広帯域β−ラクタマーゼ阻害薬
広帯域スペクトルβ−ラクタマーゼ阻害薬。いくつかの阻害薬は、また、β−ラクタマーゼの阻害に加えて強力な抗菌活性を示す。本発明の化合物は、β−ラクタム環の開裂により、β−ラクタマーゼを不活性化することのできる反応性部分を生じるように設計される。このような阻害を示すβ−ラクタマーゼ阻害薬の製造方法及びβ−ラクタム系抗生物質も提供される。さらに、細菌感染症を治療又は予防するための医薬組成物、及びこのような感染症の治療方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、両方とも2007年10月9日に出願の米国特許仮出願第60/997898号及び60/997941号明細書に基づく利益を主張する。これらの特許出願はそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の背景]
[0002]本発明は、β−ラクタマーゼ阻害薬化合物、それらの製造及び使用に関する。
【0003】
[0003]本発明、及び細菌によって引き起こされる感染性疾患を治療するための抗生物質の使用は、現代の医学及び科学技術の画期的出来事の1つである。β−ラクタム系の抗生物質は、最も重要なものの1つであり続けている。抗生物質に対する耐性は、世界的に大きな問題になっている。β−ラクタム系抗生物質に対する最も重要な耐性機構の1つが、細菌によるβ−ラクタマーゼ(ラクタム環の加水分解を触媒し、抗生物質の標的であるペニシリン結合タンパク質への結合に関して抗生物質を無能にすることによって、β−ラクタム系抗生物質を不活性化する酵素)の産生である。
【0004】
[0004]β−ラクタマーゼによる不活性化を回避するためのこれまでの試みは、β−ラクタム系化合物を種々の有機基で官能化することによってそれらの化合物を改変し、抗菌力を維持しながらβ−ラクタムの加水分解に対する耐性を付与することであった。しかし、β−ラクタマーゼの進化は着実に進み、今や、臨床で利用可能な既知のあらゆるβ−ラクタム系抗生物質を不活性化できるβ−ラクタマーゼが存在し、500種を超えるβ−ラクタマーゼが報告されている。
【0005】
[0005]機構によっておおまかに定義すれば、2つの基本的部類のβ−ラクタマーゼ、即ち、セリンヒドロラーゼ及びメタロ−ヒドロラーゼが存在する。該酵素は、β−ラクタム系化合物に対するそれらの酵素の活性スペクトルによってグループに細別して、さらに分類することができる。セリンヒドロラーゼは、ペニシリナーゼであるBushクラスAに下位分類される。クラスCの酵素は、セファロスポリナーゼを指す。一方、クラスDの酵素は、広帯域型又は基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ(ESBL)である。BushクラスBのβ−ラクタマーゼは、活性のために1つ又は2つのZn2+イオンを必要とし、さらにβ−ラクタム系抗生物質に対して広帯域の活性を示す、金属酵素を指す。別の戦略は、β−ラクタマーゼの阻害薬を開発し、使用することであった。3種の化合物、即ち、クラブラン酸、スルバクタム及びタゾバクタムが、現在、臨床で使用されている。
【0006】
[0006]これらの化合物は、クラスAのペニシリナーゼを非可逆的に阻害する。既知阻害薬の欠点は、それらの阻害薬が、本質的な抗菌活性をほとんど有さず、したがって、β−ラクタム系抗生物質と組み合わせて使用しなければならないことである。第2の欠点は、それらの阻害薬が、ますます重要になりつつあるクラスB、C及びDの酵素を阻害することにおいて臨床的に有効でないことである。
【0007】
[0007]したがって、当技術分野では、抗菌力を維持しながらβ−ラクタマーゼを強力に阻害する付加的機能を示す、強力なβ−ラクタム系抗菌組成物に対する重要な必要性が存在する。
【0008】
[発明の概要]
[0008]本発明は、β−ラクタマーゼ阻害薬である化合物に関するものであり、詳細には、β−ラクタマーゼの阻害をも示すβ−ラクタム系抗生物質に関する。本発明は、さらに、このような化合物の調製方法、及び微生物増殖の阻害に向けたこのような化合物の使用方法を対象とする。
【0009】
[0009]実施形態において、本発明は、式Iの化合物
【化1】
及びその薬理学上許容される塩を提供し、式中、
[0010]Rは、アシルアミノ基及びその薬学上許容される塩を含む薬学上許容される官能基であり、
[0011]R1、R2、R3、R4及びR5は、水素又は広範な範囲の有機基から選択され、
[0012]nは、1〜5の範囲の整数、好ましくは1であり、
[0013]---Z---は、指定した2つの原子間のリンカーであり、存在するか、又は存在せず、Zが存在しない場合、yは2であり、Zが存在する場合、yは1であり、
[0014]---Z---は、5又は6員環を形成する1つ又は2つの原子からなるリンカーであり、Zは、2つの炭素原子、1つの炭素及び1つの硫黄原子、1つの炭素及び1つの窒素、又は1つの炭素及び1つの酸素であってよく(ここで、任意の残りの原子価は、原子を水素又は有機置換基、例えばアルキル基で代替することによって満たされる)、
[0015]Mは、R1に対してシス又はトランスでよく、
[0016]Mは、最も一般的には、β−ラクタム環の開裂によって開始されるMの改変(modification)により、1種又は複数の反応種、例えば求電子又は求核部位を生じるように、化合物の母核であるβ−ラクタム環系の窒素と共役している化学種を表す。
【0010】
[0017]特定の実施形態において、Rは、既知β−ラクタム系抗生物質のアミノアシル基である。広範な種類のβ−ラクタム系抗生物質は、当技術分野で周知である。代表的な既知β−ラクタム系抗生物質のアミノアシル基については、後で説明する。
【0011】
[0018]本発明のいくつかのM基は、β−ラクタム環の開裂によってM基からの開裂を引き起こす適切な化学脱離基を含む。β−ラクタムの開裂は、化合物に対するβ−ラクタマーゼ酵素の攻撃によって開始される。β−ラクタム環の開裂によりM中に作り出される反応性のある基は、β−ラクタマーゼとの反応に利用可能であり、β−ラクタマーゼの活性を阻害するように機能する。
【0012】
[0019]本発明の化合物のβ−ラクタム環系には、セフェム系、セファマイシン系、カルバセフェム系、ペネム系、及びモノバクタム系のβ−ラクタム環系が含まれる。
【0013】
[0020]本発明は、β−ラクタマーゼ阻害薬及びβ−ラクタム系抗生物質として使用するための、前に一般的に説明したような及び後でより具体的に説明するような式Iの化合物を提供する。本発明の化合物は、これらの機能の一方又は両方を示すことができ、かくして、微生物感染症及びその合併症を治療するための種々の治療的応用(ヒト及び獣医学的)で有用である。本発明の化合物は、微生物、特に、1種又は複数のβ−ラクタム系抗生物質に耐性を示すことが知られている細菌への感染症を治療するのに特に有用である。本発明の化合物は、インビボ又はインビトロでの応用において、細菌を含む微生物の増殖を阻害するのに有用である。本発明のβ−ラクタム阻害薬をβ−ラクタム系抗生物質と組み合わせて、インビボ又はインビボでの応用において、β−ラクタマーゼの阻害を提供することができる。
【0014】
