説明

帯電ロール及び画像形成装置

【課題】本発明は、帯電ロールの帯電不良が発生する前に、帯電ロールの寿命を把握することを課題とする。
【解決手段】帯電ロール14は、導電性の芯材14Aの周囲にゴム層14B、最表面層14Cが形成されている。帯電ロール14の軸方向端部には、表面薄層部151を有する。表面薄層部151の下層には、ゴム層14Bからが突出部150が突出している。帯電ロール14の最表面層14Cの磨耗が進み、突出部150が最表面に現れると、その部分では感光体ドラム12の表面が帯電せず、一定周期のトナーパッチが形成された後、検出部によって帯電ロール14の寿命が検知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用した複写機やプリンタ等の画像形成装置に関し、特に、回転駆動される像担持体の表面を帯電させる帯電ロールと、この帯電ロールのクリーニング部材とを有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
接触帯電方式の帯電装置では、帯電ロールが像担持体に常時、接触または極近接しているため、帯電ロール表面に異物の付着による汚れが発生しやすいという問題がある。画像形成動作を繰り返し行う像担持体の表面は、転写工程の下流側において、転写後の残留トナー等の異物除去を行うクリーニング工程を経た後、帯電工程のエリアへと進入してくるが、クリーニング工程を経てもトナーの一部やトナーの外添剤など、トナーよりも微小な粒子がクリーニングされずに像担持体上に残留し、帯電ロールの表面へと付着してしまう。帯電ロールの表面に付着した異物は、帯電ロールの表面抵抗値にムラを生じさせ、異常放電や不安定な放電となり帯電均一性を悪化させてしまう。
【0003】
このような問題を改善させるための技術として、帯電ロールの表面に板状のブラシやスポンジを当接させ、帯電ロールの表面汚れを掻き落とすようなクリーニング方式が提案されている。また、ロール状のクリーニング部材を帯電ロールの表面に当接させるクリーニング方式も提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このようなクリーニング方式は、帯電ロールと当接するクリーニング部材の表面に異物が徐々に堆積していき、目詰まりによってクリーニング性能が低下してしまうという欠点がある。
【0004】
一方、帯電ロールに堆積した異物を除去するために、ポリエステルやスチレン系の研磨材料を用いた研磨ロールを帯電ロールに当接させ、帯電ロール表面を研磨する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、研磨紙を帯電ロールに当接させ、研磨紙の硬度をトナーおよび帯電ロールの硬度より大きくすることにより、帯電ロール表面を研磨する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−62948号公報
【特許文献2】特開平7−191525号公報
【特許文献3】特開平7−128958号公報
【0005】
しかし、特許文献2,3に記載の構成は、帯電ロールの最表面層はポリエステル系の樹脂やナイロン系の樹脂を数μm程度塗布した薄層であり、表面を削って清浄化するクリーニング方式のため、環境変動や出力モード等の相異により研磨性が高くなってしまう。このような場合、通常、感光体サイクル数やプリント枚数で管理されている画像形成ユニットの寿命以前に、最表面層が削れきって帯電不良をおこし画像中にディフェクトが発生してしまう。このように警告無しで突然プリント画像中にディフェクトが発生してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、帯電不良が発生する前に帯電ロールの寿命を把握することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、画像形成装置に配置され、画像を担持する像担持体を帯電すると共に、クリーニング部材によってクリーニングされる帯電ロールであって、芯材と、前記芯材の周りに設けられた導電性層と、を備え、前記導電性層が前記クリーニング部材と当接する範囲で前記導電性層の軸方向の端部が、他の前記導電性層より薄い表面薄層部とされたことを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明では、導電性層の表面薄層部がクリーニング部材で削られると、芯材が露出する。芯材と導電性層は、物理的特性が異なるため、表面薄層部での物理的特性の変化を捉えることで、他の導電性層が磨耗して削られる前に、帯電ロールの寿命を知ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、前記導電性層が、前記芯材の周りに設けられた第1導電性層と、前記第1導電性層の周りに設けられ、該第1導電性層と物理的特性が異なる第2導電性層と、で構成され、前記第1導電性層に突出部を形成し前記第2導電性層の軸方向の端部に前記表面薄層部を形成したことを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明では、第1導電性層には突出部が形成されており、突出部の上面に形成される第2導電性層の軸方向の端部に表面薄層部が形成される。第2導電性層の表面薄層部が削られると、突出部が露出する。この突出部は、第1導電性層で形成され、第2導電性層と物理的特性が異なるため、この物理的特性の変化を捉えることで、帯電ロールの寿命を知ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記物理的特性が異なるとは、前記芯材又は前記第1導電性層の電気抵抗値が、前記導電性層又は前記第2導電性層の電気抵抗値より低いことであることを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明では、表面薄層部での電気抵抗値の変化を捉えることで、帯電ロールの寿命を知ることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記物理的特性が異なるとは、前記芯材又は前記第1導電性層の表面反射率と前記導電性層又は前記第2導電性層の表面反射率が相違することであることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明では、表面薄層部での表面反射率の変化を光学的に捉えることで、帯電ロールの寿命を知ることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記表面薄層部は、前記像担持体の画像形成領域外に位置し、トナーによる現像領域内に位置することを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明では、表面薄層部が削られると、芯材又は第1導電性層が露出して、その部分が未帯電部分となり、現像領域内で像担持体上にトナー像が形成される。このトナー像を検出することで、帯電ロールの寿命を知ることができる。また、このトナー像は、画像形成領域外に現れるので、実際のプリント用紙には転写されない。従って、帯電ロールの寿命が近いことをユーザーに知らせながら、通常のプリントジョブを実行できる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記表面薄層部は、前記像担持体の画像形成領域内に位置することを特徴としている。
