説明

平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置

【課題】直動2軸搬送ユニットにおいて、スライドガイドや送り機構等の複数の直動要素間の平行ずれを一括で吸収し、滑らかな動作を可能とする。
【解決手段】第1の方向に沿って互いに平行に設けられた一対の第1のレールと、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って互いに平行に設けられた一対の第2のレールと、前記一対の第1のレール間の幅方向にのみ弾性変形可能な弾性部材によって前記一対の第1のレール間を連結する第1の連結ユニットと、前記一対の第2のレール間の幅方向にのみ弾性変形可能な弾性部材によって前記一対の第2のレール間を連結する第2の連結ユニットとからなる平行ずれ吸収機構を備え、各方向における直動要素間の平行ずれを一括で吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置に係り、特に、位置決めテーブルを移動させる複数のスライドガイドと送り機構で構成された軸の平行ずれを吸収する平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、位置決めテーブルは、軸方向に送り機構によって移動制御される一対のスライドガイドを所定距離を隔てて平行に配置し、それぞれのスライドガイド間をブリッジ部材で橋渡しした構造を有していた。
【0003】
このように基本的にスライドガイドと送り機構を組み合わせて使用する場合、それらを平行に配置する必要があるが、各要素間に平行ずれがあると、各々の要素が干渉して動かなくなったり、あるいは動きが鈍くなるという問題があった。
【0004】
これに対して、従来は、以下のような手法によって対処していた。
【0005】
例えば、スライドガイドや送り機構等の各直動要素の取り付け面そのものを高精度に加工することによって平行性を確保する。また、各直動要素を基準ガイドに合わせて従動ガイド及び送り軸を平行に取り付けるようにする。また、あるいは平行ずれを吸収するための機構を使用することによって上記問題に対処していた。
【0006】
例えば、特許文献1には、軸方向に移動制御されるスライダを有する一対のリニアモータを所定距離を隔てて平行に配置し、一対のリニアモータの夫々のスライダ間をブリッジ部材で橋渡しした位置決めステージにおいて、ブリッジ部材とスライダの一方との結合部に介在し、ブリッジ部材の橋渡し方向の移動を可能とするスライド機構を備え、平行配置されたリニアガイド間の不平行性をブリッジ部材の橋渡し方向のみの移動を可能としたスライド機構によって吸収するようにした位置決めステージが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−216217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の平行ずれに対する対処法にはいずれも以下のように問題がある。
【0009】
すなわち、各直動要素の取り付け面そのものを高精度加工することにより平行にする方法では、非常に高精度な加工が求められるため、費用も高くなるという問題がある。
【0010】
また、基準ガイドに合わせて従動ガイド及び送り軸を平行に取り付ける方法では、現合作業となり作業工数が増えるという問題がある。
【0011】
さらに、平行ずれ吸収機構を使用する方法では、上記特許文献1に記載のものも含めて従来の平行ずれ吸収機構は1要素(1軸方向)のみの平行ずれに対応するものであり、複数要素(例えば2軸方向)の平行ずれを一括で吸収することはできず、各要素毎に吸収要素を取り付けなければならないという問題がある。
【0012】
本発明はこのような問題に鑑みて成されたものであり、直動2軸搬送ユニットにおいて、スライドガイドや送り機構等の複数の直動要素間の平行ずれを一括で吸収し、滑らかな動作を可能とする平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置は、第1の方向に沿って互いに平行に設けられた一対の第1のレールと、前記第1のレールに摺動可能に取り付けられた複数の第1のスライドブロックと、前記第1のレールと前記第1のスライドブロックを相対的に移動させる第1の送り機構と、を第1の直動要素として有する第1の位置決め手段と、前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って互いに平行に設けられた一対の第2のレールと、前記第2のレールに摺動可能に取り付けられた複数の第2のスライドブロックと、前記第2のレールと前記第2のスライドブロックを相対的に移動させる第2の送り機構と、を第2の直動要素として有する第2の位置決め手段と、前記一対の第1のレール間の幅方向にのみ弾性変形可能な弾性部材によって前記一対の第1のレール間を連結する第1の連結ユニットと、前記一対の第2のレール間の幅方向にのみ弾性変形可能な弾性部材によって前記一対の第2のレール間を連結する第2の連結ユニットと、からなる平行ずれ吸収機構を備え、前記第1の位置決め手段、及び前記第2の位置決め手段の各前記直動要素間の平行ずれを一括で吸収するようにしたことを特徴とする。
