説明

嵌合部材の角部構造

【課題】角部で2以上の部材が嵌合する部材において、特殊な形状や部材を用いることなく、精度よく部材同士の位置決めを行う。
【解決手段】第1部材1の挿入部11は摺動面111を有し、位置決め凸部12は基準面121を有し、接触部221と停止部222とは第2角部223を形成している。第1角部13には、一部が欠損した円形状にくり抜かれた切欠き部131が形成されており、当接部22の第2角部223は切欠き部131内に配置され、基準面121が停止部222と当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2以上の物品を嵌合する嵌合部材の角部構造に関し、特に、前記物品同士が嵌合するコーナー部に形成されるR部を取り除き、位置決め精度を上げることができる嵌合部材の角部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加工方法にて製作された物品同士の嵌合を図6をもとに説明する。図6に示す部材は、第1部材91を第2部材92に挿入し嵌合するものである。第1部材91は後述の第2部材92の当接部922と接触しつつ挿入される挿入部911と、挿入部911に対して直交する方向に突出し、当接部922と接触して第2部材92に対する第1部材91の位置決めをするための位置決め凸部912とを有している。第2部材92は本体部921と、本体部921に取り付けられた当接部922とを有している。
【0003】
第1部材91を第2部材92に嵌合させるときには、第1部材91の挿入部911が前記当接部922と接触しつつ摺動するように、挿入される。このとき、当接部922と位置決め凸部912とが当接した状態で接着等の既知の方法で固定する。
【0004】
当接部922を摺動する挿入部911の接触面910と、当接部922と当接する位置決め凸部912の基準面913とは角部93を形成している。基準面913が当接部922と接触することで、第1部材91は第2部材92に対して位置決めすることができる。
【0005】
金属を加工する場合、角部93を尖った形状に形成することは難しく、図6に示すように、R部931が形成されてしまう。当接部922と挿入部911の寸法精度が高い場合、当接部922とR部931とが干渉し、位置決め凸部912の基準面913と当接部922とが当接せず、位置決め精度が著しく低下する。また、当接部922はR部931と面ではなく線で接触するので、応力が集中し、変形、破損の原因になることがある。
【0006】
そこで、特開平7−204951号公報に記載の発明では、被加工物を一度加工した後に、数値制御工作機械を用いて2次切削加工を行い、前記被加工物のコーナーに形成されているR部を除去するものが示されている。また、特開平3−79213号公報には、このコーナーのR部を放電加工、やすりによる研削加工、スロッタによる切削加工にて除去するものが示されている。
【特許文献1】特開平7−204951号公報
【特許文献2】特開平3−79213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特開平7−204951号公報に記載の発明では、2次切削加工において、角型刃物を高精度に移動させて切削加工を行いコーナーのR部を除去しており、数値制御工作機械を利用しなくてはならず、設備投資が大きくなり、それだけ、部材の製造に必要なエネルギ、コストが大きくなる。
【0008】
また、特開平3−79213号公報に記載されているように、前記放電加工、研削加工、切削加工等にてコーナーのR部を除去するのに、前記R部の除去のための工作機械が必要で、製造効率が悪い。
【0009】
そこで本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、角部で2以上の部材が嵌合する部材において、特殊な形状や部材を用いることなく、精度よく部材同士の位置決めを行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明は、第1部材を第2部材に挿入嵌合するときに、前記第1部材の角部に形成される嵌合部材の角部構造であって、前記第1部材は前記第2部材に挿入する挿入部と、前記挿入部と直交する方向に伸びる位置決め凸部とを有しており、前記第2部材は本体部と、前記本体部に取り付けられ前記第1部材の挿入部を接触支持するとともに、前記位置決め凸部と当接する当接部とを有しており、前記挿入部には前記当接部と接触する接触面が形成され、前記位置決め凸部には前記当接部と当接し、前記第1部材の前記第2部材に対する位置の基準となる基準面が形成され、前記接触面と前記基準面が接続する部分に第1角部が形成されており、前記当接部の前記第1部材の接触面と対面する接触部と、前記基準面と当接する停止部とが接続することで形成される第2角部が形成されており、前記第1角部には一部が欠損した円形状の切欠き部が角部に沿って形成されており、前記第1部材を前記第2部材に挿入するときに、前記切欠き部に前記第2角部が非接触で内挿されるとともに、前記位置決め凸部の基準面が前記当接部の停止部と接触することで第1部材が第2部材に対して位置決めされることを特徴とする。