[0021]前に記載のようなM基を含み、Rがアミノアシル基ではなく、RがA−CO−NH(ここでAは、非置換のアルキル又はアリール基(例えば、フェニル基)である)である本発明の化合物は、β−ラクタマーゼの阻害を示し、アミノアシル基が既知のβ−ラクタム系抗生物質のものである、β−ラクタム阻害薬及びβ−ラクタム系抗生物質の合成における中間体として有用である。抗生物質の活性を示さない、或いは抗生物質の活性を向上させることが望まれるβ−ラクタム阻害薬は、M基を含む本発明の化合物から、そのR基を当技術分野で周知であるβ−ラクタム系抗生物質中に見出される選ばれたアミノアシルで代替することによって調製できる。したがって、本発明は、抗菌活性に加えてβ−ラクタマーゼの阻害を示す、改善されたβ−ラクタム系抗生物質の調製方法を提供する。
【0015】
[0022]本発明は、さらに、本発明の式I及び後で説明するその他の式の1種又は複数の化合物を含有する医薬組成物に関する。
【0016】
[0023]本発明は、また、治療有効量又は併用量の本発明の1種又は複数の化合物を、任意選択で治療有効量又は併用量の1種又は複数の既知β−ラクタム系抗生物質と併用して投与することによる、感染症及び関連する障害、疾患又は合併症の治療方法に関する。
【0017】
[0024]本発明は、さらに、微生物を、インビボ又はインビトロで、ある量の本発明の1種又は複数の化合物と、任意選択で既知のβ−ラクタム系抗生物質、特に、過去に使用された、又は現在、治療的応用(ヒト又は動物)に使用されている抗生物質と併用して接触させることによって、微生物、特に細菌の増殖を阻害する方法に関する。
【0018】
[0025]本発明は、また、特に感染症及びその関連障害、その疾患又は合併症を治療するための、本発明の1種又は複数の化合物を含有する医療用薬剤の調製方法に関する。
【0019】
[0026]本発明を、さらに、限定することを意図したものではない、以下の詳細な説明、実施例及び図面で説明し図示する。本発明のさらなる態様及び実施形態は、明細書を全体的に検討することで明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】3−ビニルシクロプロパン−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸(IX)によるβ−ラクタマーゼの時間依存性阻害のグラフである。
【図2】3−(1−ブロモメチル−4−ビニルベンゼン)−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸(XI)によるβ−ラクタマーゼの時間依存性阻害のグラフである。
【図3】本明細書中の式の化合物における典型的なアシル基を示す図である。
【図4】本発明の化合物のさらなる典型的な構造を示す図である。
【図5】本発明の化合物のさらなる典型的なM基を示す図である。
【図6】本発明の式において母核である種々のβ−ラクタム環構造の好ましい立体化学を示す図である。
【0021】
[発明の詳細な説明]
[0033]本発明は、抗菌活性に加えて1種又は複数のβ−ラクタマーゼの阻害を示す改善されたβ−ラクタム系抗生物質の調製方法に関する。本発明は、また、1種又は複数のβ−ラクタマーゼの阻害を示すいくつかのβ−ラクタム系化合物に関する。本発明は、さらに、β−ラクタマーゼの阻害及び抗菌活性を示すいくつかのβ−ラクタム系化合物に関する。特定の実施形態において、本発明の化合物は、クラスAのペニシリナーゼに加えて1種又は複数のβ−ラクタマーゼを阻害する。特定の実施形態において、本発明の化合物は、クラスAのペニシリナーゼ以外のβ−ラクタマーゼを阻害する。特定の実施形態において、本発明の化合物は、1種又は複数のクラスB、C又はDのβ−ラクタマーゼの阻害を示す。特定の実施形態において、本発明の化合物は、異なるクラスの1種又は複数のβ−ラクタマーゼの広帯域阻害を示す。特定の実施形態において、本発明の化合物は、1種又は複数のβ−ラクタマーゼの非可逆的阻害を示す。
【0022】
[0034]特定の実施形態において、本発明は、式
【化2】
のβ−ラクタム系化合物
[0035]及びその薬理学上許容される塩に関するものであり、式中、
[0036]---Z---は、存在しないか、或いは存在して−O−(CH2)x−、−C−(CH2)x−、−NR’−(CH2)x−、−S−(CH2)x−、−SO−(CH2)x−、又は−SO2−(CH2)x−(ここで、xは0又は1であり、R’は、水素又はC1〜C6アルキルであり、---Z---が存在するならyは1であり、存在しないならyは2である)であり、
[0037]nは、1〜5の整数であり、
[0038]R1及びR2は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ及び(C1〜C6)チオアルコキシ(−S−アルキル)からなる群から独立に選択され、
[0039]Yは、O−C+又はOR3(ここで、R3は、水素、又は置換されていてもよいアルキル若しくはアリール基であり、C+は薬理学上許容されるカチオンである)であり、
[0040]R4は、水素、(C1〜C6)アルキル、OR’(ここで、R’は、水素又は(C1〜C6)アルキルである)であり、
[0041]R5は、水素、(C1〜C6)アルキルであり、
[0042]Rは、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基、−CO−R’’、−CO2R’’、−CO−N(R’)2;−N(R’’)2、−NRCO2−R’’(ここで、各R’’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは、置換されていてもよい)、及びアシルアミン基A−CO−NH−から選択され、
[0043]Mは、R1に対してシス又はトランスの位置でよく、次の通りの基P、B、BZ、D、E、Fから選択され、
[0044]基Pは
【化3】
であり、
[0045]式中、
[0046]Wは、O又はC(R’’)(ここで、各R’’は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基及び6〜10員複素環式芳香族基からなる群から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)であり、
[0047]R6及びR7は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基、−COR’−、
[0048]−COOR’’、−CON(R’’)2(ここで、各R’’は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基からなる群から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)から独立に選択され、
[0049]基D、B、BZ、E、Fは、
【化4】
であり、式中、
[0050]Z2は、O、NR11、又はS(ここで、R11は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、及び(C2〜C6)アルキニル基からなる群から選択され、各基は置換されていてもよい)であり、
[0051]各R8は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)から独立に選択され、
[0052]各R9は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基(ここで、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)から独立に選択され、
[0053]各R10は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)、及び−CH2−X基からなる群から独立に選択され、
