説明

展開可能アンテナシステムにおける位相補正

展開可能アンテナシステムにおいて、特に、再展開可能HF表面波レーダフェーズドアレイアンテナシステムにおいて、位相補正を提供するための方法と対応する装置が提供される。該アンテナシステムは、マスター制御ユニットと、所望の離間位置に対して相対移動可能である複数の分離したアンテナ素子とを備え、各アンテナ素子がRF信号処理手段を備える。該方法は、(1)前記アンテナ素子と前記マスター制御ユニットとの相対位置を判断するステップと、(2)位相基準信号を送信するステップと、(3)前記位相基準信号の受信時に、ステップ(1)で判断された相対位置を用いて、該複数のアンテナ素子の各々のための位相補正信号を決定するステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展開可能アンテナシステム、特に、限定するものではないが、迅速な展開に適応しているHFレーダフェーズドアレイアンテナシステムにおける位相補正に関する。
【背景技術】
【0002】
「迅速に再展開可能なHFレーダのコンセプト(Deployment of a rapidly re-deployable HF radar concept)」(T.M.Blake、電磁気リモートセンシング(Electro-Magnetic Remote Sensing;EMRS)ディフェンステクノロジーセンタ(Defence Technology Centre;DTC)、第1回技術会議(1st Annual Technical Conference)、2004年5月20日〜21日)において、独立して離間された(7m間隔)受信アンテナ素子2のリニアアレイを備え、各要素が、長さ2.5mの垂直アクティブアンテナである、図1に示すようなHF表面波レーダシステムが開示されている。各素子は、受信信号を処理するレシーバ4を含む。該素子は、デジタルデータリンクケーブル6によって、デイジーチェーン(daisy chain)構成で、ワゴン車内に設けられた制御センター8に接続されている。対応する送信アンテナアレイ9も設けられている。該システムは、現場のワゴン車内に、解体された状態で持ち込まれ、2人の技術者によって、該素子を地面に離間した位置に配置し、該素子をデータリンクケーブルで接続することにより、迅速に組み立てられる。
【0003】
該素子の底部にレシーバを配置することによって、該レーダシステムが正確に機能するために、該素子を、時間、周波数及び位相において同期させなければならないという困難が生じる。さらに、これらの素子の互いに対する位置は、正確にわかっている必要があるが、該素子は、正確な配置(好ましくは、0.1m以内)を可能にする計測機器を用いることなく、技術者の人手によって配置されるため、これは、さらなる問題である。
【0004】
多数のアンテナ素子を備える様々なHFアンテナアレイが知られているが、このような素子は、通常、フレームワーク又は他の取り付け構成内にまとめて固定して取り付けられており、このことは、迅速な展開システム、特に、該素子が、長い距離離間されている場合には適切ではない。
【発明の開示】
【0005】
第1の態様から、本発明は、展開可能アンテナシステムを位相補正する方法に存し、該アンテナシステムは、マスター制御ユニットと、所望の離間位置に対して相対移動可能である複数の分離したアンテナ素子とを備え、各アンテナ素子はRF信号処理手段を備え、該方法は、
(1)前記アンテナ素子と前記マスター制御ユニットとの相対位置を判断するステップと、
(2)位相基準信号を送信するステップと、
(3)前記位相基準信号の受信時に、ステップ(1)で判断された相対位置を用いて、前記アンテナ素子のための補正位相信号を決定するステップと、
を備える。
【0006】
本発明の第1の態様による方法は、送信アンテナアレイまたは受信アンテナアレイに適用することができる。受信アンテナアレイの場合、ステップ(2)において、前記位相基準信号は、前記マスター制御ユニットによって送信され、ステップ(3)において、前記位相基準信号は、前記複数のアンテナ素子の各々によって受信される。
【0007】
好ましい実施形態において、前記補正位相信号は、前記マスター制御ユニットに印加される。すなわち、各アンテナ素子によって受信された信号の位相は、前記マスター制御ユニットによって位相補正される。しかしながら、位相補正は、代替として、前記アンテナ素子の各々によって適用してもよい。同様に、送信アンテナアレイの場合には、前記マスター制御ユニットは、前記送信アンテナ素子と通信する前に、それぞれの位相補正を信号に適用することができ、または、位相補正は、送信前に、前記アンテナ素子に適用することができる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態は、特に、迅速に再展開可能な高周波(HF)表面波レーダアレイにおける位相補正に適用可能である。しかしながら、本発明による方法による位相補正は、VHF、HF上空波、DF放送システム、電波天文システムを含む他の種類の無線及びフェーズドアレイレーダシステムにも適用することができる。
