説明

工作機械

【課題】ランニングコスト及びイニシャルコストを抑えつつ、コラムの各部分の熱膨張差によるコラムの傾きを抑える。
【解決手段】上下のそれぞれの端が開口し、工具ヘッドを間接的に支持する筒状のコラム10と、コラム10の下方開口23の縁と設置面Fとの間に配置され、コラム10を持ち上げて支持する複数の脚31と、コラム10の下方開口22から雰囲気空気をコラム内に取り入れ、上方開口13から雰囲気空気を排気させるファンユニット40と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ヘッドと、この工具ヘッドを支持するコラムとを備えている工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、工具ヘッドを支持するコラムに温度分布が存在すると、温度の異なる部分相互間での熱膨張量の差により、コラムが傾く等してしまい、工作精度が悪化する。
【0003】
そこで、以下の特許文献1に記載の技術では、コラムの前壁と後壁とのそれぞれに、複数の温度計を上下方向に並べて設けると共に、温度計と同数の温度調節手段を対応温度計の近傍に設けて、各温度計で測定された温度に基づいて各温度調節手段を制御して、コラム内の温度差を最小限に抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−54839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、極めて多数の温度計と共に、温度計と同数の温度調節手段が必要であるため、イニシャルコストが嵩む上に、各温度調節手段のための熱源を確保するためにランニングコストも嵩んでしまう、という問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、イニシャルコスト及びランニングコストを抑えつつも、コラム内の温度差を最小限に抑えることができる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するための発明に係る工作機械は、
工具が取り付けられる工具ヘッドと、上下のそれぞれの端が開口し、前記工具ヘッドを支持する筒状のコラムと、前記コラムの下方開口の縁と設置面との間に配置され、該コラムを持ち上げて支持する複数の脚と、前記コラムの下方開口と上方開口とのうちの一方の開口から雰囲気空気を該コラム内に取り入れ、他方の開口から該雰囲気空気を排気させる送風手段と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
当該工作機械では、雰囲気空気をコラム内に強制的に送風して、コラムの各部分における雰囲気空気との間の熱伝達率をほぼ一律に上昇させて、コラムの各部分における雰囲気温度に対する温度追従性をほぼ同じにしている。このため、当該工作機械では、コラムの温度分布の均一化が図られ、各部分相互の熱膨張差によるコラムの傾きを防ぐことができる。
【0009】
また、当該工作機械では、多数の温度計と共に、温度計と同数の温度調節手段が不要であるため、イニシャルコストを抑えることができると共に、コラムの温度を雰囲気空気の温度に合せているため、各温度調節手段のための熱源を確保する必要がなく、ランニングコストも抑えることができる。
【0010】
ここで、前記工作機械において、
前記送風手段は、前記コラム内の前記下方開口側に設けられ、該コラムの該下方開口から前記雰囲気空気を該コラム内に取り入れ、前記上方開口から該雰囲気空気を排気するものであってもよい。
【0011】
当該工作機械では、コラム内での雰囲気空気の送風効率を高めることができ、送風手段を駆動するためのランニングコストを抑えることができる。
【0012】
また、前記工作機械において、
前記コラムとして、互いに間隔を開けて配置されている一対のコラムを備えていると共に、該一対のコラムの相互間に渡されている横梁部材を備え、前記工具ヘッドは、前記横梁部材を介して前記コラムに支持され、前記一対のコラムは、それぞれ、前記横梁部材が設けられる側の第一周壁と、該第一周壁と対向する第二周壁とを有し、前記一対のコラムのそれぞれには、前記送風手段が設けられていてもよい。
【0013】
また、前記工作機械において、
