシアネート基−N=C=Oまたはチオイソシアネート基−N=C=S、および化学式が>C=CZ−である三価の基から選択される少なくとも一つの基である。尚、この化学式中、Zは電子求引基(例えば4−ニトロフェニルシアノ基−C=N−)である。
【0059】
さらに、上記触媒(C)は、少なくとも一つの共役グアニジン官能基を有し、好ましくは化学式(l)で表わされる共役ビスグアニジン官能基を有する。
【0060】
【化1】

【0061】
ここで、各基R1〜R7は他の基から独立して、水素原子またはシアノ基−CNまたは炭素鎖を表わす。尚、この炭素鎖は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、必要に応じて全体または一部が環状化され、必要に応じて置換され、および必要に応じて一つ以上のヘテロ原子(例えばO、S、N、P、またはSi)および/またはヘテロ原子を有する基(例えばカルボキシ基、アミド基、またはカルバメート基)によって割り込まれる。このヘテロ原子を有する基は、例えば、二価の基−C(=O)O−、−OC(=O)−、−O−C(=O)−O−、>N−C(=O)−、−C(=O)−N<、>N−C(=O)−O−、−O−C(=O)−N<、−C=N−、−N=C−である。さらに、この鎖は通常、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基(好適には、炭素数が1〜12、例えば1〜6であって、このアルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基は、必要に応じて例えばアルコキシ基で置換される);シクロアルキル基(好適には、炭素数が6〜18であって、必要に応じて例えば少なくとも一つのアルキル基またはアルコキシ基で置換される);アリール基(好適には、炭素数が6〜18であって、必要に応じて例えば少なくとも一つのアルキル基またはアルコキシ基で置換される);複素環(必要に応じてS、O、またはNから選択される一つ以上の原子を備えた芳香族);アルキルアリール基またはアリールアルキル基(好適には、炭素数が8〜18であって、アリール部分が必要に応じて特にアルキル基またはアルコキシ基で置換される);エステル基、アミド基、またはカルバメート基;或いは、重合体鎖(必要に応じて他のグアニジン基(好ましくは必要であれば共役グアニジン基)を有する)である。
【0062】
使用される触媒は、好ましくは次の化学式で表わされる。
【0063】
【化2】

【0064】
金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属ハロゲン化物、または複数の金属酸化物に基づく無機コアも、任意の通常の乳化合成法または分散合成法、特に乳化ラジカル合成法または分散ラジカル合成法によって、重合体のスキンで被覆(被包)されても構わない。
【0065】
さらに一般的に、スキンを乳濁液中で、特に重合メタセシスによって、または任意の他の適切な被包法によって、例えばSoft Matter, Vol. 2, pp. 940-949 (2006) に記載された方法によって生成することも可能である。
【0066】
無機性を有するコアを適用する第二の代替選択肢のもう一つの興味深い実施形態によれば、無機コアを囲む層(スキン)は、コア中に存在する無機物質とは異なる無機物質からなる。この物質はスキンを形成し、通常、酸化物または硫化物を含有する。この場合、コアが金属酸化物、金属硫化物、または金属からなることが好ましい。
【0067】
金属酸化物タイプのコアおよびスキンを有する商用の製品は、例えばIbu−Tech社(ドイツ)によって市販されている。Ibu−Tech社は、例えば、全体の大きさが40nmの、ZnO/SiOからなる組成物を参照番号NA403で提案している。
【0068】
本発明によれば使用されてもよい粒子の一例としては、Journal of Nanoparticle Research, 8, 1083-1087 (2008) に掲載された記事のようにして、得られる保護性のシリカ層で被覆されたNHAuClミセルの形成と、ミセル内での金の塩の低減とを利用する逆乳化法で得られる、金のコアおよびシリカのスキンを有する粒子が挙げられる。
【0069】
本発明の、さらに特異的な第三の代替選択肢によれば、本発明に従って処理される基板上に堆積した透明なコーティング中に存在するオブジェクトのコアは、通常、空気で充填された中空の空洞であって、屈折率がほぼ1に等しい。この空洞の寸法は、好適には1μm未満、好ましくは20nmを超え、例えば50〜500nmである。
【0070】