【0009】
前記アンテナ素子とマスター制御ユニットとの相対位置を判断するステップは、多数の異なる方法のうちのいずれか1つを用いて実現することができる。1つの方法においては、きつく引っ張られた場合に、前記アンテナ素子が所定の間隔を有するように、固定長のコードまたはストリングを、隣接する離間したアンテナ素子間に取付けてもよい。その結果、前記アンテナ素子は、視線方法で、直線上に位置合わせすることができ、または、場合により、レーザ測定装置を位置合わせに用いてもよい。
【0010】
しかしながら、一般的には、特に、レーダ用途において、前記アンテナアレイの非常に迅速な展開に対する要求があり、このため、オペレータ側に必要とされる熟練者無しで、前記素子の位置を決める手段が好ましい。そのため、好ましくは、無線位置手段を用いて、相対位置を判断することができ、この場合、前記アンテナ素子の位置は、RFシステムによって判断される。多数の異なる無線位置技法のうちのいずれか1つを本発明に適用することができるが、各アンテナ素子が、GPS、GLONASS及びGalileoを含む、一般に、GNSS(Global Navigation Satellite Systems)として知られている衛星無線ナビゲーションシステムのレシーバを備えていることが好ましい。このことは、所要の程度の位置精度をもたらす可能性があり、また、前記アンテナシステムのマスター制御ユニットに設けるべき無線位置のための高価な機器を必要としない。
【0011】
フェーズドアレイレーダシステムは、位相誤差の全てのソースが補正されている状態で、各アンテナ素子の正確な位相同期を有することが重要である。2つの位相誤差の重要なソースがあり、第1には、アンテナ素子の位置決めの不正確さを生じるものであり、第2には、原理的には、局部発振器における位相誤差である、レシーバ/トランスミッタにおいて生じる位相の不一致や、RF信号の処理経路において、増幅器、フィルタ等のRF要素で発生する位相変化がある。
【0012】
本発明によれば、前記アンテナ素子の位置決めによって生じる位相誤差は、例えば、衛星無線ナビゲーションシステムの使用を介した、前記アンテナ素子の相対位置の認識によって避けられる。レシーバ/トランスミッタにおいて生じる位相誤差については、これらの位相誤差を補正する様々な方法がある。例えば、各レシーバ/トランスミッタ上で、事前較正処理を実行することができ、その結果として、位相調整を導入することができる。代替として、リモートまたは遠隔測定処理を用いてもよい。その結果、各素子に対する正確なケーブル長が分かっている場合、各素子までの電気的経路長を判断することが可能である。前記ケーブルに沿って送信された基準信号は、各素子によって戻し、予測した位相からの変動を調べることができる。この結果、位相調整を適用することができる。
【0013】
好ましくは、正確に分かっているケーブル長の必要性を避けるために、受信アンテナアレイの場合、本発明において用いられる位相補正のための手段が配置され、マスター制御ユニットにおいて、位相基準信号を生成して送信し、前記信号は、各アンテナ素子において、レシーバによって検出される。前記マスター制御ユニットは、前記アンテナ素子の位置の認識に基づいて、各レシーバに対して、予測位相差分信号も生成し、この信号は、それぞれのレシーバへ送ることができる。前記レシーバは、位相比較器において、実際の受信位相信号と、この予測した値とを比較し、また、前記レシーバは、前記レシーバの位相を、他のレシーバの位相と合わせるための位相補正信号を生成する。この位相補正は、各レシーバに適用することができるが、便宜上、好ましくは、全てのレシーバに対する位相補正は、前記マスター制御ユニットにおいて行われる。
【0014】
代替として、複数の分離したアンテナ素子を備える送信アンテナシステムの場合、各トランスミッタ装置は、マスターユニット内に設けられたレシーバによって検出される位相基準信号を送信することができ、その結果、適切な位相補正を行うことができる。
【0015】
好ましくは、前記アンテナ素子は、データリンクケーブルにより、デイジーチェーン(daisy chain)構成で一緒に接続され、代替として、2地点間無線リンクを設けてもよい。
【0016】
第2の態様から、本発明は、マスター制御ユニットと、所望の離間位置に対して相対移動可能である複数の分離したアンテナ素子とを備え、各アンテナ素子が、それぞれのRF処理手段を有し、アンテナシステムの位相補正のための手段をさらに備える、展開可能フェーズドアレイアンテナシステムに存する。前記手段は、
