説明

干渉式の距離測定装置及び/又は回転測定装置

本発明は、センサユニットを有する格子手段を備えた干渉式の距離測定装置及び/又は回転測定装置に関する。センサユニットは格子手段の直線及び/又は回転運動を検出するために、光導体ユニットから出射され格子手段へと配向される二つの部分ビームが受光ユニットによって検出可能であり、且つ格子手段の直線又は回転運動及び/又は格子手段の位置に依存する重畳信号を形成するように光導体ユニット並びに受光ユニットと協働する。光導体ユニットには二つの部分ビームにビームを分割する手段と、二つの部分ビームの内の一方に対して、部分ビームの光学的なコヒーレンス長よりも長い光学的な遅延区間を生じさせる第1の光学的な遅延手段とを有する変調干渉計ユニットが接続されている。変調干渉計ユニットは、二つの部分ビームが共通して供給される光導体を介してセンサユニットと接続されている。受光ユニットはセンサユニットに設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉式の距離測定装置及び/又は回転測定装置に関する。「回転測定装置」という語句は「角度測定装置」であるとも解される。その種の装置の原理はEP 0 420 897 B1から公知である。この原理によれば、ドップラー効果を介して距離情報が得られ、しかも、変調干渉計ユニットを用いて形成された二つの光学的な部分ビームが干渉格子(格子手段)へと配向され、また共通の入射位置においては、干渉式の受光部、例えばフォトダイオードによって記録される干渉が形成される。
【0002】
ここで格子手段が線形運動又は回転運動する場合には、この運動を受光ユニットの出力信号(重畳信号)の位相変化として検出し、続けて所望の距離情報又は回転距離(角度)情報に変換することができる。
【0003】
この原理に従い動作する距離測定装置及び回転測定装置は一般的なものであって市販されており、また、例えば工業的な測定技術及び製造時の測定技術の分野において使用されている。
【0004】
もっとも、冒頭で述べたような従来技術は、測定装置又は製造装置に適切に取り付けられている(一般的にケーシングに組み込まれている)公知の装置が周囲の影響、例えば温度や振動等に対して敏感であるので、その種のケーシングから分離させるための煩雑な措置が必要となるか、周囲条件によってこの技術の測定精度及び使用領域が制限されるという欠点を有している。
【0005】
発明の概要
従って本発明の課題は、干渉式の距離測定装置及び/又は回転測定装置を、普遍的な使用可能性に関して、特に、周囲の影響及び環境の影響に対する測定装置の感度に関して改善することである。
【0006】
この課題は、独立請求項の特徴部分に記載されている構成を備えた装置によって解決される。本発明の有利な実施の形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明によれば、有利には、(有利には長い区間にわたっており、及び/又は、フレキシブルであり、効果的な分離を生じさせる)光導体に対して適切に固定及び保護して設けることができる変調干渉計ユニットを、具体的な使用位置又は測定位置に設けることができるセンサユニットと接続することができ、この接続は、場合によっては発生する振動又は温度に起因する不利な影響が確かにセンサユニットに作用するが、変調干渉計ユニットは影響を受けないままであるように行なわれている。このために本発明によれば、有利には、二つの部分ビーム(光学的な遅延区間の分だけ光学的なコヒーレンス長よりも長く遅延される)が一緒に光導体に入射され、この光導体を通ってセンサユニットへと案内され、この際に、測定に影響を及ぼす相互的な影響は生じない。
【0008】
本発明の構成において別個に、また光導体を介してのみ接続されているセンサユニットにおいては、格子手段との干渉的な相互作用並びに受光ユニットによる光学的な重畳信号の記録が行なわれる。受光ユニットは信号の流れにおいて下流に設けられている評価及び計算手段と公知のやり方で接続されている。
【0009】
本発明によれば、有利には、干渉式の光導体ユニット、干渉式の格子手段、並びに、いわゆる面内ユニットとしての干渉式の記録ユニットからなる装置が格子干渉計の原理に従って実現されている。つまり、二つの部分ビームは格子手段において回折され、また統合されることにより重畳信号を形成する。この重畳信号の位相変化を、所望の経路情報及び/又は角度情報を形成するために、公知のやり方で評価することができる。
【0010】
本発明によれば、好適には、格子手段によって表される格子平面が光導体ユニットの光出射部と受光ユニットとの間に延在するように機能ユニットが相互に相対的に配置されている。
【0011】
本発明によれば、有利には、本発明の有利な実施の形態に従い、ヘテロダイン干渉法のための変調干渉計ユニットの機能が実現される。このために、変調干渉計ユニットの機能として、(有利には音響光学的な変調器として実現されている)変調器は、二つの光ビーム間での周波数シフトが実現されるように設けられている。
【0012】
センサ側では、格子手段における二つの部分ビームの回折後にそれらの部分ビームの干渉を生じさせることができるようにするために、本発明によれば、第2の光学的な遅延手段が設けられており、この第2の光学的な遅延手段を用いて、遅延区間分だけの光学的な遅延を光導体の端部において再び補償することができるので、その限りにおいては、第2の光学的な遅延手段によって生じる光路差は、変調干渉計ユニットにおける第1の遅延手段の光路差に対応する。適切には、この種の遅延区間は例えば(スライド可能な)プリズムによって実現されている。
【0013】
一方では、測定すべき距離に応じて線形に移動する格子に基づく干渉式の距離測定は有利であり、また本願発明の対象であるが、それと同様に、(例えば星形又は別のやり方で放射形対称に構成されている)格子が所定の回転軸について回転し、その回転によって生じるその種の角度のずれを、本発明に従い受光ユニットによって検出された干渉パターン(正確には干渉法により測定された光位相差)として推定する干渉式の回転測定(角度測定)も有利であり、やはり本願発明の対象である。
