説明

幹細胞の刺激のための医薬組成物

本発明は、少なくとも2種の幹細胞刺激剤と少なくとも1種の医薬として許容し得る補形薬とを含む、幹細胞の刺激のためのヒトまたは動物用医薬組成物(B)に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、組織および/または器官を標的とするのに好適な医薬組成物に関する。特に、本発明は、心臓組織再生を必要とする個体の心臓に、幹細胞刺激剤を投与することによる心臓疾患の治療に関する。特に、本発明は、心臓幹細胞からの心臓組織の再生をインビボで促進するための、そのような幹細胞刺激剤の使用を開示する。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞(MI)は、心筋細胞の喪失、瘢痕形成、心室リモデリング、そして最終的には心不全を引き起こす。薬理学的介入、カテーテルに基づく介入、および外科的介入は、死んだ心筋を再生させることはできないものの、冠動脈疾患(CAD)を有する患者の生存を改善してきた。結果的に、死亡率の低下に伴って、虚血性心不全の罹患率が増加している。近年、幹細胞ベースの治療が、心臓修復のための新たな方法候補として浮上している(Dimmeler S. et al., J Clin Invest 2005,11,572−583(非特許文献1))。損傷した心筋を修復するための最適な細胞供給源は、精力的な研究の主題になっている。心臓再生用の幹細胞の重要な特徴としては、自己再生、クローン形成能、ならびに心筋細胞、内皮細胞および血管平滑筋細胞への分化能力が含まれる。
【0003】
過去10年にわたって、研究者らは、系統陰性(lin neg)c−kit陽性(c−kit pos)BM幹細胞(Orlic et al., Nature 2001;410:701−705(非特許文献2); Kajstura et al., Circ.Res.2005;96:127−137(非特許文献3); Rota et al., Proc Natl Acad Sci USA 2007;104:17783−17788(非特許文献4))、BM由来間質幹細胞(MSC)(Min et al., Ann Thor Surg 2002;74:1568−1575(非特許文献5); Amado et al., Proc Natl Acad Sci USA 2005;102:11474−11479(非特許文献6))および内皮前駆細胞(EPC)(Cho et al., J Exp Med 2007;204:3257−3269(非特許文献7); Schuh et al., Basic Res Cardiol 2008;103:60−77(非特許文献8))などの、様々な骨髄(BM)由来幹/前駆細胞を動物研究での心臓修復療法に適用してきた。これらの研究により、心筋細胞および血管細胞の顕著な特徴を有する細胞へのBM由来幹/前駆細胞の分化が示されたが、他の研究により、移植されたBM幹細胞が、損傷を受けた心臓において心臓の表現型をすぐには獲得しないことが示唆された(Balsam et al., Nature 2004;428:668−673(非特許文献9); Murry et al., Nature 2004;428:664−668(非特許文献10); Nygren et al., Nat Med 2004;10:494−501(非特許文献11))。
【0004】
したがって、その移植後にBM由来幹/前駆細胞の分化を増強することは、研究者らがこれらの細胞を心臓再生療法で効果的に使用する上で大きな課題になっている。BM由来幹/前駆細胞とは別に、他の幹細胞源を心臓再生療法に用いることができる。特に、常在心臓幹細胞(CSC)が心臓それ自体の中で発見されている(Beltrami et al., Cell 2003;114:763−776(非特許文献12); Uranek et al., Proc Natl Sci USA 2006;103:9226−9231(非特許文献13))。CSCは、心臓内に既に存在しており、心臓組織を発生させるようにプログラム化されているので、心臓組織の大量喪失が起こったときに、心臓再生療法で利用するに相応しい源である。CSCは独特の特徴を有するため、常在CSCを同定したことは大きな興奮を生み、また、心臓それ自体に由来しているため、心臓組織を再構築するように元来プログラム化されている細胞を用いた心筋再生に対する、強い期待を喚起した。
【0005】
心筋修復は、新しい筋細胞と冠状血管の形成を必要とし、既に完全に筋細胞系統にコミットした細胞によっては達成することができない。梗塞の存在下では、筋細胞のみの発生によって、運動不能領域の収縮機能を回復させることはできない。というのは、筋細胞は、血管形成の非存在下では、増殖することも生存することもないからである。細動脈は血液供給に極めて重要であり、酸素送達は毛細管網目構造によって制御されている。同様に、新生脈管形成だけでは、死んだ心筋を回復させることも、心室壁の梗塞部分に収縮活性を再導入することもない。動物の梗塞した心筋に局所注入されたCSCが壊死組織を修復し、心室機能を向上させたという観察結果(Beltrami et al., Cell 2003;114:763−776(非特許文献12); Bearzi et al., Proc Natl Sci USA 2007;104:14068−14073(非特許文献14))は、CSCが、筋細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、および線維芽細胞の通常の再生に関与するという新しいパラダイムの基礎を築いた。患者の将来の治療法を開発する試みにおいて、この分野を個体レベルでCSC療法を臨床的に定義する方向に移す、新しい仮説が提起されなければならない。
【0006】
