説明

平版印刷版原版

平版印刷版原版は、40meq/g KOH以上の酸価を有するポリマーバインダー、1つ又は複数のN-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド又はアルコキシメチル(アルキル)アクリレートから誘導される繰り返し単位を少なくとも3重量%、ペンダント1H-テトラゾール基を有する繰り返し単位を少なくとも2重量%、及び、ペンダントシアノ基を有する繰り返し単位を少なくとも10重量%を含む画像形成性層を有することができる。かかるポリマーバインダーの使用により、特にポジ型原版に対して良好なベーク可能性及び耐化学溶剤性が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷作業の長さを改善するための特定のポリマーバインダーを含む画像形成可能要素に関する。本発明は、平版印刷版等の画像化され、処理された要素を提供する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
放射(光)感受性組成物は、平版印刷版原版を含めた画像形成可能材料の調製において広く使用されている。そのような組成物は、放射(光)感受性成分、開始剤システム、及びバインダーを一般に含み、それらのそれぞれが、物理的性質、画像化性能、及び画像特性におけるさまざまな改良を提供する研究の焦点となっている。
【0003】
印刷版原版の分野における最近の発展は、レーザー又は半導体レーザーにより画像形成することができ、より詳しくは、オンプレスで画像化及び/又は現像することができる放射(光)感受性組成物の使用に関係する。レーザーはコンピューターによって直接制御することができるので、レーザー露光は中間情報媒体(又は「マスク」)としての従来のハロゲン化銀のグラフィックアートフィルムを必要としない。市販のイメージセッターに使用されている高性能のレーザー又は半導体レーザーは、少なくとも700nmの波長を有する放射光を一般に放ち、従って放射(光)感受性組成物は電磁スペクトルの近赤外又は赤外領域において感度が高いことが要求される。また一方、紫外線又は可視光放射による画像化のために、他の有用な放射(光)感受性の組成物が立案される。
【0004】
印刷版を調製するためには放射(光)感受性組成物を使用する2つの可能な方法が存在する。ネガ型印刷版については、放射(光)感受性組成物中の露光領域が硬化され、非露光領域が現像の間に洗い落とされる。ポジ型印刷版については、露光領域が現像液に溶解され、非露光領域が画像となる。
【0005】
画像化された要素は、それらのオンプレスでの運転の長さを増すために現像後多くの場合ベークされる。米国特許出願公開第2009/0042135号(Patelら)は、現像後のベーク可能性及び耐化学溶剤性を改善するために内層中に分散した酸性基を有する特定のポリマーを含むポジ型多層画像形成可能要素について記載している。印刷用薬品に対する改善された耐性及びベーク可能性を備えたその他の画像形成可能要素が、例えば、米国特許第7,049,045号(Kitsonら)、同第7,144,661号(Rayら)、同第7,186,482号(Kitsonら)、及び同第7,247,418号(Saraiyaら)に記載されている。
【0006】
米国特許出願公開第2009/0142695号(Baumannら)は、改善された耐薬品性及びオンプレスでの印刷作業の長さを提供する1H-テトラゾール基を有する非ポリマー又はポリマー成分を含む画像形成可能要素について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0042135号
【特許文献2】米国特許第7,049,045号
【特許文献3】米国特許第7,144,661号
【特許文献4】米国特許第7,186,482号
【特許文献5】米国特許第7,247,418号
【特許文献6】米国特許出願公開第2009/0142695号
【特許文献7】米国特許第5,713,287号
【特許文献8】米国特許第5,208,135号
【特許文献9】米国特許第6,153,356号
【特許文献10】米国特許第6,264,920号
【特許文献11】米国特許第6,309,792号
【特許文献12】米国特許第6,569,603号
【特許文献13】米国特許第6,787,281号
【特許文献14】米国特許第7,135,271号
【特許文献15】欧州特許出願公開第1,182,033号
【特許文献16】米国特許第7,018,775号
【特許文献17】国際公開第2004/101280号
【特許文献18】米国特許第6,623,908号
【特許文献19】米国特許第5,496,903号
【特許文献20】米国特許第4,973,572号
【特許文献21】米国特許第7,049,046号
【特許文献22】米国特許第6,294,311号
【特許文献23】米国特許第5,554,719号
【特許文献24】米国特許第6,551,738号
【特許文献25】米国特許出願公開第2003/0050191号
【特許文献26】米国特許出願公開第2005/0051053号
【特許文献27】米国特許出願公開第2008/0008956号
【特許文献28】欧州特許出願公開第1 ,669,803号
【特許文献29】米国特許第6,218,083号
【特許文献30】国際公開第99/001795号
【特許文献31】米国特許第5,705,308号
【特許文献32】米国特許第5,705,322号
【特許文献33】欧州特許出願公開第737,896号
【特許文献34】米国特許第6,391 ,524号
【特許文献35】DE 10 239 505
【特許文献36】国際公開第2004081662号
【特許文献37】米国特許第6,475,692号
【特許文献38】米国特許第7,163,777号
【特許文献39】米国特許第7,223,506号
【特許文献40】米国特許出願公開第2006/0257764号
【特許文献41】米国特許出願公開第2007/0172747号
【特許文献42】米国特許第6,528,228号
【特許文献43】米国特許第7,163,770号
【特許文献44】米国特許第7,160,653号
【特許文献45】米国特許第7,582,407号
【特許文献46】欧州特許出願公開第1,439,058号
【特許文献47】欧州特許出願公開第1,738,901号
【特許文献48】米国特許第6,649,324号
【特許文献49】欧州特許出願公開第1,751,625号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】IUPAC、「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」、Pure Appl. Chem. 68巻、(1996年)、2287〜2311頁
【非特許文献2】McCutcheon's Emulsifiers & Detergents、2007年版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
既知の画像形成可能要素は、優れた画像化及び印刷特性を実証しているものの、印刷用薬品に対する耐性を含めたその他の望ましい特性を維持しながら現像後のベーク可能性を更に改善し、又はベーク温度及び時間を縮める必要性がある。オンプレス作業の長さを維持しながらベーク温度及び時間を縮めることも望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基材を含み、その上に配置されている画像形成性層を有する平版印刷版であって、該画像形成性層が、赤外線吸収性化合物及び40meq/g KOH以上の酸価を有するポリマーバインダーを含み、前記ポリマーバインダーが、1つ又は複数のN-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド又はアルコキシメチル(アルキル)アクリレートから誘導された繰り返し単位を少なくとも3重量%、ペンダント1H-テトラゾール基を有する繰り返し単位を少なくとも2重量%、及びペンダントシアノ基を有する繰り返し単位を少なくとも10重量%含む上記印刷版原版を提供する。
【0011】
多くの実施形態において、前記ポリマーバインダーは、次の構造(I):
-(A)w-(B)x-(C)y-(D)z- (I)
によって表され、式中、Aは、1つ又は複数のN-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド又はアルコキシメチル(アルキル)アクリレートから誘導された繰り返し単位を表し、Bは、ペンダントシアノ基を有する繰り返し単位を表し、Cは、ペンダント1H-テトラゾール基を有する繰り返し単位を表し、Dは、A、B、及びC以外の1つ又は複数の異なる繰り返し単位を表し、
ポリマーバインダーの全重量を基準として、wは2〜80重量%であり、xは10〜85重量%であり、yは5〜80重量%であり、zは10〜85重量%である。
【0012】
本発明は、また、
A) 本発明の該印刷版原版を画像様露光して露光領域と非露光領域とを生成させる工程、及び
B) 露光後予熱有り又は無しで、画像様露光した印刷版原版を現像して平版印刷版を提供する工程
を含む方法を提供する。
【0013】
更に、本発明は、次の構造(I):
-(A)w-(B)x-(C)y-(D)z- (I)
によって表される新規なコポリマーであって、式中、Aは、1つ又は複数のN-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド又はアルコキシメチル(アルキル)アクリレートから誘導された繰り返し単位を表し、Bは、ペンダントシアノ基を有する繰り返し単位を表し、Cは、ペンダント1H-テトラゾール基を有する繰り返し単位を表し、Dは、A、B、及びC以外の1つ又は複数の異なる繰り返し単位を表し、
ポリマーバインダーの全重量を基準として、wは2〜80重量%であり、xは10〜85重量%であり、yは5〜80重量%であり、zは10〜85重量%である、コポリマーを提供する。
【0014】
本発明は、新規なコポリマーを提供し、これらのコポリマーは、改善された現像後のベーク可能性及び耐溶剤性を提供する平版印刷版原版等の画像形成可能要素に使用することができる。これらのポリマーバインダーは、一定量の1つ又は複数のN-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド又はアルコキシメチル(アルキル)アクリレートから誘導された繰り返し単位、ペンダント1H-テトラゾール基を有する繰り返し単位、及びペンダントシアノ基を有する繰り返し単位を含有する。この繰り返し単位の組合せは、単独ではどのタイプの繰り返し単位によっても得られない特性を提供する。個々の繰り返し単位のいくつかは、耐溶剤性又はベーク可能性のどちらかを提供することもあるが、さまざまな繰り返し単位を一緒に使用することの予測は不可能であるために、優れた耐溶剤性とベーク可能性の両方が同じコポリマーで達成され得ることは期待されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
文脈が別段示していない限り、本明細書で使用されるときの用語「画像形成可能要素」、「平版印刷版原版」、及び「印刷版原版」は、本発明における実施形態への言及であることを意味する。
【0016】
加えて、文脈が別段示していない限り、本明細書に記載されているさまざまな成分、例えば、「ポリマーバインダー」、「開始剤」、「ラジカル重合可能な成分」、「放射(光)吸収性化合物」及び類似の用語等は、かかる成分の混合物も指す。したがって、原文における冠詞「a」、「an」、及び「the」の使用は、1つの成分のみを指すことを必ずしも意味していない。
【0017】
更に、別段示されていない限り、百分率は、全体の乾燥重量によるパーセント、例えば、画像形成性層か放射(光)感受性組成物のどちらかの全体の固形分に基づく重量%を指す。別段示されていない限り、その百分率は、乾燥した画像形成性層又は放射(光)感受性組成物の全固形分のいずれに対しても同じであり得る。
【0018】
