説明

帯電器及び画像形成装置

【課題】高速のプロセス速度に対応可能であり、さらに、帯電電位を容易に変更可能で制御性に優れる小型でコンパクトな帯電器、及びそれを有する画像形成装置を提供する。
【解決手段】帯電器は、高電圧が印加される1本のみの放電ワイヤ31、放電ワイヤ31を囲み静電潜像担持体2と対向する側に開口を有するシールド板32、前記開口部に配されたグリッド電極33を有し、グリッド電極33に印可するグリッド電圧をVg(V)、静電潜像担持体2のターゲット電位をVd(V)としたときに、1.2<Vg/Vd<1.4であり、かつ、放電ワイヤ31と静電潜像担持体2の表面との距離が9(mm)以上となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式による画像形成装置に用いられ、静電潜像担持体表面を一様に帯電するためのスコロトロン帯電器、並びに該帯電器を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式等の画像形成装置の印字速度がより速くなってきており、それに用いられる帯電器にも、より高速のプロセス速度、即ち印字速度に対応できるものが求められている。
【0003】
静電潜像担持体表面を帯電させる帯電器として、静電潜像担持体と接触するローラ、ブラシ等によって帯電を行う接触帯電方式によるものが実用化され、小型、安価と言った特徴から、低速の画像形成装置には広く用いられてきている。しかしながら、接触帯電方式は高速のプロセス速度へは適応しがたく、高速(およそ400mm/s以上)のプロセス速度においては、依然としてコロナ放電を用いるコロトロン帯電方式やスコロトロン帯電方式による帯電器が用いられることが多い。
【0004】
特に、感光ドラム(静電潜像担持体)を一様に帯電させる帯電器(主帯電器、一次帯電器、メインチャージャなどと称することが多い)には、グリッド電極を有し、帯電電位の安定性、均一性、制御性に優れるスコロトロン帯電方式による帯電器(スコロトロン帯電器)を用いるのが一般的である。
【0005】
スコロトロン帯電器で高速のプロセス速度に対応させる場合、帯電時間を稼ぐために、静電潜像担持体の移動方向に見ての帯電幅を大きく取り、同時に、コロナ放電電流を増やす目的で、放電ワイヤの本数を増やすなどの対策を取ることが多い。しかしながら、静電潜像担持体周囲には、帯電器以外にも露光手段、現像器、クリーニング手段等が存在するため、帯電器を大きくするにも限界があり、又、帯電器の大型化によって画像形成装置も大型化するという問題がある。
【0006】
また、帯電器を大型化せずに、グリッドの開口率を下げることで、平均的な電位は得られ、高速のプロセス速度に対応出来ることもあるが、帯電電位の安定性、均一性、制御性は劣るものとなり好ましくない。
【0007】
以上述べたように、高速のプロセス速度に対応できなおかつ、小型でコンパクトなスコロトロン帯電器が求められている。
【0008】
このような課題に対し、特許文献1、特許文献2等にもあるように、スコロトロン帯電器のグリッドの開口率を、静電潜像担持体の移動方向に見て変化させ、帯電器を大型化させることなく、帯電電位の安定性、均一性を確保しつつ、かつ高速のプロセス速度へ対応させるという従来技術がある。この方式の基本的な思想は、開口率の大きな部分で多量のコロナを感光ドラムに供給することで高速度に対応させ、いっぽう、開口率の小さい部分即ち帯電制御性の高い部分で、帯電電位の安定性、均一性を確保するという思想である。
【0009】
しかしながら、本従来技術では、開口率を変化させたメッシュグリッド電極が必要で、メッシュグリッド電極自体が高価なものとなり、また、メッシュグリッドの取り付けに方向性があるため、帯電器の組み立て性、メッシュグリッドの交換性に難があるという問題がある。また、画像形成装置では、異なるプロセス速度の機種間でも、部品の共通化の目的で帯電器などを共通で用いることもよく行われるが、本従来技術における開口率の変化度合いは、プロセス速度や使用する感光ドラムの特性によっても最適条件が異なり、機種毎に異なるメッシュグリッドを用意する必要があり互換性に劣るという問題がある。
