説明

屋根材の製造方法及び屋根材

【課題】積み重ねた状態で輸送・保管などしても傷が付かない屋根材を簡便に製造することができる屋根材の製造方法を提供する。
【解決手段】一対の成形型1を用いて成形材料2をプレス成形することによって屋根材Aを製造する方法に関する。一方の成形型1に緩衝部材3を設置してからプレス成形することによって、緩衝部材3の一部を露出させつつ、この緩衝部材3と成形材料2とを一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瓦などの屋根材の製造方法及び屋根材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
瓦などの屋根材は、製造されてから実際に使用されるまでの間は、積み重ねた状態で保管されるのが通常であり、また、この状態でフォークリフト、トラック、船などにより施工現場など所定の場所に輸送もされている。しかし、複数の屋根材を積み重ねておくと、下の屋根材の化粧面が、上の屋根材の裏面の突起などによって傷付けられ、美観を損なうという問題が生じる。そこで、このような問題を解決するため、従来より、屋根材に様々な工夫が凝らされている(例えば、特許文献1−5参照。)。
【特許文献1】特公平7−76491号公報
【特許文献2】特許第2507159号公報
【特許文献3】特許第2940568号公報
【特許文献4】特開平10−231587号公報
【特許文献5】特許第3338647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたものにあっては、化粧モルタル板の裏面に緩衝層を形成するというものである。しかし、このものでは、緩衝層を形成するにあたって、酢酸ビニール等の混合物を加熱して液状化させたものを下金型の上面に注加する必要があって、この作業が煩雑であるばかりでなく、水の発生を伴う脱水プレス成形法を採用することができず、成形法が制限されてしまうものである。
【0004】
また、特許文献2に記載されたものにあっては、アクリル系熱硬化性樹脂液を突起の表面に塗布して硬化層を形成するというものである。しかし、このものでは、瓦を製造した後に硬化層の形成を行っており、工数が増えて煩雑である。この点、特許文献3,4に記載されたものも同様である。
【0005】
また、特許文献5に記載されたものにあっては、突起部に緩衝部材を貼着するというものである。しかし、この場合も、瓦を製造した後に緩衝部材の貼着を行っており、工数が増加して煩雑である。
【0006】
このように、いずれのものも、屋根材の傷付きを防止することはできるものの、その製造方法が煩雑であるという問題がある。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、積み重ねた状態で輸送・保管などしても傷が付かない屋根材を簡便に製造することができる屋根材の製造方法及び屋根材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る屋根材の製造方法は、一対の成形型1を用いて成形材料2をプレス成形することによって屋根材Aを製造するにあたって、一方の成形型1に緩衝部材3を設置してからプレス成形することによって、緩衝部材3の一部を露出させつつ、この緩衝部材3と成形材料2とを一体化することを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1において、緩衝部材3として、成形材料2の内部に埋入される突起部4を設けたものを用いることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、成形材料2として、ポリマーセメントを用いることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項4に係る屋根材は、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法を使用して製造して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る屋根材の製造方法によれば、積み重ねた状態で輸送・保管などしても傷が付かない屋根材を簡便に製造することができるものである。
【0013】
請求項2の発明によれば、屋根材から緩衝部材が脱落するのを防止することができるものである。
【0014】
請求項3の発明によれば、緩衝部材と成形材料との密着性を高く得ることができるものである。
【0015】
本発明の請求項4に係る屋根材によれば、積み重ねた状態で輸送・保管などしても傷が付かないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
本発明に係る屋根材は、図2に示すように、一対の成形型1を用いて製造することができる。一対の成形型1は、上型1aと下型1bとで形成してある。上型1aの下面には、屋根材Aの表面(化粧面)に凹凸模様を形成するための凹凸模様賦型部5が形成してある。この凹凸模様賦型部5で形成される模様は、図2に示すような波打ち模様に限定されるものではない。一方、下型1bの上面には、屋根材Aの裏面に凸状部6を形成するための凹状部7が複数所定間隔をあけて形成してある。この凹状部7の下部にはさらに凹所を設けて緩衝部材設置部8が形成してある。
【0018】
