説明

工作機械

【課題】ワークの加工効率及び加工精度を向上させることができる工作機械を提供する。
【解決手段】加工装置30によるワーク23の被加工部25A,25Bの加工に先立って、計測装置27により被加工部25A,25Bを計測する。その計測結果を基準データとして設定するとともに、基準データをもとにして目標加工量を設定する。目標加工量に基づいて被加工部25A,25Bに対する第1加工量を設定する。設定された第1加工量が得られるように、加工装置30の動作を制御して被加工部25A,25Bに第1加工を施す。被加工部25A,25Bの加工済み部分を計測する。その計測結果に基づいて、目標加工量が得られるように加工済み部分に対する第2加工量を設定する。その第2加工量が得られるように、加工装置30の動作を制御して被加工部25A,25Bに第2加工を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワークに対して研削等の加工を施すための工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の工作機械としては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、ワークに対する研削等の加工に先立って、テーブル上にダミーワークが設置され、そのダミーワーク上の被加工部としての上面の位置が計測器により計測される。そして、この計測結果に基づいて、ダミーワークの上面に対する加工量が設定され、その設定された加工量が得られるように、ダミーワークの上面が加工される。その後、ダミーワークの加工済み部分が計測器により計測されて、実際の加工量が算出され、設定された加工量に対する実際の加工量の変化率が求められる。そして、この変化率に基づいてワークの加工量が決定され、その加工量が得られるように、テーブル上に設置されたワークに対して加工が施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−53664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来の工作機械においては、ワークの加工に先立って、そのワークとは別のダミーワークをテーブル上に設置し、そのダミーワークに対して、上面位置の計測、加工量の設定、上面の加工、加工済み部分の計測等の作業を順に行う必要がある。このため、ワークの加工に多大な手間がかかるとともに、ダミーワークと実際のワークとの間に加工量の相違が生じたりすること等により、加工精度の低下を招くという問題があった。
【0005】
また、特許文献1に記載の工作機械は、コラムに回転砥石が支持された比較的小型の研削盤である。このような研削盤においては、機械温度の変化にともなう膨張・収縮に基づく変形量が小さいため、加工精度に対する影響は少ない。しかしながら、工作機械が門型の研削盤のような大型の装置である場合には、機械温度の変化にともなう膨張・収縮に基づく変形量が大きくなるため、加工精度に対して大きな影響が出る。そして、このように加工精度低下のおそれが高いために、大型の工作機械においては、自動化には限界がある。
【0006】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、ワークの加工効率及び加工精度を向上させることができる工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、ワークの被加工部に加工を施すための加工手段と、その加工手段による加工に先立って、ワークの被加工部を計測するための第1計測手段と、その第1計測手段による計測結果を基準データとして設定するとともに、その基準データをもとにして目標加工量を設定する目標設定手段と、前記目標加工量に基づいて被加工部に対する第1加工量を設定するための第1設定手段と、設定された第1加工量が得られるように、加工手段の動作を制御する制御手段と、被加工部の加工済み部分を計測するための第2計測手段と、その第2計測手段の計測結果に基づいて、前記目標加工量が得られるように、前記加工済み部分に対する第2加工量を設定するための第2設定手段と、前記制御手段は第2加工量が得られるように加工手段の動作を制御することとを備えたことを特徴としている。
【0008】
従って、この発明の工作機械においては、従来構成とは異なり、ワークの加工に先立って、ダミーワークに対する被加工部の計測や加工を行う必要がなく、ワークに対して被加工部の計測や加工を直接に施しながら、加工動作を進行させることができる。よって、従来構成に比較して、ワークの加工効率を向上させることができる。また、ダミーワークと実際のワークとに対する加工量の相違等に起因して、ワークの加工精度が低下するおそれを防止することができて、高精度の加工を行うことができる。