【0010】
一方、スコロトロン帯電方式では、次のような問題もある。
【0011】
スコロトロン帯電方式においては、帯電される感光ドラム表面の安定性、均一性は、感光ドラム表面に供給されるコロナを制御するグリッド電極によって実現されている。よって、所望の感光ドラム帯電電位(ターゲット電位)を得たい場合には、グリッド電極に印加する電圧(グリッド電圧)も該ターゲット電位と略同じ(0.9から1.1倍程度)に設定するのが通常である。
【0012】
グリッド電極へのグリッド電圧の印加は、グリッド電極専用の高圧電源(グリッド電源)を用いたり、あるいはグリッド電極をバリスタを介して接地する事がよく行われる。バリスタを用いる場合は該バリスタのバリスタ値を前述のターゲット電位と略同じとする場合が多い。
【0013】
さて、電子写真方式による画像形成装置では、印字濃度あるいは白地汚れの調整のため、感光ドラムの帯電電位を変化させる必要のある場合がある。また、感光ドラムの帯電電位を表面電位センサー等でモニターし、常に一定の帯電電位となるよう、該センサー出力をもとにフィードバック制御を行う場合もある。
【0014】
グリッド電源を用いる場合には、グリッド電源の出力電圧を変化させることで、帯電電位を可変と出来、帯電電位の変更は比較的容易というメリットがある。しかしながら、専用のグリッド電源が必要で、そのためのコストアップ、その収容スペースのための装置の大型化といった問題がある。一方、バリスタを用いる場合はグリッド電源不要というメリットはあるものの、バリスタ値を変更する為にはバリスタ値の異なる複数のバリスタを用意する必要があるなど、帯電電位を可変とするのは難しいという問題がある。
【0015】
【特許文献1】特開平10−274873号公報
【特許文献2】特開平4−251876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
よって、本発明が解決しようとする課題は、帯電器や画像形成装置が大型化することなく、高価で組み立て性、交換性ならびに互換性に劣る開口率を変化させたメッシュグリッドを用いる必要もなく、高速のプロセス速度に対応可能であり、さらに、帯電電位を容易に変更可能で制御性に優れる小型でコンパクトな帯電器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため、本発明においては、プロセス速度400(mm/s)以上の電子写真装置に於いて静電潜像担持体表面を一様に帯電するための帯電器であって、高電圧が印加される1本のみの放電ワイヤ、該放電ワイヤを囲み前記静電潜像担持体と対向する側に開口を有するシールド板、前記開口部に配されたグリッド電極、を少なくとも有し、前記グリッド電極に印加するグリッド電圧をVg(V)、前記静電潜像担持体のターゲット電位をVd(V)としたときに、1.2<Vg/Vd<1.4であり、かつ、前記放電ワイヤと前記静電潜像担持体表面との距離が9(mm)以上であることを特徴とする帯電器が提供される。
【0018】
また、本発明の好ましい態様においては、前記グリッド電極が、前記グリッド電圧Vgをバリスタ電圧とするバリスタを介して接地されたものであることを特徴とする帯電器が提供される。
【0019】
また、本発明のさらに好ましい態様においては、前記静電潜像担持体がマイナス帯電性のものであり、前記帯電器はマイナス放電するものであることを特徴とする帯電器が提供される。
【0020】
また、本発明の別の好ましい態様においては、前記いずれかの帯電器を有する画像形成装置が提供される。
【0021】
また、本発明の別の好ましい態様においては、前記帯電器による帯電後の前記静電潜像担持体表面の表面電位を測定する表面電位測定手段、前記放電ワイヤに高電圧を印加する高圧電源、前記表面電位測定手段の測定結果に基づき、前記高圧電源の前記放電ワイヤへの出力電流を制御する出力電流制御手段をさらに有する事を特徴とする画像形成装置が提供される。
