説明

帯電部材印加用直流電源回路、画像形成装置

【課題】立ち上がり電圧のオーバーシュートを含め出力電圧の安定領域内で、帯電ロールの周面に発生する変形度合いによって決定されるリップル電圧を許容範囲内とする。
【解決手段】平滑部・リップル抑制部158では、整流後の電圧変動をなまらせるという通常の役目に加え、リップル電圧の振幅を抑制している。このリップル電圧抑制は、平滑部・リップル抑制部158に入力される、整流された二次側電圧の立ち上がりにオーバーシュートを発生させる要因にもなる。そこで、一次側において、すなわち、メインコントロール部70からの入力信号を入力信号立ち上がり時間調整部150へ入力させ、平滑部・リップル抑制部158でオーバーシュートする分、先に、入力信号の応答性を鈍くしておく。これにより、立ち上がり時のオーバーシュートを回避しつつ、リップル電圧も抑制するという、所謂トレードオフの関係にある目的が同時に実現可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材印加用直流電源回路、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体に接触して帯電を行う接触帯電ローラは、感光体に対して圧力を持って接触している。この帯電ローラはその多くがゴム製であるため、非動作状態が続くと、圧力がかかった部分が変形する場合がある。変形は、条件によって異なるが、半永久的に変形状態のままであったり、使用している間に元に戻ったりし、変形そのものの形もそれぞれ異なる。直流電源回路の下、前記変形が発生していると、回転周期毎に筋状の画像むらが発生し易い。
【0003】
特許文献1には、出荷時には帯電ローラが感光体に接触しないようにスペーサを使用したり、変形しても直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を用い、画像むらを軽減することが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、定電流制御の応答速度を低下させる技術が開示されている。この特許文献2は、交流電源回路を用いた技術である。
【0005】
さらに、特許文献3には、感光体に接触する帯電部材と、この帯電部材に接続された抵抗器と、この抵抗器に接続されるとともに当該抵抗器を介して前記帯電部材に直流電圧を印加する電源回路と、を備えた接触式帯電装置が提案されている。この特許文献1では、帯電部材と抵抗器との接続個所とグランドとの間にコンデンサを接続することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−160718号公報
【特許文献2】特開2003−140446公報
【特許文献3】特開2002−351196公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、立ち上がり電圧のオーバーシュートを含め出力電圧の安定領域内で、帯電ロールの周面に発生する変形度合いによって決定されるリップル電圧を許容範囲内とすることができる帯電部材印加用直流電源回路及び画像形成装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、主制御部からの指示を受けて、帯電部材に印加するための直流成分の電圧源となる入力電圧を調整する電圧調整部と、前記電圧調整部によって調整された電圧を増幅する増幅部と、前記増幅部によって増幅された電圧を直流化し、かつ増幅率を前記電圧調整部にフィードバックして補正することで、目標の直流電圧を出力する電圧出力部と、前記電圧出力部から出力される電圧に発生するリップルを抑制するための容量性負荷を調整して平滑化する平滑部と、前記平滑部によるリップル抑制に対して、相関関係をもった電圧の立ち上がり時期のオーバーシュート量を抑制するオーバーシュート抑制部と、を有している。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記請求項1記載の発明において、前記オーバーシュート抑制部が、前記平滑部で調整された容量性負荷の数値から予測して、予め前記電圧調整部に入力される入力電圧の立ち上がり特性を変更する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記オーバーシュート抑制部が、電圧出力部に含まれて折り、前記電圧出力部における目標の出力電圧を維持するためのフィードバックの処理速度を電圧の立ち上がり時期に上げることで実行される。