ポリマーに関係するどの用語に対しても定義を明確化するために、国際純粋応用化学連合(「IUPAC」)によって出版されている「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」、Pure Appl. Chem. 68巻、2287〜2311頁、(1996年)を参照すべきである。しかし、本明細書中に明記したあらゆる定義が支配的なものと見なされるべきである。
【0019】
用語の「ポリマー」は、本発明に対しては少なくとも500の分子量を有すると定義される、オリゴマー、ホモポリマー、及びコポリマーを含めた高分子量及び低分子量のポリマーを指す。
【0020】
用語の「コポリマー」は、2つ以上の異なるモノマーから誘導されるポリマーを指す。
【0021】
用語の「主鎖」は、複数のペンダント基が結合しているポリマー中の原子(炭素又はヘテロ原子)の鎖を指す。そのような主鎖の一例は、1つ又は複数のエチレン性不飽和重合性モノマーから得られる「全部が炭素の」主鎖である。しかしながら、他の主鎖は、ポリマーが縮合反応又はその他の何らかの方法によって形成される場合はヘテロ原子を含むことができる。
【0022】
用語の「ポジ型」及び「ネガ型」は、上記の[背景技術]で記載したような当技術分野で与えられている通常の意味を有する。
【0023】
ポリマーバインダー
上記のように、特定のポリマーバインダーは、画像形成可能要素中で使用されて上述の利点を提供する。これらのポリマーバインダーの1つ又は複数を、該画像形成可能要素の同一又は異なる層内で使用できる。これらポリマーバインダーのそれぞれは、40meq/g KOH以上の酸価を有しており、それらポリマーバインダーのそれぞれは、1つ又は複数のN-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド又はアルコキシメチル(アルキル)アクリレートから誘導される繰り返し単位を少なくとも3重量%、ペンダント1H-テトラゾール基を有する繰り返し単位を少なくとも2重量%、及びペンダントシアノ基を有する繰り返し単位を少なくとも10重量%含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、それらポリマーバインダーのそれぞれは、30〜150meq/g KOHの酸価を有する。その酸価は、既知の方法を用いて測定することができる。
【0025】
例えば、該ポリマーバインダーは、次の構造(I):
-(A)w-(B)x-(C)y-(D)z- (I)
によって表され、式中、Aは、1つ又は複数のN-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド又はアルコキシメチル(アルキル)アクリレートから誘導される繰り返し単位を表し、Bは、ペンダントシアノ基を有する繰り返し単位を表し、Cは、ペンダント1H-テトラゾール基を有する繰り返し単位を表し、Dは、A、B及びC以外の1つ又は複数の異なる繰り返し単位を表し、
ポリマーバインダーの全重量を基準として、wは2〜80重量%であり、xは10〜85重量%であり、yは5〜80重量%であり、zは10〜85重量%である。
【0026】
加えて、他の実施形態において、ポリマーバインダーの全重量を基準として、wは3〜30重量%であり、xは30〜70重量%であり、yは10〜40重量%であり、zは15〜40重量%である。
【0027】
一般に、該N-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド及び該N-アルコキシメチル(アルキル)アクリレートは、独立して、1〜8個の炭素原子(1〜4個の炭素原子の可能性がより高い)を有するアルコキシ基、及びメチル又はエチル基であるアルキル基を有する。
【0028】
例えば、該A繰り返し単位は、次の構造(II):
【0029】
【化1】

【0030】
によって表される1つ又は複数のエチレン性不飽和重合性モノマーから生じさせることができ、上式中、Rは、1〜8個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の分枝若しくは直鎖アルキル基(例えば、メチル、メトキシメチル、エチル、イソ-プロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、ベンジル、及びn-オクチル基等)、1〜6個の炭素原子を有する置換若しくは非置換、分枝若しくは直鎖アルケニル基(例えば、アリル、ビニル、及び1,2-ヘキシル基等)、炭素環中に5個若しくは6個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル、p-メチルシクロヘキシル、及びm-クロロシクロヘキシル基等)、又は置換若しくは非置換のフェニル基(例えば、フェニル、p-メトキシフェニル、p-エトキシフェニル、及び2-クロロフェニル等)である。例えば、Rは、1〜4個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のシクロヘキシル基、又は置換若しくは非置換のフェニル基であり得る。
【0031】
R'は、水素又は1〜4個の炭素原子を有する置換若しくは非置換の直鎖若しくは分枝アルキル基(例えば、メチル、メトキシ、エチル、イソ-プロピル、t-ブチル、及びn-ブチル等)である。典型的には、R'は、水素又はメチルである。
【0032】
Xは、-O-又はNH-である。
【0033】
例えば、該A繰り返し単位は、N-メトキシメチルメタクリルアミド、N-イソ-プロポキシメチルメタクリルアミド、N-n-ブトキシメチルメタクリルアミド、N-イソブトキシメタクリルアミド、N-t-ブトキシメタクリルアミド、N-エチルヘキシルオキシメタクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、イソ-プロポキシメチルメタクリレート、N-シクロヘキシルオキシメチルメタクリルアミド、フェノキシメチルメタクリレート、N-メトキシメチルアクリレート、N-シクロヘキシルオキシメチルアクリルアミド、フェノキシメチルアクリレート、及びN-エトキシメチルアクリレートの1つ又は複数から生じさせることができる。
【0034】
該B繰り返し単位は、1つ又は複数の(メタ)アクリロニトリル、例えば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等、シアノスチレン、例えば、p-シアノスチレン等、及びシアノ(メタ)アクリレート、例えば、エチル-2-シアノメチルメタクリレート等を含むがこれらに限定されないペンダントシアノ基を有する1つ又は複数のエチレン性不飽和重合性モノマーから生じさせることができる。
【0035】
該C繰り返し単位は、ペンダント1H-テトラゾール基及び1つ又は複数のエチレン性不飽和フリーラジカル重合性基を有する1つ又は複数のエチレン性不飽和重合性モノマーから生じさせることができる。アルカリ性溶液中で、該テトラゾール基は、次式(1):
【0036】
【化2】

【0037】
(式中、X1は、ポリマー主鎖に結合している非ポリマー分子又は連結基の残りを表す)に示されているように、1位において水素原子を失う。多くの実施形態において(しかし、すべてではない)、1H-テトラゾールは、その5位において窒素に結合している。
【0038】
この1H-テトラゾール基は、-C(=0)-NR1-、-NR1-、-NR1-(C=O)-NR2-、-S-、-OCO(=O)-、又はCH=N-基、あるいはそれらの組合せを含む連結基Lによりポリマーバインダー主鎖の一部を形成するエチレン性不飽和基に結合させることができる。特に有用な連結基としては、-C(=0)-NR1-及びNR1-(C=O)-NR2-が挙げられる。上記の連結基は、該主鎖に直接結合させるか、又は最大で30個までの原子をその連結鎖中に有する有機基を介して結合させることができる。
【0039】
このタイプの有用なエチレン性不飽和重合性モノマーの例は、米国特許出願公開第2009/0142695号(上記)のTABLE A中にA1からA8として識別されている。
【0040】
あるいは、この1H-テトラゾール基は、形成された後にポリマーバインダー中に導入することができる。例えば、この1H-テトラゾール基は、1H-テトラゾール-5-アミン中のアミノ基に反応する官能性を既に有しているポリマー中に導入することができる。そのような反応性ポリマーの例は、上で示したような、反応性イソシアナート基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、ニトリル基、ハロメチル基、ジカルボン酸の環状無水物又は反応性アルデヒド若しくはケトン基を有する。そのような反応性ポリマーの典型的な例は、イソシアナートエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、(メタ)アクリロニトリル、クロロメチル化スチレン、無水マレイン酸、及びメチルビニルケトンから誘導されたものである。例えば、1H-テトラゾール-5-アミンと反応することができる(メタ)アクリレート官能化にしたポリマーは、例えば、-OH基の(メタ)アクリル酸塩化物との反応によるか、又はβ-ハロゲノ置換プロピオン酸基を導入し、続いて脱ハロゲン化水素を行なうことによって、ポリマー中に(メタ)アクリル官能性を導入することによって一般的には製造される。
【0041】
該D繰り返し単位は、A、B、及びCによって表されるもの以外の1つ又は複数(例えば2つ又は3つ)の異なるエチレン性不飽和重合性モノマーから得ることができる。このタイプの代表的なモノマーとしては、1つ又は複数のカルボキシ、スルホ、又はホスホ基を有するモノマー、及び米国特許出願公開第2009/0042135号(上記)の構造D1からD5までによって表されているものが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、D繰り返し単位は、1つ又は複数のスチレン、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-フェニルマレイミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、及び無水マレイン酸から生じさせることができる。その他の有用なモノマーは、日常的な量の実験を用いて、当業者には容易に分かるであろう。
【0042】
この発明で使用されるポリマーバインダーは、ポリマー化学における当業者には容易に理解されるであろう通常の反応条件を用いて形成することができる。代表的な合成方法が実施例により以下に示されている。その反応物は、多数の商業的供給源から入手するか又は既知の手順を用いて調製することができる。
【0043】
該ポリマーバインダーは、画像形成性層の全乾燥重量を基準として、一般に40〜98重量%、典型的には70〜96重量%の量でその画像形成性層内に存在することができる。上記のポリマーバインダーは、一般に、「支配的な」ポリマーバインダーであり、該画像形成性層内のポリマーバインダーの全体量の60〜100重量%を含む。
【0044】
ポジ型画像形成可能要素
この発明の有用な実施形態は、ポジ型の画像形成可能要素であり、そのそれぞれは、上記のようなポリマーバインダーを含む少なくとも1つの画像形成性層を含む。
【0045】
かかるポジ型の画像形成可能要素のいくつかの実施形態は、単一の画像形成性層を含むが、その他の実施形態では、内側の画像形成性層とその内側の画像形成性層の上に配置された外側の画像形成性層とを含む。上記のペンダント1H-テトラゾール基を有するポリマーは、単一の画像形成性層中か、あるいは多層画像形成可能要素の内側及び外側の画像形成性層のいずれか又は両方の中に分散させることができる。ほとんどの実施形態において、該ポリマーは、かかる要素内の2つの画像形成可能層の1つだけの中に存在する。
【0046】
単層ポジ型画像形成可能要素
一般に、単層の画像形成可能要素は、画像形成性層を形成する1つ又は複数の上記のようなポリマーバインダーを含む画像形成性層の配合物の適切な基材への適切な塗布によって形成される。この基材は、該配合物を塗布する前に、以下で説明するようなさまざまな方法で、通常は処理又はコートされる。該基材は、改良された接着又は親水性のための「内層」を提供するために処理することができ、該単一の画像形成可能層は、その内層の上に塗布される。
