説明

工業用撮像システム

【課題】工業用撮像システムの実用性を向上させる。
【解決手段】部品撮像システムのカメラ100の筐体116内に撮像体112,カメラ側コンピュータ,カメラ情報表示装置142を組み込む。撮像により得られた画像データは、カメラケーブルおよびカメラ側コンピュータ,画像処理コンピュータの各通信制御部を経て画像処理コンピュータへ送られ、処理される。カメラ情報表示装置142の複数の表示ランプ140はカメラ側コンピュータと共に基板に取り付け、カメラケーブル,通信制御部を経ることなくカメラ側コンピュータのI/Oポートに接続し、複数の表示ランプ140の各点灯と消灯との組合わせ,点滅速度の設定によりカメラ異常情報およびカメラにおいて実行中の処理の種類を表示させる。カメラケーブル等の異常により画像データの処理や撮像結果の表示画面への表示が行われない状態でもカメラ情報が表示され、作業者はカメラの状態を知ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業用撮像システムに関するものである。工業用撮像システムは、生産機械等、工場で使用される種々の機械の認識システムとして使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
撮像システムは、工業用以外にも、種々の用途に使用される。例えば、下記の特許文献1に記載の異常監視システムは、大規模事業所,大規模店舗,高層ビル等の防犯および防災のために監視を行うシステムであり、複数の監視場所にそれぞれ設けられた異常監視装置の撮像手段によって監視場所が撮像され、それにより得られた画像データが処理されるとともに画像データの特徴が抽出される。そして、特徴データが異常を表すのであれば、異常モードデータが中央監視装置へ送信されて異常現象が判別され、異常箇所と共に表示部に表示される。異常監視装置はまた、自身の異常を検出する機能を備え、異常が検出されればLEDによって表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−148844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、工業用撮像システムの実用性の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明に係る工業用撮像システムは、(a)多数の撮像素子を有する撮像体と、その撮像体からの電気信号の取得を制御するとともに取得された電気信号に基づいて画像データを作成するカメラ側コンピュータとを備えたカメラと、(b)前記画像データを処理する画像処理コンピュータと、(c)その画像処理コンピュータと前記カメラ側コンピュータとを接続するカメラケーブルと、(d)そのカメラケーブルを経ての前記カメラ側コンピュータと前記画像処理コンピュータとの間の前記画像データを含む情報の通信を制御する通信制御部と、(e)前記カメラケーブルおよび前記通信制御部を経ることなく前記カメラ側コンピュータに接続され、前記カメラに関する情報であるカメラ情報を表示するカメラ情報表示装置とを含むものとされる。
撮像体として、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサの採用が可能である。
【発明の効果】
【0006】
撮像対象の撮像により得られた画像データは、通信制御部の制御により、カメラ側コンピュータからカメラケーブルを経て画像処理コンピュータへ送られて処理され、撮像対象の位置,外形等が取得される。それに対し、カメラ情報はカメラケーブルおよび通信制御部を経ることなくカメラ情報表示装置によって表示される。そのため、例えば、カメラケーブルと通信制御部との少なくとも一方に異常が生じ、画像処理コンピュータによる画像データの処理や、撮像結果の表示画面への表示が行われない状態になっても、カメラ情報は表示することができ、作業者はカメラの状態を知ることができる。
また、カメラ情報表示装置をカメラに近接して設けることが可能であり、そのようにした場合は、作業者はカメラ情報をカメラの近くにおいて知ることができる。
さらに、工業用撮像システムが設けられる作業システムは、システムの小形化等を図るために工業用撮像システムの設置位置,設置スペースが限られることが多いが、カメラ情報表示装置の接続にカメラケーブルや通信制御部が不要であるため、設置位置やスペースに制限があっても設置が容易である。
【発明の態様】
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載,従来技術,技術常識等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0008】
