説明

層又は被覆及びその製造用の組成物

本発明は、チタン酸アルミニウム及び/又は窒化ケイ素と、無機酸化物成分と、ナノスケール粒子を含む結合剤とを含む、層又は被覆、特に離型層を製造するための組成物に関する。本発明は、更に、そのような組成物の製造方法、層又は被覆を製造するためのそれらの使用、組成物から製造可能な層又は被覆、及びそのような層又は被覆により少なくとも部分的に被覆された物体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層又は被覆、特に離型層を製造する組成物、そのような組成物の製造方法、
製造された層又は被覆、及び層又は被覆で被覆された物体に関する。
【0002】
無機物質の溶融体、特に金属及びガラスの溶融体を加工するには、液体物質と直接接触
する器具、補助具、特に成型体の表面に剥離剤を備えることが慣用的である。そのような
剥離剤(通常は離型剤と呼ばれる)は、溶融体と記載された表面との反応を防止する役割
を有する。これらの表面に対する溶融体の接着力は、液体状態と固体(冷却した)状態の
両方で非常に低いべきである。例えば、注入成形体は、離型層を備えた成形型からより容
易に取り出すことができる。離型層は、成形型の摩耗を低減し、したがってその寿命に好
ましい効果も有する。
【0003】
離型層は、注入成形体の表面に接着するべきではなく、また、耐摩耗サイズ剤として適
用される場合、成形型、器具又は補助具の表面に強く結合しすぎるべきではない。加えて
、離型層は、不燃性であるべきであり、加えて環境適合性があるべきであり、特にそれは
、毒性の物質を高温でガス放出しないことを意味する。一般に、離型層は、塗布又は噴霧
されうる組成物の塗布又は噴霧により非常に均一の層厚で製造される。離型層を製造する
ためのそのような組成物も、サイズ剤と呼ばれる。
【0004】
従来技術は、純粋な有機及び無機の離型層の両方を開示している。US5,076,3
39は、例えば、低溶融ロウに基づく有機離型層を記載している。しかしそのような有機
剥離層は、金属又はガラスの溶融体と数百度の温度で接触すると直ちに熱分解する。有機
剥離層を備えた成形型と溶融体との間に、ガスのクッションが形成される場合があり、次
にそれは注入成形体に孔の形成をもたらす可能性がある。
【0005】
この理由によって、一般に無機離型層が熱溶融体又はガラス溶融体の加工において好ま
れる。
【0006】
市販の無機離型層は、通常以下の化合物:グラファイト(C)、二硫化モリブデン(M
OS2)及び窒化ホウ素(BN)に基づき、特に後者は、六角形の形態である。これらの
物質に基づいている離型層は、金属溶融体による湿潤性が顕著に低いことが注目される。
これらは、アルミニウム及びマグネシウム溶融体に対して、並びにアルミニウム−マグネ
シウム合金から構成される溶融体に対して特に低い湿潤性を有する。しかし、グラファイ
トは、ほぼ500℃の温度の空気でも酸化され、二硫化モリブデンは、400℃の低さの
空気でも酸化されるが、窒化ホウ素は、同じ条件下で約900℃まで安定している。した
がって窒化ホウ素は、高温で使用される離型層の構成成分として特に適している。
【0007】
しかし、グラファイト又は二硫化モリブデンに基づく離型層と窒化ホウ素に基づくもの
の両方は、一般にあまり摩擦抵抗性がない。特に軽金属溶融体又はガラス溶融体(高流量
が生じる溶融体)の加工は、既知の無機離型層では持続的に応じることができない高い機
械的要求を付加する。したがって従来技術で既知の離型層は、急速に摩耗し、この理由で
一般に反復使用が意図されず、定期的に取り換えなければならない。
【0008】
従来技術で既知の欠点を有さない離型層を提供することが、本発明の目的である。本発
明の離型層は、金属溶融体に対して極めて不活性であり、酸化抵抗性があるべきである。
特に、本発明の離型層は、金属及びガラス溶融体に対して低い湿潤性を有し、同時に摩擦
抵抗性があるべきである。例えば、高流量の溶融体の加工の際に生じる高い機械的応力に
耐えられるべきであり、したがって(数日間及び数週間にわたって続く応力の場合であっ
ても)反復使用に適している。
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する組成物及び請求項25の特徴と有する使用によっ
て達成される。本発明の組成物の好ましい実施態様は、従属請求項2〜19に記載されて
いる。本発明の組成物により製造可能な層又は被覆は、請求項20〜23に定義されてお
り、そのような層で少なくとも部分的に被覆されている物体は、請求項24に定義されて
いる。本発明の組成物の製造方法は、請求項26及び27の主題である。全ての請求項の