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記請求項1〜請求項3の何れか1項記載の帯電部材印加用直流電源回路と、電潜像が形成される像保持体と、前記像保持体に圧力を持って接触され、少なくとも周面に弾性層を備えたロール形状の帯電部材と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、立ち上がり電圧のオーバーシュートを含め出力電圧の安定領域内で、帯電ロールの周面に発生する変形度合いによって決定されるリップル電圧を許容範囲内とすることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、予測に基づいて立ち上がり特性を変更するため、本構成を有しない場合に比べ、制御が容易となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、フィードバックの処理速度を立ち上がり時期に上げることで、本構成を有しない場合に比べ、オーバーシュートの緩和精度が向上する。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、立ち上がり電圧のオーバーシュートを含め出力電圧の安定領域内で、帯電ロールの周面に発生する変形度合いによって決定されるリップル電圧を許容範囲内とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】本実施の形態に係る制御ユニットのハード構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態に係る感光体ドラムと帯電ロールとの相対位置関係を示す拡大図である。
【図4】帯電ロールに印加する電圧のリップル特性であり、(A)は本実施の形態に係るリップル抑制実行時、(B)はリップル抑制非実行時(非対策)を示す。
【図5】本実施の形態によって解消させる対象であり、帯電ロールの凹部によって発生する筋状の画像を示す用紙の平面図である。
【図6】本実施の形態に係る高電圧電源部の機能ブロック図である。
【図7】画像に発生する筋レベル評価を行った実験結果を示す評価特性図である。
【図8】本実施の形態の変形例1に係る高電圧電源部の機能ブロック図である。
【図9】本実施の形態の変形例2に係る高電圧電源部の機能ブロック図である。
【図10】本実施の形態の変形例3に係る高電圧電源部の機能ブロック図である。
【図11】本実施の形態の変形例4に係る高電圧電源部の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(全体構成)
図1に示されるように、画像形成装置10は、筐体12を有し、筐体12の下部には、シート材供給装置14が配置されている。また、筐体12の上部には画像が形成されたシート材を排出する排出トレイ16が形成されている。
【0018】
さらに、シート材供給装置14には、給紙カセット18が備えられ、この給紙カセット18には、多数の用紙Pが積層収容されている。また、給紙カセット18には、用紙Pが積載されるボトムプレート20が設けられている。用紙Pを後述する感光体ユニット30に支持された感光体ドラム40の転写部34へ給紙する際には、ボトムプレート20は、昇降手段(図示省略)によって、上方に移動するようになっている。そして、ボトムプレート20に積載された最上部の用紙Pをピックアップロール22に押し当てる構成となっている。さらに、給紙カセット18を筐体12から引き出すとボトムプレート20は、昇降手段によって、下方へ移動し、用紙Pを給紙カセット18に収納するようになっている。
【0019】
また、用紙Pを転写部34へ送り出す時は、ボトムプレート20に積載された最上位の用紙Pは、ピックアップロール22によって順次取り出され、さらに、回転駆動する給紙ロール24と分離ロール26によって、一枚ずつ搬送されるようになっている。
【0020】
