説明

帯電防止性成形体用活性エネルギー線硬化性組成物

【課題】 硬化性に優れ、耐傷性、剛性、透明性、基材との密着性および帯電防止性に優れた成形体を与える成形体用活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】 1個以上のエチレン性不飽和基を有するイオン性液体(A)、(A)を除く(メタ)アクリロイル基含有化合物(B)および光重合開始剤(C)を含有してなる成形体用活性エネルギー線硬化性組成物において、(B)が、3〜10mmol/gの(メタ)アクリロイル基濃度を有し、該組成物を硬化させてなる硬化物が、60〜200の架橋点間分子量を有することを特徴とする帯電防止性成形体用活性エネルギー線硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は帯電防止性成形体用活性エネルギー線硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、帯電防止性が求められる、プリズムシート、コリメーターレンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、後反射レンズおよびホログラム等の、表面に微細構造を有する光学レンズ等の成形体用活性エネルギー線硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイに使用されるプリズムシート、プロジェクションTVに使用されるフレネルレンズおよびレンチキュラーレンズといった光学レンズは、熱可塑性樹脂の射出成形、あるいは熱プレス成形により製造されるのが一般的であった。これらの製造方法では、製造時の加熱および冷却に長時間を必要とするため生産性が低く、また、光学レンズの熱収縮により、微細構造の再現性が悪く、反るという問題点があった。これらの問題点を解決するため、金型内面に透明樹脂基材がセットされた型内に紫外線硬化型樹脂組成物を流し込み、紫外線を照射して硬化させる方法が実施されている。
近年、ディスプレイの高精彩化に伴い、光学レンズにも高精彩化が要求されてきており、そのため、プリズム頂角が60〜70°、ピッチが数10μmというような、先端部が鋭く精細なレンズアレイの形成が必要とされている。
しかしながら、該レンズアレイは傷等で損傷しやすいことから、その耐傷性が検討されており、ビスフェノール骨格等の剛直な構造を導入する方法(例えば特許文献1参照)、フッ素化合物等の添加で表面に滑性を付与して傷付きにくくする方法(例えば特許文献2参照)、レンズアレイにさらにハードコート層を設ける方法(例えば特許文献3参照)等が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−240926号公報
【特許文献2】特開2005−272700号公報
【特許文献3】特開平11−326607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの方法では、耐傷性が不十分である、透明性や基材との密着性が低下する、工程が煩雑になり、生産性が著しく低下する等の問題があった。
本発明の目的は、硬化性が良好で、耐傷性、剛性、透明性、帯電防止性および基材との密着性に優れた成形体を与える帯電防止性成形体用活性エネルギー線硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、1個以上のエチレン性不飽和結合を有するイオン性液体(A)、(A)を除く(メタ)アクリロイル基含有化合物(B)および光重合開始剤(C)を含有してなる成形体用活性エネルギー線硬化性組成物において、(B)が、3〜10mmol/gの(メタ)アクリロイル基濃度を有し、該組成物を硬化させてなる硬化物が、60〜200の架橋点間分子量を有することを特徴とする帯電防止性成形体用活性エネルギー線硬化性組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の帯電防止性成形体用活性エネルギー線硬化性組成物は、下記の効果を奏する。
(1)活性エネルギー線照射時の硬化性に優れる。
(2)該組成物を硬化させてなる硬化物は永久帯電防止性に優れる。
(3)該硬化物は、耐傷性、剛性、透明性および基材との密着性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
[1個以上のエチレン性不飽和基を有するイオン性液体(A)]
本発明におけるエチレン性不飽和基を有するイオン性液体(A)(以下において反応性イオン性液体ということがある。)には、エチレン性不飽和基を有するモノマー型イオン性液体(A1)、エチレン性不飽和基を有するポリマー型イオン性液体(A2)、およびこれらの混合物が含まれる。なお、ここおよび以下において、イオン性液体とは、室温付近に融点を有する、カチオンおよびアニオンで構成される液体を意味する。
(A1)は下記の一般式(1)で表され、初期電導度が好ましくは1〜200(さらに好ましくは10〜200)ms/cmの常温溶融塩で、構成するカチオンおよびアニオンのうち少なくとも一方がエチレン性不飽和結合を有する。

(A1X)+(A1Z)- (1)

[(A1X)+(以下においてはA1Xと略記することがある)はカチオン、(A1Z)-(以下においてはA1Zと略記することがある)はアニオンを表す。]
【0008】
(A1)の分子内のエチレン性不飽和基の個数は、1個以上、硬化物の永久帯電防止性能、機械物性および透明性向上の観点から好ましくは2個〜5個またはそれ以上である。
【0009】
エチレン性不飽和基としては、例えばビニル基、プロペニル基、(メタ)アクリロイル基が挙げられる。これらのうち活性エネルギー線硬化性および後述する(メタ)アクリレート(B)との共重合性の観点から好ましいのは(メタ)アクリロイル基である。
エチレン性不飽和基は、A1Xおよび/またはA1Zのいずれに導入してもよく、A1X、A1Zの組み合わせには、(1)エチレン性不飽和基を有するA1X1とエチレン性不飽和基を有するA1Z1の組み合わせ、(2)A1X1とエチレン性不飽和基を有しないA1Z2の組み合わせ、(3)エチレン性不飽和基を有しないA1X2とA1Z1の組み合わせが含まれる。
【0010】
カチオン(A1X)の種類としては、オニウムカチオン(含窒素オニウムカチオン、含硫黄オニウムカチオン、含リンオニウムカチオン等)等が挙げられる。
含窒素オニウムカチオンには、アミジニウム、グアニジニウムおよびアンモニウムカチオン;含硫黄オニウムカチオンには、スルホニウム、チオフェニウム、チオモルホリニウムおよびチオキサニウムカチオン等;含リンオニウムカチオンには、ホスホニウムカチオンおよびテトラブチルホスホニウムブロミドカチオン等が、それぞれ含まれる。
帯電防止の観点から好ましいのはオニウムカチオンさらに好ましいのは含窒素オニウムカチオン、とくに好ましいのはアミジニウムおよびアンモニウムカチオンである。
【0011】
A1X1の具体例としては、アミジニウムカチオン〔C5〜30、例えばイミダゾリニウムカチオン[1−メチル−3−ビニルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル3−ビニルイミダゾリニウム、1−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルイミダゾリニウム、1,3ジメチル−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイミダゾリウム等]、イミダゾリウムカチオン[1−メチル−3−ビニルイミダゾリウム、1−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルイミダゾリウム等]、テトラヒドロピリミジニウムカチオン[1−メチル−3−ビニル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,3−ジメチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,5−テトラメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−1,5,6−トリヒドロピリミジニウム等]、およびジヒドロピリミジニウムカチオン[1−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチル−1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウム等]〕;グアニジニウムカチオン〔C6〜30、例えばイミダゾリニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−メチル−2−ビニルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−1,4−ジメチル−3−(メタ)アクリロイルオキシエチルイミダゾリニウム等]、イミダゾリウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,4−ジメチル−3−ビニルイミダゾリウム等]、テトラヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム等]等〕;アンモニウムカチオン〔C3〜50、例えば(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルアンモニウム、ビニルジラウリルアンモニウム〕;およびこれらの混合物が挙げられる。
【0012】
A1X2としては、アミジニウムカチオン〔C3〜30、例えばイミダゾリニウムカチオン[1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム等]、イミダゾリウムカチオン[1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム等]、テトラヒドロピリミジニウムカチオン[1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム等]、およびジヒドロピリミジニウムカチオン[1,3−ジメチル−1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウム等]〕;グアニジニウムカチオン〔C4〜30、例えばイミダゾリニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム等]、イミダゾリウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチルイミダゾリウム等]、テトラヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム等]、ジヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン[2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4−および−1,6−ジヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4−および−1,6−ジヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチル−1,4−および−1,6−ジヒドロピリミジニウム等]〕;アンモニウムカチオン〔C3〜50、例えばメチルジラウリルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム];およびこれらの混合物が挙げられる。
【0013】
A1Z1の具体例としては、カルボン酸(エステル)〔C3〜30、例えば、(メタ)アクリル酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピオン酸、モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、モノビニルコハク酸、モノ(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロフタル酸、水酸基含有多価(メタ)アクリレート[例えば、グリセリン(以下GRと略記)ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(以下TMPと略記)のエチレンオキシド(以下EOと略記)付加物のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(以下PEと略記)トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(以下DPEと略記)ペンタアクリレート、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応物]と2塩基酸とのモノエステル〕、スルホン酸エステル〔C2〜30、例えば、(メタ)アクリロイルオキシEO5モル付加物のスルホン酸モノエステル、ビニルアルコールのプロピレンオキシド(以下POと略記)3モル付加物のスルホン酸モノエステル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸〕、リン酸エステル〔C3〜30、例えば、モノ−およびジ(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸エステル、(メタ)アクリロイルオキシEO5モル付加物のリン酸モノ−およびジエステル(メタ)アクリロイルオキシエチルPO3モル付加物のリン酸モノ−およびジエステル、(メタ)アクリロイルオキシエチルカプロラクトン7モル付加物のリン酸モノ−およびジエステル、水酸基含有多価(メタ)アクリレート[例えば、GRジ(メタ)アクリレート、TMPのEO付加物のジ(メタ)アクリレート、PEトリ(メタ)アクリレート、DPEペンタアクリレート、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応物]とリン酸とのモノ−およびジエステル〕、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0014】
A1Z2としては、有機酸(C1〜30、例えばカルボン酸、硫酸エステル、高級アルキルエーテル硫酸エステル、スルホン酸エステルおよびリン酸エステル)、無機酸[例えば超強酸(ホウフッ素酸、四フッ化ホウ素酸、過塩素酸、六フッ化リン酸、六フッ化アンチモン酸および六フッ化ヒ素酸等)、リン酸およびホウ酸]が挙げられる。
超強酸の共役塩基以外のアニオンとしては、例えばハロゲン(例えばフッ素、塩素および臭素)イオン、アルキル[C1〜12]ベンゼンスルホン酸(例えばp−トルエンスルホン酸)イオンおよびポリ(n=1〜25)フルオロアルカンスルホン酸(例えばウンデカフルオロペンタンスルホン酸)イオンが挙げられる。
超強酸としては、プロトン酸およびプロトン酸とルイス酸との組み合わせから誘導されるもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
超強酸としてのプロトン酸としては、例えばビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド酸、ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メタン、過塩素酸、フルオロスルホン酸、アルカン(C1〜30)スルホン酸(例えばメタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸)、ポリ(n=1〜30)フルオロアルカン(C1〜30)スルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸およびトリデカフルオロヘキサンスルホン酸)、ホウフッ素酸および四フッ化ホウ素酸が挙げられる。
ルイス酸と組合せて用いられるプロトン酸としては、例えばハロゲン化水素(例えばフッ化水素、塩化水素、臭化水素およびヨウ化水素)、過塩素酸、フルオロスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸およびこれらの混合物が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば三フッ化ホウ素、五フッ化リン、五フッ化アンチモン、五フッ化ヒ素、五フッ化タンタルおよびこれらの混合物が挙げられる。