語法は、参照として明細書の本記載に組み込まれる。
【0010】
層又は被覆、特に離型層を製造する本発明の組成物は、成分Aとしてチタン酸アルミニ
ウム、窒化ケイ素又はこれら2つの混合物を含み、本発明にとって特に好ましいものは、
チタン酸アルミニウム含有組成物である。加えて、本発明の組成物は、無機酸化物成分B
(チタン酸アルミニウムを、これも厳密に言えば酸化物であるが、成分Bの可能な構成成
分としては除外する)と、成分Cとしてナノスケール粒子を含む結合剤と、好ましい実施
態様では、成分Dとして懸濁媒質とを含む。
【0011】
驚くべきことに、特定の粒径分布が組成物中で優位を占めることが、特に、本発明の組
成物により製造可能な層又は被覆の摩擦安定性に関して、とりわけ有益であることが見出
された。好ましい実施態様において、成分Aの粒子は、>500nm、特に>1μmの平均
粒径を有する。成分Bの無機酸化物粒子では、100nm〜1μm、特に200nm〜1μmの
平均粒径が特に好ましい。しかし幾つかの場合において、ミクロンの範囲の平均径、特に
10μmまでの平均径を有する酸化物粒子が好ましいこともありうる。結合剤成分Cのナ
ノスケール粒子は、好ましくは有意により小さく、特に、<50nm、とりわけ<25nmの
平均粒径を有する。
【0012】
そのようなナノスケール粒子を含む結合剤の機能性は、WO03/093195におい
て詳細に記載されている。結合剤に使用されるナノ粒子は、好ましくは反応性ヒドロキシ
基で覆われている非常に大きい比表面積を有する。これらの表面基は、結合する(典型的
には比較的粗大の)粒子の表面基と室温でも架橋することができる。200℃を越える、
好ましくは300℃を越える温度では、ナノ粒子の極めて高い表面エネルギーのために、
物質移動が、結合する粒子の接触部位へ向かい始め、更なる圧密をもたらす。
【0013】
成分Aの粒子では、1μm〜25μm、好ましくは1μm〜10μm、特には2μm〜10
μmの平均粒径がより好ましい。特に好ましい実施態様において、成分Aの粒子の平均粒
径は、およそ5μmである。
【0014】
本発明の組成物により製造可能な層又は被覆の優れた摩擦安定性を説明するために、現
在、上記で定義された経分布の粒子を、形成される層又は被覆において相互に配置できる
ことが特に有益であることが推測される。より小さい粒子は、密度が増加された構造を生
じるように、隣接する粗粒子の間で空いた状態にある隙間に挟まれ、次にその結合性は、
粒子間の接触部位を固定し強化するナノスケール結合剤(成分C)により確実にされてい
ることが推測される。
【0015】
成分Bの無機酸化物粒子は、好ましくは>6のモース硬度を有するセラミック粒子であ
る。特に適切なものは、2成分の酸化物化合物、特に、酸化アルミニウム又は二酸化チタ
ンの粒子であるが、2つの混合物も好ましいことがありうる。
【0016】
結合剤成分Cの粒子の選択において最も重要な基準は、上記に記述されたように、平均
で50nmを超えるべきではないその大きさである。粒子は、特に酸化物粒子、好ましくは
酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム及び/又は二酸化チタン粒子、あるいはこれらの化
合物の前駆体である。好ましい湿潤特性に関して(特に軽金属溶融体に関して)、とりわ
け二酸化チタン粒子と酸化アルミニウム粒子又はベーマイト粒子との混合物が、特に適し
ていることが見出された。更に、結合剤は、ナノスケールチタン酸アルミニウム粒子を(
場合により成分Aの非ナノスケールチタン酸アルミニウム粒子に加えて)含むことが好ま
しいこともありうる。
【0017】
本発明の組成物の更に好ましい実施態様において、結合剤、並びに記載されたナノ粒子
は、アルキルポリシロキサン、アルキルシリコーン樹脂及びフェニルシリコーン樹脂を含
む群からの少なくとも1つの有機ケイ素構成成分を含むことができる。少なくとも1つの
有機ケイ素構成成分を、例えば、水性エマルションの形態で使用することができ、製造さ
れる層又は被覆の圧密及び圧縮に寄与する。
【0018】
加えて、結合剤は、少なくとも1つのガラス様構成成分、特にフリットを含むことが好
ましい。フリットは、水溶性塩(ソーダ、ホウ砂、他)及び更なる物質がケイ酸塩形態で
結合しており、したがって水不溶性形態に実質的に変換されているガラス系を意味するこ
とが理解される。
【0019】
ガラス様構成成分を含む本発明の組成物の層又は被覆を基材上に製造するに際し、溶融
して、気密層を形成することができる。特に、そのような組成物から製造された層又は被