[0054]R12は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)、及びXからなる群から選択され、
[0055]R13及びR14は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)、及びXからなる群から独立に選択され、
[0056]Xは、後に定義するような脱離基であり、
[0057]ここで、構造V中で、R10の少なくとも1つは−CH2−X基であり、R12はX又は両方であり、構造VI中で、R13又はR14の一方はXである。
【0023】
[0058]特定の実施形態において、Aは、
【化5】
からなる群から選択され、式中、
[0059]R’’は、これらの構造に関して、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基から選択され、
[0060]R’’’は、これらの構造に関して、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)からなる群から選択され、A8ではsyn/anti異性体が含まれ、VはN又はCHであり、UはCH、CH2、NH又はNである。
【0024】
[0061]他の特定の実施形態において、Aは、
【化6】
から選択され、ここで、
[0062]変数は、前に定義した通りである。
【0025】
[0063]他の特定の実施形態において、Aは、
【化7】
から選択され、ここで、
[0064]変数は、前に定義した通りである。
【0026】
[0065]他の特定の実施形態において、Aは、図3に列挙して示した基からなる群(A15〜A29)から選択され、ここで、
[0066]XXは、−OR’’、−CN、−NH2、−N(R’)2、ハロゲン、−SR’’、−COR’’’、−COOR’’、及び−CON(R’’)2からなる群から選択される置換基であり、
[0067]YYは、ハロゲン又は−CNであり、
[0068]R’は、水素、(C1〜C6)アルキル、又は(C6〜C12)アリールであり、
[0069]R’’及びR’’’は、A基の定義において前に定義した通りである。
【0027】
[0070]特定の実施形態において、XXはOHであり、YYはClであり、A24の場合、R’は(C1〜C3)アルキルである。
【0028】
[0071]別の実施形態において、Aは、ベンジル基又は置換されていてもよいベンジル基である。A基中の1つ又は複数の部分又は基は、1つ又は複数の保護基で保護される。
【0029】
[0072]特定の実施形態において、Yは水素であるか、或いはY−CO−は、インビボ(in vivo)で容易に加水分解されるエステルである。
【0030】
[0073]別の実施形態において、本発明は、式
【化8】
の化合物
[0074]及びその薬学上許容される塩を提供し、式中、変数は前に定義した通りである。特定の実施形態において、R4及びR5は両方とも水素である。特定の実施形態において、RはA−CO−NH−である。特定の実施形態において、Rはベンジル−NHである。
【0031】
[0075]別の実施形態において、本発明は、式
【化9】
の化合物
[0076]及びその薬学上許容される塩を提供し、式中、変数は前に定義した通りである。特定の実施形態において、R4及びR5は両方とも水素である。特定の実施形態において、RはA−CO−NH−である。特定の実施形態において、Rはベンジル−NH−である。
【0032】
[0077]別の実施形態において、本発明は、式
【化10】
の化合物
[0078]及びその薬学上許容される塩を提供し、式中、変数は前に定義した通りである。特定の実施形態において、R4及びR5は両方とも水素である。特定の実施形態において、RはA−CO−NH−である。特定の実施形態において、Rはベンジル−NH−である。
【0033】
[0079]別の実施形態において、本発明は、式
【化11】
の化合物
[0080]及びその薬学上許容される塩を提供し、式中、変数は前に定義した通りである。特定の実施形態において、R4及び各R5は水素である。特定の実施形態において、RはA−CO−NH−である。特定の実施形態において、Rはベンジル−NH−である。特定の実施形態において、M基であるB、BZ、又はF中のR8〜10は、電子求引基、例えば、エステル、カーバメート及びカルボニル基で官能化されたアルキルである。
【0034】
[0081]さらなる実施形態において、本発明は、図4中の式C1〜C11の化合物を提供する。C1〜C11のそれぞれに関する特定の実施形態において、R4は水素である。特定の実施形態において、RはA−CO−NH−である。特定の実施形態において、Rはベンジル−NH−である。
【0035】
[0082]特定の実施形態において、本発明は、いくつかの環置換基の立体化学が示された式S1、S2及びS3の化合物(図4)を提供する。特定の実施形態において、R4及び各R5は、水素である。特定の実施形態において、RはA−CO−NH−である。特定の実施形態において、Rはベンジル−NH−(ここで、ベンジル基は置換されていてもよい)である。任意選択の置換には、1つ又は複数のC1〜C3アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C3ハロアルキル(例えば、−CF3)、ハロゲン(I、Cl、Br、F)、−OH、又は−NH2での置換が含まれる。
【0036】
[0083]特定の実施形態において、本発明は、本明細書中の式I、II、III、IV、V、C1〜C11、及びS1〜S3のいずれかの化合物(ここで、Mは、P1〜P12(図5)の1つから選択され、各Haは、独立に、ハロゲンであり、X、及びP1〜P12中のR’は、前に定義した通りである)を提供する。特定の実施形態において、各Xは、独立に、本明細書中で定義するような好適な脱離基である。特定の実施形態において、各Haは、独立に、I、Br又はClである。特定の実施形態において、各XはClである。特定の実施形態において、各XはBrである。特定の実施形態において、各Xはピリジニウム基である。特定の実施形態において、1つのXはピリジニウム基である。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素、C1〜C6アルキル、又はC6〜C12アリールであり、その両方は置換されていてもよい。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素又は置換されていてもよいC1〜C3アルキルである。特定の実施形態において、各R’は水素である。特定の実施形態において、Xはすべて同一である。任意選択の置換には、1つ又は複数のC1〜C3アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C3ハロアルキル(例えば、−CF3)、ハロゲン(I、Cl、Br、F)、−OH、又は−NH2での置換が含まれる。
【0037】