前記第一周壁には、該第一周壁の外面を覆うカバーが設けられていてもよい。この場合、前記第二周壁の厚さは該第一周壁の厚さより厚いことが好ましい。このように、カバーが設けられていない側の第二周壁の厚さを厚くして、当該第二周壁の熱容量を大きくすることで、カバーが設けられ第一周壁の雰囲気温度に対する低い温度追従性に、当該第二周壁の温度追従性を近づけることができる。このため、第一周壁と第二周壁との温度差を抑えることができる。
【0014】
また、前記工作機械において、
前記コラムの内面には、互いに間に上下方向に伸びる前記雰囲気空気の流路が確保されている複数のフィンが形成されていてもよい。また、前記一対のコラムのそれぞれの前記第一周壁の内面及び前記第二周壁の内面には、互いに間に上下方向に伸びる前記雰囲気空気の流路が確保されている複数のフィンが形成されていてもよい。
【0015】
当該工作機械では、コラムの内面の伝熱面積を増加させることができると共に、コラム内を上下方向に流れる雰囲気空気の抵抗を最小限に抑えることができために、コラム内の雰囲気空気の流速低下による熱伝達率の低下を抑えることができる。よって、当該工作機械では、コラム内において、コラムと雰囲気空気との熱交換率を向上させることができる。
【0016】
また、前記工作機械において、
前記コラムを形成する周壁の一部分の温度を測定する第一温度計と、前記コラムを形成する周壁のうち、前記一部分との間で温度差が生じる他の部分の温度を測定する第二温度計と、前記第一温度計で測定された温度と前記第二温度計で測定された温度との温度差が予め定められた範囲を超えたときに、前記送風手段を稼動させ、該予め定められた範囲内のときに、前記送風手段を停止させる制御手段と、を備えていてもよい。
【0017】
また、前記工作機械において、
前記一対のコラムのうちの一方のコラムの前記第一周壁の温度を測定する第一温度計と、前記一方のコラムの前記第二周壁の温度を測定する第二温度計と、前記第一温度計で測定された温度と前記第二温度計で測定された温度との温度差が予め定められた範囲を超えたときに、前記一対のコラムのそれぞれに設けられている前記送風手段を稼動させ、該予め定められた範囲内のときに、該一対のコラムのそれぞれに設けられている前記送風手段を停止させる制御手段と、を備えていてもよい。
【0018】
また、前記工作機械において、
前記一対のコラムのそれぞれの前記第一周壁の温度を測定する第一温度計と、前記一対のコラムのそれぞれの前記第二周壁の温度を測定する第二温度計と、前記一対のコラムのうちの一方のコラムに関して、前記第一温度計で測定された温度と前記第二温度計で測定された温度との温度差が予め定められた範囲を超えたときに、該一方のコラムに設けられている前記送風手段を稼動させ、該予め定められた範囲内のときに、該一方のコラムに設けられている前記送風手段を停止させると共に、前記一対のコラムのうちの他方のコラムに関して、前記第一温度計で測定された温度と前記第二温度計で測定された温度との温度差が予め定められた範囲を超えたときに、該他方のコラムに設けられている前記送風手段を稼動させ、該予め定められた範囲内のときに、該他方のコラムに設けられている前記送風手段を停止させる制御手段と、を備えていてもよい。
【0019】
コラムの周壁の温度を測定する温度計を備えている以上の工作機械では、送風手段を常時駆動させる必要がないため、ランニングコストを抑えることができる。
【0020】
また、前記工作機械において、
前記コラム外の雰囲気温度を測定する雰囲気温度計と、前記雰囲気温度計で測定された温度の単位時間当たりの変化量である温度変化率を求め、該温度変化率が予め定められた範囲を超えるときに、前記送風手段を稼動させ、該予め定められた範囲内のときに、前記送風手段を停止させる制御手段と、を備えていてもよい。
【0021】
当該工作機械でも、送風手段を常時駆動させる必要がないため、ランニングコストを抑えることができる。さらに、当該工作機械では、コラムの各部分の温度差が実際に大きくなる前に、各部分の温度差を抑えることができる。
【0022】
また、コラムの周壁の温度を測定する温度計を備えている以上の工作機械において、
前記コラム外の雰囲気温度を測定する雰囲気温度計を備え、前記制御手段は、前記雰囲気温度計で測定された温度の単位時間当たりの変化量である温度変化率を求め、該温度変化率が予め定められた変化率範囲を超えるときと、前記第一温度計で測定された温度と前記第二温度計で測定された温度との温度差が予め定められた温度差範囲を超えるときに、前記送風手段を稼動させ、該温度変化率が前記予め定められた変化率範囲内で、且つ、前記第一温度計で測定された温度と前記第二温度計で測定された温度との温度差が前記予め定められた温度差範囲内のときに、前記送風手段を停止させてもよい。