こうして、臨床実用化を目指して発見されたCSCを扱おうと様々な試みがなされている。最初のアプローチは、CSCの単離、培養、クローニングおよび拡大である。そのような細胞は、機能的な心筋を再生させようとして、梗塞した心臓に注射して戻されることだろう。しかしながら、CSC細胞集団の希少性は、細胞培養条件の厳しさや収率の悪さと相まって、このアプローチを使用する上での限定要因となっている。当技術分野で記載されている他の代替法は、外因性の薬剤を用いた内在性CSCの動員および分化である。しかしながら、このアプローチの有効性に関する明白な証拠は記載されておらず、CSCをインビボで効果的に動員し分化させる能力に対する疑念を投げかけている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Dimmeler S. et al., J Clin Invest 2005,11,572−583
【非特許文献2】Orlic et al., Nature 2001;410:701−705
【非特許文献3】Kajstura et al., Circ.Res.2005;96:127−137
【非特許文献4】Rota et al., Proc Natl Acad Sci USA 2007;104:17783−17788
【非特許文献5】Min et al., Ann Thor Surg 2002;74:1568−1575
【非特許文献6】Amado et al., Proc Natl Acad Sci USA 2005;102:11474−11479
【非特許文献7】Cho et al., J Exp Med 2007;204:3257−3269
【非特許文献8】Schuh et al., Basic Res Cardiol 2008;103:60−77
【非特許文献9】Balsam et al., Nature 2004;428:668−673
【非特許文献10】Murry et al., Nature 2004;428:664−668
【非特許文献11】Nygren et al., Nat Med 2004;10:494−501
【非特許文献12】Beltrami et al., Cell 2003;114:763−776
【非特許文献13】Uranek et al., Proc Natl Sci USA 2006;103:9226−9231
【非特許文献14】Bearzi et al., Proc Natl Sci USA 2007;104:14068−14073
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、常在CSCをインビボで刺激するための、および一態様では、特に、それらから心筋細胞の顕著な特徴を有する満足の行く程度に機能的な多数の細胞を得るために、それらを心臓系統にコミットさせるための、全く新しいアプローチを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも2種の幹細胞刺激剤と少なくとも1種の医薬として許容し得る補形薬とを含む、幹細胞の刺激のためのヒトまたは動物用医薬組成物(B)に関するものである。
【0010】
該少なくとも2種の幹細胞刺激剤は、TGFβ−1、BMP−4、FGF−2、IGF−1、アクチビン−A、α−トロンビン、カルジオトロフィン1、カルジオゲノールCおよびそれらの混合物からなる群から選択することができる。特に、該少なくとも2種の幹細胞刺激剤は、TGFβ−1、BMP−4、FGF−2、IGF−1、アクチビン−A、カルジオトロフィン1、カルジオゲノールCおよびそれらの混合物からなる群の中で選択することができる。
【0011】
本発明はまた、本発明による医薬組成物(B)と少なくとも1種の医薬活性物質を含む組成物(A)とを含む医薬カクテルに関するものである。本発明の組成物またはカクテルは、薬剤誘導性幹細胞の刺激を提供することを可能にする。これは、常在心臓幹細胞を、組成物またはカクテルと接触させた後に刺激して分化し始めさせることを意味する。したがって、刺激された幹細胞は、心臓系統へとコミットすることができ、かつ心筋細胞になることができる。
【0012】
本文書の枠組みの中で、反対のことが指示されない限り、引用符に挟まれた下記の用語は、以下の定義を有する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「刺激」または「刺激する」という用語は、幹細胞の動員、増殖、生存および/または分化を意味する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「心臓組織」および「心筋」という用語は、筋細胞、血管および線維芽細胞を意味する。
【0015】
「心臓幹細胞」(CSC)、「心臓前駆細胞」、「常在心臓幹細胞」または「常在心臓前駆細胞」は、心筋に存在する幹細胞を指す。これらは、自己再生性、クローン形成性、多能性であり、かつ心筋を発生させることができる。
【0016】
「幹細胞刺激剤」は、再生すべき部位に動員され、増殖し、かつ心臓組織に分化する幹細胞の能力を高める薬剤である。
【0017】
「幹細胞刺激剤組成物」は、少なくとも2種の幹細胞刺激剤を含む組成物である。
【0018】
「刺激剤誘導性幹細胞」は、上で定義したような幹細胞刺激剤組成物と接触した幹細胞であって、さらに分化し始める、すなわち、心臓系統にコミットする幹細胞である。
【0019】
「分化」は、あまり特殊化していない細胞がより特殊化した細胞になる過程である。
【0020】
