層状食品焼成装置
【課題】本発明は、平面状に層状形成した生地を確実に焼成することができ様々な食材の組合せが容易な層状食品焼成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】層状食品焼成装置1は、成形用容器100内に液状生地を層状形成して焼成する工程を繰り返して焼成生地を積層した層状食品を製造するための層状食品焼成装置であって、筺体2内の上方に配置された上部加熱装置10と、筺体2内の下方に配置された下部加熱装置11と、上部加熱装置10及び下部加熱装置11の間に配置されるとともに成形用容器100を載置する載置板20と、載置板20を上下動させて成形用容器100を焼成位置に設定する支持ロッド21及び駆動モータ22を備えている。
【解決手段】層状食品焼成装置1は、成形用容器100内に液状生地を層状形成して焼成する工程を繰り返して焼成生地を積層した層状食品を製造するための層状食品焼成装置であって、筺体2内の上方に配置された上部加熱装置10と、筺体2内の下方に配置された下部加熱装置11と、上部加熱装置10及び下部加熱装置11の間に配置されるとともに成形用容器100を載置する載置板20と、載置板20を上下動させて成形用容器100を焼成位置に設定する支持ロッド21及び駆動モータ22を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用容器内に液状生地を層状形成して焼成する工程を繰り返して焼成生地を積層した層状食品を製造するための層状食品焼成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バウムクーヘン等の層状食品が製造販売されている。バウムクーヘンは、芯棒の周囲に液状の生地を均等に付着させて、芯棒を回転させながらガスや電気による熱源により生地を焼成し、焼成した生地の周囲に新たに液状の生地を層状に付着させ焼成を繰り返して焼成生地を積層することで、円筒状の多層食品であるバウムクーヘンを製造している(特許文献1及び2)。
【0003】
こうしたバウムクーヘンの焼成装置としては、赤外線バーナーやガスバーナー等の熱源を用い、周囲に生地を付着させた芯棒を回動させながら焼成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3686671号公報
【特許文献2】特開平5−244855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のバウムクーヘンの製造方法では、芯棒を回転させながら焼成した生地全体に液状の生地を均等に掛けなければならず、熟練した技術が必要であった。そのため、生地を収容した容器内に芯棒を浸漬させて生地を付着させることも提案されている。
【0006】
しかしながら、こうしたこれまでのバウムクーヘン等の層状食品の製造方法では、積層する各層の層厚の調整が難しく、また異なる種類の食材を組み合せて積層することを容易に行うことができなかった。さらに、層の間にチョコチップ等の粒状食材を挟んで製造することができず、様々な食材と組み合わせて製造する場合に制約がある。
【0007】
そこで、本発明は、平面状に層状形成した生地を確実に焼成することができ様々な食材の組合せが容易な層状食品焼成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る層状食品焼成装置は、成形用容器内に液状生地を層状形成して焼成する工程を繰り返して焼成生地を積層した層状食品を製造するための層状食品焼成装置であって、筺体内の上方に配置された上部熱源と、筺体内の下方に配置された下部熱源と、前記上部熱源及び前記下部熱源の間に配置されるとともに前記成形用容器を載置する載置板と、前記載置板を上下動させて前記成形用容器を焼成位置に設定する位置設定手段とを備えていることを特徴とする。さらに、前記上部熱源は、前記下部熱源よりも高い加熱温度に設定されており、前記位置設定手段は、前記成形用容器を前記下部熱源よりも前記上部熱源に近接した焼成位置に設定することを特徴とする。さらに、前記成形用容器を外部から前記載置板の載置位置まで送入するとともに当該載置位置から外部に送出する移送手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のような構成を有することで、成形用容器内に液状生地を層状形成して焼成する場合に、位置設定手段により成形用容器を上下動させて内部の露出面に層状形成された液状生地を短時間できれいに焼成することができる。
【0010】
すなわち、液状生地は成形用容器内の上面に層状形成されるため、位置設定手段により上部熱源に近接させた位置で焼成することで、層状形成された液状生地をきれいに焼成することができ、また短時間で液状生地を焼成できるので、既に焼成された生地への熱による影響を最小限に抑えられ、食感の良好な多層の層状食品を製造することが可能となる。
【0011】
また、液状生地の層厚の変更、液状生地の材料の変更、液状生地への固形食材等の添加といった層状食品を製造する際の変更に対しても、成形用容器を上下動させて最適な焼成位置にきめ細かく設定することができ、様々な層状食品の製造に対応することができる。さらに、層状食品以外の食品についても、焼成位置を調整することできれいに焼成することができる。
【0012】
また、上部熱源を下部熱源よりも高い加熱温度に設定し、成形用容器を下部熱源よりも上部熱源に近接した焼成位置に設定することで、薄く層状形成された液状生地を短時間できれいに焼成することができる。
【0013】
また、成形用容器を外部から載置板の載置位置まで送入するとともに当該載置位置から外部に送出する移送手段を備えることで、載置位置への成形用容器のセット及び焼成した成形用容器の取り出しをスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る層状食品焼成装置に関する概略正面図である。
【図2】本発明に係る層状食品焼成装置に関する概略平面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】層状食品焼成装置を使用した食品製造設備の一例に関する概略正面図である。
【図6】層状食品焼成装置を使用した食品製造設備の一例に関する概略平面図である。