【0014】
これにより、直交する2方向に移動して位置決めを行う直動2軸搬送ユニットにおいて、レール及びスライドブロックからなるスライドガイドや送り機構等の複数の直動要素間の平行ずれを一括で吸収し、滑らかな動作を可能とすることができる。
【0015】
また、一つの実施態様として、前記第1の連結ユニット及び前記第2の連結ユニットは、前記各一対のレール間を連結するように橋渡しされた板状の部材であり、前記各一対のレール間において各レール間幅方向に凹凸形状が形成され、前記各レール間幅方向にのみ弾性変形可能な板ばね状になっていることが好ましい。
【0016】
このように各一対のレール間を連結する連結ユニットを板ばねで構成したことにより、その断面係数からレール間幅方向に垂直な方向の変形をなくして、レール間の幅方向のみ弾性変形可能とし、レール間の平行ずれを吸収することが可能となる。
【0017】
また、一つの実施態様として、前記第1の連結ユニット及び前記第2の連結ユニットは、連続した1枚の板状の部材でカタカナのロ字状に形成され前記第1の位置決め手段と前記第2の位置決め手段との間に配置された中間板であることが好ましい。
【0018】
このように、1枚の板状の部材から2つの連結ユニットを形成することにより、構造を簡単化することができる。
【0019】
また、一つの実施態様として、前記第1のレールはその上にテーブルを支持し、前記第1のスライドブロックと前記第2のスライドブロックはその間に前記中間板を挟んでそれぞれ結合され、前記第2のレールはベース上に固定されており、前記中間板に形成された凹凸形状によって形成される空間に前記第1の送り機構及び前記第2の送り機構がそれぞれ配置されたことが好ましい。
【0020】
このように送り機構を板ばねの凹凸形状で形成される空間内に設けたことにより、装置構成をコンパクトにすることができる。
【0021】
また、一つの実施態様として、前記第1の送り機構は前記第1のレールと略同一平面上に配置され、また前記第2の送り機構は前記第2のレールと略同一平面上に配置されたことが好ましい。
【0022】
これにより、送り機構を駆動する際のモーメントがレール等の直動要素に掛からないため、直動要素の駆動を滑らかにすることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、直交する2方向に移動して位置決めを行う直動2軸搬送ユニットにおいて、レール及びスライドブロックからなるスライドガイドや送り機構等の複数の直動要素間の平行ずれを一括で吸収し、滑らかな動作を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置の一実施形態の概略を示す斜視図である。
【図2】位置決め装置をX方向から見た側面図である。
【図3】位置決め装置をY方向から見た側面図である。
【図4】本発明に係る平行ずれ吸収機構の作用を示す説明図であり軸移動前を示す。
【図5】本発明に係る平行ずれ吸収機構の作用を示す説明図であり軸移動後を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明に係る平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置の一実施形態の概略を示す斜視図である。
【0027】
図1に示すように、位置決め装置1は、X軸方向(第1の方向)及びY軸方向(第2の方向)に位置決めされるテーブル10と、このテーブル10をX方向に位置決めするX方向位置決め装置20と、Y方向に位置決めするY方向位置決め装置30と、を備えて構成されている。
【0028】
なお、図1においては、X方向位置決め装置20及びY方向位置決め装置30の構造がよくわかるように、テーブル10を破線で表している。
【0029】