特に定義しない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は全て、本発明が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載された方法および材料と同様または同等の方法および材料を用いて、本発明を実施することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。本明細書で記載された刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が、本発明の用語の意味を支配することになる。さらに、材料、方法、および実施例は、単なる例示であって、限定を意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましい実施形態では、医薬組成物(B)は、TGFβ−1、BMP−4、FGF−2、IGF−1、アクチビン−A、カルジオトロフィン1、カルジオゲノールCおよびそれらの混合物からなる群の中で選択される少なくとも5種の幹細胞刺激剤を含むことができる。
【0022】
特に、医薬組成物(B)は、TGFβ−1、BMP−4、FGF−2、IGF−1、アクチビン−A、カルジオトロフィン1、およびカルジオゲノールCを含むことができる。
【0023】
さらに、該医薬組成物(B)は、α−トロンビンをさらに任意に含むことができる。該医薬組成物(B)は、ヒルジン、ビバリルジン、レピルジン、デシルジン、アルガトロバン、メラガトラン、キシメラガトラン、ダビガトラン、およびヘパリンなどのトロンビン阻害剤をさらに含むことができる。α−トロンビンは凝固剤である。あるいは、場合によって、該医薬組成物(B)は、α−トロンビンを任意に含まないものとすることができる。
【0024】
本発明の医薬組成物(B)は、増殖因子、サイトカイン、ホルモンおよびそれらの組合せからなる群の中で選択される少なくとも1種の物質をさらに含むことができる。該少なくとも1種の物質は、
−骨形成タンパク質(BMP)、例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−5、BMP−6;
−上皮増殖因子(EGF);
−エリスロポエチン(EPO);
−線維芽細胞増殖因子(FGF)、例えば、FGF−1、FGF−4、FGF−5、FGF−12、FGF−13、FGF−15、FGF−20;
−顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);
−顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF);
−増殖分化因子−9(GDF−9);
−肝細胞増殖因子(HGF);
−インスリン様増殖因子(IGF)、例えば、IGF−2;
−ミオスタチン(GDF−8);
−ニューロトロフィン、例えば、NT−3、NT−4、NT−1および神経増殖因子(NGF);
−血小板由来増殖因子(PDGF)、例えば、PDGF−β、PDGF−AA、PDGF−BB;
−トロンボポエチン(TPO);
−TGF−α(形質転換増殖因子α)
−形質転換増殖因子β(TGF−β)、例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3;
−VEGF(血管内皮増殖因子)、例えば、VEGF−A、VEGF−C;
−TNF−α、白血病阻害因子(LIF)、インターロイキン6(IL−6)、レチノイン酸、C SDF−1(ストロマ細胞由来因子−1)、BDNF(脳由来神経栄養因子)、ペリオスチン、アンジオテンシンII、Flt3リガンド、グリア由来神経栄養因子、ヘパリン、インスリン様増殖因子結合タンパク質−3、インスリン様増殖因子結合タンパク質−5、インターロイキン−3、インターロイキン−8、ミッドカイン、プロゲステロン、プトレシン、幹細胞因子、TGF−α、WntI、Wnt3a、Wnt5a、カスパーゼ−4、ケモカインリガンド1、ケモカインリガンド2、ケモカインリガンド5、ケモカインリガンド7、ケモカインリガンド11、ケモカインリガンド20、ハプトグロビン、レクチン、コレステロール25−ヒドロキシラーゼ、シンタキシン−8、シンタキシン−11、セルロプラスミン、補体成分1、補体成分3、インテグリンα6、リソソーム酸性リパーゼ1、β2ミクログロブリン、ユビキチン、マクロファージ遊走阻止因子、コフィリン、シクロフィリンA、FKBP12、NDPK、プロフィリン1、シスタチンC、カルサイクリン、スタニオカルシン−1、PGE−2、mpCCL2、IDO、iNOS、HLA−G5、M−CSF、アンジオポエチン、PIGF、MCP−1、細胞外マトリックス分子、CCL2(MCP−1)、CCL3(MIP−1α)、CCL4(MIP−1β)、CCL5(RANTES)、CCL7(MCP−3)、CCL20(MIP−3α)、CCL26(エオタキシン−3)、CX3CL1(フラクタルカイン)、CXCL5(ENA−78)、CXCL11(i−TAC)、CXCL1(GROα)、CXCL2(GROβ)、CXCL8(IL−8)、CCL10(IP−10)およびそれらの組合せ
からなる群の中で選択される少なくとも1種の物質を含むことができる。
【0025】
刺激すべき幹細胞は、常在心臓幹細胞(CSC)または循環幹細胞または注入された幹細胞であることができる。
【0026】
該医薬組成物は一次粒子を含むことができる。該一次粒子は、アルギネート、キトサン、デキストラン、セルロース、リポソーム、またはPLGA、ポリカプロラクトンもしくはコポリエステルなどのポリエステルのマイクロスフェアもしくはナノスフェアからなる群から選択することができる。好ましくは、該一次粒子は、該医薬組成物(B)の該少なくとも2種の幹細胞刺激剤を封入することができる。したがって、該一次粒子は、医薬組成物(B)中に含まれる幹細胞刺激剤を封入することができる。「一次」という用語は、医薬組成物を上で定義したような第1のタイプの粒子に封入し得ることを意味する。
【0027】