また、給紙カセット18から搬送された用紙Pは、レジストローラ28により一時停止され、所定のタイミングにより感光体ユニット30と転写ユニット32との間を通り、さらに、トナー画像を用紙Pに定着する定着装置36を通って排出ロール38により排出トレイ16へ排出される構成となっている。
【0021】
また、筐体12内には、感光体ユニット30、転写ユニット32、電源ユニット41、及び制御ユニット44が配置されている。この感光体ユニット30には、感光体フレーム46が設けられ、感光体フレーム46には、4つの感光体ドラム40が回転自在に支持されている。
【0022】
制御ユニット44は、画像形成全般の制御を司るものである(詳細後述)。
【0023】
図1に示されるごとく、各感光体ドラム40の周囲には、感光体ドラム40をー様に帯電する帯電ロール48と、各感光体ドラム40に書き込まれた潜像を現像剤(トナー)で現像する現像手段としての現像ユニット50と、転写後の感光体ドラム40を除電する除電装置52と、転写がなされた後に感光体ドラム40に残留する現像剤を除去する現像剤除去手段としてのクリーニング装置54が設けられている。
【0024】
また、感光体ユニット30は、4つの感光体ドラム40、帯電ロール48、現像ユニット50、除電装置52、及びクリーニング装置54を感光体フレーム46に保持させて一体化したものであり、筐体12に対して着脱自在になっている。
【0025】
一方、4つの現像ユニット50に対応した4つのトナーボックス56は、感光体ユニット30の裏面側方に接続されている。このトナーボックス56は、マゼンダ、イエロー、シアン、及びブラック用であり、トナー供給部58とトナー回収部60とが一体になって構成されている。さらに、トナー供給部58は、現像ユニット50に接続されており、各色のトナーを現像ユニット50に供給するようになっている。また、トナー回収部60は、クリーニング装置54に接続されて各色のトナーを回収する構成となっている。
【0026】
さらに、感光体ドラム40にレーザ光で潜像を書き込む露光装置62は、感光体ユニット30の背面側であって、各感光体ドラム40に対応した位置に配置され、一様に帯電された感光体ドラム40に対してレーザを照射して潜像を形成するようになっている。
【0027】
また、転写ユニット32は、感光体ユニット30の表側であって、感光体ユニット30に対向して縦方向に配置されている。この転写ユニット32には、上下方向に設けられた2つの支持ロール64と、この2つの支持ロール64に巻き掛けられた搬送ベルト66と、搬送ベルト66を挟んで各感光体ドラム40に対向する位置に設けられた転写ロール68が設けられている。
【0028】
また、前記搬送ベルト66における支持ロール64に巻き掛けられた位置には、当該搬送ベルト66と一定の距離をおいて表面と対峙するように、濃度センサ91が配置されている。濃度センサ91は、搬送ベルト66上に基準画像を形成し、その濃度を計測して、露光装置62からの画像データに基づく光量や現像ユニット50における現像バイアス電圧を調整する画像濃度調整と、搬送ベルト66上に基準画像を形成し、その濃度を計測して、二成分現像剤のトナー濃度(トナー/キャリア)を調整するトナー濃度調整とがある。
【0029】
また、搬送ベルト66における前記支持ロール64よりも搬送方向下流側には、クリーニング装置94が設けられている。クリーニング装置94は、スクレーパ94Sを備えており、このスクレーパ94Sの先端部が搬送ベルト66に接触している。
(制御ユニットのハード構成)
図2に示される如く、制御ユニット44は、メインコントロール部70を含んでいる。メインコントロール部70は、CPU72、RAM74、ROM76、I/O(入出力部)78、及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス80を有している。
【0030】
I/O78には、前記プリンタ10における搬送系や、画像形成のための走査露光系、現像系等の各処理系を制御し、管理するための印刷制御管理部88が接続されている。
【0031】
より詳細には、印刷制御管理部88には、搬送制御部100、走査露光制御部102、現像制御部104、転写制御部106、定着制御部108が接続され、各部の制御を管理している。