X方向位置決め装置20は、X方向(第1の方向)に延びる案内部材として互いに平行に設けられた一対のレール22、22と、各レール22に対して、それぞれのレール22と係合するよう所定距離隔てて2つずつ取り付けられたスライドブロック24、24と、テーブル10をX軸方向に移動するためのX方向送り機構26とから構成されている。
【0030】
この一対のレール22、22及び各スライドブロック24、24の組み合わせによって(X方向の)スライドガイドが構成される。
【0031】
また、X方向送り機構26は、ねじ軸26aと送りナット26bとを備えている。ねじ軸26aは、その外面にねじ溝を有し、2本のレール22、22の間にこれらのレール22、22と平行に、回動自在に配置されている。また、ねじ軸26aの両端には、支持部材28、28が取り付けられている。
【0032】
Y方向位置決め装置30は、上記X方向に対し垂直に交わるY方向(第2の方向)に延びる案内部材として互いに平行に設けられた一対のレール32、32と、各レール32に対して、それぞれのレール32と係合するよう所定距離隔てて2つずつ取り付けられたスライドブロック34、34と、テーブル10をY軸方向に移動するためのY方向送り機構36とから構成されている。
【0033】
この一対のレール32、32及び各スライドブロック34、34の組み合わせによって(Y方向の)スライドガイドが構成される。
【0034】
また、Y方向送り機構36は、ねじ軸36aと送りナット36bとを備えている。ねじ軸36aは、その外面にねじ溝を有し、2本のレール32、32の間にこれらのレール32、32と平行に、回動自在に配置されている。また、ねじ軸36aの両端には、支持部材38、38が取り付けられている。ここでレール32、32及び支持部材38、38の下面は図示を省略した固定部材であるベースに固定されている。
【0035】
また、図1に示すように、X方向位置決め装置20は、Y方向位置決め装置30の上側に互いに直交するように配置され、X方向位置決め装置20とY方向位置決め装置30とからなる2軸ユニットは互いに反転した2段構造を有し、以下説明するようにスライドブロック24、24とスライドブロック34、34との間に中間板40を挟んで連結されている。
【0036】
すなわち、X方向位置決め装置20とY方向位置決め装置30との間には、中間板40が配置され、この中間板40は、X方向の一対のレール22、22及びY方向の一対のレール32、32の間を橋渡しするように、上(Z方向)から見た場合にカタカナのロ字状をした金属製の板材であり、その4つの角部はそれぞれX方向のスライドブロック24とY方向のスライドブロック34で上下から挟まれ、それぞれに固定されている。
【0037】
また、中間板40の、レール22、22間を連結する第1の連結部(第1の連結ユニット)40a、及びレール32、32間を連結する第2の連結部(第2の連結ユニット)40bには、図に示すように凹凸形状に形成され板ばねが形成されている。中間板40は、この板ばねの曲げ板金構造により、それぞれレール22、22間の方向、及びレール32、32間の方向のそれぞれ一方向にのみ弾性変形が可能とされる。
【0038】
また、図に示すように、中間板40の各レール間を連結する第1の連結部40a、及び第2の連結部40bにそれぞれ形成された凹凸形状によって形成された空間部分に、X方向送り機構26及びY方向送り機構36がそれぞれ配置されるようになっている。そしてX方向送り機構26の送りナット26b及びY方向送り機構36の送りナット36bが、それぞれこの凹凸部において中間板40に結合されている。
【0039】
テーブル10は、レール22、22及びX方向送り機構26のねじ軸26aの支持部材28、28の上面に固定されている。従って、X方向送り機構26を駆動すると、送りナット26bは中間板40に固定されているので、ねじ軸26aが軸方向(X方向)に移動する。その結果、ねじ軸26aの両端の支持部材28に固定されたテーブル10がX方向に移動する。このとき、テーブル10にその上面が固定されたレール22もスライドブロック24の上を摺動することによってテーブル10がスムーズにX方向に移動するようになっている。
【0040】
また、Y方向送り機構36を駆動すると、送りナット36bは固定部材であるベース(図示省略)に固定されているので、送りナット36bがねじ軸36aに対して相対移動し、これにより送りナット36bに固定された中間板40がねじ軸36a方向(Y方向)に移動する。このとき、中間板40の角部に固定されたスライドブロック34がレール32上をY方向に移動することで、中間板40がレール32に沿ってスムーズにY方向に移動する。これにより、中間板40の上に乗ったレール22及びX方向送り機構26、さらにその上に載置されたテーブル10がY方向に移動することとなる。