【0023】
当該工作機械では、コラムの各部分の温度差が実際に大きくなった場合と、各部分の温度差が大きくなると想定される場合の両方で、送風手段を稼動させるため、雰囲気温度の変化によるコラムの各部分の温度差をより小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、雰囲気空気をコラム内に強制的に送風して、コラムの各部分における温度を雰囲気温度に合せているため、コラムの温度分布の均一化が図られ、各部分相互の熱膨張差によるコラムの傾きを防ぐことができる。
【0025】
さらに、本発明によれば、多数の温度計と共に、温度計と同数の温度調節手段が不要であるため、イニシャルコストを抑えることができると共に、コラムの温度を雰囲気空気の温度に合せているため、各温度調節手段のための熱源を確保する必要がなく、ランニングコストも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る一実施形態における工作機械の斜視図である。
【図2】本発明に係る第一実施形態におけるコラムの模式的な縦断面図である。
【図3】図2におけるIII−III線断面図である。
【図4】本発明に係る第一実施形態で、送風ファンを駆動させていないときの雰囲気温度とコラムの後周壁温度及び前周壁温度との関係を示すグラフである。
【図5】本発明に係る第一実施形態における、コラムの周壁と雰囲気空気との間の熱伝達率と、雰囲気空気の風速との関係を示すグラフである。
【図6】本発明に係る第二実施形態におけるコラムの模式的な縦断面図である。
【図7】図6におけるVII−VII線断面図である。
【図8】本発明に係る第三実施形態におけるコラムの模式的な縦断面図である。
【図9】本発明に係る第三実施形態における、コラムの前後周壁の温度差と送風ファンによる送風流量との関係を示す説明図である。
【図10】本発明に係る第四実施形態におけるコラムの模式的な縦断面図である。
【図11】本発明に係る第四実施形態における、雰囲気温度の変化率と送風ファンによる送風風量との関係を示す説明図である。
【図12】本発明に係る第五実施形態におけるコラムの模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る工作機械の各種実施形態について、図面を用いて説明する。
【0028】
「第一実施形態」
以下、本発明に係る工作機械の第一実施形態について、図1〜図5を用いて説明する。
【0029】
本実施形態の工作機械は、図1に示すように、工具が取り付けられる工具ヘッド1と、この工具ヘッド1が取り付けられているラム2と、ラム2が取り付けられているサドル3と、サドル3の横方向(Y方向)への移動をガイドするクロスレール(横梁部材)4と、クロスレール4を上下方向(Z方向)に移動可能にこのクロスレール4のY方向の両端側を支える一対のコラム10と、ワークが搭載され、このワークを前後方向(X方向)に移動させるベッド5と、を備えている。
【0030】
一対のコラム10は、それぞれ、クロスレール4を上下方向(Z方向)に移動可能に支える四角筒状のコラム本体11と、このコラム本体11が上に載る四角筒状のコラムベッド21と、を備えている。
【0031】
四角筒状のコラム本体11の4つの周壁のうち、前側((+)X側)の周壁14には、クロスレール4のZ方向への移動をガイドするガイドレール9が設けられていると共に、このガイドレール9を覆うカバー27が設けられている。このカバー27は、前周壁14の下側に固定されている固定カバー28と、ガイドレール9のZ方向の移動に伴って前周壁14に対して相対移動する移動カバー29とがある。コラムベッド21は、ジャッキ機能を備え、設置面F上に設けられた複数の脚31により支持されている。
【0032】
四角筒状のコラム本体11は、図2及び図3に示すように、上下方向の両端が矩形状に開口している。このコラム本体11は、前周壁(第一周壁)14と、この前周壁14に対向する後周壁(第二周壁)15と、一対の側周壁16と、各周壁14,15,16の下端の外周に形成されているフランジ17と、を有して構成されている。なお、図2は、コラム10の模式的な縦断面図で、図3は、図2におけるIII−III線断面図である。
【0033】