【図7】成形用容器への供給工程に関する説明図である。
【図8】層状食品焼成装置の動作に関する説明図である。
【図9】層状食品焼成装置の動作に関する説明図である。
【図10】製造された層状食品を示す外観斜視図である。
【図11】固形食材を含まない層状食品を示す外観斜視図である。
【図12】上述した実施形態の変形例に関する概略構成図である。
【図13】上述した実施形態の変形例に関する概略構成図である。
【図14】上述した実施形態の変形例の動作に関する説明図である。
【図15】上述した実施形態の変形例の動作に関する説明図である。
【図16】複数の成形用容器の焼成を同時に行う層状食品焼成装置に関する概略平面図である。
【図17】4枚の成形用容器を用いた場合の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0016】
図1及び図2は、本発明に係る層状食品焼成装置1に関する概略正面図及び概略平面図である。また、図3は、その内部構造を示す図1のA−A断面図であり、図4は、図2のB−B断面図である。
【0017】
層状食品焼成装置1は、略直方体状の筐体2を4本の脚部3で支持し、筐体2内の上面には上部熱源である上部加熱装置10が取り付けられており、下面には下部熱源である下部加熱装置11が取り付けられている。上部加熱装置10及び下部加熱装置11は、ガス又は電気を使用した公知の加熱装置を用いればよい。上部加熱装置10及び下部加熱装置11は、図示しない加熱制御装置によりそれぞれ加熱温度を調整可能に加熱制御されるようになっている。
【0018】
筐体2の前面側には矩形状の開口部4が形成されている。開口部4の前面には、開口部4を開閉する扉体40が配設されており、扉体40は、一対の支持チェーン41により吊下げられている。支持チェーン41の上端は取付板42に固定されており、取付板42は、筐体2の上面に設けられたエアシリンダ43の駆動ロッドに固定されている。そして、エアシリンダ43を駆動制御することで、支持チェーン41が引き上げられ又は引き下ろされて扉体40が上下動するようになり、それに伴って開口部4が開閉するようになる。
【0019】
筺体2内には、上部加熱装置10及び下部加熱装置11の間に仕切り板30が取り付けられており、仕切り板30により上部空間及び下部空間に区画されている。仕切り板30は、開口部4の下面とほぼ同じかわずかに低い位置に水平方向に沿うように取り付けられている。仕切り板30の上面には載置板20が配設されており、載置板20の下面には、仕切り板30を貫通して支持ロッド21が固定されて下方に延設されている。
【0020】
仕切り板30を設けることで、下部加熱装置11にゴミ等が落下するのを防止するとともに、成形用容器100を載置板20にセットする際に成形用容器100を開口部4からスムーズに載置板20に案内することができる。
【0021】
そして、支持ロッド21は、筺体2及び下部加熱装置11を貫通する貫通孔に挿入されて筺体2の底部から下方に突出しており、突出した支持ロッド21の下端部は、駆動モータ22によりラック−ピニオン機構を介して上下動されるようになっている。駆動モータ22は、筐体2の下部において脚部3に固定された支持フレーム5の上面に固定されている。
【0022】
駆動モータ22を図示せぬ駆動制御部により駆動することで、支持ロッド21とともに載置板20を上下動させて上下方向の位置調整を行うことができる。載置板20は、矩形状の鉄板からなり、上部加熱装置10及び下部加熱装置11の発熱領域と同じかわずかに大きいサイズに設定されている。載置板20は、支持ロッド21に水平状態となるように固定されており、仕切り板30の上面に当接した下方位置から上部加熱装置10に近接した上方位置まで移動可能となっている。
【0023】
また、駆動モータ22に公知のサーボモータ等を使用すれば、載置板20の上下方向の位置をミリ単位で設定することができる。開口部4は、上部加熱装置10及び下部加熱装置11の間の中間に開口し、開口部4の下面はほぼ水平面に形成されており、載置板20を仕切り板30の上面に当接した状態では、載置板20が開口部4の下面とほぼ同一平面となるように位置設定される。
【0024】
したがって、開口部4から成形用容器100を挿入して載置板20の上面にセットする際に、開口部4の下面とほぼ同一平面となるように載置板20を位置決めしておけば、開口部4の下面に沿って成形用容器100を滑らすように移動させて載置板20上に容易にセットすることができる。また、仕切り板30が設けられているので、成形用容器100が載置板20からずれた場合でも仕切り板30に受け止められて落下することがなく、成形用容器100をずれた位置から載置板20のセット位置に正確に位置決めすることができる。
【0025】
この場合、開口部4の下面とほぼ同じ高さに設定された作業台101に成形用容器100を載置しておけば、成形用容器100を持ち上げることなく、成形用容器100を横滑りさせながら簡単に筺体2内に挿入することが可能で、操作性を格段に向上させることができる。
【0026】
そして、載置板20にセットされた成形用容器100を上下方向に移動させて、上部加熱装置10及び仕切り板30の間において最適な焼成位置に位置調整することが可能となる。後述するように、層状食品を焼成する場合には、開口部4から上部加熱装置10に近接した位置まで上昇した焼成位置に設定し、栗饅頭、ロールカステラ、マドレーヌ、ブッセ等の食品を焼成する場合には、載置板20を仕切り板30の上面に当接した焼成位置に設定すればよく、様々な食品を最適な焼成位置で焼成することができ、使い勝手のよい汎用性の焼成装置となっている。
【0027】
図5及び図6は、上述した層状食品焼成装置1を使用した食品製造設備の一例に関する概略正面図及び概略平面図である。作業台101に隣接して作業台102が配置されており、作業台102において成形用容器100への液状生地及び固形食材の供給工程が行われる。この例では、供給工程は、作業者が手作業で行うようになっており、作業台102には、液状生地を貯留する貯留容器200、必要量の液状生地を貯留容器200から取り出す供給容器201、取り出された液状生地を計量する計量器202、及び、固形食材を貯留する食材容器203が適宜配置されている。
【0028】