【0018】
請求項6に記載の発明では、表面薄層部が削られると、芯材又は第1導電性層が露出して、その部分が未帯電部分となり、現像領域内で像担持体上にトナー像が形成される。このトナー像は、用紙に転写されるため、プリントアウトされた用紙を通じて帯電ロールの寿命が近いことをユーザーに知らせることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、前記突出部は、前記芯材又は前記第1導電性層の周面に一定の間隔で形成されたことを特徴としている。
【0020】
請求項7に記載の発明では、突出部を周方向に一定の間隔で形成することで、像担持体に一定の周期でトナーパッチが形成される。
【0021】
請求項8に記載の発明は、前記突出部は、前記芯材又は前記第1導電性層の周面に沿って連続して形成されたことを特徴としている。
【0022】
請求項8に記載の発明では、突出部を周方向に連続して形成することで、像担持体の周方向に沿ってトナーバンドが形成される。
【0023】
請求項9に記載の発明は、前記芯材又は前記第1導電性層の表面粗さが、前記導電性層又は前記第2導電性層の表面粗さより大きいことであることを特徴としている。
【0024】
請求項9に記載の発明では、表面薄層部が削られると、芯材又は第1導電性層が露出する。この芯材又は第1導電性層の表面粗さは、導電性層又は第2導電性層の表面粗さより大きい。このため、帯電ロールは安定した状態で像担持体に従動回動する。
【0025】
請求項10に記載の発明は、前記表面薄層部の厚さは、前記導電性層又は第2導電性層の厚さより、50%以上90%以下であることを特徴としている。
【0026】
請求項10に記載の発明では、厚さが50%以下であると、表面薄層部が削れる前に帯電電位に影響を与え、厚さが90%以上であると、磨耗のばらつきで表面薄層部より他の導電性層又は第2導電性層が先に削れ帯電不良が発生する。
【0027】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜請求項10に記載の何れかの帯電ロールを備えた画像形成装置であって、前記クリーニング部材との接触によって前記表面薄層部が削られることによって露出する前記芯材或いは前記第1導電性層を検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果に基づき、前記帯電ロールが寿命であることを知らせる警告手段と、有することを特徴としている。
【0028】
請求項11に記載の発明では、表面薄層部が削られ、芯材又は第1導電性層が露出すると、検知手段が、この芯材又は第1導電性層を検知する。この検知結果に基づき、警告手段が、帯電ロールが寿命であることをユーザーに知らせる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、帯電ロールとクリーニング部材の接触によって、帯電ロール表面が磨耗することによって生じる帯電不良が発生する前に、帯電ロールの寿命を把握し、部材の交換を速やかに促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の画像形成装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1には、第1実施形態に係る4サイクル方式のフルカラーの画像形成装置10が示されている。この画像形成装置10の内部には、中央よりもやや右上部に、感光体ドラム12が回転可能に配設されている。この感光体ドラム12としては、例えば、表面にOPC等よりなる感光体層が被覆された直径が約47mmの導電性円筒体からなるものが用いられ、図示しないモータにより、矢印方向に沿って約150mm/secのプロセススピードで回転駆動される。
【0032】
感光体ドラム12の表面は、感光体ドラム12の略真下に配置された帯電ロール14によって所定の電位に帯電された後、帯電ロール14の下方に配置された露光装置16によって、レーザービームLBによる画像露光が施され、画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0033】
この感光体ドラム12上に形成された静電潜像は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の現像器18Y、18M、18C、18Kが周方向に沿って配置された回転式現像器18によって現像され、所定の色のトナー像となる。
【0034】
このとき、感光体ドラム12の表面には、形成する画像の色に応じて、帯電・露光・現像の各工程が、所定回数だけ繰り返される。現像工程では回転式現像器18が回転し、対応する色の現像器18Y、18M、18C、18Kが、感光体ドラム12と対向する現像位置に移動する。
【0035】
例えば、フルカラーの画像を形成する場合、感光体ドラム12の表面には、帯電・露光・現像の各工程が、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色に対応して4回繰り返され、感光体ドラム12の表面には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色に対応したトナー像が順次形成される。トナー像が形成されるにあたって、感光体ドラム12が回転する回数は、画像のサイズに応じて異なるが、例えば、A4サイズであれば、感光体ドラム12が3回転することによって、1つの画像が形成される。つまり、感光体ドラム12の表面には、感光体ドラム12が3回転するごとに、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色に対応したトナー像が形成される。
【0036】
感光体ドラム12上に順次形成されるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色のトナー像は、感光体ドラム12の外周に中間転写ベルト20が巻き付けられた一次転写位置において、中間転写ベルト20上に互いに重ね合わせた状態で一次転写ロール22によって転写される。
【0037】
この中間転写ベルト20上に多重に転写されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像は、所定のタイミングで給紙される記録用紙24上に、二次転写ロール26によって一括して転写される。
【0038】
一方、記録用紙24は、画像形成装置10の下部に配置された給紙カセット28から、ピックアップロール30によって送り出されるとともに、フィードロール32及びリタードロール34によって1枚ずつ捌かれた状態で給紙され、レジストロール36によって中間転写ベルト20上に転写されたトナー像と同期した状態で、中間転写ベルト20の二次転写位置へと搬送される。