[0084]特定の実施形態において、本発明は、式I、II、III、IV、V、C1〜C11、及びS1〜S3のいずれかの化合物(ここで、Mは、B1〜B5(図5)の1つから選択され、B1〜B5中のX及びR’は、前に定義した通りである)を提供する。特定の実施形態において、各Xは、独立に、本明細書中で定義するような好適な脱離基である。特定の実施形態において、各Xは、独立に、I、Br又はClである、特定の実施形態において、各XはClである。特定の実施形態において、各XはBrである。特定の実施形態において、各Xはピリジニウム基である。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素、C1〜C6アルキル、又はC6〜C12アリールであり、その両方は置換されていてもよい。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素又は置換されていてもよいC1〜C3アルキルである。特定の実施形態において、各R’は、水素である。特定の実施形態において、Xはすべて同一である。特定の実施形態において、2つのXは同一である。任意選択の置換には、1つ又は複数のC1〜C3アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C3ハロアルキル(例えば、−CF3)、ハロゲン(I、Cl、Br、F)、−OH、又は−NH2での置換が含まれる。
【0038】
[0085]特定の実施形態において、本発明は、式I、II、III、IV、V、C1〜C11、及びS1〜S3のいずれかの化合物(ここで、Mは、BZ1〜BZ5(図5)の1つから選択され、BZ1〜BZ5中のX及びR’は、前に定義した通りである)を提供する。特定の実施形態において、各Xは、独立に、本明細書中で定義するような好適な脱離基である。特定の実施形態において、各Xは、独立に、I、Br又はClである。特定の実施形態において、各XはClである。特定の実施形態において、各XはBrである。特定の実施形態において、各Xはピリジニウム基である。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素、C1〜C6アルキル、又はC6〜C12アリールであり、その両方は置換されていてもよい。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素又は置換されていてもよいC1〜C3アルキルである。特定の実施形態において、各R’は水素である。特定の実施形態において、Xはすべて同一である。特定の実施形態において、2つのXは同一である。任意選択の置換には、1つ又は複数のC1〜C3アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C3ハロアルキル(例えば、−CF3)、ハロゲン(I、Cl、Br、F)、−OH、又は−NH2での置換が含まれる。
【0039】
[0086]特定の実施形態において、本発明は、式I、II、III、IV、V、C1〜C11、及びS1〜S3のいずれかの化合物(ここで、Mは、D1〜D3(図5)の1つから選択され、D1〜D3中のR’は、前に定義した通りである)を提供する。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素、C1〜C6アルキル、又はC6〜C12アリールであり、その両方は置換されていてもよい。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素又は置換されていてもよいC1〜C3アルキルである。特定の実施形態において、各R’は水素である。特定の実施形態において、R’はすべて同一である。
【0040】
[0087]特定の実施形態において、本発明は、式I、II、III、IV、V、C1〜C11、及びS1〜S3のいずれかの化合物(ここで、Mは、E1〜E8(図5)の1つから選択され、E1〜E8中のX及びR’は、前に定義した通りである)を提供する。特定の実施形態において、各Xは、独立に、本明細書中で定義するような好適な脱離基である。特定の実施形態において、各Xは、独立に、I、Br又はClである。特定の実施形態において、各XはClである。特定の実施形態において、各XはBrである。特定の実施形態において、各Xはピリジニウム基である。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素、C1〜C6アルキル又はC6〜C12アリールであり、その両方は置換されていてもよい。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素又は置換されていてもよいC1〜C3アルキルである。特定の実施形態において、各R’は水素である。特定の実施形態において、Xはすべて同一である。特定の実施形態において、2つのXは同一である。特定の実施形態において、環に直接結合されたXは、環に間接結合されたXと異なる。特定の実施形態において、環に直接結合されたXは、ハロゲンであり、環に間接結合されたXはハロゲンでない。任意選択の置換には、1つ又は複数のC1〜C3アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C3ハロアルキル(例えば、−CF3)、ハロゲン(I、Cl、Br、F)、−OH、又は−NH2での置換が含まれる。
【0041】
[0088]特定の実施形態において、本発明は、式I、II、III、IV、V、C1〜C11、及びS1〜S3のいずれかの化合物(ここで、Mは、F1〜F8(図5)の1つから選択され、F1〜F8中のX及びR’は、前に定義した通りである)を提供する。特定の実施形態において、各Xは、独立に、本明細書中で定義するような好適な脱離基である。特定の実施形態において、各Xは、独立に、I、Br又はClである。特定の実施形態において、各XはClである。特定の実施形態において、各XはBrである。特定の実施形態において、各Xはピリジニウム基である。特定の実施形態において、1つのXはピリジニウム基である。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素、C1〜C6アルキル、又はC6〜C12アリールであり、その両方は置換されていてもよい。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素又は置換されていてもよいC1〜C3アルキルである。特定の実施形態において、各R’は水素である。特定の実施形態において、Xはすべて同一である。特定の実施形態において、2つのXは同一である。特定の実施形態において、環に直接結合されたXは、環に間接結合されたXと異なる。特定の実施形態において、環に直接結合されたXは、ハロゲンであり、環に間接結合されたXはハロゲンではない。任意選択の置換に関して好ましい置換基には、中でも、1つ又は複数のC1〜C3アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C3ハロアルキル(例えば、−CF3)、ハロゲン(I、Cl、Br、F)、−CN、−OH、C1〜C3アルコキシ、−O−アリール、−O−ベンジル、−フェノキシ、−SH、−SR(ここで、Rは、C1〜C3アルキル、ベンジル又はフェニルである)、−NH2、−N(R)2(ここで、各RはC1〜C3アルキル、ベンジル又はフェニルである)での置換が含まれる。これらの置換基のアルキル、アリール、ベンジル、フェニル基も、同様に、置換されていてよい。
【0042】
[0089]特定の実施形態において、式II〜V、C1〜C11、及びS1〜S3の化合物(そのM基は、R1基に対してシスである)の異性体も提供される。
【0043】
[0090]特定の実施形態において、式Iの化合物には、セフプロジル、セフジニル、セフジトレン、セフィキシム及びセフトビプロールは含まれない。しかし、式Iの他の化合物を、医薬組成物中で又は医療用薬剤中で、セフプロジル、セフジニル、セフジトレン、セフィキシム又はセフトビプロールの1つ又は複数と組み合わせることができる。
【0044】
[0091]図6は、本発明の式における母核である各種β−ラクタム構造の好ましい立体化学を示す。特定の実施形態において、本発明の化合物には、図6に示した好ましい立体化学も有する本明細書中の任意の式の化合物が含まれる。
