説明

屈折率分布型液晶光学素子および画像表示装置

【課題】簡素な構造で駆動が容易な低コストの屈折率分布型液晶光学素子および表示装置を提供する。
【解決手段】第1基板と第2基板との間に挟持される液晶層と、第1基板上の液晶層側に設けられ、第1方向に沿って配列される複数の第1電極、複数の第2電極および複数の第3電極と、第2基板上の液晶層側に形成された第4電極とを備え、第3電極のそれぞれに対して、第3電極の両側のうちの一方の側に前記第1電極と第2電極とを有する第1電極対が配置されるとともに、他方の側に第1電極と第2電極とを有する第2電極対が配置され、第1電極対において、第2基板からみて第1方向に沿った断面における第2電極の中心は第1電極の中心よりも第3電極側に位置するように配置され、第2電極対において、第2基板からみて第1方向に沿った断面における第2電極の中心は第1電極の中心よりも第3電極側に位置するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、屈折率分布型液晶光学素子および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像(3次元画像)を表示可能な表示装置が提案されている。また、2次元画像の表示と3次元画像の表示とを同一の表示装置で切り替えて実現したいという要求があり、その要求に応えるための技術が提案されている。例えば、液晶レンズアレイ素子を用いて2次元画像表示と3次元画像表示とを切り替える技術である。この液晶レンズアレイ素子は、一方の基板上に周期的に配置された棒状の電極を有している。そして、対向するもう一方の基板上に形成された電極との間で電界分布を作り出し、この電界分布により液晶層の配向を変化させ、レンズとして作用する屈折率分布を生成する。電極に印加する電圧を制御することにより、レンズ作用をオンまたはオフすることができるため、2次元画像表示と3次元画像表示とを切り替えることができる。このように電界により液晶分子の配向方向を制御する方式は、液晶屈折率分布型レンズ方式、または、液晶GRIN(gradient index)レンズ方式)と呼称される。
【0003】
また、一方の基板上に周期的に配置された棒状の電極に2種類の異なる電圧を印加する技術が提案されている。そして、2種類の異なる電圧を印加することにより、レンズアレイとしてより好ましい屈折率分布を生成している。
【0004】
このように、液晶GRINレンズを実現するための試みが行われている。ただし、液晶GRINレンズを用いて良好な3次元画像表示を実現するためには、液晶GRINレンズの焦点距離を、液晶GRINレンズの主点と画像表示部の画素面との距離程度に設定する必要がある。このためには、液晶GRINレンズの液晶層にある程度の屈折力が求められることになる。しかし、液晶分子の屈折率異方性は通常0.2程度と小さいため、液晶層の厚みを通常の表示パネルよりもかなり大きくする必要がある。これは、液晶の使用量を増大させてコスト高を招くばかりか、製造における難易度も高くなるという課題がある。
【0005】
そこで、液晶GRINレンズをフレネルレンズ化することが提案されている。これは、一方の基板上に多数の棒状の電極を設置し、多数の異なる電圧を印加することで、フレネルレンズとしての屈折率分布を実現している。
【0006】
しかしながら、フレネルレンズ型の液晶GRINレンズアレイにおいては、各レンズに多数の棒状の電極を配置する必要があり、透明電極を微細に加工する技術が必要になる。透明電極の微細加工は、高精度のステッパやドライエッチング装置などが必要となるため、コストアップとなる課題がある。また、多数の棒状電極に異なる多数の電圧を印加する必要があり、駆動が複雑でコストアップとなる課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−102038号公報