【0039】
中間転写ベルト20は、感光体ドラム12における回動方向の上流側にて中間転写ベルト20のラップ位置を特定するラップインロール38と、感光体ドラム12上に形成されたトナー像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール22と、ラップ位置の下流側にて中間転写ベルト20のラップ位置を特定するラップアウトロール40と、二次転写ロール26に中間転写ベルト20を介して当接するバックアップロール42と、中間転写ベルト20のクリーニング装置44に対向する第1のクリーニングバックアップロール46と、第2のクリーニングバックアップロール48と、によって所定の張力で張架されており、所定のプロセススピード(約150mm/sec)で循環移動するように、例えば、感光体ドラム12の回転に伴って従動される。
【0040】
ここで、中間転写ベルト20は、画像形成装置10の小型化を図るため、中間転写ベルト20が張架される断面形状が、偏平な細長い略台形状となるように構成されている。
【0041】
中間転写ベルト20は、感光体ドラム12と、帯電ロール14と、中間転写ベルト20と、中間転写ベルト20を張架する複数のロール22、38、40、42、46、48と、中間転写ベルト20用のクリーニング装置44と、後述する感光体ドラム12用のクリーニング装置78と、で一体的に像形成ユニット52を構成している。このため、画像形成装置10の上部カバー54を開き、像形成ユニット52の上部に設けられた把手(図示省略)を手で持ち上げることにより、像形成ユニット52全体を画像形成装置10から取り外し可能となっている。
【0042】
一方、中間転写ベルト20のクリーニング装置44は、第1のクリーニングバックアップロール46によって張架された中間転写ベルト20の表面に当接するように配置されたスクレーパ58と、第2のクリーニングバックアップロール48によって張架された中間転写ベルト20の表面に圧接するように配置されたクリーニングブラシ60とを備え、これらのスクレーパ58やクリーニングブラシ60によって除去された残留トナーや紙粉などは、クリーニング装置44の内部に回収されるようになっている。
【0043】
なお、クリーニング装置44は、揺動軸62を中心にして、図中反時計周り方向に揺動可能に配置されており、最終色のトナー像の二次転写が終了するまでは、中間転写ベルト20の表面から離間した位置に退避するとともに、最終色のトナー像の二次転写が終了すると、中間転写ベルト20の表面に当接するように構成されている。
【0044】
さらに、中間転写ベルト20からトナー像が転写された記録用紙24は、定着装置64へと搬送され、この定着装置64によって加熱及び加圧されてトナー像が記録用紙24上に定着される。その後、片面プリントの場合には、トナー像が定着された記録用紙24は、排出ロール66によって画像形成装置10の上部に設けられた排出トレイ68上にそのまま排出される。
【0045】
―方、両面プリントの場合には、定着装置64により第一面(表面)にトナー像が定着された記録用紙24を、排出ロール66によって排出トレイ68上にそのまま排出せずに、排出ロール66によって記録用紙24の後端部を狭持した状態で、排出ロール66を逆転させるとともに、記録用紙24の搬送径路を両面用の用紙搬送路70に切り替え、この両面用の用紙搬送路70に配設された搬送ロール72によって、記録用紙24の表裏を反転した状態で、再度、中間転写ベルト20の二次転写位置へ搬送して、記録用紙24の第二面(裏面)にトナー像を転写する。そして、記録用紙24の第二面(裏面)のトナー像を定着装置64によって定着させ、記録媒体24を排出トレイ68上に排出する。
【0046】
さらに、画像形成装置10には、オプションによって、画像形成装置10の側面に手差しトレイ74が開閉自在に装着可能となっている。この手差しトレイ74上に載置された任意のサイズ及び種類の記録用紙24は、給紙ロール76によって給紙され、搬送ロール73及びレジストロール36を介して、中間転写ベルト20の二次転写位置へ搬送されることにより、任意のサイズ及び種類の記録用紙24にも画像を形成することが可能となっている。
【0047】
なお、トナー像の転写工程が終了した後の感光体ドラム12の表面は、感光体ドラム12が1回転する毎に、感光体ドラム12の斜め下方に配置されたクリーニング装置78のクリーニングブレード80によって、残留トナーや紙粉などが除去され、次の画像形成工程に備えるようになっている。
【0048】
図2に示すように、感光体ドラム12の下方部には、感光体ドラム12と接触するように帯電ロール14が配置されている。この帯電ロール14は、導電性の芯材14Aの周囲にゴム層14B、最表面層14Cが形成されたものであり、芯材14Aが回転可能に支持されている。このゴム層14Bと最表面層14Cは後述のとおり、半導電性材料から構成される。また帯電ロール14の感光体ドラム12と反対側の下方部には、帯電ロール14の表面に接触するロール状のクリーニングロール100が設けられている。このクリーニングロール100は、芯材100Aの周囲にスポンジ層100Bが形成されたものであり、芯材100Aが回転可能に支持されている。
【0049】
クリーニングロール100は帯電ロール14に所定の荷重で押圧され、スポンジ層100Bが帯電ロール14の周面に沿って弾性変形してニップ部101を形成している。感光体ドラム12は、図示しないモータによって図2中の時計回り(矢印Aの方向)に回転駆動され、感光体ドラム12の回転により帯電ロール14が矢印Bの方向に従動回転する。また、帯電ロール14の回転によりロール状のクリーニングロール100が矢印Cの方向に従動回転する。
【0050】
クリーニングロール100が従動回転することにより、帯電ロール14の表面のトナーや外添剤などの汚れがクリーニングロール100によってクリーニングされる。また、帯電ロール14とクリーニングロール100は、クリーニングロール100の接触により帯電ロール14の表面を削り取る物理的性質を有している。この物理的性質は、帯電ロール14の材質、表面微小硬度、及び弾性率などを調整すると共に、クリーニングロール100の材質、発泡体のセル数、及び帯電ロール14への喰込量などを調整することにより得られる性質である。これらの物理的性質については後述する。
【0051】
次に、クリーニングロール100について説明する。
【0052】
クリーニングロール100の芯材100Aの材質としては、快削鋼、ステンレス鋼等が使用されており、摺動性などの用途に応じ材質および表面処理方法は適時選択され、導電性を有さない材質についてはメッキ処理など一般的な処理により加工され導電化処理が行われてもよく、もちろんそのまま使用してもよい。また、クリーニングロール100は、スポンジ層100Bを介して帯電ロール14と適度なニップ圧力で接触するため、ニップ時に撓みのない強度を持った材質または芯材長に対して十分剛性をもった芯材径が選択される。