【0047】
該基材は、親水性表面、すなわち、画像化側に塗布された画像形成性層より親水性である少なくとも1つの表面を一般に有する。該基材は、画像形成可能要素、例えば平版印刷版等を調製するために標準的に使用される任意の材料から構成することができる支持体を含む。支持体は、通常、シート、フィルム、又はホイル(又はウェブ)の形態をしており、使用条件下で、強くて安定しており、柔軟性があり、寸法変化に耐性を示すため、色の記録がフルカラーの画像に見当が合う。一般的に、該支持体は、ポリマーフィルム(例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースエステルポリマー、及びポリスチレンフィルム等)、ガラス、セラミックス、金属シート若しくはホイル、又は堅い紙(樹脂コートして金属化した紙を含める)、あるいは任意のこれら材料の積層品(例えば、ポリエステルフィルム上のアルミニウムホイルの積層品等)を含めた任意の自己支持性材料であり得る。金属支持体としては、アルミニウム、銅、亜鉛、チタン、及びそれらの合金のシート又はホイルが挙げられる。
【0048】
1つの有用な基材は、通常は酸陽極酸化処理が後に続く、物理的(機械的)グレイニング、電気化学的グレイニング、又は化学的グレイニングによるいくつかのタイプの粗面化を含めた当技術分野で既知の技術を用いて処理することができるアルミニウム支持体から成る。このアルミニウム支持体は、物理的又は電気化学的グレイニングによって粗面化し、次いでリン酸又は硫酸及び通常の手順を用いて陽極酸化処理することができる。有用な親水性平版用基材は、平版印刷のための親水性表面を提供する電気化学的に研磨し、硫酸又はリン酸陽極酸化処理したアルミニウム支持体である。
【0049】
アルミニウム支持体の硫酸陽極酸化処理は、一般に1.5〜5g/m2でありより典型的には3〜4.3g/m2の酸化物重量(付着量)を表面に提供する。リン酸陽極酸化処理は、一般に1.5〜5g/m2であり、より典型的には1〜3g/m2の酸化物重量を表面に提供する。陽極酸化処理のために硫酸が使用される場合、より高い酸化物重量(少なくとも3g/m2)が、より長い印刷寿命を提供し得る。
【0050】
このアルミニウム支持体は、また、親水性を増すために、例えば、ケイ酸塩、デキストリン、フッ化カルシウムジルコニウム、ヘキサフルオロケイ酸、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸コポリマー、ポリ[(メタ)アクリル酸]、又はアクリル酸コポリマーにより処理することもできる。更にその上、このアルミニウム支持体は、無機フッ化物(PF)を更に含むことができるリン酸塩溶液により処理することができる。該アルミニウム支持体は、電気化学的に研磨し、硫酸陽極酸化処理し、既知の手順を用いてPVPA又はPFにより処理して表面の親水性を改善することができる。
【0051】
該基材の厚さは、変化させることができるが、印刷による磨耗に耐えるのに十分であり、版胴に巻きつけるのに十分な薄さでなくてはならない。有用な実施形態としては、少なくとも100μmで最大で700μm以下の厚さを有する処理したアルミニウムホイルが挙げられる。
【0052】
該基材の裏面(非画像化側)は、画像形成可能要素の取り扱い及び「感触」を改善するために、帯電防止剤及び/又は滑性層若しくはマット層をコートすることができる。
【0053】
該基材は、また、画像形成性層をその上に有するシリンダー状の表面でもあり得、それ故、印刷機の一体部分でもあり得る。そのような画像化シリンダーの使用は、例えば、米国特許第5,713,287号(Gelbart)に記載されている。
【0054】
この単層のポジ型画像形成可能要素は、また、700〜1400nm、典型的には700〜1250nmのスペクトルに対する感受性を一般に有する1つ又は複数の赤外線吸収性化合物を含有する。
【0055】
有用な赤外線吸収性発色団としては、さまざまな赤外線感受性染料(「IR染料」)が挙げられる。望ましい発色団を含む適当なIR染料の例としては、アゾ染料、スクアリリウム染料、クロコネート染料、トリアリールアミン染料、チアゾリウム染料、インドリウム染料、オキソノール染料、オキサゾリウム染料、シアニン染料、メロシアニン染料、フタロシアニン染料、インドシアニン染料、インドトリカルボシアニン染料、オキサトリカルボシアニン染料、チオシアニン染料、チアトリカルボシアニン染料、クリプトシアニン染料、ナフタロシアニン染料、ポリアニリン染料、ポリピロール染料、ポリチオフェン染料、カルコゲノピリロアリーリデン及びビ(カルコゲノピリロ)ポリメチン染料、オキシインドリジン染料、ピリリウム染料、ピラゾリンアゾ染料、オキサジン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、アリールメチン染料、スクアリン染料、オキサゾール染料、クロコニン染料、ポルフィリン色素並びに先行の染料の種類の任意の置換型又はイオン型が挙げられるがこれらに限定されない。適切な染料は、また、米国特許第5,208,135号(Patelら)、同第6,153,356号(Uranoら)、同第6,264,920号(Achilefuら)、同第6,309,792号(Hauckら)、同第6,569,603号(上記)、同第6,787,281号(Taoら)、同第7,135,271号(Kawaushiら)、及び欧州特許出願公開第1,182,033号(上記)に記載されている。赤外線吸収性N-アルキルサルフェートシアニン染料は、例えば、米国特許第7,018,775号(Tao)に記載されている。適当なシアニン染料の1つの種類の概要が、国際公開第2004/101280号(Munnellyら)のパラグラフ[0026]に化学式によって示されている。
【0056】
低分子量の赤外線吸収性染料に加え、ポリマーに結合しているIR染料の発色団が、同様に使用され得る。更に、IR染料カチオンが同様に使用することができ、すなわち、そのカチオンは、側鎖中のカルボキシ、スルホ、ホスホ、又はホスホノ基を含むポリマーとイオン的に相互作用する染料塩のIR吸収部分である。
【0057】
適当なシアニン染料の1つの種類の概要は、本明細書に引用されている国際公開第2004/101280号(Munnellyら)のパラグラフ[0026]に化学式によって示されており、有用なIR吸収性化合物は、下で実施例及びIR染料A及びBとされる。
【0058】
その他の有用なビス(アミノアリール)ペンタジエンIR染料の詳細は、DYE 1からDYE 17まで、DYE 19、及びDYE 20として特定される代表的なIR染料を含めて、米国特許第6,623,908号(Zhengら)において提供される。
【0059】
近赤外線吸収性シアニン染料も有用であり、例えば、米国特許第6,309,792号(上記)、同第6,264,920号(Achilefuら)、同第6,153,356号(上記)、同第5,496,903号(Watanabeら)に記載されている。適当な染料は、通常の方法及び出発物質を用いて形成するか、American Dye Source(Baie D'Urfe、カナダ、ケベック州)及びFEW Chemicals(ドイツ)を含めたさまざまな商業的供給源から得ることができる。近赤外線ダイオードレーザービーム用のその他の有用な染料は、例えば、米国特許第4,973,572号(DeBoer)に記載されている。
【0060】
更に別の有用な赤外線吸収性化合物は、例えば米国特許第7,049,046号(Taoら)に記載されているような、共有結合しているアンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム、又はヨードニウムカチオン及び2個又は4個のスルホネート若しくはサルフェート基を有する赤外線吸収性シアニンアニオン、あるいは赤外線吸収性オキソノールアニオンを含むことができるコポリマーである。
【0061】
この赤外線吸収性化合物は、一般に、該画像形成可能要素中に、適切な放射(光)に露光後に該画像形成性層を水性現像液に不溶性にする十分な量で存在する。この量は、一般に、少なくとも0.5%で最大で30重量%まで、典型的には、3〜10重量%である(全体の乾燥層重量を基準として)。ほとんどの実施形態において、該放射(光)吸収性化合物は、単一の画像形成性層中に存在する。あるいは、又は更に、放射(光)吸収性化合物は、第一層と熱的な接触をしている別の層の中に位置付けることができる。かくして、画像化中に、該放射(光)吸収性化合物の活動は、本来その中に組み込まれる化合物のない第一の層に移され得る。
【0062】
加えて、溶解性抑圧成分が、場合によって、該単一の画像形成性層に組み込まれる。かかる成分は、該ポリマーバインダーに対して溶解性抑圧成分として機能する溶解抑制剤として作用する。溶解抑制剤は、ポリマーバインダー中のさまざまな基との水素結合に対する受容体部位として作用すると考えられる極性官能基を一般的に有する。その受容体部位は、高い電子密度を有する原子を含み、炭素、窒素、及び酸素等の第一列の陰性元素から選択することができる。アルカリ性現像液に溶解する溶解抑制剤が有用である。溶解抑制剤のための有用な極性基としては、エーテル基、アミン基、アゾ基、ニトロ基、フェロセニウム基、スルホキシド基、スルホン基、ジアゾ基、ジアゾニウム基、ケト基、スルホン酸エステル基、リン酸エステル基、トリアリールメタン基、オニウム基(例えば、スルホニウム、ヨードニウム、及びホスホニウム基等)、窒素原子が複素環中に組み込まれている基、及びプラスに帯電した原子を含む基(例えば、四級化アンモニウム基等)が挙げられるがこれらに限定されない。溶解抑制剤として有用なプラスに帯電した窒素原子を含む化合物としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム化合物並びにキノリニウム化合物、ベンゾチアゾリウム化合物、ピリジニウム化合物、及びイミダゾリウム化合物等の四級化複素環化合物が挙げられる。さらなる詳細と溶解抑制剤として有用な代表的な化合物は、例えば、米国特許第6,294,311号(上記)に記載されている。有用な溶解抑制剤としては、トリアリールメタン染料、例えば、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、ビクトリアブルーB、ビクトリアブルーR、ビクトリアピュアブルーBO、並びにBASONYL(登録商標)Violet 610及びD11(PCAS、ロンジュモー、フランス)等、が挙げられる。
【0063】
該画像形成性層は、本発明に利点を提供する「支配的な」ポリマーバインダー以外の追加のポリマー又はポリマーバインダーを含むこともできる。これらの付加的なポリマーは、ポリ(ビニルフェノール)又はそれらの誘導体、又はフェノール性ポリマーであり得る。それらは、ポリマー分子中に組み込まれたカルボン酸(カルボキシ)、スルホン酸(スルホ)、ホスホン酸(ホスホノ)、又はリン酸基を含有することができる。その他の有用な付加的なポリマーとしては、ペンダントフェノール基を有するノボラック樹脂、レソール樹脂、ポリ(ビニルアセタール)、及びこれら樹脂のどれかの混合物(例えば、1つ又は複数のノボラック樹脂と1つ又は複数のレゾール樹脂との混合物等)が挙げられるがこれらに限定されない。このノボラック樹脂は、支配的なポリマーバインダーと組み合わせて最も有用である。一般に、かかる樹脂は、通常の手順を用いて測定して、少なくとも3,000で最高で200,000まで、典型的には、6,000〜100,000の数平均分子量を有する。典型的なノボラック樹脂としては、通常の条件を用いて、m-クレゾール又はm,p-クレゾール混合物をホルムアルデヒドと反応させることにより調製されたノボラック樹脂のような、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール-ホルムアルデヒド樹脂、フェノール-クレゾール-ホルムアルデヒド樹脂、p-t-ブチルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、及びピロガロール-アセトン樹脂が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、いくつかの有用なノボラック樹脂としては、以下に限定されないが、キシレノール-クレゾール樹脂、例えば、SPN400、SPN420、SPN460、及びVPN1100(これらはAZ Electronicsから入手できる)並びに少なくとも4,000といった高めの分子量を有するEP25D40G及びEP25D50G(実施例として以下に言及)が挙げられる。