この第三の代替選択肢によれば、コアを囲む層(スキン)は、通常、無機物質からなる。透明なコーティング中に存在するオブジェクトは、通常、中空の鉱物の粒子であることが多い。この中空の鉱物の粒子は、例えばコロイド状の粒子がテクスチャード加工(texturation) 剤(「テンプレート」)の周囲でマイクロエマルションを形成または沈殿することによって、特にMaterials Chemistry and Physics, Vol. 111, Issue 1, (2008)またはMaterials Letters Vol. 62, Issue 24, (2008) に記載された方法によって得られる、「中空球体」型と呼ばれる、例えばシリカまたは鉱物の酸化物からなる中空の粒子である。
【0071】
別の態様によれば、本発明は、本発明の方法によって得られる反射防止特性を有する表面を有する基板に関する。この技術的範囲において、本発明の目的は、特に、本発明に係る反射防止特性を有する表面を備えた透明な基板であって、この基板は特に興味深い透過特性を有する。
【0072】
本発明の方法によって反射防止効果を付与するために表面の特性が改良される基板は、多種多様な基板であってよい。これらの基板は、好適には透明な物質であるが、特定の実施形態によれば、不透明な基板であってもよい。本発明の方法によって表面が改良される、透明な基板または不透明な基板の例としては、特に、下記の有機素材からなる支持材および無機素材からなる支持材が挙げられるが、これらの例に限定されるものではない。即ち、前者の有機素材の場合には、例えばプラスチック製素材(好適には透明)、例えばポリカーボネートからなる支持材である。また、後者の無機素材の場合には、例えば、ガラス製支持材、またはさらに一般的には、例えばシリカおよびその誘導体(例えば石英、インジウムおよびスズ酸化物)等の鉱物の酸化物に基づく支持材、または金属製支持材(例えばチタン製支持材)、およびシリコン製支持材である。
【0073】
尚、本発明によって改良される基板の表面は、堆積物が表面上に効果的に堆積できるように平面状である必要がない。実際に、本記載において上述したタイプのゾル/ゲル堆積法によって、均質かつ効果的な堆積物を表面のほぼ全体に堆積させることができる。こうすることによって、本発明の方法によって表面が改良された基板は嵩が高くなり、その形状は大して重要ではない。基板は、例えばプレート、レンズ、または成型済み部材であってもよい。
【0074】
本発明の方法によって得られる、改良された表面を有する透明な基板は、特に光学および/または眼科(眼鏡のガラス等)の分野において、或いは、表示システム(LCD画面)や太陽電池の製造において、または屋外建造物(例えば店頭)の設備のための用途において、様々な適用が可能である。
【0075】
可能な実施形態によれば、本発明に係る改良された基板は、反射防止効果を保証する、透明なコーティング以外の層を備えていてもよい。特に、基板は、本発明に従ってコーティングを形成する前に、それ自体公知である手段によって、例えば「硬質コーティング」タイプの一つまたは複数のサブ層で被覆されてもよい。
【0076】
本発明の各種態様および効果は、以下の実施例でさらに明らかになる。実施例では、ハイブリッド型のシリカおよびポリエステル粒子が分散したオブジェクトとして適用され、この粒子は、200nmの重合体のスキンで被覆された、直径が80nmに等しいシリカ製コアを備えている。
【0077】
これらのハイブリッド型粒子は、以下の記載では「ハイブリッド素材HR1」と表記し、下記の実施例1〜実施例4の全てにおいて適用される。また、このハイブリッド型粒子は、以下に記載する手順によって調製した。
【0078】
〔ハイブリッド素材HR1の合成〕
念入りに攪拌を行って、大きさが15nmに等しいシリカ粒子(Sigma Aldrich)の20質量%の水性分散液を作製した。
【0079】
続けて攪拌しながら、反応媒体中に存在するシリカの質量を基準として50質量%のシラン(テトラメトキシシランTMOS)を、上記のようにして生成した分散液に、塩基性触媒(アンモニア)の存在下で40℃にて加え、次に、エタノールに溶解させたジヒドロキシル化前駆体を0.6モル当量(基準はTMOSの導入量)(シリカ製コアへの重合体の層の「接着状態」を改善することを目的として)添加した。
【0080】
使用したジヒドロキシル化前駆体は、イソシアナートプロピルトリエトキシシランおよびジエタノールアミンの等モル混合物を、ジブチル−スズジラウレートの存在下、温度50℃で生成する(producing) ことによって調製した。そして、この反応媒体に、TMOSを基準として(換算で)それぞれ8モル当量の量のトリメチロールプロパン(TMP)およびジメチルコハク酸塩(DMS)を添加した。
【0081】
