説明

干し柿の製造方法及び製造装置

【課題】橙色の鮮やかな干し柿を安定的に製造する製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】気密性を有する本体1に窒素ガスbを導入することにより、乾燥雰囲気a中の酸素濃度を10%以下にして、干し柿を製造する。
【効果】渋柿果実を乾燥させて干し柿を製造するにあたり、乾燥雰囲気の酸素含有量を10体積%以下とすることにより、干し柿果実の黒変及びカビの発生を抑止でき、橙色をした干し柿を気候等の影響を受けることなく安定的に製造することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干し柿の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、干し柿は、渋柿果実を剥皮して吊るしておくことにより自然乾燥させて作ることが一般に行われてきた。この方法で作られた干し柿は、渋柿果実に含まれるタンニンにより黒く着色する。そして、干し柿中の水分率30%程度以下まで十分に乾燥させると、糖が表面に析出して白い粉が付着した状態になり、一般にころ柿と呼ばれている。
【0003】
近年、剥皮した渋柿果実を、黒変抑制とカビ防止のため硫黄薫蒸したのち乾燥させることにより、橙色の干し柿が作られるようになった。あんぽ柿と呼ばれ、福島県北部やそのほかの地域で製造されている。乾燥の程度はころ柿より多い水分率30%〜50%程度の乾燥とされている。その乾燥方法としては、硫黄薫蒸済みの柿を家屋の軒先や乾燥小屋に吊るして自然乾燥させる方法や、10℃〜30℃と−20℃〜10℃の温度で交互に乾燥させる方法が知られている(特許文献1)。
そのほかの方法としては、柿を渋抜きした上で、0℃〜−2℃の温度で干す方法が知られている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特許第2769805号
【特許文献2】特開2001−218555
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の硫黄薫蒸しない製造方法では、最終的に干し柿が黒く着色するため市場価値が低くなってしまう。
一方、硫黄薫蒸した場合には、硫黄を燃やした際に発生する二酸化硫黄が干し柿中に吸収されて亜硫酸となるため柿の風味が失われるとともに、亜硫酸の還元性により干し柿の表面が漂白されることがある。また、製品に亜硫酸の使用の表示を行わなければならないため、消費者から敬遠される場合があった。
【0006】
さらに、干し柿好適種である蜂屋柿のように果実一個の重量が250gを超える大きい果実を干し柿にする場合には、硫黄薫蒸を行っても自然乾燥の環境条件によっては、カビの発生や、黒変が生じる場合があった。また、大きい果実の柿を干し柿とする場合には、硫黄薫蒸したものを加熱乾燥した場合であっても、最終的には黒変してしまうという問題があった。
【0007】
本発明では、橙色の鮮やかな干し柿を安定的に製造する製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。特に、硫黄薫蒸の有無に関わらず橙色の鮮やかな干し柿を安定的に生産することができる干し柿の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、柿果実、特に蜂屋柿のように乾燥が困難な大きな柿果実の干し柿への加工方法について鋭意研究を行った結果、柿果実を剥皮した後に乾燥させる雰囲気中の酸素濃度を制御することにより、乾燥中の果実の黒変やカビを防止できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、前記目的を解決するための手段として、請求項1に記載の干し柿の製造方法は、剥皮した渋柿果実を、酸素含有量が0.1体積%以上10体積%以下の乾燥雰囲気中において乾燥させることを特徴としている。
【0010】
また、請求項2に記載の干し柿の製造方法では、請求項1に記載の干し柿の製造方法において、前記乾燥雰囲気を大気圧として乾燥することを特徴としている。
【0011】
また、請求項3に記載の干し柿の製造方法では、請求項1又は請求項2に記載の干し柿の製造方法において、前記乾燥雰囲気を20℃以上60℃以下の温度として乾燥することを特徴としている。