【特許文献2】特開2010−224191号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0026920号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、簡素な構造で駆動が容易な低コストの屈折率分布型液晶光学素子および表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態の屈折率分布型液晶光学素子は、第1基板と、前記第1基板に対向配置される第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層と、前記第1基板上の前記液晶層側に設けられ、第1方向に沿って配列される、複数の第1電極と、前記第1基板上の前記液晶層側に前記第1電極に対応して設けられ、前記第1方向に配列される複数の第2電極と、前記第1基板上の前記液晶層側に設けられ、前記第1方向に配列される複数の第3電極と、前記第2基板上の前記液晶層側に形成された第4電極と、を備え、前記第3電極のそれぞれに対して、第3電極の両側のうちの一方の側に前記第1電極とこの第1電極に対応する第2電極とを有する第1電極対が配置されるとともに、他方の側に第1電極とこの第1電極に対応する第2電極とを有する第2電極対が配置され、前記第1電極対において、前記第2基板からみて、前記第1方向に沿った断面における前記第2電極の中心は前記第1電極の中心よりも前記第3電極側に位置するように配置され、前記第2電極対において、前記第2基板からみて、前記第1方向に沿った断面における前記第2電極の中心は前記第1電極の中心よりも前記第3電極側に位置するように配置されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態による画像表示装置を示す断面図。
【図2】第1実施形態における液晶GRINレンズアレイの上面図。
【図3】図2の切断線A−Aによって切断した電圧印加時の液晶ダイレクタ分布を示す断面図。
【図4】横軸にレンズピッチ方向での座標をとり、縦軸に光路長をとって、図3に示す液晶ダイレクタ分布から計算した屈折率分布を示すグラフ。
【図5】第1実施形態の画像表示装置を示すブロック図。
【図6】第1実施形態の第1変形例による画像表示装置を示す断面図。
【図7】第1実施形態の第2変形例による画像表示装置を示す断面図。
【図8】第1実施形態の第3変形例による画像表示装置を示す断面図。
【図9】第1実施形態の第4変形例による画像表示装置を示す断面図。
【図10】第2実施形態による画像表示装置を示す断面図。
【図11】第3実施形態による画像表示装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作をおこなうものとして、重複する説明を適宜省略する。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態による画像表示装置について、図1乃至図5を参照して説明する。第1実施形態の画像表示装置を図1に示す。この実施形態の画像表示装置は、屈折率分布型液晶光学素子1と、画像表示部5とを備えている。画像表示部5は、表示面にマトリクス状に配列された画素を有する表示パネルであり、例えば、液晶パネル、有機ELパネル、プラズマディスプレイパネル等を好適に用いることができる。なお、本実施形態においては、画像表示部5は、矢印が示す第1方向61の直線偏光を出射するように構成されている。また、本実施形態においては、屈折率分布型液晶光学素子1は、液晶GRINレンズアレイであり、この液晶GRINレンズアレイ1の上面図を図2に示す。
【0013】
この液晶GRINレンズアレイ1は、画像表示部5の前面に設けられ、透明な第1基板11と、第1基板11に対向配置された透明な第2基板12との間に、液晶層4が挟持された構成を有している。第1基板11の液晶層側の面には、透明な第1電極21と、透明な第2電極22と、透明な第3電極23と、透明な第5電極25と、透明な誘電体層3とが設けられている。これらの第1電極21、第2電極22、第3電極23、および第5電極25はそれぞれ、図2に示すように、第1方向61と交差する第2方向62に延在するように設けられる。なお、図2では、第2方向62は、第1方向61と直交するように配置されるが、直交していなくてもよい。また、第2基板12の液晶層側の面には、透明な第4電極24が設けられている。この第4電極24は、上記第1電極21、第2電極22、第3電極23、および第5電極25に対向するように設けられ、第2基板12の液晶層側の面のほぼ全面に設けられる。液晶層4は、液晶分子41を含んでおり、本実施形態においては、液晶分子41として一軸性複屈折を示す物質を用いている。第1乃至第5電極に電圧を印加しない場合の液晶分子41の初期配向は、その長軸方向が第1方向61となっている。
【0014】