使用する液状生地としては、従来よりバウムクーヘンに用いられている生地を使用すればよい。また、形成する層毎に異なる種類の生地を用いることもできる。例えば、液状生地に、抹茶、コーヒー、チョコレートといった食材を添加したものを用いて異なる色合いの生地が層状に積層するように形成すれば、カラフルな層状食品に仕上げることができる。
【0029】
添加する固形食材としては、小豆、甘納豆、果物の果肉、ドライフルーツ、ナッツ、アーモンド、チョコチップ、チーズ、栗そぼろ、ゴマ、ワカメ、桜の花等食材として使用されるもので加熱しても問題ないものはすべて用いることができ、様々な食材を含むバラエティに富んだ層状食品を製造することが可能となる。
【0030】
図7は、成形用容器100への供給工程に関する説明図である。まず、貯留容器200から必要量程度の液状生地を供給容器201で取り出して計量器202により取り出した液状生地量を計量する(図7(a))。必要な液状生地量は、成形用容器100における層状形成する面積及びその層厚により計算することができる。
【0031】
必要量を計量した供給容器201を成形用容器100の上方において移動させながら液状生地を成形用容器100内に流下させて供給する(図7(b))。成形用容器100内に供給した液状生地は、ゴムヘラ、スパテラ等の均し器具を用いて均一な層厚になるように均して成形用容器100内の露出面全体に引き延ばすように1mm〜2mmの層厚に層状形成される。
【0032】
均一な層厚に層状形成された液状生地の上方より食材容器203から固形食材を取り出して液状生地全体に均等に分布するように散布する(図7(c))。そして、液状生地及び固形食材が供給された成形用容器100を作業台101に移す(図7(d))。
【0033】
図8及び図9は、層状食品焼成装置1の動作に関する説明図である。まず、成形用容器100が作業台101に載置された後層状食品焼成装置1の扉体40を上昇させて開くように動作させる(図8(a))。層状食品焼成装置1内では、載置板20が初期位置である開口部4の下面と同一平面となる待機位置に予め設定されている。
【0034】
扉体40が上昇して開口部4が開いた後、成形用容器100を適当な押し出し器具を用いて開口部4に向かって押し出すように移動させ、成形用容器100を載置板20の所定位置にセットする(図8(b))。この場合、載置板20が開口部4の下面とほぼ同一平面に設定されているので、成形用容器100は押し出すだけで載置板20に容易にセットすることができる。
【0035】
成形用容器100を載置板20に設定した後扉体40を下降させて開口部4を閉じる(図8(c))。また、載置板20を上昇させて焼成位置に設定する。焼成位置は、上部加熱装置10に近接した位置に設定され、成形用容器100内に層状形成された液状生地を短時間で焼成するように設定される。例えば、上部加熱装置10と成形用容器100との間を30mm〜50mmの間隔に設定すればよい。
【0036】
成形用容器100を焼成位置に設定した後上部加熱装置10及び下部加熱装置11を加熱制御して成形用容器100内に層状形成された液状生地を焼成する(図9(a))。この場合、上部加熱装置10は、下部加熱装置11よりも高い加熱温度に設定する。例えば、上部加熱装置10は加熱温度200℃〜260℃、下部加熱装置11は加熱温度150℃〜220℃に設定すればよい。
【0037】
このように成形用容器100を上部加熱装置10に近接配置して液状生地を高い加熱温度で短時間に焼成することで、すでに焼成して積層した生地に与える影響をできるだけ抑えて液状生地をムラなくきれいに焼成して仕上げることができる。
【0038】
所定の焼成時間が経過した後、載置板20を焼成位置から待機位置に下降させ、扉体40を上昇させて開口部4を開く(図9(b))。そして、適当な引き出し器具を用いて成形用容器100を載置板20から開口部4に向かって移動させ、作業台101に成形用容器100を引き出す(図9(c))。成形用容器100を引き出した後扉体40を下降させて開口部4を閉じる。
【0039】
以上説明した成形用容器100内への液状生地及び食材の供給工程(図7参照)及び液状生地の焼成工程(図8及び図9)を交互に繰り返すことで、成形用容器100内に焼成生地を複数層積層した層状食品を製造することができる。
【0040】
図10は、製造された層状食品Mを示す斜視図である。層状食品Mは複数の焼成生地M1が薄層で積層されており、各層の間には、固形食材Nを層全体に偏ることなくほぼ均等に分布させることができるので、切断した場合でもほぼ同じ量の固形食材Nを切断された層状食品内に含ませることが可能となる。
【0041】
このように、各層の間に様々な固形食材をふんだんに含ませることができるため、従来のバウムクーヘンとは異なるこれまでにない層状食品が得られる。例えば、和の食材を取り入れることで、洋菓子であるバウムクーヘンに和の食材が結合した和洋折衷の新規な食感の食品を容易に製造することができる。
【0042】
図11は、固形食材を含まない層状食品M’を示す外観斜視図である。複数の焼成生地M1’がほぼ均等な厚みに仕上げられ、厚さ3mm〜5mmの焼成生地を10層から12層積層して、従来のバウムクーヘンと同様にふっくらとした食感に仕上げることができる。
【0043】
図12及び図13は、上述した実施形態の変形例に関する概略構成図であり、図12は図3と同様の内部構造を示す断面図であり、図13は図4と同様の内部構造を示す断面図である。この例では、筺体2内に成形用容器100を移送する移送機構6が設けられている。
【0044】
移送機構6は、筺体2内の上部加熱装置10及び下部加熱装置11の間に配置された一対の無端状移送チェーン60aを備えた移送コンベヤ60を備えている。移送チェーン60aは、筺体2の前面側の開口部4に向かって所定の間隔を空けて配列されており、載置板20が一対の移送チェーン60aの間に配置されている。また、移送チェーン60aの上面は、開口部4の下面とほぼ同一平面となるように設定されている。
【0045】
各移送チェーン60aは、一対の移送プーリ60bに張設されている。移送チェーン60aの両端部の移送プーリ60bは、それぞれ回転軸60cに固定されており、一方の回転軸60cの端部には傘歯車60dが取り付けられている。回転軸60cに取り付けられた傘歯車60dは、下方に延設された駆動ロッド61の上端に取り付けられた傘歯車61aに噛み合っている。駆動ロッド61は、筺体2の底部を貫通する貫通孔に挿入されて下方に突出しており、突出した駆動ロッド61の下端が駆動モータ62に固定されている。そして、駆動モータ62を回転駆動することで、駆動ロッド61が回転しそれに連動して移送プーリ60bが回転するようになっている。