【0012】
また、請求項4に記載の干し柿の製造方法では、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の干し柿の製造方法において、乾燥時の温度における相対湿度を20%RH以上60%RH以下とすることを特徴としている。
【0013】
また、請求項5に記載の干し柿の製造方法では、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の干し柿の製造方法において、前記乾燥雰囲気が、0.1体積%以上99.9積%以下の窒素を含有することを特徴としている。
【0014】
また、請求項6に記載の干し柿の製造方法では、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の干し柿の製造方法において、前記乾燥雰囲気が、0.1体積%以上99.9体積%以下の二酸化炭素を含有することを特徴としている。
【0015】
また、請求項7に記載の干し柿の製造方法では、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の干し柿の製造方法において、前記剥皮した渋柿果実を硫黄薫蒸し、大気雰囲気中において予備乾燥したのち、前記乾燥雰囲気中で乾燥させることを特徴としている。
【0016】
また、請求項8に記載の干し柿の製造装置は、剥皮した渋柿果実を、酸素含有量が0.1体積%以上10体積%以下の乾燥雰囲気中において乾燥させる干し柿の製造装置であって、気密性を有する本体を備えるとともに、本体内の乾燥雰囲気中の酸素除去手段及び乾燥雰囲気中の水除去手段を備えることを特徴とする干し柿の製造装置である。酸素除去手段により本体内の乾燥雰囲気の酸素含有量を低下させることができる。さらに水除去手段を備えるため、水分の除去を本体内部の乾燥雰囲気の換気によることなく行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、渋柿果実を乾燥させて干し柿を製造するにあたり、乾燥雰囲気の酸素含有量を10体積%以下とすることにより、干し柿果実の黒変及びカビの発生を抑止でき、橙色をした干し柿を気候等の影響を受けることなく安定的に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明において、柿果実は皮を剥いた後に製造装置の本体内において乾燥される。前記本体は、一定の気密性を有する箱又は袋などを用いることができる。前記本体は、その内部に外部から遮断された気体の乾燥雰囲気を有し、皮を剥いた柿は前記乾燥雰囲気内において乾燥される。前記乾燥雰囲気は、一定の組成に保たれていればよく、気体の供給及び気体の排出をすることができる。前記乾燥雰囲気中の酸素濃度は、0.1体積%以上10体積%以下であることを要し、0.1体積%以上5体積%以下であることが好ましい。乾燥雰囲気中の酸素濃度が10%を越えると、乾燥を行う際に柿が黒変し、品質が低下するためである。0.1体積%未満とする場合には、化学的な反応による吸着剤を用いざるをえなくなり、生産コストがかかるためである。皮を剥いた柿は、乾燥後の重量を乾燥前の重量で除した歩留が、20%以上40%未満、好ましくは25%以上35%未満まで乾燥することができる。
【0019】
皮剥きの方法は特に限定されず、通常の方法を用いることができる。例えば、包丁などにより手剥きする方法や、柿果実を電動モーター等の回転軸に固定して回転させ、刃物により剥皮する方法を用いることができ、加熱又は酵素等により剥皮する方法を用いても良い。一般に、剥皮により柿果実の20%以上30%以下が皮及び蔕(へた)の切断部として廃棄される。
【0020】
本発明に従って製造する干し柿の原料となる柿果実の品種としては、渋柿であればよく、渋がそのまま残る完全渋柿、及び種の周りが甘くなるが全体に渋い不完全渋柿のどちらも用いることができる。品種としては例えば、蜂屋(甲州百目、富士)、平核無、刀根早生、西条、市田、四つ溝、会津身不知、堂上蜂屋、愛宕、大和百目、三社などをあげることができる。
【0021】