なお、以下の各項において、(2)項に従属する(5)項が請求項1に相当し、(6)項が請求項2に、(7)項が請求項3に、(8)項が請求項4に、(9)項が請求項5に、(10)項が請求項6にそれぞれ相当する。
【0009】
(1)多数の撮像素子を有する撮像体と、その撮像体からの電気信号の取得を制御するとともに取得された電気信号に基づいて画像データを作成するカメラ側コンピュータとを備えたカメラと、
前記画像データを処理する画像処理コンピュータと、
その画像処理コンピュータと前記カメラ側コンピュータとを接続するカメラケーブルと、
そのカメラケーブルを経ての前記カメラ側コンピュータと前記画像処理コンピュータとの間の前記画像データを含む情報の通信を制御する通信制御部と
を含むことを特徴とする工業用撮像システム。
(2)さらに、前記カメラに関する情報であるカメラ情報を表示するカメラ情報表示装置を含む(1)項に記載の工業用撮像システム。
カメラ情報表示装置は、カメラ情報を表示ランプによって表示する装置でもよく、表示画面によって表示する装置でもよく、音声装置によって表示する装置でもよい。
(3)前記カメラ情報が前記カメラの複数種類の異常を表すカメラ異常情報を含む(2)項に記載の工業用撮像システム。
カメラ異常情報の表示により、作業者はカメラの異常および異常の種類を簡単に知ることができる。
(4)前記カメラ情報が前記カメラにおいて実行中の処理の種類を表す処理種情報を含む(2)項または(3)項に記載の工業用撮像システム。
処理種情報の表示により、作業者はカメラにおいて実行中の処理の種類を簡単に知ることができる。
(5)前記カメラ情報表示装置が、前記カメラケーブルおよび前記通信制御部を経ることなく前記カメラ側コンピュータに接続された(2)項ないし(4)項のいずれかに記載の工業用撮像システム。
(6)前記カメラ情報表示装置が、前記カメラの筐体にその筐体の外部から視認可能な状態で設けられた(2)項ないし(5)項のいずれかに記載の工業用撮像システム。
カメラ情報表示装置はカメラと共に設けられることとなり、カメラと共にユニット化され、取扱いが容易である。また、カメラ情報表示装置とカメラ側コンピュータとの間の距離が短く、接続が容易である。
(7)前記カメラ情報表示装置が、1個以上の表示ランプによって前記カメラ情報を表示する(2)項ないし(6)項のいずれかに記載の工業用撮像システム。
表示ランプによれば、カメラ情報の表示を安価にかつ容易に行うことができる。
(8)前記カメラ情報表示装置が、前記複数の表示ランプの点灯と消灯との組合わせにより前記カメラの複数種類の異常を識別可能に表示する(7)項に記載の工業用撮像システム。
複数の表示ランプの各々の点灯と消灯との組合わせにより、表示ランプの数より多数の種類の異常を表示することができ、多種類の異常を表示しつつ、コンパクトなカメラ情報表示装置が得られ、狭いスペースに設けることができる。
なお附言すれば、複数種類のカメラ異常情報は、表示ランプの色の違いによっても表示することができる。例えば、複数の表示ランプをそれぞれ1種類の色で発光するものとし、表示する情報数に等しい数の表示ランプを設けてもよく、あるいは、1個以上の表示ランプの各々を複数種類の色で発光可能なものとしてもよい。例えば、表示ランプを、それぞれ発光色が赤,緑,青である3つのLEDを備えたものとし、それらLEDを選択的に発光させれば、1個の表示ランプによって3種類のカメラ異常を表示させることができ、複数の表示ランプの複数の発光色の組合わせとすれば、表示ランプの数より多くの種類のカメラ異常情報を表示することができる。
さらに附言すれば、発光色が互いに同じである複数の表示ランプの各々に近接して、各表示ランプの点灯により表示される異常の種類を文字,図形,記号等により付記してもよい。
(9)前記カメラ情報表示装置が、表示ランプの複数種類の点灯状態により前記カメラにおいて実行中の処理の種類を表す処理種情報を識別可能に表示する(7)項または(8)項に記載の工業用撮像システム。
点灯状態としては、例えば、連続点灯,点滅,複数種類の点滅速度等を採用することができる。
上記(8)項と(9)項とにおける「カメラの複数種類の異常」と「実行中の処理の種類」とを互いに置換してもよく、さらに、複数の表示ランプの点灯と消灯との組合わせと、複数種類の点灯状態とを組み合わせて採用してもよい。
(10)さらに、
表示画面により情報を表示する画面表示装置と、
前記カメラ情報を前記カメラケーブルおよび前記通信制御部を経て、前記画面表示装置に供給するカメラ情報供給部と
を含み、前記画面表示装置の前記表示画面に前記カメラ情報を表示する(5)項ないし(9)項のいずれかに記載の工業用撮像システム。
表示画面によれば、情報を文字,記号,図形等、種々の態様で表示することができ、わかり易く表示することができ、また、情報量を多くすることが容易である。さらに、工業用撮像システムが設けられる作業システムが、他の目的で使用される画面表示装置を既に有しているのであれば、それを利用して情報を表示することができ、専用の画面表示装置を設ける場合に比較して安価に情報を表示することができる。画像処理コンピュータにパーソナルコンピュータを接続し、画面表示装置として機能させることもできる。