【0032】
印刷制御管理部88は、I/O78ではなく、直接バス80に接続された構成であってもよい。また、ここでは、印刷に関する制御を印刷制御管理部88に集約する構成としたが、当該制御をメインコントロール部70で実行する構成であってもよい。
【0033】
また、I/O78には、UI(ユーザ・インターフェイス)82が接続されている。UI82は、ユーザーからの入力指示を受け付け、かつユーザーへ画像処理に関する情報を報知する役目を有している。さらに、I/O78には、ハードディスク84が接続されている。また、I/O78は、I/F86を介して通信回線網90に接続されている。
【0034】
前記搬送制御部100、走査露光制御部102、現像制御部104、転写制御部106、定着制御部108は、それぞれ前記電源ユニット41から電源を受けている。電源ユニット41は、商用電源を入力源とし、大きく分類して、制御用電源部41A(3.3V)、低電圧電源部41B(LVPS/24V)、高電圧電源部41C(HVPS/−900V〜−1300V)を備えている。なお、高電圧電源部の電圧の極性は、適用される現像剤(トナー)の帯電極性によって変わるものであり、ここでは、極性をマイナス(−)としている。
【0035】
制御用電源部41Aは、制御用電源ラインLAを介して、メインコントロール部70を含む各制御系へ制御用電源を供給する。また、低電圧電源部41Bは、低電圧電源ラインLBを介して、搬送制御部100、走査露光制御部102、現像制御部104、転写制御部106、定着制御部108へ低電圧電源を供給する。さらに、高電圧電源部41Cは、高電圧電源ラインLCを介して、主として走査露光制御部102、現像制御部104、転写制御部106へ高電圧電源を供給する。
【0036】
ここで、走査露光制御部102が制御する範疇において、感光体ドラム40をー様に帯電する帯電ロール48には、高電圧電源が供給されている。本実施の形態では、高電圧電源は、直流電圧としている。
【0037】
帯電ロール48には、約−950Vを印加し、感光体ドラム40の感光面(周面)を一様帯電している。
【0038】
ところで、図3に示される如く、感光体ドラム40と帯電ロール48との相対位置関係は、感光体ドラム40に対して、一定の圧力で帯電ロール48が接触している。また、帯電ロール48は、少なくとも周面がゴム等の弾性体で形成されているため、前記圧力によって弾性変形して(凹んだ状態)感光体ドラム40に接触している。
【0039】
この場合、稼働中、すなわち、定期的に感光体ドラム40及び帯電ロール48がそれぞれ自転している場合は、特に問題はないが、製品出荷前、交換ユニットとして保管、長期非稼働等、同じ相対位置関係で圧力がかかっていると、帯電ロール48の凹んだ部分(以下、「凹部48A」という)が復帰しない場合がある。また、復帰力があっても、復帰するのに時間を要する場合がある。
【0040】
図4(B)は、このような凹部48Bが存在した場合の、非対策時の高電圧電源の変動特性を示している。図4(B)に示すように、高電圧電源(−950V)は所定の範囲で振幅は発生している(リップル電圧)。このリップル電圧は、帯電ロール48の凹部48Bが感光体ドラム40に接触したとき、最も大きくなり、この特性曲線では、振幅はPeak to Peakで30Vに達している。
【0041】
図5は、上記30V程度のリップル電圧が周期的に発生する帯電状態で、用紙Pにハーフトーン画像(グレー画像)PGを一様に形成した場合の画像であり、前記リップル電圧が高くなっている領域で、周囲とは異なる濃度の筋状の画像PSが発生する。
【0042】
そこで、本実施の形態では、高電圧電源部41Cにおいて、リップル電圧を抑制するための機能を付加している。
【0043】
図6は、本実施の形態に係る高電圧電源部41Cのブロック図である。
【0044】
メインコントロール部70から入力される入力信号は、入力信号立ち上がり時間調整部150に入力される。この入力信号立ち上がり時間調整部150は、入力信号の応答性を調整(鈍くする調整)する役目を有しており、この入力信号立ち上がり時間調整部150で調整された調整信号は、電圧制御部152へ送出されるようになっている。
【0045】