【0046】
成形用容器100を筺体2内に移送する場合、載置板20を移送チェーン60aの上面の移送位置よりも下方に位置設定しておき、駆動モータ62を回転駆動して移送チェーン60aを移送動作させながら開口部4より成形用容器100を送入する。成形用容器100の端部が移送チェーン60aに乗り移ることで、移送コンベヤ60により筺体2内に成形用容器100が移送されて収容される。そして、成形用容器100が移送コンベヤ60により載置板20の上方に移動して停止した後、駆動モータ22を回転駆動して支持ロッド21を上昇させ載置板20を成形用容器100の底面に接触させて持ち上げ、上部加熱装置10に近接した焼成位置に成形用容器100を設定する。
【0047】
生地を焼成後成形用容器100を筺体2から送出する場合には、駆動モータ22を回転駆動して支持ロッド21を下降させて成形用容器100を載置板20とともに下降させ、成形用容器100を移送チェーン60aの上面に載置した状態にする。そして、駆動モータ62を回転駆動して移送チェーン60aにより成形用容器100を開口部4に向かって移動させ成形用容器100を送出する。
【0048】
図14及び図15は、以上説明した変形例の動作に関する説明図である。まず、成形用容器100が作業台101に載置された後層状食品焼成装置1の扉体40を上昇させて開くように動作させ、移送コンベヤ60の動作を開始して移送チェーン60aを送入方向に動作させる(図14(a))。層状食品焼成装置1内では、載置板20が初期位置である移送チェーン60aの上面より下方の待機位置に予め設定されている。
【0049】
扉体40が上昇して開口部4が開いた後、成形用容器100を開口部4に向かって移動させ、成形用容器100の端部を移送チェーン60aに乗り移らせて筺体2内に成形用容器100を送入する(図14(b))。この場合、移送チェーン60aの上面が開口部4の下面とほぼ同一平面に設定されているので、成形用容器100は容易に移送チェーン60aに乗り移らせることができる。
【0050】
成形用容器100を筺体2内に送入して載置板20の上方の所定位置に移動させて移送コンベヤ60を停止した後扉体40を下降させて開口部4を閉じる(図14(c))。そして、載置板20を上昇させて成形用容器100を持ち上げるように移動させ焼成位置に設定する。焼成位置は、上部加熱装置10に近接した位置に設定され、成形用容器100内に層状形成された液状生地を短時間で焼成するように設定される。
【0051】
成形用容器100を焼成位置に設定した後上部加熱装置10及び下部加熱装置11を加熱制御して成形用容器100内に層状形成された液状生地を焼成する(図15(a))。
【0052】
所定の焼成時間が経過した後、載置板20を焼成位置から待機位置に下降させ、成形用容器100を移送チェーン60aの上面に載置し、扉体40を上昇させて開口部4を開く(図15(b))。そして、移送コンベヤ60の動作を開始して移送チェーン60aを送出方向に動作させて、成形用容器100を開口部4に向かって移動させ、開口部4から送出された成形用容器100を作業台101に引き出す(図15(c))。成形用容器100を引き出した後扉体40を下降させて開口部4を閉じる。
【0053】
そして、図7において説明した成形用容器100内への液状生地及び食材の供給工程及び液状生地の焼成工程(図14及び図15)を交互に繰り返すことで、成形用容器100内に焼成生地を複数層積層した層状食品を製造することができる。
【0054】
図16は、複数の成形用容器の焼成を同時に行う層状食品焼成装置に関する概略平面図である。この例では、層状食品焼成装置1内に成形用容器100を2枚収容可能に構成している。筺体2内には、上述した変形例に示す載置板20及び移送コンベヤ60を2セット設けている。
【0055】
2つの成形用容器100A及び100Bに液状生地を供給した後それぞれ載置板20A及び20Bにセットして焼成し、以後交互に成形用容器100A及び100Bに液状生地を供給して焼成を行うことで、生産効率を高めることができる。
【0056】
図17は、4枚の成形用容器を用いた場合の概略平面図である。筺体2内には、4つの移送コンベヤ60A〜60Dが配列されており、各移送コンベヤの移送チェーンの間には4つの載置板20A〜20Dが配置されている。
【0057】
この場合には、4つの成形用容器100A〜100Dに液状生地を供給した後載置板20A〜20Dにそれぞれセットして焼成する。そして、1つずつ成形用容器を取り出して液状生地を供給して順次載置板にセットして焼成を行うことで、生産効率を高めることができる。また、4枚以上の成形用容器を取り扱う場合にも、筺体2内に移送コンベヤ及び載置板を増設していけばよく、多数枚の成形用容器に対応した層状食品焼成装置を容易に構成することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 層状食品焼成装置
2 筺体
3 脚部
4 開口部
5 支持フレーム
10 上部加熱装置
11 下部加熱装置
20 載置板
21 支持ロッド
22 駆動モータ
30 仕切り板
40 扉体
60 移送コンベヤ
100 成形用容器
101 作業台
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用容器内に液状生地を層状形成して焼成する工程を繰り返して焼成生地を積層した層状食品を製造するための層状食品焼成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バウムクーヘン等の層状食品が製造販売されている。バウムクーヘンは、芯棒の周囲に液状の生地を均等に付着させて、芯棒を回転させながらガスや電気による熱源により生地を焼成し、焼成した生地の周囲に新たに液状の生地を層状に付着させ焼成を繰り返して焼成生地を積層することで、円筒状の多層食品であるバウムクーヘンを製造している(特許文献1及び2)。
【0003】