本発明に係る工業用撮像システムによれば、カメラ情報が、カメラ情報表示装置と画面表示装置とによってダブルで表示される。作業者は、2つの装置のうちの一方、例えば、見易い方あるいは近くにある方の装置によってカメラ情報を取得することができ、便利である。また、いずれか一方が故障しても他方によってカメラ情報が得られる。
ただし、通常は、カメラ情報表示装置の方が堅牢であるため、画面表示装置によるカメラ情報の取得が不可能になった場合に、カメラ情報表示装置によりカメラ情報が取得される場合が多い。あるいは、パーソナルコンピュータが作業者の手元にない場合に、カメラ情報表示装置の表示によりカメラ情報が取得されることが多い。
(11)(1)項ないし(10)項のいずれかに記載の工業用撮像システムと、
回路基板に対して予め定められた作業を行う作業装置と
を含む対回路基板作業機。
回路基板に対して予め定められた作業には、例えば、はんだの印刷,接着剤の塗布,電子回路部品の装着,それら印刷等、回路基板に対して行われた作業の検査があり、作業の種類に応じて、作業装置は、印刷装置、接着剤塗布装置、部品装着装置、検査装置とされ、対回路基板作業機はスクリーン印刷機、接着剤塗布機、電子回路部品装着機、回路基板検査機とされる。
工業用撮像システムは、スクリーン印刷機においては、例えば、回路基板やマスクに設けられた基準マークの撮像に用いられ、接着剤塗布機においては、例えば、回路基板に設けられた基準マークの撮像に用いられる。回路基板検査機においては、回路基板の少なくとも作業が行われた部分が工業用撮像システムにより撮像され、それにより得られる画像データに基づいて作業の可否が判定される。撮像にカメラの移動が必要であれば、工業用撮像システムは、カメラ移動装置を含むものとされる。
(12)前記作業装置が、回路基板に電子回路部品を装着する部品装着装置を含み、前記工業用撮像システムが、前記部品装着装置に保持された電子回路部品を撮像する部品撮像システムと、回路基板に設けられた基準マークを撮像する基準マーク撮像システムとの少なくとも一方を含む(11)項に記載の対回路基板作業機。
工業用撮像システムが(2)項に記載の撮像システムである場合、部品撮像システムと基準マーク撮像システムとの少なくとも一方は、カメラ情報表示装置によってカメラ情報が表示されることとなり、電子回路部品の撮像と基準マークの撮像との少なくとも一方の実用性がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】請求可能発明の実施形態である部品撮像システムを備えた電子回路部品装着機を含む電子回路部品装着システムの一部を示す斜視図である。
【図2】上記電子回路部品装着機の部品装着装置を示す斜視図である。
【図3】上記部品撮像システムのカメラを示す正面図である。
【図4】上記カメラのカメラ側コンピュータおよびカメラ情報表示装置を示す平面図(一部断面)である。
【図5】上記カメラ側コンピュータの機能等を示すブロック図である。
【図6】上記カメラ情報表示装置の表示ランプによるカメラ異常情報の表示例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、請求可能発明の実施形態を、上記各図を参照しつつ説明する。なお、請求可能発明は、下記実施形態の他、上記〔発明の態様〕の項に記載した態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0012】
図1に、作業システムの一種である電子回路部品装着システムを示す。本電子回路部品装着システムは、複数、例えば、8台の装着モジュール10(図1には2台、図示されている)が、共通で一体のベース12上に、互いに隣接して1列に配列されることにより構成されている。8台の装着モジュール10はそれぞれ、請求可能発明の一実施形態である対回路基板作業機たる電子回路部品装着機であり、回路基板への電子回路部品の装着を分担し、並行して行う。
【0013】
装着モジュール10については、例えば、特開2004−104075号公報に詳細に記載されており、本請求可能発明に関する部分以外の部分については簡単に説明する。
8台の装着モジュール10はそれぞれ、装着機本体たるモジュール本体18,基板搬送装置20,基板保持装置22,部品供給装置24,部品装着装置26,部品撮像システム28(図5参照),基準マーク撮像システム30(図2参照),画面表示装置32および制御装置34等を備えている。
【0014】