覆は、基材の腐蝕に対して驚くほど効率的な保護も提供する。加えて、ガラス様構成成分
は、結合剤として機能することもできる。
【0020】
ガラス様構成成分の代わりに、あるいはそれに加えて、本発明の組成物は、組成物から
製造可能な層に断熱又は遮熱作用を追加的に付与する1つ以上の構成成分を含むことがで
きる。好ましいそのような構成成分は、特に、ウォラストナイト(例えば、Carl Jaeger
, GermanyからのMM80ウォラストナイトの名称で市販されている)及びゾノトライト
(例えば、Promat AG, Switzerlandから名称Promaxon(登録商標)D及びTの名称で市販
されている)のようなケイ酸アルミニウム及びケイ酸カルシウムである。雲母、特に微粉
化雲母も極めて適切である。そのような組成物から製造される層は、例えば器具、補助具
及び成形型を、接着から保護するばかりでなく、とりわけ有益には、特に液体金属溶融体
との接触で生じる可能性がある高熱応力からも保護する。
【0021】
組成物に存在することができる懸濁媒質は、好ましくは極性である。より好ましくは水
を主要構成成分として含むが、原則として、更なる極性成分、例えばアルコールを含むこ
ともできる。
【0022】
しかし多くの場合において、懸濁媒質から有機構成成分を省くことが望ましい。例えば
、有機溶媒の存在下では、その低い蒸気圧のために原則として常に火災の危険性がある。
【0023】
したがって、本発明の組成物は、好ましい実施態様において、非水性液体構成成分のな
い懸濁媒質を含む。
【0024】
より好ましくは、本発明の組成物は、少なくとも1つの界面活性物質、特にポリアクリ
レートを含む。界面活性物質の添加は、懸濁媒質が非水性液体構成成分を含まない場合に
おいて特に有益であることが見出されている。
【0025】
本発明の組成物は追加の成分として窒化ホウ素を含むことが好ましいことがありうる。
窒化ホウ素の割合が、製造される層又は被覆の柔軟性、特に割れる傾向及び弾性に対して
好ましい効果を有することが見出された。このことは、成分Aとしてチタン酸アルミニウ
ム又は窒化ケイ素及び成分Bとして酸化アルミニウムを含む組成物に基づく層/被覆にお
いて特に当てはまる。
【0026】
また同様の結果が、この場合も特に成分Aとしてチタン酸アルミニウム又は窒化ケイ素
及び成分Bとして酸化アルミニウムと組み合わせたグラファイトの添加によって達成され
た。したがって、本発明の組成物は、更なる好ましい実施態様において、追加の成分とし
てグラファイトを含む。
【0027】
しかし、窒化ホウ素及び/又はグラファイトを含まない、本発明の組成物の特に好まし
い実施態様も存在する。
【0028】
本発明の組成物は、好ましくは25重量%〜60重量%の固形分を有する。本発明の組
成物に存在する懸濁媒質の量は、原則として重要ではなく、組成物の使用に従って変わる
ことができる。好ましい実施態様において、組成物は、低粘度の、特に塗布又は噴霧され
うる懸濁液の形態で存在する。
【0029】
固形分に基づいて、成分Bは、本発明の組成物に、好ましくは>40重量%、特に>5
0重量%の割合で存在する。
【0030】
更なる展開において、本発明の組成物は、好ましい実施態様において、成分Bとして4
0重量%〜75重量%の酸化アルミニウム、成分Aとして5重量%〜25重量%のチタン
酸アルミニウム及び追加の成分として5重量%〜25重量%の窒化ホウ素を含有する(全
ての率は組成物の固形分に基づいている)。
【0031】
既に記述した成分に加えて、本発明の組成物は、また、頻繁に、好ましくは比較的粗大
(ミリメートの範囲まで又はそれ以上の大きさ)の無機粒子及び/又は繊維を特に充填剤
として更に含む。
【0032】
本発明の組成物を、全ての慣用の金属及び非金属表面に適用することができる。とりわ
け、アルミニウム、チタン、鉄、鋼鉄、銅、クロム、鋳鉄、鋳鋼から作製される物体、ま
た耐火材料及びセラミックから作製される物体への適用が適している。ケイ酸塩、グラフ
ァイト、コンクリート及びボイラー鋼板から作製される物体への適用が特に適している。
【0033】
本発明は、特に本発明の組成物から製造可能な層又は被覆を更に包含し、層又は被覆は
、特に離型層である。
【0034】
本発明の層又は被覆は、例えば本発明の組成物を物体に適用し、次に乾燥することによ
って製造することができる。適用は、例えば、塗布又は噴霧により実施することができる
。続いて、乾燥した層を更に強固にすることができ、それは、例えば別個の熱処理(例え
ば、層をおよそ300℃に加熱して、存在するあらゆる有機構成成分を燃焼させ、次に7
00℃で焼結する)により実施することができるが、また、「その場」でも全く可能であ