第1基板11の液晶層側の面上には、第1方向61に第3電極23が複数個並行に配置され、各第3電極の両側には第1電極21が配置された構成となっている。隣接する第3電極間のほぼ中央に第5電極25が配置された構成となっている。これらの第1電極21、第3電極23、および第5電極は、誘電体層3によって覆われている。そして、この誘電体層3上に、第1電極21のそれぞれに対応するように第2電極22が設けられている。したがって、第2電極22は、第1電極21、第3電極23、および第5電極と誘電体層3によって電気的に絶縁される。また、各第2電極22は、第2方向に延在する中心軸が、対応する第1電極21の中心軸に対して第3電極23側に位置するように配置される。
【0015】
そして、本明細書では、図面上で第3電極23の左側に配置される第1電極21とこの第1電極21に対応する第2電極22との組を電極対200Aと呼び、第3電極23の右側に配置される第1電極21とこの第1電極21に対応する第2電極22との組を電極対200Bと呼ぶ。すると、第1基板11上には、図1の左から、電極対200A、第3電極23、電極対200B、第5電極25、電極対200A、第3電極23、電極対200Bの順に配置された構成を有している。すなわち、隣接第3電極23の間には電極対200Aと電極対200Bとが配置され、これらの電極対200Aと電極対200Bとの間には第5電極が配置された構成となっている。また、第3電極23の両側の配置される、電極対200Aおよび電極対200Bは、第3電極23に対して対称に配置されている。すなわち、図2に示す上面図で見た場合に、第3電極23の中心軸に対して線対称に配置されている。
【0016】
次に、電極対200A、200B間の距離について説明する。第2基板側から見たとき、第3電極23の中心軸とこの第3電極23の左側に配置される電極対200Aの中心軸との距離をP1とし、上記第3電極の中心軸とこの第3電極23の右側に配置される電極対200Bの中心軸との距離をP2とする。このとき、隣接する第3電極23間に配置される電極対200Aと電極対200Bとのそれぞれの中心軸間の距離をP3とすると、
P3 > P1+P2
の条件を満たすように配置された構成となっている(図2)。なお、第3電極23の左側に配置される電極対200Aの中心軸は、上記第3電極23に対して電極対200Aの第2方向62に平行な、最も遠い側面と最も近い側面との真ん中に位置し、第3電極23の右側に配置される電極対200Bの中心軸は、上記第3電極23に対して電極対200Bの第2方向62に平行な、最も遠い側面と最も近い側面との真ん中に位置する。
【0017】
次に、第1実施形態の表示装置における液晶GRINレンズアレイ1の動作について説明する。各電極に電圧を印加した場合の、図2に示す切断線A−A線で切断した面内における液晶ダイレクタの分布を図3に示す。この液晶ダイレクタの分布は、シミュレーションによって求めた。図3に示す液晶ダイレクタ分布から計算した屈折率分布を図4に示す。図4に示す横軸は、レンズピッチ方向での座標であり、図2に示す第5電極25の中心軸を原点にとり、第1方向61に平行な方向をx軸とし、上記原点からの距離を示している。また、図4の縦軸は光路長を示している。
【0018】
第1実施形態における液晶GRINレンズアレイ1においては、第4電極24を基準電圧(例えばGND)としたとき、第5電極25は第4電極24と同じ電圧が印加されている。そして、電極対200A、電極対200Bのいずれにおいても、第2電極22より第1電極21の方が、高い電圧が印加されている。具体的には、第1電極21の電圧をV1、第2電極22の電圧をV2とすれば、V1>V2である。
【0019】
そして、第2電極22の電圧V2は、第5電極25の電圧より高くなるように設定されている。ただし、第2電極22と第5電極25との電圧差は、液晶層4のしきい値電圧Vthより小さくなるように設定されている。すなわち、V2<Vthである。また、第3電極23の電圧V3は、第1電極21の電圧V1と同じ電圧が印加されている。
【0020】
このように電圧が印加された場合の液晶分子41の配向状態について説明する。まず、第5電極25と第4電極24との間においては、電圧差がゼロであるため、図3及び図4に示すように、液晶分子41は初期の配向状態を保っている。すなわち、見かけの屈折率が大きく、その結果として光路長も大きくなっている。
【0021】
次に、第1電極21と第4電極24との間では、所定の電圧V1が印加されており、液晶分子41は立ち上がっている。この結果、見かけの屈折率は小さくなり、その結果として光路長も小さくなっている。なお、第5電極25と第1電極21との間では、屈折率は序々に変化し、これに従って光路長も序々に変化している。