各装着モジュール10は、本実施形態においては、ベース12に対して前後方向(8台の装着モジュール10が並ぶ方向と直交する方向であって、水平な方向)に移動可能とされ、ベース12から前方へ引き出すことができる。図示は省略するが、特開2004−104075号公報に記載されているように、装着モジュール10に設けられた複数の車輪が、ベース12上に設けられた複数のレールに係合させられることにより装着モジュール10の移動が容易とされている。ベース12にテーブルを連結し、ベース12から引き出された装着モジュール10を載せることにより、装着モジュール10全体を引き出すこともできる。
【0015】
基板搬送装置20は、図1に示すように、2つの基板コンベヤ36,38を備え、モジュール本体18を構成する基台部40の装着モジュール10の前後方向の中央部に設けられ、回路基板42を複数の装着モジュール10が並ぶ方向と平行な方向であって、水平な方向へ搬送する。基板保持装置22は2つの基板コンベヤ36,38の各々について設けられ、本実施形態においては、それぞれ、図示は省略するが、支持部材により回路基板42を下方から支持するとともに、クランプ部材によって回路基板42の搬送方向に平行な両側縁部をそれぞれクランプし、回路基板42をその電子回路部品が装着される装着面が水平となる姿勢で保持するものとされている。回路基板42の搬送には、基板コンベヤ36,38の少なくとも一方が使用される。基板搬送装置20による回路基板42の搬送方向をX軸方向、基板保持装置22に保持された回路基板42の装着面に平行な平面であって、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向とする。
【0016】
部品供給装置24は、図1に示すように、基台部40の基板搬送装置20に対してY軸方向の一方の側に設けられ、例えば、部品供給具の一種である部品フィーダたる複数のテープフィーダ44の各部品供給部から部品装着装置26に電子回路部品を供給する。
【0017】
部品装着装置26は、図2に示すように、作業ヘッドたる装着ヘッド50と、その装着ヘッド50を移動させるヘッド移動装置52とを備えている。ヘッド移動装置52は、X軸方向移動装置54およびY軸方向移動装置56を備え、装着ヘッド50を水平方向に移動させ、基板搬送装置20と部品供給装置24の部品供給部とに跨る移動領域である装着作業領域内の任意の位置へ移動させる。装着ヘッド50は、ヘッド本体に、軸線方向に移動可能であって昇降可能にかつ自転可能に設けられた少なくとも1つの保持具保持部たるノズルホルダ58,ホルダ移動装置であるホルダ昇降装置およびホルダ回転装置を備え、ノズルホルダ58により保持された部品保持具の一種である吸着ノズル60により電子回路部品を保持する。
【0018】
基準マーク撮像システム30はカメラおよび照明装置を備えている。これらカメラおよび照明装置は装着ヘッド50と共に水平面内の任意の位置へ移動させられ、回路基板42に設けられた基準マークを撮像する。
【0019】
前記制御装置34は、図5に示すように装着制御コンピュータ70を主体として構成されている。装着制御コンピュータ70は、図示は省略するが、CPU,ROM,RAM,それらを接続するバスおよびI/Oポートを備えており、それらにより装着制御部72が構成され、基板搬送装置20等、装着モジュール10を構成する各種装置の駆動源等を制御し、回路基板42の搬送,回路基板42への電子回路部品の装着等を行わせる。装着制御コンピュータ70はまた、通信制御部74を備えている。
【0020】
前記画面表示装置32は、図5に示すように、表示部80および表示制御部82を含む。表示部80は、表示画面84および駆動部86を備え、図1に示すように、モジュール本体18の上部を覆うカバー88上の前後方向の一方の側であって、部品供給装置24が設けられた側に設けられている。本実施形態においては、表示部80が設けられた側を装着モジュール10の前側ないし正面側とする。表示制御部82は、本実施形態においては装着制御コンピュータ70に設けられ、駆動部86に画像信号等を供給し、表示画面84に装着モジュール10の操作に関する情報や電子回路部品の供給,装着に関する情報等を表示させる。
【0021】
前記部品撮像システム28は、本実施形態においては、図3および図5に示すように、カメラ100,照明装置102および画像処理コンピュータ104を含み、カメラ100および照明装置102は、図1に示すように、基台部40の基板搬送装置20と部品供給装置24との間の部分に設けられている。カメラ100は、本実施形態においては、多数の撮像素子110を有する撮像体112と、撮像素子110に光を入光させるレンズ(図示省略)と、カメラ側コンピュータ114とを備え、これら撮像体112等はカメラ100の筐体116内に組み付けられている。本実施形態においては、多数の撮像素子110はそれぞれCMOSにより構成されて光電変換を行うものとされ、撮像体112はCMOSイメージセンサを構成している。また、カメラ100へは、電源118から電力が供給される。