プロトン酸とルイス酸の組み合わせは任意であるが、これらの組み合わせからなる超強酸としては、例えばテトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、六フッ化タンタル酸、六フッ化アンチモン酸、六フッ化タンタルスルホン酸、四フッ化ホウ素酸、六フッ化リン酸、塩化三フッ化ホウ素酸、六フッ化ヒ素酸およびこれらの混合物が挙げられる。
【0015】
上記モノマー型イオン性液体(A1)を構成するカチオンとアニオンの組み合わせのうち、後述する硬化物の帯電防止性および機械物性の観点から好ましいのはエチレン性不飽和基を有しないカチオン(A1X2)とエチレン性不飽和基を有するアニオン(A1Z1)の組み合わせ、さらに好ましいのはアミジニウムカチオンとスルホン酸エステル、リン酸エステルまたは多価(メタ)アクリレートを有する酸との組み合わせ、とくに好ましいのはイミダゾリウムカチオンとスルホン酸エステル、リン酸エステルまたは多価(メタ)アクリレートを有する酸との組み合わせである。具体的には、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム−2−アクリルアミド−2−メチルプロパン−1−スルホン酸塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノ−およびジ(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸エステル塩、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムとPEトリ(メタ)アクリレートの2塩基酸塩等が挙げられる。
【0016】
モノマー型イオン性液体(A1)の分子量は、硬化物の強靱性および帯電防止性の観点から好ましくは分子量150以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記、測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による]1,000未満、さらに好ましくは分子量180以上かつMn800以下である。
【0017】
本発明の樹脂組成物におけるモノマー型イオン性液体(A1)の含有量は、帯電防止性および硬化物の強靭性の観点から好ましくは5〜70%、さらに好ましくは10〜50%である。
【0018】
本発明におけるエチレン性不飽和基を有するポリマー型イオン性液体(A2)は、下記の一般式(2)で表され、初期電導度が好ましくは1×10-4〜1×10-8(さらに好ましくは1×10-4〜1×10-7)ms/cmの常温溶融塩であり、少なくとも1(好ましくは1〜100)個のカチオン(A2X)+、および少なくとも1(好ましくは1〜100)個の対アニオンと少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するポリマーアニオン(A2Z)-からなる。

(A2X)+(A2Z)- (2)

[(A2X)+(以下においてはA2Xと略記することがある)はカチオン、(A2Z)-(以下においてはA2Zと略記することがある)はポリマーアニオンを表す。]
【0019】
[カチオン(A2X) ]
上記カチオン(A2X)には、含窒素オニウムカチオン[アミジニウムカチオンおよびグアニジニウムカチオン]、含硫黄オニウムカチオン、含リンオニウムカチオンが含まれる。
【0020】
アミジニウムカチオンには下記の(1)〜(4)が含まれる。
(1)イミダゾリニウムカチオン
炭素数(以下Cと略記)5〜15、例えば1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウム、4−シアノ−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−シアノメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、2−シアノメチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、4−アセチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−アセチルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−メチルカルボオキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−メチルカルボオキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−メトキシ−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−メトキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−ホルミル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−ホルミルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、3−ヒドロキシエチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−ヒドロキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、2−ヒドロキシエチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム;
【0021】
(2)イミダゾリウムカチオン
C5〜15、例えば1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−エチル−イミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−フェニルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−ベンジルイミダゾリウム、1−ベンジル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム、4−シアノ−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−シアノメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、2−シアノメチル−1,3−ジメチル−イミダゾリウム、4−アセチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−アセチルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、4−メチルカルボオキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−メチルカルボオキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、4−メトキシ−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−メトキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、4−ホルミル−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−ホルミルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、3−ヒドロキシエチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、4−ヒドロキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、2−ヒドロキシエチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム;
【0022】
(3)テトラヒドロピリミジニウムカチオン
C6〜15、例えば1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウム、5−メチル−1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネニウム、4−シアノ−1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、3−シアノメチル−1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−シアノメチル−1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、4−アセチル−1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、3−アセチルメチル−1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、4−メチルカルボオキシメチル−1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、3−メチルカルボオキシメチル−1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、4−メトキシ−1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、3−メトキシメチル−1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、4−ホルミル−1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、3−ホルミルメチル−1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、3−ヒドロキシエチル−1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、4−ヒドロキシメチル−1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ヒドロキシエチル−1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム;
【0023】
(4)ジヒドロピリミジニウムカチオン
C6〜20、例えば1,3−ジメチル−1,4−もしくは−1,6−ジヒドロピリミジニウム、[これらを1,3−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウムと表記し、以下同様の表記を用いる。]1,2,3−トリメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3,4−テトラメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、1,2,3,5−テトラメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7,9(10)−ウンデカジエニウム、5−メチル−1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5,7(8)−ノナジエニウム、4−シアノ−1,2,3−トリメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、3−シアノメチル−1,2−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−シアノメチル−1,3−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、4−アセチル−1,2,3−トリメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、3−アセチルメチル−1,2−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、4−メチルカルボオキシメチル−1,2,3−トリメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、3−メチルカルボオキシメチル−1,2−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、4−メトキシ−1,2,3−トリメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、3−メトキシメチル−1,2−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、4−ホルミル−1,2,3−トリメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、3−ホルミルメチル−1,2−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、3−ヒドロキシエチル−1,2−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、4−ヒドロキシメチル−1,2,3−トリメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ヒドロキシエチル−1,3−ジメチル−1,4(6)−ヒドロピリミジニウム。
【0024】
グアニジニウムカチオンには下記の(1)〜(4)が含まれる。
(1)イミダゾリニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン
C8〜15、例えば2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−テトラエチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−1−エチル−3−メチルイミダゾリニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジエチルイミダゾリニウム、1,5,6,7−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−2H−イミド[1,2a]イミダゾリニウム、1,5−ジヒドロ−1,2−ジメチル−2H−イミド[1,2a]イミダゾリニウム、1,5,6,7−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−2H−ピリミド[1,2a]イミダゾリニウム、1,5−ジヒドロ−1,2−ジメチル−2H−ピリミド[1,2a]イミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−4−シアノ−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−3−シアノメチル−1−メチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−4−アセチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−3−アセチルメチル−1−メチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−4−メチルカルボオキシメチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−3−メチルカルボオキシメチル−1−メチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−4−メトキシ−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−3−メトキシメチル−1−メチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−4−ホルミル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−3−ホルミルメチル−1−メチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−3−ヒドロキシエチル−1−メチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム;