【0022】
一方、第2電極22と第4電極24との間では、電圧差が液晶層4のしきい値電圧Vthよりも小さいV2に設定されている。このため、液晶分子41の立ち上がりはほとんど見られない。この結果、見かけの屈折率が大きくなり、光路長も大きくなっている。なお、第1電極21と第2電極22が積層して形成されているため、この部分における屈折率の変化は急峻なものとなっている。
【0023】
そして、第3電極23と第4電極24との間では、前述したように第1電極21の電圧V1と同じ電圧が印加されているため、見かけの屈折率は小さくなり、結果として光路長も小さくなっている。
【0024】
このようにして、フレネルレンズとしての屈折率分布(光路長分布)が実現されることになる。
【0025】
なお、図5に示すように、液晶GRINレンズアレイ1は、駆動回路81によって駆動され、液晶GRINレンズアレイ1の各電極21〜25には上述した条件を満たす電圧が印加される。また、画像表示部5は、駆動回路85に駆動される。このとき、駆動回路81は駆動回路85と同期し、画像表示部5が3次元画像を表示する場合には、上述した条件を満たす電圧が駆動回路81によって液晶GRINレンズアレイ1の各電極21〜25に印加される。このとき、図1に示す隣接する第3電極23間がレンズの1単位、すなわちレンズピッチとなり、3次元画像を表示する際の射出瞳の一つに対応する。また、画像表示部5が2次元画像を表示する場合には、駆動回路81によって液晶GRINレンズアレイ1の各電極21〜25には基準電圧(GND)が印加される。
【0026】
次に、第1実施形態の効果について説明する。
【0027】
本実施形態においては、上述のように、電極対200Aにおける第2電極22の中心軸は第1電極21の中心軸よりも第3電極23側に配置され、電極対200Bにおける第2電極22の中心は第1電極21の中心よりも第3電極23側に配置される。これにより、従来技術に比べて、少ない電極数でフレネルレンズアレイを実現できる。このため、透明電極を微細に加工する専用の技術を用いずに、通常の半導体製造技術を用いて加工することが可能となり、低コストで液晶GRINレンズアレイを生産することができる。また、電極数が少ないため、制御に要する電圧の種類も少なくすることができ、駆動を単純化して低コスト化が可能となる。
【0028】
また、本実施形態のように第1電極21とこの第1電極21に対応する第2電極22とを形成することにより、フレネルレンズとして適切な急峻な屈折率分布を作ることができ、レンズとしての高い性能を実現することができる。このような急峻な屈折率分布を生成するためには、上記第1電極21と上記第2電極22との間隙、すなわち、上記第1電極21と上記第2電極22との最小距離を小さくすることが好ましいことが、本発明者らの検討により判明した。ここで、第1電極21と第2電極22との最小距離とは、第1電極21の任意の点と、第2電極22との任意の点との距離のうちの最小値を意味する。本実施形態においては、上記第1電極21と上記第2電極22とは、第4電極24からみたとき、オーバーラップしているので、両電極間の間隙が誘電体層3の厚さと第1電極21の厚さの差となっている。この結果、図3に示すように、電気力線はオーバーラップしている部分が両電極間に閉じ込められ、オーバーラップしていない部分から漏れ出た電界によって急峻な屈折率分布が生成される。しかし、第1電極21と第2電極22との第1方向61における間隔、すなわち第4電極24からみたときのオーバーラップしていない部分の第1方向61における最大距離は、少なくとも誘電体層3の厚み以下となることが好ましい。これは、上記最大距離が誘電体層3の厚みよりも大きくなると、両電極間の漏れ電界が大きくなり、第1方向61に平行な電界成分が生成されて、急峻な屈折率分布を生成するのが困難になるからである。ここで、第1電極21と第2電極22との最大距離とは、第1電極21の任意の点と、第2電極22との任意の点との距離のうちの最大値を意味する。
【0029】
また前述したように、第1方向61における各電極の配置を、
P3 > P1+P2
となるように配置することにより、液晶層4の厚みをより低減することが可能となる。これは、図4に示す屈折率分布を参照すれば、レンズの光軸、すなわち第5電極25の中心軸近辺にフレネルの段差を設けるよりも、レンズの端部、すなわち第3電極23の中心軸近辺に設けた方が、液晶層4の厚みを低減できることから明白である。なお、液晶層4の厚みが最も薄くできるのは、図4に示す屈折率分布において、光軸における値と、フレネルの段差部における値が一致する場合である。このような屈折率分布が実現されるように、各電極を予め配置するととともに、印加電圧を調整することが好ましい。