【0022】
スコロトロン帯電器においては、帯電電位の安定性、均一性、制御性はグリッド電圧が印加されたグリッド電極によって達成されていることは前述したとおりである。従って、従来技術においては、感光ドラムのターゲット電位グリッド電位は略同じに設定していた。
【0023】
しかしながら、本発明者らの検討の結果、必ずしもグリッド電位とターゲット電位を同じとしなくても、放電ワイヤの本数や感光ドラムからの距離を最適とすることで、帯電電位の安定性、均一性、制御性が実用上問題なく得られることが明らかとなった。
【発明の効果】
【0024】
本発明の帯電器によれば、グリッド電極に印可するグリッド電圧をVg(V)、静電潜像担持体のターゲット電位をVd(V)としたときに、1.2<Vg/Vd<1.4であり、かつ、放電ワイヤと静電潜像担持体表面との距離を9(mm)以上とすることにより、高価で組み立て性、交換性ならびに互換性に劣る開口率を変化させたメッシュグリッドを用いる必要もなく、高速のプロセス速度に対応可能であり、さらに、帯電電位を容易に変更可能で制御性に優れる小型でコンパクトな帯電器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の帯電器及びそれを有する画像形成装置に係る一実施態様を図1以下に基づいて説明する。
【0026】
画像形成装置である電子写真プリンタ1は、静電潜像担持体たる感光ドラム2の回りに主帯電器3、LEDプリントヘッド4、現像ユニット5、転写部材たる転写帯電器6、分離帯電器7、クリーニング前帯電器8、キャリア回収ユニット9、クリーニングユニット10及び除電ランプ11が配置され、記録媒体MRCが搬送される搬送経路の感光ドラム2下流側に定着手段たる定着ユニット20が配置されている。主帯電器3は感光ドラム2の表面を一様に帯電する。
【0027】
記録媒体MRCの搬送経路の感光ドラム2の上流側に、記録媒体MRCの搬送手段であるガイド板13と、同じく搬送手段であるトラクタ14が、感光ドラム2の下流側に定着ユニット20と対向する位置に別の搬送手段である搬送ユニット15が、それぞれ設けられている。
【0028】
感光ドラム2は図示しない駆動モータ及び減速機構によって図中矢印A方向に、回転駆動されている。感光ドラム2の周速、即ちプロセス速度は423.3333mm/sに設定されている。
【0029】
ここで、電子写真プリンタ1では、記録媒体MRCはその両端部に送り孔(図示せず)を有する連続紙が使用される。記録媒体MRCは、図示のように、電子写真プリンタ1の右側の導入口1bから導入され、左側の排出口1cから排出される。トラクタ14は図示しない駆動モータによって駆動され、記録媒体MRCを図中矢印B方向に搬送する。
【0030】
感光ドラム2は直径120mm、アルミニウム製円筒形ドラムの表面にマイナス帯電型の有機感光材料からなる感光層を形成したもので、LEDプリントヘッド4から照射される光によって静電潜像が表面に形成される。主帯電器3は、LEDプリントヘッド4による感光ドラム2上への潜像形成に先立って、放電で発生させたイオンにより感光ドラム2の表面を一様に帯電させる。
【0031】
主帯電器3と次のLEDプリントヘッド4の間に、表面電位測定手段である表面電位センサ27が設けられ、主帯電器3によって帯電された感光ドラム2の表面電位を測定する。
【0032】
LEDプリントヘッド4は、光ビームによって感光ドラム2の表面を露光し、記録情報に対応した静電潜像を形成する。LEDプリントヘッド4は600dpi(dot per inchi、1インチ=25.4mm当たり600ドット)の解像度を有するものである。
【0033】
現像ユニット5は、感光ドラム2と対向配置され、トナー濃度が重量比で6%となるようにトナーとキャリアを混合した二成分現像剤(図示せず)を用い、現像ローラ5によって感光ドラム2上の静電潜像を現像する。トナーは、重量平均粒径9.0μmのポリエステル樹脂を主成分とするフラッシュ定着用マイナストナー、キャリアはシリコーンコートフェライトキャリアで、重量平均粒径72.5μmのものを用いている。