特に、本発明は、乾燥の進みやすい小さい果実(皮むき前において100g以上200g未満のもの、皮むき後重量150g未満のもの)に適用するよりも、乾燥の進みにくい大きい果実(皮むき前において200g以上、より好ましくは250g以上400g程度のもの、皮むき後150g以上のもの)に適用することが好ましい。大きい果実の方が小さい果実より、干した後の重量や大きさが大きく見栄えがするが、乾燥しにくいため変色しやすいからである。品種としては、蜂屋(甲州百目、富士)、甘百目、堂上蜂屋をあげることができる。
【0022】
なお、干し柿の製造には、通常渋柿を用いるが、甘柿や、種の有無により渋の抜け具合の変わる不完全甘柿を用いて干し柿を製造しても良い。不完全甘柿としては、西村早生、禅寺丸、甘百目、水島、伽羅、赤柿、久保、筆柿、御所などを上げることができ、甘柿としては、富有、次郎、太秋、愛秋豊、伊豆、早秋、貴秋、晩御所、花御所、天神御所などをあげることができる。
【0023】
柿を乾燥させる際の乾燥雰囲気の圧力は、周囲の大気圧であることが好ましい。大気圧とは、通常の大気がとりうる絶対圧であり、その範囲は高度(海抜)による気圧減少も含めて絶対圧700hPa以上1100hPa以下であり、高度100m程度までの地域において通常の気圧の場合950hPa以上1050hPa以下の範囲である。
乾燥条件として減圧により乾燥を行う場合には、減圧による圧力差に耐えうる気密乾燥室を用いるとともに、乾燥が急激に進んで多孔質状となることを防ぐために乾燥温度を下げて乾燥速度を制御するか、常圧での乾燥を併用しなければならない。そのため、装置コストが大きくなるとともに、乾燥に長時間を要するか、あるいは、乾燥を緩慢にする糖類溶液などの添加物を、むき柿の表面に塗布することなどが必要となるためである。加圧の場合も減圧と同様に、圧力差に耐えうる気密乾燥室が必要になり、装置コストが上がるため好ましくない。
【0024】
柿を乾燥させる乾燥雰囲気の温度としては、20℃以上60℃以下とすることが好ましく、さらに好ましくは、30℃以上40℃以下である。20℃未満の温度で乾燥させると、柿中に含まれる水分の移動が遅いため、乾燥に時間がかかりすぎるため好ましくない。一方、60℃を越えると柿の表面での水分の蒸発が速すぎて表面のみが乾燥してしまい、内部からの水分の移動がしにくくなるため好ましくない。また、柿を乾燥させる際の乾燥雰囲気の相対湿度は、20%RH以上60%RHが好ましい。なお、相対湿度(%RH)とは、乾燥雰囲気中の水蒸気分圧をその温度の飽和水蒸気分圧で割ったものを%で表記したものである。
【0025】
乾燥雰囲気中の酸素濃度を0.1体積%以上10体積%以下とするには種々の方法をとることができる。例えば、乾燥雰囲気中に酸素を含有しない気体を導入することにより、あるいは乾燥雰囲気中の酸素を吸収あるいは除去するための薬剤等を用いることにより達成することができる。酸素を含有しない気体は特に限定されないが、窒素や二酸化炭素を用いることが好ましい。窒素や二酸化炭素は、工業的に一般に流通しているためである。窒素を用いる場合には液化窒素や圧縮窒素を用いることができる。また、二酸化炭素を用いる場合には、液化二酸化炭素やドライアイスを用いることができ、より好ましくはドライアイスを用いることができる。ドライアイスは、常圧で固体でありボンベ等が不要で取り扱いが容易なためである。
【0026】
酸素を除去する薬剤としては、粉末状の鉄を主成分とするものや、ビタミンCやその他の有機系の脱酸素剤を用いることができる。また、固相吸着型の酸素除去装置を用いても良い。
【0027】
さらに、本発明では、硫黄薫蒸又は自然乾燥を併用することを妨げない。すなわち、下記の態様の実施も包含する。
1.減酸素乾燥のみで乾燥を行う。
2.硫黄薫蒸を行い自然乾燥した後に、減酸素乾燥を行う。
3.減酸素乾燥を行った後に、硫黄薫蒸を行い自然乾燥する。
本発明の干し柿の製造方法は、硫黄薫蒸及び自然乾燥と併用とすることにより、自然乾燥の際の黒変等を抑制することができるとともに、天候や気温等に左右されない計画的な干し柿の生産が可能になる。
【0028】
硫黄薫蒸は、剥皮した柿を縄に吊るすあるいは、トレーに並べるなどした状態において、硫黄を燃焼させ発生した亜硫酸ガス(SO)を柿に吸収させることにより行うことができる。
【0029】
次に、本発明にかかる干し柿の製造装置について説明する。本発明にかかる干し柿の製造装置は、気密性を有する本体を有し、本体内部に乾燥雰囲気を保持するとともに、酸素除去手段及び乾燥雰囲気中の水除去手段を備えることを特徴とする。また、本体内部には、加熱手段を設けることができる。