そして、屋根材Aを製造するにあたっては、まず、図2(a)に示すように一対の成形型1の型開きを行った後、図2(b)に示すように一方の成形型1である下型1bの緩衝部材設置部8に緩衝部材3を設置する。
【0019】
ここで、緩衝部材3としては、樹脂(プラスチック)で形成されるフィルム9を用いることができる。このフィルム9は、短尺でも長尺帯状でもいずれでもよい。樹脂としては、特に限定されるものではないが、後の工程で蒸気養生するので、この蒸気養生の工程で変形しないものを用いるのが好ましい。具体的には、ポリエチレンや塩化ビニル等は変形しやすいので、変形しにくいポリプロピレン等を用いるのが好ましい。
【0020】
また、緩衝部材3の形状は、図3(a)に示すフィルム状のものに限定されるものではなく、図3(b)(c)に示すように、突起部4を設けて形成されるものを緩衝部材3として用いることもできる。図3(b)に示すものにあっては、フィルム9の片面に複数の棒状部10を設けると共に、各棒状部10の先端に球状膨出部11を設けることによって、突起部4を形成してある。また、図3(c)に示すものにあっては、フィルム9の片面に断面T字状の突起部4を形成してある。なお、図3は屋根材Aの一部(特に凸状部6)を拡大して示すものである。
【0021】
そして、上述の図2(b)に示すようにして緩衝部材3を設置してから、図2(c)に示すように、下型1bの上面にシート状の成形材料2を載置する。
【0022】
ここで、成形材料2としては、モルタルセメント等を用いることができるが、ポリマーセメントの方が流動性に優れているので、これを用いるのが好ましい。
【0023】
上記ポリマーセメントは、セメントと水と油性物質とを主成分とするセメント含有逆エマルジョン組成物からなるものである。この組成物において、セメントと水の比率は任意に設定することができるが、質量比率で、セメント1に対して水0.3〜2の範囲が一般的に好ましい。
【0024】
セメントとしては、特に制限されるものではないが、ポルトランドセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、アルミナセメント、ハイアルミナセメント、シリカヒューム等を用いることができ、また一種単独で用いたり、二種以上を併用したりすることができる。
【0025】
また、油性物質としては、水と逆エマルジョン(W/Oエマルジョン)を形成しうるものであれば、特に制限はなく、通常疎水性の液状物質が利用され、例えば、トルエン、キシレン、灯油、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、不飽和ポリエステル樹脂、スチレンブタジエンゴムラテックス(SBR)、エチレン酢酸ビニルエマルジョン(EV)、アクリルエマルジョン(AE)等が挙げられる。特に、油性物質として、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、不飽和ポリエステル樹脂等の重合性二重結合を有するもの(ビニル単量体)を使用すれば、セメントの水和反応と重合性二重結合を有する油性物質の重合反応が同時に起こり、ポリマーがマトリックスを形成して、優れた物理的、機械的性質を有するセメント成形品が得られるので望ましい。
【0026】
また、重合性二重結合を有する油性物質を使用する場合には、油性物質の重合を促進するために、有機過酸化物や過硫酸塩等の重合開始剤、例えばt−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等を併用することが望ましい。また、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の架橋剤を併用することもできる。
【0027】
セメント含有逆エマルジョン組成物中の油性物質の含有量は、セメント含有逆エマルジョン組成物中に水との逆エマルジョンを形成でき、且つ得られる無機質成形体に所望の特性が付与されるように、適宜調整されるものであるが、例えばセメント含有逆エマルジョン組成物中の水と固形分の総量に対して5〜10体積%の範囲であることが好ましい。
【0028】
また、セメント含有逆エマルジョン組成物には上記成分の他に、乳化剤(逆乳化剤)を配合することが好ましい。乳化剤は逆エマルジョンに安定性を付与するために配合されるものであり、例えばソルビタンセスキオレート、グリセロールモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ジエチレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ジグリセロールモノオレート等の非イオン性界面活性剤、各種アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等を用いることができる。このような乳化剤の含有量も適宜調整することができるが、好ましくはセメント含有逆エマルジョン組成物中の水と固形分の総量に対して1〜3体積%の範囲とするものである。
【0029】