(1)前記マスター制御ユニットと、前記アンテナ素子との相対位置を判断し、且つ、
(2)位相基準信号を送信し、各アンテナ素子における前記位相基準信号の受信時に、ステップ(1)からの相対位置を用いて、各アンテナ素子のための補正位相信号を生成する、
よう作動する。
【0017】
第3の態様から、本発明は、所望の離間位置に対して相対移動可能である複数の分離したアンテナ素子を備える展開可能フェーズドアレイ受信アンテナシステムに存する。各アンテナ素子は、無線信号を受信するそれぞれのレシーバを含み、前記システムはマスター制御ユニットを含む。前記アンテナシステムの位相補正を行う方法は、
(1)前記アンテナ素子及び前記マスター制御ユニットを位置決めし、これらの互いに対する位置を判断するステップと、
(2)前記マスター制御ユニット内のトランスミッタから、前記各レシーバによって検出される位相基準信号を放射するステップと、
(3)各レシーバによって受信された前記位相基準信号の位相を、ステップ(1)からの前記マスター制御ユニット及び前記アンテナ素子の位置の認識から判断された前記位相の予測値と比較し、各レシーバのための補正位相信号を生成するステップと、
を備える。
【0018】
第4の態様から、本発明は、所望の離間位置に対して相対移動可能である複数の分離したアンテナ素子を備える展開可能フェーズドアレイ送信アンテナシステムに存する。各アンテナ素子は、無線信号を送信するそれぞれのトランスミッタを含み、前記システムはマスター制御ユニットを含む。前記アンテナシステムの位相補正を行う方法は、
(1)前記アンテナ素子及び前記マスター制御ユニットを位置決めし、これらの互いに対する位置を判断するステップと、
(2)前記マスター制御ユニット内のレシーバによって検出される位相基準信号を、前記各トランスミッタから放射するステップと、
(3)前記レシーバによって受信された各位相基準信号の位相を、ステップ(1)からの前記マスター制御ユニット及び前記アンテナ素子の位置の認識から判断された前記位相の予測値と比較し、前記各トランスミッタのための補正位相信号を生成するステップと、
を備える。
【0019】
こうして、位相補正を、受信または送信アンテナアレイのいずれかに対して実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の好ましい実施形態を、例によってのみ、添付図面を参照して説明する。
【0021】
本発明の好ましい実施形態は、HFレーダシステムのフェーズドアレイ受信システムのための配分(distribution)、リファレンス、同期及び較正スキームの一部にとして適用できる。本実施形態は、該フェーズドアレイの設置を簡単にし、該アレイの迅速な展開及び自動同期及び較正を可能にする。本実施形態は、特に、フェーズドアレイアンテナが物理的に大きいHFレーダに適用できるが、一般的なフェーズドアレイの実施に対しても適用できる。
【0022】
フェーズドアレイアンテナのデザインは、上記素子をどのように展開するか、該素子への又は該素子からの信号をどのように配分するか、該信号をどのように同期させるか、及び該アレイをどのように位置合わせ又は較正するかに関しての決定を必要とする。加えて、魅力的な提案は、レシーバ又はトランスミッタと各アンテナ素子とを一体化することであり、このことは、配分すべき多くの制御及び基準信号を要することにより、配分及び同期の問題をさらに複雑にする。これらの問題に対処するための多くの異なるスキームが存在するが、それらは全て、迅速な展開が必要な場合に、重大な問題を引き起こす。
【0023】
存在する問題は、クリーンで位相コヒーレントな基準信号の配分、クリーンな時間同期信号の配分、複数の低損失ケーブルの展開、各アンテナ素子の正確な位置決め、及び該アレイの較正を含む。問題は、該アレイを、どのようにして迅速に展開し、配分、同期及び較正要件を満たすことができるかということである。好ましい実施形態は、上記の配分、同期及び較正の問題を排除するために、前記配分、同期、較正問題を解消するために、特にアンテナにわたり位相を同期するために使用される、各レシーバ/トランスミッタを有する同期ユニットを組み入れる。
【0024】
好ましい実施形態は、各アンテナ素子に組み込まれている同期、リファレンス、較正及び配分システムを実装することにより、フェーズドアレイアンテナの展開を簡単にする。この配分ユニットは、該アンテナ素子が、単純なデイジーチェーン式デジタルデータリンクによって接続できるようにし、複数のケーブルの必要性をなくし、該アレイを、展開しやすくする(代替として、2地点間無線リンクを用いてもよい)。同期、リファレンス、配分及び較正に関連する全ての動作は、該データリンクを介して実施される。このことは、著しい複雑さを加えるが、展開を大幅に単純化する。本発明は、該アレイを、慎重な物理的位置合わせの必要性を要することなく、迅速に展開できるようにする。該アンテナ素子は、不規則な間隔で展開し、かつ単純なデイジーチェーンケーブル、又は、他のデータ送信メディアで相互接続することができ、また、本発明は、該アレイを自動的に較正及び同期できるようにするであろう。好ましい実施形態は、フェーズドアレイを形成するアンテナ素子に加え、動作を管理するのに用いられるマスターユニットとを備える。