【0053】
スポンジ層100Bは、多孔質の3次元構造を有する発泡体からなる。このスポンジ層100Bは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリアミド、オレフィン、メラミン又はポリプロピレン、NBR、EPDM、天然ゴム及びスチレンブタジエンゴム、クロロプレン、シリコン、ニトリル、等の発泡性の樹脂又はゴムを材質としたものより選択される。スポンジ層100Bは、帯電ロール14との従動摺擦により外添剤などの異物を効率的にクリーニングすると同時に、帯電ロール14の表面にスポンジ層100Bの擦れによるキズをつけないために、また、長期にわたり千切れや破損が生じないようにするために、引き裂き、引っ張り強さなどに強いポリウレタン系が特に好ましく用いられる。
【0054】
ポリウレタンとして特に限定するものではなく、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリエステルやアクリルポリールなどのポリオールと、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートや4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどのイソシアネートの反応を伴っていれば良く、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパンなど鎖延長剤が混合されていることが好ましい。また、水やアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物などの発泡剤を用いて発泡させるのが一般的である。さらに必要に応じて発泡助剤、整泡剤、触媒などの助剤を加えればよい。
【0055】
長期的に安定したクリーニング性を維持するには、帯電ロール14に付着した外添剤やトナーなどの異物をクリーニングロール100の発泡体のセル内に取り込み、セル内で回収した異物が凝集して適度な大きさになると、クリーニングロール100から帯電ロール14を介して感光体ドラム12に戻し、感光体ドラム12をクリーニングするクリーニング装置78に回収することで、クリーニング性能の維持継続がなされていると考えられている。
【0056】
そのため、クリーニングロール100のセル数は40〜80個/25mmであることが好ましく、45〜75個/25mmであることがより好ましい。このようなセル数に設定することで、セルの中に外添剤などの異物を取り込みやすく、かつ取り込んだ外添剤などの異物を帯電ロール14、感光体ドラム12へ転移しやすくなる。セル数が80個/25mmより多いとセル径が小さい為に外添剤の取り込み性が低下し、逆にセル数が40個/25mmより少ないとセル径が大きくなりすぎ、取り込んだ外添剤を帯電ロール14へ転移させる適度な大きさまで固めることが困難となる。
【0057】
また、クリーニングロール100の径はφ8mmからφ15mm、より好ましくはφ9mmからφ14mmで、スポンジ層100Bの肉厚が2mmから4mmであることが好ましい。直径が15mm以上であるとクリーニングロール100の周面1箇所あたりの外添剤に接触する回数が減り、またクリーニング回数が減るので、クリーニング性能に対する長期安定性には優れるものの小型化の観点から不利である。直径が9mm以下であると画像形成装置を小型化できるので優位であるが、周面1箇所あたりの外添剤に接触する回数が増え、またクリーニング回数が増えるので、長期安定性に対し不利となる。
【0058】
また、クリーニングロール100の帯電ロール14への喰込量は、スポンジ層100Bの肉厚の10%〜60%が好ましく、20%〜50%がより好ましい。このような範囲に喰込量を設定することで、適切なニップ幅とニップ圧力を得ることができ、帯電ロール14の表面を微小に削り取りやすくなる。喰込量が10%より小さいと、ニップ幅とニップ圧力が不足し、帯電ロール14を微小に削り取ることができない。また、喰込量が60%より大きいと、クリーニングロール100を安定して帯電ロール14に圧接することができず、帯電ロール14の表面を均一に削り取ることができない。
【0059】
また、スポンジ層100Bの中に、たとえばトナーに外添される外添剤からなる研磨粒子を含有することが好ましい。研磨粒子としては、SeO2などが用いられる。このような研磨粒子を含有することにより、クリーニングロール100によって帯電ロール14の表面を微小に削り取りやすくなる。
【0060】
次に、帯電ロール14について説明する。
【0061】
この帯電ロール14は、導電性の芯材14A上に、半導電性のゴム層14B、更にその上には、半導電性層からなる最表面層14Cを備えた二層構造となっている。
ゴム層14Bはカーボンブラックや酸化金属など導電性粉末を混入させたものであり、最表面層14Cとしてはナイロン樹脂やアクリル樹脂などが用いられている。
【0062】
帯電ロール14の最表面層14Cの表面微小硬度は、0.03以上、2.0以下が好ましく、0.05以上、0.3以下がより好ましい。ここで、表面微小硬度とは、表層数μmの硬度を測定するもので、帯電ロール14の表層材料を変えることにより、影響を受ける物性値である。
【0063】
表面微小硬度は、金属材料の硬さ測定等に広く用いられているビッカース硬さのように、くぼみの対角線長さを求めるという方法はとらず、圧子が試料にどれだけ侵入したかを測定する方法によって求めることができる。試験荷重P(mN)、圧子の試料への侵入量(押し込み深さ)D(μm)とした時、表面微小硬度DHは下記式(1)で定義される。
【0064】
式(1) DH=αP/D2
ここで、αは圧子形状による定数で、α=3.8584(使用圧子:三角錐圧子の場合)である。
【0065】
この表面微小硬度は、圧子を押し込んで行く過程の荷重と押し込み深さから得られる硬さで、試料の塑性変形だけでなく、弾性変形をも含んだ状態での材料の強度特性を表すものである。なおかつ、その計測面積は微小であり、トナー粒径に近い範囲でより正確な硬度の測定が可能になる。
【0066】
帯電ロール14の最表面層14Cの表面微小硬度は、超微小硬度計DUH−201S(株式会社島津製作所製)を用いて測定する。測定条件は、以下の通りである。
・測定環境:23℃、55%RH
・使用圧子:三角錐圧子
・試験モード:3(軟質材料試験)
・試験荷重:0.70gf
・負荷速度:0.0145gf/sec
・保持時間:5sec
【0067】
帯電ロール14の最表面層14Cの表面微小硬度を上記範囲のように設定することにより、クリーニングロール100を帯電ロール14に接触させたときに、クリーニングロール100によって帯電ロール14の最表面層14Cの周面を微小に削り取ることができる。表面微小硬度が0.05以下であると、帯電ロール14の表面が削り取られすぎてしまい、偏磨耗などが発生する。また、表面微小硬度が0.3以上であると、クリーニングロール100によって帯電ロール14の表面を微小に削り取る量が若干低下する。
【0068】