前周壁14の厚さは、この前周壁14にクロスレール4等を取り付けても、工作精度に影響を与えない程度の変形に収まる強度を確保できる厚さに設定されている。また、後周壁15の厚さは、強度的には前周壁14よりも薄くても構わないが、本実施形態では、前周壁14の厚さよりも厚く設定されている。これは、前周壁14にカバー27が設けられ、この前周壁14の雰囲気温度に対する温度追従性が低いことから、後周壁15の熱容量を大きくて、この後周壁15の雰囲気温度に対する温度追従性を前周壁14の温度追従性に合せるためである。
【0034】
四角筒状のコラムベッド21も、コラム本体11と同様、上下方向の両端が矩形状に開口している。上下の開口23,22は、いずれも、コラム本体11の下方開口12のサイズと実質的に同じである。このコラムベッド21の上端及び下端の外周には、フランジ25,24が形成されている。このコラムベッド21の上フランジ25とコラム本体11のフランジ17とは、ボルト17により連結されている。コラムベッド21の下フランジ24の下には、複数の脚31が相互間隔を開けて配置されている。コラム10は、この複数の脚31の長さを調整することで、その高さや傾き等が調整される。
【0035】
四角筒状のコラムベッド21内には、2つのファンユニット(送風手段)40が前後方向(X方向)に並んで取り付けられている。各ファンユニット40は、送風ファン41と、送風ファン41を回転させるファンモータ42と、ファンモータ42が取り付けられるファン枠43と、を有している。各ファンユニット40は、送風ファン41の駆動により、雰囲気空気を、コラムベッド21の下フランジ24と設置面Fとの間の隙間を経て、下方開口22から吸い込み、この雰囲気空気を上方開口23へ送れる向きに設けられている。
【0036】
本実施形態の工作機械は、前述したように、コラム本体11の後周壁15の雰囲気温度に対する温度追従性を前周壁14の温度追従性に合せるために、後周壁15の厚さを前周壁14よりも厚くしている。しかしながら、コラム本体11の前周壁14に設けられているカバー27等による保温効果が大きく、図4に示すように、雰囲気温度の変化に対して、前周壁14の温度追従性は、後周壁15の温度追従性に比べて低い。すなわち、雰囲気温度が上がり始めると、後周壁15の温度が上がり始め、その後、前周壁14の温度が上がり始める。逆に、雰囲気温度が下がり始めると、後周壁15の温度が下がり始め、その後、前周壁14の温度が下がり始める。
【0037】
このように、雰囲気温度に対する前周壁14の温度追従性と後周壁15の温度追従性とが異なると、雰囲気温度の変化により、前周壁14と後周壁15とに温度差が生じ、前周壁14と後周壁15の温度の異なる部分相互間での熱膨張量の差により、コラム10が傾いてしまう。
【0038】
そこで、本実施形態では、コラムベッド21内にファンユニット40を設けて、雰囲気空気をコラム10の下方開口22、つまりコラムベッド21の下方開口22から取り入れ、この雰囲気空気をコラム10の上方開口13から排気して、コラム10内に雰囲気空気の強制的な流れを作り、コラム本体11の各周壁14,15,16と雰囲気空気との間の熱伝達率を上げている。
【0039】
具体的には、図5に示すように、コラム10内で雰囲気空気が自然対流(0〜1m/s)しているときの熱伝達率(3〜5W/(mK))に比べて、ファンユニット40によりコラム10内の雰囲気空気の流速を例えば7m/sにすると、熱伝達率は約4倍の20W/(mK)になる。
【0040】
このように、本実施形態では、コラム本体11の各部分における雰囲気空気との間の熱伝達率を一律に上昇させ、コラム本体11の各部分における雰囲気温度に対する温度追従性をほぼ同じすることができるため、コラム本体11の温度分布の均一化が図られ、各部分相互の熱膨張差によるコラム10の傾きを防ぐことができる。
【0041】
また、本実施形態では、多数の温度計と共に、温度計と同数の温度調節手段が不要であれため、イニシャルコストを抑えることができると共に、コラム本体11の温度を雰囲気空気の温度に合せているため、各温度調節手段のための熱源を確保する必要がなく、ランニングコストも抑えることができる。
【0042】
「第二実施形態」
次に、本発明に係る工作機械の第二実施形態について、図6及び図7を用いて説明する。
【0043】
本実施形態の工作機械は、第一実施形態のコラム本体11の内周面に複数の伝熱フィン19を設けたもので、その他の構成は第一実施形態と同じである。
【0044】
