説明

平滑電流算出装置、平滑電流算出方法、電池監視モジュール

【課題】正確かつ安定した平滑電流値を短時間に出力する平滑電流算出装置及び平滑電流算出方法、及びそれを用いた電池監視モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】二次電池の平滑電流を算出する平滑電流算出装置であって、測定された二次電池の電流値をデジタル化した測定デジタル電流値を供給され、前記デジタル電流値の時間変動を平滑した平滑デジタル電流値を出力するデジタル低域フィルタ手段22〜27と、前記測定デジタル電流値と前記平滑デジタル電流値との差分を閾値と比較して電流変動レベルを設定する電流変動レベル設定手段S1と、設定された前記電流変動レベルに応じて前記デジタル低域フィルタ手段のフィルタ係数を設定するフィルタ係数設定手段S2と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平滑電流を算出する平滑電流算出装置及び平滑電流算出方法、及びそれを用いた電池監視モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池等の二次電池を用いた電池パックが携帯電話やデジタルカメラなどの携帯機器に搭載されている。リチウムイオン電池は、一般に、その電圧により電池残量を検出することが難しいとされている。このため、マイコンなどにより電池の充放電電流を検出し、検出した充放電電流を積算することにより、電池残量を測定する方法がとられている。
【0003】
このようにして電池パックにおけるリチウムイオン電池の電池残量を測定する電池監視モジュールは、高精度A/D変換回路などのアナログ回路と、計測した電流値を積算するCPUやタイマなどのデジタル回路を半導体集積回路装置に搭載している。
【0004】
図9は電池監視モジュールにおける従来の電流測定装置の一例のブロック図を示す。図9において、電流センサ10で検出したアナログの電流値はデルタ・シグマ変換器11でデルタ・シグマ変換され、デシメーションフィルタ処理部12にてデシメーションフィルタ処理されることでデジタル化されてRAM13に格納される。その後、ゲインオフセット処理部14にてゲインオフセット補正処理を行われてRAM15に格納される。
【0005】
なお、矩形波状の出力指示電流を受けると、パルス電流出力の電流変化率が大きいとき各リアクトルを切り離してLCフィルタ回路のLC値を小さくし、パルス電流出力の電流変化率が小さいとき各リアクトルを接続してLCフィルタ回路のLC値を大きく制御して、電流リップルを低減する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
また、所与の信号の変動状態をウェーブレット変換を用いて判断し、判断された変動状態に応じて適応フィルタの内部パラメータを設定し、所与の信号を上記適応フィルタによってフィルタリングして、定常状態におけるゆらぎを抑制する技術が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−14229号公報
【特許文献2】特開2004−150279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
携帯機器に搭載される電池パックでは、携帯機器の動作状況によって電池監視モジュールの電流測定装置の測定電流に大きな変動が生じる。このため、電流測定装置では低域フィルタを用いて測定電流を平滑化することが考えられる。
【0009】
低域フィルタとしてフィルタ係数が固定のIIR(Infinite Impulse Response)フィルタを用いた場合に、フィルタの応答が速いフィルタ係数を設定すると電流の大きな変動時には追従しやすいが、出力すべき平滑電流の波形に対してフィルタ出力が一定ではなく上下に変動する傾向があり、平滑電流として適さないという問題があった。
【0010】
一方、フィルタの応答が遅いフィルタ係数を設定すると出力すべき平滑電流の波形に対して、その電流波形の開始から長時間経過すると電流波形の理想的な平滑値に近い値を出力できるが、理想的な平滑値に近い値を出力するまでに時間がかかりすぎるという問題があった。