【0041】
図2に、この位置決め装置1をX方向から見た側面図を示す。
【0042】
図2に示すように、2段構造のX−Y位置決め機構の下段側のY方向位置決め装置30のレール32は、固定部材であるベース50上に固定されている。レール32上には、レール32上を摺動するスライドブロック34が所定間隔をおいて配置されている。Y方向位置決め装置30のスライドブロック34の上にはX方向位置決め装置20のスライドブロック24が配置され、その2つのスライドブロック24、34の間に中間板40が挟まれ、これら3つの部材は互いに接合されている。
【0043】
上段のX方向位置決め装置20のスライドブロック24に対して、Y方向位置決め装置30のレール32とは直交する方向に延びるレール22が摺動可能に嵌合している。そしてこのX方向位置決め装置20のレール22の上にテーブル10が固定されており、レール22と共に移動するようになっている。
【0044】
また、X方向位置決め装置20とY方向位置決め装置30の間に配置された中間板40は、一対のレール22、22に対して配置されたスライドブロック24、24間を連結するもので、この2つのスライドブロック24、24間(一対のレール22、22間)の連結部40aは、図に示すように凹凸形状に形成されている。この凹凸形状は、この連結部40aが、対向するレール22、22間の幅方向に対してのみ弾性を有するような板ばねとなるように構成されている。
【0045】
すなわち、中間板40の一対のレール22、22間の連結部40aは、レールの平行精度が悪い場合であっても、曲げられた板ばねの凹凸が変形して、対向するスライドブロック24同士の間隔の変化を吸収する。一方、中間板40は、曲げられた方向とは垂直の方向に対しては、断面係数の増加により剛性が増すため、例えば、スライドブロック同士がレールを捻る方向に変形し、結果としてスライドブロックの摺動抵抗が大きくなることを抑制する効果を有する。
【0046】
この一方向(一対のレール22、22間の幅方向)にのみ弾性を有するように中間板40を板ばねとして形成したことにより、仮に一対のレール22、22が平行でなく、平行からずれていたとしても、このレール22、22間の方向の弾性によってその平行ずれを吸収することが可能となる。
【0047】
また、レールにより対向するスライドブロック同士を係合する中間板として、単純に弾性を有し伸縮性を有する弾性体ではなく、板ばねを凹凸状に曲げることによって形成された中間板40を使用することにより、中間板40の上記連結部40aに形成された凹凸形状により、その中間部分に空間が形成される。その形成された空間にX方向送り機構26が配置される。このようにすることで、図に示すように、このX方向送り機構26は、X方向のレール22、22が配置された位置と略同一平面上に配置することができる。
【0048】
このように、X方向送り機構26を、このX方向送り機構26によって駆動されるレール22、22と略同一平面上に配置したことにより、複数のスライドブロックから受ける摺動抵抗に対し、その摺動抵抗に対する駆動部を略同一面上に配置することになり、駆動時にレール22、22にモーメントが掛かることがなく、移動に際してのピッチングの発生を抑制し、レール22、22及びその上に載置されたテーブル10の移動(X方向の移動)がスムーズとなる。
【0049】
次に、図3に、この位置決め装置1をY方向から見た側面図を示す。
【0050】
図3に示すように、Y方向位置決め装置30のレール32は、固定部材であるベース50上に固定されている。レール32上には、レール32上を摺動するスライドブロック34が配置されている。Y方向位置決め装置30のスライドブロック34の上にはX方向位置決め装置20のスライドブロック24が配置され、その2つのスライドブロック24、34の間に中間板40が挟まれ、これら3つの部材は互いに接合されている。
【0051】
上段のX方向位置決め装置20のスライドブロック24に対して、Y方向位置決め装置30のレール32とは直交する方向に延びるレール22が摺動可能に嵌合している。そしてこのX方向位置決め装置20のレール22の上にテーブル10が固定されており、レール22と共に移動するようになっている。
【0052】
また、X方向位置決め装置20とY方向位置決め装置30の間に配置された中間板40は、一対のレール32、32に対して配置されたスライドブロック34、34間を連結するもので、この2つのスライドブロック34、34間(一対のレール32、32間)の連結部40bは、図に示すように凹凸形状に形成されている。この凹凸形状は、この連結部40bが、対向するレール32、32間の幅方向に対してのみ弾性を有するような板ばねとなるように構成されている。