複数の伝熱フィン19は、いずれも、矩形板状を成し、面積が最も広い主面がY方向に対して垂直になるよう、コラム本体11の前周壁14及び後周壁15の内面に、複数の列を成すように設けられている。1列を構成する伝熱フィン19は、互いに所定の間隔を開けて上下方向に直線状に並んでいる。また、複数の伝熱フィン19の列は、横方向に並んでいる。ある列を構成する複数の伝熱フィン19と、この列に隣接する列を構成する複数の伝熱フィン19との間は、上下方向に直線状に伸びる雰囲気空気の流路を形成している。
【0045】
以上のように、本実施形態では、コラム本体11の前周壁14及び後周壁15の内面に複数の伝熱フィン19を設けることにより、コラム本体11の前周壁14の内面及び後周壁15の内面の伝熱面積を増加させることができる。
【0046】
また、本実施形態では、複数の伝熱フィン19により上下方向に直線状に伸びる流路を形成しているため、下方開口22から上方開口13に向かって流れる雰囲気空気の抵抗を最小限に抑えることができ、雰囲気空気の流速低下による熱伝達率の低下を抑えることができる。さらに、本実施形態では、上下方向で隣接する伝熱フィン19の相互間に間隔を開けているため、この間隔の存在よる空気の乱れにより、熱伝達率を向上させることができる。
【0047】
よって、本実施形態では、コラム本体11の前周壁14及び後周壁15の雰囲気空気との間の熱交換率が向上し、第一実施形態よりも、雰囲気空気の温度変化による前周壁14と後周壁15との間の温度差を抑えることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、前周壁14及び後周壁15の内面にのみ伝熱フィン19を設けているが、一対の側周壁16にも伝熱フィン19を設けてもよい。この場合、伝熱フィン19は、その主面がX方向に対して垂直になるよう、側周面に設けることが好ましい。すなわち、コラム本体11の内周面に伝熱フィン19を設ける場合、前後周壁14,15に設けるときでも、側周壁16に設けるときでも、雰囲気空気の流速低下を抑えるために、伝熱フィン19の主面が上下方向に平行になっていることが好ましい。
【0049】
「第三実施形態」
次に、本発明に係る工作機械の第三実施形態について、図8及び図9を用いて説明する。
【0050】
本実施形態の工作機械は、図8に示すように、第一実施形態のコラム本体11の前周壁14及び後周壁15に温度計46,47を設けると共に、両温度計46,47で測定された各温度の温度差に応じて、ファンユニット40を駆動制御する制御装置45を設けたものである。
【0051】
温度計46,47は、一対のコラム10の各コラム本体11の前周壁14及び後周壁15に設けられている。これら温度計46,47は、コラム本体11で温度差が最も大きくなる、前周壁14の外面でカバー27により覆われている部分と、後周壁15の外面とに設けられている。
【0052】
制御装置45は、前周壁14に設けられた前温度計46で測定された前周壁温度と、後周壁15に設けられた後温度計47で測定された後周壁温度との差に応じて、ファンユニット40のファンモータ42を駆動制御する。
【0053】
具体的に、制御装置45は、図9に示すように、前周壁温度と後周壁温度との温度差が予め定められた範囲を超えると、その温度差の増加に伴って送風ファン41による送風流量が多くなるよう、ファンモータ42を駆動制御し、前周壁温度と後周壁温度との温度差が予め定められた範囲内になると、ファンモータ42を停止させる。
【0054】
以上、本実施形態では、前周壁14及び後周壁15に温度計46,47を設けると共に、制御装置45を設けたので、第一実施形態よりもイニシャルコストが上昇するものの、常時、送風ファン41を駆動させる必要がないため、ランニングコストを抑えることができる。
【0055】
なお、本実施形態は、以上のように、第一実施形態よりもイニシャルコストが上昇するが、多数の温度計と共に、温度計と同数の温度調節手段が不要であるため、従来技術よりもイニシャルコストを抑えることができる。
【0056】
ところで、本実施形態では、一対のコラム10のそれぞれの前周壁14及び後周壁15に温度計46,47を設けているが、一対のコラム10のうち、一方のコラム10の回りの雰囲気温度の変化と他方のコラム10回りの雰囲気温度の変化とに大差がない場合には、一方のコラム10の前周壁14及び後周壁15にのみ温度計46,47を設け、両温度計46,47で測定された温度の差に基づいて、各コラム10に設けられたファンユニット40を駆動制御するようにしてもよい。