【0030】
また、第1実施形態の液晶GRINレンズアレイ1に印加される電圧に関しては、第2電極22と第4電極24との間の電圧差が、液晶層4のしきい値電圧Vthより小さい値に設定されている。これにより、第2電極22と第4電極24間の液晶分子41の立ち上がりを抑制することが可能となり、フレネルレンズとして適切な急峻な屈折率分布を実現することができる。更には、第2電極22に印加される電圧を大きくすることができるため、第1電極21との電圧差を小さくすることが可能となり、第1電極21と第2電極間の漏れ電界を抑制できる。この結果、漏れ電界の第1方向61に平行な成分を低減して、より急峻な屈折率特性を実現できる。
【0031】
なお、第1実施形態においては、第1電極21とこの第1電極に対応する第2電極22に関して、第3電極23側と反対側、すなわち第5電極25側の端部(側面)のそれぞれの位置は、図1に示すように、第2電極22の端部の位置が第1電極21の端部の位置より第3電極23側にある。しかし、第2電極22の端部の位置が第1電極21の端部の位置より第5電極25側にはみ出していてもよい。しかし、誘電体層3の厚みをtとすると、第2電極22の端部の位置が第1電極21の端部の位置より第5電極25側にはみ出す量はt以下となっていることが好ましい。これは、仮に、はみ出す量がtよりも大きい場合には、第2電極22に起因する電気力線が第1電極21で十分に遮蔽されず、レンズとしての屈折率分布が乱されて性能が低下するからである。すなわち、上述のように構成することにより、フレネルレンズとして適切な屈折率分布を実現することができ、性能を向上することができる。
【0032】
また、第1実施形態においては、第1電極21とこの第1電極21に対応する第2電極22に関する、第3電極23側のそれぞれの端部の位置は、図1に示すように第2電極22の端部の位置が第1電極21の端部の位置よりはみ出している。このはみ出し量は、誘電体層3の厚みをtとすると、t以上であることが好ましい。これは、仮にはみ出す量がtよりも小さい場合には、第2電極22に起因する電気力線が第1電極21で遮蔽されてしまい、フレネルレンズとしての性能が低下する。すなわち、上述のように構成することにより、レンズ性能を向上することができ、好ましい。
【0033】
更には、第1電極21とこの第1電極21対応する第2電極の幅を比較した場合、第4電極24から見て、第1電極21と重ならない第2電極22の部分の幅が、第1電極21の幅よりも大きい方が好ましい。このように構成することにより、フレネルレンズに特有の屈折率分布を好適に実現することができる。すなわち、なだらかな屈折率分布を実現すべき第2電極22の電極幅は、より急な屈折率分布を実現すべき第1電極21の電極幅よりも大きくなるように構成する方が好ましい。
【0034】
第1実施形態においては、電極対200Aと電極対200Bは、第3電極23に対して対称に配置されるものとして説明したが、これに限定されるものではない。必ずしも対称に配置される必要はない。ただし対称に配置した方が、レンズとしての屈折率分布をより望ましいものにすることができ、好ましい。
【0035】
また、第1実施形態においては、第2電極22が誘電体層3上に配置されているので、第2電極22は、第1電極21に比べて液晶層4側に位置し、これにより、よりなだらかな屈折率分布を実現すべき部分(電極22の近辺)の電界の乱れを抑制することが可能となり、レンズ性能を向上することができる。
【0036】
また、第1実施形態においては、隣接する第3電極23間に第5電極25が設けられているので、レンズとしての屈折率分布をより理想的にすることが可能となり、レンズ性能を向上することができる。
【0037】
以上説明したように、第1実施形態によれば、簡素な構造で駆動が容易な低コストの屈折率分布型液晶光学素子および表示装置を提供することができる。
【0038】
(第1変形例)
次に、第1実施形態の第1変形例による画像表示装置を図6に示す。図6は、第1変形例の画像表示装置を示す断面図である。この第1変形例の画像表示装置は、図1に示す第1実施形態の画像表示装置において、液晶GRINレンズアレイ1を液晶GRINレンズアレイ1Aに置き換えた構成となっている。この液晶GRINレンズアレイ1Aは、図1に示す液晶GRINレンズアレイ1において、第1電極21および第3電極を誘電体層2上に配置し、第2電極22を第1基板11上に配置した構成となっている。