り、すなわち、金属又はガラス溶融体を数百℃の温度で接触させることにより実施するこ
とができる。
【0035】
本発明の層の物質組成は、本発明の組成物の固形分の上記で定義された物質組成に実質
的に対応する。しかし、幾つかの好ましい実施態様において、本発明の層又は被覆はある
割合のサイアロン(ケイ素アルミニウムオキシニトリド)も含む。サイアロンは、窒化ケ
イ素と酸化アルミニウムとの反応で形成することができる。サイアロンは、窒化ケイ素と
同様の特性を示し、特に、アルミニウム又は非鉄金属溶融体に対して非常に低い湿潤性を
有する。
【0036】
更に好ましい実施態様において、本発明の層又は被覆は、断熱作用を有する構成成分、
特にケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム及び/又は雲母を含む。そのような実施態様
は、例えば器具、補助具及び成形型を、接着から保護するばかりでなく、とりわけ有益に
は、特に液体金属溶融体との接触で生じる可能性がある高熱応力からも保護する。
【0037】
本発明の層又は被覆は、好ましくは、5μm〜500μm、好ましくは20μm〜100
μmの厚さを有する。
【0038】
本発明の離型層は、高熱及び化学安定性、並びに機械的応力に対する抵抗性、特に高摩
擦安定性のために特に注目される。したがって、従来技術で既知の離型層と対照的に、本
発明の離型層は(数日間及び数週間にわたって続く応力の場合であっても)反復使用に適
している。
【0039】
窒化ケイ素を含む本発明の離型層は、高い機械的安定性、優れた熱サイクル安定性、顕
著な摩耗抵抗性、良好な腐蝕安定性、高い熱衝撃安定性、高い化学安定性、及び良好な熱
伝導率のために特に注目される。良好な熱伝導率のために、そのような離型層は、溶融体
における温度測定の反応時間が最小限になるので、熱電対又はそれらの保護管を被覆する
のに特に適している。
【0040】
チタン酸アルミニウムを含む本発明の離型層は、層の安定性において非常に好ましい効
果を有する優れた熱衝撃安定性のために特に注目される。チタン酸アルミニウム含有被覆
は、低圧鋳造機における押湯管、Strigo及びWestの溶鉱炉における計量押湯管、低圧鋳造
用のゲートダイス、DC鋳造用の鋳造ダイス、充填管及びブレークリングのために理想的
に適している。
【0041】
本発明の離型層を備えた金属管(例えば、ステンレススチール、クロムニッケル鋼又は
クロムモリブデン鋼)は、無機スラグ及び溶融体の接着に対して保護されている。
【0042】
本発明は、更に、本発明の層又は被覆、特に離型層が提供された、特に被覆された物体
も包含する。物体が、本発明の層又は被覆により部分的にだけ、あるいは完全に被覆され
ているか否かは重要ではない。
【0043】
層又は被覆、特に断熱性を有するもの、好ましくは離型層を製造するための本発明の組
成物の使用、及び本発明の組成物を製造する方法も、本発明の主題の一部分を形成する。
【0044】
本発明の方法は、水中で成分Aを分散すること、続いて得られた分散体を成分B、成分
C及び任意の更なる成分の水性分散体/懸濁液と混合することを含む。
【0045】
好ましいことは、成分Aを、ミル(例えば、モルタルミル、ボールミル又はアニュラー
ミル)の中で水及び少なくとも1つのポリアクリレートと一緒に粉砕することによって分
散することである。更なる成分、特にナノスケール結合剤(成分C)を、好ましくはその
後まで添加しない。
【0046】
成分A、B及びCは、上記で既に詳細に記載されている。参照は本明細書において記載
中の対応する部分で行われている。
【0047】
ポリアクリレートの代わりに、分散される粒子の表面に添加できる更なる有機助剤も有
用であり、例えば、有機酸、カルボキサミド、β−ジケトン、オキシカルボン酸、ポリオ
レフィン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオキシエチレン
化合物、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン(PVP)
である。
【0048】
本発明の更なる特徴は、下位請求項と併せて、続く好ましい実施態様の記載から明らか
である。この場合、個別の特徴は、本発明の一つの実施態様において単独で又は互いに組
み合わせてそれぞれ実現することができる。記載されている特定の実施態様は、本発明の
説明及びより良好な理解のためのみに役立ち、どのようにも限定的であると理解されるべ
きではない。
【0049】
実施例1
4.3kgの窒化ケイ素(粒径1μm〜5μm、H.C. Starckから)を、4.3kgの水及び