好ましくは、該医薬組成物(B)を、少なくとも1種の医薬活性物質を含む組成物(A)と組み合わせて、医薬カクテルを形成させることができる。一実施形態では、該少なくとも1種の医薬活性物質は、インスリン様増殖因子1(IGF−1)、肝細胞増殖因子(HGF)および/またはNK1、1K1、1K2、HP11、もしくはHP21などのそれらの変異体、ならびにそれらの組合せからなる群の中で選択することができる。別の実施形態では、該組成物(A)は、SCF−1をさらに含むことができる。該組成物(A)は、アルギネート、キトサン、デキストラン、セルロース、リポソーム、またはPLGA、ポリカプロラクトンもしくはコポリエステルなどのポリエステルのマイクロスフェアもしくはナノスフェアからなる群から選択される二次粒子をさらに含むことができる。該二次粒子は、該少なくとも1種の医薬活性物質を封入することができる。「二次」という用語は、組成物(A)を上で定義したような第2のタイプの粒子に封入し得ることを意味する。さらに、該二次粒子は、一次粒子に封入された物質の送達の前に、その中に封入された物質の送達を可能にするように構成することができる。
【0028】
該医薬カクテルは、該組成物(B)の試料と該組成物(A)の試料とを含むことができる。あるいは、組成物(A)と(B)の両方を単一試料中で一緒に混合することができる。しかしながら、一緒に混合したとき、組成物(A)および(B)は、別々に治療すべき領域に、またはその領域の周辺に投与または送達される可能性がある。
【0029】
本発明の該医薬組成物または該医薬カクテルは、医薬品として用いることができる。あるいは、本発明の該医薬組成物または該医薬カクテルは、心臓組織の再生に用いることができる。あるいは、本発明の該医薬組成物または該医薬カクテルは、心不全、心虚血または心筋梗塞をはじめとする心臓疾患の治療に用いることができる。
【0030】
本発明の別の態様では、ヒトまたは動物のCSCに対してインビボまたはエクスビボで作用するプロセスを提供する。該プロセスは、本発明の該医薬組成物(B)または該医薬カクテルを該ヒトまたは動物に投与する工程を含む。
【0031】
医薬組成物(B)の投与は、少なくとも1種の医薬活性物質を含む組成物(A)の予備投与の後に続くことができる。
【0032】
投与は、組成物A、Bの連続注射、またはそのカクテルの連続注射によって実施することができる。
【0033】
さらに、本発明の該医薬組成物または医薬カクテルの2回の連続投与の間の持続時間は、1時間〜180日であることができる。各々の投与は繰り返し可能である。あるいは、該組成物(A)の各々の投与またはいくつかの投与を任意とすることができる。
【0034】
したがって、該医薬組成物(B)または医薬カクテルは、非経口投与することができる。さらに、該医薬組成物(B)または医薬カクテルは、ヒトまたは動物の循環系に投与することができる。該医薬組成物(B)または医薬カクテルは、静脈および/または動脈に投与することができる。
【0035】
本発明の医薬組成物(B)または医薬カクテルは、心臓組織に投与することができる。好ましい実施形態では、投与は、該医薬組成物(B)については冠動脈内であり、また、組成物(A)の該予備投与については静脈内であることができる。
【0036】
本明細書で使用されるTGFβは、TGFβ−1、TGF−β2またはTGF−β3を意味し、ヒトTGFβなどの、TGFβ活性を有する任意のポリペプチドであることができる。例えば、TGFβは、組換えTGFβであることができる。一実施形態では、TGFβは、TGFβ−1であることができる。任意の好適な濃度のTGFβを用いることができる。例えば、1ml当たり0.1〜100ngのTGF−β(例えば、1ml当たり約33ngのTGFβ1)を用いることができる。
【0037】
BMPは、ヒトBMPなどの、BMP活性を有する任意のポリペプチドであることができる。例えば、BMPは、組換えBMPであることができる。一実施形態では、BMPは、BMP4であることができる。任意の濃度のBMPを用いることができる。例えば、1ml当たり0.1〜200ngのBMP(例えば、1ml当たり約65ngのBMP4)を用いることができる。
【0038】
FGF−2は、ヒトFGF−2などの、FGF−2活性を有する任意のポリペプチドであることができる。例えば、FGF−2は、組換えFGF−2であることができる。任意の濃度のFGF−2を用いることができる。例えば、1ml当たり0.1〜200ngのFGF−2(例えば、1ml当たり約65ngのFGF−2)を用いることができる。
【0039】
IGF−1は、ヒトIGF−1などの、IGF−1活性を有する任意のポリペプチドであることができる。例えば、IGF−1は、組換えIGF−1であることができる。任意の濃度のIGF−1を用いることができる。例えば、1ml当たり1〜1000ngのIGF−1(例えば、1ml当たり約650ngのIGF−1)を用いることができる。
【0040】
アクチビン−Aは、ヒトアクチビン−Aなどの、アクチビン−A活性を有する任意のポリペプチドであることができる。例えば、アクチビン−Aは、組換えアクチビン−Aであることができる。任意の濃度のアクチビン−Aを用いることができる。例えば、1ml当たり0.1〜500ngのアクチビン−A(例えば、1ml当たり約130ngのアクチビン−A)を用いることができる。
【0041】
α−トロンビンは、ヒトα−トロンビンなどの、α−トロンビン活性を有する任意のポリペプチドであることができる。例えば、α−トロンビンは、組換えα−トロンビンまたは合成α−トロンビンであることができる。任意の濃度のα−トロンビンを用いることができる。例えば、1ml当たり0.05〜100ユニットのα−トロンビンを用いることができる。
【0042】
カルジオトロフィンは、ヒトカルジオトロフィン−1などの、カルジオトロフィン活性を有する任意のポリペプチドであることができる。例えば、カルジオトロフィンは、組換えカルジオトロフィンであることができる。任意の濃度のカルジオトロフィンを用いることができる。例えば、1ml当たり0.05〜100ngのカルジオトロフィン(例えば、1ml当たり約13ngのカルジオトロフィン−1)を用いることができる。
【0043】