【0057】
「第四実施形態」
次に、本発明に係る工作機械の第四実施形態について、図10及び図11を用いて説明する。
【0058】
本実施形態の工作機械は、図10に示すように、第一実施形態の工作機械に、この工作機械の雰囲気温度を測定する雰囲気温度計48を設けると共に、この雰囲気温度計48で測定された雰囲気温度に応じてファンユニット40を駆動制御する制御装置45aを設けたものである。
【0059】
制御装置45aは、雰囲気温度計48で順次測定された雰囲気温度を一次的に記憶しておき、記憶した各雰囲気温度から、所定時間前から現時点までの間の雰囲気温度の変化率を求める。そして、制御装置45aは、雰囲気温度の変化率が予め定められた範囲を超えると、その変化率の絶対値の増加に伴って送風ファン41による送風流量が多くなるよう、ファンモータ42を駆動制御し、雰囲気温度の変化率が予め定められた範囲内になると、ファンモータ42を停止させる。
【0060】
本実施形態でも、第三実施形態と同様、常時、送風ファン41を駆動させる必要がないため、第一実施形態よりもランニングコストを抑えることができる。また、本実施形態では、コラム10の前周壁14と後周壁15との温度差が実際に大きくなる前に、雰囲気空気の温度変化による前周壁14と後周壁15との間の温度差を抑えることができる。
「第五実施形態」
次に、本発明に係る工作機械の第五実施形態について、図12を用いて説明する。
【0061】
本実施形態の工作機械は、第一実施形態のコラム本体11の前周壁14及び後周壁15に温度計46,47を設けると共に、工作機械回りの雰囲気温度を測定する雰囲気温度計48を設け、前温度計46及び後温度計47で測定された各温度の温度差、及び雰囲気温度計48で測定された雰囲気温度に応じて、ファンユニット40を駆動制御する制御装置45bを設けたものである。すなわち、本実施形態は、第三実施形態の構成に、第四実施形態の雰囲気温度計48を追加したものである。
【0062】
本実施形態の制御装置45bも、第四実施形態の制御装置45aと同様、所定時間前から現時点までの間の雰囲気温度の変化率を求める。そして、この制御装置45bは、雰囲気温度の変化率が予め定められた範囲を超えると、その変化率の絶対値の増加に伴って送風ファン41による送風流量が多くなるよう、ファンモータ42を駆動制御すると共に、前周壁温度と後周壁温度との温度差が予め定められた範囲を超えると、その温度差の増加に伴って送風ファン41による送風流量が多くなるよう、ファンモータ42を駆動制御する。また、この制御装置45aは、雰囲気温度の変化率が予め定められた範囲内で、且つ前周壁温度と後周壁温度との温度差が予め定められた範囲内になると、モータ42ファンを停止させる。
【0063】
この制御装置45bは、雰囲気温度の変化率が予め定められた範囲を超え、且つ前周壁温度と後周壁温度との温度差が予め定められた範囲を超えている場合には、雰囲気温度の変化率の絶対値、又は、前周壁温度と後周壁温度との温度差に応じて、送風ファン41による送風流量が多くなるよう、ファンモータ42を駆動制御する。
【0064】
なお、この場合、雰囲気温度の変化率の絶対値と、前周壁温度と後周壁温度との温度差とのうち、一方の値に応じ定まる送風流量に、他方の値で定まる重みを掛けて、最終的な送風流量を定めてもよい。
【0065】
以上、本実施形態も、第三及び第四実施形態と同様、常時、送風ファン41を駆動させる必要がないため、第一実施形態よりもランニングコストを抑えることができる。
【0066】
また、本実施形態では、前周壁温度と後周壁温度との温度差が実際に大きくなった場合と、この温度差が大きくなると想定される場合の両方で、送風ファン41を駆動させるため、第三実施形態及び第四実施形態よりも、雰囲気空気の温度変化による前周壁14と後周壁15との間の温度差を小さく抑えることができる。
【0067】
なお、本実施形態において、コラム本体11に設ける各温度計46,47のうち、いずれかの温度計46,47で測定された温度を雰囲気温度計48で測定された雰囲気温度とし、この温度計46,47を雰囲気温度計48としても利用することで、別途設ける雰囲気温度計48を省略してもよい。この場合、雰囲気温度に対する温度追従性の高い後周壁15に設けた温度計47で測定された温度を雰囲気温度計48で測定された雰囲気温度とすることが好ましい。
【0068】
また、本実施形態、第三及び第四実施形態において、コラム本体11の内周面に、第二実施形態と同様、伝熱フィン19を設けてもよい。