【0011】
また、LMS(Least Mean Square)アルゴリズムなどを用いた一般的な適応フィルタについては、入力データ値を多数保存する必要があるなどデータ容量が大きくなることが予想され、限られたリソースの電池監視モジュール内のCPU上で動作することは困難であるという問題があった。
【0012】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、正確かつ安定した平滑電流値を短時間に出力する平滑電流算出装置及び平滑電流算出方法、及びそれを用いた電池監視モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施態様による平滑電流算出装置は、
二次電池の平滑電流を算出する平滑電流算出装置であって、
測定された二次電池の電流値をデジタル化した測定デジタル電流値を供給され、前記デジタル電流値の時間変動を平滑した平滑デジタル電流値を出力するデジタル低域フィルタ手段(22〜27)と、
前記測定デジタル電流値と前記平滑デジタル電流値との差分を閾値と比較して電流変動レベルを設定する電流変動レベル設定手段(S1)と、
設定された前記電流変動レベルに応じて前記デジタル低域フィルタ手段のフィルタ係数を設定するフィルタ係数設定手段(S2)と、を有する。
【0014】
好ましくは、前記デジタル低域フィルタ手段は、
前記測定デジタル電流値に第1フィルタ係数を乗算する第1乗算器(22)と、
前記平滑デジタル電流値を単位遅延時間だけ遅延したデジタル電流値に第2フィルタ係数を乗算する第2乗算器(27)と、
前記第1乗算器(22)の出力値に前記第2乗算器(27)の出力値を加算して前記平滑デジタル電流値として出力する加算器(24)を有し、
前記第1フィルタ係数と前記第2フィルタ係数の和は一定値である。
【0015】
好ましくは、前記電流変動レベル設定手段(S1)は、前記差分が前記閾値を超えた状態が所定期間持続したとき第1電流変動レベルを設定し、前記差分が前記閾値を超えた状態が前記所定期間持続していないとき第2電流変動レベルを設定し、前記差分が前記閾値未満の状態であるときが持続したとき第3電流変動レベルを設定し、
前記フィルタ係数設定手段は、前記第1電流変動レベルが設定されているとき前記第1フィルタ係数に所定範囲を超える一定値を設定し、前記第2電流変動レベルが設定されているとき前記第1フィルタ係数を前記所定範囲内で微少量だけ増大させて設定し、前記第3電流変動レベルが設定されているとき前記第1フィルタ係数を前記所定範囲内で微少量だけ減少させて設定する。
【0016】
好ましくは、前記閾値は、前記平滑デジタル電流値を前記単位遅延時間だけ遅延したデジタル電流値に応じて変化する。
【0017】
本発明の一実施態様による平滑電流算出方法は、
二次電池の平滑電流を算出する平滑電流算出方法であって、
測定された二次電池の電流値をデジタル化した測定デジタル電流値を供給され、前記デジタル電流値の時間変動を平滑した平滑デジタル電流値を出力し、
前記測定デジタル電流値と前記平滑デジタル電流値との差分を閾値と比較して電流変動レベルを設定し、
設定された前記電流変動レベルに応じて前記デジタル低域フィルタ手段のフィルタ係数を設定する。
【0018】
好ましくは、前記平滑デジタル電流値は、前記測定デジタル電流値に第1フィルタ係数を乗算する第1乗算を行い、
前記平滑デジタル電流値を単位遅延時間だけ遅延したデジタル電流値に第2フィルタ係数を乗算する第2乗算を行い、
前記第1乗算の出力値に前記第2乗算の出力値を加算して前記平滑デジタル電流値として出力し、
前記第1フィルタ係数と前記第2フィルタ係数の和は一定値である。
【0019】
好ましくは、前記電流変動レベルの設定は、前記差分が前記閾値を超えた状態が所定期間持続したとき第1電流変動レベルを設定し、前記差分が前記閾値を超えた状態が前記所定期間持続していないとき第2電流変動レベルを設定し、前記差分が前記閾値未満の状態であるときが持続したとき第3電流変動レベルを設定し、
