説明

工程用水再生システムおよびその方法

特に、紙の製造中に工程用水を再生するシステムが、開示される。このシステムは、少なくとも1つの工程用水再生ユニットを備えており、該少なくとも1つの工程用水再生ユニットは、嫌気性微生物が混合される嫌気性反応装置および石灰除去ユニットを備える。また、特に、紙の製造中に工程用水を再生する方法が、開示されている。この方法は、少なくとも1つの工程用水再生ステップを備えており、該ステップでは、工程用水再生ステップに連続的に供給される工程用水の少なくとも一部が、嫌気性微生物が混合される嫌気性反応装置における浄化ステップを受けるとともに、石灰除去ステップを受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程用水処理システムに関し、特に、紙の製造における工程用水処理に関する。ここで、このシステムは、少なくとも1つの工程用水処理ユニットを備える。さらに、本発明は、工程用水の処理方法に関し、特に、紙の製造における工程用水処理に関する。
【背景技術】
【0002】
工程用水の処理は、工程用水が対応するシステムの循環路内で案内されるような多くの技術分野で、妨害物質を含む工程用水の濃化を防止するために、特に必要とされている。また、これは、紙の製造における工程用水に特に適用され、実際は、新しい繊維からの紙の製造および特に再生紙からの紙の製造の両方に適用される。
【0003】
紙は、過去数十年の間に次第に、再生紙から生産されるようになってきた。これは、紙の製造におけるエネルギの消費を低下させるため、並びに、特に、天然資源の消費を減少させるためである。約2.2メートルトンの木材が、1トンの1次繊維紙を製造するのに必要であるが、再生紙における繊維量の合計に対する再生紙から生じる2次繊維の比率によっては、紙のリサイクルに要求される木材をゼロにまで劇的に低下即ち減少させることができる。さらに、1次繊維から紙を製造するのと比較して、半分のエネルギおよび1/3の新しい水が、再生紙の製造に必要とされる。しかし、現在では、再生紙の質は、インク耐性、プリント、白さの程度、および耐劣化性の点で、1次繊維紙の質と同じくらい高い。
【0004】
再生紙からの紙の製造では、再生紙は、パルパ即ちパルプ製造エンジンにおいて、最初に水と混合されて細かく砕かれるとともに、個々の繊維組成物を溶かすように撹拌および混合される。この後に、繊維の洗浄が実施され、パルプ繊維から非繊維の異物が取り除かれる。次に、繊維は、任意選択的に少量の1次繊維を加えた後に、任意選択的に漂白され、最終的に紙製造機で紙に加工される。したがって、対応するシステムは、再生紙処理用の装置および紙製造機を備える。再生紙処理装置は、再生紙パルプ製造ユニット即ちパルパ、不純物を除去するための分離装置および工程用水を除去するためのデッカユニットを備える。ここで、再生紙パルプ製造ユニットでは、工程用水が、繊維のパルプを製造するとともに繊維を細かく砕くように再生紙に供給される。また、システム内に2つまたはそれ以上再生紙処理装置即ちステージいわゆるループを設けて、再生紙から処理された繊維の質を向上させることが知られている。ここで、再生紙処理装置の各ループおよび紙製造機は、専用の工程用水処理ユニットを備えることが好ましい。ここで、個々の工程用水処理ユニットは、個々のループ間に設けられたデッカユニットによって互いに分離可能である。
【0005】
循環路内のループ全てに工程用水を案内できるとともに、これにより、新しい水の追加を最小化できるようにするために、工程用水は、個々の工程用水処理ユニットにおいて要求される程度まで浄化されなければならない。この目的のために、工程用水処理ユニットは、材料再生ユニットおよび/または材料除去ユニットを常に備える。ここで、工程用水中に含まれた繊維は、工程用水から機械的に除去されるとともに、再生紙処理装置へ完全にまたは部分的に戻るように案内される。これらの材料再生ユニットまたは材料除去ユニットは、選別システムおよび/または圧力除去浮上分離(気泡分離)システムとして常に設計される。
【0006】
再生紙から紙を製造するシステムは、独国特許発明第4042224A1号明細書で知られており、このシステムは、ループおよび紙製造機を有した再生紙処理装置を備える。再生紙処理装置は、パルパ、分離装置、浮遊したパルプからできるだけ工程用水を除去する濃縮ユニットおよび工程用水を浄化する工程用水処理ユニットを備える。ここで、パルパでは、再生紙が該パルパへ案内されるとともに、工程用水と混合され、これにより、古紙を再びパルプ状にする。また、分離装置は、パルパの下流に設けられるとともに、この装置内で不純物がパルパ内で製造される浮遊したパルプから分離される。次に、工程用水処理ユニットは、予浄化装置、嫌気性浄化ステージおよび好気性浄化ステージを備える。ここで、嫌気性浄化ステージは、例えば、UASBを備える。工程用水処理ユニットにおいて浄化された工程用水は、廃水として排出されるか、または他の実施例のように、再パルプ製造用の水として一部がパルパへ戻るように案内されるとともに、一部が紙製造機へ戻るように案内される。この場合、紙製造機からの白い水による部分流は、再生紙処理装置の工程用水処理ユニットを介して案内される工程用水へ加えられる。
【0007】
紙製造機および工程用水処理ユニットの工程用水循環路は、このシステム内で完全には互いに切り離されていなく、このために、紙製造機における工程用水の質および再生紙処理装置における工程用水の質を、効率的に、かつ互いに独立して制御することができない。前述の実施例における他の欠点は、循環路内で部分的に案内するために工程用水の硬度が高くなっており、この高い硬度が嫌気性のUASB反応装置の稼働を妨害する。微生物が嫌気性反応装置で使用されており、この微生物の機能では、工程用水から有機化合物を分解する際にガス分離機で形成されたバイオガスを分離するように、微生物が反応装置の頂部へ上昇することができる所定の特定の重量を備えることが重要である。ここで、バイオガスは、分解プロセスで形成されるとともに、微生物のペレットに付着する。バイオガスの分離後、この特定の重量は特に大きくなることはなく、微生物が浄化プロセスにこれ以上は関わらないので微生物ペレットが反応装置の底に落ちる。しかし、微生物の構造および大きさによって、微生物は石灰を沈殿させるための結晶体の核として作用し、これにより、石灰は、特定の硬度で、かつ対応するpH値で微生物ペレット上に沈殿する。沈殿物が、ペレットの特定の重量を無数に変化させるので、ペレットは、その機能を継承できない。また、嫌気性微生物の代謝作用によって、他の物質間における炭酸水素塩(HCO3-)の生成に起因する石灰/二酸化炭素の均衡における変化が生じ、これにより、微生物ペレット上の石灰の沈殿をさらに促進させる。ペレット上の石灰の沈殿にもかかわらず、微細ペレットの機能を保証するために、嫌気性反応装置内の再循環量は、微生物のより大きな特定の重量にもかかわらず、反応装置内に浮遊したペレットを維持するように増加されなければならない。しかし、再循環量は、分離器の水力学的な容量および反応装置の層流を維持する必要性に制限される。再循環量がより大きくなると、二酸化炭素が漏れ、これにより、再循環ラインにおけるポンプの負圧側および正圧側での圧力勾配が上がることに起因して石灰/二酸化炭素の均衡は石灰が沈殿するようにより変化する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、工程用水を処理するシステムおよび対応する方法を提供することである。ここで、工程用水は効率的に浄化され、特に、工程用水の硬度および質は、直接制御される。また、このシステムは、再生紙から紙を製造するシステムにおける工程用水のような高い硬度を備えた工程用水の処理に特に適している。処理された水は、石灰の沈殿現象による好気性反応装置における稼働の妨害が確実に防止されるように、特に浄化されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、請求項1のシステム、特に、少なくとも1つの工程用水処理ユニットを備えたシステムによって満足される。ここで、少なくとも1つの工程用水処理ユニットは、嫌気性微生物が混合される嫌気性反応装置および石灰除去ユニットを備える。