【0030】
本体は、一定の気密性を有すればよく、例えば、鋼板や、合成樹脂板、目張りした木材、繊維強化プラスチック及び、合成樹脂フィルム等により形成することができる。合成樹脂版や合成樹脂フィルムの材料としては、塩化ビニール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリウレタンなどを用いることができる。また、鋼板、木材、ガラスファイバー等の構造材と合成樹脂フィルムとの複合構造でもよく、合成樹脂製の袋状としても良い。
【0031】
本体は、気密性とともに断熱性を有することが好ましい。内部の乾燥雰囲気を加熱し乾燥を行うためである。断熱材としては特に限定されないが、発泡ウレタンや発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、その他の断熱材を用いることができる。
【0032】
本体には、酸素除去手段を備える。酸素除去手段としては、本体内の乾燥雰囲気の酸素含有量を低下させることができれば限定されない。酸素除去手段としては例えば、窒素ガス供給装置、二酸化炭素ガス供給装置などの酸素以外のガス供給装置や、酸素の吸収剤、または、燃焼や触媒反応、固相吸着などにより酸素を除去する装置を用いることができる。
【0033】
窒素ガス又は二酸化炭素ガスの供給装置により酸素を除去する場合、装置コストが低いため、その他の装置よりも好ましい。通常、大気には、約21体積%の酸素が含まれているが、窒素ガス又は二酸化炭素ガスを本体内部に供給することにより、内部の乾燥雰囲気を本体外部に排出し、内部の酸素濃度を10体積%以下とすることができる。内部の酸素濃度の調整は、窒素ガスの供給量により制御する方法や、周囲の酸素を含んだ大気と窒素ガスとを混合して供給し、窒素ガスの混合割合と混合したガスの供給量により制御することができる。
【0034】
窒素ガス供給装置としては、液化窒素又は圧縮窒素ガスのボンベや固相吸着体による窒素ガス供給装置を用いることができる。二酸化炭素ガス供給装置としては、液化二酸化炭素のボンベや、ドライアイスなどを用いることができる。二酸化炭素は、窒素よりも重量あたりの単価が安いため好ましく、ドライアイスはハンドリングが容易で、価格も安いため特に好ましい。
【0035】
窒素ガス供給装置もしくは二酸化炭素ガス供給装置には、必要に応じて気化潜熱を与えるための蒸発器及びバルブ、そしてガス流量計を備えることができ、窒素ガスや二酸化炭素ガスなどを本体内に供給する散気管を備えることができる。
本体には、窒素ガスまたは二酸化炭素ガスを供給したときに、内部からのガスを外部に放出するガス放出管を設けることができる。ガス放出管には、外部の酸素を豊富に含んだ大気が内部に侵入しないように、逆止弁を設けることが好ましい。
【0036】
本体内には、内部の乾燥雰囲気の水分を除去するための水除去手段を備える。水除去手段としては、特に限定されないが、除湿機を用いることが好ましい。除湿機を備えることにより、換気することなく、本体内の酸素を減少させた状態で柿の乾燥を行うことができるようになる。除湿機の形式は限定されないが、冷凍機を用いたものや、生石灰、塩化カルシウム、シリカゲルなどにより吸着させて除湿する方法をとることができる。特に冷凍機を用いて除湿する方法が、吸着剤を用いることなく連続して運転できるため、好ましい。また、冷凍機としては、冷媒を用い圧縮機と蒸発器及び凝縮器を備えたものが好ましい。蒸発器で乾燥雰囲気を冷却して水分を除去するとともに、凝縮器で乾燥雰囲気を加熱することができるためである。
【0037】
本体には、柿を縄などに吊った状態で収納するための吊り棚や、柿を並べて乾燥させるトレーを収納する棚を備えることができる。
【0038】
本体内部には、乾燥雰囲気中の酸素濃度を測定するセンサを備えることが好ましい。酸素濃度測定値を参照し窒素や二酸化炭素等のガスの供給量を制御することにより、本体内の酸素濃度を制御することができる。本体内の温度の変更や、外部の温度・湿度の変化により、内部の乾燥雰囲気中の酸素濃度が変化することがあるため、常に一定濃度以下の酸素濃度として乾燥させることができるようにするためである。本体内部には、温度センサまたは、湿度センサを設けることができる。
【0039】