また、帯電ロール14の径はφ8mmからφ15mm、より好ましくはφ9mmからφ14mmで、最表面層14Cの肉厚が2mmから4mmであることが好ましい。直径が15mm以上であると周面1箇所あたりの外添剤に接触する回数が減り、また放電回数が減るので、汚れや帯電性能に対する長期安定性には優れるものの小型化の観点から不利である。直径が8mm以下であると画像形成装置10を小型化できるので優位であるが、周面1箇所あたりの外添剤に接触する回数が増え、また放電回数が増えるので、長期安定性に対し不利となる。
【0069】
帯電ロール14の最表面層14Cの弾性率は、8MPa以上、4500MPa以下が好ましく、10MPa以上、3000MPa以下がより好ましい。弾性率が8MPaより小さいと、クリーニングロール100の押圧により安定したニップ形状が形成されず、帯電ロール14の表面を微小に削り取ることができない。また、弾性率が4500MPaより大きいと、帯電ロール14がクリーニングロール100とのニップ部101において著しく変形し、クリーニング性の低下を引き起こし、また感光体ドラム12とのニップ形状が不均一になるため、帯電不良を発生する。ここで、弾性率は、レオメトリックス社製のレオメーター、商品名「RDA2」(RHIOSシステムver.4.3)で、直径8mmのパラレルプレートを用いて、プレート間隔4mm、周波数1rad/sec、昇温速度毎分1℃、測定温度範囲40〜150℃、最大20%の自動歪み率制御で測定した値である。この帯電ロール14であるが、所定の帯電性能を有するものであれば以下の構成に限定されるものでないことは言うまでもない。
【0070】
芯材14Aの材質としては、快削鋼、ステンレス鋼等が使用され、軸受けとの摺動性などの用途に応じ材質および表面処理方法は適時選択され、導電性を有さない材質についてはメッキ処理など一般的な処理により加工され導電化処理が行われていてもよい。
【0071】
帯電ロール14のゴム層14B、最表面層14Cを構成する上記半導電性弾性層は、例えば、弾性を有するゴム等の弾性材、導電性弾性層の抵抗を調整するカーボンブラックやイオン導電材等の導電材、必要に応じて軟化剤、可塑剤、硬化剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカおよび炭酸カルシウム等の充填剤等、通常ゴムに添加され得る材料を加えてもよい。通常ゴムに添加される材料を添加した混合物を、導電性の芯材14Aの周面に被覆することにより形成される。抵抗値の調整を目的とした導電剤として、マトリックス材に配合されるカーボンブラックやイオン導電剤のような、電子及び/又はイオンを電荷キャリアとして電気伝導する材料を分散したもの等を用いることができる。また、上記弾性材は発泡体であってもかまわない。
【0072】
上記導電性層を構成する弾性材としては、例えばゴム材中に導電剤を分散させることによって形成される。ゴム材としては、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム等、及びこれらのブレンドゴムが挙げられる。中でも、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド−アリルグリシジルエーテル共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムおよびこれらのブレンドゴムが好ましく用いられる。これらのゴム材は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0073】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末を挙げることができる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;を挙げることができる。
【0074】
これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して、1〜60質量部の範囲であることが好ましく、一方、上記イオン導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して、0.1〜5.0質量部の範囲であることが好ましい。
【0075】
最表面層14Cは、トナー等の異物による汚染の防止のためなどに形成しているものであり、最表面層の材料としては、樹脂、ゴム等の何れを用いてもよく特に限定するものではない。ポリエステル、ポリイミド、共重合ナイロン、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、メラミン樹脂、フッ素ゴム、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。
【0076】
このうち外添剤汚れの観点から、ポリフッ化ビニリデン、4フッ化エチレン共重合体、ポリエステル、ポリイミド、共重合ナイロンが好ましく用いられる。共重合ナイロンは、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、の内のいずれか1種または複数種を重合単位として含むものであって、この共重合体に含まれる他の重合単位としては、6ナイロン、66ナイロン等が挙げられる。ここで、610ナイロン、11ナイロン、12ナイロンよりなる重合単位が共重合体中に含まれる割合は、重量比で合わせて10%以上であるのが好ましい。上記重合単位が10%以上の場合は、調液性および表面層塗布時における成膜性に優れるとともに、特に繰り返し使用時における樹脂層の磨耗や樹脂層への異物付着が少なく、ロールの耐久性が優れ、環境による特性の変化も少なくなる。
【0077】
上記高分子材料は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、当該高分子材料の数平均分子量は、1,000〜100,000の範囲であることが好ましく、10,000〜50,000の範囲であることがより好ましい。
【0078】
また上記最表面層には導電性材料を含有させ、抵抗値を調整することができる。該導電性材料としては、粒径が3μm以下であるものが望ましい。また、抵抗値の調整を目的とした導電剤として、マトリックス材に配合されるカーボンブラックや導電性金属酸化物粒子、あるいはイオン導電剤のような、電子及び/又はイオンを電荷キャリアとして電気伝導する材料を分散したもの等を用いることができる。
【0079】
導電剤のカーボンブラックとして、具体的には、デグサ社製の「スペシャルブラック350」、同「スペシャルブラック100」、同「スペシャルブラック250」、同「スペシャルブラック5」、同「スペシャルブラック4」、同「スペシャルブラック4A」、同「スペシャルブラック550」、同「スペシャルブラック6」、同「カラーブラックFW200」、同「カラーブラックFW2」、同「カラーブラックFW2V」、キャボット社製「MONARCH1000」、キャボット社製「MONARCH1300」、キャボット社製「MONARCH1400」、同「MOGUL−L」、同「REGAL400R」等が挙げられる。