【0022】
カメラ側コンピュータ114は、図4に示すように、CPU120,FLASHROM122,RAM124およびI/Oポート126を備えて基板128に取り付けられている。I/Oポート126には、カメラ100の温度を検出する温度センサ130が接続されている。基板128にはまた、複数、本実施形態においては9個の表示ランプ140が取り付けられるとともに、それぞれI/Oポート126に接続され、カメラ情報表示装置142を構成している。9個の表示ランプ140は、本実施形態においては、それぞれ1個ずつのLEDを備え、色が複数種類に異ならされている。具体的には、3種類に異ならされ、1個が緑色、1個が赤色、7個が橙色とされている。9個の表示ランプ140は一列に並べられ、一番端の表示ランプ140が緑色、その表示ランプ140に隣接する表示ランプ140が赤色、残りの表示ランプ140が橙色とされている。
【0023】
カメラ側コンピュータ114およびカメラ情報表示装置142は、基板128ごと筐体116内に組み込まれている。図4に示すように、カメラ情報表示装置142は基板128に、筐体116内に組み付けられた状態で筐体116の外壁部と対向する状態で取り付けられている。図3に示すように、筐体116のカメラ情報表示装置142と対向する部分には切欠144が形成され、外部に開口させられるとともに、透明なカバー146によって塞がれ、筐体116内への塵埃等の侵入が防止されつつ、全部の表示ランプ140が筐体116の外部から見えるようにされている。カバー146は、無色が望ましい。
【0024】
カメラ側コンピュータ114は、機能的には、図5に示すように、撮像素子制御部150,画像データ作成部152,ランプ制御部154,カメラ状態取得部156,カメラ情報供給部158および通信制御部160を備えている。撮像素子制御部150は、撮像素子110への電圧の印加,撮像素子110からの電気信号の出力等を制御し、画像データ作成部152において、撮像素子110から出力された電気信号が撮像素子110毎に補正されるとともに、撮像素子110の撮像体112における位置と対応付けて画像データが作成される。
【0025】
本撮像体112においては、多数の撮像素子110のうち、設定数の撮像素子110毎に電気信号が出力される。その際、設定数の撮像素子110の各電荷はそれぞれ、設定数の増幅器により増幅されるとともに、デジタル信号に変換されて出力されるが、増幅器の増幅率にはばらつきがある。そのため、補正値を使用し、電気信号を増幅率のばらつきの影響のない信号に補正する演算が行われる。補正値は、カメラ100の製造時や使用開始後の適宜の時期に無地の面を撮像することにより取得され、FLASHROM122に記憶させられている。
【0026】
画像処理コンピュータ104は、本実施形態においては基台部40内に設けられ、カメラ側コンピュータ114と画像処理コンピュータ104とは、図5に示すように、カメラケーブル162によって接続されており、作成された画像データを始めとし、種々のデータおよびコマンド等が伝送される。画像処理コンピュータ104は画像処理部164および通信制御部166を備え、コンピュータ114,104間における通信は通信制御部160,166により制御される。本実施形態においては、通信制御部160,166がコンピュータ104,114間の情報の通信を制御する通信制御部を構成している。
【0027】
画像処理コンピュータ104では、画像処理部164において、カメラ側コンピュータ114から送られて来た画像データの処理が行われる。この画像データは、多くは、吸着ノズル60により吸着された電子回路部品の画像データであり、画像処理により、電子回路部品の形状,寸法,吸着ノズル60による電子回路部品の保持位置誤差等が取得される。保持位置誤差には、X軸,Y軸方向の各位置誤差および電子回路部品の軸線まわりの位置誤差である回転位置誤差が含まれる。
【0028】
画像処理コンピュータ104へは、基準マーク撮像システム30のカメラにより撮像された基準マークの画像データも送られ、処理される。そして、基準マークの位置等が取得され、回路基板42上に設定された複数の部品装着位置の各々について位置誤差、ここではX軸,Y軸方向の各位置誤差および回転位置誤差が求められる。画像処理コンピュータ104は、基準マーク撮像システム30の画像処理コンピュータを兼ねているのである。
【0029】
画像処理により得られたデータは装着制御コンピュータ70へ送られる。このデータ伝送は、画像処理コンピュータ104の通信制御部166と、装着制御コンピュータ70の通信制御部74とによって制御される。装着制御コンピュータ70では、受信したデータに基づいて、吸着ノズル60による電子回路部品の保持の有無や、保持された電子回路部品の種類の判定、保持位置誤差および部品装着位置の位置誤差を修正するための修正データの算出等が行われる。