【0025】
(2)イミダゾリウム骨格を有するグアニジニウムカチオン
C8〜15、例えば2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−テトラエチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−1,3−ジメチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,5,6,7−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−2H−イミド[1,2a]イミダゾリウム、1,5−ジヒドロ−1,2−ジメチル−2H−イミド[1,2a]イミダゾリウム、1,5,6,7−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−2H−ピリミド[1,2a]イミダゾリウム、1,5−ジヒドロ−1,2−ジメチル−2H−ピリミド[1,2a]イミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−4−シアノ−1,3−ジメチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−3−シアノメチル−1−メチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−4−アセチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、2−ジメチルアミノ−3−アセチルメチル−1−メチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−4−メチルカルボオキシメチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−3−メチルカルボオキシメチル−1−メチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−4−メトキシ−1,3−ジメチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−3−メトキシメチル−1−メチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−4−ホルミル−1,3−ジメチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−3−ホルミルメチル−1−メチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−3−ヒドロキシエチル−1−メチルイミダゾリウム、2−ジメチルアミノ−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジメチルイミダゾリウム;
【0026】
(3)テトラヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン
C10〜20、例えば2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−テトラエチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−1−エチル−3−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジエチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1,2−ジメチル−2H−イミド[1,2a]ピリミジニウム、1,3,4,6−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−2H−イミド[1,2a]ピリミジニウム、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1,2−ジメチル−2H−ピリミド[1,2a]ピリミジニウム、1,3,4,6−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−2H−ピリミド[1,2a]ピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−4−シアノ−1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−3−シアノメチル−1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、、2−ジメチルアミノ−4−アセチル−1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−3−アセチルメチル−1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−4−メチルカルボオキシメチル−1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−3−メチルカルボオキシメチル−1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−4−メトキシ−1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−3−メトキシメチル−1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−4−ホルミル−1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−3−ホルミルメチル−1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−3−ヒドロキシエチル−1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム;
【0027】
(4)ジヒドロピリミジニウム骨格を有するグアニジニウムカチオン
C10〜20、例えば2−ジメチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−トリメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−4−エチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1−メチル−3,4−ジエチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3,4−テトラエチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−1,3−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−1−エチル−3−メチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジエチルアミノ−1,3−ジエチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、1,6,7,8−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−2H−イミド[1,2a]ピリミジニウム、1,6−ジヒドロ−1,2−ジメチル−2H−イミド[1,2a]ピリミジニウム、1,6,7,8−テトラヒドロ−1,2−ジメチル−2H−ピリミド[1,2a]ピリミジニウム、1,6−ジヒドロ−1,2−ジメチル−2H−ピリミド[1,2a]ピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−4−シアノ−1,3−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−3−シアノメチル−1−メチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−4−アセチル−1,3−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−3−アセチルメチル−1−メチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−4−メチルカルボオキシメチル−1,3−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−3−メチルカルボオキシメチル−1−メチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−4−メトキシ−1,3−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−3−メトキシメチル−1−メチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−4−ホルミル−1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−3−ホルミルメチル−1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−3−ヒドロキシエチル−1−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウム、2−ジメチルアミノ−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジメチル−1,4(6)−ジヒドロピリミジニウム。
【0028】
含硫黄オニウムカチオンには、スルホニウム、チオフェニウム、チオモルホリニウムおよびチオキサニウムカチオン等、が含まれる。
【0029】
含リンオニウムカチオンには、ホスホニウムカチオンおよびテトラブチルホスホニウムブロミドカチオン等、が含まれる。
【0030】
これらのうち、ポリマー型イオン性液体の電導度の観点から好ましいのはアミジニウムカチオン、さらに好ましいのはイミダゾリウムカチオン、特に好ましいのは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンである。
【0031】
[ポリマーアニオン(A2Z)]
本発明におけるポリマーアニオン(A2Z)は、上記カチオン(A2X)の対アニオンと少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する。(A2Z)を構成する対アニオンには、カルボキシル基、硫酸エステル基、高級アルキルエーテル硫酸エステル基、スルホ基、リン酸エステル基等の有機酸基が含まれる。
(A2Z)には、水酸基とエチレン性不飽和基を有する化合物、多価アルコール、ポリイソシアネートおよびアニオン基を有する多価アルコールから形成されるものが含まれる。
【0032】
水酸基とエチレン性不飽和基を有する化合物には、少なくとも1個の水酸基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基[(メタ)アクリロイル基、ビニル基等]を有し、分子量44以上かつMn5,000以下のもの、例えば下記、およびこれらの混合物が含まれる。
【0033】
(1)水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(1−1)(メタ)アクリル酸のアルキレンオキシド(以下AOと略記、C2〜4)1〜50モル付加物
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、−ヒドロキシプロピルおよび−ヒドロキシブチル、これらのAO付加物(分子量160以上かつMn5,000以下)等
(1−2)(1−1)のε−カプロラクトン付加物(分子量230以上かつMn5,000以下)
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル−ε−カプロラクトン2モル付加物等
(1−3)ジオールのモノ(メタ)アクリレート(Mn300〜5,000)
ジオール[後述の(1−6)を構成するポリオール以外のもの、例えば後述のポリカーボネートポリオールのうちのポリカーボネートジオール、ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)、ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記)、ポリテトラメチレングリコール(以下PTMGと略記)およびポリエステルジオール]のモノ(メタ)アクリレート
【0034】
(1−4)エポキシドと(メタ)アクリル酸の反応生成物
3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ビフェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等
(1−5)(メタ)アクリル酸と3官能以上のポリオールの反応生成物およびそのAO付加物(分子量146以上かつMn5,000以下)
GRモノ−およびジ(メタ)アクリレート、TMPモノ−およびジ(メタ)アクリレート、PEモノ−、ジ−およびトリ(メタ)アクリレート、ジTMPモノ−、ジ−およびトリ(メタ)アクリレート、DPEモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−およびペンタ(メタ)アクリレート、およびそれらのAO(1〜100モル)付加物等
(1−6)(メタ)アクリル酸と、ブタジエンポリオール、イソプレンポリオール、水添ブタジエンポリオールおよび水添イソプレンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールとの反応生成物(Mn300〜5,000)
【0035】
(1−7)ポリエステルのモノ(メタ)アクリレート(Mn1,000〜50,000)
ポリエステルとしては、ジオール〔C2〜11、例えば脂肪族2価アルコール[エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−および1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(以下それぞれEG、PG、BD、DEG、TEG、PD、HD、NPGと略記)等]、脂環含有2価アルコール[シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、水素化ビスフェノールA等]、およびこれらのAO付加物、2価フェノール[ビスフェノール−A、−Fおよび−S等]のAO付加物〕と、ジカルボン酸[C4〜12、例えば芳香環含有ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、およびそれらの酸無水物等)、脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびそれらの酸無水物等)]とを縮重合させて得られる重合体等が挙げられる。
【0036】
これらのうち後述のポリイソシアネートとの反応性の観点から好ましいのは(1−1)、(1−4)、(1−5)、さらに好ましいのは(1−1)、(1−5)である。
【0037】
(2)水酸基とビニル基を有する化合物
(2−1)ジオールのモノビニルエーテル(Mn300〜5,000)
ジオール[後述の(2−4)を構成するポリオール以外のもの、例えば後述のポリカーボネートポリオールのうちのポリカーボネートジオール、PEG、PPG、PTMG、ポリエステルジオール)のモノビニルエーテル
(2−2)(2−1)のε−カプロラクトン付加物(分子量188以上かつMn5,000以下)
(2−3)アセチレンと3官能以上のポリオールとの反応性生物およびそのAO付加物(分子量118以上かつMn5,000以下)
GRモノ−およびジビニルエーテル、TMPモノ−およびジ−およびトリビニルエーテル、DPEモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−およびペンタビニルエーテルおよびそれらのAO(1〜100モル)付加物等