【0010】
少なくとも1つの工程用水処理ユニットが、嫌気性微生物が混合される嫌気性反応装置を備えているので、工程用水中に含まれる不純物、特に、有機的および生物学的な不純物が効率的に除去される。このような浄化によって、循環路内に案内されることによる不純物の濃縮を生じることなく、工程用水が完全または少なくともほぼ完全に循環路内で案内される。これにより、本発明に必要とされる新しい水を最小限に抑えることができる。工程用水処理ユニットは、嫌気性反応装置に加えて、石灰除去ユニットを備えているので、循環路内で案内される工程用水中の硬度は、嫌気性反応装置内に含まれる微生物を妨害する石灰が嫌気性反応装置内に沈殿しないようにより制御される。これにより、嫌気性反応装置の効率が最適化される。全体的に、本発明のシステムは、循環路内で工程用水を少なくともほぼ完全に案内するとともに、工程用水の質を効率的に制御することを可能にする。本発明のシステムにおける他の利点は、嫌気的に処理された工程用水が、例えば、処理ステージおよび水処理コンテナ内に存在するような好気性の環境において、生きられない、または相当の数が生きられない嫌気性の微生物で満たされ、これにより、好気性の微生物を含む反応装置を備えたシステムで生じるような、対応するシステムの部分における微生物の成長が確実に防止されるという事実によって理解できる。
【0011】
本発明の工程用水処理システムは、一般的に、工程用水が循環路内で案内されるシステムに統合されてもよい。特に、紙の製造では、工程用水は相当の量の不純物に汚染される。このため、本発明のシステムは、紙の製造において生じる工程用水の浄化に特に適している。ここで、工程用水は、新しい繊維から紙を製造するシステムから生じるものか、再生紙から紙を製造するシステムから生じるものか、に無関係である。
【0012】
この場合では、本発明のシステムは、少なくとも1つの工程用水処理ユニットに加えて、少なくとも1つの材料準備装置および/または少なくとも1つの紙製造機を備える。ここで、少なくとも1つの工程用水処理ユニットは、嫌気性微生物が混合される嫌気性反応装置および石灰除去ユニットを備えており、これらは、少なくとも1つの材料準備装置および/または少なくとも1つの紙製造機に対応している。
【0013】
特に、本発明のシステムが再生紙から紙を製造するシステムである場合に、システムは、再生紙から繊維材料を製造する材料準備装置および/またはパルプから紙を製造する紙製造機として、再生紙処理装置を備える。ここで、再生紙装置は、1つまたは複数のステージを備え、その少なくとも1つのステージおよび/または紙製造機は、専用の工程用水処理ユニットを備える。ここで、少なくとも1つの工程用水処理ユニットは、嫌気性微生物が混合される嫌気性反応装置および石灰除去ユニットを備える。特に、紙製造機と、再生紙処理装置のステージ即ちループ全てと、が嫌気性反応装置および石灰除去ユニットを備えた工程用水処理ユニットを有する場合に、工程用水の質即ち工程用水中に含まれた不純物の量は、各ループで個別に制御される。これにより、最適な水質管理が、再生紙から紙を製造する際に可能となる。
【0014】
システムで使用される再生紙およびシステム内に含まれる繊維を効率的に使用するために、少なくとも1つの工程用水処理ユニットに材料再生ユニットおよび/または材料除去ユニットを設けることが、本発明を実施するための最良の形態で提案されている。材料再生ユニットまたは材料除去ユニットが、カスケードのように直列の材料再生装置(例えば、スクリーンバリアを備えた装置)および微細浮上分離装置(即ち、圧力除去浮上分離装置)の組み合わせとして形成されると特によい結果が得られる。好ましくは、スプレ浮上分離として形成される第1のステージでは、有用な繊維が再生されており、材料除去部である第2のステージでは、微細な材料が工程用水から除去される。
【0015】
他の好ましい実施例では、少なくとも1つの工程用水処理ユニットは、濾過ユニットをさらに備えており、工程用水中に含まれた固体粒子を分離する。この濾過ユニットは、石灰除去ユニットおよび嫌気性反応装置の下流に配置されることが好ましい。
【0016】
石灰除去ユニットは、少なくとも1つの工程用水処理ユニットにおける嫌気性反応装置の上流または下流に一般的に配置される。質量輸送、即ち工程用水中の固体濃度が、嫌気性反応装置の上流より下流で低くなっているので、嫌気性反応装置の下流に石灰除去装置を配置すると有利である。これは、特に、グラフ用紙が製造される紙製造システムで有利である。対照的に、嫌気性反応装置の上流に石灰除去装置を配置することは、多くの繊維が工程用水中に含まれるとともに、材料の分離後に繊維を戻す場合の対応するシステムで特に有利である。好ましい実施例では、少なくとも1つの工程用水処理ユニットは、微細浮上分離装置または圧力除去浮上分離装置および/または材料除去ユニットとして形成された材料再生ユニットを備える。石灰除去ユニットは、少なくとも1つの工程用水処理ユニットに配置された嫌気性反応装置の処理部であることが好ましい。これは、石灰除去ユニットが、微細浮上分離装置または圧力除去浮上分離装置を備えた1つの装置に接続されるからである。
【0017】
少なくとも1つの工程用水処理ユニットの石灰除去ユニットが、圧力除去浮上分離装置である場合に、工程用水から不純物を除去すると非常に良い結果が特に得られる。圧力除去浮上分離では、処理される工程用水が、付加的なpH調整剤、例えば、ナトリウムのアルカリ液によって石灰の形成に適した中性またはアルカリ性のpHに最初に調整されることが好ましい。このとき、pHは、好ましくは、7〜10、特に好ましくは7〜9、さらに特に好ましくは7.5〜8.5である。任意選択的に、沈殿剤および/または凝集補助剤が石灰の形成を促進させるように工程用水に混合されてもよい。そして、圧力ガス、好ましくは圧縮空気がこのように生成された混合物に加えられ、この混合物は、加圧された後に、圧力除去浮上分離反応装置において膨張即ち減圧され、これにより、事前に加えられた圧力ガスが、ガス気泡として少なくとも大部分が水から泡立つとともに、上方へ流れる。ここで、ガス気泡は、工程用水中に含まれた石灰の綿状沈殿物を運び、この沈殿物は水から分離される。
【0018】