【0053】
すなわち、中間板40の一対のレール32、32間の連結部40bは、図の左右方向に対しては弾性を有し、左右にのみ伸縮可能であるとともに、図の紙面に対して垂直な方向(図の裏面と表面を結ぶ方向)には、中間板40(の上記連結部分)の断面係数が大きく、曲げにくいという性質を有している。
【0054】
この一方向(一対のレール32、32間の幅方向)にのみ弾性を有するように中間板40を板ばねとして形成したことにより、仮に一対のレール32、32が平行でなく、平行からずれていたとしても、このレール32、32間の方向の弾性によってその平行ずれを吸収することが可能となる。
【0055】
また、中間板40の上記連結部40bに形成された凹凸形状によって形成された空間にY方向送り機構36が配置されている。
【0056】
図に示すように、このY方向送り機構36は、Y方向のレール32、32が配置された位置と略同一平面上に配置されている。このように、Y方向送り機構36を、このY方向送り機構36によってレール32、32上を駆動されるスライドブロック34、34と略同一平面上に配置したことにより、駆動時にスライドブロック34、34(レール32、32)にモーメントが掛かることがなく、スライドブロック34、34及びその上に載置されたX方向位置決め装置20及びさらにその上のテーブル10の移動(Y方向の移動)がスムーズとなる。
【0057】
次に、図4及び図5を用いて、中間板40に形成された一方向にのみ弾性を有する板ばねによる平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置1の作用を説明する。
【0058】
なお、図4及び図5では、平行ずれ吸収機構の動作をわかり易くするため、テーブル10は省略し、中間板40、X方向のレール22、22とその上のスライドブロック24、24、及びY方向のレール32、32とその上のスライドブロック34、34のみを下側から見た状態で表示している。
【0059】
ここでは、Y方向のレール32、32の平行性が図の上に行く程レール間の間隔が広くなるようにずれているものとする。
【0060】
ここで、図4に示すように、Y方向送り機構36とレール32、32とが平行に配置されていない場合、軸移動時に4個のスライドブロック34とY方向送り機構36の軸方向と垂直な方向の相対距離が変化するが、中間板40の連結部40bに形成された板ばねの弾性変形により、この変化が吸収される。また同時に中間板40の変形を、X方向のスライドブロック24が移動することにより吸収する。X及びY方向の軸は互いにこの関係にあり、全ての平行ずれを吸収することができる。この作用を図4及び図5が示している。
【0061】
すなわち、図4は軸が移動する前であり、図5は軸が移動した後を表している。
【0062】
図4に示すように、Y方向のレール32、32は、図の上に行く程その間隔が広くなるように平行ずれを起こしている。このとき、Y方向送り機構36を駆動してY方向のスライドブロック34、34及び中間板40を図の上方向に移動させる場合を考える。
【0063】
図5に、その移動後の状態を示す。図5に示すように、図の上方向にY方向のレール32、32に沿ってスライドブロック34、34を移動させて行くと、スライドブロック34、34と結合している中間板40も図の上方向に移動する。
【0064】
図の上に行くほどY方向のレール32、32はその間隔が広くなって行くが、レール32、32間を連結する中間板40の連結部40bに形成された凹凸形状による板ばねがレール32、32の幅方向に伸びてレール32、32間の平行ずれを吸収するので、中間板40はY方向のレール32、32に沿ってスムーズに移動することができる。その結果、その上に載置されたX方向位置決め装置20及びテーブル10(ここでは図示省略)も同時にY方向にスムーズに移動させることが可能となる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態においては、一対の平行なレール間を連結する中間板の連結部に、レール間の方向のみに弾性を有する板ばねを形成し、上記一対のレール間に平行ずれがあったとしても、この一方向にのみ弾性を有する板ばねの弾性変形によってその平行ずれを吸収するようにしている。またさらに、一対の平行なレールを2組み互いに直交するように配置した2軸機構において、中間板をロ字状に形成し、直交する2組みの平行レールのそれぞれに対して、レール間の連結部に板ばねによる上記のような平行ずれ吸収機構を設けることにより、直動2軸搬送ユニットにおいて、スライドガイドや送り機構等の複数の直動要素間の平行ずれを一括で吸収し、滑らかな動作を可能とすることができる。