上記反応媒体を、数分間放置して反応を進めさせて、存在する溶媒(水およびエタノール)を真空中、95℃で蒸発させた。こうすることによって、大きさが80nmにほぼ等しいシリカの粒子を得た。
【0082】
そして、次の化学式によって表わされるビスグアニジン触媒を、高い減圧(−1bar)下、40℃で反応媒体に導入した。
【0083】
【化3】

【0084】
この触媒を導入することによって、反応媒体中に存在するTMPおよびDMSの重縮合が誘発され、これによって、重合体のスキン(ポリエステルタイプのスキン)がシリカ粒子の周囲に生成された。
【0085】
次に、こうして得られたコア/スキンタイプの構造を改良して、(水または単量体中で)分散できるようにした。この目的を実現するために、得られた粒子にTMPを基準として1.2モル当量のメチルメタクリレートを(40℃、−1barの減圧下で)添加することによって、得られたオブジェクトの表面に対してメタクリレート官能基を用いた官能性付加を行った。
【0086】
これらの各種処理を経て、ハイブリッド素材HR1が、200nmの重合体のスキンで被覆された、直径が80nmに等しいシリカ製コアを有する、ハイブリッド型のシリカ−ポリエステル粒子を備えた粉末として得られた。
【0087】
〔実施例1〕
フラスコ内で、室温(25℃)において、0.340gの蒸留水、6.053gのエタノール、およびSigma Aldrich社が参照番号310331で市販する30mgの塩酸(37%)を混合した。次に、1.446gのTMOS(Sigma Aldrich社が参照番号218472で市販する、純度が99%に等しいテトラメチルオルトケイ酸塩)と0.076gのMPTS(ABCR社が参照番号AB117674で市販する、純度が97%に等しい3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン)との混合物を添加した。
【0088】
そして、フラスコを密閉して混合物を攪拌しながら室温(25℃)で4時間反応させた。
【0089】
0.152gの前記シリカ−ポリエステルのハイブリッド素材HR1を、0.038gの蒸留水と0.673gの無水エタノールとの混合物に溶解させた溶液を、反応媒体に添加した。
【0090】
こうして得られた媒体を、攪拌しながら室温(25℃)で1時間放置し、その後、室温で20時間保管した。
【0091】
これらの各種ステップを経て得られた組成物(部分的にゲル化したゾル)70μLを、2.5cm×2.5cmおよび厚さが0.4cmに等しい、透明な平面状のポリカーボネート製プレートの表面上に堆積させた。本技術的範囲において使用したポリカーボネートは、Bayer社がMakrolonというブランド名で市販する、抗UV処理済みのポリカーボネートである。
【0092】
組成物のプレート上での堆積は、このプレート上に上記ゾルを堆積させた直後に、プレートを2,000回転/秒の速さで10秒間回転させることによって、遠心分離コーティング法(スピンコーティング)で実施した。こうすることによって、連続性のある、均質で透明なコーティングが、プレートの表面上に得られた。
【0093】
次に、こうして得られた堆積物を載せたポリカーボネート製プレートをオーブン内に設置し、30℃で1時間、50℃で1時間、70℃で1時間の熱処理に供した。
【0094】
こうすることによって、290nmのコーティング層をポリカーボネートの表面上に堆積させることができた。
【0095】
ポリカーボネート製プレートをこのようにコーティングすることによって、プレートの反射特性が低下する(反射防止処理)。これは、処理の前後に、プレートを透過する電磁波を測定することによって実証される。本実施例では、プレートを処理することによって、プレートを透過する波長550nmの光が+2.9%増加した。
【0096】
〔実施例2〕
フラスコ内で、室温(25℃)において、0.340gの蒸留水および6.053gのエタノールを混合した。次に、1.446gのTMOSと、0.076gのMPTSと、0.152gのテトラヒドロフルフリルメタクリレート(Sartomer Europe社が参照番号SR203で市販)との混合物を添加した。
【0097】
フラスコを密閉して、混合物を攪拌しながら室温(25℃)で4時間反応させた。
【0098】
0.152gの前記シリカ−ポリエステルのハイブリッド素材HR1を、0.038gの蒸留水と0.673gの無水エタノールとの混合物に溶解させた溶液を、0.009gのIrgacure184(Ciba社が市販するラジカル光開始剤)と共に反応媒体に添加した。
【0099】
こうして得られた媒体を、攪拌しながら室温(25℃)で1時間放置し、その後、室温で20時間保管した。
【0100】