IL−6は、ヒトIL−6などの、IL−6活性を有する任意のポリペプチドであることができる。例えば、IL−6は、組換えIL−6であることができる。任意の濃度のIL−6を用いることができる。例えば、1ml当たり10〜400ngのIL−6を用いることができる。
【0044】
任意の濃度のカルジオゲノールCまたは医薬として許容し得るその塩(例えば、カルジオゲノールC塩酸塩)を用いることができる。例えば、1ml当たり1〜1000ngのカルジオゲノールC(例えば、1ml当たり約350ngのカルジオゲノールC)を用いることができる。
【0045】
レチノイン酸は、合成レチノイン酸、天然レチノイン酸、ビタミンA代謝物、ビタミンAの天然誘導体、またはビタミンAの合成誘導体などの、レチノイン酸活性を有する任意の分子であることができる。任意の濃度のレチノイン酸を用いることができる。例えば、1×10−7〜4×10−6μΜのレチノイン酸を用いることができる。
【0046】
場合によっては、TGFβ−1(例えば、2.5ng/ml)、BMP4(例えば、5ng/ml)、FGF−2(例えば、5ng/ml)、IGF−1(例えば、50ng/ml)、アクチビン−A(例えば、10ng/ml)、カルジオトロフィン(例えば、1ng/ml)、α−トロンビン(例えば、1ユニット/ml)、およびカルジオゲノールC(例えば、100nM)を補充した血清含有培地または無血清培地を用いることができる。場合によっては、培地(例えば、血清含有培地または無血清培地)は、血小板ライセート(例えば、ヒト血小板ライセート)を含むことができる。
【0047】
場合によっては、CSCを刺激するために用いられる組成物は、TNF−α、LIF、およびVEGF−Aなどのさらなる任意の因子を含むことができる。
【0048】
TNF−αは、ヒトTNF−αなどの、TNF−α活性を有する任意のポリペプチドであることができる。例えば、TNF−αは、組換えTNF−αであることができる。任意の濃度のTNF−αを用いることができる。例えば、1ml当たり0.5〜100ngのTNF−αを用いることができる。
【0049】
LIFは、ヒトLIFなどの、LIF活性を有する任意のポリペプチドであることができる。例えば、LIFは、組換えLIFであることができる。任意の濃度のLIFを用いることができる。例えば、1ml当たり0.25〜200ngのLIFを用いることができる。
【0050】
VEGF−Aは、ヒトVEGF−Aなどの、VEGF−A活性を有する任意のポリペプチドであることができる。例えば、VEGF−Aは、組換えVEGF−Aであることができる。任意の濃度のVEGF−Aを用いることができる。例えば、1ml当たり0.5〜400ngのVEGF−Aを用いることができる。
【0051】
本明細書で提供される組成物は、任意の適切な方法を用いて調製することができる。例えば、本明細書で提供される組成物は、市販の刺激剤を用いて調製することができる。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、細胞ライセート(例えば、血小板ライセート)、または心筋細胞もしくはTNF−αで刺激された内皮細胞などの細胞に由来する馴化培地を含むように調製することができる。例えば、本明細書で提供される組成物は、市販の因子を補充した血小板ライセートを用いて調製することができる。場合によっては、本明細書で提供される組成物は、馴化培地から単離された因子を用いて調製することができる。場合によっては、これらの因子は、血清を含むまたは血清を含まない細胞培養培地などの培地に溶解させることができる。
【実施例】
【0052】
急性梗塞を起こしたブタで試験を実施した。以下のプロトコルを定める。90分間の左前下行枝(LAD)閉塞と、それに続く30分間の再灌流により、T0で梗塞を実施する。再灌流の最後(T1)に、閉塞部位より遠位の冠動脈内送達によって、一次組成物を動物に非経口投与する。また、BrdU充填浸透圧ポンプをT1で皮下に埋め込む。14日後(T2)、二次組成物を動物に非経口投与する。両方の組成物の投与は、静脈内注射、筋肉内注射または冠動脈内注射などの様々な投与方法で達成することができる。最後に、42日(T3)で、ブタの安楽死を実施する。
【0053】
成分の濃度を括弧内に記載する。2つの組成物を単独または組み合わせて試験する。
−組成物Aは、IGF−1(15mlのリン酸緩衝溶液(PBS)中に8μg)およびHGF(15mlのPBS中に2μg)からなり、かつ
−組成物Bは、TGFβ−1(15mlのPBS中に0.5μg)、BMP4(15mlのPBS中に1μg)、FGF−2(15mlのPBS中に1μg)、IGF−1(15mlのPBS中に10μg)、アクチビン−A(15mlのPBS中に2μg)、カルジオトロフィン1(15mlのPBS中に0.2μg)およびカルジオゲノールC(15mlのPBS中に5.2μg)からなる。
【0054】
両方の組成物は、医薬として許容し得る補形薬中にある。医薬として許容し得る補形薬は、アルブミンまたは任意の好適なタンパク質安定剤組成物を補充したまたは補充していない、リン酸緩衝化溶液(PBS)、ハルトマンの溶液、乳酸リンゲル液、生理的NaCl(0.9%NaCl)であることができる。
【0055】
各5匹の動物からなる5つの治療群を評価する。
−治療群1は対照群であり、これには、T1とT2で食塩水溶液のみを投与する。
−治療群2には、T1で組成物Aを含む溶液を投与し、T2で食塩水溶液を投与する。これをミックスAと表す。
−治療群3には、T1で組成物Aを含む溶液を投与し、T2で組成物Bを含む溶液を投与する。これをミックスA+Bと表す。
−治療群4には、T1とT2で組成物Bを含む溶液を投与する。これをミックスB+Bと表す。
−治療群5には、T1で組成物Bを含む溶液を投与し、T2で食塩水溶液を投与する。これをミックスBと表す。
【0056】
このプロトコルを表1にまとめる。
【表1】

【0057】