【0030】
カメラ情報供給部158は、カメラ情報をカメラケーブル162および通信制御部160,166を経て画像処理コンピュータ104へ供給する。カメラ情報には、本実施形態においては、カメラ100の異常を表すカメラ異常情報と、カメラ100において実行中の処理の種類を表す処理種情報とがある。カメラ100の異常には、例えば、通信異常,温度異常,画像データ作成異常等がある。
【0031】
通信異常は、カメラ側コンピュータ114と画像処理コンピュータ104との間において行われる通信の異常であり、通信制御部160,166およびカメラケーブル162の少なくとも1つの異常が一因である。通信制御部160,166においては互いに送,受信するデータのチェックが行われ、各通信制御部160,166において受信されたデータに解釈不能なデータや、本来、受信するはずのないデータが含まれていること、あるいは、逆に、本来、受信するはずのデータが受信されない等により通信異常がわかる。温度異常は、カメラ100の温度の過剰な上昇であり、温度センサ130の検出値によりわかる。画像データ作成異常には、例えば、画像データ作成時に使用される補正値の異常や、補正値の保存ミス、あるいは、作成された画像データが通常あり得ない大きさのデータを含むこと等がある。補正値の異常は、補正値取得時に、取得された補正値の大きさによりわかり、あるいは補正値を使用した演算の結果が異常な値であることによりわかる。また、補正値の保存ミスは、演算時にFLASHROM122に補正値がないことによりわかる。
【0032】
処理種情報により表される処理には、例えば、カメラ100の正常な作動や、カメラ側コンピュータ114においてFLASHROM122へのデータの書込みにより行われるプログラムのバージョンアップがある。
【0033】
これらカメラ異常およびカメラ処理状態は、カメラ状態取得部156により取得される。カメラ状態取得部156は、常時、カメラ100の状態を監視し、通信制御部160による通信制御状況,温度センサ130により検出されるカメラ100の温度,画像データ作成部152における画像データ作成状況に基づいて異常の有無を判定し、異常があれば、異常情報をカメラ情報供給部158へ送る。異常情報には、異常の種類(内容)が含まれる。また、カメラ状態取得部156からカメラ情報供給部158へ、カメラ処理状態を表す情報も送られる。
【0034】
カメラ情報供給部158においては、カメラ情報を表示画面84に表示するためのカメラ情報表示データが作成され、通信制御部160,166およびカメラケーブル162を経て画像処理コンピュータ104へ送られる。カメラ情報表示データは、画像処理コンピュータ104から装着制御コンピュータ70へ送られ、カメラ情報が表示画面84に表示され、作業者が見ることができる。本実施形態では、画面表示装置32が部品撮像システム28の画面表示装置を兼ねている。なお、装着制御コンピュータ70から画像処理コンピュータ104を経て、カメラ側コンピュータ114へのデータ,コマンド等の送信も行われる。画像処理コンピュータ104は、カメラ側コンピュータ114から供給される画像データを処理して撮像対象物の形状,寸法や位置の情報を取得し、装着制御コンピュータ70へ供給する本来の機能に加えて、カメラ側コンピュータ114と装着制御コンピュータ70(あるいは表示制御部82)との間の情報の授受を中継する機能をも果たすのである。
【0035】
カメラ情報はまた、ランプ制御部154へ送られ、カメラ100の状態が表示ランプ140によっても表示される。本実施形態においては、緑色の表示ランプ140の点灯により電源がON状態であることが表示され、赤色の表示ランプ140の点滅によりエラー発生が表示される。7個の橙色の表示ランプ140は、カメラ100が正常に作動している状態では全部が点滅させられ、バージョンアップ時には、バージョンアップが行われていない状態より点滅速度が速くされ、バージョンアップの実行が表示される。橙色の表示ランプ140はカメラ異常時には選択的に点灯させられ、7個の橙色の表示ランプ140の点灯と消灯との組合わせにより、異常内容が表示される。
【0036】
FLASHROM122には、カメラ情報の種類と表示ランプ140の制御態様とを対応付けるデータが記憶させられており、ランプ制御部154は、カメラ情報に基づいていずれの表示ランプ140を点灯あるいは消灯させ、あるいは点滅させるかを決め、点滅時には点滅速度を決め、それら決定に従って表示ランプ140を点灯,消灯,点滅させる。カメラ異常の場合、例えば、図6(a)に例示するように、7個の橙色の表示ランプ140のうち4個が点灯させられ、3個が消灯させられる。また、別の種類のカメラ異常発生時には、表示ランプ140が図6(b)に例示するように点灯,消灯させられる。作業者は、表示ランプ140を見れば、カメラ状態がわかる。カメラ情報・ランプ制御態様対応データは印刷等によって作業者に提供され、作業者によるカメラ状態の把握が補助される。