こうしたバウムクーヘンの焼成装置としては、赤外線バーナーやガスバーナー等の熱源を用い、周囲に生地を付着させた芯棒を回動させながら焼成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3686671号公報
【特許文献2】特開平5−244855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のバウムクーヘンの製造方法では、芯棒を回転させながら焼成した生地全体に液状の生地を均等に掛けなければならず、熟練した技術が必要であった。そのため、生地を収容した容器内に芯棒を浸漬させて生地を付着させることも提案されている。
【0006】
しかしながら、こうしたこれまでのバウムクーヘン等の層状食品の製造方法では、積層する各層の層厚の調整が難しく、また異なる種類の食材を組み合せて積層することを容易に行うことができなかった。さらに、層の間にチョコチップ等の粒状食材を挟んで製造することができず、様々な食材と組み合わせて製造する場合に制約がある。
【0007】
そこで、本発明は、平面状に層状形成した生地を確実に焼成することができ様々な食材の組合せが容易な層状食品焼成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る層状食品焼成装置は、成形用容器内に液状生地を層状形成して焼成する工程を繰り返して焼成生地を積層した層状食品を製造するための層状食品焼成装置であって、筺体内の上方に配置された上部熱源と、筺体内の下方に配置された下部熱源と、前記上部熱源及び前記下部熱源の間に配置されるとともに前記成形用容器を載置する載置板と、前記載置板を上下動させて前記成形用容器を焼成位置に設定する位置設定手段とを備えていることを特徴とする。さらに、前記上部熱源は、前記下部熱源よりも高い加熱温度に設定されており、前記位置設定手段は、前記成形用容器を前記下部熱源よりも前記上部熱源に近接した焼成位置に設定することを特徴とする。さらに、前記成形用容器を外部から前記載置板の載置位置まで送入するとともに当該載置位置から外部に送出する移送手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のような構成を有することで、成形用容器内に液状生地を層状形成して焼成する場合に、位置設定手段により成形用容器を上下動させて内部の露出面に層状形成された液状生地を短時間できれいに焼成することができる。
【0010】
すなわち、液状生地は成形用容器内の上面に層状形成されるため、位置設定手段により上部熱源に近接させた位置で焼成することで、層状形成された液状生地をきれいに焼成することができ、また短時間で液状生地を焼成できるので、既に焼成された生地への熱による影響を最小限に抑えられ、食感の良好な多層の層状食品を製造することが可能となる。
【0011】
また、液状生地の層厚の変更、液状生地の材料の変更、液状生地への固形食材等の添加といった層状食品を製造する際の変更に対しても、成形用容器を上下動させて最適な焼成位置にきめ細かく設定することができ、様々な層状食品の製造に対応することができる。さらに、層状食品以外の食品についても、焼成位置を調整することできれいに焼成することができる。
【0012】
また、上部熱源を下部熱源よりも高い加熱温度に設定し、成形用容器を下部熱源よりも上部熱源に近接した焼成位置に設定することで、薄く層状形成された液状生地を短時間できれいに焼成することができる。
【0013】
また、成形用容器を外部から載置板の載置位置まで送入するとともに当該載置位置から外部に送出する移送手段を備えることで、載置位置への成形用容器のセット及び焼成した成形用容器の取り出しをスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る層状食品焼成装置に関する概略正面図である。
【図2】本発明に係る層状食品焼成装置に関する概略平面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B断面図である。
【図5】層状食品焼成装置を使用した食品製造設備の一例に関する概略正面図である。
【図6】層状食品焼成装置を使用した食品製造設備の一例に関する概略平面図である。
【図7】成形用容器への供給工程に関する説明図である。
【図8】層状食品焼成装置の動作に関する説明図である。
【図9】層状食品焼成装置の動作に関する説明図である。
【図10】製造された層状食品を示す外観斜視図である。
【図11】固形食材を含まない層状食品を示す外観斜視図である。
【図12】上述した実施形態の変形例に関する概略構成図である。
【図13】上述した実施形態の変形例に関する概略構成図である。
【図14】上述した実施形態の変形例の動作に関する説明図である。
【図15】上述した実施形態の変形例の動作に関する説明図である。
【図16】複数の成形用容器の焼成を同時に行う層状食品焼成装置に関する概略平面図である。
【図17】4枚の成形用容器を用いた場合の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0016】
図1及び図2は、本発明に係る層状食品焼成装置1に関する概略正面図及び概略平面図である。また、図3は、その内部構造を示す図1のA−A断面図であり、図4は、図2のB−B断面図である。
【0017】
層状食品焼成装置1は、略直方体状の筐体2を4本の脚部3で支持し、筐体2内の上面には上部熱源である上部加熱装置10が取り付けられており、下面には下部熱源である下部加熱装置11が取り付けられている。上部加熱装置10及び下部加熱装置11は、ガス又は電気を使用した公知の加熱装置を用いればよい。上部加熱装置10及び下部加熱装置11は、図示しない加熱制御装置によりそれぞれ加熱温度を調整可能に加熱制御されるようになっている。
【0018】
筐体2の前面側には矩形状の開口部4が形成されている。開口部4の前面には、開口部4を開閉する扉体40が配設されており、扉体40は、一対の支持チェーン41により吊下げられている。支持チェーン41の上端は取付板42に固定されており、取付板42は、筐体2の上面に設けられたエアシリンダ43の駆動ロッドに固定されている。そして、エアシリンダ43を駆動制御することで、支持チェーン41が引き上げられ又は引き下ろされて扉体40が上下動するようになり、それに伴って開口部4が開閉するようになる。