本体内部には、乾燥雰囲気の流れをつくり攪拌することにより柿の乾燥を効率よく行うためにファンを設けることが好ましい。ファンは、乾燥雰囲気を本体内部で十分に攪拌できれば特に制限されないが、乾燥のためには、一定以上の風量があることが望まれる。
【0040】
次に、本発明にかかる干し柿の製造装置について、図1〜図3を参照してさらに詳細に説明するが、これに限定されるものではない。図1は、本発明にかかる干し柿製造装置の側面図であり、図2は平面図、図3は正面図である。
【0041】
本発明にかかる干し柿の製造装置は、干し柿を乾燥するための本体1を備える。本体1は、例えば幅2.7m、高さ2.4m、奥行き1.8mの大きさの箱型をなし、発泡ウレタン樹脂充填鋼板より製作されている。本体1は、前面に観音開きの扉2を備え、窒素ガス供給装置(酸素除去手段)3及び酸素濃度測定装置4を備えている。本体1は、気密性を有し、外部からの空気等が内部に自由に侵入できないように製作されている。
【0042】
本体1には、水除去手段である除湿機5が、扉2の対向壁面中央下部に配置されている。除湿機5はその扉2側の面から乾燥雰囲気aを吸入して、除湿機5内部に備えられた冷媒蒸発機により乾燥雰囲気を冷却して、乾燥雰囲気a中の水分を凝縮させることにより、除湿(水除去)を行えるようになっている。除湿機5は、室外機6との間で冷媒を流通できるようになっている。また、室外機6には凝縮機を備え、除湿機5は内部に冷媒蒸発器のほかに圧縮機、凝縮器、ヒーターを備えており、水分の除去とともに乾燥雰囲気aの冷却及び加熱が可能になっている。
【0043】
除湿機5には、パイプを介してドレン18が接続されている。ドレン18は、U字管となっており、内部からの水及び気体を外に排出するとともに、外部からの空気や他の気体を内部には侵入させないようになっている。
【0044】
本体1内の除湿機5の上方には、窒素ガス供給装置3の散気管19が配設されており、本体1の外側に置かれた、ボンベ7から蒸発器8を経由して、本体1内部に窒素ガス等を供給することができるようになっている。ボンベ7には液化窒素が充填されている。散気管19は、多数の孔を有する有底円筒状をなし、開口端から窒素ガス等を吹き込むことによって、内部に均一に窒素ガスbを供給できるようになっている。散気管19と蒸発器8の間には、流量計9が設けられており窒素ガス導入量の測定ができるようになっている。また、ボンベ7と蒸発器8の間には、バルブ10が設けられており、窒素導入量の調節ができるようになっている。
【0045】
本体1には、閉鎖された状態の扉2と平行に間仕切11が設けられており、本体1内の空間を分割している。間仕切11は、本体1の上方から概ね2/3の高さまで設けられており、その下部は開口部となっている。間仕切11の上部には、3台の攪拌ファン12が間仕切11を貫通するように取り付けられており、開口部と攪拌ファン12とを経由して間仕切11で仕切られた両空間の乾燥雰囲気aを循環させるようになっている。
【0046】
間仕切11と扉2との間には、干し柿を干すための吊り棚13が設けられており、20個のむき柿14を一つの縄に吊るしたものを連15として300本の連15を同時に吊り下げることができるようになっている。
【0047】
酸素濃度測定装置4は、本体1内部に設けられたセンサ部16、及び制御盤17上に設けられた表示部が接続されてなり、本体1内部の酸素濃度を検出できるようになっている。
【実施例】
【0048】
[実施例1]宮城県白石市で生産された蜂屋柿を剥皮して、縄に固定して連作りを行った。乾燥前の1連の重量は、平均4kgであり、剥皮した柿果実の平均重量は約200gであった。その連を本発明の乾燥機とは別途設けた乾燥室内に吊るして硫黄薫蒸を行った。薫蒸量(燃焼させる硫黄の量)は36g/mとした。その後、2週間の期間にわたって自然乾燥させた。自然乾燥後の歩留は平均50%であった。
【0049】
その柿を図1〜図3で説明した本発明にかかる干し柿乾燥装置内の吊り棚13に吊して、大気圧下、窒素ガス送気量100l/min、乾燥雰囲気中酸素濃度10体積%、温度36℃、相対湿度40%RHで48時間の乾燥を行った。酸素濃度は、窒素ガス送気量を調節することにより制御した。
【0050】
減酸素乾燥後の歩留は平均30%となった。その柿の中央部を外部表面側から色差測定を行った。色差測定には、日本電色工業株式会社製、Σ−80を用いた。