効率的に石灰を分離するために、加圧と膨張との間の圧力差が、少なくとも2バール、好ましくは少なくとも3バール、特に好ましくは少なくとも4バール、さらに特に好ましくは少なくとも5バールとなるように圧力除去浮上分離装置を形成することが、発明を実施するための最良の形態で提案されている。前述の圧力差が大きくなるほど、膨張中に生じるガス気泡は小さくなり、これにより、ガス気泡の面/体積比がより大きくなるので、石灰が多く分離される。
【0019】
圧力除去浮上分離装置は、沈殿装置および石灰分離装置を備えることが好ましい。沈殿装置では、pH調整剤、沈殿剤、凝集補助剤およびこれらの望ましい組み合わせの群から選択された物質を加えることによって、石灰が工程用水中に沈殿する。石灰分離装置では、沈殿した石灰が、工程用水から分離される。例えば、沈殿装置は、pH調整装置および沈殿剤および/または凝集補助剤用の供給ラインを備えており、石灰分離装置は、圧力ガス用の混合ユニット、工程用水中における物理的な圧力ガス溶液用のガス溶液反応装置および圧力除去浮上分離反応装置を備えることが好ましい。
【0020】
また、前述の実施例の代わりに、石灰の除去が、例えば、遠心分離器即ちサイクロンを使用した遠心力の手段によって、対応する沈殿の後に実施されてもよい。
【0021】
工程用水と、pH調整剤、沈殿剤、凝集補助剤およびこれらの望ましい組み合わせの群から選択された前述の物質と、の均一の混合物を達成するために、本発明のシステムは、前述の少なくとも1つの物質における均一の混合剤用の混合ユニットを備えることが好ましい。
【0022】
前述の実施例では、沈殿装置および石灰分離装置の両方が、嫌気性反応装置の下流に配置されてもよい。しかし、沈殿装置および石灰分離装置を嫌気性反応装置の上流にそれぞれ設ける、または沈殿装置を嫌気性反応装置の下流に設けるとともに、石灰分離装置を嫌気性反応装置の上流に設けることが同様に可能である。上述した場合では、部分流ラインは、嫌気性反応装置から沈殿装置へ通じており、沈殿装置を出た工程用水は、対応するラインを介して石灰分離装置へ案内される。ここで、バイパスラインは、嫌気性反応装置から沈殿装置をバイパスして濾過ユニットへ通じている。前述の実施例は、アッシュを含んでいないティッシュペーパを製造するシステムで特に有利である。前述の2つの実施例では、少なくとも石灰分離装置が、嫌気性反応装置の上流に配置されている。好ましくは圧力除去浮上分離装置として形成されるこの石灰分離装置は、好ましくは微細浮上分離装置として形成される材料再生ユニットおよび/または材料除去ユニット内に統合されてもよい。
【0023】
当業者に知られる嫌気性反応装置の全形式は、嫌気性微生物が混合される嫌気性反応装置として使用される。ここで、反応装置は、例えば、接触式スラッジ反応装置、UASB反応装置,EGSB反応装置、固定層反応装置および流動層反応装置である。ここで、UASB反応装置およびEGSB反応装置を用いた場合に、特に良い結果が得られる。予酸化反応装置が、嫌気性反応装置の前に接続されてもよく、これにより、工程用水は、この予酸化反応装置内で酸生成および/または加水分解された後に、嫌気性反応装置へ供給される。多糖、ポリペプチドおよび脂肪のようなポリマは、微生物から生じる細胞外酵素によって酵素の加水分解中に、糖、アミノ酸および脂肪酸のようなモノマに分解され、これらのモノマは、酸生成性微生物によって酸生成中に、有機酸、アルコール、アルデヒド、水素および二酸化炭素へ変化する。
【0024】
本発明では、システムの材料準備装置は、1つまたは複数のステージを備えており、1〜3つの材料準備ステージの場合に、良い結果が特に得られる。ここで、個々のステージは、デッカステージによって互いに切り離されていることが望ましい。材料準備装置は、2つの互いに切り離されたステージを備えることが好ましい。材料準備装置が再生紙処理装置として設計される、再生紙から紙を製造するシステムでは、1つまたは複数の材料準備ステージが、再生紙処理ステージとして形成される。
【0025】
材料準備装置のステージの個数に関係なく、本発明の別の好ましい実施例では、紙処理用のシステムにおいて、材料準備装置の少なくとも1つのステージおよび紙製造機の両方が、専用の工程用水処理ユニットを備える。ここで、個々の工程用水処理ユニットは、嫌気性反応装置および石灰除去ユニットを備える。
【0026】
材料準備装置のステージ全ておよび紙製造機が、専用の工程用水処理ユニットをそれぞれ備えることが、発明を実施するための最良の形態で提案されている。ここで、個々の工程用水処理ユニットは、嫌気性反応装置および石灰除去ユニットをそれぞれ備える。製造機および材料準備装置のステージ即ちループ全てが、嫌気性反応装置および石灰除去ユニットを有した工程用水処理ユニットを備えるので、工程用水の質即ち工程用水中に含まれた不純物の量が各ループで個別に制御される。これにより、最適な水質管理が紙の製造において可能となる。
【0027】
本発明のシステムは、廃水浄化装置を備えることがより好ましい。循環路内に案内される工程用水の一部は、この浄化装置を介して、浄化されてシステムから排出されるとともに、この排出された部分は新しい水で置き換えられる。
【0028】
ここで、廃水浄化装置は、材料除去ユニット、冷却ユニット、生物学的廃水処理ユニットおよびこれらの望ましい組み合わせから成る群から選択された1つまたは複数の装置を備えてもよい。
【0029】
前述の実施例では、廃水浄化装置から材料準備装置および/または紙製造機へ戻るように通じる部分流ラインが、システム内に設けられることが好ましい。本発明における他の主題は、工程用水の処理、特に、紙の製造における工程用水の処理用の方法であり、該方法は、少なくとも1つの工程用水処理ステップを備える。工程用水処理ステップへ連続的に供給される少なくとも工程用水の一部は、嫌気性微生物が混合される嫌気性反応装置における浄化ステップおよび石灰除去ステップを受ける。
【0030】
工程用水処理ステップへ連続的に供給される工程用水は、材料準備装置、例えば、再生紙処理装置および/または紙製造機から生じることが好ましい。
【0031】
工程用水が石灰除去ステップの圧力除去浮上分離ステップを受けることが、発明を実施するための最良の形態で提案されている。
【0032】
前述の実施例では、圧力除去浮上分離ステップにおける加圧と膨張との間の圧力差は、少なくとも2バール、特に好ましくは少なくとも3バール、さらに特に好ましくは少なくとも4バール、最も好ましくは少なくとも5バールであることが望ましい。
【0033】
本発明の方法は、前述された本発明のシステムで実施されることが好ましい。
【0034】
本発明は、有利な実施例を例示することによって以下に簡潔に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1に示されるシステムは、再生紙処理装置100と、該再生紙処理装置の下流に配置されるとともに、再生紙処理装置100に接続された紙製造機200と、を備える。ここで、再生紙処理装置100は、図1において一点鎖線の四角で示された互いに実質的に切り離された2つのステージ即ちループ101a,101bを備える。
【0036】
再生紙処理装置100の第1のステージ101aは、素材入口102、パルパ即ちパルプ製造エンジン105、分離装置110aおよびデッカユニット115aを備えており、これらは直列に配置されるとともに、各々が互いに接続されている。本発明では、パルパ即ちパルプ製造エンジン105は、図1に概略的に示されるような装置部を備える装置としてのみ理解すべきではなく、特に、複数の個別の装置部を備えた装置の組み合わせ、およびパルプ製造に必要な構成要素即ちユニットの全てを備えた装置の組み合わせとして、理解すべきである。同様のことが、図1に示される分離装置110a、デッカユニット115aおよび他の構成要素全てにあてはまる。