【0019】
筺体2内には、上部加熱装置10及び下部加熱装置11の間に仕切り板30が取り付けられており、仕切り板30により上部空間及び下部空間に区画されている。仕切り板30は、開口部4の下面とほぼ同じかわずかに低い位置に水平方向に沿うように取り付けられている。仕切り板30の上面には載置板20が配設されており、載置板20の下面には、仕切り板30を貫通して支持ロッド21が固定されて下方に延設されている。
【0020】
仕切り板30を設けることで、下部加熱装置11にゴミ等が落下するのを防止するとともに、成形用容器100を載置板20にセットする際に成形用容器100を開口部4からスムーズに載置板20に案内することができる。
【0021】
そして、支持ロッド21は、筺体2及び下部加熱装置11を貫通する貫通孔に挿入されて筺体2の底部から下方に突出しており、突出した支持ロッド21の下端部は、駆動モータ22によりラック−ピニオン機構を介して上下動されるようになっている。駆動モータ22は、筐体2の下部において脚部3に固定された支持フレーム5の上面に固定されている。
【0022】
駆動モータ22を図示せぬ駆動制御部により駆動することで、支持ロッド21とともに載置板20を上下動させて上下方向の位置調整を行うことができる。載置板20は、矩形状の鉄板からなり、上部加熱装置10及び下部加熱装置11の発熱領域と同じかわずかに大きいサイズに設定されている。載置板20は、支持ロッド21に水平状態となるように固定されており、仕切り板30の上面に当接した下方位置から上部加熱装置10に近接した上方位置まで移動可能となっている。
【0023】
また、駆動モータ22に公知のサーボモータ等を使用すれば、載置板20の上下方向の位置をミリ単位で設定することができる。開口部4は、上部加熱装置10及び下部加熱装置11の間の中間に開口し、開口部4の下面はほぼ水平面に形成されており、載置板20を仕切り板30の上面に当接した状態では、載置板20が開口部4の下面とほぼ同一平面となるように位置設定される。
【0024】
したがって、開口部4から成形用容器100を挿入して載置板20の上面にセットする際に、開口部4の下面とほぼ同一平面となるように載置板20を位置決めしておけば、開口部4の下面に沿って成形用容器100を滑らすように移動させて載置板20上に容易にセットすることができる。また、仕切り板30が設けられているので、成形用容器100が載置板20からずれた場合でも仕切り板30に受け止められて落下することがなく、成形用容器100をずれた位置から載置板20のセット位置に正確に位置決めすることができる。
【0025】
この場合、開口部4の下面とほぼ同じ高さに設定された作業台101に成形用容器100を載置しておけば、成形用容器100を持ち上げることなく、成形用容器100を横滑りさせながら簡単に筺体2内に挿入することが可能で、操作性を格段に向上させることができる。
【0026】
そして、載置板20にセットされた成形用容器100を上下方向に移動させて、上部加熱装置10及び仕切り板30の間において最適な焼成位置に位置調整することが可能となる。後述するように、層状食品を焼成する場合には、開口部4から上部加熱装置10に近接した位置まで上昇した焼成位置に設定し、栗饅頭、ロールカステラ、マドレーヌ、ブッセ等の食品を焼成する場合には、載置板20を仕切り板30の上面に当接した焼成位置に設定すればよく、様々な食品を最適な焼成位置で焼成することができ、使い勝手のよい汎用性の焼成装置となっている。
【0027】
図5及び図6は、上述した層状食品焼成装置1を使用した食品製造設備の一例に関する概略正面図及び概略平面図である。作業台101に隣接して作業台102が配置されており、作業台102において成形用容器100への液状生地及び固形食材の供給工程が行われる。この例では、供給工程は、作業者が手作業で行うようになっており、作業台102には、液状生地を貯留する貯留容器200、必要量の液状生地を貯留容器200から取り出す供給容器201、取り出された液状生地を計量する計量器202、及び、固形食材を貯留する食材容器203が適宜配置されている。
【0028】
使用する液状生地としては、従来よりバウムクーヘンに用いられている生地を使用すればよい。また、形成する層毎に異なる種類の生地を用いることもできる。例えば、液状生地に、抹茶、コーヒー、チョコレートといった食材を添加したものを用いて異なる色合いの生地が層状に積層するように形成すれば、カラフルな層状食品に仕上げることができる。
【0029】
添加する固形食材としては、小豆、甘納豆、果物の果肉、ドライフルーツ、ナッツ、アーモンド、チョコチップ、チーズ、栗そぼろ、ゴマ、ワカメ、桜の花等食材として使用されるもので加熱しても問題ないものはすべて用いることができ、様々な食材を含むバラエティに富んだ層状食品を製造することが可能となる。
【0030】
図7は、成形用容器100への供給工程に関する説明図である。まず、貯留容器200から必要量程度の液状生地を供給容器201で取り出して計量器202により取り出した液状生地量を計量する(図7(a))。必要な液状生地量は、成形用容器100における層状形成する面積及びその層厚により計算することができる。
【0031】
必要量を計量した供給容器201を成形用容器100の上方において移動させながら液状生地を成形用容器100内に流下させて供給する(図7(b))。成形用容器100内に供給した液状生地は、ゴムヘラ、スパテラ等の均し器具を用いて均一な層厚になるように均して成形用容器100内の露出面全体に引き延ばすように1mm〜2mmの層厚に層状形成される。
【0032】
均一な層厚に層状形成された液状生地の上方より食材容器203から固形食材を取り出して液状生地全体に均等に分布するように散布する(図7(c))。そして、液状生地及び固形食材が供給された成形用容器100を作業台101に移す(図7(d))。
【0033】
図8及び図9は、層状食品焼成装置1の動作に関する説明図である。まず、成形用容器100が作業台101に載置された後層状食品焼成装置1の扉体40を上昇させて開くように動作させる(図8(a))。層状食品焼成装置1内では、載置板20が初期位置である開口部4の下面と同一平面となる待機位置に予め設定されている。
【0034】