前記フィルタ係数の設定は、前記第1電流変動レベルが設定されているとき前記第1フィルタ係数に所定範囲を超える一定値を設定し、前記第2電流変動レベルが設定されているとき前記第1フィルタ係数を前記所定範囲内で微少量だけ増大させて設定し、前記第3電流変動レベルが設定されているとき前記第1フィルタ係数を前記所定範囲内で微少量だけ減少させて設定する。
【0020】
好ましくは、前記閾値は、前記平滑デジタル電流値を前記単位遅延時間だけ遅延したデジタル電流値に応じて変化する。
【0021】
本発明の一実施態様による電池監視モジュール(200)は、
前記二次電池(301)の測定デジタル電流値を積算した電池容量を前記平滑デジタル電流値で除算して残り稼働時間を算出する。
【0022】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、正確かつ安定した平滑電流値を短時間に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】デジタル低域フィルタ回路の一実施形態の回路構成図である。
【図2】フィルタ係数設定処理の一実施形態のフローチャートである。
【図3】電流変動レベル計算処理の一実施形態のフローチャートである。
【図4】電流の平滑値と振幅の関係を示す図である。
【図5】フィルタ係数計算処理の一実施形態のフローチャートである。
【図6】各電流変動レベルによるフィルタ係数Bの変化を模式的に示す図である。
【図7】測定電流と平滑電流の変化を示す図である。
【図8】電池パックの一実施形態のブロック図である。
【図9】従来の電流測定装置の一例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
【0026】
<平滑電流算出装置の一実施形態>
図1は、本発明の平滑電流算出装置で用いられるデジタル低域フィルタ回路の一実施形態の回路構成図を示す。図1において、端子21にはメモリ(後述のRAM213)から読み出されたデジタルの電流値Xが入力され乗算器22に供給される。乗算器22には端子23から第1フィルタ係数Bが供給されており、乗算器22は電流値Xにフィルタ係数Bを乗算して加算器24に供給する。加算器24は乗算器22から供給される値に後述する乗算器27から供給される値を加算する。
【0027】
加算器24の出力する平滑値Yは端子25から出力されると共に、単位遅延素子26で単位時間だけ遅延され遅延平滑値Yn−1とされて乗算器27に供給される。乗算器27には端子23から第2フィルタ係数Aが供給されており、乗算器27は遅延平滑値Yn−1にフィルタ係数Anを乗算して加算器24に供給する。
【0028】
つまり、加算器24からは、Yn=X×B+Yn−1×Aで表される平滑値Yが出力され、メモリ(後述のRAM213)に格納される。ここで、本実施形態では、B+A=1と設定している。なお、図1はデジタル低域フィルタ回路を示しているが、図1の回路動作をCPU等の演算装置にてソフトウェア処理で実行しても良い。
【0029】
<フィルタ係数設定処理のフローチャート>
図2は、本発明の平滑電流算出装置が所定周期で実行するフィルタ係数設定処理の一実施形態のフローチャートを示す。図2において、フィルタ係数設定処理は、ステップS1の電流変動レベル計算処理と、ステップS2のフィルタ係数計算処理を有している。この図2のフィルタ係数設定処理は、所定周期(例えば数10msecから数sec程度の周期)で繰り返し実行される。
【0030】
図3は、ステップS1で実行される電流変動レベル計算処理の一実施形態のフローチャートを示す。ここでは、電流変動レベルを3段階に分類する。電流変動レベル=1は大きな変動を表し、電流変動レベル=2は小さな変動を表し、電流変動レベル=3は変動なしを表す。
【0031】
図3において、ステップS11で電流変動レベル=2を設定する。次に、ステップS12で前回の電流値Xn−1と前回の平滑値Yn−1との際の絶対値abs(Xn−1−Yn−1)が閾値THを超えるか否かを判別する。そして、abs(Xn−1−Yn−1)≦THの場合はステップS13でカウンタの値を0にリセットし、ステップS14で電流変動レベル=3を設定する。ここで、閾値THは(1)式で求められる。なお、例えばgain=0.2であり、例えばoffset=6である。