【0080】
上記カーボンブラックはpH4.0以下であり、一般的なカーボンブラックに比べ、表面に存在する酸素含有官能基の効果により、樹脂組成物中への分散性がよく、前記pH4.0以下のカーボンブラックを配合することにより、帯電均一性をよくすることができ、さらに抵抗値の変動を小さくすることができる。
【0081】
上記抵抗値を調整するための導電性粒子である導電性金属酸化物粒子は、酸化錫、アンチモンがドープされた酸化錫、酸化亜鉛、アナターゼ型酸化チタン、ITO等の導電性を有した粒子で、電子を電荷キャリアとする導電剤あれば何れも用いることができ、特に限定されるものではない。これらは、単独で用いても2種類以上を併用することができる。また、本発明を阻害しない限り、何れの粒径であってもよいが、抵抗値調整および強度の点より、好ましくは酸化錫、アンチモンドープがされた酸化錫、アナターゼ型酸化チタンであり、更に、酸化錫、アンチモンドープがされた酸化錫が好ましい。
【0082】
このような導電性材料によって抵抗制御を行うことにより、最表面層の抵抗値は環境条件によって変化せず、安定な特性が得られる。さらに、上記最表面層には、フッ素系あるいはシリコーン系の樹脂が用いられている。特に、フッ素変性アクリレートポリマーで構成されることが好ましい。また、最表面層の中に微粒子を添加してもよい。これにより、最表面層が疎水性となって帯電ロール14への異物の付着が防止されるように作用する。また、アルミナやシリカのような絶縁性の粒子を添加して、帯電ロール14の表面に凹凸を付与し、感光体ドラム12との摺擦時の負担を小さくして帯電ロール14と感光体ドラム12相互の耐磨耗性を向上させることも可能である。
【0083】
次に、帯電ロール14の表面薄層部151について説明する。
図3に示すように、帯電ロール14は、クリーニングロール100と接触する配置で構成されている。帯電ロール14の軸方向端部には、表面薄層部151を有する。表面薄層部151の下層には、A−A'に示すように、第2層のゴム層14Bが突出した突出部150を有している。これに対し、表面薄層部151以外の部分は、B−B'に示すように、最表面層14Cと、ゴム層14Bにはいずれも、薄層部、突出部を有していない。ゴム層14Bの抵抗は47logΩ程度であり、最表面層14Cはロール全体の抵抗が6.58.5logΩ程度になるように設定されている。
【0084】
帯電ロール14の最表面層14Cはクリーニングロール100との接触により、使用するに従って、徐々に削られていく。最表面層14Cの磨耗が進み、図3(D)に示すように、突出部150が最表面に現れると、その部分ではゴム層14Bの電気抵抗の特性から電流がリークし放電が起こらなくなる。すなわち、その部分については感光体ドラム12の表面が帯電しないので、その未帯電部分が現像器18(図1参照)を通過するとその電位差からトナーで現像されてしまう。従ってこの部分では一定周期のトナーパッチが形成されることとなる。
【0085】
この場合、表面薄層部130は軸方向において現像可能領域内で、且つ画像形成領域外に設けられているので、実際のプリント上にトナーパッチは現れない。つまり、突出部150が最表面に現れたことで感光体上の画像形成領域外に形成されるトナーパッチを光学センサ等から構成される検知部152(図1参照)で検知すれば、帯電ロール14あるいは帯電ロールを含むマーキングユニットの寿命が近いことをユーザに警告することができる。
【0086】
ゴム層14Bは突出部150が最表面に現れたときにその近傍のみで電流リークが起きる範囲であれば、抵抗値、材料、大きさを自由に設定して構わない。本発明では、帯電ロール14の印加電圧として-500〜-900Vの直流電圧に0.7k〜2.7kVppの交流電圧を重畳しており、これに対し好適な抵抗の範囲が46logΩである。また表面薄層部151の厚みについては、最表面層14Cがどの程度磨耗した時点で警告を発するかによるので、使用する帯電ロール14の最表面層14Cの厚みやシステムの都合にあわせて適宜設定して構わない。本発明で使用した帯電ロール14の最表面層14Cの膜厚は3〜20μmであり、突出部150の厚みは2〜19μmに設定した。
【0087】
次に本発明の実施例として上記第1の形態に基づいて実施した帯電ロールの磨耗評価結果について説明する。
【0088】
本実施例では図3に示す構成に基づき、以下のような帯電ロールを使用した。φ8の金属シャフト上に厚さ2mmのイソプレンゴムにアセチレンブラックを均一分散させてなるゴム層を積層し、さらにその上に10μmのフッ素アクリルレート樹脂(パーフルオロオクチルエチルアクリレートの重合体)からなる最表面層を形成した。ゴム層の抵抗は106.8Ωであり、最表面層は帯電ロール全体の抵抗として107.5Ωとなるように設定されている。また、軸方向に関してクリーニングロールと接触し、且つ画像形成領域外の部分において、ゴム層14Bは帯電ロールの周方向に関して90°間隔で、厚みが4μm、約1mm四方の大きさの突出部150が設けられ、結果として厚みが6μmの表面薄層部を形成している。
【0089】
クリーニングロールはφ5の金属シャフト上に厚さ2.5mmの発泡ウレタン層を形成したものを使用し、帯電ロールに対して0.75mm食い込ませて帯電ロールの回転に従動させた。クリーニングロールのセル数は55個/25mmとした。
【0090】
感光体ドラム12はφ30のアルミドラムに20μmの有機感光層を塗布したものである。また、感光体ドラム上の表面薄層部に相当する位置に光学式のトナー像検知手段を設け、該トナー像検知手段がトナー像を検知した時点で帯電ロールの寿命が近いことを警告するようにした。
【0091】
このような構成で、画像密度が5%のチャートを用いてプリントテストを行った。その結果、感光体のサイクル数が1,000,000回転に達した時点で、前記警告が発せられることを確認した。図9は帯電ロール表面が磨耗している様子を示す写真である。
【0092】
なお、本実施例では、表面層の厚み10μmに対して、表面薄層部14の厚みを6μm(60%)としたが、表面薄層部の厚みを変更した場合の結果を、図10に示す。最表面層の厚みは、10μmと20μmとし、表面薄層部の厚みを適宜変更した。この場合、最表面層の厚みが50%を下回ると、表面薄層部と周囲の厚みの違いが、初期段階から帯電電位に影響を与え、トナー帯を形成してしまい、精度よく磨耗を検知することが出来ないことがわかった。また、表面薄層部の厚みが90%を越えてしまうと、磨耗によってゴム層の突出部が現れる前に、周辺部のゴム層が先に露出し、帯電不良による画質欠陥が生じてしまうことがわかった。これは、帯電ロール表面における磨耗量のバラツキに起因しており、結果的に、表面層薄層部の厚みは、最表面層の50%以上90%であることが望ましいことが確認された。
【0093】
次に、図4に本発明の第2の実施形態を示す。