(2−4)アセチレンとブタジエンポリオール、イソプレンポリオール、水添ブタジエンポリオールおよび水添イソプレンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオールとの反応生成物(Mn300〜5,000)
これらのうち、後述のポリイソシアネートとの反応性の観点から好ましいのは(2−1)、(2−2)、さらに好ましいのは(2−1)である。
【0038】
前記多価アルコールとしては、2個以上のOH基を有し、OH当量(OH価に基づく、OH当たりの分子量)が250未満の低分子ポリオール、およびOH当量が250以上の高分子ポリオール、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
該低分子ポリオールとしては、2価アルコール(C2〜20またはそれ以上)、例えば脂肪族2価アルコール〔C2〜12、例えば(ジ)アルキレングリコール[EG、DEG、PG、ジプロピレングリコール(以下DPGと略記)、1,2−、2,3−、1,3−および1,4−BD、1,6−HD、NPGおよび3−メチルペンタンジオール(以下MPDと略記)、ドデカンジオール等]〕、脂環含有2価アルコール[C5〜10、例えば1,3−シクロペンタンジオール、1,3−および1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール]、芳香脂肪族2価アルコール[C8〜20、例えばキシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン];
3価〜8価もしくはそれ以上の多価アルコール、例えば(シクロ)アルカンポリオールおよびそれらの分子内もしくは分子間脱水物[GR、TMP、PE、DPE、ソルビトール(以下SOと略記)、1,2,6−ヘキサントリオール、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ジグリセリンその他のポリグリセリン等]、糖類およびその誘導体[ショ糖、グルコース、フラクトース、マンノース、ラクトース、グリコシド(メチルグルコシド等)等]並びに、後述するポリエーテルポリオール、PTMG、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールおよび水添ポリイソプレンポリオールのうち、OH当量が250未満のものが挙げられる。
【0040】
該高分子ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール[上記2価アルコール、または3価〜8価もしくはそれ以上の多価アルコールのAO付加物〔C2〜4、例えばEO、PO、1,2−および2,3−ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン(以下THFと略記)付加物、Mn500〜20,000〕、PTMG(Mn500〜10,000)等]、ポリエステルポリオール(Mn500〜20,000)、Mn200〜10,000のポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、および水添ポリイソプレンポリオールが含まれる。
該ポリカーボネートポリオールは、ポリオールを開始剤とするアルキレン(C2〜6)カーボネート(エチレンおよびプロピレンカーボネート等)の開環付加/重縮合、多価アルコールとジフェニルもしくはジアルキル(アルキル基はC1〜4)カーボネート(ジメチル、ジエチルおよびジ−i−プロピルカーボネート等)の重縮合(エステル交換)、または多価アルコールもしくは多価フェノール(ビスフェノールA等)のホスゲン化により製造することができる。
【0041】
これらのうち硬化物の可撓性の観点から好ましいのは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、さらに好ましいのはポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールである。
【0042】
前記ポリイソシアネート(以下においてPIと略記することがある。)としては、例えば下記のもの、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
(1)C(NCO基中のCを除く、以下同じ)6〜20の芳香族PI
ジイソシアネート(以下、DIと略記)、例えば1,3−および/または1,4−フェニレンDI、2,4−および/または2,6−トリレンDI(TDI)、4, 4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンDI(MDI)、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニ ル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンDI、およびm−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート;および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)および4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート
【0043】
(2)C2〜18の脂肪族PI
DI、例えばエチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ヘプタメチレンDI、オクタメチレンDI、ノナメチレンDI、デカメチレンDI、ドデカメチレンDI、2,2,4−および/または2,4,4 −トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネートおよびトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI);および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートおよびリジンエステルトリイソシアネート(リジンとアルカノールアミンの反応生成物のホスゲン化物、例えば2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−および/または3−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート)
【0044】
(3)C4〜45の脂環含有PI
DI、例えばイソホロンDI(IPDI)、2,4−および/または2,6−メチルシクロヘキサンDI(水添TDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−DI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、メチルシクロヘキシレンDI、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレートおよび2,5−および/または2,6−ノルボルナンDI、ダイマー酸DI(DDI);および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えばビシクロヘプタントリイソシアネート
(4)C8〜15の芳香脂肪族PI
m−および/またはp−キシリレンDI(XDI)、ジエチルベンゼンDIおよびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI)
(5)上記(1)〜(4)のヌレート化物
これらのうち耐光性の観点から好ましいのは(2)、(3)、および(5)のうち脂肪族PIおよび脂環含有PIのヌレート化物である。
【0045】
前記アニオン基を有する多価アルコールとしては、例えば下記のもの、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
(1)カルボキシル基含有多価アルコール
(1−1)カルボキシル基含有ジオール
C3〜10、例えば2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、グリセリン酸、酒石酸
(1−2)4価カルボン酸無水物と前記低分子ポリオールの1〜10モル重付加物
4価カルボン酸無水物としては、C8〜15、例えばmeso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸が挙げられる。
【0046】
(2)スルホ基含有多価アルコール
スルホ基含有多価アルコールは、下記スルホ基含有多価カルボン酸と前記低分子ポリオールの1〜10モル重縮合物が挙げられる。
スルホ基含有多価カルボン酸としては、C4〜20、例えばスルホ基含有芳香族ジカルボン酸〔スルホベンゼンジカルボン酸およびそのアルキルエステル[5−スルホ−オルト−、イソ−およびテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸、5−スルホイソフタル酸ジメチル等]、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸等〕;スルホ基含有脂肪族ジカルボン酸[スルホアルカン−およびアルケンジカルボン酸(スルホコハク酸、スルホグルタル酸、スルホアジピン酸、スルホピメリン酸、スルホスベリン酸、スルホアゼライン酸、スルホセバシン酸、スルホマレイン酸等)等];置換スルホコハク酸、例えば下記一般式で示されるものが挙げられる。

HOOC−CH(R1)−CH(SO3H)−COOH

[式中、R1はC1〜13のハイドロカルビル(アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アラルキル、アリール等)、アルコキシ(C1〜4、例えばメトキシ、エトキシ)、ヒドロキシル、シアノ、アルデヒドまたはニトロ基もしくはハロゲン原子(塩素、臭素等)を表す。]
【0047】
(3)硫酸基含有多価アルコール
硫酸基含有多価アルコールは、下記硫酸基含有多価カルボン酸と前記低分子ポリオールの1〜10モル重縮合物が挙げられる。
硫酸基含有多価カルボン酸としては、C4〜10、例えばヒドロキシカルボン酸[モノ−およびジヒドロキシアルカン二酸(タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸等)等]の硫酸エステル[水酸基を硫酸化剤(発煙硫酸等)で硫酸エステル化したもの]が挙げられる。
(4)スルファミン酸基含有多価アルコール
スルファミン酸基含有アルコールは、下記スルファミン酸基含有多価カルボン酸と前記低分子ポリオールの1〜10モル重縮合物が挙げられる。
スルファミン酸基含有多価カルボン酸としては、C4〜10、例えばアミノジカルボン酸(アスパラギン酸、グルタミン酸等)のスルファミン化物(アミノ基を発煙硫酸またはクロロ硫酸でスルファミン酸基に変換したもの)が挙げられる。
(5)リン酸基含有多価アルコール
リン酸基含有多価アルコールは、下記リン酸基含有多価カルボン酸と前記低分子ポリオールの1〜10モル重縮合物が挙げられる。
リン酸基含有多価カルボン酸としては、C4〜10のヒドロキシカルボン酸(上記に同じ。)のリン酸エステル[水酸基を、リン酸化剤(五酸化リン、オキシ塩化リン等)でリン酸エステル化したもの、およびその酸基(OH)の一部をアルコールもしくはAO[C2〜4、例えばEO、POと反応させて部分アルキルエステルもしくは部分ヒドロキシアルキルエステル化したもの]が挙げられる。
【0048】
ポリマーアニオン(A2Z)は、上記の、水酸基とエチレン性不飽和基を有する化合物、多価アルコール、ポリイソシアネートおよびアニオン基を有する多価アルコールをウレタン化反応させることにより製造することができる。
該ウレタン化反応において、NCO基とOH基の当量比(NCO/OH)は、特に限定されないが、後述する成形品の靭性およびポリマー型イオン性液体(A2)の保存安定性の観点から好ましくは0.3/1〜0.6/1、さらに好ましくは0.4/1〜0.5/1である。
【0049】
ポリマーアニオン(A2Z)のMnは、帯電防止性および組成物の取り扱い性の観点から好ましくは900〜16,000、さらに好ましくは950〜12,000、とくに好ましくは1,000〜8,000である。
【0050】
本発明におけるポリマー型イオン性液体(A2)は、前記カチオン(A2X)を有するメチル炭酸塩(該塩は特開2001−316372記載の製造方法等で得られる。)と前記対アニオン基を有するポリマーアニオン(A2Z)とを塩交換反応させることにより得られる。
【0051】
ポリマー型イオン性液体(A2)のMnは、帯電防止性および組成物の取り扱い性の観点から好ましくは1,000〜20,000、さらに好ましくは1,200〜15,000、さらに好ましくは1,500〜10,000である。
【0052】
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により前記(A)以外のエチレン性不飽和基を有しないイオン性液体(D)(以下において非反応性イオン性液体ということがある。)を含有させることができる。 (D)の具体例としては、前記(x2)と(z2)を組み合わせたものが挙げられる。
(D)の含有量は、(A)と後述する(B)の合計重量に基づいて通常20%以下、帯電防止性、その持続性および後述する硬化物の耐擦傷性の観点から好ましくは1〜10%である。
【0053】
本発明におけるエチレン性不飽和基を有するイオン性液体(A)には、前記のエチレン性不飽和基を有するモノマー型イオン性液体(A1)、エチレン性不飽和基を有するポリマー型イオン性液体(A2)、およびこれらの混合物が含まれ、(A)の重量に基づく(A1)の含有量は、通常70%以下、硬化物の帯電防止性および耐擦傷性の観点から好ましくは5〜70%、さらに好ましくは10〜50%、(A2)の含有量は、通常70%以下、硬化物の帯電防止性および耐擦傷性の観点から好ましくは5〜70%、さらに好ましくは10〜50%である。該(A)が(A1)と(A2)の混合物である場合の重量比[(A1)/(A2)]は、硬化物の耐擦傷性および帯電防止性の観点から好ましくは1/99〜99/1、さらに好ましくは5/95〜95/5である。
【0054】
[(メタ)アクリロイル基含有化合物(B)]
本発明における(A)を除く、(メタ)アクリロイル基含有化合物(B)には、(メタ)アクリロイル基を平均3個以上(好ましくは3個〜8個またはそれ以上、さらに好ましくは3〜6個)有する化合物(B1)、および(メタ)アクリロイル基を平均1〜2個有する脂環含有(メタ)アクリレート(B2)が含まれる。
(B1)としては、C9以上かつMn500,000以下のもの、例えば次のものが挙げられる。
(B11)多価(3価〜6価またはそれ以上)アルコール(C3〜40)、および該多価アルコールのAO(C2〜4)付加物のポリ(メタ)アクリレート
3価アルコール[TMP、GR、TMPのPO3モル付加物、TMPのEO3モル付加物等]のトリ(メタ)アクリレート、4価アルコール[PE等]のトリ(メタ)アクリレート、4価アルコール[PEおよびPEのEO4モル付加物等]のテトラ(メタ)アクリレート、6価アルコール[ジPE等]のヘキサ(メタ)アクリレート等
【0055】
(B12)ポリエステル(メタ)アクリレート
多価(2〜4価)カルボン酸、多価(2価〜8価またはそれ以上)アルコール(但し、ここにおいて多価カルボン酸または多価アルコールのいずれかは3価以上)および(メタ)アクリロイル基含有化合物の間のエステル化反応により得られる複数のエステル結合と複数の(メタ)アクリロイル基を有する分子量250以上かつMn4,000以下のポリエステル(メタ)アクリレート
【0056】
多価(2〜4価)カルボン酸としては、例えば脂肪族多価カルボン酸[C3〜20、例えばマロン酸、マレイン酸(無水物)、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、酸無水物の反応物(ジPEと無水マレイン酸の反応物等)]、脂環含有多価カルボン酸[C5〜30、例えばシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、メチルテトラヒドロ(無水)フタル酸]および芳香環含有多価カルボン酸[C8〜30、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸(無水物)、トリメリット酸(無水物)]が挙げられる。