【0025】
図2を参照すると、フェーズドアレイ受信アンテナの各アンテナ素子2は、レシーバ回路10及び同期ユニット12を含むレシーバユニット4を有する。さらに、アクティブアンテナ回路が含まれているが、図示はされていない。レシーバユニット4は、デイジーチェーン構成で、データリンクケーブル6を介してマスターユニット14に接続されており、該マスターユニットは、便利なことには、ワゴン車内に配置することができる。マスターユニット14は、以下に説明するように、アンテナ16と、低電力位相基準信号をアンテナ素子2へ送信するトランスミッタ18とを含む。さらに、同期ユニット20及び制御ユニット22が設けられている。
【0026】
トランスミッタアンテナシステムに対する変更例においては、各素子のレシーバは、トランスミッタと置換される。さらに、該マスターユニットは、アンテナ16を介して位相同期信号を受信するためのレシーバを含む。
【0027】
図2に示す実施形態は、各アンテナ素子に該レシーバを形成することと、局部発振器及びタイミング生成をサポートすることとを備える。それに伴って、各ユニットは、タイミング信号及び局部発振器信号を生成する該ユニット自体の手段を含むが、各信号は非同期であり、必要なものは、これらの信号を同期させて、該ユニットの位置を得る手段である。
【0028】
そのため、各アンテナユニットは、同期ユニット(sync unit)12を組み込んでいる。図4を参照して説明するように、該同期ユニットは、衛星ナビゲーションレシーバ(GPS又は他のもの)と、調整された基準発振器と、局部発振器と、タイミング生成とを含む。これらのユニットは、位置情報を提供するだけではなく、タイミング、周波数及び位相同期を実現するためのインフラストラクチャも提供する。該マスターユニットは、同期ユニットに加えて、制御ユニット及び低電力トランスミッタを組み込んでいる。
【0029】
上記アンテナシステムの展開のための動作のシーケンスを図3に示す。レシーバフェーズドアレイアンテナのアンテナ素子は、参照符号30において、ワゴン車を、該素子の目的とする位置まで運転し、該ワゴン車から各位置に素子を降ろした後、次の位置へ走行することによって展開される。そして、該素子は、所望の位置に駐車している該ワゴン車内に配置された該マスター制御ユニットとデータリンクケーブルによって接続され、制御は、参照符号31において該マスター制御ユニットによってアサートされる。該アンテナユニットが最初に展開され、該マスターユニットが未知の場所にあるとき、該局部発振器及び各ユニット内のタイミング信号は同期されていない。該アレイを較正し、同期させるためには、位置情報、時間同期、周波数同期及び位相同期を得る必要がある。
【0030】
該制御ユニットはまず、参照符号32において、衛星ナビゲーションレシーバを用いて、該マスターユニット及びアンテナユニットの位置を得る。レーダの動作波長及び必要な精度により、相対測位及び搬送波位相方法を用いることができる。この位置情報は、アレイの位置合わせ及びビーム形成係数を決めるのに用いることができる。
【0031】
次に、該アンテナユニット及びマスターユニットは、参照符号33において、該衛星ナビゲーションレシーバによって受信された時間信号を用いることにより、時間同期される。例えば、GPSレシーバによって受信されるUTCで調整された1パルス/秒を、100ナノ秒の不確実性以下で得ることができる。この信号は、各ユニットにおけるタイミング信号の生成を同期するのに用いることができる。
【0032】
参照符号34における周波数同期は、各レシーバ又はトランスミッタが、同じ動作周波数に正確に合わせられること、及び各ユニットが他のユニットに対してドリフトしないことを確実にすることを必要とする。該衛星ナビゲーションレシーバによって受信される該信号は、高精度の原子リファレンスから得られる。GPSの場合、正確な1パルス/秒信号が生成される。この信号は、局部基準発振器から得られる等価信号と比較され、その結果が、該局部基準を同じ周波数にロックするのに用いられる。この結果、各アンテナユニットにおける該局部周波数基準を同じ衛星ナビゲーション送信にロックすることができる。
【0033】