【0034】
転写帯電器6は、放電で発生させたイオンを利用して感光ドラム2上に現像された未定着のトナー像を記録媒体MRCに転写する。分離帯電器7は、記録媒体MRCを感光ドラム2から電気的に分離させる帯電器で、例えば、交番電圧が印加されるコロトロン帯電器が使用される。転写帯電器6と分離帯電器7は共通のシールド板部材Sでもって一体に構成されている。
【0035】
感光ドラム2外周に沿って見て、分離帯電器7とクリーニング前帯電器8との間には記録媒体MRCを感光ドラム2から機械的に分離させる分離爪12が設けられている。
【0036】
本実施態様に於いては、主帯電器3および転写帯電器6以外にもクリーニング前帯電器8を有し、このクリーニング前帯電器8は、感光ドラム2の表面をクリーニングに先立って帯電させ、記録媒体MRCに転写されずに感光ドラム2の表面に残留したトナー粒子をクリーニングユニット10で回収し易くする目的で使用される。
【0037】
キャリア回収ユニット9は、感光ドラム2の回転方向に見て、転写帯電器6とクリーニングユニット10との間に設けられ、記録媒体MRCに転写されずに感光ドラム2の表面に残留したキャリア粒子や、後述のブラシローラ10bに因って、感光ドラム2の表面からはたき落とされたキャリアを回収する。キャリア回収ユニット9は、内部に磁気ローラである回収ローラ9aを有し、キャリア粒子を磁気的に吸着して回収する。
【0038】
クリーニングユニット10は、記録媒体MRCに転写されずに感光ドラム2の表面に残留したトナー粒子を主として除去するもので、ハウジング10a内にブラシローラ10bと回収ローラ10cが設けられている。ブラシローラ10bは、トナー粒子と逆極性のバイアス電圧が印加され、感光ドラム2の表面に残留したトナー粒子をブラシで掻き取ると共に、静電的に吸着してクリーニングする。回収ローラ10cは、ブラシローラ10b以上の絶対値のバイアス電圧が印加され、ブラシローラ10bに吸着されたトナー粒子を静電的に回収する。回収されたトナー粒子は、図示しないブレードによって回収ローラ10cから掻き落とされ、紙面表裏いずれか一方向に設けた回収部(図示せず)へ移送される。
【0039】
除電ランプ11は、複数個の小形の電球からなり、光照射によって感光ドラム2の表面から残留電荷を除去する。尚、電球の替わりにLED等の発光素子を用いる事も出来る。
【0040】
搬送ユニット15は、2本の搬送ローラ15a間に搬送ベルト15bを掛け渡した構造を持ち、搬送ローラ15aが図示しない駆動モータによって図中矢印方向に回転駆動されており、これにより搬送ベルト15b上に載置された記録媒体MRCを搬送する。
【0041】
搬送ユニット15の後方には、スカフローラ対16が存在する。スカフローラ対16を構成する2本のローラの内、記録媒体MRCの下方に位置するローラのみが図示しない駆動モータによって回転駆動されている。他方のローラは記録媒体MRCを挟んで自重により下方に付勢され、従動回転している。
【0042】
図1に示すように電子写真プリンタ1に於いては、感光ドラム2上に現像された未定着のトナー像が転写帯電器6によって転写される転写位置から、定着ユニット20によって該トナー像が定着される定着位置までの間を含め、記録媒体MRCが搬送される搬送経路が、略直線状で、かつ略水平となるように構成されている。このように記録媒体MRCの搬送経路を略直線状とすれば、記録媒体の搬送に当たって、該記録媒体を折り曲げることがなく、厚紙、薄紙、合成紙、樹脂フィルム媒体など、いわゆる特殊媒体の搬送も容易とすることが出来る。
【0043】
定着ユニット20は、ハウジング20a内に輻射熱源となる2本の定着ランプ21、反射板22、反射板22を冷却する放熱フィン23が設けられ、搬送ユニット15に対向するハウジング20aの前面には保護ガラス24が配置されている。また、定着ユニット20の下流側に、空気を吸引する吸引ダクト26が設けられている。