【0057】
前記多価アルコールとしては、2個以上のOH基を有し、OH当量(OH価に基づく、OH当たりの分子量)が250未満の低分子ポリオール、およびOH当量が250以上の高分子ポリオール、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
多価(2価〜8価またはそれ以上)アルコールとしては、C2以上かつMn20,000以下の、例えば下記のもの、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
(1)2価アルコール(C2〜20またはそれ以上)、例えばC2〜12の脂肪族2価アルコール[(ジ)アルキレングリコール(EG等前記のもの等)等]、C6〜10の脂環含有2価アルコール[1,3−および1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール(以下CHDMと略記)等]、C8〜20の芳香環含有2価アルコール[キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等];
(2)3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール、例えば(シクロ)アルカンポリオールおよびそれらの分子内もしくは分子間脱水物[前記GR、TMP、PE、ポリGR等]、糖類およびその誘導体[ショ糖等];
【0059】
(3)ポリエーテルポリオール、例えば、PEG(Mn200〜20,000)、PPG(Mn200〜20,000)、PTMG(Mn400〜10,000);
(4)ポリエステルポリオール(Mn400〜20,000)、例えば、アジピン酸とBDおよびHDとのエステル、無水マレイン酸とNPGとのエステル、コハク酸とビスフェノールAのEO4モル付加物とのエステル;ポリカプロラクトンポリオール(Mn400〜10,000)、例えば、HDのε−カプロラクトン付加物、TMPのε−カプロラクトン付加物;
(5)ポリカーボネートポリオール(Mn500〜10,000)例えば、BDまたはHDのポリカーボーネートジオール、アジピン酸変性HDのポリカーボネートジオール;
(6)ポリブタジエンポリオール(Mn500〜10,000)、ポリイソプレンポリオール(Mn500〜10,000)およびこれらの水添化物;
(7)エポキシ樹脂(Mn300〜5,000)、例えば、1,6HDジグリシジルエーテルと酢酸2モルとの反応物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの5モル開環重合物;
(8)上記(3)を除く(1)、(2)、(4)〜(7)のAO1〜50モル付加物、例えばビスフェノールAのAO2〜50モル付加物。
【0060】
また、(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、C2〜30、例えば(メタ)アクリル酸およびヒドロキシメチル(メタ)アクリレート挙げられる。
【0061】
(B13)側鎖および/または末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリアルカジエン
ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート(Mn500〜500,000)等
(B14)エポキシ化合物(C3〜6またはそれ以上)と(メタ)アクリル酸との反応物
エポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、TMPトリグリシジルエーテル、PEトリおよび/またはテトラグリシジルエーテル、SOヘプタおよび/またはヘキサグリシジルエーテル、メチレンビス(2,7−ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテルが挙げられる。
(B15)ジメチルポリシロキサンの側鎖および/または末端に(メタ)アクリロイル基を有するシロキサン重合体(Mn300〜20,000)
例えば、側鎖に(メタ)アクリロキシプロピル基を有するジメチルポリシロキサン(Mn2,000、4官能)。
これらのうち硬化物の耐傷性の観点から好ましいのは(B11)および(B14)、さらに好ましいのは(B11)である。
【0062】
本発明における、(メタ)アクリロイル基を平均1〜2個有する脂環含有(メタ)アクリレート(B2)としては、C11以上かつMn1,000以下、例えば次のものが挙げられる。
(B21)脂環含有モノアルコール(C8〜20)のモノ(メタ)アクリレート
イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5−ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート等
(B22)脂環含有2価アルコール(C10〜20)のジ(メタ)アクリレート
シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ノルボルネンジメチロールジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノール化合物および/またはそのAO2〜30モル付加物のジ(メタ)アクリレート[水添ビスフェノールA、−Fおよび−Sの、EO2モルおよびPO4モル付加物の各ジ(メタ)アクリレート等]
(B23)水添ノボラック化合物および/またはそのAO2〜30モル付加物のジ(メタ)アクリレート
水添フェノールノボラック、水添クレゾールノボラックのEO2モル付加物の各ポリジ(メタ)アクリレート等。
これらのうち硬化物の耐傷性の観点から好ましいのは(B22)、(B23)、さらに好ましいのは(B22)である。
【0063】
(B)中の(B1)と(B2)の重量比[(B1)/(B2)]は、耐傷性および硬化収縮の観点から好ましくは30/70〜90/10、さらに好ましくは40/60〜80/20、特に好ましくは50/50〜75/25である。
【0064】
(B)は、3〜10(好ましくは5〜9.5、さらに好ましくは6〜9)mmol/gの(メタ)アクリロイル基濃度(x)を有する。ここにおいて、(メタ)アクリロイル基濃度(x)とは、下記の式(1)で求められる、(B)1g当たりの(メタ)アクリロイル基の濃度(mmol/g)である。

x=(a0×c0/M0+a1×c1/M1+・・・
+ai×ci/Mi+・・・+an×cn/Mn)×10 (1)

[式中、a0、a1、・・・ai、・・・anは、(B)を構成する(メタ)アクリロイル基含有化合物各成分(以下各成分と略記)の重量%、c0、c1、・・・ci、・・・cnは、各成分中の(メタ)アクリロイル基の数、M0、M1、・・・Mi、・・・Mnは、各成分の分子量を表す。]
(x)の(メタ)アクリロイル基濃度(mmol/g)は、好ましくは5〜9.5、さらに好ましくは6〜9である。(x)が3未満では硬化性が悪くなり、10を超えると硬化収縮が大となる。
【0065】
本発明の成形体用活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させてなる硬化物は、60〜200の架橋点間分子量を有する。ここにおいて、架橋点間分子量(M)とは、下記の式(2)で求められる架橋点一つ当たりのMnである。

100/M=a0×2(c0−1)/M0+ a1×2(c1−1)/M1+・・・
+ ai×2(ci−1)/Mi+・・・+an×2(cn−1)/Mn (2)

式(2)中、a0、a1、ai、an、a0、c0、c1、ci、cn、M0、M1、Mi、Mnは式(1)におけるものと同じである。
(M)は、好ましくは65〜150、さらに好ましくは70〜120である。架橋点間分子量が60未満では耐衝撃性が悪くなり、200を超えると耐傷性が悪化する。
【0066】
本発明の組成物は、耐衝撃性および低硬化収縮性の観点から、前記(B1)および(B2)を除く多官能(2〜20)ウレタン(メタ)アクリレート(B3)をさらに含有させるのが好ましい。(B3)は、水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(b31)およびポリイソシアネート(b33)から形成されてなる。
【0067】
(b31)には、C5以上かつMn5,000以下の、例えば下記のもの、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
(b31−1)(メタ)アクリル酸のAO(C2〜4)付加物
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、−2−ヒドロキシプロピル、−2−ヒドロキシブチルおよびこれらのAO付加物(分子量160以上かつMn5,000以下)等;
(b31−2)(b31−1)のε−カプロラクトン付加物(分子量230以上かつMn5,000以下)
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル−ε−カプロラクトン2モル付加物等;
(b31−3)(メタ)アクリル酸とジオール(Mn300〜5,000)との反応生成物
ジオール(Mn300〜5,000、例えばポリカーボネートジオール、PEG、ポリエステルジオール)のモノ(メタ)アクリレート等;
(b31−4)(メタ)アクリル酸とエポキシドとの反応生成物
C8〜30、例えば3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ビフェノキシ−2−ヒドロキシプロプル(メタ)アクリレート等;
(b31−5)(メタ)アクリル酸と3官能以上のポリオール(分子量92以上かつMn5,000以下)との反応生成物
GRモノ−およびジ(メタ)アクリレート、TMPモノ−およびジ(メタ)アクリレート、PEモノ−、ジ−およびトリ(メタ)アクリレート、ジTMPモノ−、ジ−およびトリ(メタ)アクリレート、ジPEモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−およびペンタ(メタ)アクリレート、およびこれらのAO付加物(付加モル数1〜100)等;
これらのうち、耐傷性の観点から好ましいのは(b31−1)、(b31−2)および(b31−5)である。
【0068】
本発明におけるポリイソシアネート(以下、PIと略記することがある。)(b33)としては、下記のものが挙げられ、いずれも前記のものと同じである。
(b33−1)C(NCO基中のCを除く)6〜20の芳香族PI
(b33−2)C2〜18の脂肪族PI
(b33−3)C4〜45の脂環式PI
(b33−4)C8〜15の芳香脂肪族PI
(b33−5)上記(b33−1)〜(b33−4)のヌレート化物
これらのうち後述する硬化物の耐光性の観点から好ましいのは(b33−2)、(b33−3)、および(b33−5)のうちの脂肪族PIおよび脂環含有PIのヌレート化物である。
【0069】
上記水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(b31)とポリイソシアネート(b33)の組み合わせのうち、耐傷性の観点から好ましいのは(メタ)アクリル酸のAO(C2〜4)付加物(b31−1)および/または(b31−1)のε−カプロラクトン付加物(b31−2)とポリイソシアネートのヌレート化物(b33−5)のうちの脂肪族PIおよび脂環含有PIのヌレート化物との組み合わせである。
【0070】
上記多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B3)を製造するに際しては、硬化物の靭性の観点から、さらに水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(b31)以外のその他のポリオール(b32)を反応成分として含有させてもよい。(b32)としてはC2以上かつMn3,000以下の、前記ポリマーアニオン(A2Z)を構成する多価アルコールとして例示したものと同様のものが挙げられる。これらのうち硬化物の耐光性、強靭性の観点から好ましいのは、2価アルコール、3価〜8価またはそれ以上の多価アルコールおよびポリエーテルポリオールである。
【0071】
多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B3)のMnは、硬化物の耐衝撃性の観点から好ましい下限は500、さらに好ましくは700、組成物の取り扱い性、硬化物の耐傷性の観点から好ましい上限は5,000、さらに好ましくは3,000である。
【0072】
(B3)の官能基数は、耐傷性および耐衝撃性の観点から好ましくは2〜20、さらに好ましくは3〜15である。
【0073】
(B3)の使用量は、(B1)および(B2)の合計重量に基づいて、耐衝撃性および耐傷性の観点から好ましくは2〜30%、さらに好ましくは5〜15%である。
【0074】
ウレタン化反応による(B3)の製造において、イソシアネート基と水酸基の当量比(NCO/OH)は、特に限定されないが、耐衝撃性および保存安定性の観点から好ましくは0.1/1〜1.2/1、さらに好ましくは0.3/1〜1.1/1、とくに好ましくは0.6/1〜1.05/1である。
【0075】
(B3)の製造におけるウレタン化反応の条件は、特に限定されず、例えば下記の[1]、[2]の方法が挙げられる。
[1]プレポリマー法
水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(b31)および必要によりその他のポリオール(b32)を加えたものの一部と、すべてのポリイソシアネート(b33)を混合し、通常40〜120℃、反応性および該混合物の安定性の観点から好ましくは60〜100℃で2〜20時間反応させてNCO基末端ウレタンプレポリマーを製造した後、残りの(b31)および(b32)を加え、同様の条件で(B3)を製造するか、あるいは、(b31)および必要により加える(b32)のすべてと、(b33)の一部を上記と同様の条件で反応させてOH基末端プレポリマーを製造した後、残りの(b33)を加え、同様の条件で(B3)を製造する方法;
[2]ワンショット(一括反応)法
水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(b31)、必要により加えるその他のポリオール(b32)、およびポリイソシアネート(b33)を一括混合し、上記と同様の条件で反応させて(B3)を製造する方法。
これらのうち(B3)の分子量制御の観点から好ましいのは[1]のプレポリマー法である。
【0076】
該ウレタン化反応に際しては、必要により溶剤(酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン等)で希釈して反応させてもよい。溶剤の使用量は、(b31)、(b32)および(b33)の合計重量に基づいて通常5,000%以下、反応速度の観点から好ましい上限は1,000%、混合物の取り扱い性の観点から好ましい下限は10%である。
【0077】
該ウレタン化反応は、常圧、減圧または加圧のいずれでも行うことができる。ウレタン化反応の進行状況は、例えば反応系のNCO%および水酸基価を測定することにより判断することができる。
【0078】
(B3)の製造においては、反応時間の観点からウレタン化触媒を使用するのが好ましい。該ウレタン化触媒には、以下の有機ビスマス化合物(1)、有機スズ化合物(2)、有機チタン化合物(3)、3級アミンまたは4級アンモニウム塩(4)、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
【0079】
(1)有機ビスマス化合物
(1−1)有機ビスマスカルボキシレート
一般式 Bi(COOR)3 で表され、Rとしては1価の、脂肪族基[C1〜20、例えばアルキル(メチル、エチル、n−およびi−プロピル、n−、i−、sec−およびt−ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシルおよびドデシル)基およびアルケニル(1−、2−およびi−プロペニル、1−、2−および3−ブテニル)基]、芳香(脂肪)族(C6〜20、例えばフェニル、トルイル、キシレニル、ベンジル、フェネチルおよびヘキシルフェニル)基および脂環(C3〜10、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロオクチル)基等が挙げられる。