【0032】
TH=gain×Yn−1+offset …(1)
一方、abs(Xn−1−Yn−1)>THの場合はステップS15でカウンタの値を1だけインクリメントする。ステップS14又はS15を実行した後、ステップS16でカウンタの値が5以上か否かを判別する。カウンタの値が5未満であれば、この処理を終了し、カウンタの値が5以上であればステップS17で電流変動レベル=1を設定して、この処理を終了する。このため、abs(Xn−1−Yn−1)>TH、かつ、カウンタの値が5未満の場合には電流変動レベル=2となる。
【0033】
上記の(1)式の閾値THのゲイン係数gainとオフセット係数offsetの算出方法について説明する。図4(A)に測定電流値を破線で示す。理想的な平均電流値Avは所定期間内の測定電流値の平均である。また、電流変動幅Amは所定期間内の測定電流値の極大値エンベロープ(一点鎖線)と極小値エンベロープ(二点鎖線)の差分である。
【0034】
この場合、平滑値を出力すべき測定電流値Xi(i=1,2,3,…)の理想的な平均電流値AViと、測定電流値Xiからパルス状のノイズ成分を除いた電流変動幅Amiは図4(B)に示すような一次関数(直線)となる。この図4(B)から一例として、一次関数(直線)の傾きであるgainとして0.2を設定し、offset=6を設定している。
【0035】
図5は、ステップS2で実行されるフィルタ係数計算処理の一実施形態のフローチャートを示す。図5において、ステップS21で電流変動レベルが1,2,3のいずれであるかを判別する。電流変動レベルが1であればステップS22で今回のフィルタ係数BをSpに設定する。そして、ステップS29で今回のフィルタ係数Anに(1−B)を設定して、この処理を終了する。
【0036】
また、ステップS21で電流変動レベルが2であればステップS23で今回のフィルタ係数Bnを前回のフィルタ係数Bn−1から増分incだけ増加させる。そして、ステップS24で今回のフィルタ係数Bが最大値Maxを超えているか否かを判別し、B>Maxである場合にのみステップS25で最大値Maxを今回のフィルタ係数Bに設定する。そして、ステップS29で今回のフィルタ係数Aに(1−B)を設定して、この処理を終了する。
【0037】
また、ステップS21で電流変動レベルが3であればステップS26で今回のフィルタ係数Bnを前回のフィルタ係数Bn−1から減分decだけ減少させる。そして、ステップS27で今回のフィルタ係数Bが最小値min未満であるか否かを判別し、B<minである場合にはステップS28で最小値minを今回のフィルタ係数Bに設定する。B<minでない場合にはステップS24で今回のフィルタ係数Bが最大値Maxを超えているか否かを判別し、B>Maxである場合にのみステップS25で最大値Maxを今回のフィルタ係数Bに設定する。そして、ステップS29で今回のフィルタ係数Aに(1−B)を設定して、この処理を終了する。
【0038】
ここで、例えばSp=0.54であり、例えばMax=0.18であり、例えばmin=0.007であり、例えばinc=0.004であり、例えばdec=0.012である。
【0039】
図6に各電流変動レベルによるフィルタ係数Bの変化を模式的に示す。すなわち、電流変動レベルが1で大きな変動があればフィルタ係数BをSpとして、今回の電流値Xに対する重みを一挙に大きくする。また、電流変動レベルが2で変動ありの場合はフィルタ係数Bを微少量増加させ、今回の電流値Xに対する重みを僅かに大きくする。ただし、フィルタ係数Bが最大値Maxを超えないようにする。また、電流変動レベルが3で変動なしの場合はフィルタ係数Bを微少量減少させ、今回の電流値Xに対する重みを僅かに小さくする。ただし、フィルタ係数Bが最小値minを下回らないようにする。
【0040】
つまり、ローパスフィルタのフィルタ係数であるフィルタ係数Bを電流変動が比較的小さいときは応答の遅い可変範囲(min〜Max)内の値とし、大きな電流変動があったときには、非常に応答の速い値Spとしている。
【0041】