【0069】
「各実施形態の変形例」
以上の各実施形態の工作装置は、いずれもコラム10が四角筒状であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、円筒状であってもよい。
【0070】
また、以上の各実施形態では、いずれも、送風手段であるファンユニット40をコラム10の下方に設けて、コラム10の下方開口22から雰囲気空気を取り入れて、上方開口13から排気しているが、以上の実施形態と同様に送風手段をコラム10の下方に設けつつも、コラム10の上方開口13から雰囲気空気を取り入れて、下方開口22から排気するようにしてもよい。また、送風手段をコラム10の上方に設けて、コラム10の上方開口13から雰囲気空気を取り入れて、下方開口22から排気するようにしてもよいし、コラム10の下方開口22から雰囲気空気を取り入れて、上方開口13から排気するようにしてもよい。
【0071】
但し、コラム10内で温まった空気を下方に送るよりも上方に送る方がコラム10内の送風効率が高いこと、さらに、コラム10内から空気を吸い出すよりも、コラム10内へ空気を送り込む方がファンモータ42にかかる負荷が小さいことから、以上の各実施形態のように、送風手段をコラム10の下方に設けて、コラム10の下方開口22から雰囲気空気を取り入れて、上方開口13から排気することが好ましい。
【0072】
また、以上の各実施形態では、送風手段であるファンユニット40を2個前後に並べて設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ファンユニット40は1個であってもよいし、3個以上であってもよく、また、前後に並べなくてもよい。また、複数のファンユニット40を設ける場合、複数のファンユニット40相互を接触させずに、離して配置してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1:工具ヘッド、2:ラム、3:サドル、4:クロスレール(横梁部材)、5:ベッド、10:コラム、11:コラム本体、13:(コラムの)上方開口、14:前周壁、15:後周壁、16:側周壁、19:伝熱フィン、21:コラムベッド、22:(コラムの)下方開口、31:脚、40:ファンユニット(送風手段)、41:送風ファン、42:ファンモータ、45,45a,45b:制御装置、46:前温度計、47:後温度計、48:雰囲気温度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具が取り付けられる工具ヘッドと、
上下のそれぞれの端が開口し、前記工具ヘッドを支持する筒状のコラムと、
前記コラムの下方開口の縁と設置面との間に配置され、該コラムを持ち上げて支持する複数の脚と、
前記コラムの下方開口と上方開口とのうちの一方の開口から雰囲気空気を該コラム内に取り入れ、他方の開口から該雰囲気空気を排気させる送風手段と、
を備えていることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械において、
前記送風手段は、前記コラム内の前記下方開口側に設けられ、該コラムの該下方開口から前記雰囲気空気を該コラム内に取り入れ、前記上方開口から該雰囲気空気を排気する、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の工作機械において、
前記コラムとして、互いに間隔を開けて配置されている一対のコラムを備えていると共に、該一対のコラムの相互間に渡されている横梁部材を備え、
前記工具ヘッドは、前記横梁部材を介して前記コラムに支持され、
前記一対のコラムは、それぞれ、前記横梁部材が設けられる側の第一周壁と、該第一周壁と対向する第二周壁とを有し、
前記一対のコラムのそれぞれには、前記送風手段が設けられている、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項4】
請求項3に記載の工作機械において、
前記第一周壁には、該第一周壁の外面を覆うカバーが設けられている、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項5】
請求項4に記載の工作機械において、
前記第二周壁の厚さは該第一周壁の厚さより厚い、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の工作機械において、