これらのRのうち耐加水分解性の観点から好ましいのはC2〜12の脂肪族基、およびC5〜10の脂環基である。
(1−2)有機ビスマスアルコキシド
一般式Bi(OR)3 で表され、Rは上記と同じで、耐加水分解性の観点から好ましいRも上記と同じである。
(1−3)ジカルボニル基を有する化合物とBiのキレート化合物
ジカルボニル基を有する化合物には、C4〜15、例えばアセチルアセトン、アセチル酢酸、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートが含まれ、キレート化合物にはこれらとBiから形成されるキレート化合物が含まれる。
【0080】
(2)有機スズ化合物
トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジメチルチンジラウレート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンマレエート、スタナスオクトエート等。
(3)有機チタン化合物
テトラアルキル(C=2〜12)チタネート、アルキレンジカルボン酸(C2〜12)チタン等。
(4)3級アミンまたは4級アンモニウム塩
(4−1)3級アミン
トリエチレンジアミン、テトラアルキル(C1〜3)アルキレン(C2〜6)ジアミン(テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキシレンジアミン等)、ジアザビシクロアルケン{1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7〔DBU[サンアプロ(株)製、登録商標]〕等}等。
(4−2)4級アンモニウム塩
テトラアルキル(C1〜4)アンモニウムブロマイド、テトラアルキル(C1〜4)アンモニウムパークロレート等。
【0081】
これらのうち、反応性および非着色性の観点から好ましいのは、(1)、(2)、安全性と(B3)の分子量制御の観点からさらに好ましいのは(1)である。
(1)のうち反応性および触媒としての安定性の観点からとくに好ましいのは(1−1)および(1−3)、非着色性の観点からとくに好ましいのは(1−1)である。
【0082】
ウレタン化触媒の使用量は、(B3)の重量に基づいて、反応性および透明性の観点から好ましくは0.0005〜1%、さらに好ましくは0.01〜0.2%である。
【0083】
ウレタン化触媒として上記(1−1)を使用する場合、(1−1)の安定性の観点からさらに有機酸を含有させてもよい。有機酸としては、例えば脂肪族カルボン酸(C2〜C20、例えば酢酸、プロピオン酸、イソプロピオン酸、酪酸、イソバレン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ドデカン酸)、脂環式カルボン酸(C4〜10、例えばシクロブタン酸、シクロペンタン酸、シクロヘキサン酸)、芳香族カルボン酸(C7〜15、例えば安息香酸、テレフタル酸、フタル酸、トリメリット酸)、α−不飽和カルボン酸[C3〜10、例えば(メタ)アクリル酸、桂皮酸、マレイン酸]、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと多塩基酸(C2〜15、例えばシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、トリメリット酸、およびこれらの酸無水物)とのモノエステル化物、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらのうち耐加水分解性の観点から好ましいのは脂肪族および脂環式カルボン酸である。
【0084】
上記(1−1)と上記有機酸の重量比は(1−1)の触媒活性および触媒の安定性の観点から好ましくは0.001/1〜9/1、さらに好ましくは0.01/1〜4/1である。
【0085】
本発明の組成物には、低粘度化による取り扱い性、および硬化物の柔軟性、密着性等の向上の観点から、さらに、前記脂環含有(メタ)アクリレート(B2)を除く、モノおよび/またはジ(メタ)アクリロイル基含有化合物(B4)を含有させてもよい。これらは、単独使用または2種以上を併用してもよい。
【0086】
(B4)のうちモノ(メタ)アクリロイル基含有化合物(B4−1)としては、C4以上かつMn2,000以下の、例えば下記のものが含まれる。
(1)脂肪族1価アルコール(C1〜30)の(メタ)アクリレート
ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等
(2)複素環含有(メタ)アクリレート
C7〜15、例えばテトラフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクロイルモルホリン等
(3)脂肪族1価アルコール(C1〜30)のAO1〜30モル付加物の(メタ)アクリレート
ラウリルアルコールのEO2モル付加物の(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのPO3モル付加物の(メタ)アクリレート等
(4)[アルキル(C1〜20)]フェノール(C6〜30)のAO1〜30モル付加物の(メタ)アクリレート
フェノールのPO3モル付加物の(メタ)アクリレート、ノニルフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート、フェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート等
(5)芳香脂肪族アルコール(C7〜15)の(メタ)アクリレート
ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等
(6)水酸基含有(メタ)アクリレート(C5以上かつMn2,000以下)
前記水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(b31)のうち、単官能のも
の。
これらの(B4−1)のうち、硬化物の柔軟性、密着性、強靭性の観点から好ましいのは(3)〜(6)、さらに好ましいのは(3)、(5)、(6)である。
【0087】
(B4)のうちジ(メタ)アクリロイル基含有化合物(B4−2)には、C8以上かつMn5,000以下の、下記のものが含まれる。
(1)ポリオキシアルキレン(アルキレンはC2〜4)(分子量106以上かつMn3,000以下)のジ(メタ)アクリレート
PEG(Mn400)、PPG(Mn200)およびPTMG(Mn650)の各ジ(メタ)アクリレート等
(2)ビスフェノール化合物(C13〜20)のAO2〜30モル付加物のジ(メタ)アクリレート
ビスフェノールA、−Fおよび−Sの、EO2モルおよびPO4モル付加物の各ジ(メタ)アクリレート等
(3)脂肪族2価アルコール(C2〜30)のジ(メタ)アクリレート
EG、PG、NPGおよびHDの各ジ(メタ)アクリレート等
【0088】
(B)中の(B1)〜(B4)の各含有量は、(B)の重量に基づいて、(B1)は耐傷性および硬化収縮の観点から好ましくは30〜90%、さらに好ましくは40〜80%;(B2)は硬化収縮および耐傷性の観点から好ましくは10〜70%、さらに好ましくは20〜60%;(B3)は通常30%以下、耐衝撃性および耐傷性の観点から好ましくは5〜15%%;(B4)は通常30%以下、硬化物の柔軟性および靭性の観点から好ましくは5〜28%である。
【0089】
(A)と(B)の重量比は、帯電防止性および耐傷性の観点から好ましくは5/95〜70/30、さらに好ましくは10/90〜50/50である。
【0090】
[光重合開始剤(C)]
本発明における光重合開始剤(C)としては、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
これらのうち、硬化物の非着色性の観点から好ましいのはヒドロキシベンゾイル化合物およびリン酸エステル化合物、さらに好ましいのは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0091】
(C)の使用量は、(A)と(B)の合計重量に基づいて、耐傷性および非着色性の観点から好ましくは0.5〜5%、さらに好ましくは1〜3%である。
【0092】
[熱硬化触媒(E)]
本発明の組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、硬化性を向上させる目的でさらに熱硬化触媒(E)を含有させることができる。
(E)としては、過酸化物(t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等)およびアゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスイソバレロニトリル等)等が挙げられる。これらのうち反応性および組成物の安定性の観点から好ましいのは過酸化物、さらに好ましいのはt−ブチルパーオキシベンゾエートおよびメチルエチルケトンパーオキシドである。
【0093】
(E)の使用量は、(A)と(B)の合計重量に基づいて、通常8%以下、硬化性および保存安定性の観点から好ましくは0.1〜5%、さらに好ましくは0.5〜1%である。
(E)を使用する場合は、本発明の組成物を硬化させるに際しては加熱処理するのが好ましい。加熱処理の条件は、硬化性および硬化物の透明性、反り、後述する基材を使用する場合の基材との密着性や基材の変形の観点から、加熱処理温度は好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは80〜120℃、加熱処理時間は、同様の観点から、好ましくは1〜60分、さらに好ましくは5〜30分である。
【0094】
[添加剤(F)]
本発明の組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに種々の添加剤(F)を含有させてもよい。(F)には、無機充填剤(F1)、顔料(F2)、分散剤(F3)、消泡剤(F4)、レベリング剤(F5)、シランカップリング剤(F6)、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)(F7)、スリップ剤(F8)、酸化防止剤(F9)および紫外線吸収剤(F10)からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤が含まれる。
【0095】
(F1)としては、アルミナ[酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナホワイト(アルミナ水和物)、シリカアルミナ(アルミナとシリカの融着物、アルミナの表面にシリカをコーティングしたもの等)]、ジルコニア、金属炭化物(炭化タングステン、炭化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素等)、ダイヤモンド、カーボンブラック(チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等)、シリカ(微粉ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ藻、コロイダルシリカ等)、ケイ酸塩(微粉ケイ酸マグネシウム、タルク、ソープストーン、ステアライト、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ等)、炭酸塩[沈降性(活性、乾式、重質または軽質)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等]、クレー(カオリン質クレー、セリサイト質クレー、バイロフィライト質クレー、モンモリロナイト質クレー、ベントナイト、酸性白土等)、硫酸塩[硫酸アルミニウム(硫酸バンド、サチンホワイト等)、硫酸バリウム(バライト粉、沈降性硫酸バリウム、リトポン等)、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム(石コウ)(無水石コウ、半水石コウ等)等]、鉛白、雲母粉、亜鉛華、酸化チタン、活性フッ化カルシウム、セメント、石灰、亜硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、およびマイクロバルーン等が挙げられる。
【0096】
これらのうち硬化物の耐傷性および組成物、硬化物の非着色性の観点から好ましいのはアルミナ、シリカ、ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩および酸化チタン、さらに好ましいのはシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムおよび酸化チタンである。
(F1)は、2種以上併用してもよく、また2種以上が複合化(例えばシリカに酸化チタンが融着)されたものでもよい。(F1)の形状は、特に限定されず、例えば不定形状、球状、中空状、多孔質状、花弁状、凝集状および粒状のいずれでもよい。
【0097】
(F1)の使用量は、(A)と(B)合計重量に基づいて、通常50%以下、添加効果および硬化物の可撓性の観点から好ましくは1〜30%、さらに好ましくは3〜25%である。
【0098】
顔料(F2)としては、下記のものが挙げられる。
(1)アゾ系顔料
不溶性モノアゾ顔料(トルイジンレッド、パーマネントカーミンFB、ファストイエローG等)、不溶性ジスアゾ顔料(ジスアゾイエローAAA、ジスアゾオレンジPMP等)、アゾレーキ(溶性アゾ顔料)(レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B等)、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等;
(2)多環式顔料
フタロシアニンブルー、インダントロンブルー、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等;
(3)染つけレーキ
塩基性染料(ビクトリアピュアブルーBOレーキ等)、酸性染料(アルカリブルートーナー等)等;
(4)その他
アジン系顔料(アニリンブラック等)、昼光けい光顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料等。
【0099】
(F2)の使用量は、(A)と(B)合計重量に基づいて、通常50%以下、添加効果および硬化物の可撓性の観点から好ましくは1〜40%、さらに好ましく3〜30%である。
【0100】
分散剤(F3)としては、有機分散剤[高分子分散剤(Mn2,000〜500,000)および低分子分散剤(分子量100以上かつMn2,000未満)]および無機分散剤が挙げられる。
【0101】
高分子分散剤としては、ナフタレンスルホン酸塩[アルカリ金属(Na、K等。以下同じ。)塩、アンモニウム塩等]のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩(塩は上記に同じ。以下も同じ。)、ポリアクリル酸塩、ポリ(2〜4)カルボン酸(マレイン酸/グリセリン/モノアリルエーテル共重合体等)塩、カルボキシメチルセルロース(Mn1,000〜10,000)およびポリビニルアルコール(Mn1,000〜100,000)等が挙げられる。
【0102】
低分子分散剤としては、下記のものが挙げられる。
(1)ポリオキシアルキレン型
脂肪族アルコール(C4〜30)、[アルキル(C1〜30)]フェノール、脂肪族(C4〜30)アミンおよび脂肪族(C4〜30)アミドのAO(C2〜4)1〜30モル付加物
脂肪族アルコールとしては、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、オクタノール、ドデカノール等;(アルキル)フェノールとしては、フェノール、メチルフェノールおよびノニルフェノール等;脂肪族アミンとしては、ラウリルアミンおよびメチルステアリルアミン等;および脂肪族アミドとしては、ステアリン酸アミド等が挙げられる。
(2)多価アルコール型
C4〜30の脂肪酸(ラウリン酸、ステアリン酸等。以下同じ。)と多価(2価〜6価またはそれ以上)アルコール(例えばGR、PE、SOおよびソルビタン)のモノエステル化合物
(3)カルボン酸塩型
C4〜30の脂肪酸のアルカリ金属塩