また、セメント含有逆エマルジョン組成物中には、さらに適宜量の軽量骨材、シリカ系骨材、有機繊維等の補強材や、各種添加剤を配合することができる。軽量骨材としては例えばフライアッシュバルーン、パーライト、シラスバルーン等のほか、発泡ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン発泡体等の有機発泡体等を用いることができ、その含有量はセメント100質量部に対して20〜40質量部の範囲とすることが好ましい。また、シリカ系骨材としては例えば砂利、ガラス粉、アルミナシリケート等を用いることができ、その含有量はセメント100質量部に対して100質量部以下とすることが好ましい。また、有機繊維としては例えばポリプロピレン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維等を用いることができ、その含有量はセメント100質量部に対して3〜6質量部の範囲とすることが好ましい。
【0030】
そして、上述の図2(c)に示すようにして下型1bの上面にシート状の成形材料2を載置した後、図2(d)に示すように、この成形材料2をプレス成形する。このとき、緩衝部材3の一部の面は、緩衝部材設置部8の面と接触しているので、この両者の間に成形材料2が浸入することはない。よって、プレス成形後において、緩衝部材3の一部を外部に露出させることができるものである。一方、図2(c)に示すように緩衝部材設置部8の面と接触していなかった緩衝部材3の残部の面は、プレス成形時において、図2(d)に示すように成形材料2と接触することとなる。よって、プレス成形後において、緩衝部材3と成形材料2とを一体化させることができるものである。なお、プレス成形時の圧力は、例えば、30〜120kgf/cm(2.94〜11.77MPa)に設定することができる。
【0031】
そして、プレス成形後において、図2(e)に示すように、型開きを行い、脱型して得られたものを155〜185℃、5〜15時間の条件で蒸気養生すると、図1に示すような屋根材Aを得ることができるものである。
【0032】
このようにして製造される屋根材Aにあっては、緩衝部材3の一部が露出しつつ、この緩衝部材3と成形材料2とが一体化して形成されているので、図4に示すように、複数の屋根材Aを同じ向きに積み重ねると、上下の屋根材A間に緩衝部材3を介在させることができ、この緩衝部材3によって、積み重ねた状態で輸送・保管などしても、屋根材Aに傷が付かないようにすることができるものである。しかも、上記緩衝部材3は、上述のように一対の成形型1のうち一方の成形型1に設置しておきさえすれば、プレス成形によって、屋根材Aの裏面に設けることができるので、傷が付かない屋根材Aを従来よりも簡便に製造することができるものである。すなわち、本発明では、緩衝部材3が液状ではないので、その取扱いが容易であり、また、脱水プレス成形法を採用することができ、成形法が特に制限されてしまうものではない。さらに、プレス成形後に緩衝部材3を設けるのではなく、プレス成形と同時に緩衝部材3を設けるので、従来よりも工数を減少させることができるものである。
【0033】
また、緩衝部材3として、図3(a)に示すものの代わりに、図3(b)(c)に示すものを用いると、プレス成形時において、突起部4が成形材料2の内部に埋入され、食い込むこととなる。そうすると、突起部4を設けていない図3(a)の緩衝部材3に比べて、突起部4を設けて形成される図3(b)(c)の緩衝部材3の方が、成形材料2と接触する面積が大きいので、成形材料2に対する密着性を高く得ることができ、その結果、屋根材Aから緩衝部材3が脱落するのを防止することができるものである。
【0034】
さらに、成形材料2として、モルタルセメントではなく、上述したポリマーセメントを用いると、樹脂で形成される緩衝部材3を用いる場合には、緩衝部材3と成形材料2との密着性を高く得ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る屋根材の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る屋根材の製造方法の一例を示すものであり、(a)〜(e)は断面図である。
【図3】本発明に係る屋根材の一部を拡大したものであり、(a)〜(c)は断面図である。
【図4】本発明に係る屋根材を積み重ねた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
A 屋根材
1 成形型
2 成形材料
3 緩衝部材
4 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の成形型を用いて成形材料をプレス成形することによって屋根材を製造するにあたって、一方の成形型に緩衝部材を設置してからプレス成形することによって、緩衝部材の一部を露出させつつ、この緩衝部材と成形材料とを一体化することを特徴とする屋根材の製造方法。
【請求項2】
緩衝部材として、成形材料の内部に埋入される突起部を設けたものを用いることを特徴とする請求項1に記載の屋根材の製造方法。
【請求項3】
成形材料として、ポリマーセメントを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根材の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法を使用して製造して成ることを特徴とする屋根材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−38419(P2007−38419A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−221786(P2005−221786)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】