【0009】
前記の構成において、前記第2計測手段は、加工手段の工具が加工済み部分に接触したことを検出する検出手段と、その検出結果に基づいて加工済み部分の位置を判別する判別手段とを備えるとよい。
【0010】
前記の構成において、前記加工手段は、モータによって回転される回転軸と、その回転軸に着脱可能に支持される工具と、回転軸に支持される工具を交換するための工具交換装置と、回転軸に対する支持状態の工具の位置を測定するための工具位置測定手段とを備えるとよい。
【0011】
前記の構成において、前記制御手段は、前記第1計測手段及び第2計測手段のうちの少なくとも一方の計測結果に基づいて、工具のエアカット動作の範囲を設定するように構成するとよい。
【0012】
前記の構成において、前記制御手段は、前記被加工部の計測結果を含むワークの条件に従ってクラウニング加工が実行されるように、前記加工手段の動作を制御するように構成するとよい。
【0013】
前記の構成において、前記加工手段は、回転砥石を含み、加工開始に先立って回転砥石の回転バランスを修正するためのバランス修正手段を有するように構成するとよい。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、この発明によれば、ワークの加工効率及び加工精度を向上させることができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態の工作機械を示す斜視図。
【図2】図1の工作機械のワークを拡大して示す斜視図。
【図3】(a)は図2のワークにおける被加工部の高さの計測状態を示す部分側面図。(b)は同被加工部の幅の計測状態を示す部分側面図。
【図4】被加工物における複数の加工面の加工状態を示す部分側面図。
【図5】図1の工作機械における回転砥石の位置計測状態を示す要部断面図。
【図6】回転砥石のためのバランス修正装置を示す要部断面図。
【図7】図6の7−7線における断面図。
【図8】工作機械の電気的回路構成を示すブロック図。
【図9】工作機械の動作を示すフローチャート。
【図10】図9に続く動作を示すフローチャート。
【図11】ワークに対するクラウニング加工の実行状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、この発明を具体化した工作機械の一実施形態を、図面に従って説明する。この実施形態は、門型の大型研削盤において具体化されたものである。
図1に示すように、ベッド21の上面には、テーブル22が水平面内の一方向(X軸方向)へ移動可能に支持されている。テーブル22上には、ワーク23がパレット24に支持した状態で着脱可能に装着されている。図1及び図2に示すように、このワーク23は例えば工作機械用のフレームからなり、その傾斜した前面には上下一対のガイドレール等の被加工部25A,25Bが長さ方向へ平行に延長配置されている。そして、図3及び図4に示すように、各被加工部25A,25Bの前部、後部、外側部及び内側部が加工面25a,25b,25c,25dとなっている。
【0017】
図1に示すように、前記ベッド21の両側間には、門型の横幅3〜4m程度のクロスレール26がベッド21の上面を跨ぐように配設されている。クロスレール26の一側前面には、ワーク23の被加工部25A,25Bを計測するための第1計測手段としての計測装置27が水平面内のX軸方向に対して直交する方向(Y軸方向)及び垂直方向(Z軸方向)へ移動可能に支持されている。図1及び図3に示すように、計測装置27は、計測部28と、その計測部28の下部に突設され、ワーク23の被加工部25A,25Bの各加工面25a〜25dに接触可能な複数の接触部29aを有する計測子29とを備えている。
【0018】
そして、図3(a)に示すように、計測装置27のY軸方向及びZ軸方向への移動により、計測子29の接触部29aがワーク23上の各被加工部25A,25Bの前部加工面25aに接触された後に後部加工面25bに接触されることにより、各被加工部25A,25Bの高さL1が計測される。また、図3(b)に示すように、計測装置27のY軸方向及びZ軸方向への移動により、計測子29の接触部29aがワーク23上の各被加工部25A,25Bの外側部加工面25cに接触された後に内側部加工面25dに接触されることにより、各被加工部25A,25Bの幅L2が計測される。この場合、ワーク23がテーブル22とともにX軸方向へ移動されて、図2に示すように、前記計測装置27による計測が、各被加工部25A,25Bの長さ方向の一端部、中間部及び他端部の各3つの計測位置P1,P2,P3において行われる。