【0045】
[0092]用語「アルキル」は、分枝又は非分枝(直鎖又は線状)の一価飽和炭化水素基、及び1つ又は複数の環を有するシクロアルキル基を指す。特記しない限り、好ましいアルキル基は、1〜22個の炭素原子(C1〜C22)を有し、より好ましくは1〜12個の炭素原子(C1〜C12)を含むものである。短いアルキル基は、1〜6個の炭素原子を有する基、1〜3個の炭素原子(C1〜C3)を有する基、例えば、そのすべての異性体を含めたメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル基である。長いアルキル基は、8〜30個の炭素原子を有する基、好ましくは12〜22個の炭素原子(C12〜C22)を有する基である。用語「シクロアルキル」は、好ましくは3〜12個の炭素原子(C3〜C12)を有し、1つの環式環又は複数の縮合環を有する環式アルキル基を指す。アルケニル基に関する本明細書中での説明は、シクロアルケニル基に対して一般に適用される。シクロアルキル基には、例として挙げれば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどの単環構造体、又はアダマンタニルなどの多環構造体が含まれる。特記しない限り、シクロアルキル基をはじめとするアルキル基は、後で定義するように置換されていてもよい。
【0046】
[0093]用語「アルケニル」は、1つ又は複数の二重結合を有する分枝又は非分枝の一価不飽和炭化水素基、及びその中の少なくとも1つの環が二重結合を含む1つ又は複数の環を有するシクロアルケニル基を指す。特記しない限り、アルキル基は、2〜22個の炭素原子(C2〜22)を有し、より好ましいのは、2〜12個の炭素原子(C2〜12)を含む基である。アルケニル基は、共役又は非共役であることのできる1つ又は複数の二重結合(C=C)を含むことができる。置換基として好ましいアルケニル基は、1〜2個の二重結合を有し、ω−アルケニル基を有する基である。アルケニル基は、2〜5個、4、3、又は2個の共役二重結合を含むことができる。アルケニル基には、2〜6個の炭素原子(C2〜C6)を有する基、及び2〜3個の炭素原子(C2〜C3)を有する基、例えば、そのすべての異性体を含めたエチレン(ビニル)、プロピレン、ブチレン、ペンチレン及びヘキシレン基が含まれる。用語「シクロアルケニル」は、3〜22個の炭素原子(C3〜C22)からなり、1つの環式環、又は複数の縮合環(その中の少なくとも1つの環は二重結合(C=C)を含む)を有する環式アルケニル基を指す。アルケニル基に関する本明細書中の説明は、一般には、シクロアルケニル基に対して適用される。シクロアルケニル基は、好ましくは、3〜12個の炭素原子(C3〜C12)を有する。シクロアルケニル基には、例を挙げれば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル及びシクロオクタトリエニルなどの単環構造体(単環式)、並びに多環構造体が含まれる。特記しない限り、シクロアルケニル基をはじめとするアルケニル基は、後で定義するように置換されていてもよい。
【0047】
[0094]用語「アルキニル」は、1つ又は複数の三重結合(C≡C)を有する一価不飽和炭化水素基を指す。特記しない限り、好ましいアルキル基は、2〜22個の炭素原子を有し、より好ましいのは2〜12個の炭素原子を含む基である。アルキニル基には、エチニル、プロパルギルなどが含まれる。短いアルキニル基は、2〜6個の炭素原子(C2〜C6)を有する基、そのすべての異性体を含め2又は3個の炭素原子(C2〜C3)を含む基である。長いアルキニル基は、6〜12個の炭素原子(C6〜C12)を有する基である。用語「シクロアルキニル」は、3〜22個の炭素原子(C3〜C22)を含み、1つの環式環又は複数の縮合環(その中の少なくとも1つの環は三重結合(C≡C)を含む)を有する環式アルキニル基を指す。アルキニル基に関する本明細書中の説明は、一般には、シクロアルキニル基に対して適用される。特記しない限り、シクロアルキニル基をはじめとするアルキニル基は、後で定義するように置換されていてもよい。
【0048】
[0095]用語「アリール」は、単一の環(例えば、フェニル)、1つ又は複数の環(例えば、ビフェニル)或いは複数の縮合(ヒューズド)環(その少なくとも1つの環は、芳香族(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル、又はアントリル)である)を有する6〜22個の炭素原子(C6〜C22)を含む、不飽和芳香族炭素環式基を含む化学基を指す。アリール基は、形式上、アリール化合物から水素を除去することによって形成される。アリールには、フェニル、ナフチルなどが含まれる。アリール基は、不飽和芳香族環(複数可)に加えて、アルキル、アルケニル又はアルキニルである部分を含むことができる。用語「アルカリール」は、アルキル部分を含むアリール基、即ち−アルキレン−アリール及び−置換アルキレン−アリールを指す。このようなアルカリール基は、ベンジル、フェネチルなどによって例示される。
【0049】
[0096]用語「ヘテロシクリル」は、総称的には、飽和又は不飽和環(例えば、二重結合を含む)でもよい、原子からなる少なくとも1つの環、典型的には3〜10員環、好ましくは5、6又は7員環を含み、ここで、その環は、1つ又は複数の炭素原子及び1つ又は複数のへテロ原子(非炭素原子)を含むことができる一価の基を指す。ヘテロシクリル(複素環)基は、その少なくとも1つが複素環である1、2又は3個の環(2個又はそれ以上の環は環系と呼ぶことができる)を含むことができる。原子価を満たすために、へテロ原子にH又は置換基を結合することができる。環炭素は、中でも−O−、−S−、−NR−、−N=(ここで、Rは、水素、アルキル、アリール、ヘテロシクリル又はヘテロアリール基である)で代替できる。いくつかの複素環基、環及び環系については、本明細書中でより具体的に説明される。
【0050】
[0097]用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの芳香族環(典型的には、5又は6員環)を含み、その環の1つ又は複数の環炭素がヘテロ原子(非炭素原子)で代替されている基を指す。原子価を満たすために、へテロ原子にH又は置換基を結合することができる。環炭素は、数ある中でも、−O−、−S−、−NR−、−N=(この定義において、Rは、水素、アルキル、アリール、ヘテロシクリル又はヘテロアリール基である)で代替できる。ヘテロアリール基は、1つ又は複数のアリール基(全部が炭素の芳香族環)又はヘテロアリール環を含むことができ、ヘテロアリール基のアリール環は、単結合又はリンカー基(例えば、アルキレン(CH2)n)によって連結されていても、或いは縮合されていてもよい。ヘテロアリール基には、その1〜3個の環原子がヘテロ原子である5又は6個の環原子を有する芳香族環を有する基が含まれる。好ましいヘテロ原子は、−O−、−S−、−NR−及び−N=である。ヘテロアリール基には、5〜12個の炭素原子を含む基が含まれる。特記しない限り、ヘテロアリール基は、本明細書に記載のように置換されていてもよい。
【0051】