【0014】
角度分解能を高めるため、また回転測定装置としての本発明の別の有利な実施の形態によれば、有利には、(ビームペアとしての)二つの部分ビームは光導体から出射した後に、さらに適切に分割されることによって二重にされ、(またそれぞれ適切な干渉式の受光ユニットを用いて)回転運動する格子パターンの二つの位置、例えば回転軸の両側において記録される。このようにして、格子手段が回転する際には、そのように形成された二つのチャネルの光位相がそれぞれ反対方向にシフトされる。
【0015】
従って本発明によれば、簡単で洗練されたやり方で、温度又は振動によって大きな負荷が掛けられている使用環境においても格子干渉計を使用することができる。本発明は種々の用途に使用できるものである。特に、本発明は工業的な測定タスクのためのものであることは明白であるが、本発明の適用範囲はこれに制限されるものではない。
【0016】
本発明の更なる利点、特徴及び詳細は、以下に記載する有利な実施例の説明並びに図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施例による、干渉式の距離測定装置の概略的な回路図を示す。
【図2】図1において部分IIとして表されている、図1の装置の測定ユニット(センサユニット)の詳細図を示す。
【図3】本発明の第2の実施例による、干渉式の回転測定装置(角度測定装置)の概略的な回路図を示す。
【図4】図3において部分IVとして表されている、図3の実施例の測定ユニット(センサユニット)の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、特に温度及び/又は振動に対して保護されて固定的に設けられている変調干渉計ユニット10と、この変調干渉計ユニット10とモノモードの光導体12を介して接続されている、使用位置又は測定位置に取り付けられているセンサユニット14との組み合わせとしての干渉式の距離測定装置の実現形態を示す。
【0019】
全体の装置の第1のサブシステムとしての変調干渉計ユニット10は、例えばスーパールミネッセンスダイオード(波長約800nm)として実現されている短コヒーレントの光源16を備えている、マッハツェンダー型のヘテロダイン干渉計を有している。ビームの伝播方向において光源16の後方には測定ビーム20並びに基準ビーム22を形成するためのビームスプリッタ18が設けられている。基準ビーム22は公知のやり方で音響光学的な変調器24を通過し、この変調器24は測定ビームに相対的な基準ビームの周波数シフト(例えば100kHzの周波数差)を生じさせる。更には、基準分岐内にはスライド可能なプリズムの形態の遅延ユニット(遅延区間26)が設けられており、この遅延ユニット26は基準ビームと測定ビームの光路差を生じさせ、この光路差は使用される光のコヒーレンス長よりも大きく、特に、このコヒーレンス長よりも数倍大きい。上述の実施例において、短コヒーレントの光源16のコヒーレンス長を約100μmとした場合、遅延ユニット26によって生じる遅延区間は1mm、即ち、コヒーレンス長の10倍であり、従って、コヒーレンス長に比べて長いものになっている。
【0020】
これによって、部分ビームの干渉が生じることなく、後続のミラーユニット28において測定ビームと結合された基準ビームを一緒に個別の(単一の)光導体12へと入力させ、光導体12内を通過させることができる。
【0021】
続いて、第2のサブシステム(即ち、センサユニット14)において、光導体12の端部に設けられているコリメータ30の出力側ではビームが分割される。このビームの分割の際に、部分ビーム20,22がプリズムユニット26における処理と同様に遅延される。換言すれば、光導体の入力側において存在する相対的な遅延が相殺される。従って、プリズム32から出射される部分ビーム20,22は公知のやり方で、運動測定のために可動である格子手段としての格子スケール34を通過することができ、また公知のやり方で格子において回折及び干渉されるので、格子ユニット34に関してプリズム32と対向しているフォトダイオード36は重畳信号を受信することができ、また、所望の光位相をフォトダイオード信号の位相として、後段の評価ユニット38において電子的に距離測定信号に変換することができる。従って、干渉法により測定された光位相差は格子スケール34のスライドに関する所望の情報を包含している。
【0022】
図2には、第2のシステムが詳細に示されている。即ち、センサ側の遅延区間を実現するために、プリズムユニット32において一体的に示されている構成素子群の一部として、光導体12の出口側に位置しているビームスプリッタ40がどのように設けられているかがはっきりと示されている。また、ビームスプリッタ/プリズムユニットの複数の出射面にはそれぞれ偏向格子42が示されている。
【0023】
図3及び図4には、干渉式の回転測定装置を実現するための、本発明の第2の実施例が示されている。第1のサブシステムとしての変調干渉計ユニット10は図1におけるユニット10に対応している。
【0024】
回転経路(角度)を記録するために構成されているセンサユニット50(図3における部分IVに相当)側の光導体12の端部においてはビームの分割が行なわれ、分割された二つのビームは光導体分岐52,54にそれぞれ案内される。それらのビームは続いて、各分岐の端部においてビームスプリッタ/プリズム装置56又は58に供給される。続いて、このビームスプリッタ/プリズム装置56,58においては図2を参照して説明したユニット30,42と同様に、先ず、光導体の端部から出射されたビームの分割、並びにユニット10のプリズム26の遅延区間に相当する遅延が行なわれるので、ここでもまた上述のように、分離された部分ビームの干渉を生じさせることができるが、ここではそれぞれの光導体分岐52,54について2倍の干渉が生じている。