扉体40が上昇して開口部4が開いた後、成形用容器100を適当な押し出し器具を用いて開口部4に向かって押し出すように移動させ、成形用容器100を載置板20の所定位置にセットする(図8(b))。この場合、載置板20が開口部4の下面とほぼ同一平面に設定されているので、成形用容器100は押し出すだけで載置板20に容易にセットすることができる。
【0035】
成形用容器100を載置板20に設定した後扉体40を下降させて開口部4を閉じる(図8(c))。また、載置板20を上昇させて焼成位置に設定する。焼成位置は、上部加熱装置10に近接した位置に設定され、成形用容器100内に層状形成された液状生地を短時間で焼成するように設定される。例えば、上部加熱装置10と成形用容器100との間を30mm〜50mmの間隔に設定すればよい。
【0036】
成形用容器100を焼成位置に設定した後上部加熱装置10及び下部加熱装置11を加熱制御して成形用容器100内に層状形成された液状生地を焼成する(図9(a))。この場合、上部加熱装置10は、下部加熱装置11よりも高い加熱温度に設定する。例えば、上部加熱装置10は加熱温度200℃〜260℃、下部加熱装置11は加熱温度150℃〜220℃に設定すればよい。
【0037】
このように成形用容器100を上部加熱装置10に近接配置して液状生地を高い加熱温度で短時間に焼成することで、すでに焼成して積層した生地に与える影響をできるだけ抑えて液状生地をムラなくきれいに焼成して仕上げることができる。
【0038】
所定の焼成時間が経過した後、載置板20を焼成位置から待機位置に下降させ、扉体40を上昇させて開口部4を開く(図9(b))。そして、適当な引き出し器具を用いて成形用容器100を載置板20から開口部4に向かって移動させ、作業台101に成形用容器100を引き出す(図9(c))。成形用容器100を引き出した後扉体40を下降させて開口部4を閉じる。
【0039】
以上説明した成形用容器100内への液状生地及び食材の供給工程(図7参照)及び液状生地の焼成工程(図8及び図9)を交互に繰り返すことで、成形用容器100内に焼成生地を複数層積層した層状食品を製造することができる。
【0040】
図10は、製造された層状食品Mを示す斜視図である。層状食品Mは複数の焼成生地M1が薄層で積層されており、各層の間には、固形食材Nを層全体に偏ることなくほぼ均等に分布させることができるので、切断した場合でもほぼ同じ量の固形食材Nを切断された層状食品内に含ませることが可能となる。
【0041】
このように、各層の間に様々な固形食材をふんだんに含ませることができるため、従来のバウムクーヘンとは異なるこれまでにない層状食品が得られる。例えば、和の食材を取り入れることで、洋菓子であるバウムクーヘンに和の食材が結合した和洋折衷の新規な食感の食品を容易に製造することができる。
【0042】
図11は、固形食材を含まない層状食品M’を示す外観斜視図である。複数の焼成生地M1’がほぼ均等な厚みに仕上げられ、厚さ3mm〜5mmの焼成生地を10層から12層積層して、従来のバウムクーヘンと同様にふっくらとした食感に仕上げることができる。
【0043】
図12及び図13は、上述した実施形態の変形例に関する概略構成図であり、図12は図3と同様の内部構造を示す断面図であり、図13は図4と同様の内部構造を示す断面図である。この例では、筺体2内に成形用容器100を移送する移送機構6が設けられている。
【0044】
移送機構6は、筺体2内の上部加熱装置10及び下部加熱装置11の間に配置された一対の無端状移送チェーン60aを備えた移送コンベヤ60を備えている。移送チェーン60aは、筺体2の前面側の開口部4に向かって所定の間隔を空けて配列されており、載置板20が一対の移送チェーン60aの間に配置されている。また、移送チェーン60aの上面は、開口部4の下面とほぼ同一平面となるように設定されている。
【0045】
各移送チェーン60aは、一対の移送プーリ60bに張設されている。移送チェーン60aの両端部の移送プーリ60bは、それぞれ回転軸60cに固定されており、一方の回転軸60cの端部には傘歯車60dが取り付けられている。回転軸60cに取り付けられた傘歯車60dは、下方に延設された駆動ロッド61の上端に取り付けられた傘歯車61aに噛み合っている。駆動ロッド61は、筺体2の底部を貫通する貫通孔に挿入されて下方に突出しており、突出した駆動ロッド61の下端が駆動モータ62に固定されている。そして、駆動モータ62を回転駆動することで、駆動ロッド61が回転しそれに連動して移送プーリ60bが回転するようになっている。
【0046】
成形用容器100を筺体2内に移送する場合、載置板20を移送チェーン60aの上面の移送位置よりも下方に位置設定しておき、駆動モータ62を回転駆動して移送チェーン60aを移送動作させながら開口部4より成形用容器100を送入する。成形用容器100の端部が移送チェーン60aに乗り移ることで、移送コンベヤ60により筺体2内に成形用容器100が移送されて収容される。そして、成形用容器100が移送コンベヤ60により載置板20の上方に移動して停止した後、駆動モータ22を回転駆動して支持ロッド21を上昇させ載置板20を成形用容器100の底面に接触させて持ち上げ、上部加熱装置10に近接した焼成位置に成形用容器100を設定する。
【0047】
生地を焼成後成形用容器100を筺体2から送出する場合には、駆動モータ22を回転駆動して支持ロッド21を下降させて成形用容器100を載置板20とともに下降させ、成形用容器100を移送チェーン60aの上面に載置した状態にする。そして、駆動モータ62を回転駆動して移送チェーン60aにより成形用容器100を開口部4に向かって移動させ成形用容器100を送出する。
【0048】
図14及び図15は、以上説明した変形例の動作に関する説明図である。まず、成形用容器100が作業台101に載置された後層状食品焼成装置1の扉体40を上昇させて開くように動作させ、移送コンベヤ60の動作を開始して移送チェーン60aを送入方向に動作させる(図14(a))。層状食品焼成装置1内では、載置板20が初期位置である移送チェーン60aの上面より下方の待機位置に予め設定されている。
【0049】