【0037】
パルプ製造エンジン105および分離装置110aは、ラインを介して廃棄物処理ユニット118aにそれぞれ接続される。
【0038】
再生紙処理装置100の第1のステージ101aは、工程用水処理ユニット116aをさらに備えており、システムの部分において生じた工程用水は、この処理ユニットを通って、廃棄物処理ユニット118a、分離装置110aおよびデッカユニット115aから対応するラインを介して供給される。ここで、分離装置110aは、直列の分離装置(図示せず)であってもよい。工程用水処理ユニット116aは、材料再生ユニット120a、嫌気性微生物が混合される嫌気性反応装置125a、石灰除去ユニット130aおよび濾過ユニット140aを備えており、これらは直列に配置されるとともに、互いに接続されている。リターンライン145aは、濾過ユニット140aからパルプ製造エンジン105へ戻るように通じている。材料再生ユニット120aに加えて、またはこれの代わりに、材料除去ユニット(図示せず)が、再生紙処理装置100内に設けられてもよい。
【0039】
第1のステージ101aと異なり、再生紙処理装置100の第2のステージ101bは、デッカユニット115aに接続された分離装置110b、酸化還元ユニット112およびデッカユニット115bを備えており、これらは直列に配置されるとともに、互いに接続されている。さらに、第2のステージ101bは、第1のステージ101aの工程用水処理ユニット116aと同様に形成された工程用水処理ユニット116bを備える。再生紙処理装置100の第2のステージ101bにおける濾過ユニット140bは、リターンライン145bを介して分離装置110bへ接続されるとともに、濾過ユニット140aから延びる部分流ライン170aを介して再生紙処理装置100の第1のステージ101aにおけるリターンライン145aへ接続される。分離装置110bおよび酸化還元ユニット112は、廃棄物処理ユニット118bに、対応するラインを介して接続されており、デッカユニット115bは、工程用水処理ユニット116bの材料再生ユニット120bに直接接続されている。さらに、ラインが、酸化還元ユニット112から材料再生ユニット120bへ通じている。
【0040】
紙製造機200は、遠心分離器202、微細分離装置204、紙製造機形成部206、紙製造機プレス部208および乾燥部210を備えており、これらは直列に配置されるとともに、互いに接続されている。遠心分離器202および微細分離装置204は、廃棄物処理ユニット212に接続されており、紙製造機形成部206および紙製造機プレス部208は、繊維再生ユニット214に接続されている。さらに、廃棄物処理ユニット212および繊維再生ユニット214は、対応するラインを介して工程用水処理ユニット216に接続される。工程用水処理ユニット216は、材料除去ユニット220、嫌気性微生物が混合される嫌気性反応装置225、石灰除去ユニット230および濾過ユニット240を備える。さらに、リターンライン270は、紙製造機200の濾過ユニット240から再生紙処理装置100の第2のステージ101bにおけるライン170へ通じている。繊維再生ユニット214および材料除去ユニット220は、例えば、微細浮上分離として形成される装置部分に接続されてもよい。
【0041】
さらに、新しい水ライン280が、紙製造機200の領域に設けられており、新しい水がこのラインを通って紙製造機へ供給される。ここで、新しい水供給ライン280は、紙製造機200の様々な位置、例えば、遠心分離器202へ向かう供給ラインおよび/または紙製造機形成部206および/または紙製造機プレス部208に開いてもよく、このために、新しい水供給ライン280の正確な位置は図1には示されていない。さらに、廃水ライン300が、システムに設けられており、廃水がこの廃水ラインを通ってシステムから排出される。廃水ライン300は、システムの様々な位置、例えば、ライン170に配置されてもよく、このために、廃水ライン300の正確な位置は、図1には示されていない。廃水ライン300は、機械的材料除去ユニット305に通じており、該除去ユニットの後に、冷却ユニット310および生物学的廃水浄化ユニット315が接続されている。ラインは、石灰除去ユニットおよび濾過ユニットを備えた生物学的廃水浄化ユニット315から公共水400、例えば、川に通じるが、この浄化ユニットの部分流は、必要であれば紙製造機またはパルプ処理部へ返されてもよい。
【0042】
システムの稼働時に、再生紙は、再生紙処理装置100の第1のステージ101aにおけるパルプ製造エンジン105へ素材入口102を介して連続的に案内される。ここで、再生紙は、リターンライン145aを介して供給される工程用水と混合されるとともに、繊維を再生するために細かく砕かれる。パルプ製造エンジン105において再生された繊維は、繊維浮遊物として分離装置110aへ連続的に案内されるとともに、パルプ製造エンジン105において生じ、かつ繊維の残留物を含む工程用水は、廃棄物処理ユニット118aへ最初に案内される。ここから、この工程用水は、廃棄物が分離された後に再生紙処理装置100の工程用水処理ユニット116aにおける材料再生ユニット120aへ案内される。分離装置110aでは、プラスチックホイルおよびプラスチック片の形態の粗い不純物などの、繊維より大きな軽いまたは重い異物が、繊維浮遊物から分離される。このとき、この分離は、例えば、スクリーンバリアによって、一般的には、複数の段階に分けて実施される。さらに、色素、インクおよび染料の粒子を除去する(脱インキング)ために、分離装置内で浮上分離が生じる。さらに、微細な材料およびアッシュは、材料洗浄で分離される。繊維浮遊物は、デッカユニット115aにおける工程用水処理によって凝縮される。ここで、デッカユニット115aは、分離装置110aの下流に配置されるとともに、好ましくはデッカフィルタおよび/またはねじプレスとして形成されており、繊維浮遊物は、凝縮された繊維浮遊物として再生紙処理装置100のデッカユニット115aから第2のステージ101bの分離装置110bへ移動する。分離装置110aにおいて生じた工程用水の一方の部分流は、廃棄物処理ユニット118aに案内されるとともに、分離装置110aにおいて生じた工程用水の他方の部分流は、第1のステージ101aのデッカユニット115aにおいて生じた工程用水とともに、対応するラインを介して再生紙処理装置100の第1のステージ101aにおける工程用水処理ユニット116aの材料再生ユニット120aへ直接案内される。ここで、パルプは、この再生ユニット内に含まれた工程用水から分離されるとともに、この分離された工程用水は、再び処理プロセスへ供給される。材料再生ユニット120aは、圧力除去浮上分離装置として設計されることが好ましい。
【0043】
これの代わりに、デッカユニット115aから除去された工程用水の部分流またはデッカユニット115aから除去された工程用水の全ては、パルプ製造エンジン105へ直接戻す、即ち工程用水処理ユニット116aをバイパスさせてもよい。特に、工程用水の固体濃度が低い、グラフ用紙の製造のような紙の製造では、材料再生ユニット120a,120bまたは材料除去ユニット122,220が省略されてもよい。