電圧制御部152では、低電圧電源部41Bからの低電圧を一次側として、目標とする出力電圧(例えば、−950V)にするために、前記一次側電圧を調整する。なお、この電圧制御部152には、後述する短絡防止部160の出力端から出力電圧/入力電圧(増幅率)信号が入力されるようになっており、フィードバック制御が実行される。
【0046】
電圧制御部152から出力される一次側電圧は、増幅部(例えば、トランス)154、並びに整流部156を介して、平滑部・リップル抑制部158に入力されるようになっている。
【0047】
平滑部・リップル抑制部158は、基本的な役目として、前記増幅部154で増幅された二次側電圧の直流化(DC化)である。すなわち、本実施の形態では、帯電ロール48に印加する電圧は直流電圧(−950V)であり、一次側電圧が交流であるため、整流部156で整流した後、容量性負荷(例えば、コンデンサ)を用いて、所謂電圧の周期変化をなまらせることで、直流電源を生成する(二次側直流電圧)。この直流電源生成のために容量負荷としてコンデンサを適用した場合、一次側電圧が24V、二次側電圧が−950Vの場合、330pF程度の静電容量が一般的である。
【0048】
ところが、本実施の形態では、この平滑部・リップル抑制部158における容量性負荷を、コンデンサを用いた場合、0.01μF程度の静電容量(前記、一般よりも大きい容量)を適用し、リップル電圧の変動幅(振幅)を抑制するようにしている。
【0049】
従って、この平滑部・リップル抑制部158は、リップル電圧抑制としての役目を兼ねることになる。
【0050】
平滑部・リップル抑制部158から出力される二次側直流電圧は、短絡防止部160を介して出力部162へ送られ、この出力部162から帯電ロール48へ二次側直流電圧(−950V)が印加される。
【0051】
なお、短絡防止部160からは、前記電圧制御部152でのフィードバック制御を行うための、増幅率信号(二次側直流電圧の変化に比例した、一次側レベルの電圧)を送出するフィードバック信号線164の一端部が接続されている。
【0052】
以下に本実施の形態の作用を説明する。
【0053】
(画像形成処理手順)
まず、画像形成装置10における、画像形成手順を説明する。
【0054】
帯電ロール48は、感光体ドラム40の表面を予定の帯電部電位で一様にマイナス帯電する。さらに、帯電された感光体ドラム40上の画像部分が予定の露光部電位になるように露光装置62で露光を行ない静電潜像が形成される。
【0055】
すなわち、制御ユニット44から供給される画像データに基づき、半導体レーザ(図示省略)をオン・オフして変調することによって画像に対応した潜像が各感光体ドラム40上に形成される。
【0056】
さらに、回転する感光体ドラム40上の静電潜像が現像ユニット50を通過すると、電気力によって現像ユニット50に収納された現像剤Gのトナーが静電潜像へ付着し、静電潜像はトナー画像として可視化される。
【0057】
そこで、給紙カセット18に載置された用紙Pがピックアップロール22によって送り出され、さらに、回転駆動する給紙ロール24と分離ロール26によって、一枚ずつ搬送される。給紙カセット18から搬送された用紙Pは、レジストローラ28により一時停止され、所定のタイミングで、感光体ユニット30と転写ユニット32との間に送りだされる。そして、用紙Pは、搬送ベルト66によって保持されて各感光体ドラム40の転写部34へ搬送され、転写部34を通過する時に、感光体ドラム40上のトナー画像が用紙Pに順次転写される。
【0058】
用紙Pへ転写されたトナー画像は定着装置36で定着され、用紙Pは、排出ロール38によって排出トレイ16へ排出される。
【0059】
(帯電ロール48への電圧印加)
前記感光体ドラム30の表面の帯電ロール48を用いたマイナス帯電は、−950Vという高電圧であり、電源ユニット41の高電圧電源部41Cから供給を受けている。
【0060】
高電圧電源部41Cでは、以下のように高電圧電源を生成している。
【0061】
まず、入力信号立ち上がり時間調整部150が、メインコントロール部70から入力信号を受ける。
【0062】
入力信号立ち上がり時間調整部150では、入力信号の応答性を調整する(詳細後述)。調整された入力信号(調整信号)は、電圧制御部152へ送出される。
【0063】