この形態では、断面A−A'に示すように、表面薄層部151には突出部150が周方向全体において形成されており、他の部分の断面B−B'とはゴム層14Bの外径が異なっている。この場合においては、帯電ロール14の表面薄層部151はクリーニングロール100との接触により、徐々に削られていき、周方向全体で、ゴム層14Bの突出部150が現れると、その部分で電流がリークし放電が起こらなくなる。この場合、前述した電位関係により、連続的なトナーの帯が感光体上に形成され、帯電ロール14あるいは帯電ロールを含むマーキングユニットの寿命をユーザーに警告することができる。
【0094】
次に、図5に本発明の第3の実施形態を示す。この形態では第1、第2の実施形態の表面薄層部151を、帯電ロール両側に有する構成をとっている。更に、最表面層14Cに比べて、ゴム層14Bは表面粗さが高くなるように研磨している。これは、装置の長期間の使用に伴って、帯電ロールやクリーニングロールの表面に異物、堆積物が付着することによって、部材間の回転伝達力が低下し、帯電不良を生じることに対し、磨耗によって露出した突出部150の表面粗さが、帯電ロール、感光体、クリーニングロール間の回転伝達力を高めることで、上記の不具合を低減する効果を有する。更に、回転性が損なわれることがないため、前述したトナーのパッチ、帯が確実に下流の検知部によって検知され、本発明の効果を高めることが出来る。
【0095】
この第5の実施形態に基づく、実施例を以下に示す。ここではウレタンゴムからなるゴム層14Bの表面粗さがRz2.5〜5.0μmとなるように研磨加工し、フッ素アクリルレート樹脂からなる最表面層14Cの表面粗さがRz1.0〜2.0μmとなるよう研磨加工した。
【0096】
なお、これらの表面粗さは、東京精密社製 Surfcom-590Aを用い、ピックアップ針E-DT-S01Aにて、JIS'82設定の下 、
測定長さ4mm、
測定速度0.3mm/s、
カットオフは長0.8mm、
カットオフ種別2CR(位相補償)
以上の測定条件で、帯電ロールの周方向を測定した。なお、その他の構成については、第1の実施例と同じ条件にて、評価を行った。画像密度が5%のチャートを用いてプリントテストを行ったところ、同様に感光体のサイクル数が約1,000,000回転に達した時点で、前記警告が発せられることを確認した。
【0097】
ここで、表面粗さの違いによる効果を確認するため、図11に示すように、ゴム層の表面粗さを研磨加工によって変化させた場合の寿命検知時の検知部の出力電圧を検証した。ゴム層14Bの表面粗さが、最表面層14Cと同じRz1.0〜2.0μmの場合と比べると、寿命検知後の検知部によるトナー帯の検出が安定していることがわかる。これは、帯電ロールやクリーニングロールの表面に付着した異物によって、帯電ロールの回転がスリップし、トナーのパッチ濃度が不安定になることを、露出したゴム層表面の粗さが防いでいるためである。従って、露出する突出部(ゴム層)の表面粗さを最表面層よりも高く設定することで、帯電ロールの回転不良が抑制され、磨耗による帯電ロールの寿命検知を制度よく行うことが可能となった。
【0098】
次に、図6に本発明の第4の実施形態を示す。本形態では、前述の最表面層14Cとゴム層14Bにおいて、両者の表面反射率が異なるように設定する。この場合、表面薄層部130は軸方向において現像可能領域外に設定可能で、帯電ロール14の表面薄層部130に近接配置された光学センサなどによる検知部152によって、磨耗する最表面層14Cと露出するゴム層14Bの突出部150の表面反射率の変化を検知することで、同様に帯電ロールの寿命を判断することができる。
【0099】
ここで、第4の実施の形態に基づく実施例について説明する。本実施例では、スタンレー社製のKUA0036B型センサーを帯電ロール表面から、約3mm離れた位置に配設した、ここで、最表面層およびゴム層の表面反射率を20%から80%まで変化させ、帯電ロールが約1,000,000回転した際の寿命検知の結果について、図12に示す。
【0100】
なお、両層の表面反射率の変化には、それぞれ最表面層にはフッ素アクリルレート樹脂(パーフルオロオクチルエチルアクリレートの重合体)、ゴム層にはシリコーンゴムを基材とし、アセチレンブラックの含有量をそれぞれ2%、3.5%重量部とすることで、表面反射率20%を得た。以後、徐々に含有量を増やしていくことで表面反射率80%まで調整した。また、表面反射率の測定には、オリンパス社製のUSPM-RU-1700を用い、測定波長1500nm条件の下で測定した。
【0101】
図12に示すとおり、両層の表面反射率を異なる値とし、光反射タイプの光センサで、突出部の露出を検出することで、帯電ロールの寿命を検知することが出来た。ここで、最表面層の表面反射率80%、ゴム層の表面反射率を20%とした場合は、最も安定的に、検出することが確認された。これは、最表面層からゴム層に露出が変化する際の変化率が最も高いためと考えられる。一方、最表面層の表面反射率が20%、ゴム層の表面反射率が80%の場合、突出部の露出よりも前に、ゴム層の反射特性をセンサが検出してしまい、結果的に帯電ロールの寿命を誤検知する問題が確認された。
【0102】
更に、図7に本発明の第5の実施形態を示す。前述した第1実施形態の構成において、表面薄層部151は帯電ロール14の軸方向において、現像可能領域内で、且つ画像形成領域内に配置する構成をとることができる。この場合、好ましくは、画像が転写される用紙の端部に位置する部分に、上記表面薄層部151を配備することが望ましい。この場合、ユーザが出力するプリント上の端部に前述したトナーパッチ、トナーバンドが現れることになるが、画質の悪いプリントを多く出力する前に、寿命を早期にユーザに伝えることによって、部材の交換を実施することが可能となる。
【0103】
更に、図8に本発明の第6の実施形態を示す。本実施形態では、帯電ロール14は、ゴム層14Bを有さず、芯材14Aと最表面層14Cのみの構成をとっている。この場合、表面薄層部151では、芯材14Aが突出部150を有しており、最表面層14Cが磨耗することで、突出部150が露出し、前述と同様の作用で、トナーパッチ、バンドが形成され、帯電ロール14の寿命を検知することが可能となる。
【0104】
以上のように、本実施形態の画像形成装置10では、帯電ロールとクリーニング部材が接触することで、帯電ロールの表面が磨耗し、やがて帯電不良などの不具合につながる帯電ロールの寿命を正確に把握することが可能となる。このため、ユーザに画質の悪いプリントを多く出力させることなく、適切な時期に帯電ロールの交換を促すことが可能となる。
【0105】
なお、本発明の帯電ロール14、クリーニングロール100は上記材質、構成に限定するものではなない。上記の実施形態では、クリーニングロール100は帯電ロール14に所定の荷重で押圧され、スポンジ層100Bが帯電ロール14の周面に沿って弾性変形してニップ部101を形成している態様を示したが、クリーニングロールが自重によって帯電ロールに当接する構成でも、また従動回転する構成をとってもよい。更に、帯電ロールと感光体は接触式帯電でも、微小ギャップ間で放電帯電を行う構成でも構わない。クリーニング部材によって帯電ロールの表面を微小に削り取ることが可能な材質や構成であれば適宜に設定可能である。