(4)硫酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(上記に同じ。以下も同じ。)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物の硫酸エステルアルカリ金属塩等
(5)スルホン酸塩型
[アルキル(C1〜30)]フェノール(上記に同じ。以下も同じ。)のスルホン酸アルカリ金属塩
(6)リン酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコールおよび脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物のモノまたはジリン酸エステルの塩[アルカリ金属塩、4級アンモニウム塩等]
(7)1〜3級アミン塩型
C4〜30の脂肪族アミン[1級(ラウリルアミン等)、2級(ジブチルアミン等)および3級アミン(ジメチルステアリルアミン等)]塩酸塩、トリエタノールアミンとC4〜30の脂肪酸のモノエステルの無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等。以下同じ。)塩
(8)4級アンモニウム塩型
C4〜30の4級アンモニウム(ブチルトリメチルアンモニウム、ジエチルラウリルメチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム等)の無機酸塩等。
【0103】
無機分散剤としては、ポリリン酸のアルカリ金属塩およびリン酸系分散剤(リン酸、モノアルキルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル等)等が挙げられる。
【0104】
(F3)の使用量は、(A)と(B)合計重量に基づいて、通常10%以下、添加効果および耐傷性の観点から好ましくは0.05〜5%である。
【0105】
消泡剤(F4)としては、低級アルコール(C1〜6)(メタノール、ブタノール等)、高級アルコール(C8〜18)(オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール等)、高級脂肪酸(C10〜20)(オレイン酸、ステアリン酸等)、高級脂肪酸エステル(C11〜30)(グリセリンモノラウリレート等)、リン酸エステル(トリブチルホスフェート等)、金属石けん(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等)、ポリエーテル[PEG(Mn200〜10,000)、PPG(Mn200〜10,000)等]、シリコーン(ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等)および鉱物油系(シリカ粉末を鉱物油に分散させたもの)等が挙げられる。
【0106】
(F4)の使用量は、(A)と(B)合計重量に基づいて、通常3%以下、添加効果および耐傷性の観点から好ましくは0.01〜2%である。
【0107】
レベリング剤(F5)としては、PEG型非イオン界面活性剤(ノニルフェノールEO1〜40モル付加物、ステアリン酸EO1〜40モル付加物等)、多価アルコール型非イオン界面活性剤(ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素含有界面活性剤(パーフルオロアルキルEO1〜50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)、変性シリコーンオイル[例えばポリエーテル変性シリコーンオイルおよび(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル]等が挙げられる。
(F5)の使用量は、(A)と(B)合計重量に基づいて、通常3%以下、添加効果および耐傷性の観点から好ましくは0.1〜2%である。
【0108】
シランカップリング剤(F6)としては、アミノ基含有シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−フェニルアミノフロピルトリメトキシシラン等)、ウレイド基含有シランカップリング剤(ウレイドプロピルトリエトキシシラン等)、ビニル基含有シランカップリング剤[ビニルエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等]、メタクリレート基含有シランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、エポキシ基含有シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、イソシアネート基含有シランカップリング剤(γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)、ポリマー型シランカップリング剤(ポリエトキシジメチルシロキサン、ポリエトキシジメチルシロキサン等)、カチオン型シランカップリング剤[N−(N−ベンジル−β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等]等が挙げられる。
【0109】
(F6)の使用量は、(A)と(B)合計重量に基づいて、通常10%以下、添加効果および耐傷性の観点から好ましくは0.5〜7%である。
【0110】
チクソトロピー性付与剤(増粘剤を含む)(F7)としては、無機チクソトロピー性付与剤(ベントナイト、有機処理ベントナイトおよびコロイダル炭酸カルシウム等)および有機チクソトロピー性付与剤(水添ヒマシ油ワックス、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アルミニウム、重合アマニ油等)が挙げられる。
【0111】
(F7)の使用量は、(A)と(B)合計重量に基づいて、通常20%以下、添加効果および耐傷性の観点から好ましくは0.5〜10%である。
【0112】
スリップ剤(F8)としては、高級脂肪酸エステル(ステアリン酸ブチル等)、高級脂肪酸アミド(エチレンビスステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等)、金属石けん(ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アルミニウム等)、ワックス[パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス等)等]およびシリコーン(例えばジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイルおよびフルオロシリコーンオイル)等が挙げられる。
【0113】
(F8)の使用量は、(A)と(B)合計重量に基づいて、通常5%以下、添加効果および耐傷性の観点から好ましくは0.01〜2%である。
【0114】
酸化防止剤(F9)としては、ヒンダードフェノール化合物〔トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル〕およびアミン化合物(n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミノメチルメタクリレート等)が挙げられる。
【0115】
(F9)の使用量は、(A)と(B)合計重量に基づいて、通常3%以下、添加効果および耐傷性の観点から好ましくは0.005〜2%である。
【0116】
紫外線吸収剤(F10)としては、ベンゾトリアゾール化合物[2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等]、トリアジン化合物〔2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール〕、ベンゾフェノン(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等)、シュウ酸アニリド化合物(2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリド等)が挙げられる。
【0117】
(F10)の使用量は、(A)と(B)合計重量に基づいて、通常3%以下、添加効果および耐傷性の観点から好ましくは0.005〜2%である。
【0118】
上記(F1)〜(F10)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量を他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0119】
上記(F)の合計使用量は、(A)と(B)合計重量に基づいて、通常60%以下、添加効果および耐傷性の観点から好ましくは1〜45%である。
【0120】
本発明の組成物は、塗工の際に、塗工に適した粘度に調整するために、必要に応じて溶剤で希釈してもよい。溶剤の使用量は、溶剤を加える前の該組成物の重量に基づいて通常2,000%以下、塗工性および生産性の観点から好ましくは10〜500%である。また、塗料粘度は、使用時の温度(通常5〜60℃)で、通常5〜500,000mPa・s、安定塗工の観点から好ましくは50〜10,000mPa・sである。
【0121】
該溶剤としては、本発明の組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されることはなく、具体的には、芳香族炭化水素(C7〜10、例えばトルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステルまたはエーテルエステル(C4〜10、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルおよびメトキシブチルアセテート)、エーテル(C4〜10、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、EGのモノエチルエーテル、EGのモノブチルエーテル、PGのモノメチルエーテルおよびDEGのモノエチルエーテル)、ケトン(C3〜10、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトンおよびシクロヘキサノン)、アルコール(C1〜10、例えばメタノール、エタノール、n−およびi−プロパノール、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコール)、アミド(C3〜6、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、スルホキシド(C2〜4、例えばジメチルスルホキシド)、水、およびこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
これらのうち保存安定性および生産性の観点から好ましいのは沸点が70〜100℃のエステル、ケトンおよびアルコール、さらに好ましいのは酢酸エチル、メチルエチルケトン、i−プロパノールおよびこれらの混合物である。
【0122】
本発明の組成物は、特に限定されないが、例えば次の方法で塗工、成形することができる。すなわち、本発明の組成物を予め20〜50℃に温調し、成形体形状(例えばレンズアレイ形状)が得られるキャビティ(充填空間)を有する型(金型、樹脂型等)にディスペンサー等を用いて、硬化後の厚みが50〜150μmとなるように塗工(または充填)し、上記金型に塗工(または充填)した組成物の上から透明基材(透明フィルムを含む)を空気が入らないように加圧積層し、さらに該透明基材上から後述の活性エネルギー線を照射して該組成物を硬化させた後に、金型から離型し成形体(例えばレンズシート)を得る。
【0123】
透明基材(透明フィルムを含む)としては、メチルメタクリレート(共)重合物、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリトリアセチルセルロース、ポリシクロオレフィン等の樹脂からなるものが挙げられる。
【0124】
本発明における活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、可視光線、赤外線等が含まれる。これらのうち硬化性および安全性の観点から好ましいのは紫外線である。
【0125】
本発明の組成物を紫外線により硬化させる場合、紫外線照射装置は特に限定されないが、種々の紫外線照射装置[例えば、機器名「アイグランデージ」、アイグラフィック(株)製]を使用できる。使用するランプとしては、例えば高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。紫外線の照射量(mJ/cm2)は、硬化物の可撓性の観点から好ましい上限は10,000、さらに好ましくは5,000、組成物の硬化性の観点から好ましい下限は10、さらに好ましくは100である。
【0126】
上記で得られる硬化物の鉛筆硬度は、耐傷性の観点から好ましくは2H以上、さらに好ましくは3Hまたはそれ以上である。
【0127】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下の実施例において部は重量部、%は重量%を表す。
【0128】
合成例1
冷却管、撹拌装置、温度計を備えた反応容器にグリセリン酸20部、EG2部、メチルエチルケトン(以下MEKと略記)50部を仕込み、50℃で加熱撹拌して均一に溶解させた。この溶液にXDI 60部およびビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)溶液(2−エチルヘキサン酸50%溶液、以下同じ。)0.1部を加え、80℃で6時間反応させ、その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート25部を加え、3時間加熱撹拌した。放冷後、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩(合成方法は特開2001−316372号公報記載の方法に従った。以下同じ。)25.7部を混合、脱炭酸、脱溶剤することによって、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとウレタンアクリレートアニオンからなるポリマー型イオン性液体(A2−1)を得た。(A2−1)のMnは1,300であった。
【0129】
合成例2
合成例1と同様の反応容器に無水ピロメリット酸25.5部とMEK70部を仕込み、80℃で加熱撹拌して均一に溶解させた。この溶液にEG18.5部を加え、8時間加熱撹拌して還流させた。放冷してIPDI 43部、およびビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)溶液0.1部を配合し、80℃で6時間反応させ、その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート3部、ハイドロキノン0.1部を加え、3時間加熱撹拌し還流させた。放冷後、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩31.8部を混合、脱炭酸、脱溶剤することによって、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとウレタンアクリレートアニオンからなるポリマー型イオン性液体(A2−2)を得た。(A2−2)のMnは15,000であった。
【0130】
合成例3
冷却管、撹拌装置、および窒素導入管を備えた反応容器に、1,4−BD 21.9部、5−スルホイソフタル酸58.3部、縮合反応触媒としてチタン酸テトライソプロキシド1.5部を仕込み、150℃で窒素通気下に、生成する水を留去しながら3時間反応させた。次いで180℃まで徐々に昇温し、窒素通気下で水を留去しながら10時間反応させ、両末端に水酸基を有する、水酸基価36.0のポリエステルを得た。放冷後IPDI 8部、ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)溶液0.1部を配合し、80℃で6時間反応させ、その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート3部、ハイドロキノン0.1部を加え、3時間加熱撹拌した。放冷後、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩42.7部を混合し、脱炭酸、脱溶剤することによって、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンとウレタンアクリレートアニオンからなるポリマー型イオン性液体(A2−3)を得た。(A2−3)のMnは9,100であった。