これらの各種ステップを経て得られた組成物70μLを、次に、実施例1と同じ条件で、透明な平面状のポリカーボネート製プレートの表面上に堆積させた(スピンコーティング法を用いた堆積)。さらに、こうして得られた堆積物を載せたポリカーボネート製プレートをオーブン内に設置し、30℃で1時間、50℃で1時間、70℃で1時間の熱処理に供した。
【0101】
そして、この熱処理によって得られる硬化膜で被覆されたポリカーボネート基板を、電球Hが設けられたFusion F300S型ランプの下を3m/分の速さで通過させることによって(これは、UV−A(320nm〜390nm)において1.7J/cm、UV−V(395nm〜445nm)において1.3J/cmのエネルギーに対応する)、該基板を該ランプで露光した。
【0102】
こうすることによって、厚さが290nmの硬化および架橋結合したコーティング層を、ポリカーボネートの表面上に堆積させることができた。
【0103】
このコーティングは反射防止処理であり、プレートを透過する波長570nmの光が+2.9%増加した。
【0104】
〔実施例3〕
フラスコ内で、室温(25℃)において、Tween85を2質量%含有する0.340gの蒸留水と、6.053gのエタノールとを混合した。次に、1.446gのTMOS、0.076gのMPTS、0.009gのIrgacure184、および0.152gのテトラヒドロフルフリルメタクリレート(Sartomer Europe社が参照番号SR203で市販)の混合物を添加した。フラスコを密閉して、混合物を攪拌しながら室温(25℃)で4時間反応させた。
【0105】
0.152gの前記シリカ−ポリエステルのハイブリッド素材HR1を、0.038gの蒸留水と0.673gの無水エタノールとの混合物に溶解させた溶液を、反応媒体に添加した。
【0106】
こうして得られた媒体を、攪拌しながら室温(25℃)で1時間放置し、その後、室温で20時間保管した。
【0107】
これらの各種ステップを経て得られた組成物70μLを、次に、実施例1と同じ条件で、透明な平面状のポリカーボネート製プレートの表面上に堆積させた(スピンコーティング法を用いた堆積)。さらに、こうして得られた堆積物を載せたポリカーボネート製プレートをオーブン内に設置し、30℃で1時間、50℃で1時間、70℃で1時間、70℃で1時間の熱処理に供した。
【0108】
熱処理によって硬化膜で被覆されたポリカーボネート基板を、電球Hが設けられたFusion F300S型ランプの下を3m/分の速さで通過させることによって、該基板を該ランプで露光した。
【0109】
こうすることによって、厚さが310nmのコーティング層を、ポリカーボネートの表面上に堆積させることができた。
【0110】
このコーティングは反射防止処理を提供し、プレートを透過する波長620nmの光が+3.2%増加した。
【0111】
〔実施例4〕
フラスコ内で、室温(25℃)において、0.340gの蒸留水および6.053gのエタノールを混合した。次に、1.446gのTMOSと、0.076gのMPTSと、0.009gのIrgacure184と、0.152gのテトラヒドロフルフリルメタクリレート(Sartomer Europe社が参照番号SR203で市販)との混合物を添加した。
【0112】
フラスコを密閉して、混合物を攪拌しながら室温(25℃)で2時間反応させた。
【0113】
0.046gのHMDS(ABCR社が参照番号AB109172で市販する、純度が99%の1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)を媒体に添加し、混合物を攪拌しながら室温(25℃)で2時間、再度反応させた。
【0114】
0.152gの前記シリカ−ポリエステルのハイブリッド素材HR1を、0.038gの蒸留水と0.673gの無水エタノールとの混合物に溶解させた溶液を、反応媒体に添加した。
【0115】
こうして得られた媒体を、攪拌しながら室温(25℃)で1時間放置し、その後、室温で20時間保管した。
【0116】
これらの各種ステップを経て得られた組成物70μLを、次に、実施例1と同じ条件で、透明な平面状のポリカーボネート製プレートの表面上に堆積させた(スピンコーティング法を用いた堆積)。さらに、こうして得られた堆積物を載せたポリカーボネート製プレートをオーブン内に設置し、30℃で1時間、50℃で1時間、70℃で1時間、70℃で1時間の熱処理に供した。
【0117】
熱処理によって硬化膜で被覆されたポリカーボネート基板を、電球Hが設けられたFusion F300S型ランプの下を3m/分の速さで通過させることによって、該基板を該ランプで露光した。
【0118】
このようにコーティングすることによって反射防止効果が保証され、ポリカーボネート製プレートを透過する光が690nmでは+3%、435nmでは+2.6%増加した。