可変範囲(min〜Max)内でフィルタ係数Bを変更するときは、加算と減算を使用することにより、増分incと減分decのコードサイズを小さくすることができる。また、フィルタの応答を遅くするときの減分decをフィルタの応答を速くするときの増分incよりも大とする。これは、abs(Xn−1−Yn−1)とTHとの比較の結果が大となる確率が少ないほど短時間で応答を遅くするためである。ただし、decがincに比べあまりに大きすぎると、真の平滑値ではない値に出力値が収束するおそれがある。
【0042】
<波形図>
図7に破線で測定電流の変化の一例を示す。この破線で示す測定電流に対して、本実施形態の平滑電流算出装置では実線に示す平滑電流を得ることができる。なお、比較のためにフィルタ係数(B)が固定(=0.18)のIIRフィルタを用いた場合の平滑電流を一点鎖線で示す。このように、本実施形態では測定電流の大きな変動を十分に平滑化した平滑電流を得ることができる。
【0043】
ところで、電池パックでは、電池の充放電電流(測定電流)を積算して電池残量を算出する。更に、この電池残量を平滑電流で除算して残り稼働時間を算出する。
【0044】
<電池パック>
図8は、電池監視モジュールを適用した電池パックの一実施形態のブロック図を示す。同図中、電池監視モジュール200は、デジタル部210とアナログ部250とから大略構成されている。
【0045】
デジタル部210内には、CPU211、ROM212、RAM213、EEPROM214、割込み制御部215、バス制御部216、I2C部217、シリアル通信部218、タイマ部219、パワーオンリセット部220、レジスタ221、テスト端子状態設定回路222、テスト制御回路223、フィルタ回路290が設けられている。上記のCPU211、ROM212、RAM213、EEPROM214、割込み制御部215、バス制御部216、I2C部217、シリアル通信部218、タイマ部219、レジスタ221は内部バスにて相互に接続されている。
【0046】
CPU211は、ROM212に記憶されているプログラムを実行して電池監視モジュール200全体を制御すると共に、図2乃至図4に示すフィルタ係数設定処理及び図1の平滑値Yを求める低域フィルタ処理、更に、電池の充放電電流(測定電流)を積算して電池残量を算出する処理、電池残量を平滑電流値で除算して残り稼働時間を算出する処理等を実行する。この際にRAM213が作業領域として使用される。また、EEPROM214にはトリミング情報等が記憶される。
【0047】
割込み制御部215は、電池監視モジュール200の各部から割込み要求を供給され、各割込み要求の優先度に応じて割込みを発生しCPU211に通知する。バス制御部216は、どの回路部が内部バスを使用するかの制御を行う。
【0048】
I2C部217はポート231,232を介して通信ラインに接続されて2線式のシリアル通信を行う。シリアル通信部218はポート233を介して図示しない通信ラインに接続されて1線式のシリアル通信を行う。
【0049】
タイマ部219はシステムクロックをカウントし、そのカウント値はCPU211に参照される。パワーオンリセット部220はフィルタ回路290を介して接続されているポート235に供給される電源Vddが立ち上がったことを検出してリセット信号を発生し電池監視モジュール200の各部に供給する。
【0050】
レジスタ221にはEEPROM214からの情報が転送される。テスト端子状態設定回路222はレジスタ221に保持された情報に応じてテスト端子237,238とテスト制御回路223との間を接続し、また、テストポート237,238に対応するテスト制御回路223の入力を所定のレベルに設定する。
【0051】
テスト制御回路223は、テストポート237,238の入力を供給されると、その入力に応じて内部回路の状態を変化させて、電池監視モジュール200の内部回路のテストが可能となる。
【0052】
アナログ部250内には、発振回路251、水晶発振回路252、選択制御回路253、分周器254、電圧センサ255、温度センサ256、電流センサ257、マルチプレクサ258、デルタ・シグマ変調器259が設けられている。
【0053】