【0064】
その他の有用な付加的な樹脂としては、ヒドロキシスチレンの繰り返し単位を含むポリ(ヒドロキシスチレン)及びコポリマー並びに置換ヒドロキシスチレンの繰り返し単位を含むポリマー及びコポリマーを含めたフェノール性ヒドロキシル基を有するポリビニル化合物が挙げられる。同様に有用なのは、例えば、米国特許第5,554,719号(Sounik)及び同第6,551,738号(Ohsawaら)、米国特許出願公開第2003/0050191号(Bhattら)、同第2005/0051053号(Wisnudelら)、及び同第2008/0008956号(Levanonら)に記載されている4-ヒドロキシスチレンから誘導される複数の分枝ヒドロキシスチレン繰り返し単位を有する分枝ポリ(ヒドロキシスチレン)である。例えば、そのような分枝ヒドロキシスチレンポリマーは、繰り返し単位が、ヒドロキシ基に対してオルトに位置する繰り返しヒドロキシスチレン単位(例えば4-ヒドロキシスチレン単位等)により更に置換されている4-ヒドロキシスチレンからのようなヒドロキシスチレンから誘導される繰り返し単位を含む。これらの分枝ポリマーは、1,000〜30,000、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは、3,000〜7,000の重量平均分子量(Mw)を有することができる。加えて、これらの分枝ポリマーは、2未満、好ましくは1.5〜1.9の多分散性を有することができる。この分枝ポリ(ヒドロキシスチレン)は、非分枝ヒドロキシスチレン繰り返し単位を有するホモポリマー又はコポリマーであり得る。
【0065】
有用なポリマーバインダーの1つの群として、ポリ(ビニルフェノール)及びその誘導体が挙げられる。そのようなポリマーは、一般に、ビニルフェノールモノマー、すなわち、置換若しくは非置換のビニルフェノールの重合によって得られる。置換ビニルフェノール繰り返し単位としては、構造(I)における「a」繰り返し単位について下に記載されているものが挙げられる。いくつかのビニルフェノールコポリマーが、欧州特許出願公開第1 ,669,803号(Barclayら)に記載されている。
【0066】
その他の有用なポリマーバインダーは、構造(POLYMER):
【0067】
【化3】

【0068】
によって表される、変性ノボラック又はレゾール樹脂であり、
上記構造中、Yは、
【0069】
【化4】

【0070】
であり、aは、90〜99モル%(典型的には92〜98モル%)であり、bは、1〜10モル%(典型的には2〜8モル%)であり、R1及びR3は、独立して、水素又はヒドロキシ、アルキル、又はアルコキシ基であり、R2は、水素又はアルキル基であり、Xは、アルキレン、オキシ、チオ、-OC(=O)Ar-、-OC(=O)CH=CH-、又はOCO(CH2)n4-基であって、ここで、Arはアリール基であり、m及びpは、独立して、1又は2であり、n1は、0又は最大5までの整数(例えば、0、1、2、又は3)であり、n2は、0又は最大5までの整数(例えば、0、1、又は2)であり、n3は、0又は1(典型的には0)であり、n4は、少なくとも1(例えば、最大8まで)であり、Zは、-C(=O)OH、-S(=O)2OH、-P(=O)(OH)2、又はOP(=O)(OH)2である。
【0071】
主要なポリマーバインダー中に存在するアルキル及びアルコキシ基(R1、R2、及びR3について)は、非置換であるか1つ又は複数のハロ、ニトロ、若しくはアルコキシ基により置換されていてもよく、1〜3個の炭素原子を有することができる。かかる基は、直鎖、分枝、又は環状(すなわち、この発明の目的のために「アルキル」は、「シクロアルキル」も含める)であり得る。
【0072】
Xがアルキレンであるとき、1〜4個の炭素原子を有することができ、アルキル及びアルコキシ基と同様に更に置換されていてもよい。加えて、このアルキレン基は、環及び鎖中に少なくとも5個の炭素原子を有する置換若しくは非置換のシクロアルキレン基であり得る。Arは、置換若しくは非置換の6若しくは10員の炭素環式芳香族基、例えば、置換若しくは非置換のフェニル及びナフチル基等、である。一般的に、Arは、非置換のフェニル基である。
【0073】
いくつかの実施形態において、該ポリマーバインダーは、aが92〜98モル%であり、bが、2〜8モル%であり、Zが、-C(=O)OHである構造(ポリマー)によって表され、層の乾燥総重量を基準として15〜100重量%の乾燥被覆率で存在する繰り返し単位を含む。
【0074】
画像形成性層内にあり得るその他のポリマーバインダーとしては、ノボラック及びレゾール樹脂のようなフェノール樹脂が挙げられ、かかる樹脂は、また、1つ又は複数のペンダントジアゾ、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、スルフィン酸エステル、あるいはエーテル基を含むこともできる。このフェノール樹脂のヒドロキシ基は、例えば、米国特許第6,218,083号(McCulloughら)及び国際公開第99/001795号(McCulloughら)に記載されているようなTが極性基を表し、Zが非ジアジド官能基を表す?T?Z基に変換することができる。このヒドロキシ基は、例えば米国特許第5,705,308号(Westら)及び同第5,705,322号(Westら)に記載されているようなo-ナフトキノンジアジド部分を含有するジアゾ基により誘導体化されていてもよい。その他の有用なポリマーバインダーとしては、例えば、欧州特許出願公開第737,896号(Ishizukaら)に記載されているようなアクリレートコポリマー、例えば米国特許第6,391 ,524号(Yatesら)、DE 10 239 505(Timpeら)、及び国際公開第2004081662号(Memeteaら)に記載されているようなセルロースエステル及びポリ(ビニルアセタール)が挙げられる。
【0075】
この付加的なポリマーバインダーは、該画像形成性層中に、画像形成可能層の総乾燥重量を基準として15〜70重量%(典型的には30〜60重量%)の乾燥被覆率で存在することができる。
【0076】
該単一の画像形成可能層は、分散助剤、保湿剤、殺生物剤、可塑剤、コーティング特性及び他の特性を目的として界面活性剤、増粘剤、書き込まれた画像の可視化を可能にする染料又は着色剤、pH調整剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、酸化防止剤、現像助剤、レオロジー調整剤又はこれらの組み合わせを含めたさまざまな添加剤、あるいは平版印刷技術分野で通常使用されている任意のその他の追加剤を通常の量で更に含むことができる。
【0077】
該単層の画像形成可能要素は、基材の表面(及びその上に用意された任意のその他の親水性の層)に、通常のコーティング又は積層方法を用いて該層配合物を適用することによって調製することができる。かくして、該配合物は、所望の成分を適当なコーティング溶媒中に分散又は溶解させることによって適用することができ、その得られた配合物は、適当な装置及び手順、例えば、スピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティング、又は押出ホッパーコーティング等を使用して、基材に逐次的又は同時に適用される。これらの配合物は、適切な支持体(例えばオンプレス印刷シリンダー又は印刷スリーブ)上に吹き付けることによって適用することもできる。
【0078】
この単一の画像形成性層に対するコーティング重量は、0.5〜2.5g/m2、典型的には1〜2g/m2であり得る。
【0079】
該画像形成性層配合物をコートするために使用する溶媒の選択は、その配合物中のポリマー材料及びその他の成分の性質に依存する。一般に、該画像形成性層配合物は、当技術分野では周知の条件及び技術を使用して、アセトン、メチルエチルケトン、又は別のケトン、テトラヒドロフラン、1-メトキシプロパン-2-オール、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、及びそれらの混合物からコートされる。
【0080】
別法では、この層(複数可)は、それぞれの層の組成物の溶融混合物から通常の押出コーティング法により適用することができる。一般的には、かかる溶融混合物は、揮発性有機溶剤を含まない。
【0081】
これらさまざまな層配合物の適用の間に、他の配合物をコーティングする前に溶剤(複数可)を除去するために、中間乾燥工程を用いることができる。乾燥工程は、さまざまな層の混合を防止するのにも役立ち得る。
【0082】
多層ポジ型画像形成可能要素
一般に、本発明の多層のポジ型画像形成可能要素は、基材、内層(当技術分野で「下層」としても知られている)、及び内層上に配置された外層(当技術分野で「最上層」又は「トップコート」としても知られている)を含む。熱画像化前は、この外層は、現像のために割り当てられた通常の時間内にアルカリ性現像液により一般に溶解又は除去できないが、熱画像化後は、該外層の露光された領域はアルカリ性現像液に可溶性である。該内層もそのアルカリ性現像液により一般に除去される。赤外線吸収性化合物(上記)も、かかる画像形成可能要素中に存在することができ、一般的には、該内層だけに存在するが、場合によって、その内層と外層の間の別の層内であり得る。ほとんどの実施形態において、赤外線吸収性化合物はその外層内には意図的に組み込まれない。
【0083】
該画像形成可能要素は、適切な基材上への内層組成物の適切な適用によって形成される。この基材は、未処理又はコーティングされていない支持体であり得るが、それは通常は内層組成物の適用の前に、上記のようなさまざまな方法で処理又はコートされる。該基材は、親水性表面又は少なくとも該外層組成物より親水性である表面を一般に有する。この基材は、平版印刷版のような画像形成可能要素を調製するために標準的に使用される任意の材料から成ることができる支持体を含む。かかる基材のさらなる詳細は、上に提供されている。
【0084】
該内層は、該外層と該基材の間に配置される。一般的には、それは基材上(上記のような任意の親水性コーティングを含有している)に直接配置される。この内層は、より低いpHの現像液によって除去可能であり、該現像液のスラッジ化を減らすために該現像液中に一般的には溶解する第一のポリマーバインダーを含む。加えて、該第一のポリマーバインダーは、外層が内層上にその内層を溶解することなくコートされ得るように、該外層をコートするために使用される溶媒に通常は不溶性である。この内層中には所望によりこれら第一のポリマーバインダーの混合物を使用することができる。この第一のポリマーバインダーは、上記の「支配的な」ポリマーバインダーの1つ又は複数を一般に含む。かかるポリマーバインダーは、該内層中に、全体の乾燥内層重量の少なくとも10重量%、大抵は30〜45重量%の量で一般に存在する。
【0085】