【0011】
この構成によると、前記第1角部に切欠き部を形成することで、前記第1角部と前記第2角部が干渉しないので、前記位置決め凸部の基準面と前記当接部の停止部とが接触し、前記第2部材に対する前記第1部材の位置決め精度を高めることができる。
【0012】
また、前記基準面と前記停止部が当接することで前記第1部材と前記第2部材とが嵌合しているので、応力を分散することができ、それだけ、部材の破壊、破損を抑制することができる。
【0013】
また上記目的を達成するため本発明は、第1部材と第2部材とを嵌合するときに少なくとも一方の部材に形成される角部構造であって、前記第1部材は前記第2部材に挿入する挿入部と、前記挿入部と直交する方向に伸びる位置決め凸部とを有しており、前記第2部材は本体部と、前記本体部に取り付けられ前記第1部材の挿入部を接触支持するとともに、前記位置決め凸部と当接する当接部とを有しており、前記挿入部には前記当接部と接触する接触面が形成され、前記位置決め凸部には前記当接部と当接し、前記第1部材の前記第2部材に対する位置の基準となる基準面が形成され、前記接触面と前記基準面が接続する部分に第1角部が形成されており、前記第1部材の接触面と対面する接触部と、前記基準面と当接する停止部とが接続することで形成される第2角部が形成されており、前記第1角部又は第2角部の少なくとも一方には切欠き部が角部に沿って形成されており、前記第1部材を前記第2部材に挿入するときに、前記位置決め凸部の基準面が前記当接部の停止部と接触することで第1部材が第2部材に対して位置決めされることを特徴とする。
【0014】
この構成によると、前記第1角部に切欠き部を形成することで、前記第1角部と前記第2角部が干渉しないので、前記位置決め凸部の基準面と前記当接部の停止部とが接触し、前記第2部材に対する前記第1部材の位置決め精度を高めることができる。
【0015】
また、前記基準面と前記停止部が当接することで前記第1部材と前記第2部材とが嵌合しているので、応力を分散することができ、それだけ、部材の破壊、破損を抑制することができる。
【0016】
上記構成において前記第1角部又は前記第2角部に形成される切欠き部として、他方の角部が非接触で内挿される形状に形成されるものを挙げることができる。
【0017】
上記構成において前記第1部材の挿入部が円柱状に、前記当接部が円筒形状に形成されており、前記第2角部には円筒形状の円周方向に沿って切欠き部が形成されているものとしてもよい。
【0018】
他の部材と嵌合する嵌合部材に形成される角部構造であって、他の部材と接触嵌合する接触部と、前記接触部に対して所定の角度を成すように伸び、前記他の部材と当接することで位置決めされる位置決め部と、前記当接部と前記位置決め部にて形成される角部のうち、前記他の部材に対向して形成される角部には、一部が切欠かれた円形の断面を有する切欠き部を備えていることを特徴とするものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、角部で2以上の部材が嵌合する部材において、特殊な形状や部材を用いることなく、精度よく部材同士の位置決めを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明にかかる嵌合部材の角部構造を備えた部材の一例の概略図であり、図2は図1に示す嵌合部材の角部構造の拡大図である。図1に示すように、本発明にかかる嵌合部材の角部構造を有する第1部材1と、第1部材1が挿入される第2部材2とを有している。
【0021】
第1部材1は第2部材2に挿入されるものであり、第1部材1は第2部材2に挿入される挿入部11と、挿入部11に対して直交する方向に突出し、第2部材2形成されている後述の当接部22と接触し第2部材2に対する第1部材1の位置決めをするための位置決め凸部12とを有している。第2部材2は本体部21と、本体部21に取り付けられた当接部22とを有している。
【0022】
第1部材1を第2部材2に嵌合させるときには、第1部材1の挿入部11が当接部22に接触摺動するように、挿入される。このとき、当接部22と位置決め凸部12とが当接した状態で接着等の既知の方法で固定する。
【0023】
図2に示すように、第1部材1の挿入部11は第2部材2に挿入するときに当接部22と相対的に摺動する摺動面111を有しており、位置決め凸部12は当接部22と当接し、位置決め基準となる基準面121を有している。接触部221と停止部222とは第2角部223を形成している。第1部材1の挿入部11の摺動面111と位置決め凸部12の基準面121とは第1角部13を形成している。この第1角部13には、一部が欠損した円形状にくり抜かれた切欠き部131が形成されている。第2部材2の当接部22は直方体形状を有しており、摺動面111と接触する接触部221と、基準面121と当接する停止部222とを備えている。