[0098]「ハロアルキル」は、本明細書中で定義されるような同一又は異なってもよい1つ又は複数のハロ基によって置換された本明細書中で定義されるようなアルキルを指す。代表的なハロアルキル基には、例を挙げれば、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、クロロメチル、ブロモメチル、クロロエチル、ブロモエチル、クロロシクロプロピル、2,3−ジクロロシクロプロピルなどが含まれる。ハロアルキル基には、1〜6個の(C1〜C6)及び1〜3個の(C1〜C3)炭素原子を有し、1、2、3、5、7、9、11、13個(例えばペルクロロ基)、1〜6個又は1〜13個のハロゲンを含む基が含まれる。ハロゲンには、数ある中でも、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素が含まれる。いくつかの実施形態では、塩素、臭素及びヨウ素が、好ましいハロゲンである。
【0052】
[0099]用語「ハロアリール」は、同様に、本明細書中で定義されるような同一又は異なってもよい1つ又は複数のハロ基によって置換された本明細書中で定義されるようなアリール基を指す。代表的なハロアリール基には、数ある中でも、p−ハロフェニル、o−ハロフェニル、m−ハロフェニル、及びオルト、メタ、パラの位置又はこれらの組合せの位置に2〜5個のハロゲンの組合せを保持するフェニル環が含まれる。ハロアリール基には、6又は12個の炭素原子(C6又はC12)を有し、1〜5又は1〜9個のハロゲンを所持することのできる基が含まれる。ハロアリールには、ペルハロゲン化アリール基が含まれる。ハロゲンには、数ある中でも、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素が含まれる。いくつかの実施形態では、塩素、臭素及びヨウ素が、好ましいハロゲンである。
【0053】
[00100]用語「アルコキシ(又はアルコキシド)」は、−O−アルキル基(ここで、アルキル基は、前に定義した通りである)を指す。用語「アルケノキシ(アルケノキシド)」は、−O−アルケニル基(ここで、アルケニル基は、前に定義した通りであり、その二重結合は、いくつかの実施形態において、酸素に結合された炭素の位置に配置されることができる)を指す。アルケンオキシ基であるほとんどの置換基において、二重結合は、好ましくは、酸素に結合された炭素の位置に配置されない。用語「アルキノキシ(アルキノキシド)」は、−O−アルキニル基(ここで、アルキニル基は、前に定義した通りであり、三重結合は、好ましくは、酸素に結合された炭素の位置に配置されない)を指す。用語「アリールオキシ」は、−O−アリール基を指す。用語「ヘテロアリールオキシ」は、−O−ヘテロアリール基を指す。用語「ヘテロシクリルオキシ」は、−O−ヘテロシクリル基を指す。
【0054】
[00101]用語「アミノ」は、総称的には、−N(R)2基(この定義において、Rは、他方のRと独立に、水素、前に説明した通りのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール基である)を指す。2つのRは、連結されて環を形成できる。「アルキルアミノ」基は、その中の少なくとも1つのRがアルキルであるアミノ基を指す。「アリールアミノ」基は、その中の少なくとも1つのRがアリールであるアミノ基を指す。
【0055】
[00102]用語「アミド」は、総称的には、−CO−N(R)2基(この定義において、Rは、他方のRと独立に、水素、前に説明した通りのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールラジカルである)を指す。2つのRは、連結されて環を形成できる。「アルキルアミド」基は、その中の少なくとも1つのRがアルキルであるアミド基を指す。「アリールアミド」基は、その中の少なくとも1つのRがアリールであるアミド基を指す。
【0056】
[00103]用語「アミノアシル」基は、総称的には、−NR−CO−R基(この定義において、各Rは、独立に、水素、前に説明した通りのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールラジカルである)を指す。「アルキルアミノアシル」基は、その中の少なくとも1つがアルキルであるアミノアシル基を指す。「アリールアミド」基は、その中の少なくとも1つのR’’がアリールであるアミノアシル基を指す。種々のアミノアシル基が、本明細書中でより具体的に説明される。
【0057】
[00104]用語「イミン」は、総称的には、−N=CR’’2基又は−CR’’=NR’’基(この定義において、各R’’は、他方のR’’とは独立に、水素、前に説明した通りのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール基である)を指す。2つのR’’は、連結されて環を形成できる。「アルキルイミン」基は、その中の少なくとも1つのR’’がアルキルであるイミン基を指す。「アリールイミン」基は、その中の少なくとも1つのR’’がアリールであるイミン基を指す。いくつかのイミン基が、本明細書中でより具体的に説明される。
【0058】
[00105]用語「スルフェニル」は、基−S−R(この定義において、Rは、前に説明したようなアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールラジカルである)を指す。用語「スルフヒドリル」は、−SH基を指す。
【0059】
[00106]用語「スルホニル」は、ラジカル−SO2−R(この定義において、Rは、前に説明したようなアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール基である)を指す。
【0060】
[00107]用語「スルホネート」は、ラジカル−SO3−R(この定義において、Rは、水素、前に説明したようなアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール基である)を指す。「アルキルスルホネート」基は、その中のRがアルキルであるスルホネート基を指す。「アリールスルホネート」基は、その中の少なくとも1つのRがアリールであるスルホネート基を指す。基−SO3Hは、イオン形態−SO3−であってもよい。
【0061】
[00108]アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環基、或いは基中のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環部分は、本明細書に記載のように置換されていてもよく(特記しない限り)、該基中の炭素原子数及び該基の不飽和度に応じて、水素でない1〜8個の置換基を含むことができる。アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環基は、非置換であってもよい。
【0062】
[00109]任意選択の置換とは、次の官能基、即ち、
[00110]ハロゲン、ヒドロキシル(−OH)、−CN、−SH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、スルフェニル、スルホニル、スルホネート、アミン、アミド、アミノアシル、イミン、−COR、−COOR、−CON(R)2、−OCOR、−OCOR、−OCN(R)2、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアリール、−CO−C(R)2−CO−、−NRCOR、−NRCOOR、−COO−C+(この定義において、各Rは、水素、(置換されていてもよい)アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリールから選択され、C+は、(薬学上許容される塩の)薬学上許容されるカチオンである)、1つ又は複数での置換を指す(本明細書中では、水素は、官能基とは考えない)。
その他?