【0119】
〔実施例5〕
本実施例では、ポリカーボネート製の基板を、浸漬コーティング法でプレート上に堆積させた「硬質のコーティング」タイプのコーティングで前もって被覆する以外は、実施例3で作製したコーティングと同様にして、反射防止コーティングを透明な平面状のポリカーボネート製プレート上に作製した。
【0120】
この硬質のコーティングは、韓国のGaema Tech社が商品参照番号Mexmer TE 0801Pで市販するポリシロキサンタイプの市販のワニスを使用することによって作製した。
【0121】
ポリカーボネート製プレートを硬質のコーティング用ワニス中に20℃で5秒間浸漬し、5mm/sの速さで引き上げた。次に、オーブン内で120℃、1時間の熱乾燥を行った。
【0122】
この硬質のコーティングを堆積させて熱処理した後、硬質のコーティングで被覆されたプレートを、20℃に保った実施例3の組成物C3中に5秒間浸漬することによって、基板上に反射防止コーティングを作製した。
【0123】
そして基板を組成物から0.5mm/sの速さで引き抜いて、こうして得られた堆積物を載せたプレートをオーブン内に設置し、30℃で1時間、50℃で1時間、70℃で1時間の熱処理に供した。
【0124】
こうすることによって硬質のコーティングおよび反射防止コーティングで被覆されたポリカーボネート基板を、電球Hが設けられたFusion F300S型ランプの下を3m/分の速さで通過させることによって、該基板を該ランプで露光した。
【0125】
このようにコーティングすることによって反射防止効果が保証され、ポリカーボネート製プレートを透過する光が、470nm〜800nmの波長では+5%増加した。
【0126】
〔比較例1〕
比較することを目的として、PMMA(ポリメチルメタクリレート)製の堆積物を、先述の実施例で使用したような透明な平面状のポリカーボネート製プレート上に作製した。
【0127】
PMMAの堆積は以下のように実施した。
【0128】
分子量Man=77,000g/mol,Mw=10,000g/molの1.3gのPMA重合体(Interchim社が市販)を、トルエン(pure grade、Xilab社)中に溶解させることによって、PMMAのワニスを調製した。溶解はマグネチックスターラーを用いて10分間実施した(透明な溶液が得られた)。
【0129】
こうして得られたPMMAのワニス100μLを、実施例1と同じ条件で、平面状のポリカーボネートの表面上に堆積させた(スピンコーティング法を用いた堆積)。さらに、堆積物を載せたポリカーボネート製プレートを、室温(25℃)で2時間放置した。
【0130】
こうすることによってPMMAを均質にコーティングすることによって反射防止効果が保証され、ポリカーボネート製プレートを透過する光が、800nmでは+2.4%、540nmでは+1.6%増加した。
【0131】
PMMAの屈折率(1.49)に起因する、可視域におけるこの反射防止効果は、実施例1〜実施例4の技術的範囲において得られる反射防止特性に比べてはっきりしない。本例は、本発明によって特定の反射防止効果が得られることを実際に浮き彫りにしており、特に本発明によって得られる効果が、堆積させた層(本例の値(1.49)に近い、実施例3の技術的範囲における1.47)の全体的な屈折率に起因するものではなく、本発明の技術的範囲において達成される「局所的な多層構造」によるものであることを実際に証明している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面を処理して、電磁放射に対する反射防止特性を基板の表面に付与する基板の表面処理方法であって、
該電磁放射に対して透明なコーティングを該表面上に積層するステップを含み、
該コーティングが、5μm未満、好ましくは2μm未満の寸法を有する複数のオブジェクトを上記積層ステップにおいて形成されたコーティング層内に分散した状態で含有し、
該オブジェクトが、該電磁放射に対して透明な基材からなる領域であり、かつ、下記のように異なる屈折率を有する領域を少なくとも二つ備え、該二つの領域は、コアと、コアを囲むスキンと呼ぶ層であり、
上記コアは第一の屈折率nを有し、
上記スキンは、コアの屈折率nとは異なる第二の屈折率nを有し、
コア/スキンのアッセンブリーの寸法に対するコアの寸法の比が1:1.5〜1:5である、基板の表面処理方法。
【請求項2】
表面を処理する上記基板が、透明な基板、例えばガラス基板またはポリカーボネート基板である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記積層した透明なコーティングが単一層のコーティングであり、好ましくは、厚さが10nm〜10μmの範囲の単一層のコーティングである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記分散したオブジェクトにおいて、