【0024】
第1部材1を第2部材2に挿入配置するときに、第1部材1の挿入部11の摺動面111が当接部22の接触部221と接触しつつ、当接部22の停止部222が位置決め凸部12の基準面121とが接触する。このとき、当接部22の第2角部223は切欠き部131内に配置されので、基準面121が停止部222と当接することで精度よく位置決めすることができる。
【0025】
図3は本発明にかかる嵌合部材の角部構造を備えた部材の他の例の拡大図である。図1、図2に示す嵌合部材の角部構造は第2部材2に挿入する第1部材1に切欠き部131が形成されていたが、当接部22の第2角部223に切欠き部224が形成されていてもよい。このように当接部22に切欠き部224が形成されることで、第1部材1の第1角部13のRを加工しなくても、当接部22の停止部222と基準面121が当接するので、精度よく位置決めすることができる。
【0026】
当接部22に切欠き部224を形成する場合、外側に折れる(換言すると、山形状の)第2角部223に切欠き部224を形成するので、加工が容易である。また、一部が欠損した円形状に限定されるものではなく、三角形状に切り欠かれていても良い。さらに、第1部材1の挿入部11が円柱状で位置決め凸部12が挿入部11に形成されるフランジ状の部材で、第2部材2が円筒状に形成されている場合でも、当接部22の第2角部223に円周に沿って切欠き部224を形成することができるので、本発明にかかる嵌合部材の角部構造を採用することができる。
【0027】
(実施例1)
図4は本発明にかかる嵌合部材の角部構造を備えた部材の一例の正面図である。図4に示す嵌合部材の角部構造を備えた部材はそれには限定されないがここでは、光ヘッド装置に用いられるレンズホルダとレンズホルダの側面に取り付けられる基板部材である。
【0028】
図4に示すレンズホルダ3は、本体31と本体31の側面に取り付けられる基板部材32と、本体31に配置される対物レンズ33と、本体31に配置されるフォーカシングコイル34と、トラッキングコイル35と、ワイヤーばね36とを有している。
【0029】
対物レンズ33はレンズホルダ3に形成された貫通孔に配置されており、貫通孔に入射したレーザ光を集光して光ディスクの記録面にレーザスポットを結像する。基板部材32はレンズホルダ3の側面に取り付け固定されている。
【0030】
基板部材32にはワイヤーばね36の端部が固定されており、ワイヤーばね○の基板部材32が取り付けられているのと反対側は支持部(図示省略)に支持されている。このワイヤーばね36にてレンズホルダ3は浮遊した状態で支持されている。また、基板部材32はフォーカシングコイル34及びトラッキングコイル35と電気的に接続しており、ワイヤーばね36及び基板部材32を介してフォーカシングコイル34及びトラッキングコイル35に電力を供給するようになっている。
【0031】
レンズホルダ3は磁界内に配置されており、フォーカシングコイル34及びトラッキングコイル35に電力を供給することで、ローレンツ力が働きレンズホルダ3ひいては対物レンズ33は光ディスクに対して接近離間(フォーカシング動作)したり、光ディスクに沿って、光ディスクの中央に対して接近離間(トラッキング動作)したりする。
【0032】
図5は図4に示すレンズホルダの基板部材の角部の拡大図である。基板部材32は薄板で構成されるものであり、板状の母材をプレス加工にて打ち抜いて形成するものである。基板部材32はレンズホルダ3の側面に取り付けられるものであり、基板部材32は挿入部321と挿入部321に直交配置される位置決め凸部322と、挿入部321と位置決め凸部322との間に形成される角部320とを有している。角部320には一部が欠損した円形状の切欠き部324が形成されている。
【0033】
レンズホルダ3の本体31は、基板部材32の挿入部321が挿入嵌合される、一対の当接部311を備えている。位置決め凸部322の挿入部321側には位置決めの基準となる基準面323が形成されている。基準面323はそれには限定されないが、ここでは、挿入部321と直交して形成されており、基板部材32をレンズホルダ3の所定の位置に位置決めするためのものである。
【0034】
基板部材32をレンズホルダ3に挿入する場合、基板部材32の挿入部321をレンズホルダ3の一対の当接部311の間に形成された間隙に挿入する。このとき、挿入部321と当接部311は基板部材32が容易に外れないように密着しつつ摺動する。さらに、基板部材32を奥に挿入すると、図5に示すように、位置決め凸部322の基準面323が当接部311と当接してレンズホルダ3に基板部材32が位置決めされる。この状態で、接着剤、溶着等の既知の接着方法を利用して、基板部材32をレンズホルダ3の側面に固定する。
【0035】