【0019】
図1に示すように、前記クロスレール26の他側前部には、ワーク23の被加工部25A,25Bの各加工面25a〜25dに研削等の加工を施すための加工手段としての加工装置30が配設されている。すなわち、クロスレール26の他側前面には、加工装置30の加工部31がY軸方向及びZ軸方向へ移動可能に支持されている。加工部31の前面には、加工ヘッド32がX軸方向に延びる旋回軸線33を中心に旋回可能に支持されている。加工ヘッド32には、旋回軸線33と直交する方向に延びる回転軸34、及びその回転軸34を回転させるためのモータ35が設けられている。回転軸34の先端には、回転砥石よりなる工具36が着脱可能に支持されるようになっている。
【0020】
すなわち、図5に示すように、前記回転軸34の先端には基部フランジ37が固定されている。基部フランジ37の外面には円錐台形状の支持ボス38が突設され、その支持ボス38の先端にはネジ孔39が形成されている。そして、工具36がその中心に設けられた嵌挿孔36aにおいて支持ボス38に嵌挿されるとともに、工具36の外面に取付フランジ40が当接された状態で、取付フランジ40から支持ボス38のネジ孔39にボルト41が螺合されることにより、工具36が回転軸34に対して着脱可能に取り付けられている。
【0021】
図1に示すように、前記加工装置30には、回転軸34に支持される工具36を交換するための工具交換装置42が装備されている。この工具交換装置42は、複数種の回転砥石よりなる工具36を収容支持するためのストッカ43と、そのストッカ43上の1つの工具36と回転軸34上の工具36とを交換するための交換器44とを備えている。そして、加工ヘッド32がクロスレール26の側端部の工具交換位置に移動されるとともに、回転軸34がZ軸方向に延びる位置に旋回配置された状態で、ストッカ43の移動により、ストッカ43上の1つの工具36が工具交換位置の回転軸34に対応配置される。この状態で、交換器44の動作により、回転軸34上の工具36がストッカ43上の工具36と脱着交換される。
【0022】
この実施形態においては、図4に示すように、ワーク23の被加工部25A,25Bの各加工面25a〜25dを加工するために、少なくとも3種類の回転砥石よりなる工具36A,36B,36Cが用意されている。そして、各被加工部25A,25Bの前部加工面25aを加工する際には、外周に研削面を有する円板状の工具36Aが使用される。また、各被加工部25A,25Bの後部加工面25bを加工する際には、端面外周縁に円環突状の研削面を有する円板状の工具36Bが使用される。さらに、各被加工部25A,25Bの外側部加工面25c及び内側部加工面25dを加工する際には、外周に研削面を有する円錐台形状の工具36Cが使用される。
【0023】
図1及び図5に示すように、前記工具交換装置42の上方には、回転軸34に支持された状態にある工具36の位置を測定するための工具位置測定手段としての非接触型の工具センサ45が設けられている。この工具センサ45は、支持部材46に支持された状態で、その支持部材46の移動により、工具36と対応する検出位置と、その検出位置から離れた退避位置とに切換配置されるようになっている。そして、図5に示すように、前記工具交換装置42による工具36の交換後に、回転軸34がY軸方向に延びる位置に旋回配置されるとともに、工具センサ45が工具36の外面と対応する検出位置に移動された状態で、工具センサ45により、回転軸34上の工具36の回転軸34の軸線方向における位置が測定される。
【0024】
図6に示すように、前記加工ヘッド32の下部には、前記加工装置30の工具36によるワーク23上の被加工部25A,25Bの加工面25a〜25dの加工後に、その加工済み部分を計測するための第2計測手段を構成する検出手段としてのAE(アコースティック・エミッション)センサ47が配置されている。そして、加工面25a〜25dの加工済み部分の計測時には、工具36が加工済み部分に接近移動されて接触され、その接触時に発生するアコースティック・エミッションがAEセンサ47により検出される。さらに、そのAEセンサ47の検出結果、つまり加工済み部分までの工具36の移動量に基づいて、加工済み部分の位置が判別される。
【0025】