様々な間隔で血液分析を実施した。冠状静脈洞では頸静脈を通して、また、静脈血では耳静脈を通して、治療群当たり2匹のブタから血液試料を採取する。一次投与の後、T1+5分;T1+1時間およびT1+6時間で試料を回収する。二次投与の後、T2+5分;T2+1時間、T2+6時間およびT2+24時間で試料を回収する。IGF−1およびカルジオトロフィン1濃度の定量用の試料を用いて、ELISAイムノアッセイを実施する。
【0058】
また、瘢痕領域、全体的な左室機能、局所機能(壁運動および肥厚)および心室の局所灌流を調べるために、全ての動物に対してT1+3日;T2およびT3で磁気共鳴イメージング(MRI)を実施する。MRIによって、心室機能を改善する新たな血管、組織または細胞の存在を検出および確認することが可能になる。
【0059】
また、瘢痕領域の決定、c−kit陽性心臓幹細胞の同定および定量化のために組織病理学検査を実施する。組織病理学検査によって、新たな血管および心筋細胞の分布、サイズおよび密度も提供される。組織病理学検査によって、組織および細胞レベルでの修復過程を記録することが可能になる。
【0060】
心臓の修復の解析では、重要変数、すなわち、(1)再構築された組織もしくは心筋塊および冠血管系の量;(2)回復した筋細胞および血管の数およびサイズ;(3)新たに形成された筋細胞および血管と周囲の筋細胞との融合;および/または(4)再生した心筋構造の起源を考慮した。
【0061】
梗塞の結果
MRIイメージングの画像を用いて、梗塞サイズ、梗塞重量および梗塞領域を評価した。結果を下の表2に記載する。
【表2】

【0062】
実験から、梗塞領域が、対照群については約19.8%、また、それぞれ、ミックスAおよびミックスB+Bが用いられた第2群および第4群については約19%であったことが示されている。驚くべきことに、本発明による組成物(B)を用いたとき、第5群(ミックスB)については、梗塞領域が13.7%に限定された。したがって、本発明による組成物(B)は、他の組成物と比べて、梗塞(例えば、心筋梗塞)を治療するのに極めて有効であった。
【0063】
さらに、驚くべきことに、ミックスAの予備注射に続いてミックスBを注射した際、梗塞領域が、約9.6%の値にさらに限定されることも観察された。これは、他の群について観察される結果に基づいては予測されない結果である。実際、第2群に用いたミックスAは、単独ではほとんど効果がなかった。相乗効果は、本発明による医薬カクテルを用いることによって観察された。この結果は、組織病理学検査および免疫組織化学検査で確認された。
【0064】
組織病理学検査
梗塞の境界域または中心領域で採取された切片について別々に結果をまとめた。全ての群についての結果を下の表3に記載する。表3に示すデータは、各群の動物について解析した心臓スライスの平均である。
【表3】

【0065】
梗塞サイズと瘢痕サイズの比が梗塞サイズを表すのに対し、経壁性は、梗塞が心筋の外部表面に強く局在しているのか、または梗塞が心筋の内部表面全体に広がっているのかを確かめるパラメータである。経壁性値が高ければ高いほど、梗塞は大きい。
【0066】
梗塞の境界域に関して、表3は、ミックスA、ミックスB+Bまたは対照ミックスが、梗塞サイズにほとんど影響を及ぼさなかったことを示している。これらの場合、梗塞サイズと瘢痕サイズの比は、31.4%〜36.0%の範囲であった。対照的に、本発明による組成物(すなわち、ミックスB)を用いたとき、驚くべきことに、梗塞サイズと瘢痕サイズの比は26%に低下した。本発明による医薬カクテル(すなわち、ミックスA+B)を用いたときには、この値を最大20%までさらに低下させることができる。この実験は、本医薬組成物および医薬カクテルが心臓疾患を治療するのに有効であることを示している。これは、梗塞域で実験を行なったときにも確認された。
【0067】
さらに、驚くべきことに、経壁性が、ミックスB単独またはミックスA+Bの場合に低下することも示された。これは、本発明の組成物(B)は単独または組成物(A)と組み合わせたとき、梗塞の拡大を心筋の外部表面に限定することが可能であることを意味する。これは、本発明による医薬組成物および医薬カクテルが心臓疾患または心臓病を治療するための強力な組成物であるという別の証拠である。
【0068】
したがって、本発明による医薬組成物と医薬カクテルは両方とも、心筋虚血、虚血または心筋梗塞に続発する心不全の治療に好適であることが上記の実験から明らかである。
【0069】
免疫組織化学検査
梗塞部分において、微小血管密度(vWF陽性血管/mm)、BrdU陽性細胞およびc−kit陽性細胞を評価するために試験を実施した。フォン・ヴィレブランド因子(vWF)を用いて微小血管密度を定量化することで、梗塞域で生成した新しい血管の量を決定することが可能である。BrdU陽性細胞試験は、心臓細胞を含む細胞の増殖を表す。c−kit陽性細胞試験は、選択された梗塞部分におけるCSCの量を示す。結果を表4に記載する。これらの試験は、第1群(対照群)、第3群(ミックスA+B)および第5群(ミックスB)についてのみ実施した。
【表4】

【0070】
結果は、本発明による、組成物(A)と(B)の組合せ、または組成物(B)のみを心臓に注射したとき、これらが、心臓幹細胞刺激または心臓細胞増殖に大きな影響を及ぼすことを示している。実際、本組成物または本カクテルでの刺激によって、微小血管密度が高くなり、新しい血管が生成した。第3群または第5群に関して得られた結果は、対照群についての27.9と比べて、それぞれ、34.2および34.3に達した。これは、BrdU陽性細胞試験で確認されている。この試験は、細胞増殖が本発明の組成物によって増強されたことと、強い細胞活性が観察されたこととを示している。ミックスBを注射したとき、対照群についてのわずか22.1%と比べて、36.0%のBrdU陽性細胞が観察された。これは、本発明による医薬組成物が細胞増殖を促進し、その結果、周囲の心筋との新しい筋細胞および血管の形成を促進することを明白に浮き彫りにする。これは、本発明による医薬カクテルを用いたときに、さらに促進することができる。そのようなカクテルを用いて、52.7%という値に達した。したがって、本発明による医薬組成物と医薬カクテルは両方とも、心臓組織再生を促進するのに好適である。