【0063】
[00111]1つ又は複数の置換基を含む任意の上記基に関して、このような基は、立体的に実在できない、及び/又は合成的に不可能である、いかなる置換又は置換パターンも含まないと解される。加えて、本発明の化合物は、これらの化合物の置換に由来するすべての立体化学的異性体を包含する。
【0064】
[00112]本発明の化合物は、1つ又は複数のキラル中心を含むことができる。したがって、本発明は、ラセミ混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー、及び1種又は複数の立体異性体を豊富に有する混合物を包含すると解釈される。説明し、特許を請求する本発明の範囲には、ラセミ形態の化合物、及び個々のエナンチオマー及びその非ラセミ混合物が包含される。
【0065】
[00113]本発明の化合物は、塩を形成し、その塩も本発明の範囲に包含される。本明細書中の式(I〜V)の化合物に対する言及は、特記しない限り、その塩に対する言及を包含すると解される。用語「塩(複数可)」は、本明細書中で使用する場合、無機及び/又は有機の酸及び塩基を用いて形成される酸及び/又は塩基の塩を意味する。さらに、化合物が、塩基性部分(例えば、限定はされないが、アミン又はピリジン環)及び酸性部分(例えば、限定はされないが、カルボン酸)の両方を含む場合、双性イオン(「内部塩」)が形成される可能性があり、該双性イオンも、本明細書中で使用される用語「塩(複数可)」に包含される。薬学上許容される(即ち、非毒性で生理学上許容される)塩が好ましいが、その他の塩も、例えば、調製中に採用される可能性がある単離又は精製ステップにおいて有用である。式Iの化合物の塩は、例えば、式Iの化合物をある量(例えば、等量)の酸又は塩基と、塩が沈殿するような媒質中又は水性媒質中で反応させ、続いて凍結乾燥することによって形成することができる。
【0066】
[00114]典型的な酸付加塩には、酢酸塩類(例えば、酢酸又はトリハロ酢酸、例えば、トリフルオロ酢酸などを用いて形成される塩)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩(塩酸を用いて形成される)、臭化水素酸塩(臭化水素を用いて形成される)、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩(マレイン酸を用いて形成される)、メタンスルホン酸塩(メタンスルホン酸を用いて形成される)、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩(硫酸を用いて形成される塩など)、スルホン酸塩(本明細書中で言及される塩など)、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩など)、ウンデカン酸塩などが含まれる。
【0067】
[00115]典型的な塩基性塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム、リチウム、及びカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム及びマグネシウム塩など)、有機塩基(例えば、ベンザチン、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラバミン(N,N−ビス(デヒドロ−アビエチル)エチレンジアミンから形成される)、N−メチル−D−グルカミン、N−メチル−D−グルカミド、t−ブチルアミンなどの有機アミン)との塩、及びアミノ酸(アルギニン、リシンなど)との塩が含まれる。塩基性窒素を含む基は、低級アルキルハライド(例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチルの塩化物、臭化物及びヨウ化物)、硫酸ジアルキル(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミル硫酸)、長鎖ハライド(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルの塩化物、臭化物及びヨウ化物)、アラルキルハライド(例えば、ベンジル及びフェネチルブロミド)などの薬剤を用いて四級化できる。
【0068】
[00116]本発明の化合物及びその塩は、それらの互変異性形で存在することができ、その中の水素原子は、分子の他の部分に輸送され、結果的に、該分子中での原子間の化学結合は再配置される。すべての互変異性形は、それらが存在できるなら、本発明に包含されると解されたい。さらに、本発明の化合物は、シス及びトランス異性体を有することがあり、1つ又は複数のキラル中心を含み、したがって、エナンチオマー及びジアステレオマーの形態で存在する可能性がある。本発明は、すべてのこのような異性体、並びにシスとトランス異性体との混合物、ジアステレオマーの混合物、及びエナンチオマー(光学異性体)のラセミ混合物を包含する。化合物(又は不斉炭素)の立体配置(シス、トランス、又はR若しくはS)について具体的に言及していないなら、異性体のいずれか1つ、又は1種を超える異性体の混合物を指している。調製工程では、出発原料としてラセミ化合物、エナンチオマー、又はジアステレオマーを使用できる。エナンチオマー性又はジアステレオマー性の生成物が調製されるなら、それらの生成物を、通常の方法、例えば、クロマトグラフィー又は分別結晶化によって分離できる。本発明の化合物は、遊離又は水和物の形態であってもよい。
【0069】
[00117]典型的な塩基性塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム、リチウム、及びカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム及びマグネシウム塩など)、有機塩基(例えば、ベンザチン、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラバミン(N,N−ビス(デヒドロ−アビエチル)エチレンジアミンから形成される)、N−メチル−D−グルカミン、N−メチル−D−グルカミド、t−ブチルアミンなどの有機アミン)との塩、及びアミノ酸(アルギニン、リシンなど)との塩が含まれる。塩基性窒素を含む基は、低級アルキルハライド(例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチルの塩化物、臭化物及びヨウ化物)、硫酸ジアルキル(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミル硫酸)、長鎖ハライド(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルの塩化物、臭化物及びヨウ化物)、アラルキルハライド(例えば、ベンジル及びフェネチルブロミド)などの薬剤を用いて四級化できる。