【0131】
合成例4
モノ(アクリロイルオキシエチル)フタレート[商品名「アロニックス M−5400」、東亜合成(株)製]と1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩を等モルで混合することによって、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノ(アクリロイルオキシエチル)フタレート塩からなるモノマー型イオン性液体(A1−1)を得た。
【0132】
合成例5
モノ(メタアクリロイルオキシエチル)リン酸エステル[商品名「ライトエステルP−1M」、共栄社化学(株)製]と1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩を等モルで混合することによって1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノ(メタアクリロイルオキシエチル)リン酸エステル塩からなるモノマー型イオン性液体(A1−2)を得た。
【0133】
合成例6
2,2,2−トリアクリロイルオキシメチルエチルコハク酸[商品名「NKエステルCBX−0」、新中村化学工業(株)製]と1−エチル−3−メチルイミダゾリウムモノメチル炭酸塩を等モルで混合することによって、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム 2,2,2−トリアクリロイルオキシメチルエチルコハク酸塩(A1−3)を得た。
【0134】
合成例7
合成例1と同様の反応容器にアクリル酸EO付加物[商品名「ブレンマー AE−400」、日本油脂(株)製、Mn400]100部、HDIのヌレート化物[商品名「コロネートHDT」、日本ポリウレタン工業(株)製]33.6部および触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)0.05部を仕込み、60℃で6時間反応させ、3官能ウレタンアクリレート(B3−1)を得た。(B3−1)のMnは、2,470であった。
【0135】
合成例8
合成例1と同様の反応容器にアクリル酸2−ヒドロキシエチルのカプロラクトン4モル付加物[商品名「プラクセル FA−4D」、ダイセル化学工業(株)製]100部とIPDIのヌレート化物[商品名「VESTANAT T1890」、デグサジャパン(株)製]64部と触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)0.03部を加え、80℃で4時間反応させ、2官能ウレタンアクリレート(B3−2)を得た。(B3−2)のMnは、1,730であった。
【0136】
合成例9
合成例1と同様の反応容器にグリセリンのPO付加物[商品名「ニューポールGP−6000」、三洋化成工業(株)製、Mn600]100部、水添MDI[商品名「VESTANAT H12MDI」、デグサジャパン(株)製]65.5部および触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)0.05部を加え、120℃で3時間反応させた後、2−ヒドロキシエチルアクリレート58部を加え、70℃で4時間反応させ、3官能ウレタンアクリレート(B3−3)を得た。(B3−3)のMnは、1,690であった。
【0137】
実施例1〜7
表1に示す配合組成(部)に従って配合し、本発明の組成物(実施例1〜7)を得た。各組成物の25℃での粘度をBL型粘度計[東京計器(株)製]にて測定した(単位はmPa・s)。
次に、下記の評価方法に従って硬化物を作成し、該硬化物の透過率、耐スチールウール性(以下、耐SW性と略記)、鉛筆硬度、イエローインデックス(以下YIと略記)、密着性、反り、泡残り、および耐衝撃性を評価した。結果を表1に示す。
【0138】
比較例1〜4
表1に示す配合組成(部)に従って配合し、比較の組成物(比較例1〜4)を得た。各組成物について、上記実施例と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0139】
評価方法
(1)透過率(透明性の評価)
(i)硬化物(硬化膜)作成法
離型剤処理をしたガラス板[「MICRO SLIDE GLASS 水板」、松浪ガラス(株)製、タテ76mm×ヨコ26mm×厚さ1.3mm]上の周辺部にセットしたスペーサー枠(厚さ100μm、幅5mm)の枠内に、組成物を充填し、さらにその上に上記と同様の別のガラス板を重ね、空気を押し出した。その後、紫外線照射装置[商品名「アイグランデージ」、アイグラフィック(株)製。照射ランプはメタルハライドランプ。以下同じ。]を用いて、1,000mJ/cm2の紫外線を照射し、硬化物(硬化膜、以下同じ。)を得た。
(ii)透過率測定方法
JIS K−7361−1に準じ、全光線透過率測定装置[商品名「haze−gard dual」、BYK gardner(株)製、以下同じ。]を用いて硬化物の透過率を測定した。単位は%。
【0140】
(2)耐SW性(耐傷性の評価)
(i)硬化物作成法
表面を離型剤処理したガラス板[「GLASS PLATE」、アズワン(株)製、タテ200mm×ヨコ200mm×厚さ5mm]の周辺部にセットしたスペーサー枠(厚さ100μm)、幅10mm)の枠内に組成物を充填し、さらにその上にプライマー処理したPETフィルム[商品名「A−4300」、東洋紡(株)製、タテ200mm×ヨコ200mm×厚さ0.1mm、透明基材]を重ね、ニップローラーで挟んで空気を押し出した。その後紫外線照射装置を用いて、PETフィルム側から、1,000mJ/cm2の紫外線を照射した。その後、ガラス板を取り外し、PETフィルムを片面につけた硬化物を得た。
(ii)耐SW性評価方法
#0000のスチールウールを用い500g荷重にて硬化物の上を10往復擦り、JIS K−7361−1に準じ、全光線透過率測定装置を用いてヘーズを測定した。単位は%。
【0141】
(3)鉛筆硬度(剛性の評価)
(i)硬化物作成法
上記(2)(i)の硬化物作成方法と同じ方法で硬化物を作成した。
(ii)鉛筆硬度評価方法
JIS K5400に準じて鉛筆硬度評価を行った(温度23℃、1kg荷重)。
n=5の評価において、n=4以上で傷がつかない一番硬い鉛筆の硬さを鉛筆硬度とした。
【0142】
(4)YI(非着色性の評価)
(i)硬化物作成法
上記(2)(i)の硬化物作成方法と同じ方法で硬化物を作成した。
(ii)YI評価方法
JIS K7373に準じて23℃にて色差計[商品名「色差・曇り度計A−200」日本電色工業(株)製]で色差を測定し、D65にてYIを求めた。
【0143】
(5)密着性試験(密着性の評価)
(i)硬化物作成法
上記(2)(i)の硬化物作成方法と同じ方法で硬化物を作成した。
(ii)密着性評価方法
JIS K5400に準じて、硬化物面上のタテ、ヨコ各10mmの範囲に、PETフィルムに到達しない深さでタテ、ヨコ各11本の切れ目を入れて100個の碁盤目を作り、粘着テープをその表面に密着させた後、一気に剥がした。このときにPETフィルム基材から剥離せず残存した碁盤目の個数を求めた。
【0144】
(6)反り(硬化収縮の評価)
(i)硬化物作成法
上記(2)(i)の硬化物作成方法と同じ方法で硬化物を作成した。
(ii)反り評価方法
硬化物(タテ200mm×ヨコ200mm)の中心部を含む部分から、タテ、ヨコ各10cmの正方形を切り取り、硬化物面を下にして置いた時のベース面から中心部の凹面までの高さを求めた。単位はmm。
【0145】
(7)泡残り(成形性の評価)
(i)プリズムレンズ(光学レンズ)作成方法
表1に示した組成物を35℃に温度調節し、予めクロムメッキを施したプリズムレンズの金型(50cm×50cm)にディスペンサーを用いて10〜150μmの厚みに塗工し、プライマー処理したPETフィルム[東洋紡(株)製、A−4300、厚さ100μm]を、上記金型に充填した組成物の上から空気が入らないように加圧積層した。その後紫外線照射装置を用いてPETフィルム側から紫外線を1,000mJ/cm2照射して硬化させた後に、金型から離型しプリズムレンズ(硬化物)を得た。
(ii)泡残り評価方法
得られたプリズムレンズの状態を観察し、目視で泡個数の残量を調べた。
(評価基準)
○:泡なし
△:1〜5個/100cm2
×:5個超 /100cm2
【0146】
(8)落球試験(耐衝撃性の評価)
(i)硬化物作成法
上記(2)(i)の硬化物作成方法と同じ方法で硬化物を作成した。
(ii)耐衝撃性評価方法
硬化物のPETフィルム側とは反対側の面を上にして静置した硬化物の30cm上方から、約95gの玉軸受用剛球(JIS B1501 1 1/8 直径28.575mm)を自然落下させ、硬化物面の割れ、変形を評価した。
(評価基準)
○:割れ、変形ともになし
×:割れ、もしくは変形あり
(9)帯電防止性
(i)表面抵抗値
上記(2)(i)の硬化物作成方法と同じ方法で硬化物を作成し、ここから試験片(100×100mm)を切り出し、23℃、湿度50%RHの条件で24時間静置後、デジタル超絶縁計[DSM−8103、東亜電波工業(株)製、以下同じ。]により同条件の雰囲気下で測定した。単位はΩ。
(ii)水洗後の表面抵抗値
(i)と同様の試験片を、25℃のイオン交換水1,000ml中に浸漬し、24時間静置した。ついで試験片を取り出し23℃のイオン交換水100ml×3回の流水で塗膜表面を洗い流した後、循風乾燥機内80℃で3時間乾燥させた。該水洗−乾燥の操作を3回繰り返した後、試験片を23℃、湿度50%RHの条件で24時間静置後、デジタル超絶縁計により同条件の雰囲気下で測定した。単位はΩ。
(iii)体積抵抗値
表面を離型剤処理したガラス板(11cm×11cm)上の周辺部に厚さ1mmのスペーサーをセットし、10cm×10cmの正方形に仕切る。該正方形内に表1の組成物を注型した後、上記と同様の別のガラス板を載せる。紫外線照射装置により、紫外線を1,000mJ/cm2照射した後、ガラス板から離型し、23℃、湿度50%RHの条件で24時間静置後、デジタル超絶縁計により同条件の雰囲気下で体積抵抗値を測定した。単位はΩ・cm。
【0147】
【表1】

DA−600:ジペンタエリスリトールポリアクリレート[商品名「ネオマー
DA−600」、三洋化成工業(株)製、平均官能基数5.5]
PE−3A:ペンタエリスリトールトリアクリレート[商品名「ライトアクリ レートPE−3A」、共栄社化学(株)製、平均官能基数3.1]
PE−4A:ペンタエリスリトールテトラアクリレート[商品名「ライトアクリレートP E−4A」、共栄社化学(株)製、平均官能基数4]
EOTMP:EO変性(付加モル数3)トリメチロールプロパントリアクリレート[商品 名「ネオマーTA−401」、三洋化成工業(株)製、平均官能基数3]
DCPA :ジシクロペンタンジメチロールジアクリレート[商品名「ライトアクリレー トDCP−A」、共栄社化学(株)製、平均官能基数2]
IBXA :イソボルニルアクリレート[商品名「ライトアクリレートIBXA」、共栄 社化学(株)製、平均官能基数1]
TPO :1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド[商品名 「ルシリンTPO」、BASF(株)製]
I184 :1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[商品名「イルガキュア18 4」、チバスペシャルティケミカルズ(株)製]
BZ−A :ベンジルアクリレート[商品名「ビスコート160」、大阪有機化学(株) 製]
PO−A :フェノキシエチレングリコールアクリレート[商品名「ライトアクリレート PO−A」、共栄社化学(株)製]
BA641:EO変性ビスフェノールAジアクリレート[商品名「ネオマーBA−641 」、三洋化成工業(株)製]
EMI・BF4:1−エチル−3−メチルイミダゾリウム4フッ化ホウ素酸塩[試薬 、和光純薬工業(株)製]
TFSILi:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム[試薬、和光純薬 工業(株)製]
KF−6004:ポリエーテル変性シリコーンオイル[商品名「KF−6004」信越化 学(株)製]
【0148】
表1の結果から、本発明の組成物は比較の組成物に比べて、耐傷性と反り、耐衝撃性とのバランス、基材との密着性および帯電防止性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の成形体用活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線照射時の硬化性に優れ、該組成物を硬化させてなる硬化物は、耐傷性、剛性、透明性、基材との密着性、および帯電防止性に優れることから、表面に微細構造を有する光学レンズ(プリズムシート、コリメーターレンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、後反射レンズ、ホログラム等)、携帯電話部材(ボタン等の装飾部材、タッチパネル等)等の用途に幅広く用いることができ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個以上のエチレン性不飽和基を有するイオン性液体(A)、(A)を除く(メタ)アクリロイル基含有化合物(B)および光重合開始剤(C)を含有してなる成形体用活性エネルギー線硬化性組成物において、(B)が、3〜10mmol/gの(メタ)アクリロイル基濃度を有し、該組成物を硬化させてなる硬化物が、60〜200の架橋点間分子量を有することを特徴とする帯電防止性成形体用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
(A)が、カチオンとエチレン性不飽和基を有するアニオンからなる請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(B)が、(メタ)アクリロイル基を平均3個以上有する化合物(B1)、および(メタ)アクリロイル基を平均1〜2個有する脂環含有(メタ)アクリレート(B2)からなる請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
(B1)と(B2)の重量比が、30/70〜90/10である請求項3記載の組成物。
【請求項5】
さらに、(B1)および(B2)を除く多官能ウレタン(メタ)アクリレート(B3)を含有させてなる請求項3または4記載の組成物。
【請求項6】
さらに、(B1)、(B2)および(B3)を除く、モノおよび/またはジ(メタ)アクリロイル基含有化合物(B4)を含有させてなる請求項5記載の組成物。
【請求項7】
(A)と(B)の重量比が、5/95〜70/30である請求項1〜6のいずれか記載の組成物。
【請求項8】
さらに、充填剤、顔料、分散剤、消泡剤、レベリング剤、シランカップリング剤、チクソトロピー性付与剤、スリップ剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有させてなる請求項1〜7のいずれか記載の組成物。
【請求項9】
光学レンズ用である請求項1〜8のいずれか記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか記載の組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項11】
請求項10記載の硬化物からなる光学レンズ
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか記載の組成物を、成形体形状が得られるキャビティを有する型に塗工し、塗工物上に透明基材を加圧積層して、該基材上から活性エネルギー線を照射して硬化させることを特徴とする帯電防止性成形体の製造方法。

【公開番号】特開2010−7017(P2010−7017A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170457(P2008−170457)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】