内層用のその他の有用なポリマーバインダーとしては、(メタ)アクリロニトリルポリマー、カルボキシ基を含む(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール、マレイン酸化ウッドロジン、スチレン-無水マレイン酸コポリマー、N-アルコキシアルキルメタクリルアミドから誘導されたポリマーを含む(メタ)アクリルアミドポリマー、N-置換環状イミドから誘導されるポリマー、ペンダント環状尿素基を有するポリマー、及びそれらの組み合わせが挙げられる。更にその他の有用なポリマーバインダーとしては、N-置換環状イミド(特にN-フェニルマレイミド)、(メタ)アクリルアミド(特にメタクリルアミド)、ペンダント環状尿素基を有するモノマー、及び(メタ)アクリル酸(特にメタクリル酸)から誘導されるポリマーが挙げられる。このタイプのポリマーバインダーとしては、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシル-マレイミド、N-(4-カルボキシフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド、又はそれらの混合物から誘導される繰り返し単位を60〜95モル%、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はそれらの混合物から誘導される繰り返し単位を10〜50モル%、及びメタクリル酸から誘導される繰り返し単位を5〜30モル%含むコポリマーが挙げられる。その他の親水性モノマー、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート等を、メタクリルアミドの一部又は全部の代わりに使用することができる。その他のアルカリ可溶性モノマー、例えば、アクリル酸等は、メタクリル酸の一部又は全部の代わりに使用することができる。場合によって、これらのポリマーは、(メタ)アクリロニトリル又はN-[2-(2-オキソ-1-イミダゾリジニル)エチル]-メタクリルアミドから誘導される繰り返し単位を含むこともできる。
【0086】
更に他の有用な内層内の追加のポリマーバインダーは、重合した形で、エチレン性不飽和のカルボキシ基を有する重合性モノマー、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及びその他の当技術分野で知られている類似のモノマー等(アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい)から誘導される繰り返し単位を5モル%〜30モル%、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、又はそれらの混合物から誘導される繰り返し単位を20モル%〜75モル%、場合によって、メタクリルアミドから誘導される繰り返し単位を5モル%〜50モル%、及び、例えば米国特許第7,186,482号(Kitsonら)に記載されている化合物から誘導される繰り返し単位を3モル%〜50モル%含むことができる。これらポリマー材料のいくつかの調製の方法は、米国特許第6,475,692号(Jarek)に開示されている。
【0087】
内層用のさらなる有用なポリマーバインダーは、例えば、米国特許第7,144,661号(Rayら)、同第7,163,777号(Rayら)、及び同第7,223,506号(Ktsonら)、並びに米国特許出願公開第2006/0257764号(Rayら)、同第2007/0172747号(Rayら)、及び同第2009/0042135号(Taoら)に記載されている。
【0088】
該内層は、活性化されたメチロール及び/又は活性化されたアルキル化メチロール基を有する樹脂である1つ又は複数の付加的ポリマー材料を含んでもよい。該付加的ポリマー材料としては、例えば、レゾール樹脂及びそれらのアルキル化類似体、メチロールメラミン樹脂及びそれらのアルキル化類似体(例えばメラミン-ホルムアルデヒド樹脂)、メチロールグリコールウリル樹脂及びアルキル化類似体(例えばグリコールウリル-ホルムアルデヒド樹脂)、チオウレア-ホルムアルデヒド樹脂、グアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、並びにベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂を挙げることができる。市販のメラミン-ホルムアルデヒド樹脂及びグルコールウリル-ホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、CYMEL(登録商標)樹脂(Dyno Cyanamid)及びNIKALAC(登録商標)樹脂(Sanwa Chemical)が挙げられる。活性化メチロール及び/又は活性化アルキル化メチロール基を有する該樹脂は、一般的には、レゾール樹脂又はレゾール樹脂の混合物である。レゾール樹脂は当業者にはよく知られている。それらは、塩基性条件下、過剰のフェノールを用いて、フェノール類とアルデヒド類との反応により調製される。市販のレゾール樹脂としては、例えば、GP649D99レゾール(Georgia Pacific)及びBKS-5928レゾール樹脂(Union Carbide)が挙げられる。有用な付加的ポリマー材料としては、N-フェニルマレイミドから誘導される繰り返し単位を25〜75モル%、メタクリルアミドから誘導される繰り返し単位を10〜50モル%、及びメタクリル酸から誘導される繰り返し単位を5〜30モル%含むコポリマーを挙げることもできる。これらの付加的コポリマーは、米国特許第6,294,311号(Shimazuら)及び同第6,528,228号(Savariar-Hauckら)に記載されている。
【0089】
ほとんどの実施形態において、該内層は、上で定義した赤外線吸収性化合物を更に含む。ほとんどの実施形態において、この赤外線吸収性化合物は該内層だけに存在する。
【0090】
この赤外線吸収性化合物は、該多層画像形成可能要素中に、その化合物が位置づけられている層の乾燥総重量を基準として、一般に少なくとも0.5%、最大で30%まで、典型的には3〜25%の量で存在することができる。使用するための所与の化合物の特定量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0091】
該内層は、界面活性剤、分散助剤、保湿剤、殺生物剤、増粘剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、酸化防止剤、着色剤、又は有機若しくは無機粒子等の他の成分を含有してもよい。
【0092】
この内層は、一般に、0.5〜2.5g/m2、典型的には1〜2g/m2の乾燥コーティング被覆を有する。上記の全体のポリマーバインダーは、乾燥層総重量を基準として、少なくとも50重量%、典型的には60〜90重量%を一般に含み、この量は、どの他のポリマー及び化学成分が存在するかによって変更され得る。
【0093】
該画像形成可能要素の外層は、内層上に配置され、ほとんどの実施形態において、該内層と外層との間に中間層はない。この外層は、通常は該内層中のポリマーバインダーとは異なる1つ又は複数のポリマーバインダーを含む。これら外層のポリマーバインダーは、例えば、米国特許第7,163,770号(Saraiyaら)、同第7,160,653号(Huangら)、及び同第7,582,407号(Savariar-Hauckら)に記載されているものであり得る。しかしながら、他の実施形態においては、該放射(光)吸収性化合物は、例えば、欧州特許出願公開第1,439,058号(Watanabeら)及び同第1,738,901号(Lingierら)に記載されているように、外層中だけ、又は外層と内層の両方の中か、上記のように中間層の中であり得る。
【0094】
該1つ又は複数のポリマーバインダーは、該外層中に、該外層の全体の乾燥重量を基準として、15〜100重量%、典型的には70〜98重量%の乾燥被覆率で存在する。
【0095】
この外層は、一般に着色剤も含有する。有用な着色剤は、例えば、米国特許第6,294,311号(上記)に記載されており、トリアリールメタン染料、例えば、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、ビクトリアブルーB、ビクトリアブルーR、ビクトリアピュアブルーBOが挙げられる。これらの化合物は、現像された画像形成可能要素中の非露光領域を露光領域から区別するコントラスト染料としても機能し得る。この外層は、場合によって、コントラスト染料、プリントアウト染料、コーティング界面活性剤、分散助剤、保湿剤、殺生物剤、増粘剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、及び酸化防止剤を含有することもできる。
【0096】
この外層は、一般に0.2〜2g/m2、典型的には0.4〜1.5g/m2の乾燥コーティング被覆を有する。
【0097】
該内層と外層との間に、それら内層及び外層に接する別個の層があってもよい。この別個の層は、赤外線吸収性化合物(複数可)の該内層から該外層への移行を最低限に抑えるためのバリヤーとして機能することができる。この別個の「バリヤー」層は、一般に、アルカリ性現像液に可溶性である他のポリマーバインダーを含む。このポリマーバインダーが、該内層中のポリマーバインダー(複数可)と異なる場合、それは、該内層のポリマーバインダーが不溶性である少なくとも1つの有機溶剤に典型的には可溶性である。このバリヤー層用の有用なポリマーバインダーはポリ(ビニルアルコール)である。このバリヤー層は、一般に該内層の厚さの1/5未満、典型的には該内層の厚さの1/10未満であるべきである。
【0098】
別法では、該内層と外層との間に赤外線吸収性化合物(複数可)を含む別個の層が存在することができ、その化合物は、その内層中にも、又はその別個の層の中だけに存在することもできる。
【0099】
この多層の画像形成可能要素は、親水性基材(及びその上に用意された任意のその他の親水性の層)の表面に内層配合物を連続して適用し、次にその内層の上に通常のコーティング又は積層方法を用いて外層配合物を適用することによって調製することができる。その内層と外層の配合物の混合を避けることが重要である。
【0100】
この内層と外層は、適切なコーティング溶媒中に所望の成分を分散又は溶解させ、得られた配合物を、適切な装置及び方法、例えば、スピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティング、又は押出ホッパーコーティング等を使用して、基材に連続的又は同時に適用することができる。これらの配合物は、適切な支持体上に吹き付けることによって適用することもできる。
【0101】
該内層と外層の両方をコートするために使用される溶媒の選択は、その配合物中のポリマーバインダーとその他の成分の性質に基づく。該外層配合物を適用するときに、その内層配合物と外層配合物が混合すること、又は内層が溶解することを防止するために、その外層配合物は、該内層のポリマーバインダー(複数可)が不溶である溶媒によりコートすべきである。
【0102】
一般に、該内層配合物は、メチルエチルケトン(MEK)、1-メトキシ-2-プロピルアセテート(PMA)、γ-ブチロラクトン(BLO)、及び水の溶媒混合物、MEK、BLO、水、及び1-メトキシプロパン-2-オール(Dowanol(登録商標)PM又はPGMEとしても知られている)の混合物、ジエチルケトン(DEK)、水、乳酸メチル、及びBLOの混合物、DEK、水、及び乳酸メチルの混合物、又は乳酸メチル、メタノール、及びジオキソランの混合物によりコートされる。
【0103】
該外層配合物は、該内層を溶解しない溶媒又は溶媒混合物によりコートすることができる。この目的のための典型的な溶媒としては、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、メチルイソ-ブチルケトン、DEK、1-メトキシ-2-プロピルアセテート(PMA)、イソ-プロピルアルコール、PGME及びこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。特に有用なのは、DEK及びPMAの混合物、又はDEK、PMA、及びイソプロピルアルコールの混合物である。
【0104】
別法では、この内層及び外層は、それぞれの層の組成物の溶融混合物から押出コーティング法により適用することができる。一般的には、かかる溶融混合物は、揮発性有機溶剤を含まない。
【0105】
これらさまざまな層配合物の適用の間に、他の配合物をコーティングする前に溶剤(複数可)を除去するために、中間乾燥工程を用いることができる。乾燥工程は、さまざまな層の混合を防止するのにも役立ち得る。
【0106】