【0044】
図1に示されるシステムでは、廃棄物処理ユニット118aにおいて生じた工程用水は、材料再生ユニット120aへ案内される。しかし、これの代わりに、廃棄物処理ユニット118aにおいて生じた工程用水を、再生紙処理装置101aから廃水として排出させることが可能である。例えば、廃水ライン300を介して機械的材料除去ユニット305へ工程用水を案内し、冷却ユニット310および生物学的浄化ユニット315へ連続的に通過させることが可能である。
【0045】
パルプから分離された工程用水は、材料再生ユニット120aから嫌気性微生物が混合される嫌気性反応装置125aへ連続的に案内される。この反応装置では、化学的および生物学的な不純物は、工程用水中の嫌気性微生物の効果によって分解される。ここで、工程用水が酸生成および/または加水分解される、冷却ステージ(図示せず)および予酸性化反応装置(図示せず)が、工程用水を最適な温度範囲に調整するために、嫌気性反応装置125aより前に接続されてもよい。化学的および生物学的な不純物からこのように分離された工程用水は、嫌気性反応装置125aから石灰除去ユニット130aへ案内される。ここで、この除去ユニットは、下流に配置されるとともに、好ましくは圧力除去浮上分離装置として設計される。工程用水中に存在する炭酸塩および炭酸水素塩は、この石灰除去ユニット130aにおいて、石灰として大部分が沈殿するとともに、工程用水から除去される。さらに、いわゆる「突発の酸化(flash oxidation)」が、石灰除去ユニット130aにおいて生じる。この除去ユニットでは、嫌気性反応装置125a内で形成される微生物の最終生成物が、供給される溶融空気または空気の飽和によって酸化され、これにより、不純物の付加的な酸化による分解および/または工程用水中に含まれた材料の撹拌が生じるとともに、臭気の放出が大いに減少される。ここで、石灰の沈殿は、石灰/二酸化炭素の均衡を変化させることによって生じる。この石灰の沈殿は、最適な化学物質、特に、pH調整剤で調整することによって達成される。工程用水のpHは、調整剤によって、中性またはアルカリ性の値、好ましくは7〜10の値、特に好ましくは7〜9の値、さらに特に好ましくは7.5〜8.5の値に調整される。さらに、この目的のために、沈殿剤および/または凝集補助剤が工程用水に加えられてもよく、これにより、石灰の沈殿および効果的な分離に適した大きさの石灰綿状沈殿物の生成を容易にする。さらに、圧力ガス、例えば、圧縮空気が圧力除去浮上分離装置へ案内されるとともに、このように生成された混合物は、加圧された後に減圧される。これにより、圧力ガスは混合物から泡立ち、小さな泡となって装置の上方に流れる。これにより、固体、特に、石灰綿状沈殿物が運ばれるとともに、工程用水から分離される。このように石灰が取り除かれて浄化された工程用水は、石灰除去装置130aから濾過ユニット140aへ供給される。ここで、濾過ユニット140aは、例えば、工程用水から残留する特定の材料を除去するための砂式濾過ユニットとして形成される。さらに、脱塩装置(図示せず)が、濾過ユニット140aの後に接続されてもよい。
【0046】
再生紙処理装置100の第1のステージ101aにおける工程用水処理ユニット116aで浄化され、かつ石灰が取り除かれた工程用水は、リターンライン145aを介してパルパ即ちパルプ製造エンジン105へ返される。
【0047】
再生紙処理装置100の第1のステージ101aにおけるデッカユニット115aから排出された凝縮された繊維浮遊物は、分離ステージ110bへ移動し、ここから酸化還元ユニット112へ移動した後に、繊維浮遊物からできるだけ工程用水を除去するように第2のステージ101bのデッカユニット115bで凝縮される。再生紙処理装置100の第1のステージ101aと同様に、分離装置110bにおいて生じる工程用水および酸化還元ユニット112において生じる工程用水の一方の部分流は、廃棄物処理ユニット118bへ案内されるとともに、ここから生じた工程用水は、材料再生ユニット120bへ案内される。酸化還元ユニット112において生じた工程用水の他方の部分流およびデッカユニット115bにおいて生じた工程用水は、再生紙処理装置100の第2のステージ101bにおける工程用水処理ユニット116bの材料再生ユニット120bへ直接案内されるとともに、工程用水処理ユニット116bにおいて浄化され、かつ石灰が取り除かれる。このように処理された工程用水は、濾過ユニット140bからライン170およびリターンライン145bを介して分離装置へ返される。工程用水の余剰分は、部分流ライン170aを介して再生紙処理装置100の第1のステージ101aへ案内されるとともに、リターンライン145aを介してパルプ製造エンジン105へ案内される。
【0048】
紙製造機200では、デッカユニット115bから連続的に供給される凝縮されたパルプ浮遊物は、遠心分離器202、微細分離装置204、紙製造機形成部206、紙製造機プレス部208および乾燥部210の手段によって紙に加工される。ここで、遠心分離器202では、水より重いまたは軽い特定の重量の部分が分離される。システムの部分202,204において生じた工程用水は、廃棄物処理ユニット212へ案内されるとともに、システムの部分206,208において生じた工程用水は、繊維再生ユニット214へ案内される。廃棄物は、廃棄物処理ユニット212内で積層されており、紙製造機形成部206および紙製造機プレス部208から生じた工程用水は、繊維再生ユニット214において材料が予め分離されるとともに、繊維が工程用水から分離される。廃棄物処理ユニット212および繊維再生ユニット214において生じた工程用水は、紙製造機200の工程用水処理ユニット216へ連続的に案内されるとともに、材料除去ユニット220、嫌気性反応装置225、石灰除去ユニット230および濾過ユニット240を通って連続的に流れる。ここで、これらは、再生紙処理装置100の工程用水処理ユニット116a,116bにおける前述された対応するシステムの部分のように機能する。これの代わりに、廃棄物処理ユニット212において生じた工程用水が、廃水としてシステムから排出されるとともに、繊維再生ユニット214において生じた工程用水のみが、紙製造機200の工程用水処理ユニット216を通って連続的に案内されてもよい。濾過ユニット240から除去されるとともに、浄化されて石灰が取り除かれた工程用水は、リターンライン270および部分流ライン270bを介して紙製造機200の遠心分離器202へ大部分を戻るように案内されるとともに、余剰分の工程用水は、部分流ライン270aを介して再生紙処理装置100の第2のステージ101bにおける濾過ユニット140bから延びるライン170へ案内される。
【0049】