電圧制御部152では、増幅率信号に基づいて、フィードバック制御が実行され、二次側電圧に基づいて、一次側電圧が調整される。
【0064】
フィードバック制御によって調整された一次側電圧は、増幅部154で増幅され、次いで、整流部156で整流され、平滑部・リップル抑制部158に入力される。
【0065】
平滑部・リップル抑制部158では、整流部156で整流された電圧特性(周期変化)を容量性負荷(コンデンサ)を用いてなまらせ、直流電源を生成する(二次側直流電圧)。
【0066】
平滑部・リップル抑制部158から出力される二次側直流電圧は、短絡防止部160を介して出力部162へ送られ、この出力部162から帯電ロール48へ二次側直流電圧(−950V)が印加される。
【0067】
ここで、平滑部・リップル抑制部158では、整流後の電圧変動をなまらせるという通常の役目に加え、本実施の形態では、リップル電圧の振幅を抑制している。
【0068】
このリップル電圧抑制は、平滑部・リップル抑制部158に入力される、整流された二次側電圧の立ち上がりにオーバーシュートを発生させる要因にもなる。
【0069】
そこで、一次側において、すなわち、メインコントロール部70からの入力信号を入力信号立ち上がり時間調整部150へ入力させ、平滑部・リップル抑制部158でオーバーシュートする分、先に、入力信号の応答性を鈍くしておく。
【0070】
これにより、立ち上がり時のオーバーシュートを回避しつつ、リップル電圧も抑制するという、所謂トレードオフの関係にある目的が同時に実現可能となる。
【0071】
図4(A)は、リップル電圧の振幅を抑制した場合における、帯電ロール48に凹部48A(図3参照)が存在した場合の、高電圧電源の変動特性を示している。
【0072】
図4(A)に示すように、高電圧電源(−950V)におけるリップル電圧は、帯電ロール48の凹部48Aが感光体ドラム40に接触したとき、最も大きくなるものの、その振幅はPeak to Peakで12Vに抑えられており、図4(B)に示す、非対策時のリップル電圧よりも低減している。
【0073】
このため、用紙Pにハーフトーン画像(グレー画像)を一様に形成した場合の画像においても、帯電ロール48に凹部48Aが発生していても筋状の画像が発生するようなことはない。
【0074】
図7は、本実施の形態に係る高電圧電源部41Cにおける平滑部・リップル抑制部158の電子部品として適用されるコンデンサ(容量性負荷)に基づく、筋レベル評価を行った実験結果を示す評価特性図である。
【0075】
この図7において、コンデンサの静電容量が0.02μFを超えると、出力電圧自体が不安定となり、上限のしきい値となり得る。また、コンデンサの静電容量が0.01μFを下回ると、徐々に筋レベル評価が悪化し始め、下限のしきい値となり得る。
【0076】
すなわち、平滑部・リップル抑制部158に適用するコンデンサの静電容量の0.01μF〜0.02μFの間で選択すればよい。
【0077】
(変形例1)
図8は本実施の形態に係る高電圧電源部41Cの変形例1を示すブロック図である。なお、上記実施の形態と同一構成部分については、同一の符号を付してその構成の説明を省略する。
【0078】
この変形例1では、高電圧電源部41Cにおける平滑部・リップル抑制部158(本実施の形態)に適用するコンデンサを単一とせず、2以上を並列接続するようにした(平滑部・リップル抑制部158A、158B)。これにより、既存の高電圧電源部41Cに必要なコンデンサの静電容量を追加すればよい。
【0079】
(変形例2)
図9は本実施の形態に係る高電圧電源部41Cの変形例2を示すブロック図である。なお、上記実施の形態と同一構成部分については、同一の符号を付してその構成の説明を省略する。
【0080】
この変形例2では、高電圧電源部41Cにおける平滑部・リップル抑制部158に代えて、本来の平滑部159と、リップル抑制部161とに分離した。リップル抑制のための電子部品としては、容量性負荷であれば、コンデンサに限定されるものではなく、変形例2は、リップル抑制部161として、バリスタを用いた。
【0081】
(変形例3)
図10は本実施の形態に係る高電圧電源部41Cの変形例3を示すブロック図である。なお、上記実施の形態と同一構成部分については、同一の符号を付してその構成の説明を省略する。