0.1kgのポリアクリレート(BYK 192、BYK-Chemie GmbHから)と混合し、撹拌ボールミ
ルで3時間均質化する。この第1の混合物に加えて、更に3つの混合物も別々に作製する
。第2の混合物は、2.6kgのアクリロイルポリシロキサン(Inomat GmbHからのinosil
ww)と11.44kgの水性懸濁液のナノスケール二酸化ジルコニウム(固形分45重量
%及び平均粒径およそ10nm)から構成される。第3の混合物は、38.3kgの水に分散
した25.7kgの酸化アルミニウム(Almatis、CT 800 SG、平均粒径およそ3μm)から
構成され、第4の混合物は、6.3kgの水に分散した4.3kgの窒化ホウ素(Saint-Gob
ainから)から構成される。第2、第3及び第4の混合物を、第1の混合物に撹拌しなが
ら連続的に加える。これは、直ぐに使用できるサイズ剤を形成する。
【0050】
実施例2
実施例1のサイズ剤を、耐火コンクリートの試料上に層として噴霧する。試料を軽金属
溶融体に750℃で浸漬した後、層に対する損傷は、15日後でも認められない。凝固し
た鋳造皮膜を容易に除去することができる。本発明の層を有さない比較の耐火コンクリー
ト試料の試験では、軽金属溶融体はコンクリート試料に浸透し、したがってその重量は3
倍になった。
【0051】
実施例3
実施例1のサイズ剤をステンレススチール管(13CrMo44)に適用する。層厚は40〜5
0μmである。乾燥及び焼結した後、被覆管試験片を、軽金属溶融体に750℃で暴露し
た。軽金属溶融体への5時間の暴露の後、被覆は、依然として損傷を受けてなく、凝固し
た鋳造皮膜を容易に除去することができた。
【0052】
実施例4
4.3kgのチタン酸アルミニウム(製造者:KS-Keramik、平均粒径およそ15μm)を
、4.3kgの水及び0.2kgのポリアクリレート(BYK 192、BYK-Chemie GmbHから)と混
合し、撹拌ボールミルで3時間均質化する。この第1の混合物に加えて、更に3つの混合
物も作製する。第2の混合物は、2.6kgのアクリロイルポリシロキサン(Inomat GmbH
からのinosil ww)と11.44kgの水性懸濁液のナノスケール二酸化ジルコニウム(固
形分45重量%及び平均粒径およそ10nm)から構成される。第3の混合物は、38.3
kgの水に分散した25.7kgの酸化アルミニウム(Almatis、CT 800 SG、平均粒径およそ
3μm)から構成され、第4の混合物は、6.3kgの水に分散した4.3kgの窒化ホウ素
(Saint-Gobainから)から構成される。第2、第3及び第4の混合物を、第1の混合物に
撹拌しながら連続的に加える。これは、直ぐに使用できるサイズ剤を形成する。
【0053】
実施例5
実施例4のサイズ剤をV2Aスチールシートに適用する。層厚は30〜40μmである
。軽金属溶融体に750℃で1日間暴露した後でも、層に対する損傷は認められなかった
。凝固した鋳造皮膜を容易に除去することができた。
【0054】
実施例6
実施例4のサイズ剤を耐火コンクリートの試料に適用し、長期暴露試験に付す。層厚は
30〜40μmである。試料を軽金属溶融体に750℃で30日間浸漬した後でも、層に
対する損傷を見ることはできなかった。凝固した鋳造皮膜を容易に除去することができた
。層の硬度及びその摩擦抵抗性は優れている。本発明の層を有さない比較耐火コンクリー
ト試料の試験では、ここでも軽金属溶融体はコンクリート試料に浸透し、したがってその
重量は3倍になった。
【0055】
実施例7
実施例4のサイズ剤をケイ酸アルミニウムから作製された耐火レンガの試料に適用し、
長期暴露試験に付す。層厚は30〜40μmである。軽金属溶融体に750℃で30日間
浸漬した後でも、層に対する損傷を見ることはできなかった。凝固した鋳造皮膜を容易に
除去することができた。
【0056】
実施例8
実施例4のサイズ剤をケイ酸カルシウムから作製された耐火レンガの試料に適用し、長
期暴露試験に付す。層厚は30〜40μmである。軽金属溶融体に750℃で30日間浸
漬した後でも、層に対する損傷を見ることはできなかった。凝固した鋳造皮膜を容易に除
去することができた。
【0057】
実施例9
実施例4のサイズ剤をグラファイトの試料に適用し、暴露試験に付す。層厚は30〜4
0μmである。軽金属溶融体に750℃で5日間浸漬した後でも、層に対する損傷を見る
ことはできなかった。凝固した鋳造皮膜を容易に除去することができた。
【0058】
実施例10
本発明に好ましい組成物は以下の成分を有する:
−57.76重量%のAl23懸濁液(固形分40重量%)