完全に閉じられた工程用水循環路は一般的に可能であるが、材料を長期間撹拌することによる濃縮が生じ、システムの効率を極端に損なう恐れがある。循環路内に案内される工程用水の量に比べて比較的少量の新しい水が、新しい水ライン280を介してプロセス、特に紙製造機200に供給される。対応する量の工程用水が、廃水ライン300を介してプロセスから除去されるとともに、材料除去ユニット305、冷却ユニット310および生物学的廃水浄化ユニット315を介して浄化され、この後に、この流れは廃水として公共水400へ排出される。ここで、生物学的廃水浄化ユニット315は、石灰除去ユニットおよび/または濾過ユニットを備えてもよい。さらに、上述したように廃棄物処理ユニット118a,118b,212から任意選択的に排出された工程用水は、廃水ライン300を介してプロセスから除去されるとともに、材料除去ユニット305、冷却ユニット310および生物学的廃水浄化ユニット315を介して浄化されてもよい。
【0050】
図1に示される石灰除去ユニット130a、130b、230の構成は、グラフ用紙の製造に特に好ましい。これは、質量輸送即ち工程用水中の固体濃度が比較的小さいからである。
【0051】
図1に示される実施例は、再生紙から紙を製造するシステムである。ここで、図1に示されるパルプ製造エンジン105、分離装置110a,110b、デッカユニット115a,115b、酸化還元ユニット112、遠心分離器202、微細分離装置204、紙製造機形成部206および紙製造機プレス部208は、概略的に示されているが、紙製造システムの詳細までは再現していない。例えば、2つの分離装置110a,110bの一方または両方が、複数のステージで形成され、かつ連続的に複数の分離装置を備えてもよい。
【0052】
本発明のシステムは、新しい繊維から紙を製造するシステムまたは他の所望なシステムであってもよい。この他の所望なシステムでは、少なくとも1つの工程用水処理ユニットが設けられており、該少なくとも1つの工程用水処理ユニットは、嫌気性微生物が混合された嫌気性反応装置および石灰除去ユニットを備える。上述の場合では、図1に示されるパルプ製造エンジン105、分離装置110a,110b、デッカユニット115a,115b、酸化還元ユニット112、遠心分離器202、微細分離装置204、紙製造機形成部206および紙製造機プレス部208は、対応する他の装置または装置部に置き換えられている。
【0053】
図1では、システムは、2つのステージから成るパルプ処理部を備える。特に、複数の層から成る紙を製造するために、2つ以上の材料準備ステージを並列させて設けることが当然可能である。
【0054】
図2では、再生紙処理装置のステージ101aにおける概略図が示されており、該ステージ101aは、本発明の第2の実施例における工程用水処理ユニット116aを備えている。ここで、ステージ101aは、図1に示されるシステムの再生紙処理装置100における第1のステージ101aの対応する工程用水処理ユニット116aに置き換わっている。また、これの代わりに、図1に示されるシステムの工程用水処理ユニット116a、116b、216の全てを、図2に示される工程用水処理ユニット116aにそれぞれ置き換えることが可能である。
【0055】
図1に示される工程用水処理ユニット116aと対照的に、図2に示されるステージ101aは、材料再生ユニット120aに加えて、材料再生ユニット120aと嫌気性反応装置125aとの間に配置された材料除去ユニット122を備える。リターンライン124は、材料再生ユニット120からパルプ製造エンジン105へ通じている。
【0056】
図1に示される実施例との他の相違は、図2に示されるステージ101aは、廃棄物処理ユニット118aを備えていないことである。しかし、これの代わりに、廃棄物処理ユニット(図示せず)が、図2に示される実施例に設けられてもよい。パルプ製造エンジン105において生じた工程用水および分離装置110aにおいて生じた工程用水の部分流は、この処理ユニットを通って対応するラインを介して供給される。処理ユニットから除去された工程用水は、材料再生ユニット120aへ案内されるか、または廃水としてシステムから除去される。
【0057】
さらに、沈殿装置135が、工程用水処理ユニット116aにおける嫌気性反応装置125aの下流に設けられるとともに、2つの供給ライン136,137を備える。ナトリウムのアルカリ液のようなpH調整剤、ポリ塩化アルミニウムのような沈殿剤および/またはポリアクリルアミドのような凝集補助剤が、これらの供給ラインを介して供給される。バイパスライン139は、嫌気性反応装置125aから沈殿装置135をバイパスして濾過ユニット140aへ通じるとともに、沈殿装置135へ部分流ライン126を案内する。部分流リターンライン138は、沈殿装置135から材料除去ユニット122へ通じている。
【0058】
図2に示されるステージ101aの稼働中に、パルプ製造エンジン105、分離装置110aおよびデッカユニット115aにおいて連続的に生じた工程用水は、材料再生ユニット120aへ案内され、ここから材料除去ユニット122へ案内される。より粗い繊維が、材料再生ユニット120aで維持されるとともに、リターンライン124を介してパルプ製造エンジンへ戻すように案内される。材料再生ユニット120aにおいて生じた工程用水は、材料除去ユニット122へ案内される。ここで、再生ユニット120aでは、微細な有機および/または無機の特定の材料が、工程用水から分離される。工程用水は、材料除去ユニット122から嫌気性反応装置125aへ連続的に案内される。嫌気性反応装置125aから出る少なくとも50%の工程用水から成る主流は、バイパスライン139を介して濾過ユニット140aへ案内され、ここから、リターンライン145aを介してパルプ製造エンジン105へ案内される。嫌気性反応装置125aから出る50%未満の工程用水から成る他方の部分流は、部分流ライン126を介して石灰沈殿装置135へ案内される。ここで、pH調整剤および沈殿剤および/または凝集補助剤が、供給ライン136,137を介してこの沈殿装置に供給され、これにより、工程用水中に石灰を沈殿させる。石灰沈殿装置135を出た工程用水の部分流は、部分流リターンライン138を介して微細浮上分離ユニットとして設計された材料除去ユニット122へ戻るように案内される。ここで、除去ユニット122では、沈殿した石灰が、工程用水から分離される。
【0059】
この実施例は、再生紙からティッシュペーパを製造するのに特に適している。
【0060】
図2に示される実施例では、再生紙処理システムについて説明したが、当然のことながら、図2に示される工程用水処理ユニット116aが、新しい繊維から紙を製造するシステムまたは少なくとも1つの工程用水処理ユニットを備えた他の所望なシステム内に設けられてもよい。
【0061】
図3では、再生紙処理装置のステージ101aにおける概略図が示されており、該ステージ101aは、本発明の第3の実施例における工程用水処理ユニット116aを備えている。ここで、ステージ101aは、図1に示されるシステムの再生紙処理装置100における第1のステージ101aの対応する工程用水処理ユニット116aに置き換わっている。また、これの代わりに、図1に示されるシステムの工程用水処理ユニット116a、116b、216の全てを、図3に示される工程用水処理ユニット116aにそれぞれ置き換えることが可能である。
【0062】
図3に示される工程用水処理ユニット116aでは、沈殿装置135が、材料再生ユニット120aの上流に設けられるとともに、2つの供給ライン136,137を備える。ナトリウムのアルカリ液のようなpH調整剤、ポリ塩化アルミニウムのような沈殿剤および/またはポリアクリルアミドのような凝集補助剤が、これらの供給ラインを介して沈殿装置135へ供給される。また、これの代わりに、図1に示される実施例において説明された廃棄物処理ユニット(図示せず)が、この実施例に設けられてもよい。