参照符号35において、位相同期は、各アンテナユニットにおけるレシーバの局部発振器が確実に同じ位相にロックされることを必要とされ、これにより、フェーズドアレイレーダが正確に機能する。局部周波数基準は、同じ周波数にロックされることができるが、位相は、異なっている場合がある。位相同期を実現するために、上記マスターユニットは、低電力トランスミッタを用いて、各アンテナユニットによって受信されるテスト信号を発する。このことは、受信した位相を、各受信素子で測定し、それぞれの同期ユニット内で、既知の素子位置から判断された予想位相と比較できるようにする。それによって、位相補正を減じ、適用することができる。
【0034】
次いで、参照符号36において、該トランスミッタのアンテナシステムが展開される。単一のトランスミッタアンテナ素子を、共通して使用してもよいが、複数のアンテナ素子を使用するまれなケースにおいては、位相同期の場合を除いて、対応するステップ32〜35が実行され、各アンテナ素子は、上記マスター制御ユニットによって受信される位相基準信号を放射することになる。
【0035】
次に、図4を参照すると、該図は、上記の処理手順を実行するアンテナ素子のレシーバユニット4の当該要素を詳細に示す。同期ユニット12は、位置信号42及びタイミング基準信号44を提供するGPSレシーバ40を備える。これらの信号は、該マスターユニットへの送信のために、データリンクユニット6に送り込まれる。さらに、レシーバ10に印加される、補正した時間信号48を生成するために、タイミング信号44がクロック信号生成回路46に印加される。
【0036】
タイミング信号44が、周波数ロックループ又は位相ロックループ等のロッキング構成内に配置された基準周波数発振器50に印加され、タイミング信号44は、該発振器の出力周波数と比較されて、補正された周波数信号52が提供される。この信号は、レシーバ10に印加される。
【0037】
さらに、レシーバの位相を同期させ、補正する手段が設けられている。マスターユニット14のトランスミッタ18は、各アンテナ素子によって検出される低電力送信信号を送信する。さらに、該マスターユニットは、各レシーバのGPS位置情報から、各レシーバにおける該送信信号の予想位相を計算する。この予想した位相信号62は、各それぞれのレシーバに印加される。実際の受信位相64は、該レシーバによる処理の後、位相比較器66で該予想した位相と比較され、補正された位相信号68が生成され、該位相信号は、マスターユニット14へ送信され、該フェーズドアレイレーダの補正動作を確実にするのに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】迅速に再展開可能なHF表面波レーダシステムの既知のシステムの概略図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態の概略図である。
【図3】本発明によるHFレーダシステムの展開のステップを図示するフローチャートである。
【図4】各レシーバの同期ユニットを詳細に示す概略的ブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開可能アンテナシステムを位相補正する方法であって、前記アンテナシステムは、マスター制御ユニットと、所望の離間位置に対して相対移動可能である複数の分離したアンテナ素子とを備え、各アンテナ素子がRF信号処理手段を備え、
(1)前記アンテナ素子と前記マスター制御ユニットとの相対位置を判断するステップと、
(2)位相基準信号を送信するステップと、
(3)前記位相基準信号の受信時に、ステップ(1)で判断された相対位置を用いて、前記複数のアンテナ素子の各々のための位相補正信号を決定するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
ステップ(2)において、前記位相基準信号は、前記マスター制御ユニットによって送信され、ステップ(3)において、前記位相基準信号は、前記複数のアンテナ素子の各々によって受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位相補正信号は、前記マスター制御ユニットで印加される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記可能アンテナシステムは、展開可能HF表面波レーダフェーズドアレイアンテナシステムである、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(3)は、前記複数のアンテナ素子の各々のために、ステップ(1)で判断された前記マスター制御ユニットと前記アンテナ素子との相対位置を用いて、前記位相基準信号の受信位相と、前記アンテナ素子のために決定された予測位相値とを比較し、それにより、前記アンテナ素子のための位相補正信号を決定することを備える、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