図6及び図7に示すように、前記加工ヘッド32の外側部には、回転砥石よりなる工具36の回転バランスを修正するためのバランス修正手段としてのバランス修正装置48が設けられている。このバランス修正装置48は、加工ヘッド32の外周に間隔をおいて配設された複数の加速度センサ49と、工具36上の基部フランジ37の上面に回転軸34の軸線を中心に同一円周上で間隔をおいて形成された複数の凹部50と、その凹部50に対応して加工ヘッド32の下部に配設された水滴供給器51とから構成されている。そして、工具36による被加工部25A,25Bの加工面25a〜25dの加工開始に先立って、加速度センサ49により工具36の回転バランスが検出される。さらに、その検出結果に応じて、水滴供給器51から所要の凹部50に水滴が発射供給されて、工具36の回転バランスが修正される。
【0026】
図1に示すように、前記工具交換装置42の側部には、ドレッシング装置52が配設されている。そして、前記バランス修正装置48による工具36の回転バランスの修正後に、工具36の使用状況等によりドレッシングの要否が判別され、その判別結果に応じて、このドレッシング装置52により工具36のドレッシングが行われる。
【0027】
次に、前記のように構成された工作機械の電気的回路構成について説明する。
図8に示すように、制御装置55は制御手段を構成し、記憶部56に記憶されたプログラムに従って工作機械全体の動作を制御する。記憶部56は、前記プログラムのほかに、プログラムの実行に伴って発生する各種のデータを一時的に記憶する。制御装置55は、前記計測装置27、AEセンサ47及び工具センサ45から計測データを入力するとともに、前記加工装置30、工具交換装置42及びバランス修正装置48に対して動作の制御信号を出力する。
【0028】
そして、前記制御装置55は目標設定手段を構成し、計測装置27からワーク23の加工前における被加工部25A,25Bの加工面25a〜25dの計測データを入力したとき、その計測データを基準データとして設定するとともに、その基準データをもとにして目標加工量を設定する。また、制御装置55は第1設定手段を構成し、前記目標加工量に基づいて被加工部25A,25Bの加工面25a〜25dに対する第1加工量を設定する。この場合、第1加工量は、目標加工量の例えば80パーセント程度となるように設定する。そして、制御装置55は、前記第1加工量が得られるように、加工装置30の動作を制御して、加工面25a〜25dに対する第1加工を実行させる。
【0029】
さらに、前記制御装置55は第2計測手段の判別手段を構成し、前記被加工部25A,25Bの加工面25a〜25dの第1加工後に、工具36を加工済み部分に接触させて、その接触状態を検出手段としてのAEセンサ47により検出させるとともに、その検出結果に基づいて加工面25a〜25dの加工済み部分の位置を判別する。また、制御装置55は第2設定手段を構成し、前記加工面25a〜25dの加工済み部分の位置の判別に基づいて、前記目標加工量が得られるように、加工済み部分に対する残りの第2加工量を設定する。そして、制御装置55は、前記第2加工量が得られるように、加工装置30の動作を制御して、加工面25a〜25dに対する残りの第2加工を実行させる。
【0030】
しかも、前記制御装置55は、被加工部25A,25Bの加工面25a〜25dの第1加工前のほかに、第1加工後においても計測装置27に加工済み部分の位置を計測させる。そして、計測装置27による加工前の加工面25a〜25dの計測結果、及び第1加工後の加工済み部分の計測結果に基づいて、工具36のエアカット動作の範囲、つまり工具36を高速送りにて加工面25a〜25dまたは加工済み部分の直前位置まで移動させる範囲を設定する。そして、その設定結果に基づいて、加工装置30の動作を制御して、前記第1加工または第2加工を実行させる。
【0031】
さらに、前記制御装置55は、計測装置27からの加工前の加工面25a〜25dの計測データに基づいて基準データを設定する際に、その計測データを含むワーク23の条件に従って、加工装置30にクラウニング加工を実行させるように、加工プログラムを設定する。例えば、図11に示すように、前記第1加工及び第2加工において、長大なワーク23上の被加工部25A,25Bの加工面25a〜25dを加工する場合には、加工面25a〜25dの中間部ほど実際の加工量が増加するのを補正するように、加工面25a〜25dの中間部ほど加工量が減少するクラウニング加工を実行させる。
【0032】
また、この実施形態の工作機械においては、クーラント等の加工液や潤滑油が一定温度を保持するように温度管理されて、装置の加工部等の温度変化が抑制されるようになっている。
【0033】
次に、前記のように構成された工作機械の作用を、図9及び図10に示すフローチャートに従って説明する。このフローチャートは、記憶部56に記憶されたプログラムに基づいて、制御装置55の制御のもとに進行する。