【0044】
定着ランプ21は、例えば、キセノンランプやハロゲンランプが使用される。反射板22は、内面が高い反射率を有するアルミニウム等の金属を板金加工して成形されている。但し、反射板22は、金属であると板金加工のため形状の自由度が低く任意の形状に成形することができないうえ重くなる。このため、反射板22は、金属蒸着したポリイミド等の耐熱性樹脂で成形してもよい。例えば、厚0.1〜0.5mm程度の厚さを有するポリイミドフィルムを真空成形によって所望の反射板形状に一体成形し、アルミニウム、銀、金等の金属を内面に蒸着して製造してもよい。
【0045】
吸引ダクト26は、図1において電子写真プリンタ1の紙面表裏方向に配置され、搬送ユニット15側に開口を有し、内部には脱臭、脱煙用のフィルタとブロワ等の吸引手段が設けられている。吸引ダクト26は、定着ユニット20周りの空気を吸引し、電子写真プリンタ1の外部へ排出することで、主として定着ユニット20における未定着トナー像の定着によって発生するトナー成分の不快な臭気や煙を除去する。
【0046】
電子写真プリンタ1は以上のように構成され、以下に述べる電子写真方法により記録媒体MRCに未定着トナー像を定着して所望のプリントを行う。
先ず、クリーニングユニット10で表面が清掃され、矢印A方向に一定の速度で回転する感光ドラム2は、除電ランプ11で表面の残留電荷が除去され、主帯電器3で一様に帯電される。
【0047】
次に、LEDプリントヘッド4が、感光ドラム2に光ビームを照射し、記録情報に対応した静電潜像を感光ドラム2の表面に形成する。この静電潜像は感光ドラム2の回転により、現像ユニット5で現像され、未定着トナー像(可視像)となる。
【0048】
そして、感光ドラム2上に現像された未定着トナー像は、矢印Bで示した搬送経路に沿って搬送されてくる記録媒体MRC上に転写帯電器6で転写される。未定着トナー像が転写された記録媒体MRCは、分離帯電器7で感光ドラム2から離され、搬送ユニット15によって定着ユニット20へ搬送される。定着ユニット20では、定着ランプ21が発光し、発生した熱により未定着トナー像が溶融し記録媒体MRC上に定着される。
【0049】
電子写真プリンタ1においては、上記のようにして、記録情報に対応した画像が記録媒体MRC上に形成され、クリーニング前帯電器8での帯電、キャリア回収ユニット9でのキャリア回収、クリーニングユニット10での感光ドラム2の表面クリーニングの後、除電ランプ11によって感光ドラム2の残留潜像が消去されて、引き続く次の画像形成に供される。
【0050】
次に図2を用いて、主帯電器3について詳述する。
【0051】
図2は主帯電器3の断面構成図である。放電ワイヤ31は、直径80μmの金メッキタングステンワイヤーで、シールド板32の両端部のエンドブロック34に設けられたV溝35に張架される。シールド板32は厚み0.8mmのステンレス鋼板を折り曲げたものであり、また、グリッド電極33は、厚み0.1mmのステンレスシートに、電解エッチングによって、図3に示す開口パターンを加工した、いわゆるメッシュグリッドである。そして、グリッド電極33もエンドブロック34上に支持、張架されている。
【0052】
図4は主帯電器3の動作及び帯電電位制御方法を示す概略図である。放電ワイヤ31は出力可変の高圧電源30に接続されている。グリッド電極33はバリスタ電圧810Vのバリスタ36を介して接地されている。尚、以降バリスタ電圧810Vのバリスタを、単に810Vバリスタと表記することとする。
【0053】
感光ドラム2の回転方向に見て主帯電器3の下流側に表面電位測定手段である表面電位センサ27が設けられ、感光ドラム2の表面電位を測定する。表面電位センサ27の出力は高圧電源30の出力制御部42(出力電流制御手段)にフィードバックされ、表面電位センサ27の出力に応じて高圧電源30の出力電流を制御する。