基板部材32の基準面323が当接部311と当接する。当接部311の角部312は切欠き部324に配置されるので、基板部材32は当接部311の角部312と干渉することがなく、当接部311の側面が基準面323と当接する。これにより、基準面323と当接部311の側面が確実に当接するので、正確な位置決めを行うことができる。
【0036】
上記実施例において、切欠き部は一部が欠損した円形状に形成されているものを例に説明しているが、それに限定されるものではなく、角部が干渉しない形状を広く採用することができる。また、第1部材又は第2部材切欠き部を備えた部材だけを単独で用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明にかかる嵌合部材の角部構造を備えた部材の概略図である。
【図2】図1に示す嵌合部材の角部構造の拡大図である。
【図3】本発明にかかる嵌合部材の角部構造を備えた部材の他の例の概略図である。
【図4】本発明にかかる嵌合部材の角部構造を備えた部材の一例の正面図である。
【図5】図4に示すレンズホルダを分解した拡大図である。
【図6】従来の嵌合部材の角部構造を備えた部材の概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1 第1部材
11 挿入部
111 摺動面
12 位置決め凸部
121 基準面
13 第1角部
131 切欠き部
2 第2部材
21 本体部
22 当接部
221 接触部
222 停止部
223 第2角部
224 切欠き部
3 レンズホルダ
31 本体
311 当接部
312 角部
32 基板部材
321 挿入部
322 位置決め凸部
323 基準面
324 切欠き部
33 対物レンズ
34 フォーカシングコイル
35 トラッキングコイル
36 ワイヤーばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材を第2部材に挿入嵌合するときに、前記第1部材の角部に形成される嵌合部材の角部構造であって、
前記第1部材は前記第2部材に挿入する挿入部と、前記挿入部と直交する方向に伸びる位置決め凸部とを有しており、
前記第2部材は本体部と、前記本体部に取り付けられ前記第1部材の挿入部を接触支持するとともに、前記位置決め凸部と当接する当接部とを有しており、
前記挿入部には前記当接部と接触する接触面が形成され、前記位置決め凸部には前記当接部と当接し、前記第1部材の前記第2部材に対する位置の基準となる基準面が形成され、前記接触面と前記基準面が接続する部分に第1角部が形成されており、
前記当接部の前記第1部材の接触面と対面する接触部と、前記基準面と当接する停止部とが接続することで形成される第2角部が形成されており、
前記第1角部には一部が欠損した円形状の切欠き部が角部に沿って形成されており、前記第1部材を前記第2部材に挿入するときに、前記切欠き部に前記第2角部が非接触で内挿されるとともに、前記位置決め凸部の基準面が前記当接部の停止部と接触することで第1部材が第2部材に対して位置決めされることを特徴とする嵌合部材の角部構造。
【請求項2】
第1部材と第2部材とを嵌合するときに少なくとも一方の部材に形成される角部構造であって、
前記第1部材は前記第2部材に挿入する挿入部と、前記挿入部と直交する方向に伸びる位置決め凸部とを有しており、
前記第2部材は本体部と、前記本体部に取り付けられ前記第1部材の挿入部を接触支持するとともに、前記位置決め凸部と当接する当接部とを有しており、
前記挿入部には前記当接部と接触する接触面が形成され、前記位置決め凸部には前記当接部と当接し、前記第1部材の前記第2部材に対する位置の基準となる基準面が形成され、前記接触面と前記基準面が接続する部分に第1角部が形成されており、
前記第1部材の接触面と対面する接触部と、前記基準面と当接する停止部とが接続することで形成される第2角部が形成されており、
前記第1角部又は第2角部の少なくとも一方には切欠き部が角部に沿って形成されており、前記第1部材を前記第2部材に挿入するときに、前記位置決め凸部の基準面が前記当接部の停止部と接触することで第1部材が第2部材に対して位置決めされることを特徴とする嵌合部材の角部構造。
【請求項3】
前記第1角部又は前記第2角部に形成される切欠き部は、他方の角部が非接触で内挿される形状を有していることを特徴とする請求項2に記載の嵌合部材の角部構造。
【請求項4】
前記第1部材の挿入部が円柱状に、前記当接部が円筒形状に形成されており、前記第2角部には円筒形状の円周方向に沿って切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の嵌合部材の角部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−139076(P2007−139076A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333733(P2005−333733)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】