【0063】
この工程用水処理ユニット116aの稼働中に、パルプ製造エンジン105、分離装置110aおよびデッカユニット115aにおいて生じた工程用水は、沈殿装置135へ連続的に案内される。ここで、沈殿装置135では、工程用水中に含まれる炭酸塩および炭酸水素塩が、工程用水中に石灰として沈殿する。この沈殿は、pH調整剤、沈殿剤および/または凝集補助剤を加えて、対応する沈殿条件を調整することによって生じる。このように生成された混合物は、圧力除去浮上分離装置として設計された材料再生ユニット120aへ案内される。ここで、再生ユニット120aでは、工程用水中に含まれた繊維および石灰綿状沈殿物が分離される。材料再生ユニット120aは、石灰分離ユニットとして連続的かつ同時に機能する。
【0064】
石灰および繊維に分離された後に、工程用水は、嫌気性反応装置125aおよび濾過ユニット140aを通って流れ、この後、リターンライン145aを介して材料再生ユニット120a,120bおよび/または材料除去ユニット(図示せず)へ戻すように案内される。
【0065】
したがって、図1に示されるシステムに有利である石灰除去ユニットが、図3に示される工程用水処理ユニット116aにおいてパルプ製造エンジン105と組み合わされる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施例における再生紙から紙を製造するシステムの概略図である。
【図2】本発明の第2の実施例における材料準備装置のステージを示す概略図である。
【図3】本発明の第3の実施例における材料準備装置のステージを示す概略図である。
【符号の説明】
【0067】
100・・・材料/再生紙処理装置
101a・・・材料/再生紙処理装置における第1のステージ
101b・・・材料/再生紙処理装置における第2のステージ
102・・・素材入口
105・・・パルパ/パルプ製造エンジン
110a・・・分離装置
110b・・・分離装置
112・・・酸化ユニット/還元ユニット
115a・・・デッカユニット
115b・・・デッカユニット
116a・・・材料/再生紙処理装置の工程用水処理ユニット
116b・・・材料/再生紙処理装置の工程用水処理ユニット
118a・・・廃棄物処理ユニット
118b・・・廃棄物処理ユニット
120a・・・材料再生ユニット
120b・・・材料再生ユニット
122・・・材料除去ユニット
124・・・リターンライン
125a・・・嫌気性反応装置
125b・・・嫌気性反応装置
126・・・部分流ライン
130a・・・石灰除去ユニット
130b・・・石灰除去ユニット
135・・・石灰沈殿装置
136・・・pH調整剤用供給ライン
137・・・沈殿剤/凝集補助剤用の供給ライン
138・・・部分流リターンライン
139・・・バイパスライン
140a・・・濾過ユニット
140b・・・濾過ユニット
145a・・・リターンライン
145b・・・リターンライン
170・・・ライン
170a・・・部分流ライン
200・・・紙製造機
202・・・遠心分離器
204・・・微細分離装置
206・・・紙製造機形成部
208・・・紙製造機プレス部
210・・・乾燥部
212・・・廃棄物処理ユニット
214・・・繊維再生ユニット
216・・・紙製造機の工程用水処理ユニット
220・・・材料除去ユニット
225・・・嫌気性反応装置
230・・・石灰除去ユニット
240・・・濾過ユニット
270・・・リターンライン
270a・・・部分流ライン
270b・・・部分流ライン
280・・・新しい水供給ライン
300・・・廃水ライン
305・・・機械的材料除去ユニット
310・・・冷却ユニット
315・・・生物学的廃水浄化ユニット
400・・・公共水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環路内で案内される工程用水の処理、特に、紙の製造における工程用水の処理方法であって、
少なくとも1つの工程用水処理ステップを含み、該工程用水処理ステップへ連続的に供給された前記工程用水の少なくとも一部は、嫌気性微生物が混合される嫌気性反応装置(125a,125b,225)における浄化ステップおよび石灰除去ステップを受けるとともに、前記工程用水が、前記石灰除去ステップにおける圧力除去浮上分離(気泡分離)ステップを受けることを特徴とする工程用水処理用の方法。
【請求項2】
前記工程用水処理ステップへ連続的に供給される前記工程用水が、材料準備装置(100)および/または紙製造機(200)から生じることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程用水処理ステップへ連続的に供給される前記工程用水が、再生紙処理装置(100)の少なくとも1つのステージおよび/または紙製造機(200)から生じることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧力除去浮上分離ステップにおける加圧と膨張との間の圧力差は、少なくとも2バール、好ましくは少なくとも3バール、特に好ましくは少なくとも4バール、さらに特に好ましくは少なくとも5バールであることを特徴する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの工程用水処理ユニット(116a,116b,216)を備えたシステムにおいて実施されるとともに、前記少なくとも1つの工程用水処理ユニット(116a,116b,216)が、前記嫌気性微生物が混合される嫌気性反応装置(125a,125b,225)および石灰除去ユニット(130a,130b,230)を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記システムが、少なくとも1つの材料準備装置(100)および/または少なくとも1つの紙製造機(200)を備えており、前記少なくとも1つの工程用水処理ユニット(116a,116b,216)が、前記少なくとも1つの材料準備装置(100)および/または前記少なくとも1つの紙製造機(200)に対応する前記嫌気性微生物が混合される前記嫌気性反応装置(125a,125b,225)および前記石灰除去ユニット(130a,130b,230)を備えることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記システムが、前記材料準備装置(100)として前記再生紙からパルプを製造する再生紙処理装置(100)および/または前記パルプから紙を製造する前記紙製造機(200)を備えており、前記再生紙処理装置(100)が、1つまたは複数のステージ(101a,101b)を備え、その少なくとも1つのステージ(101a,101b)および/または前記紙製造機(200)が、専用の工程用水処理ユニット(116a,116b,216)を備えるとともに、この少なくとも1つの前記工程用水処理ユニット(116a,116b,216)が、前記嫌気性微生物が混合される前記嫌気性反応装置(125a,125b,225)および前記石灰除去ユニット(130a,130b,230)を備えることを特徴とする請