扉体40が上昇して開口部4が開いた後、成形用容器100を開口部4に向かって移動させ、成形用容器100の端部を移送チェーン60aに乗り移らせて筺体2内に成形用容器100を送入する(図14(b))。この場合、移送チェーン60aの上面が開口部4の下面とほぼ同一平面に設定されているので、成形用容器100は容易に移送チェーン60aに乗り移らせることができる。
【0050】
成形用容器100を筺体2内に送入して載置板20の上方の所定位置に移動させて移送コンベヤ60を停止した後扉体40を下降させて開口部4を閉じる(図14(c))。そして、載置板20を上昇させて成形用容器100を持ち上げるように移動させ焼成位置に設定する。焼成位置は、上部加熱装置10に近接した位置に設定され、成形用容器100内に層状形成された液状生地を短時間で焼成するように設定される。
【0051】
成形用容器100を焼成位置に設定した後上部加熱装置10及び下部加熱装置11を加熱制御して成形用容器100内に層状形成された液状生地を焼成する(図15(a))。
【0052】
所定の焼成時間が経過した後、載置板20を焼成位置から待機位置に下降させ、成形用容器100を移送チェーン60aの上面に載置し、扉体40を上昇させて開口部4を開く(図15(b))。そして、移送コンベヤ60の動作を開始して移送チェーン60aを送出方向に動作させて、成形用容器100を開口部4に向かって移動させ、開口部4から送出された成形用容器100を作業台101に引き出す(図15(c))。成形用容器100を引き出した後扉体40を下降させて開口部4を閉じる。
【0053】
そして、図7において説明した成形用容器100内への液状生地及び食材の供給工程及び液状生地の焼成工程(図14及び図15)を交互に繰り返すことで、成形用容器100内に焼成生地を複数層積層した層状食品を製造することができる。
【0054】
図16は、複数の成形用容器の焼成を同時に行う層状食品焼成装置に関する概略平面図である。この例では、層状食品焼成装置1内に成形用容器100を2枚収容可能に構成している。筺体2内には、上述した変形例に示す載置板20及び移送コンベヤ60を2セット設けている。
【0055】
2つの成形用容器100A及び100Bに液状生地を供給した後それぞれ載置板20A及び20Bにセットして焼成し、以後交互に成形用容器100A及び100Bに液状生地を供給して焼成を行うことで、生産効率を高めることができる。
【0056】
図17は、4枚の成形用容器を用いた場合の概略平面図である。筺体2内には、4つの移送コンベヤ60A〜60Dが配列されており、各移送コンベヤの移送チェーンの間には4つの載置板20A〜20Dが配置されている。
【0057】
この場合には、4つの成形用容器100A〜100Dに液状生地を供給した後載置板20A〜20Dにそれぞれセットして焼成する。そして、1つずつ成形用容器を取り出して液状生地を供給して順次載置板にセットして焼成を行うことで、生産効率を高めることができる。また、4枚以上の成形用容器を取り扱う場合にも、筺体2内に移送コンベヤ及び載置板を増設していけばよく、多数枚の成形用容器に対応した層状食品焼成装置を容易に構成することが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 層状食品焼成装置
2 筺体
3 脚部
4 開口部
5 支持フレーム
10 上部加熱装置
11 下部加熱装置
20 載置板
21 支持ロッド
22 駆動モータ
30 仕切り板
40 扉体
60 移送コンベヤ
100 成形用容器
101 作業台
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形用容器内に液状生地を層状形成して焼成する工程を繰り返して焼成生地を積層した層状食品を製造するための層状食品焼成装置であって、筺体内の上方に配置された上部熱源と、筺体内の下方に配置された下部熱源と、前記上部熱源及び前記下部熱源の間に配置されるとともに前記成形用容器を載置する載置板と、前記載置板を上下動させて前記成形用容器を焼成位置に設定する位置設定手段とを備えていることを特徴とする層状食品焼成装置。
【請求項2】
前記上部熱源は、前記下部熱源よりも高い加熱温度に設定されており、前記位置設定手段は、前記成形用容器を前記下部熱源よりも前記上部熱源に近接した焼成位置に設定することを特徴とする請求項1に記載の層状食品焼成装置。
【請求項3】
前記成形用容器を外部から前記載置板の載置位置まで送入するとともに当該載置位置から外部に送出する移送手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の層状食品焼成装置。
【請求項1】
成形用容器内に液状生地を層状形成して焼成する工程を繰り返して焼成生地を積層した層状食品を製造するための層状食品焼成装置であって、筺体内の上方に配置された上部熱源と、筺体内の下方に配置された下部熱源と、前記上部熱源及び前記下部熱源の間に配置されるとともに前記成形用容器を載置する載置板と、前記載置板を上下動させて前記成形用容器を焼成位置に設定する位置設定手段とを備えていることを特徴とする層状食品焼成装置。
【請求項2】
前記上部熱源は、前記下部熱源よりも高い加熱温度に設定されており、前記位置設定手段は、前記成形用容器を前記下部熱源よりも前記上部熱源に近接した焼成位置に設定することを特徴とする請求項1に記載の層状食品焼成装置。
【請求項3】
前記成形用容器を外部から前記載置板の載置位置まで送入するとともに当該載置位置から外部に送出する移送手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の層状食品焼成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−135782(P2011−135782A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296038(P2009−296038)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(390013941)株式会社コバード (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(390013941)株式会社コバード (30)
【Fターム(参考)】
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