上記コアの寸法が1nm〜800nmであり、
上記コアを囲み第二の屈折率nを有する層によって囲まれた、第一の屈折率nを有する上記コアによって形成される上記コア/スキンのアッセンブリーの寸法が、2nm〜1μmであり、
上記コア/スキンのアッセンブリーの寸法に対するコアの寸法の比が1:1.5〜1:5である、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記コアの屈折率とコアを囲むコーティング層の屈折率との差(n−n)が、絶対値で少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.1である、請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記透明なコーティングが、ワニスの層または重合体の層である、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
上記透明なコーティングが、鉱物アルコキシド(mineral alkoxide)の加水分解によって得られるゾル/ゲルのコーティングである、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
上記ゾル/ゲルのコーティングが、初期段階では(i)少なくとも一つの鉱物アルコキシドと、(ii)UVによってまたは熱処理の影響下において架橋結合が可能な少なくとも一つの単量体とを備えた混合物から得られる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
上記ゾル/ゲルのコーティングが、少なくとも一つの界面活性剤の存在下で合成される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
通常、上記ゾル/ゲルのコーティングの合成を、四つの加水分解可能な基を有する少なくとも一つのシランと、四つ未満の加水分解可能な基を有し、好ましくは、式RSiX4−nで表わされる(但し、nは1,2または3に等しい整数であって、各基Rは加水分解不可能な有機基を示し、互いに同じであっても異なっていてもよく、Xは加水分解可能な基である)少なくとも一つのシランとを備えた複数のアルコキシドの混合物を、鉱物アルコキシドとして使用することによって行う、請求項7〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
本発明に従って処理される基板上に堆積した透明なコーティング中に存在するオブジェクトのコアが、有機性を有し、
この有機コアを囲む層(スキン)が重合体の層である、請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
本発明に従って処理される基板上に堆積した透明なコーティング中に存在するオブジェクトのコアが、無機性を有し、
この無機コアを囲む層(スキン)が重合体の層である、請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
本発明に従って処理される基板上に堆積した透明なコーティング中に存在するオブジェクトのコアが、無機性を有し、
この無機コアを囲む層(スキン)が、コア中に存在する無機物質とは異なる無機物質からなる、請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
本発明に従って処理される基板上に堆積した透明なコーティング中に存在するオブジェクトのコアが、中空の空洞であり、
上記コアを囲む層(スキン)が無機物質からなる、請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか一項に記載の方法によって得られる、反射防止特性を有する表面を有する基板。

【公表番号】特表2012−502874(P2012−502874A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527389(P2011−527389)
【出願日】平成21年9月23日(2009.9.23)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051802
【国際公開番号】WO2010/034936
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(510258382)
【Fターム(参考)】