【0034】
図1に示すように、テーブル22上にワーク23が装着された状態で、被加工部25A,25Bの加工面25a〜25dの1つが加工される場合には、図9及び図10に示す各ステップ(以下、単にSという)の動作が順に実行される。図9のS1においては、加工に先立って、図3(a)及び図3(b)に示すように、計測装置27により被加工部25A,25Bの計測が行われる。次のS2においては、計測装置27の計測結果に基づいて、被加工部25A,25Bの位置を示す基準データの設定、計測された被加工部25A,25Bの位置(被加工部25A,25Bの表面)を基準にした目標荒加工量の設定、目標仕上げ加工量の設定、及び第1荒加工における工具36のエアカット(被加工部25A,25Bの直前までの工具の高速送りの領域)範囲の設定が行われる。S3においては、工具交換装置42の工具交換動作により、回転軸34に対して所要の回転砥石である工具36が取り付けられる。S4においては、図5に示すように、工具センサ45により、回転軸34上の工具36の位置(回転軸34の軸線方向における位置)が計測される。
【0035】
続いて、図9のS5においては、前記S2で設定された目標荒加工量、及びS4で計測された工具36の位置データに基づいて、目標荒加工量の80パーセント程度の第1荒加工量が設定される。S6においては、設定された第1荒加工量が得られるように、加工装置30の動作が制御されて、被加工部25A,25Bの加工面25a〜25dに第1荒加工が施される。
【0036】
S7においては、計測装置27により加工面25a〜25dの加工済み部分が計測されて、加工面25a〜25dの位置が新たな基準面として設定される。S8においては、計測装置27の計測結果,すなわち新たな基準データに基づいて、前記目標荒加工量が得られるように、残りの第2荒加工量が演算されて設定されるとともに、第2荒加工における工具36のエアカット範囲が設定される。S9においては、設定された第2荒加工量が得られるように、加工装置30の動作が制御されて、被加工部25A,25Bの加工面25a〜25dに第2荒加工が施される。
【0037】
次に、図10のS10においては、工具交換装置42の工具交換動作により、回転軸34に対して仕上げ用の回転砥石よりなる工具36が取り付けられる。S11においては、工具センサ45により、回転軸34上の工具36の位置,すなわち回転軸34の軸方向に位置が計測される。S12においては、バランス修正装置48の加速度センサ49により、回転砥石よりなる工具36の回転バランスが検出されて、回転バランスの修正が必要であるか否かが判別される。バランス修正の必要がある場合には、次のS13において、バランス修正装置48により工具36の回転バランスが修正される。S14においては、工具36の使用状況等に基づいて、工具36のドレッシングが必要であるか否かが判別される。ドレッシングの必要がある場合には、次のS15において、ドレッシング装置52により工具36のドレッシングが行われる。
【0038】
次いで、図10のS16においては、前記S2で設定された目標仕上げ加工量、及びS11で計測された工具36の位置データに基づいて、目標仕上げ加工量の80パーセント程度の第1仕上げ加工量が設定されるとともに、第1仕上げ加工における工具36のエアカット範囲が設定される。S17においては、設定された第1仕上げ加工量が得られるように、加工装置30の動作が制御されて、被加工部25A,25Bの荒加工済みの加工面25a〜25dに第1仕上げ加工が施される。S18においては、計測装置27により加工面25a〜25dの第1仕上げ加工済み部分が計測されて、加工面25a〜25dの位置を示すさらに新たな基準データが設定される。S19においては、計測装置27の計測結果に基づいて、残る第2仕上げ加工における工具36のエアカット範囲が設定される。
【0039】
さらに、図10のS20においては、加工面25a〜25dの第1仕上げ加工済み部分に対する工具36の接触により、AEセンサ47からの出力に基づいて、加工済み部分の位置が実計測される。S21においては、加工済み部分の位置計測に基づいて、最新の基準データがさらに修正されて、その修正された基準データに基づいて前記目標仕上げ加工量が得られるように、残りの第2仕上げ加工量が演算されて設定される。S22においては、設定された第2仕上げ加工量が得られるように、加工装置30の動作が制御されて、被加工部25A,25Bの加工面25a〜25dに第2仕上げ加工が施される。
【0040】