【0037】
7個の表示ランプ140の点灯,消灯を組み合わせれば、単純には128種類の異常を表示することが可能である。異常の種類がそれより少ない場合には、7個の表示ランプ140は別の使い方によって異常を表示するようにすることもできる。例えば、2個ずつを対にし、異常表示時には対を成す2つの表示ランプ140を共に点灯あるいは消灯させる。それにより、いずれか一方の表示ランプ140が切れても他方の点灯により異常の種類を表すことができる。
【0038】
装着モジュール10において回路基板42への電子回路部品の装着時には、装着ヘッド50が部品供給装置24へ移動させられ、テープフィーダ44の部品供給部から電子回路部品を取り出す。取出し後、装着ヘッド50が回路基板42へ移動させられる途中で部品撮像システム28により、吸着ノズル60により保持された電子回路部品が撮像される。撮像は装着制御コンピュータ70からカメラ側コンピュータ114への指示に基づいて行われ、カメラ側コンピュータ114から画像処理コンピュータ104へ画像データが送られる。そして、画像処理により得られたデータに基づいて吸着ノズル60による電子回路部品の保持位置誤差および回路基板42の部品装着位置の位置誤差が修正され、電子回路部品が設定された部品装着位置に正規の姿勢で装着される。
【0039】
カメラ情報は表示画面84および表示ランプ140によって表示され、作業者はそれら表示を見てカメラ状態を認識することができる。本実施形態においては、カメラ100が基台部40の基板搬送装置20と部品供給装置24との間の部分に設けられていて、装着モジュール10がベース12上に引き込まれた状態では見難く、作業者は、通常は表示画面84の表示を見る。
【0040】
カメラ100に異常が生ずれば、カメラ異常情報が表示画面84による表示および橙色の表示ランプ140の点灯により表示される。しかし、通信異常あるいは通信異常を含むカメラ異常が生ずれば、カメラ情報供給部158から画面表示装置32へカメラ情報表示データが送られないため、表示画面84にカメラ異常情報が表示されず、表示画面84からは異常内容がわからない。それに対し、表示ランプ140は、I/Oポート126に接続されていて、カメラケーブル162および通信制御部160,166を経ることなく、カメラ側コンピュータ114に接続されているため、通信異常が生じても点灯させられ、カメラ異常情報が表示される。
【0041】
通信異常時には、吸着ノズル60が電子回路部品の吸着動作を行っても、カメラ100から画像処理コンピュータ104へ画像データが伝送されず、カメラ異常を表す事態が発生する。例えば、部品装着装置26は、吸着ノズル60が保持した電子回路部品について保持位置誤差が得られないことから部品撮像後の動作を行うことができず、装着モジュール10が停止させられる。それに基づいて作業者は、停止した装着モジュール10をベース12から前方へ引き出し、表示ランプ140を見て異常の有無,異常の内容を知る。あるいは、装着モジュール10が停止させられなくても、電子回路部品装着システムから排出された回路基板42が電子回路検査機によって検査されることにより、電子回路部品の装着されていない箇所が検出される。この箇所により、いずれの装着モジュール10において電子回路部品の装着が正常に行われなかったかがわかり、作業者はその装着モジュール10の作動を止めてベース12から引き出し、表示ランプ140を見てカメラ異常の有無,異常の種類を確認する。
【0042】
カメラ異常に対応する事態発生時以外にも、例えば、保守点検時等に作業者は装着モジュール10をベース12から引き出して表示ランプ140を見ることにより、カメラ情報を得ることができ、作業が容易となる。画面表示装置32の故障時にも同様である。
【0043】
なお、装着モジュールの、ベースから引き出さなくても見える箇所にカメラを設置することができるのであれば、その箇所にカメラを設置してもよい。また、カメラ情報表示装置を、カメラケーブルおよび通信制御部を経ることなくカメラ側コンピュータに接続しつつ、カメラの筐体外に設けてもよい。例えば、装着モジュール10の、ベース12から引き出さなくても見える箇所に、カメラ情報表示装置を設けるのである。これらの場合には、作業者は所望の時期にカメラ情報を取得することができる。例えば、カメラに電子回路部品を撮像させつつカメラの状態を知ることができるのである。
さらに、電子回路部品装着機が単体で設けられる場合は、複数の電子回路部品装着機が列を成す場合より側方から見易く、電子回路部品装着機の外部から見える位置にカメラと共にカメラ情報表示装置を設け易い。
【0044】