【0106】
また、検知部152は、感光体ドラム12上のトナー像を検知してもよい。また、検知手段としては検知部152だけに限らず、例えば、帯電ロール14への印可バイアスに関して定電流制御を採用している場合であれば、突出部150が現れた部分では電圧がかからなくなるため、これを検出してもよいし、定電圧制御を採用している場合であれば、電流が異常に大きくなることを検出してもよい。
【0107】
また、本実施形態では、各部材の配置構成に関して、感光体ドラム12の下方部に帯電ロール14を接触させ、この帯電ロール14の下方部にクリーニングロール100を接触させる構成であるが、この構成に限定するものではない。例えば、感光体ドラムの上方部に帯電ロールを接触させ、この帯電ロールの上方部にクリーニングロールを接触させる構成でも本発明を適用することが可能である。
【0108】
更に、本実施形態の画像形成装置10は、回転式現像器18を用いて感光体ドラム12へのトナー像の形成を4サイクル繰り返したが、この構成に限定するものではない。例えば、中間転写ベルトの移動方向に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成ユニットを並設する構成であっても、各画像形成ユニットの感光体ドラム、帯電ロール及びロール状クリーニングロールに本発明を適用することが可能である。この場合、各色毎に、本発明を適用させて、帯電ロールの磨耗を個々に検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置に用いられる帯電ロールとクリーニングロールの周囲の構成を示す拡大図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る表面薄層部を示す概略図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る表面薄層部を示す概略図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る表面薄層部を示す概略図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係る表面薄層部を示す概略図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係る表面薄層部を示す概略図である。
【図8】本発明の第6実施形態に係る表面薄層部を示す概略図である。
【図9】帯電ロールの表面が磨耗している様子を示す写真である。
【図10】表面薄層部と最表面層の厚みの比を変えて帯電不良の違いを検証した結果を示す表である。
【図11】ゴム層と最表面層の表面粗さの違いによる寿命検知時の出力電圧の変動を検証したグラフである。
【図12】ゴム層と最表面層の表面反射率の違いによる寿命検知の正確さを検証したグラフである。
【符号の説明】
【0110】
10 画像形成装置
12 感光体ドラム
14 帯電ロール
14A 芯材
14B ゴム層
14C 最表面層
18 回転式現像器
20 中間転写ベルト
44 クリーニング装置
78 クリーニング装置
100 クリーニングロール
100A 芯材
100B スポンジ層
101 ニップ部
151 表面薄層部
150 突出部
152 検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に配置され、画像を担持する像担持体を帯電すると共に、クリーニング部材によってクリーニングされる帯電ロールであって、
芯材と、前記芯材の周りに設けられた導電性層と、を備え、
前記導電性層が前記クリーニング部材と当接する範囲で前記導電性層の軸方向の端部が、他の前記導電性層より薄い表面薄層部とされたことを特徴とする帯電ロール。
【請求項2】
前記導電性層が、前記芯材の周りに設けられた第1導電性層と、前記第1導電性層の周りに設けられ、該第1導電性層と物理的特性が異なる第2導電性層と、で構成され、前記第1導電性層に突出部を形成し前記第2導電性層の軸方向の端部に前記表面薄層部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の帯電ロール。
【請求項3】
前記物理的特性が異なるとは、前記芯材又は前記第1導電性層の電気抵抗値が、前記導電性層又は前記第2導電性層の電気抵抗値より低いことであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の帯電ロール。
【請求項4】
前記物理的特性が異なるとは、前記芯材又は前記第1導電性層の表面反射率と前記導電性層又は前記第2導電性層の表面反射率が相違することであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の帯電ロール。
【請求項5】
前記表面薄層部は、前記像担持体の画像形成領域外に位置し、トナーによる現像領域内に位置することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の帯電ロール。
【請求項6】
前記表面薄層部は、前記像担持体の画像形成領域内に位置することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の帯電ロール。
【請求項7】
前記突出部は、前記芯材又は前記第1導電性層の周面に一定の間隔で形成されたことを特徴とする請求項2〜6の何れか1項に記載の帯電ロール。
【請求項8】
前記突出部は、前記芯材又は前記第1導電性層の周面に沿って連続して形成されたことを特徴とする請求項2〜6の何れか1項に記載の帯電ロール。
【請求項9】
前記芯材又は前記第1導電性層の表面粗さが、前記導電性層又は前記第2導電性層の表面粗さより大きいことであることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の帯電ロール。
【請求項10】
前記表面薄層部の厚さは、前記導電性層又は第2導電性層の厚さより、50%以上90%以下であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の帯電ロール。
【請求項11】
請求項1〜請求項10に記載の何れかの帯電ロールを備えた画像形成装置であって、
前記クリーニング部材との接触によって前記表面薄層部が削られることによって露出する前記芯材或いは前記第1導電性層を検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果に基づき、前記帯電ロールが寿命であることを知らせる警告手段と、有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−286403(P2007−286403A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114372(P2006−114372)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】