これら層を乾燥後、該多層の画像形成可能要素は、40〜90℃で少なくとも4時間(例えば、少なくとも20時間)乾燥した層からの水分の除去を妨げる条件下での熱処理により更に「調整された」状態にすることができる。例えば、その熱処理は、50〜70℃で少なくとも24時間行なわれる。この熱処理中に、該画像形成可能要素は、該原版からの脱湿に対する有効なバリヤーを示す水不浸透性のシート材料中に包装され又は包み込まれるか、あるいは該画像形成可能要素の熱処理は、相対湿度が少なくとも25%に制御されている環境中で行なわれる。加えて、該水不透過性シート材料は、該画像形成可能要素の縁の周りに封止されているポリマーフィルム又は金属ホイルであるその水不透過性シート材料により該画像形成可能要素の縁の周りを封止することができる。
【0107】
いくつかの実施形態において、この熱処理は、少なくとも100個の同じ画像形成可能要素を含む積層体によるか、又はその画像形成可能要素がコイル又はウェブの形状である場合に行なうことができる。積層体で調整される場合、個々の画像形成可能要素は、適切な合紙によって分離することができる。そのような紙は、いくつかの商業的供給源から入手可能である。この合紙は、胴貼り、輸送、及び顧客による使用を通じた調整の後に該画像形成可能要素の間に保つことができる。
【0108】
画像化条件
この画像形成可能要素は、以下に限定されないが、印刷版原版、印刷シリンダー、印刷スリ-ブ(中空又は中空でない両方)、及び印刷テープ(可撓性印刷ウエブを含める)を含めた任意の有用な形態及び大きさ又は形状を有することができる。
【0109】
使用中、このポジ型画像形成可能要素は、700〜1500nmの波長の適切な画像化又は露光放射光源にさらされる。例えば、画像化は、波長が少なくとも750nmで最大で1400nm以下、典型的には少なくとも750nmで最大で1250nm以下の赤外線レーザー(又はレーザーのアレー)からのような画像化用又は露光用放射を用いて行なうことができる。画像化は、所望により複数の波長の画像化用放射光を同時に用いて行なうことができる。
【0110】
該画像形成可能要素を露光するために使用されるレーザーは、ダイオードレーザーシステムが、信頼性があり低保守であるために、通常はダイオードレーザーであるが、その他のレーザー、例えば、ガス又は固体レーザーも使用することができる。レーザー画像化に対する出力、強度及び露光時間の組合せは、当業者にはすぐに分かることであろう。
【0111】
該画像化装置は、プレートセッターとしてもっぱら機能することができ、又はそれは平版印刷機中に直接組み入れることができる。後者の場合、印刷は画像化及び現像の直後に開始することができ、それによって印刷のセットアップ時間を大幅に短縮することができる。該画像化装置は、ドラムの内側又は外側の柱面に据え付けられた画像形成性部材を有する平台型の記録器又はドラム型記録器として構成することができる。有用な近赤外線及び赤外線画像化装置の例は、近赤外線を830nmの波長で放出するレーザーダイオードを含むEastman Kodak Company(バーナビー、カナダ、ブリティッシュコロンビア州)から市販されているKodak(登録商標)Trendsetter又はKodak(登録商標)Quantum 800イメージセッターをモデルとして利用できる。その他の適当な画像化ソースとしては、1064nmの波長で作動するCrescent 42Tプレートセッター(イリノイ州シカゴのGerber Scientificから入手可能)及びScreen PlateRite 4300シリーズ又は8600シリーズのプレートセッター(イリノイ州シカゴのScreenから入手可能)が挙げられる。さらなる有用な放射物のソースとしては、印刷版シリンダーに取り付けられている間に要素を画像化するために使用することができる直接画像化印刷機が挙げられる。適切な直接画像化印刷機の例としては、Heidelberg SM74-DI印刷機(オハイオ州デイトンのHeidelbergから入手可能)が挙げられる。
【0112】
赤外線放射による画像化は、画像形成性層の感度に応じて、少なくとも30mJ/cm2で最大500 mJ/cm2以下、典型的には少なくとも50mJ/cm2で最大300 mJ/cm2以下の画像化エネルギーで一般に実施することができる。
【0113】
現像及び印刷
画像化後のプレヒートに対する必要性が有っても無くても、画像化された要素は、従来の処理法及び現像液(又は「処理溶液」としても知られている)のような水溶液を用いて「オフプレス」で現像することができる。
【0114】
該現像液組成物は、界面活性剤、キレート剤(エチレンジアミンテトラ酢酸の塩等)、有機溶媒(ベンジルアルコール等)、及びアルカリ成分(無機メタケイ酸塩、有機メタケイ酸塩、水酸化物、及び重炭酸塩等)を通常は含有する。この現像液のpHは、一般に、4〜14である。いくつかの実施形態においては、より低いpHの現像液、例えば、6〜12.5又は7〜12のpHを有する現像液が使用される。その他の実施形態において、その現像液のpHは、少なくとも11である。該画像化された要素は、一般に従来の処理条件を用いて現像される。水性アルカリ現像液及び有機溶媒を含むアルカリ現像液が使用され得る。
【0115】
有機溶媒を含むアルカリ現像液は、一般に水と混和性である1つ又は複数の有機溶媒の単相の溶液であり、12より低い、例えば6〜12又は典型的には7〜11.5のpHを一般に有する。有用な有機溶媒としては、フェノールのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドとの反応生成物[エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)等]、ベンジルアルコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールの6個以下の炭素原子を有する酸とのエステル、及びエチレングリコール、ジエチレングリコール、及びプロピレングリコールの6個以下の炭素原子を有するアルキル基とのエーテル、例えば2-エチルエタノール及び2-ブトキシエタノール等が挙げられる。有機溶媒(複数可)は、全体の現像液重量を基準として、0.5〜15%の量で一般に存在する。
【0116】
有機溶媒を含む代表的なアルカリ現像液としては、ND-1現像液、955現像液、956現像液、989現像液、現像液980、及び956現像液(Eastman Kodak Companyから入手可)、HDN-1現像液及びLP-DS現像液(Fuji Photoから入手可)、並びにEN 232現像液及びPL10現像液(Agfaから入手可)が挙げられる。
【0117】
有用な水性アルカリ現像液は、一般に、少なくとも7、典型的には少なくとも11、最大で13.5のpHを有する。かかる現像液としては、以下に限定されないが、3000現像液、9000現像液、Goldstar(登録商標)現像液、Goldstar(登録商標)Plus現像液、Goldstar(登録商標)Premium現像液、Kodak Thermal 300現像液、GREENSTAR現像液、ThermalPro現像液、PROTHERM現像液、MX1813現像液、及びMX1710現像液(すべてEastman Kodak Companyから入手可)、並びにFuji HDP7現像液(Fuji Photo)及びEnergy CTP現像液(Agfa)が挙げられる。これらの組成物は、また、界面活性剤、キレート剤(エチレンジアミンテトラ酢酸の塩等)、及びアルカリ成分(無機メタケイ酸塩、有機メタケイ酸塩、水酸化物、及び重炭酸塩等)を一般に含有する。
【0118】
かかるアルカリ現像液は、外層の現像液攻撃を抑制する現像液可溶性化合物である1つ又は複数の「皮膜攻撃抑制剤」を含有することもできる。「現像液可溶性」とは、該現像液による攻撃を抑制するための十分な薬剤(複数可)がその現像液に溶解することを意味する。これらの化合物の混合物を使用することができる。典型的には、この皮膜攻撃抑制剤は、Raが水素あるいはメチル又はエチル基である繰り返しの-(CH2-CHRa-O)-単位を含有する現像液溶解性のポリエトキシレート化、ポリプロポキシレート化、又はポリブトキシレート化化合物である。各剤が、(ランダム又はブロックの様式で)同じ又は異なる反復単位を有することができる。このタイプの代表的な化合物としては、上記の繰り返し単位を有するポリグリコール類及びポリ縮合生成物が挙げられるが、これらに限定されない。かかる化合物の例、及び代表的な供給源、商標名、又は調製の方法は、例えば米国特許第6,649,324号(Fiebagら)に記載されている。
【0119】
4〜9のpHを有する現像液が、現像後のポストリンス及びガム引きの工程なしで画像化した要素を現像(いわゆる「一浴現像」)するために有用である。かかる現像液は、現像された版を指紋に対して保護するため、及び印刷機上で使用されるとき版の色味付きを防ぐために、ほとんどの場合、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリ(アクリル酸)、又はその他の親水性ポリマーを含む。
【0120】
一般に、現像液は、現像液を含んでいる塗布器により外層をラビングするか又はワイピングすることにより画像化された要素に塗布される。別法では、画像化された要素は、露光領域を除去するために現像液と共にブラシがけすることができ、又は曝露された領域を除去するのに十分な力でその現像液を外層に吹き付けてもよい。更にまた、その画像化された要素は、該現像液中に浸漬することができる。すべての場合に、現像画像は、印刷室の薬品に優れた耐性を有する平版印刷版中に形成される。これらの現像プロセスは、適切な現像プロセッサー又は装置中で標準的な滞留時間と再循環率及び補充率を用いて実施することができる。
【0121】
このオフプレスの現像に続いて、その画像化された要素は、水ですすぎ、適切なやり方で乾燥させることができる。その乾燥した要素は、通常のガム引き溶液(好ましくはアラビアゴム)により処理することもできる。加えて、ポストベーク工程を、ブランケットを紫外線又は可視光放射に露光するか又はしないで行なうことができる。別法では、紫外線のフラッド様の後露光(加熱なし)を用いてその画像化された要素の性能を高めることができる。
【0122】
画像化後及び現像前に後露光ベーキングの工程があるか又はない別の実施形態において、該画像化された要素は、以下に記載されているようなガム(又はガム溶液)を用いて「オフプレス」で現像することができる。ガム溶液は、典型的には印刷版の平版画像を汚染(例えば、酸化、指紋、ほこり又は擦り傷)に対して保護することができる1つ又は複数の表面保護化合物を含む水性液体である。大まかに以下の2つのタイプの当技術分野で知られている「ガム」溶液が存在する: (1)「ベーク」、「ベーキング」、又は「プリベーク」ガムで、平版印刷版を製造するために使用される通常のプリベーク温度で蒸発しない1つ又は複数の化合物、典型的にはアニオン又は非イオン界面活性剤を通常含む、及び(2)「フィニッシャー」ガムで、印刷版上の保護上塗りを提供するために有用である1つ又は複数の親水性ポリマー(合成及び天然に存在する両方、例えば、アラビアゴムセルロース化合物、(メタ)アクリル酸ポリマー、及び多糖類等)を通常含む。これらの実施形態の実践において使用されるガムは、一般に「プリベーク」ガムと考えられ、したがって、通常は親水性ポリマーがない。
【0123】
このガムは、希釈された形又は濃縮された形で提供することができる。以下に記載されている成分の量は、その本発明の実践における使用のための形態であり得る希釈されたガム中の量を指す。しかしながら、濃縮されたガムを使用することができ、さまざまな成分(例えばアニオン界面活性剤等)の量が相応して増加される。
【0124】
このガムは、適当な量の塩基を使用して調節されて3より上で最高で9のpHを一般に有する水溶液である。このガムの粘度は、適当な量の粘度を上昇させる化合物例えばポリ(ビニルアルコール)又はポリ(エチレンオキシド)等を添加することによって、1.7〜5cPの値に調節することができる。
【0125】