発振回路251はPLLを持つ発振器であり数MHzの発振信号を出力する。水晶発振回路252はポート271,272に水晶振動子を外付けされて発振を行い、数MHzの発振信号を出力する。水晶発振回路252の発振周波数は発振回路251に対し高精度である。
【0054】
選択制御回路253はポート273から供給される選択信号に基づいて発振回路251と水晶発振回路252のいずれか一方の出力する発振周波信号を選択しシステムクロックとして電池監視モジュール200の各部に供給すると共に分周器254に供給する。また、選択制御回路253はリセット信号RSTと制御信号CNTを生成している。ところで、選択制御回路253はポート273から選択信号が供給されない場合には例えば発振回路251の出力する発振周波信号を選択する。分周器254はシステムクロックを分周して各種クロックを生成し電池監視モジュール200の各部に供給する。
【0055】
電圧センサ255はポート274,275それぞれに外付けされるリチウムイオン電池301の電圧を検出し、アナログの検出電圧をマルチプレクサ258に供給する。温度センサ256は電池監視モジュール200の環境温度を検出しアナログの検出温度をマルチプレクサ258に供給する。
【0056】
ポート276,277には電流検出用の抵抗303の両端が接続されており、電流センサ257はポート276,277それぞれの電位差から抵抗303を流れる電流を検出しアナログの検出電流をマルチプレクサ258に供給する。
【0057】
マルチプレクサ258は、アナログの検出電圧、アナログの検出温度、アナログの検出電流を順次選択してデルタ・シグマ変調器259に供給する。デルタ・シグマ変調器259は各検出値をデルタ・シグマ変換することでパルス密度変調データを内部バスを通してCPU211に供給し、CPU211にてデジタルフィルタ処理を行って検出電圧、検出温度、検出電流それぞれのデジタル化を行う。また、CPU211は、電池の充放電電流を積算することにより電池残量を算出する。この際検出温度は温度補正のために使用される。
【0058】
上記の電池監視モジュール200は、リチウムイオン電池301、電流検出用の抵抗303、レギュレータ・保護回路304、抵抗305及びスイッチ306と共に筐体310に収納されて電池パック300が構成されている。電池パック300の端子311にリチウムイオン電池301の正電極及びレギュレータ・保護回路304の電源入力端子が接続され、レギュレータ・保護回路304の電源出力端子が電池監視モジュール200の電源Vddのポート235が接続されている。端子312は抵抗305を介してレギュレータ・保護回路304の接地端子に接続されると共に、スイッチ306を介して電流検出用の抵抗303のポート277との接続点に接続されている。レギュレータ・保護回路304は、端子311,312間の電圧を安定化すると共に、この電圧が所定範囲外となった場合にスイッチ306を遮断して保護を行う。
【0059】
また、電流検出用の抵抗303のポート276との接続点は電池監視モジュール200の電源Vssのポート236が接続される。電池パック300の端子313,314には電池監視モジュール200のポート231,232が接続されている。
【符号の説明】
【0060】
21,25 端子
22,27 乗算器
24 加算器
200 電池監視モジュール
211 CPU
213 RAM
259 デルタ・シグマ変調器
255 電圧センサ
256 温度センサ
257 電流センサ
300 電池パック
301 リチウムイオン電池


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の平滑電流を算出する平滑電流算出装置であって、
測定された二次電池の電流値をデジタル化した測定デジタル電流値を供給され、前記デジタル電流値の時間変動を平滑した平滑デジタル電流値を出力するデジタル低域フィルタ手段と、
前記測定デジタル電流値と前記平滑デジタル電流値との差分を閾値と比較して電流変動レベルを設定する電流変動レベル設定手段と、
設定された前記電流変動レベルに応じて前記デジタル低域フィルタ手段のフィルタ係数を設定するフィルタ係数設定手段と、
を有することを特徴とする平滑電流算出装置。
【請求項2】
請求項1記載の平滑電流算出装置において、