【0039】
このように構成された第1変形例も第1実施形態と同様に、簡素な構造で駆動が容易な低コストの屈折率分布型液晶光学素子および表示装置を提供することができる。また、第1変形例においては、第1電極21、第3電極23が、誘電体層3の液晶層4側に配置されている。これにより、第1電極21及び第3電極23においては、誘電体層3による電圧降下を抑制することができる。第1電極21及び第3電極23は、第2電極22及び第5電極25よりも相対的に高い電圧を印加するため、駆動電圧低減の効果は大きい。すなわち、駆動回路の最大出力電圧を低減することができるため、駆動回路の簡素化が可能になるばかりか、消費電力を低減することができ好ましい。
【0040】
(第2変形例)
次に、第1実施形態の第2変形例による画像表示装置を図7に示す。図7は、第2変形例の画像表示装置を示す断面図である。この第2変形例の画像表示装置は、図1に示す第1実施形態の画像表示装置において、液晶GRINレンズアレイ1を液晶GRINレンズアレイ1Bに置き換えた構成となっている。この液晶GRINレンズアレイ1Bは、図1に示す液晶GRINレンズアレイ1において、第3電極23を誘電体層3上に配置した構成となっている。
【0041】
このように構成された第2変形例も第1実施形態と同様に、簡素な構造で駆動が容易な低コストの屈折率分布型液晶光学素子および表示装置を提供することができる。
【0042】
また、第2変形例のように、第2電極22が第1電極21に比べて液晶層4側に設けられていることにより、第1変形例に比べて、よりなだらかな屈折率分布を実現すべき部分(電極22の近辺)の電界の乱れを抑制することができ、レンズ性能を向上することができる。
【0043】
(第3変形例)
次に、第1実施形態の第3変形例による画像表示装置を図8に示す。図8は、第3変形例の画像表示装置を示す断面図である。この第3変形例の画像表示装置は、図6に示す第1変形例の画像表示装置において、液晶GRINレンズアレイ1Aを液晶GRINレンズアレイ1Cに置き換えた構成となっている。この液晶GRINレンズアレイ1Cは、図6に示す液晶GRINレンズアレイ1Aにおいて、第5電極25を削除した構成となっている。
【0044】
このように構成された第3変形例も第1変形例と同様に、簡素な構造で駆動が容易な低コストの屈折率分布型液晶光学素子および表示装置を提供することができる。
【0045】
(第4変形例)
次に、第1実施形態の第4変形例による画像表示装置を図9に示す。図9は、第4変形例の画像表示装置を示す断面図である。この第4変形例の画像表示装置は、図1に示す第1実施形態の画像表示装置において、液晶GRINレンズアレイ1を液晶GRINレンズアレイ1Dに置き換えた構成となっている。この液晶GRINレンズアレイ1Dは、図1に示す液晶GRINレンズアレイ1において、第1電極21を誘電体層3上に配置し、第2電極22を第1基板11上に配置した構成となっている。すなわち、第1基板11上に、第2電極22、第3電極23、第5電極25が配置された構成となっている。
【0046】
一般に、第1基板11上に形成された電極と誘電体層3上に形成された電極とは、形成する際に位置あわせ誤差が生じることもある。この位置合わせ誤差による影響を低減するため、本変形例では、第3電極23、第5電極25、第2電極22を同一層、すなわち第1基板11上に形成するのが有効である。これにより、レンズ端とレンズ中心の位置関係が同一の露光プロセスで作成できるため、レンズの中心など主要部分のずれを抑制することが可能となり、レンズ性能を向上することができる。なお、レンズ端とレンズ中心の電極をどちらも第1基板11上に形成する方が、どちらも誘電体層3上に形成する場合よりも好ましい。これは、前者の方が誘電体層3の影響を排除できるためである。さらに、この第4変形例においては、第3電極23、第5電極25、第2電極22を第1基板11上に形成し、第1電極を誘電体層3上に形成したが、逆に形成してもよい。すなわち、第3電極23、第5電極25、第2電極22を誘電体層3上に形成し、第1電極を第1基板11上に形成してもよい。
【0047】
このように構成された第4変形例も第1実施形態と同様に、簡素な構造で駆動が容易な低コストの屈折率分布型液晶光学素子および表示装置を提供することができる。
【0048】