かであり、小さいほど色がくすんでいて彩度が低いことを表す。
【0051】
【数1】

【0052】
【表1】

【0053】

干し柿の渋味は消失していた。
【0054】
[実施例2]乾燥雰囲気内の酸素含有量を5体積%とし、窒素ガス送気量を300l/minとした以外は実施例1と同様にして、干し柿の製造を行った。その干し柿を実施例1と同様にして測定を行った結果を表1及び図4に示す。
【0055】

干し柿の渋味は消失していた。
【0056】
[実施例3]乾燥雰囲気内の酸素含有量を2体積%とし、窒素ガス送気量を600l/minとした以外は実施例1と同様にして、干し柿の製造を行った。その干し柿を実施例1と同様にして測定を行った結果を表1及び図4に示す。
【0057】

干し柿の渋味は消失していた。
【0058】
[実施例4]蜂屋柿を剥皮した後に、硫黄薫蒸及び自然乾燥することなく、実施例2と同様に本発明にかかる乾燥装置により乾燥し、干し柿の製造を行った。その際の乾燥時間は、4日間とした。その干し柿を実施例1と同様にして測定を行った結果を表1及び図4に示す。
【0059】

干し柿の渋味は消失していた。
【0060】
[比較例1]窒素ガスの送気を行わず、乾燥雰囲気内の酸素含有量を21体積%とした以外は実施例1と同様にして、干し柿の製造を行った。その干し柿を実施例1と同様にして測定を行った結果を表1及び図4に示す。
【0061】

干し柿の渋味は消失していた。
【0062】
[比較例2]蜂屋柿を剥皮した後に、硫黄薫蒸及び自然乾燥することなく、一般の加熱乾燥機により、乾燥して干し柿を製造した。乾燥雰囲気の温度36℃、湿度10%RH未満、大気圧、大気雰囲気中で乾燥して干し柿の製造を行った。7日間の乾燥を行ったところ歩留は24.9%であった。その干し柿を実施例1と同様にして測定を行った結果を表1及び図4に示す。
【0063】

干し柿の渋味は消失していた。
【0064】
[参考例1]実施例1と同様にして、自然乾燥を行った直後の干し柿について実施例1と同様にして測定を行った結果を表1及び図4に示す。自然乾燥後の歩留は平均50%であった。その干し柿を実施例1と同様にして測定を行った結果を表1及び図4に示す。

ころ、干し柿の渋味は残存していた。
【0065】
[参考例2]皮むき前の、蜂屋柿の表面からの色差について実施例1と同様に

あった。
【0066】
[参考例3]皮むき後の、蜂屋柿の表面からの色差について実施例1と同様に

3.22であった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明にかかる干し柿の製造装置の側面図である。
【図2】本発明にかかる干し柿の製造装置の平面図である。
【図3】本発明にかかる干し柿の製造装置の正面図である。
【図4】

【符号の説明】
【0068】
1 本体
2 扉
3 窒素ガス供給装置
4 酸素濃度測定装置
5 除湿機
6 室外機
7 ボンベ
8 蒸発器
9 流量計
10 バルブ
11 間仕切
12 攪拌ファン
13 吊り棚
14 むき柿
15 連
16 センサ部
17 制御盤
18 ドレン
19 散気管
a 乾燥雰囲気
b 窒素ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥皮した渋柿果実を、酸素含有量が0.1体積%以上10体積%以下の乾燥雰囲気中において乾燥させることを特徴とする干し柿の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥雰囲気を大気圧として乾燥することを特徴とする請求項1に記載の干し柿の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥雰囲気を20℃以上60℃以下の温度として乾燥することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の干し柿の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥雰囲気の乾燥時の温度における相対湿度を20%RH以上60%RH以下とすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の干し柿の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥雰囲気が、0.1体積%以上99.9体積%以下の窒素を含有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の干し柿の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥雰囲気が、0.1体積%以上99.9体積%以下の二酸化炭素を含有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の干し柿の製造方法。
【請求項7】
前記剥皮した渋柿果実を硫黄薫蒸し、大気雰囲気中において予備乾燥したのち、前記乾燥雰囲気中で乾燥させることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の干し柿の製造方法。
【請求項8】
剥皮した渋柿果実を酸素含有量が0.1体積%以上10体積%以下の乾燥雰囲気中において乾燥させる干し柿の製造装置であって、気密性を有する本体を備え、本体内の乾燥雰囲気中の酸素除去手段及び乾燥雰囲気中の水除去手段を備えることを特徴とする干し柿の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−219474(P2009−219474A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104111(P2008−104111)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(508111110)合資会社保科榮男商店 (1)
【出願人】(591074736)宮城県 (60)
【Fターム(参考)】