−13.10重量%のAl2TiO5(0〜140μm)
−5.21重量%の、3つの異なるガラスフリットのフリット混合物(固形分50重量%

−17.15重量%のZrO2ナノ結合剤(固形分およそ44.8重量%)
−0.86重量%のKorantin MAT
−2.08重量%のAMP(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール)
−0.19重量%のDeuteron XG
−3.65重量%のSilres MP 42E(固形分20重量%)
【0059】
組成物を調製するために、Al23(A16SG、Almatisから)を、ポリアクリレート添加剤(0〜5%)と共に水に分散し、半時間撹拌した。続いて得られた懸濁液をビードミルで粉砕した。このことによって固形分を40重量%に調整した。
【0060】
広範囲の粒径分布(<140μm、μm未満の範囲まで)を有するAl2TiO5粉末(AlrokoからのFC6 Al2TiO5)を、分散しないで加え、粉砕酸化アルミニウム懸濁液になるまで撹拌しながら粉砕した。
【0061】
600〜750℃の溶融範囲を有する3つの異なるガラスフリットから構成されるフリット混合物を、<10μmの粒径を得るまでビードミルで湿式粉砕した(固形分50重量%)。続いてフリット混合物を、上記のAl23懸濁液とAl2TiO5の混合物に加えた。
【0062】
ナノ結合剤として、続いて塩基分散ZrO2(固形分およそ44.8重量%、製造者:ITN)を、懸濁液に撹拌しながら加えた。
【0063】
AMP(2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール)を、撹拌しながら懸濁液に加えて、pHをpH10〜11に調整するのに使用した。
【0064】
続いて、Deuteron(登録商標)XG、アニオン性ヘテロ多糖(Deuteronから)、Silres(登録商標)MP42E、アルキル改質フェニルシリコーン樹脂(Wackerから)及びKorantin(登録商標)MAT、腐蝕防止剤(BASFから)を、撹拌しながら懸濁液に加えた。
【0065】
全ての成分の添加が完了したとき、混合物を一晩撹拌すると、サイズ剤が使用できる状態になり、鉱物又は金属基材に噴霧によって適用することができる。
【0066】
実施例11
実施例10のサイズ剤をV2Aスチールシートに適用した。層厚は30〜40μmであった。軽金属溶融体に750℃で2日間浸漬した後でも、層に対する損傷は認められなかった。凝固した鋳造皮膜を容易に除去することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸アルミニウム及び/又は窒化ケイ素と、無機酸化物成分と、ナノスケール粒子を含む結合剤とを含む、層又は被覆、特に離型層を製造するための組成物。
【請求項2】
A:>500nmの平均粒径を有するチタン酸アルミニウム及び/又は窒化ケイ素の粒子と、
B:100nm〜10μmの平均粒径を有する無機酸化物粒子と、
C:<50nm、特に<25nm未満の平均粒径を有するナノスケール粒子を含む結合剤と、
D:懸濁媒質と
を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
A:>1μmの平均粒径を有するチタン酸アルミニウム及び/又は窒化ケイ素の粒子と、
B:200nm〜10μm、特に200nm〜1μmの平均粒径を有する無機酸化物粒子と、
C:<50nm、特に<25nm未満の平均粒径を有するナノスケール粒子を含む結合剤と、
D:懸濁媒質と
を含む、請求項1又は請求項2記載の組成物。
【請求項4】
成分Aの粒子が、1μm〜10μm、特におよそ5μmの平均粒径を有することを特徴とする、請求項2及び3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
成分Bの粒子が、>6のモース硬度を有することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
成分Bが、酸化アルミニウム粒子及び/又は二酸化チタン粒子を含むことを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
結合剤のナノスケール粒子が、酸化アルミニウム粒子、酸化ジルコニウム粒子、ベーマイト粒子及び二酸化チタン粒子を含む群からの少なくとも1つのメンバーを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
結合剤が、アルキルポリシロキサン、アルキルシリコーン樹脂及びフェニルシリコーン樹脂を含む群からの少なくとも1つの有機ケイ素構成成分を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