また、表示ランプの点滅によって処理種情報を表示する場合、処理種情報表示用の複数の表示ランプの全部を点滅させることは不可欠ではなく、一部を点滅させてもよく、いずれを点滅,消灯させるかによって、複数種類の処理種情報を表示することができる。さらに、点滅速度を複数種類に異ならせてもよい。
【0045】
さらに、画面表示装置により、画像処理コンピュータを経ることなく、カメラ情報が表示されるようにしてもよい。例えば、カメラ側コンピュータと装着制御コンピュータとを接続してカメラ情報が供給され、表示画面に表示されるようにする。
さらにまた、撮像システムは専用の画面表示装置を有するものとしてもよい。例えば、画面表示装置を表示部,表示制御部および通信制御部を有するものとし、(i)画像処理コンピュータの通信制御部との間の通信によりカメラ情報が供給されて表示するものとし、あるいは、(ii)カメラ側コンピュータの通信制御部との間の通信により、画像処理コンピュータを経ることなく直接カメラ情報が供給されて表示するものとするのである。(i)の場合、画像処理コンピュータの通信制御部が画面表示装置の通信制御部を兼ねるようにしてもよい。撮像システムに専用の画面表示装置が対回路基板作業機の制御装置に接続され、その制御装置のコンピュータを介してカメラ情報が供給されるようにしてもよい。
【0046】
また、撮像体からカメラ側コンピュータへ出力される電気信号は、アナログ信号でもよい。
【0047】
基準マーク撮像システムに本発明を適用してもよい。前記実施形態の基準マーク撮像システム30のカメラは装着ヘッド50と共に移動させられるため、カメラ情報表示装置がカメラの筐体にその筐体の外部から視認可能な状態で設けられる場合、カメラを、作業者がカメラ情報表示装置を見易い場所へ移動させる。
特開平6−291490号公報や特開2002−217597号公報に記載されているように、カメラが装着ヘッドと共に移動させられる部品撮像システムに本発明を適用してもよい。
さらに、本発明は、電子回路部品装着機以外の対回路基板作業機の撮像システム、対回路基板作業機以外の作業機等、種々の装置に設けられる撮像システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
10:装着モジュール 26:部品装着装置 28:部品撮像システム
30:基準マーク撮像システム 32:画面表示装置 84:表示画面 100:カメラ 104:画像処理コンピュータ 114:カメラ側コンピュータ 116:筐体 140:表示ランプ 142:カメラ情報表示装置 162:カメラケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の撮像素子を有する撮像体と、その撮像体からの電気信号の取得を制御するとともに取得された電気信号に基づいて画像データを作成するカメラ側コンピュータとを備えたカメラと、
前記画像データを処理する画像処理コンピュータと、
その画像処理コンピュータと前記カメラ側コンピュータとを接続するカメラケーブルと、
そのカメラケーブルを経ての前記カメラ側コンピュータと前記画像処理コンピュータとの間の前記画像データを含む情報の通信を制御する通信制御部と、
前記カメラケーブルおよび前記通信制御部を経ることなく前記カメラ側コンピュータに接続され、前記カメラに関する情報であるカメラ情報を表示するカメラ情報表示装置と
を含むことを特徴とする工業用撮像システム。
【請求項2】
前記カメラ情報表示装置が、前記カメラの筐体にその筐体の外部から視認可能な状態で設けられた請求項1に記載の工業用撮像システム。
【請求項3】
前記カメラ情報表示装置が、1個以上の表示ランプによって前記カメラ情報を表示する請求項1または2に記載の工業用撮像システム。
【請求項4】
前記カメラ情報表示装置が、前記複数の表示ランプの点灯と消灯との組合わせにより前記カメラの複数種類の異常を識別可能に表示する請求項3に記載の工業用撮像システム。
【請求項5】
前記カメラ情報表示装置が、表示ランプの複数種類の点灯状態により前記カメラにおいて実行中の処理の種類を表す処理種情報を識別可能に表示する請求項3または4に記載の工業用撮像システム。
【請求項6】
さらに、
表示画面により情報を表示する画面表示装置と、
前記カメラ情報を前記カメラケーブルおよび前記通信制御部を経て、前記画面表示装置に供給するカメラ情報供給部と
を含み、前記画面表示装置の前記表示画面に前記カメラ情報を表示する請求項1ないし5のいずれかに記載の工業用撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−39302(P2012−39302A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176394(P2010−176394)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】