前記デジタル低域フィルタ手段は、
前記測定デジタル電流値に第1フィルタ係数を乗算する第1乗算器と、
前記平滑デジタル電流値を単位遅延時間だけ遅延したデジタル電流値に第2フィルタ係数を乗算する第2乗算器と、
前記第1乗算器の出力値に前記第2乗算器の出力値を加算して前記平滑デジタル電流値として出力する加算器を有し、
前記第1フィルタ係数と前記第2フィルタ係数の和は一定値であることを特徴とする平滑電流算出装置。
【請求項3】
請求項2記載の平滑電流算出装置において、
前記電流変動レベル設定手段は、前記差分が前記閾値を超えた状態が所定期間持続したとき第1電流変動レベルを設定し、前記差分が前記閾値を超えた状態が前記所定期間持続していないとき第2電流変動レベルを設定し、前記差分が前記閾値未満の状態であるときが持続したとき第3電流変動レベルを設定し、
前記フィルタ係数設定手段は、前記第1電流変動レベルが設定されているとき前記第1フィルタ係数に所定範囲を超える一定値を設定し、前記第2電流変動レベルが設定されているとき前記第1フィルタ係数を前記所定範囲内で微少量だけ増大させて設定し、前記第3電流変動レベルが設定されているとき前記第1フィルタ係数を前記所定範囲内で微少量だけ減少させて設定することを特徴とする平滑電流算出装置。
【請求項4】
請求項3記載の平滑電流算出装置において、
前記閾値は、前記平滑デジタル電流値を前記単位遅延時間だけ遅延したデジタル電流値に応じて変化することを特徴とする平滑電流算出装置。
【請求項5】
二次電池の平滑電流を算出する平滑電流算出方法であって、
測定された二次電池の電流値をデジタル化した測定デジタル電流値を供給され、前記デジタル電流値の時間変動を平滑した平滑デジタル電流値を出力し、
設定された前記測定デジタル電流値と前記平滑デジタル電流値との差分を閾値と比較して電流変動レベルを設定し、
前記電流変動レベルに応じて前記デジタル低域フィルタ手段のフィルタ係数を設定することを特徴とする平滑電流算出方法。
【請求項6】
請求項5記載の平滑電流算出方法において、
前記平滑デジタル電流値は、前記測定デジタル電流値に第1フィルタ係数を乗算する第1乗算を行い、
前記平滑デジタル電流値を単位遅延時間だけ遅延したデジタル電流値に第2フィルタ係数を乗算する第2乗算を行い、
前記第1乗算の出力値に前記第2乗算の出力値を加算して前記平滑デジタル電流値として出力し、
前記第1フィルタ係数と前記第2フィルタ係数の和は一定値であることを特徴とする平滑電流算出方法。
【請求項7】
請求項6記載の平滑電流算出方法において、
前記電流変動レベルの設定は、前記差分が前記閾値を超えた状態が所定期間持続したとき第1電流変動レベルを設定し、前記差分が前記閾値を超えた状態が前記所定期間持続していないとき第2電流変動レベルを設定し、前記差分が前記閾値未満の状態であるときが持続したとき第3電流変動レベルを設定し、
前記フィルタ係数の設定は、前記第1電流変動レベルが設定されているとき前記第1フィルタ係数に所定範囲を超える一定値を設定し、前記第2電流変動レベルが設定されているとき前記第1フィルタ係数を前記所定範囲内で微少量だけ増大させて設定し、前記第3電流変動レベルが設定されているとき前記第1フィルタ係数を前記所定範囲内で微少量だけ減少させて設定することを特徴とする平滑電流算出方法。
【請求項8】
請求項7記載の平滑電流算出方法において、
前記閾値は、前記平滑デジタル電流値を前記単位遅延時間だけ遅延したデジタル電流値に応じて変化することを特徴とする平滑電流算出方法。
【請求項9】
請求項4記載の平滑電流算出装置を備え、
前記二次電池の測定デジタル電流値を積算した電池容量を前記平滑デジタル電流値で除算して残り稼働時間を算出することを特徴とする電池監視モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−158268(P2011−158268A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17843(P2010−17843)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】