【0054】
感光ドラム2のターゲット電位は標準で680Vであり、出力制御部42の基本的な動作は、表面電位センサ27の出力がターゲット電位よりも低い場合に、高圧電源30の出力電流を増やす方向に、逆に、ターゲット電位よりも高い場合には出力電流を下げる方向に高圧電源30を制御し、感光ドラム2表面電位をターゲット電位付近で一定に保つ。尚、本実施態様においては、グリッド電極33はバリスタ36を介して接地する構成としたが、バリスタ36の代わりに同じく810Vの高圧電源(グリッド電源)を接続しても、主帯電器3として機能的には同じである。
【0055】
図5は主帯電器3の放電特性を示した図である。横軸が放電ワイヤの放電電圧、縦軸は左側が放電電流(mA)、右側が感光ドラム表面電位(V)である。
【0056】
図6は810Vバリスタの代わりに、810Vに設定した直流高圧電源を接続した場合の、帯電器3の放電特性であるが、810Vバリスタを用いた場合と放電特性に差は見られない。この結果から、本明細書においては、バリスタ値がグリッド電圧Vgであるバリスタを介してグリッドを接地することは、グリッドに直流高圧電源を用いてグリッド電圧Vgを印加することと等価と見なす。
【0057】
ターゲット電位は標準設定では680Vであるが、前述したように、印字濃度、かぶり等のプロセス調整のため、この近辺で表面電位を可変とする必要がある。
【0058】
次に、図7は従来技術に基づく主帯電器40の断面構成図である(従来例)。尚、図2と同じ部材に対しては同じ符号を付与している。図2と比較して大きく異なる点は、放電ワイヤ31の本数が2本あること、及び、放電ワイヤ31と感光ドラム2表面との距離がより近い7mmの位置にあること、さらに図示していないが、グリッドが680Vのバリスタを介して接地されていることの3点である。
【0059】
図8には、従来技術による主帯電器40の放電特性図を示す。図中×で示した点はリーク発生を示し、これの放電電圧(リーク発生電圧)以上の放電電圧での動作は不可であることを示している。
【0060】
図5と図8を比較しつつさらに本発明について説明する。
【0061】
まず、従来技術による主帯電器40(図8)では、標準設定のターゲット電位680Vに対し、それとほぼ同じ680Vのバリスタを介してグリッドが接地されている。このため、図8の放電特性図に示すように、600〜680V付近では、放電電圧に対し表面電位が殆ど傾きを持っていない。これは、スコロトロン帯電器としては理想的に動作しているといえるが、プロセス調整のために感光ドラム表面電位を可変とすることは出来ない。
しかもそれ以前に、680Vでリーク発生しているためターゲット電位680Vは実現できない。
【0062】
以下、本発明が完成に至った経過について、その中間態様も交えてさらに説明する。
【0063】
まず、図7に示す従来技術の構成において、バリスタ値を810Vとした時の放電特性が図9(比較例1)である。ターゲット電位680V近辺で、表面電位が放電電圧(放電電流)に対し傾きを持っており、放電電圧(放電電流)で表面電位が制御しやすくなったことが分かる。これは、グリッド電圧が810Vに対し、それ以下の表面電位で放電させているため、グリッド電極は有するものの、放電されたコロナの一部はコロトロン帯電器的に振る舞っているものと考えられる。
【0064】
図9に於いては、放電電圧(放電電流)による表面電位の制御は可能であるが、放電均一性については許容できるものではなかった。図10(a)は600dpiの解像度で20%ハーフトーン画像を印字させたものであるが、プロセスの幅方向に数mmのランダムな間隔で濃淡(印字ムラ)が確認できる。これは、グリッド電極33による電位の制御性を低下させたため、帯電後の表面電位に電位ムラが発生しているためである。
【0065】