前記コラムの内面には、互いに間に上下方向に伸びる前記雰囲気空気の流路が確保されている複数のフィンが形成されている、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項7】
請求項3から5のいずれか一項に記載の工作機械において、
前記一対のコラムのそれぞれの前記第一周壁の内面及び前記第二周壁の内面には、互いに間に上下方向に伸びる前記雰囲気空気の流路が確保されている複数のフィンが形成されている、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の工作機械において、
前記コラムを形成する周壁の一部分の温度を測定する第一温度計と、
前記コラムを形成する周壁のうち、前記一部分との間で温度差が生じる他の部分の温度を測定する第二温度計と、
前記第一温度計で測定された温度と前記第二温度計で測定された温度との温度差が予め定められた範囲を超えたときに、前記送風手段を稼動させ、該予め定められた範囲内のときに、前記送風手段を停止させる制御手段と、
を備えていることを特徴とする工作機械。
【請求項9】
請求項3、4、5、7のいずれか一項に記載の工作機械において、
前記一対のコラムのうちの一方のコラムの前記第一周壁の温度を測定する第一温度計と、
前記一方のコラムの前記第二周壁の温度を測定する第二温度計と、
前記第一温度計で測定された温度と前記第二温度計で測定された温度との温度差が予め定められた範囲を超えたときに、前記一対のコラムのそれぞれに設けられている前記送風手段を稼動させ、該予め定められた範囲内のときに、該一対のコラムのそれぞれに設けられている前記送風手段を停止させる制御手段と、
を備えていることを特徴とする工作機械。
【請求項10】
請求項3、4、5、7のいずれか一項に記載の工作機械において、
前記一対のコラムのそれぞれの前記第一周壁の温度を測定する第一温度計と、
前記一対のコラムのそれぞれの前記第二周壁の温度を測定する第二温度計と、
前記一対のコラムのうちの一方のコラムに関して、前記第一温度計で測定された温度と前記第二温度計で測定された温度との温度差が予め定められた範囲を超えたときに、該一方のコラムに設けられている前記送風手段を稼動させ、該予め定められた範囲内のときに、該一方のコラムに設けられている前記送風手段を停止させると共に、前記一対のコラムのうちの他方のコラムに関して、前記第一温度計で測定された温度と前記第二温度計で測定された温度との温度差が予め定められた範囲を超えたときに、該他方のコラムに設けられている前記送風手段を稼動させ、該予め定められた範囲内のときに、該他方のコラムに設けられている前記送風手段を停止させる制御手段と、
を備えていることを特徴とする工作機械。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載の工作機械において、
前記コラム外の雰囲気温度を測定する雰囲気温度計と、
前記雰囲気温度計で測定された温度の単位時間当たりの変化量である温度変化率を求め、該温度変化率が予め定められた範囲を超えるときに、前記送風手段を稼動させ、該予め定められた範囲内のときに、前記送風手段を停止させる制御手段と、
を備えていることを特徴とする工作機械。
【請求項12】
請求項8から10のいずれか一項に記載の工作機械において、
前記コラム外の雰囲気温度を測定する雰囲気温度計を備え、
前記制御手段は、前記雰囲気温度計で測定された温度の単位時間当たりの変化量である温度変化率を求め、該温度変化率が予め定められた変化率範囲を超えるときと、前記第一温度計で測定された温度と前記第二温度計で測定された温度との温度差が予め定められた温度差範囲を超えるときに、前記送風手段を稼動させ、該温度変化率が前記予め定められた変化率範囲内で、且つ、前記第一温度計で測定された温度と前記第二温度計で測定された温度との温度差が前記予め定められた温度差範囲内のときに、前記送風手段を停止させる、
ことを特徴とする工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−35396(P2012−35396A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180276(P2010−180276)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】