【0071】
医薬カクテルがCSCの活性化や増殖を誘導し、かつこれを促進する能力をc−kit陽性細胞試験で確認した。c−kit陽性細胞試験によって、常在CSCが消耗されることを示すことが可能である。なぜなら、ミックスA+Bを用いたとき、対照群と比べて、その量が顕著に減少したからである。したがって、再生した心筋構造は、常在心臓幹細胞から派生したものである。本組成物および/またはカクテルは、常在心臓幹細胞のインビボ刺激に有効である。
【0072】
本明細書で用いた用語および説明は、単に例示によって示されているのであって、限定を意図するものではない。当業者であれば、多くの変化形が、以下の特許請求の範囲、およびその等価物において定義される本発明の精神および範囲内で可能であり、特に指示がない限り、用語は全て、その最大限広範な意味で理解されるべきであることを認識するであろう。結果として、先の本発明の説明を読み、理解した後、全ての修正および変更が他の人に示唆されるであろう。特に、上記の説明で示された寸法、材料、および他のパラメータは、適用の必要性によって様々に異なり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の幹細胞刺激剤と少なくとも1種の医薬として許容し得る補形薬とを含む、幹細胞の刺激のためのヒトまたは動物用医薬組成物(B)。
【請求項2】
前記少なくとも2種の幹細胞刺激剤が、TGFβ−1、BMP−4、FGF−2、IGF−1、アクチビン−A、カルジオトロフィン1、カルジオゲノールCおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記幹細胞刺激剤が、TGFβ−1、BMP−4、FGF−2、IGF−1、アクチビン−A、カルジオトロフィン1、およびカルジオゲノールCである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記組成物が、ヒルジン、ビバリルジン、レピルジン、デシルジン、アルガトロバン、メラガトラン、キシメラガトラン、ダビガトラン、およびヘパリンからなる群から選択されるトロンビン阻害剤をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項5】
増殖因子、サイトカイン、ホルモンおよびそれらの組合せからなる群の中で選択される少なくとも1種の物質をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の物質が、
−骨形成タンパク質(BMP)、例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−5、BMP−6;
−上皮増殖因子(EGF);
−エリスロポエチン(EPO);
−線維芽細胞増殖因子(FGF)、例えば、FGF−1、FGF−4、FGF−5、FGF−12、FGF−13、FGF−15、FGF−20;
−顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF);
−顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF);
−増殖分化因子−9(GDF−9);
−肝細胞増殖因子(HGF);
−インスリン様増殖因子(IGF)、例えば、IGF−2;
−ミオスタチン(GDF−8);
−ニューロトロフィン、例えば、NT−3、NT−4、NT−1および神経増殖因子(NGF);
−血小板由来増殖因子(PDGF)、例えば、PDGF−β、PDGF−AA、PDGF−BB;
−トロンボポエチン(TPO);
−TGF−α(形質転換増殖因子α)
−形質転換増殖因子β(TGF−β)、例えば、TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3;
−VEGF(血管内皮増殖因子)、例えば、VEGF−A、VEGF−C;
−TNF−α、白血病阻害因子(LIF)、インターロイキン6(IL−6)、レチノイン酸、C SDF−1(ストロマ細胞由来因子−1)、BDNF(脳由来神経栄養因子)、ペリオスチン、アンジオテンシンII、Flt3リガンド、グリア由来神経栄養因子、インスリン様増殖因子結合タンパク質−3、インスリン様増殖因子結合タンパク質−5、インターロイキン−3、インターロイキン−8、ミッドカイン、プロゲステロン、プトレシン、幹細胞因子、TGF−α、WntI、Wnt3a、Wnt5a、カスパーゼ−4、ケモカインリガンド1、ケモカインリガンド2、ケモカインリガンド5、ケモカインリガンド7、ケモカインリガンド11、ケモカインリガンド20、ハプトグロビン、レクチン、コレステロール25−ヒドロキシラーゼ、シンタキシン−8、シンタキシン−11、セルロプラスミン、補体成分1、補体成分3、インテグリンα6、リソソーム酸性リパーゼ1、β2ミクログロブリン、ユビキチン、マクロファージ遊走阻止因子、コフィリン、シクロフィリンA、FKBP12、NDPK、プロフィリン1、シスタチンC、カルサイクリン、スタニオカルシン−1、PGE−2、mpCCL2、IDO、iNOS、HLA−G5、M−CSF、アンジオポエチン、PIGF、MCP−1、細胞外マトリックス分子、CCL2(MCP−1)、CCL3(MIP−1α)、CCL4(MIP−1β)、CCL5(RANTES)、CCL7(MCP−3)、CCL20(MIP−3α)、CCL26(エオタキシン−3)、CX3CL1(フラクタルカイン)、CXCL5(ENA−78)、CXCL11(i−TAC)、CXCL1(GROα)、CXCL2(GROβ)、CXCL8(IL−8)、CCL10(IP−10)およびそれらの組合せ
からなる群の中で選択される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