本実施態様ではLEDヘッド4による露光部にトナーが現像される反転現像方式であるが、表面電位に許容以上の電位ムラが存在すると、その電位ムラのため、ハーフトーンを構成する1ドットの露光後電位や露光後のドット形状が電位ムラに応じてわずかではあるが変化する。このため、現像後のドット形状やドットサイズも電位ムラに応じてわずかではあるが変化し、目視では筋状のムラとなって認識されるものである。もちろん、極端に電位が低い場合にはその部分が現像されて明らかな黒筋となる。
【0066】
次に、図11(比較例2)は図9からさらに改良したもので、放電ワイヤ31位置を感光ドラム2表面から遠ざけ(7mmを10mmに)たものである。なお、放電ワイヤ31と感光ドラム2表面との距離は、感光ドラム2は直径120mmの円筒形上であるが、帯電器はその直上に位置しており、放電ワイヤ31と感光ドラム2最上部との鉛直距離をいう。
【0067】
図11では、図9と比べ放電電圧が高い方向にシフトしている。また、印字ムラも依然として許容レベルではないものの、図10(b)に示すように、図9の構成に比べれば大きく改善している。
【0068】
これは、放電ワイヤ31が感光ドラム2から遠くなったため、放電ワイヤ31からの放電ムラの影響が小さくなったため考えられる。本実施態様はマイナス帯電の感光ドラム2を用いたマイナスプロセスであり、主帯電器もマイナス放電するものである。参考文献(「電子写真の基礎と応用」、電子写真学会編、コロナ社、1988,p49)にあるように、一般にマイナス放電はプラス放電に比べ、放電ワイヤ長手方向の放電均一性は劣るといわれている。
【0069】
これは、同文献もあるように、マイナス放電では、放電ワイヤ長手方向に見て均一な放電(電荷放出)が行われず、図12(a)に示すように、放電ワイヤ上に数mmの不規則な間隔で並んだ輝点が生成され、該輝点から感光ドラム2表面に向かって放射状に放電電荷(コロナ)放出が行われると考えられる。このため、図12(b)に概念的に示す様に、放電ワイヤ位置が近すぎる場合には、放射状の放電電荷の継ぎ目付近で電荷密度が低くなり表面電位が低下するものと考えられる。
【0070】
図10に示した印字上の放電ムラ間隔もおよそこの輝点間隔と一致している。図9の状態においては、グリッド電圧を810Vとしてグリッド電極の制御性を低くしたため、この輝点放電による放電ムラをグリッドが保証しきれなくなったためと見られる。これを、放電ワイヤ31を感光ドラム2表面から遠ざけたことによって、図12(b)に示した様に、感光ドラム2表面上の電位ムラが低減された効果と見られる。
【0071】
さらに、放電ムラを低減するために、放電ワイヤ31を1本としたのが、本実施態様における主帯電器3(実施例1)の構成である。図11(比較例2)と図5(実施例1)を比較すると放電電圧がさらに高い方向にシフトしている。さらに注意すべきは放電電流量である。標準設定のターゲット電位680V付近での放電電流量は両者とも3〜3.5mAで大差はない。しかしながら図11は放電ワイヤ31が2本であり、1本あたりの放電電流量はその半分(1.5〜1.75mA)と見られる。
【0072】
即ち、放電ワイヤ31を1本とすることで、放電ワイヤ1本あたりの放電電流量を増やし、前述の放電ムラを押さえる効果が出ているものと考えられる。一般に、マイナス放電においては放電電圧が高い(即ち放電電流が多い)ほど放電ムラは少なくなる傾向がある。
この構成において、図10(c)に示すように、印字ムラも実用上問題ないものとなった。
【0073】
放電ワイヤ31を1本のみとした場合の、印字ムラ、リーク発生状況を図13にまとめる。図中アンダーラインを付した条件は、実験的には印字は可能であったものの、リーク発生のため、実使用は難しい。この結果より、放電ワイヤ31と感光ドラム2との距離が9mm以上、グリッド電圧Vgが810Vから950V、即ちVg/Vdがおよそ1.2〜1.4の範囲で、リーク発生なく、印字ムラも問題ないレベルの印字が可能である。
【0074】