続くS23においては、計測装置27により加工面25a〜25dの仕上げ加工済み部分が計測される。S24においては、計測装置27の計測結果に基づいて、被加工部25A,25Bの加工面25a〜25dが目標仕上げ加工量に適合する範囲内に加工されているか否か、つまり不良品になっているか否かが判別される。そして、不良品になっている場合には、次のS25において、アラーム等の報知が行われる。
【0041】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この工作機械においては、加工装置30によるワーク23の被加工部25A,25Bの加工に先立って、計測装置27により被加工部25A,25Bが計測され、その計測結果が基準データとして設定されるとともに、基準データをもとにして目標加工量が設定される。そして、この目標加工量に基づいて被加工部25A,25Bに対する第1加工量が設定され、その設定された第1加工量が得られるように、加工装置30の動作が制御されて被加工部25A,25Bに第1加工が施される。その後、被加工部25A,25Bの加工済み部分が計測され、その計測結果に基づいて、目標加工量が得られるように加工済み部分に対する第2加工量が設定される。そして、この第2加工量が得られるように、加工装置30の動作が制御されて被加工部25A,25Bに第2加工が施される。すなわち、この実施形態においては、ワーク23の被加工部25A,25Bの位置の基準にして加工が実行されるため、熱膨張等による装置の変形を無視することができる。従って、門型の研削盤のように大型の装置であって、変形量が大きくなる装置であっても、高精度加工が可能になるとともに、装置の変形を無視して高精度が可能になるため、高いレベルの自動化,たとえば全自動が可能となる。
【0042】
従って、従来構成とは異なり、ワークの加工に先立って、ダミーワークに対する被加工部の計測や加工を行う必要がなく、ワーク23に対して被加工部25A,25Bの計測や加工を直接に施しながら、加工動作を進行させることができる。よって、従来構成に比較して、ワーク23の加工効率を向上させることができる。また、ダミーワークと実際のワークとの間における被加工部の位置寸法の違い等に起因して、ワークの加工精度が低下するおそれを防止することができて、ワーク23に対して高精度の加工を施すことができる。
【0043】
(2) この工作機械においては、加工装置30の工具36が加工済み部分に接触したことをAEセンサ47により検出するとともに、その検出結果に基づいて工具36の移動量から加工済み部分の位置を判別することにより、被加工部25A,25Bの加工済み部分の計測が行われるようになっている。このため、第1加工が行われた加工済み部分の位置を工具36の接触にて的確に計測することができて、その計測結果に基づいて加工済み部分に対する第2加工量を正確に設定することができる。よって、ワーク23の加工精度を一層高めることができる。
【0044】
(3) この工作機械においては、前記加工装置30が、モータ35によって回転される回転軸34と、その回転軸34に着脱可能に支持される工具36と、回転軸34に支持される工具36を交換するための工具交換装置42と、回転軸34に対する支持状態の工具36の位置を測定するための工具センサ45とを備えている。このため、ワーク23上の被加工部25A,25Bの異なった加工面25a〜25dに対する加工を、種類の異なった工具36を交換しながら能率良く行うことができる。
【0045】
(4) この工作機械においては、前記計測装置27による加工前の被加工部25A,25Bの計測結果、及び第1加工後の加工済み部分の計測結果に基づいて、工具36のエアカット動作の範囲が設定されるようになっている。このため、設定されたエアカット動作の範囲内で工具36を迅速に高速送りすることができて、ワーク23の加工能率を一層向上させることができる。
【0046】
(5) この工作機械においては、前記加工装置30の動作制御により、被加工部25A,25Bの計測結果を含むワーク23の材質や変形量等の条件に従ってクラウニング加工が実行されるようになっている。このため、ワーク23が工作機械として組み立てられて、実際に使用される際におけるフレーム等の変形量を見込んだ加工を行なうことができる。従って、ワーク23を高精度な工作機械となるように加工できる。なお、クラウニング加工の有無及びクラウニング量は、それらのデータが加工前にあらかじめ設定される。
【0047】
(6) この工作機械においては、前記加工装置30が、工具36としての回転砥石を備えるとともに、加工開始に先立って回転砥石の回転バランスを修正するためのバランス修正装置48を備えている。このため、回転砥石の回転バランスの不均衡により、加工精度が低下するおそれを防止することができる。