なお、第1実施形態および第1乃至第4変形例においては、液晶の初期配向は水平方向の水平配向であるものとして説明したが、液晶の初期配向はこれに限定されるものではない。他の液晶配向モードも適用可能である。
【0049】
また、第1実施形態および第1乃至第4変形例においては、屈折率分布型液晶光学素子が液晶レンズアレイ素子であるとして説明したが、これに限定されるものではない。光学素子は3次元画像の表示を実現するための性能を備えていればよい。例えば、完全なレンズとしての屈折率分布が実現されていなくてもよいし、プリズムアレイ素子として機能するものでもよい。
【0050】
更には、第1実施形態および第1乃至第4変形例においては、画像表示部5からの光線を制御する屈折率分布型光学素子として、屈折率分布型液晶光学素子を用いたが、使用される材料は液晶に限定されるものではない。同様の電気光学効果を有する材料であれば上記屈折率分布型光学素子として適用可能である。
【0051】
また、第1実施形態および第1乃至第4変形例においては、レンズアレイが第1方向61に沿って配列するものとして説明したが、これに限定されるものではない。例えば、2次元状に配列することにより、フライアイレンズを実現することもできる。
【0052】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態による画像表示装置について、図10を参照して説明する。図10は第2実施形態の画像表示装置を示す断面図である。
【0053】
この第2実施形態の画像表示装置は、図6に示す第1実施形態の第1変形例による画像表示装置において、液晶GRINレンズアレイ1Aを液晶GRINレンズアレイ1Eに置き換えた構成となっている。この液晶GRINレンズアレイ1Eは、図6に示す液晶GRINレンズアレイ1Aにおいて、第5電極25の左側でかつ第3電極23との間に、第1電極21および第2電極22を含む電極対200Bを更に少なくとも一組以上設け、第5電極25の右側でかつ第3電極23との間に、第1電極21および第2電極22を含む電極対200Aを更に少なくとも一組以上設けた構成となっている。なお、図10では、更に設けられた電極対200A、200Bは、それぞれ一組となっている。すなわち、第1実施形態および第1乃至第4変形例においては、液晶GRINレンズアレイは2段のフレネルレンズであった。これに対し、第2実施形態においては、多段のフレネルレンズが実現されている点が異なる。
【0054】
なお、第2実施形態における動作は、第1実施形態で説明した場合と同様である。
【0055】
第2実施形態においては、フレネルレンズの多段化により、液晶層4の厚みをより一層低減して、低コスト化することができる。
【0056】
また、第2実施形態も第1実施形態と同様に、簡素な構造で駆動が容易な低コストの屈折率分布型液晶光学素子および表示装置を提供することができる。
【0057】
なお、この第2実施形態のようなフレネルレンズの多段化は、第1実施形態またはそれらの変形例においても適用することができる。
【0058】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態による画像表示装置について、図11を参照して説明する。図11は第3実施形態の画像表示装置を示す断面図である。
【0059】
第1および第2実施形態においては、液晶GRINレンズアレイは誘電体層3を有し、第1電極21と第2電極22は誘電体層3を挟んで、異なる層に形成されていた。これに対し、第3実施形態においては、誘電体層3は設けられておらず、第1電極21と第2電極22が第1基板11上に形成されている点が異なる。この第3実施形態における動作は第1実施形態で説明した場合と同様である。
【0060】
この第3実施形態においては、同一の層(単層)で構成される電極で液晶GRINレンズのフレネル化を実現することができる。単層の電極は、第1乃至第2実施形態のような積層構造の電極を作製するよりもプロセス数を削減することができるため、低コスト化が可能である。
【0061】
また、第3実施形態も第1実施形態と同様に、簡素な構造で駆動が容易な低コストの屈折率分布型液晶光学素子および表示装置を提供することができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1 液晶GRINレンズアレイ
1A 液晶GRINレンズアレイ
1B 液晶GRINレンズアレイ
1C 液晶GRINレンズアレイ
1D 液晶GRINレンズアレイ