【0025】
ユニット50の回転発生器は、ディスク状の回転可能に支承されている格子パターン60であり、この格子パターン60は(軸中心点62から出発して)放射状に構成されており、前述の直線状の構成と同様に、干渉され重畳されている部分ビームの記録を各分岐に対応付けられているフォトダイオード64又は66によって実現することができる。その点においては図1の実施例とは異なり信号ペアが生じ、この信号ペアを回転運動情報の検出のために評価ユニット38によって評価することができる。簡単な形態ではただ一つの分岐(また従って、所属の一つのフォトダイオード)を用いても機能するであろう図示されている装置は上述のやり方で高い角度分解能を示す。何故ならば、回転格子(回転格子スケール)60が回転する際に、二つの分岐(チャネル)の光位相は相互に反対方向にシフトされるからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子手段(34;60)を備えた干渉式の距離測定装置及び/又は回転測定装置であって、
前記格子手段(34;60)はセンサユニット(14)を有しており、
該センサユニット(14)は、前記格子手段(34;60)の直線運動及び/又は回転運動を検出するために、光導体ユニット(12)から出射され前記格子手段(34;60)へと配向される二つの部分ビーム(20,22)が、受光ユニット(36)によって検出可能であり、且つ、前記格子手段(34;60)の直線運動又は回転運動及び/又は前記格子手段(34;60)の位置に依存する重畳信号を形成するように、前記光導体ユニット(12)並びに前記受光ユニット(36)と協働し、
前記光導体ユニット(12)には変調干渉計ユニット(10)が接続されている、干渉式の距離測定装置及び/又は回転測定装置において、
前記変調干渉計ユニット(10)は、前記二つの部分ビーム(20,22)にビームを分割する手段(18)と、前記二つの部分ビーム(20,22)の内の一方に対する第1の光学的な遅延手段(26)とを有しており、該第1の光学的な遅延手段(26)は、前記部分ビーム(20,22)の光学的なコヒーレンス長よりも長い光学的な遅延区間を生じさせるものであり、
前記変調干渉計ユニット(10)は、前記二つの部分ビーム(20,22)が共通して供給される光ファイバから成る光導体(12)を介して前記センサユニット(14)と接続されており、
前記受光ユニット(36)は前記センサユニット(14)に設けられていることを特徴とする、干渉式の距離測定装置及び/又は回転測定装置。
【請求項2】
前記光導体ユニットは、前記二つの部分ビーム(20,22)が前記格子手段(34;60)において回折されるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記受光ユニット(36)は、前記部分ビーム(20,22)の出射部に対して一定の不変の間隔を置いて、前記格子手段(34;60)によって表される格子平面が前記出射部と前記受光ユニット(36)との間に延在するように配置されている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記変調干渉計ユニット(10)は、前記センサユニット(14)の運動、特に直線運動及び/又は回転運動による影響を受けることなく固定的に設けられている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記変調干渉計ユニット(10)は、前記部分ビーム(20,22)を相互に周波数シフトさせる手段(24)を有しており、特に、ヘテロダイン干渉法のための変調器(24)として構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記光導体はモノモード光導体(12)として構成されており、前記二つの部分ビーム(20,22)が相互に重畳され、且つ相互に時間的に遅延された状態で入力されるように設計されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記センサユニット(14)は光学的な遅延手段(32)を有しており、該光学的な遅延手段(32)は、前記光導体(12)から出力される前記二つの部分ビーム(20,22)について前記光学的な遅延区間の補償を行なうように構成されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記光学的な遅延区間の長さは、前記コヒーレンス長の少なくとも2倍、有利には少なくとも5倍である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の光学的な遅延手段及び/又は前記第2の光学的な遅延手段はプリズム装置を有している、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
回転運動を検出するために構成されている前記格子手段(60)は回転軸(62)を中心として放射状、特に星形に構成されており、
前記部分ビーム(20,22)の二つのペアが、特に前記回転軸の両側において、前記格子手段と協働するように、前記センサユニット(14)にビーム分割手段が接続されている、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−531614(P2012−531614A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518864(P2012−518864)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058597
【国際公開番号】WO2011/000715
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】