刺激すべき幹細胞が、常在心臓幹細胞または循環幹細胞または注入された幹細胞である、請求項1〜6のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項8】
一次粒子を含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項9】
一次粒子が、アルギネートと、キトサンと、デキストランと、セルロースと、リポソームと、PLGA、ポリカプロラクトンまたはコポリエステルなどのポリエステルのマイクロスフェアまたはナノスフェアとからなる群から選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
一次粒子が、前記医薬組成物の前記幹細胞刺激剤を封入する、請求項8または9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
それが、請求項1〜10のいずれか1つに記載の医薬組成物(B)と、少なくとも1種の医薬活性物質を含む組成物(A)とを含むことを特徴とする、医薬カクテル。
【請求項12】
前記少なくとも1種の医薬活性物質が、インスリン様増殖因子1(IGF−1)、肝細胞増殖因子(HGF)および/またはNK1、1K1、1K2、HP11、もしくはHP21などのそれらの変異体、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の医薬カクテル。
【請求項13】
前記少なくとも1種の医薬活性物質がSCF−1をさらに含むことを特徴とする、請求項11または12に記載の医薬カクテル。
【請求項14】
前記組成物(A)が、アルギネートと、キトサンと、デキストランと、セルロースと、リポソームと、PLGA、ポリカプロラクトンまたはコポリエステルなどのポリエステルのマイクロスフェアまたはナノスフェアとからなる群から選択される二次粒子をさらに含むことを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載の医薬カクテル。
【請求項15】
二次粒子が、前記少なくとも1種の医薬活性物質を封入する、請求項14に記載の医薬カクテル。
【請求項16】
前記二次粒子が、一次粒子に封入された物質の送達の前に、その中に封入された物質の送達を可能にするように構成されている、請求項14または15に記載の医薬カクテル。
【請求項17】
医薬品として用いられる、請求項1〜10のいずれかに記載の医薬組成物または請求項11〜16のいずれかに記載の医薬カクテル。
【請求項18】
心臓組織の再生に用いられる、請求項1〜10のいずれかに記載の医薬組成物または請求項11〜16のいずれかに記載の医薬カクテル。
【請求項19】
心臓組織の変性の治療に用いられる、請求項1〜10のいずれかに記載の医薬組成物または請求項11〜16のいずれかに記載の医薬カクテル。
【請求項20】
心不全、心虚血または心筋梗塞を含む心臓疾患の治療に用いられる、請求項1〜10のいずれかに記載の医薬組成物または請求項11〜16のいずれかに記載の医薬カクテル。
【請求項21】
ヒトまたは動物の心臓幹細胞に対してインビボまたはエクスビボで作用するプロセスであって、請求項1〜10に記載の医薬組成物(B)を前記ヒトまたは動物に投与する、プロセス。
【請求項22】
前記組成物(B)の投与が、少なくとも1種の医薬活性物質を含む組成物(A)の予備投与の後に続く、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記投与を注射によって実施する、請求項21または22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記投与が連続注射である、請求項21〜23のいずれかに記載のプロセス。
【請求項25】
請求項1〜10のいずれかに記載の前記医薬組成物(B)の2回の連続投与の間の持続時間が1時間〜180日である、請求項21〜24のいずれかに記載のプロセス。
【請求項26】
各々の投与を繰り返す、請求項21〜25のいずれかに記載のプロセス。
【請求項27】
前記組成物(A)または(B)を非経口投与する、請求項21〜26のいずれかに記載のプロセス。
【請求項28】
前記組成物(A)または(B)をヒトまたは動物の循環系に投与する、請求項21〜27のいずれかに記載のプロセス。
【請求項29】
前記組成物(A)または(B)を静脈および/または動脈に投与する、請求項21〜28のいずれかに記載のプロセス。
【請求項30】
前記組成物(A)または(B)を心臓組織に投与する、請求項21〜29のいずれかに記載のプロセス。
【請求項31】
前記投与が、前記医薬組成物(B)については冠動脈内であり、かつ前記組成物(A)の前記予備投与については静脈内である、請求項21〜30のいずれかに記載のプロセス。
【請求項32】
前記組成物(A)の各々の投与が任意である、請求項21〜26のいずれかに記載のプロセス。

【公表番号】特表2013−512877(P2013−512877A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541498(P2012−541498)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068700
【国際公開番号】WO2011/067317
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(512124991)カーディオ3 バイオサイエンシーズ エス.エー. (1)
【氏名又は名称原語表記】CARDIO3 BIOSCIENCES S.A.
【住所又は居所原語表記】Axis Business Parc,rue Edouard Belin 12,B−1435 Mont−saint−guibert Belgium
【Fターム(参考)】