加えて、これらのガムは、所望により任意的な成分(下記)を存在させることができるが、唯一の必須成分として、1つ又は複数のアニオン界面活性剤を有する。有用なアニオン界面活性剤としては、カルボン酸、スルホン酸、又はホスホン酸基(あるいはそれらの塩)を有するものが挙げられる。スルホン酸(又はその塩)基を有するアニオン界面活性剤が特に有用である。例えば、アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩、アビエテート、ヒドロキシアルカンスルホネート、アルカンスルホネート、ジアルキルスルホスクシネート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート、直鎖状アルキルベンゼンスルホネート、分枝状アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルスルホノフェニルエーテルの塩、ナトリウムN-メチル-N-オレイルタウレート、モノアミドジナトリウムN-アルキルスルホスクシネート、石油スルホネート、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステルの塩、アルキル硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル、脂肪族モノグリセリドの硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、アルキルリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エステルの塩、スチレン-無水マレイン酸コポリマーの部分鹸化化合物、オレフィン-無水マレイン酸コポリマーの部分鹸化化合物、及びナフタレンスルホネートホルマリン縮合物を挙げることができる。アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩(例えばドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム等)、アルキル化ナフタレンスルホン酸、スルホン化アルキルジフェニルオキシド、及びメチレンジナフタレンスルホン酸が、主又は「第一」アニオン界面活性剤として特に有用である。いくつかの工業用の例を下記実施例に記載する。かかる界面活性剤は、McCutcheon's Emulsifiers & Detergents、2007年版に記載されているように様々な供給業者から入手できる。そのような界面活性剤の具体例としては、ド
デシルフェノキシオキベンゼンジスルホン酸ナトリウム、アルキル化ナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、メチレン-ジナフタレンジスルホン酸二ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホン化アルキル-ジフェニルオキシド、ペルフルオロアルキルスルホン酸アンモニウム又はカリウム、及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない。
【0126】
この1つ又は複数のアニオン界面活性剤は、少なくとも1重量%、典型的には1〜45重量%、又は3〜30重量%(該ガムの重量を基準として)の量で一般に存在する。2つ以上のアニオン界面活性剤(「第一」、「第二」等)を、組合せて使用することができる。そのような混合物において、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート等の第一アニオン界面活性剤は、一般に、少なくとも1重量%、典型的には3〜30重量%の量で存在することができる。第二界面活性剤(第一アニオン界面活性剤と同じか又は異なる)は、少なくとも0.1重量%、典型的には2〜30重量%の合計量で存在し得る。第二の又はさらなるアニオン界面活性剤は、置換芳香族アルキルスルホン酸アルカリ及び脂肪族硫酸アルカリから選択することができる。アニオン界面活性剤の1つの特定の組合せとしては、1つ又は複数のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート及び1つ又は複数の芳香族アルキルスルホン酸アルカリ(例えばアルキルナフタレンスルホン酸アルカリ等)が挙げられる。
【0127】
このガムは、欧州特許出願公開第1,751,625号(上記)の[0029]に記載されているような非イオン界面活性剤又は[0024]に記載されている親水性ポリマーを含有することができる。特に有用な非イオン界面活性剤としては、Mazol(登録商標)PG031-K (モノオレイン酸トリグリセロール)、Tween(登録商標)80(ソルビタン誘導体)、Pluronic(登録商標)L62LF (プロピレンオキシドとエチレンオキシドのブロックコポリマー)、及びZonyl(登録商標)FSN (フッ化炭素)、並びに印刷版表面にガムをうまく被覆するための非イオン界面活性剤、例えば非イオン性ポリグリコールが挙げられる。これらの非イオン界面活性剤は、最大で10重量%までの量で存在することができるが、通常は2重量%未満の量である。
【0128】
このガムのその他の任意的な成分としては、無機塩(例えば、上記の米国特許出願公開第2005/0266349号の[0032]に記載されているもの等)、湿潤剤(グリコール等)、金属キレート剤、防腐剤、消泡剤、インク受理性付与剤(例えば米国特許出願公開第2005/0266349号の[0038]に記載されているもの等)、及び上記のような粘度上昇剤が挙げられる。そのような成分の量は、当技術分野で知られている。ポリアミノポリカルボン酸、アミノポリカルボン酸、又はそれらの塩、[例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA、ナトリウム塩)]、有機ホスホン酸及びそれらの塩、及びホスホノアルカントリカルボン酸及びそれらの塩を含むがそれらに限定されないカルシウムイオンキレート剤が特に有用である。有機アミン類も有用であり得る。キレート剤は、ガム中に0.001〜1重量%の量で存在させることができる。
【0129】
一般に、このガムは、画像化した要素に、外層を、そのガム若しくはローラー、含浸させたパッド、又はそのガムを含む塗布器により、ラビングするか、吹き付けるか、噴射するか、浸漬するか、コートするか、又はワイピングすることによって塗布される。例えば、画像化した要素は、ガムと共にブラシがけすることができ、又はそのガムは、例えば欧州特許出願公開第1,788,431号(上記)の[0124]に記載されているようなスプレーノズルシステムを用いて十分な力で吹き付けることによって外層に浴びせかけ又は適用して露光領域を除去することができる。更にこの場合もやはり、この画像化された要素は、ガム中に浸漬して手によるか又は器具によりラビングすることができる。
【0130】
このガムは、印刷版をラビング又はブラッシングするための少なくとも1つのローラーを有するガム引きユニット(又はガム引きステーション)中で塗布することもでき、そのガムは現像中に塗布される。かかるガム引きユニットを使用することによって、画像形成された層の露光領域をより完全及び迅速に基材から除去することができる。現像で使用されたガムをタンクに集めることができ、そのガムを数回使用でき、必要に応じてガムの貯留容器から補充することができる。そのガム補充液は現像で使用されるものと同じ濃度のものであっても、あるいは、濃縮形態で供給されて適切な倍率の水で希釈してもよい。
【0131】
オフプレス現像に続いて、ポストベーク作業を、UV、可視光、又は赤外線放射へのブランケット露光又はフラッド様露光有り又は無しで、例えば「白色」光への露光によって行うことができる。又は、ベーキングを、ホットエア循環オーブン中で行なうことができる。該画像化し、現像した要素は、ポストベーク作業でベークして、得られた画像化要素の連続運転時間を増すことができる。ベーキングは、例えば160〜220℃で30秒〜10分間、上記のUV、可視光、又はIR露光有り又は無しで、適当な装置(例えば、固定式又はコンベア式オーブンであり得るホットエア循環オーブン)中で行うことができる。
【0132】
かくして、現像プロセスが何であろうと、本発明の方法は、露光後のベーキング工程を省き、現像によって主に露光領域のみを除去することによって、親水性のアルミニウムを含む基材を有するポジ型の平版印刷版を提供するために実施することができる。
【0133】
当業者には自明であるが、かかる現像プロセスは、わずかな量の非露光領域を除去するかもしれないが、望ましい画像に著しく影響を及ぼすほどのものではない。
【0134】
本発明は、少なくとも次の実施形態及びそれらの組合せを提供する:
1. 基材を含み、その上に配置されている画像形成性層を有する平版印刷版原版であって、該画像形成性層が、赤外線吸収性化合物及び40meq/g KOH以上の酸価を有するポリマーバインダーを含み、前記ポリマーバインダーが、1つ又は複数のN-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド又はアルコキシメチル(アルキル)アクリレートから誘導された繰り返し単位を少なくとも3重量%、ペンダント1H-テトラゾール基を有する繰り返し単位を少なくとも2重量%、及びペンダントシアノ基を有する繰り返し単位少なくとも10重量%を含んでいる上記印刷版原版。
2. 該ポリマーバインダーが、次の構造(I):
-(A)w-(B)x-(C)y-(D)z- (I)
(式中、Aは、1つ又は複数のN-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド又はアルコキシメチル(アルキル)アクリレートから誘導される繰り返し単位を表し、Bは、ペンダントシアノ基を有する繰り返し単位を表し、Cは、ペンダント1H-テトラゾール基を有する繰り返し単位を表し、Dは、A、B、及びC以外の1つ又は複数の異なる繰り返し単位を表し、
ポリマーバインダーの全重量を基準として、wは2〜80重量%であり、xは10〜85重量%であり、yは5〜80重量%であり、zは10〜85重量%である)で表される実施形態1の印刷版原版。
3. ポリマーバインダーの全重量を基準として、wが3〜30重量%であり、xが30〜70重量%であり、yが10〜40重量%であり、zが15〜40重量%である実施形態2の印刷版原版。
4. N-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド及びN-アルコキシメチル(アルキル)アクリレートが、独立して、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基、メチル又はエチル基であるアルキル基を有する、実施形態1から3のいずれかの印刷版原版。
5. 該ポリマーバインダーが、該画像形成性層中に乾燥した画像形成性層の総重量を基準として40〜98重量%の量で存在する実施形態1から4のいずれかの印刷版原版。
6. 該ポリマーバインダーが、30〜150meq/g KOHの酸価を有する実施形態1から5のいずれかの印刷版原版。
7. ポジ型であり、該赤外線吸収性化合物が、赤外線吸収性染料である実施形態1から6のいずれかの印刷版原版。
8. ポジ型であり、該基材上に配置された内層を含み、その内層が該赤外線吸収性化合物及び該ポリマーバインダーを含み、また該内層上に配置された外層を含み、その外層が前記内層中の前記ポリマーバインダーとは異なるポリマーバインダーを含む実施形態1から7のいずれかの印刷版原版。
9. A) 実施形態1から8のいずれかの該印刷版原版を画像様露光して露光された領域と非露光領域とを生成させる工程、及び
B) 露光後予熱有り又は無しで、画像様露光した印刷版原版を現像して平版印刷版を提供する工程、
を含む方法。
10. 該画像様露光が、750〜1250nmの波長を有する赤外線放射を用いて行なわれる実施形態9の方法。
11. 該印刷版原版がポジ型であり、該現像工程が該露光領域を除去する実施形態9又は10の方法。
12. 工程Bの後に該平版印刷版をベークする工程を更に含む実施形態9から11までのいずれかの方法。