【0066】
なお、一方向にのみ弾性変形可能な弾性体として上記例では板ばねを示したが、このような一方向にのみ弾性変形可能な弾性体は板ばねに限定されるものではない。
【0067】
以上、本発明の平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0068】
1…位置決め装置、10…テーブル、20…X方向位置決め装置、22…(X方向の)レール、24…(X方向の)スライドブロック、26…X方向送り機構、26a…ねじ軸、26b…送りナット、28…支持部材、30…Y方向位置決め装置、32…(Y方向の)レール、34…(Y方向の)スライドブロック、36…Y方向送り機構、36a…ねじ軸、36b…送りナット、38…支持部材、40…中間板、40a、40b…(中間板の)連結部、50…ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿って互いに平行に設けられた一対の第1のレールと、
前記第1のレールに摺動可能に取り付けられた複数の第1のスライドブロックと、
前記第1のレールと前記第1のスライドブロックを相対的に移動させる第1の送り機構と、を第1の直動要素として有する第1の位置決め手段と、
前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って互いに平行に設けられた一対の第2のレールと、
前記第2のレールに摺動可能に取り付けられた複数の第2のスライドブロックと、
前記第2のレールと前記第2のスライドブロックを相対的に移動させる第2の送り機構と、を第2の直動要素として有する第2の位置決め手段と、
前記一対の第1のレール間の幅方向にのみ弾性変形可能な弾性部材によって前記一対の第1のレール間を連結する第1の連結ユニットと、前記一対の第2のレール間の幅方向にのみ弾性変形可能な弾性部材によって前記一対の第2のレール間を連結する第2の連結ユニットと、からなる平行ずれ吸収機構を備え、
前記第1の位置決め手段、及び前記第2の位置決め手段の各前記直動要素間の平行ずれを一括で吸収するようにしたことを特徴とする平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置。
【請求項2】
前記第1の連結ユニット及び前記第2の連結ユニットは、前記各一対のレール間を連結するように橋渡しされた板状の部材であり、前記各一対のレール間において各レール間幅方向に凹凸形状が形成され、前記各レール間幅方向にのみ弾性変形可能な板ばね状になっていることを特徴とする請求項1に記載の平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置。
【請求項3】
前記第1の連結ユニット及び前記第2の連結ユニットは、連続した1枚の板状の部材でカタカナのロ字状に形成され前記第1の位置決め手段と前記第2の位置決め手段との間に配置された中間板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置。
【請求項4】
前記第1のレールはその上にテーブルを支持し、前記第1のスライドブロックと前記第2のスライドブロックはその間に前記中間板を挟んでそれぞれ結合され、前記第2のレールはベース上に固定されており、前記中間板に形成された凹凸形状によって形成される空間に前記第1の送り機構及び前記第2の送り機構がそれぞれ配置されたことを特徴とする請求項3に記載の平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置。
【請求項5】
前記第1の送り機構は前記第1のレールと略同一平面上に配置され、また前記第2の送り機構は前記第2のレールと略同一平面上に配置されたことを特徴とする請求項4に記載の平行ずれ吸収機構を備えた位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−15377(P2013−15377A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147620(P2011−147620)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000151494)株式会社東京精密 (592)
【Fターム(参考)】