以上の検討の結果、安価なバリスタを用いた構成でも、感光ドラム2表面電位の変化が容易に出来、かつ、印字ムラも許容範囲内にある主帯電器が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に関わる画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明による主帯電器の断面構成を示す図である。
【図3】メッシュグリッドを示す図である。
【図4】本発明に関わる、帯電器並びに表面電位制御の概略構成を示す図である。
【図5】本発明による主帯電器の放電特性図である。
【図6】本発明による主帯電器の放電特性図である。
【図7】従来技術による主帯電器の断面構成を示す図である。
【図8】従来技術による主帯電器の放電特性図である。
【図9】比較例の主帯電器の放電特性図である。
【図10】帯電器の放電ムラによるハーフトーン画像の図である。
【図11】比較例の主帯電器の放電特性図である。
【図12】放電ムラの概念図である
【図13】放電ワイヤ1本での、印字ムラ、リーク発生状況をまとめた図である。
【符号の説明】
【0076】
1.電子写真プリンタ
1b.導入口
1c.排出口
1e、1f.ステー
1g、1h.遮蔽板
2.感光ドラム
3.主帯電器
4.LEDプリントヘッド
5.現像ユニット
5c.現像ロール
5d.磁石
6. 転写帯電器
7.分離帯電器
8.クリーニング前帯電器
9.キャリア回収ユニット
10.クリーニングユニット
10b.ブラシローラ
11.除電ランプ
12.分離爪
13.ガイド板
14.トラクタ
10b.ブラシローラ
14.トラクタ
14a.トラクタピン
14b.トラクタベルト
15.搬送ユニット
15a.搬送ローラ
15b.搬送ベルト
16.スカッフローラ対
20.定着ユニット
21.フラッシュランプ
22.反射板
23.放熱フィン
24.保護ガラス
26.吸引ダクト
27.表面電位センサ
30.高圧電源
31.放電ワイヤ
32.シールド板
33.グリッド電極
34.エンドブロック
35.V溝
36.バリスタ
40.主帯電器
41.エンドブロック
42.出力制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス速度400(mm/s)以上の電子写真装置に於いて静電潜像担持体表面を一様に帯電するための帯電器であって、高電圧が印加される1本のみの放電ワイヤ、該放電ワイヤを囲み前記静電潜像担持体と対向する側に開口を有するシールド板、前記開口部に配されたグリッド電極、を少なくとも有し、前記グリッド電極に印加するグリッド電圧をVg(V)、前記静電潜像担持体のターゲット電位をVd(V)としたときに、1.2<Vg/Vd<1.4であり、かつ、前記放電ワイヤと前記静電潜像担持体表面との距離が9(mm)以上であることを特徴とする帯電器。
【請求項2】
前記グリッド電極が、前記グリッド電圧Vgをバリスタ電圧とするバリスタを介して接地されたものであることを特徴とする請求項1に記載の帯電器。
【請求項3】
前記静電潜像担持体がマイナス帯電性のものであり、前記帯電器はマイナス放電するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の帯電器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の帯電器を有する画像形成装置。
【請求項5】
前記帯電器による帯電後の前記静電潜像担持体表面の表面電位を測定する表面電位測定手段、前記放電ワイヤに高電圧を印加する高圧電源、前記表面電位測定手段の測定結果に基づき、前記高圧電源の前記放電ワイヤへの出力電流を制御する出力電流制御手段をさらに有する事を特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−244536(P2009−244536A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90170(P2008−90170)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】