1E 液晶GRINレンズアレイ
1F 液晶GRINレンズアレイ
11 第1基板
12 第2基板
21 第1電極
22 第2電極
23 第3電極
24 第4電極
25 第5電極
3 誘電体層
4 液晶層
41 液晶分子
5 画像表示部
61 第1方向
62 第2方向
200A 電極対
200B 電極対

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に対向配置される第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に挟持される液晶層と、
前記第1基板上の前記液晶層側に設けられ、第1方向に沿って配列される、複数の第1電極と、
前記第1基板上の前記液晶層側に前記第1電極に対応して設けられ、前記第1方向に配列される複数の第2電極と、
前記第1基板上の前記液晶層側に設けられ、前記第1方向に配列される複数の第3電極と、
前記第2基板上の前記液晶層側に形成された第4電極と、
を備え、
前記第3電極のそれぞれに対して、第3電極の両側のうちの一方の側に前記第1電極とこの第1電極に対応する第2電極とを有する第1電極対が配置されるとともに、他方の側に第1電極とこの第1電極に対応する第2電極とを有する第2電極対が配置され、
前記第1電極対において、前記第2基板からみて、前記第1方向に沿った断面における前記第2電極の中心は前記第1電極の中心よりも前記第3電極側に位置するように配置され、
前記第2電極対において、前記第2基板からみて、前記第1方向に沿った断面における前記第2電極の中心は前記第1電極の中心よりも前記第3電極側に位置するように配置されることを特徴とする屈折率分布型液晶光学素子。
【請求項2】
隣接する2つの第3電極間に、一組の前記第1電極対と一組の前記第2電極対とが、配置されることを特徴とする請求項1記載の屈折率分布型液晶光学素子。
【請求項3】
隣接する2つの第3電極間に、複数組の前記第1電極対と、複数組の前記第2電極対とが、配置されることを特徴とする請求項1記載の屈折率分布型液晶光学素子。
【請求項4】
隣接する2つの第3電極間に配置された、前記一組の第1電極対と前記一組の第2電極対との、前記第1方向に沿った断面における中心間距離は、前記2つの第3電極の一方の電極の前記第1方向に沿った断面における中心とこの一方の電極の一方の側に設けられた第1電極対の前記第1方向に沿った断面における中心との間の距離と、前記2つの第3電極の一方の電極の前記第1方向に沿った断面における中心とこの一方の電極の他方の側に設けられた第2電極対の前記第1方向に沿った断面における中心との間の距離との和よりも大きいことを特徴とする請求項2記載の屈折率分布型液晶光学素子。
【請求項5】
前記第3電極の一方の側に配置された前記第1電極対と、他方の側に配置された前記第2電極対とは、前記第3電極に対して対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の屈折率分布型液晶光学素子。
【請求項6】
複数の前記第1電極、複数の前記第2電極、複数の前記第3電極が前記第1方向と異なる第2方向に沿って延伸していることを特徴とする請求項1記載の屈折率分布型液晶光学素子。
【請求項7】
前記第1電極と前記第2電極との間に誘電体層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の屈折率分布型液晶光学素子。
【請求項8】
前記第1電極対および前記第2電極対のそれぞれにおいて、前記第1方向における前記第1電極と前記第2電極との最大距離が前記誘電体層の厚み以下であることを特徴とする請求項7記載の屈折率分布型液晶光学素子。
【請求項9】
前記第1電極対と前記第2電極対との間に第5電極が設けられていることを特徴とする請求項1記載の屈折率分布型液晶光学素子。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の屈折率分布型液晶光学素子と、画像表示部とを具備することを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−137662(P2012−137662A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290644(P2010−290644)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】