【0048】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記実施形態においては、第1仕上げ加工済み部分の位置を工具36との接触により計測して、その計測結果に基づいて第2仕上げ加工量を設定するようになっているが、第1荒加工済み部分の位置を工具36との接触により計測して、その計測結果に基づいて第2荒加工量を設定するようにしてもよい。
【0049】
・ 前記実施形態においては、ワーク23の被加工部25A,25Bの加工面25a〜25dに対して、荒加工及び仕上げ加工の2回の加工を施すようになっているが、1回の加工を施すようにしてもよい。
【0050】
・ 前記実施形態では、ワーク23に対する工具36の接触を検知するために、AEセンサ47を用いた。このAEセンサ47の代わりに、工具36がワーク23に接触したときにおけるモータ35の負荷量の変化を検出する電流センサや、その他の検出手段を用いること。
【0051】
・ 図10に示すS15とS16との間において、被加工部25A,25Bの加工面25a〜25dの位置を計測し、その計測したデータに基づいて新たな基準データを作成し、その基準データをもとにしてS16の動作が行われるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
22…テーブル、23…ワーク、25A,25B…被加工部、25a〜25d…加工面、26…クロスレール、27…第1計測手段としての計測装置、30…加工手段としての加工装置、34…回転軸、35…モータ、36…工具、42…工具交換装置、45…工具位置測定手段としての工具センサ、47…第2計測手段の検出手段を構成するAEセンサ、48…バランス修正手段としてのバランス修正装置、55…制御手段、目標設定手段、第1設定手段、第2設定手段、第2計測手段の判別手段を構成する制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの被加工部に加工を施すための加工手段と、
その加工手段による加工に先立って、ワークの被加工部を計測するための第1計測手段と、
その第1計測手段による計測結果を基準データとして設定するとともに、その基準データをもとにして目標加工量を設定する目標設定手段と、
前記目標加工量に基づいて被加工部に対する第1加工量を設定するための第1設定手段と、
設定された第1加工量が得られるように、加工手段の動作を制御する制御手段と、
被加工部の加工済み部分を計測するための第2計測手段と、
その第2計測手段の計測結果に基づいて、前記目標加工量が得られるように、前記加工済み部分に対する第2加工量を設定するための第2設定手段と、
前記制御手段は第2加工量が得られるように加工手段の動作を制御することと
を備えた工作機械。
【請求項2】
前記第2計測手段は、加工手段の工具が加工済み部分に接触したことを検出する検出手段と、その検出結果に基づいて加工済み部分の位置を判別する判別手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記加工手段は、モータによって回転される回転軸と、その回転軸に着脱可能に支持される工具と、回転軸に支持される工具を交換するための工具交換装置と、回転軸に対する支持状態の工具の位置を測定するための工具位置測定手段とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1計測手段及び第2計測手段のうちの少なくとも一方の計測結果に基づいて、工具のエアカット動作の範囲を設定することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記制御手段は、前記被加工部の計測結果を含むワークの条件に従ってクラウニング加工が実行されるように、前記加工手段の動作を制御することを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記加工手段は、回転砥石を含み、加工開始に先立って回転砥石の回転バランスを修正するためのバランス修正手段を有することを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−61578(P2012−61578A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209337(P2010−209337)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000150604)株式会社ナガセインテグレックス (35)
【Fターム(参考)】