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの工程用水処理ユニット(116a,116b,216)が、材料再生ユニット(120a,120b,220)および/または材料除去ユニット(122)をさらに備えることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの工程用水処理ユニット(116a,116b,216)が、前記石灰除去ユニット(130a,130b,230)および前記嫌気性反応装置(125a,125b,225)の下流に配置された濾過ユニット(140a,140b,240)をさらに備えることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記石灰除去ユニット(130a,130b,230)が、前記システムの前記少なくとも1つの工程用水処理ユニット(116a,116b,216)における前記嫌気性反応装置(125a,125b,225)の上流に配置されることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記石灰除去ユニット(130a,130b,230)が、前記システムの前記少なくとも1つの工程用水処理ユニット(116a,116b,216)における前記嫌気性反応装置(125a,125b,225)の下流に配置されることを特徴とする請求項5〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記システムの前記石灰除去ユニット(130a,130b,230)が、圧力除去浮上分離装置であることを特徴とする請求項5〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記圧力除去浮上分離装置は、加圧と膨張との間の圧力差が、少なくとも2バール、好ましくは少なくとも3バール、特に好ましくは少なくとも4バール、さらに特に好ましくは少なくとも5バールとなるように形成されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記圧力除去浮上分離装置が、沈殿装置(135)および石灰分離装置を備えており、前記沈殿装置において、pH調整剤、沈殿剤、凝集補助剤およびこれらの望ましい組み合わせを含む群から選択された物質を加えることによって、石灰が工程用水中に沈殿するとともに、前記石灰分離装置において、前記沈殿した石灰が前記工程用水から分離されることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記システムが、pH調整剤、沈殿剤、凝集補助剤およびこれらの望ましい組み合わせを含む群から選択された物質を前記工程用水へ均一に混合するための混合ユニットを備えることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記沈殿装置(135)および前記石灰分離装置が、前記嫌気性反応装置(125a,125b,225)の下流または上流にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記沈殿装置(135)が、前記嫌気性反応装置(125a,125b,225)の下流に配置されるとともに、前記石灰分離装置が、前記嫌気性反応装置(125a,125b,225)の上流に配置されており、部分流ライン(126)が、前記嫌気性反応装置(125a,125b,225)から前記沈殿装置(135)へ通じ、該沈殿装置(135)を出た工程用水がライン(138)を通して前記石灰分離装置へ案内されるとともに、バイパスライン(139)が、前記嫌気性反応装置(125a,125b,225)から前記沈殿装置(135)をバイパスして前記濾過ユニット(140a)へ通じることを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
【請求項18】
前記石灰分離装置が、材料再生ユニット(120a,120b,220)および/または材料除去ユニット(122)として同時に設計されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記材料準備ユニット(100)が、1〜3つのステージ(101a,101b)、特に好ましくは、デッカステージ(115a)によって互いに切り離された2つのステージ(101a,101b)を備えることを特徴とする請求項5〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記材料準備装置(100)の少なくとも1つの前記ステージ(101a,101b)および前記紙製造機(200)が、専用の工程用水処理ユニット(116a,116b,216)をそれぞれ含んでおり、該工程用水処理ユニット(116a,116b,216)が、前記嫌気性反応装置(125a,125b,225)および前記石灰除去ユニット(130a,130b,230)をそれぞれ備えることを特徴とする請求項5〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記材料準備装置(100)の前記ステージ(101a,101b)全ておよび前記紙製造機(200)が、専用の工程用水処理ユニット(116a,116b,216)をそれぞれ備えており、前記工程用水処理ユニット(116a,116b,216)が前記嫌気性反応装置(125a,125b,225)および前記石灰除去ユニット(130a,130b,230)をそれぞれ備えることを特徴とする請求項5〜20に記載の方法。
【請求項22】
前記システムが、廃水浄化装置を備えており、前記工程用水の一部が、該廃水浄化装置を通って浄化されるとともに、前記システムから排出されることを特徴とする請求項5〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
部分流ラインが、前記廃水浄化装置から前記材料準備装置(100)および/または前記紙製造機(200)へ戻るように通じることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記廃水装置が、材料除去ユニット(305)、冷却ユニット(310)、生物学的廃水処理ユニット(315)およびこれらの望ましい組み合わせを含む群から選択された1つまたは複数の装置を備えることを特徴とする請求項22または23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−520887(P2009−520887A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546260(P2008−546260)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012355
【国際公開番号】WO2007/076943
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(507121297)メリ エントゾルグングステヒニック フューア ディ パピーアインドゥストリー ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】