13. 該ベーキング工程が、紫外線、可視光若しくは赤外線への露光、又は、160〜220℃で30秒〜10分間加熱することによるか、又は、前記加熱と紫外線、可視光若しくは赤外線露光の両方によって行なわれる実施形態12の方法。
14. 露光後予熱工程が省略される実施形態9から13のいずれかの方法。
15. 現像が、6〜12.5のpHを有する現像液を用いて行なわれる実施形態9から14のいずれかの方法。
16. 現像が、7〜12のpHを有する現像液を用いて行なわれる実施形態9から15のいずれかの方法。
17. 現像が、少なくとも11のpHを有する現像液を用いて行なわれる実施形態9から16のいずれかの方法。
【0135】
以下の実施例は、この発明の実施を説明するために提供され、多少なりとも限定することを意味するものではない。
【0136】
(発明実施例1〜2及び比較例1〜4)
以下の化学物質を実施例において使用した:
【0137】
【表1】

【0138】
コポリマーA〜Fは、以下のTABLE I(表2)に示されている反応性モノマーモル比により従来の条件及び手順によって調製した。
【0139】
【表2】

【0140】
樹脂Aの合成:
500mlの還流付き3つ口丸底フラスコを温度自動調節の水槽中に準備した。236.21gのSPN562を含んでいるそのフラスコに、180gのDawanol(登録商標)PMを加えた。その溶液を85℃に加熱し、26.7gの細かい粉末に砕いたKOHを加え、その溶液を10分間撹拌した。続いて12.76gのクロロ酢酸を加え、その反応をそのまま85℃で5時間続けた。この時間の後、その反応混合物を29.0gのHCl(33%)で中和した。その溶液を次に1リットルのビーカー中の水の中に注ぎ、激しく回して微細な懸濁液を生じさせた(pH約4)。得られたポリマーを濾過し、フィルター上でpH6〜7まで水で洗浄し、次いでオーブン中40℃で一晩乾燥させた。
【0141】
ポジ型平版印刷版原版を次のように調製した:
要素A〜Eのための内層(最下層、BL)を、下のTABLE II(表3)に示されている成分を記載されている溶媒混合物に溶解することによって調製した。得られた溶液を、どの場合も1.35g/m2の乾燥コーティング重量を提供するように、基材Aにコートし、135℃で45分間乾燥させた。
【0142】
【表3】

【0143】
最上層A(外層)配合物は、3.8gの樹脂A、0.96gのRX04、0.03gのエチルバイオレット、及び0.04gのByk(登録商標)307を、DEK/PMA92/8重量%の溶媒混合物の76gに溶解させることによって調製した。
【0144】
画像形成可能要素A〜Fは、この最上層A配合物を、各最下層A〜F上にそれぞれ0.58g/m2の乾燥コーティング重量を提供するようにコートすることによって調製した。
【0145】
ベーク可能性:
該画像形成可能要素の内層のベーク可能性特性を評価するために、各コートした最下層配合物の細片を、オーブン中190℃、220℃、又は240℃で、2分間又は5分間加熱した。ベーキングの完了をチェックするため、削除液243を最高8分までのさまざまな長さの時間適用して湿ったティッシュを用いてふき取った。該コーティングの攻撃の程度を次に評価した。
【0146】
該削除液によるコーティングの除去は、視覚により評価し、0がコーティングの完全な除去を示し、10が完全なベーク可能性を示す0から10までの基準で評定した。その結果は、下のTABLE III(表4)中に表示されている。
【0147】
【表4】

【0148】
TABLE III(表4)の結果は、N-メトキシメチルメタクリルアミドから誘導されたすべてのポリマーが非常に良好なベーク可能性を有したことを示している。
【0149】
耐溶剤性:
該内層配合物の耐溶剤性は、次の腐食性の印刷室溶媒:ブチルセロソルブ(BC)、ジプロピレングリコール-モノメチルエーテル(DPME)、及びジアセトンアルコール(DAA)を含む溶媒/水80:20の混合物の中にBLコート試料を5分間浸漬した後の重量浸漬ロスを測定することによって判定した。それぞれの試料に対する5分後の百分率でのロスが、次のTABLE IV(表5)に記録されている。
【0150】
【表5】

【0151】
これらのデータは、テトラゾール繰り返し単位を有するポリマーを含む画像形成可能要素は、優れた耐溶剤性を示したが、不十分なベーク可能性を有したことを実証している。対照的に、N-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド又はN-アルコキシメチル(アルキル)アクリレートから誘導された十分な繰り返し単位を有しているポリマーを含んでいる画像形成可能要素は、良好なベーク可能性であるが不十分な耐溶剤性を示した。上に示されているデータは、また、テトラゾール繰り返し単位を含む(ポリマーA〜D)画像形成可能要素が、メタクリル酸から誘導された繰り返し単位がN-メトキシメチルメタクリルアミドから誘導された繰り返し単位との組合せで存在する画像形成可能要素より良好な耐溶剤性を示したことを実証している。これらの結果は、耐溶剤性とベーク可能性の最良の相乗効果は、該画像形成可能要素がテトラゾール繰り返し単位とN-メトキシメチルメタクリルアミドから誘導される繰り返し単位の両方を有するポリマーを含む場合にのみ達成されることをはっきりと示している。さまざまなモノマー繰り返し単位を組み合わせることは予測が不可能であるために、この発明に対して記載されたポリマーにより達成された結果は、予想外のものであった。
【0152】
画像形成可能要素A〜F(内層と外層の両方を含む)を、Kodak Quantum 800イメージセッター(39〜102mJ/cm2)を用いて、1Wのステップで、試験パターン6W〜16Wにより画像化した。その画像化した要素は、2000mm/分でのMercuryプロセッサー中で980ディベロッパーにより現像して平版印刷版A〜Fを提供した。その画像化及び現像の結果は、次のTABLE V(表6)に示されている。
【0153】
【表6】

【0154】
透明点及び8×8画素ドットサイズは示し、1×1画素は視覚的に評価した。すべての版が、良好な感度及びかなり良好な解像力を示している。
【0155】
上に提供されたデータは、N-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド又はアルコキシメチル(アルキル)アクリレート、アクリロニトリル、及びテトラゾール部分を有するモノマーから誘導されたコポリマーが、優れた耐溶剤性及びベーク可能性を提供し、(メタ)アクリル酸から誘導されたポリマーよりも更に優れていることを実証している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を含み、その上に配置されている画像形成性層を有する平版印刷版原版であって、前記画像形成性層が、赤外線吸収性化合物、及び、40meq/g KOH以上の酸価を有するポリマーバインダーを含み、前記ポリマーバインダーが、1つ又は複数のN-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド又はアルコキシメチル(アルキル)アクリレートから誘導された繰り返し単位を少なくとも3重量%、ペンダント1H-テトラゾール基を有する繰り返し単位を少なくとも2重量%、及びペンダントシアノ基を有する繰り返し単位を少なくとも10重量%含む平版印刷版原版。
【請求項2】
前記ポリマーバインダーが、次の構造(I):
-(A)w-(B)x-(C)y-(D)z- (I)
(式中、Aは、1つ又は複数のN-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド又はアルコキシメチル(アルキル)アクリレートから誘導された繰り返し単位を表し、Bは、ペンダントシアノ基を有する繰り返し単位を表し、Cは、ペンダント1H-テトラゾール基を有する繰り返し単位を表し、Dは、A、B及びC以外の1つ又は複数の異なる繰り返し単位を表し、
ポリマーバインダーの全重量を基準として、wは2〜80重量%であり、xは10〜85重量%であり、yは5〜80重量%であり、zは10〜85重量%である)によって表される請求項1に記載の印刷版原版。
【請求項3】
ポリマーバインダーの全重量を基準として、wが3〜30重量%であり、xが30〜70重量%であり、yが10〜40重量%であり、zが15〜40重量%である、請求項2に記載の印刷版原版。
【請求項4】
N-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド及びN-アルコキシメチル(アルキル)アクリレートが、独立して、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシ基、及び、メチル又はエチル基であるアルキル基を有する、請求項1から3のいずれかに記載の印刷版原版。
【請求項5】
前記ポリマーバインダーが、前記画像形成性層中に、画像形成性層の総乾燥重量を基準として40〜98重量%の量で存在する請求項1から4のいずれかに記載の印刷版原版。
【請求項6】
前記ポリマーバインダーが、30〜150meq/g KOHの酸価を有する請求項1から5のいずれかに記載の印刷版原版。
【請求項7】
ポジ型であり、前記赤外線吸収性化合物が、赤外線吸収性染料である請求項1から6のいずれかに記載の印刷版原版。
【請求項8】
ポジ型であり、前記基材上に配置された内層及び前記内層上に配置された外層を含み、前記内層は前記赤外線吸収性化合物及び前記ポリマーバインダーを含み、前記外層は前記内層中の前記ポリマーバインダーとは異なるポリマーバインダーを含む請求項1から7のいずれかに記載の印刷版原版。
【請求項9】
A) 請求項1から8のいずれかに記載の前記印刷版原版を画像様露光して露光領域と非露光領域とを生成させる工程、及び
B) 露光後予熱有り又は無しで、画像様露光した印刷版原版を現像して平版印刷版を提供する工程
を含む方法。
【請求項10】
前記印刷版原版がポジ型であり、前記現像工程が前記露光領域を除去する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程Bの後に前記平版印刷版をベークする工程を更に含む請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記ベーキング工程が、紫外線、可視光若しくは赤外線への露光、又は、160〜220℃での30秒〜10分間の加熱、又は、前記加熱と紫外線、可視光若しくは赤外線への露光の両方によって行なわれる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
現像が、6〜12.5のpHを有する現像液を用いて行なわれる請求項9から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
露光後予熱工程が省略される請求項9から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
次の構造(I):
-(A)w-(B)x-(C)y-(D)z- (I)
(式中、Aは、1つ又は複数のN-アルコキシメチル(アルキル)アクリルアミド又はアルコキシメチル(アルキル)アクリレートから誘導される繰り返し単位を表し、Bは、ペンダントシアノ基を有する繰り返し単位を表し、Cは、ペンダント1H-テトラゾール基を有する繰り返し単位を表し、Dは、A、B及びC以外の1つ又は複数の異なる繰り返し単位を表し、
ポリマーバインダーの全重量を基準として、wは2〜80重量%であり、xは10〜85重量%であり、yは5〜80重量%であり、zは10〜85重量%である)によって表されるコポリマー。

【公表番号】特表2013−508787(P2013−508787A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−536838(P2012−536838)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/052215
【国際公開番号】WO2011/056358
【国際公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】