【0082】
変形例3では、立ち上がり時間調整部150を電圧制御部152の前段に設ける代わりに、フィードバック電圧立ち上がり時間調整部166をフィードバック信号線164に設けた点にある。このフィードバック電圧立ち上がり時間調整部166では、立ち上がり時間帯に限りフィードバック処理の速度を速めることで、オーバーシュートを抑制する。
【0083】
(変形例4)
図11は本実施の形態に係る高電圧電源部41Cの変形例4を示すブロック図である。なお、上記実施の形態と同一構成部分については、同一の符号を付してその構成の説明を省略する。
【0084】
変形例4では、電圧制御部152の前段に設けた立ち上がり時間調整部150に加え、フィードバック電圧立ち上がり時間調整部166をフィードバック信号線164に設けた点にある。このフィードバック電圧立ち上がり時間調整部166では、立ち上がり時間帯に限りフィードバック処理の速度を速めることで、オーバーシュートを抑制する。
【0085】
変形例4の場合、立ち上がり時間調整部150による入力立ち上がり時間が遅い方向で調整することで、リップルヲ抑制する。一方、フィードバック電圧立ち上がり時間調整部166では、制御幅を予め小さくして、立ち上がり時間帯に限りフィードバック処理の速度を速めることで、オーバーシュートを抑制する。
【符号の説明】
【0086】
P 用紙
10 画像形成装置
32 転写ユニット
34 転写部
36 定着装置
40 感光体ドラム
41 電源ユニット
44 制御ユニット
48 帯電ロール
48A 凹部
50 現像ユニット
62 露光装置
70 メインコントロール部
88 印刷制御管理部
100 搬送制御部
102 走査露光制御部
104 現像制御部
106 転写制御部
108 定着制御部
41A 制御用電源部
41B 低電圧電源部
41C 高電圧電源部
LA 制御用電源ライン
LB 低電圧電源ライン
LC 高電圧電源ライン
150 入力信号立ち上がり時間調整部(オーバーシュート抑制部)
152 電圧制御部(電圧調整部)
160 短絡防止部
154 増幅部
156 整流部
158 平滑部・リップル抑制部(平滑部)
160 短絡防止部(電圧出力部)
162 出力部
164 フィードバック信号線(電圧出力部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主制御部からの指示を受けて、帯電部材に印加するための直流成分の電圧源となる入力電圧を調整する電圧調整部と、
前記電圧調整部によって調整された電圧を増幅する増幅部と、
前記増幅部によって増幅された電圧を直流化し、かつ増幅率を前記電圧調整部にフィードバックして補正することで、目標の直流電圧を出力する電圧出力部と、
前記電圧出力部から出力される電圧に発生するリップルを抑制するための容量性負荷を調整して平滑化する平滑部と、
前記平滑部によるリップル抑制に対して、相関関係をもった電圧の立ち上がり時期のオーバーシュート量を抑制するオーバーシュート抑制部と、
を有する帯電部材印加用直流電源回路。
【請求項2】
前記オーバーシュート抑制部が、前記平滑部で調整された容量性負荷の数値から予測して、予め前記電圧調整部に入力される入力電圧の立ち上がり特性を変更する請求項1記載の帯電部材印加用直流電源回路。
【請求項3】
前記オーバーシュート抑制部が、電圧出力部に含まれて折り、前記電圧出力部における目標の出力電圧を維持するためのフィードバックの処理速度を電圧の立ち上がり時期に上げることで実行される請求項1に記載の帯電部材印加用直流電源回路。
【請求項4】
前記請求項1〜請求項3の何れか1項記載の帯電部材印加用直流電源回路と、
静電潜像が形成される像保持体と、
前記像保持体に圧力を持って接触され、少なくとも周面に弾性層を備えたロール形状の帯電部材と、
を有する画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−210790(P2010−210790A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55153(P2009−55153)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】