結合剤が、少なくとも1つのガラス様構成成分、特にガラスフリットを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
追加の成分として、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム及び雲母を含む群から選択される少なくとも1つの化合物を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
懸濁媒質が、極性であり、好ましくは主要構成成分として水を含むことを特徴とする、請求項2〜10のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
懸濁媒質が、非水性液体構成成分を含まないことを特徴とする、請求項2〜11のいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの界面活性物質、特にポリアクリレートを含むことを特徴とする、請求項2〜12のいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
追加の成分として窒化ホウ素を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
追加の成分としてグラファイトを含むことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
25重量%〜60重量%の固形分を有することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
成分Bを(組成分の固形分に基づいて)>40重量%、特に>50重量%の割合で含むことを特徴とする、請求項2〜16のいずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
成分Bとして40重量%〜75重量%の酸化アルミニウム、成分Aとして5重量%〜25重量%のチタン酸アルミニウム及び追加の成分として5重量%〜25重量%の窒化ホウ素を含むことを特徴とする(全ての率が組成物の固形分に基づいている)、請求項2〜17のいずれか1項記載の組成物。
【請求項19】
既に記載されている成分と共に、更なる無機粒子及び/又は繊維を特に充填剤として含むことを特徴とする、請求項1〜18のいずれか1項記載の組成物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項記載の組成物から製造可能な、層又は被覆、特に離型層。
【請求項21】
サイアロンを含むことを特徴とする、請求項20記載の層又は被覆。
【請求項22】
断熱作用を有する構成成分、特にケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム及び/又は雲母を含むことを特徴とする、請求項20及び21のいずれかに記載の層又は被覆。
【請求項23】
5μm〜500μm、特に20μm〜100μmの厚さを有することを特徴とする、請求項20〜22のいずれか1項記載の層又は被覆。
【請求項24】
請求項20〜23のいずれか1項記載の層又は被覆(離型層)で少なくとも部分的に被覆されている物体。
【請求項25】
特に断熱性を有する層又は被覆、特に離型層を製造するための、請求項1〜19のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項26】
成分Aを水中に分散し、続いて得られた分散体を成分B、成分C及び更なる任意成分の水性分散体/懸濁液と混合することを含む、請求項2〜19のいずれか1項記載の組成物の製造方法。
【請求項27】
成分Aが、ミルの中で水及び少なくとも1つのポリアクリレートと一緒に粉砕することによって分散されることを特徴とする、請求項26記載の方法。

【公表番号】特表2009−507972(P2009−507972A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530389(P2008−530389)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008713
【国際公開番号】WO2007/031224
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(504409130)イーテーエン ナノヴェイション アクチェンゲゼルシャフト (6)
【Fターム(参考)】