マスター制御ユニットと、所望の離間位置に対して相対移動可能である複数の分離したアンテナ素子とを備え、各アンテナ素子が、それぞれのRF処理手段を有し、アンテナシステムの位相補正のための手段をさらに備える、展開可能フェーズドアレイアンテナシステムであって、前記手段が、
(1)前記マスター制御ユニットと、前記アンテナ素子との相対位置を判断し、
(2)位相基準信号を送信し、
(3)前記位相基準信号を受信し、ステップ(1)からの相対位置を用いて、各アンテナ素子のためのそれぞれの位相補正信号を生成する、
ように作動するシステム。
【請求項7】
前記アンテナシステムは、展開可能HF表面波レーダフェーズドアレイアンテナシステムである、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記アンテナ素子は、データリンクによって、前記マスター制御ユニットに相互接続されている、請求項6または請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
各アンテナ素子は、ステップ(1)において前記それぞれのアンテナ素子の位置を判断する際に使用される、衛星無線ナビゲーションシステムのレシーバを含む、請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記マスター制御ユニットでトランスミッタを、および前記複数のアンテナ素子の各々でレシーバを備え、前記複数のアンテナ素子の各々によって検出可能である位相基準信号を送信するように構成された位相補正手段と、各アンテナ素子において受信された前記位相基準信号と、前記マスター制御ユニットと前記アンテナ素子との相対位置から判断されたそれぞれの予測位相値とを比較する手段とを有する、請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
所望の離間位置に対して相対移動可能である複数の分離したアンテナ素子を備える展開可能フェーズドアレイ受信アンテナシステムにおいて、各アンテナ素子が、無線信号を受信するそれぞれのレシーバを含み、前記システムがマスター制御ユニットを含み、前記アンテナシステムの位相補正を行う方法であって、
(1)前記アンテナ素子と前記マスター制御ユニットとを位置決めし、これらの互いに対する位置を判断するステップと、
(2)前記マスター制御ユニット内のトランスミッタから、前記各レシーバによって検出される位相基準信号を放射するステップと、
(3)各レシーバによって受信された前記位相基準信号の位相を、ステップ(1)からの前記マスター制御ユニットと前記アンテナ素子との位置の知識から判断された前記位相の予測値と比較し、各レシーバのための位相補正信号を生成するステップと、
を備える方法。
【請求項12】
前記各位相補正信号は、前記マスター制御ユニットで印加される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
所望の離間位置に対して相対移動可能である複数の分離したアンテナ素子を備える展開可能フェーズドアレイ送信アンテナシステムにおいて、各アンテナ素子が、無線信号を送信するそれぞれのトランスミッタを含み、前記システムがマスター制御ユニットを含み、前記アンテナシステムの位相補正を行う方法であって、
(1)前記アンテナ素子と前記マスター制御ユニットとを位置決めし、これらの互いに対する位置を判断するステップと、
(2)前記マスター制御ユニット内のレシーバによって検出される位相基準信号を、前記各トランスミッタから放射するステップと、
(3)前記レシーバによって受信された各位相基準信号の位相を、ステップ(1)からの前記マスター制御ユニットと前記アンテナ素子との位置の知識から判断された前記位相の予測値と比較し、前記各トランスミッタのための位相補正信号を生成するステップと、
を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−546364(P2008−546364A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524600(P2008−524600)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際出願番号】PCT/GB2007/050398
【国際公開番号】WO2008/007144
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(390038014)ビ−エイイ− システムズ パブリック リミテッド カンパニ− (74)
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS plc
【Fターム(参考)】