【0070】
[00118]本発明は、また、本明細書中の式I〜Vの化合物のプロドラッグ形態に関する。用語「プロドラッグ」は、インビボで親薬物に転換される薬剤を指す。プロドラッグは、生物学上、薬学上又は治療上活性な形態の化合物に代謝され、又はそうでなければ転換される。プロドラッグを製造するには、薬学上活性な化合物を、代謝過程によって該活性化合物を再生するように改変する。プロドラッグは、薬物の代謝安定性又は輸送特性を変更し、副作用又は毒性を遮蔽し、薬物の風味を改善し、或いは薬物のその他の特徴又は特性を変更するように設計することができる。プロドラッグは、いくつかの状況において、親薬物に比べてより容易に投与できることがある。例えば、プロドラッグは、経口投与によって生物学的利用能があるが、親薬物ではそうでないことがあり、或いはプロドラッグは、溶解性を改善して静脈内投与を可能にすることがある。インビボでの薬力学的過程及び薬物代謝に関する知識は、当業者が、一旦薬学上活性な化合物を知ったなら、化合物のプロドラッグを設計することを可能にする。プロドラッグの各種形態は、当技術分野で周知である。このようなプロドラッグ誘導体の例については、H.Bundgaard編「Design of Prodrugs」(Elsevier、1985年)、K.Widderら編「Methods in Enzymology」42巻、309〜396頁(Academic Press、1985年);Krosgaard−Larsen及びH.Bundgaard編「A Textbook of Drug Design and Development」中のH.Bundgaardによる第5章「Design and Application of Prodrugs」113〜191頁(1991年);H.Bundgaard、Advanced Drug Delivery Reviews、第8巻、1〜38頁(1992年);H.Bundgaardら、Journal of Pharmaceutical Sciences、77巻、285頁(1988年);及びNogrady(1985年)「Medicinal Chemistry A Biochemical Approach」、Oxford University Press、ニューヨーク、388〜392頁を参照されたい。
【0071】
[00119]脱離基は、典型的には、安定な弱塩基性種として脱離できる置換基である。いくつかの事例において、脱離基はアニオンとして脱離し、他の事例では、中性分子として脱離する。「好適な脱離基」は、強酸の共役塩基であると認識できる。好適な脱離基には、数ある中でも、ハロゲン(特にI、Br及びCl)、−CC(O)R’、−SC(O)R’、−OCOR’、チオール(−SH)、スルフェニル(−SR’)、フェノキシ、ペンタフルオルフェノキシ、トシル及びトシル変形体(p−フルオロトシル、p−ブロモトシル、p−ニトロベンジルトシル、ペンタフルオロトシルを含む)が含まれ、この定義において、R’は、置換されていてもよいアルキル及びアリール基から選択することができ、具体的なR’には、C1〜C3アルキル、特にメチル基、又はピリジニウム基
【化12】
が含まれ、式中、Rは、この定義において、水素、又は水素ではない1〜5個の基を表し、数ある中でも、C1〜C3アルキル基が含まれる。本明細書中で使用されるような脱離基には、さらに、その「脱離」の結合開裂に開環が含まれる、シクロプロピル基(置換されたシクロプロピル基を含む)のような種が含まれる。この場合、混成及び電子求引性の変化で生じる環の歪みが、シクロプロピル環の開環を引き起こす。
【0072】
[00120]用語「β−ラクタム系抗生物質」は、本明細書中で広義的に使用され、β−ラクタム環構造、例えば、図6で示される環構造を含むと当技術分野で認識され、1種又は複数の微生物、特に細菌に対して抗菌活性を示す任意の化合物を指す。β−ラクタム系抗生物質には、次の参考文献、Queenerら「Beta−lactam Antibiotics for Clinical Use」1986年(Informa Health Care);及びMitsuhashi「Beta−lactam Antibiotics」1981年(学会出版センター)中に記載されているものが含まれる。
【0073】
[00121]β−ラクタム系化合物は、最も一般的には、β−ラクタム環を含む化合物であり、図4及び6中の典型的な環を参照されたい。本発明中の当該β−ラクタム系化合物は、抗菌活性及び/又は1種又は複数のβ−ラクタマーゼの阻害を示すもの、好ましくは両方の活性を示すものである。
【0074】
[00122]用語「β−ラクタマーゼ」は、本明細書中では広義的に使用され、βーラクタム環の開環を触媒する、任意の供給源に由来する酵素を指す。β−ラクタマーゼ(EC3.5.2.6)は、最も一般的には細菌によって産生される酵素である。β−ラクタマーゼは、β−ラクタム環の加水分解性開環を触媒し、ペニシリン系、ペナム系、ペネム系、セフェム系、セファロスポリン系、カルバセフェム系、セファマイシン系、及びモノバクタム系などのβ−ラクタム系抗生物質に細菌耐性を付与する原因である。いくつかのβ−ラクタマーゼは、β−ラクタムのβ−ラクタマーゼへの拡散が律速段階である熱力学的成熟に向かって進化している。遺伝子及び機構的スキームを含む多くの異なる分類系を使用して、β−ラクタマーゼを分類してきた。最も単純なレベルでは、β−ラクタマーゼを2つのカテゴリーに分類できる。セリンヒドロラーゼは、反応中に、水が基質と見なされるならPing−Pong−Bi−Bi機構で、又は溶媒水分子が無視されるならUni−Bi−Bi機構でアシル化される活性部位であるセリンを使用することによって、それらの反応を触媒する。メタロβ−ラクタマーゼは、1つ又は2つのZn++イオンを使用する水分子の直接求核攻撃を介して、ラクタム環のアミド結合の加水分解を触媒する。水が考えられるならこのBi−Bi機構、又は水が無視されるならUni−Bi機構は、アシル化された酵素中間体を介して進行しない。
【0075】
[00123]β−ラクタマーゼ阻害薬は、また、本明細書中では広義的に使用され、化学種、特に小分子(例えば、ペプチド又はタンパク質以外の分子)を指す。β−ラクタマーゼは、可逆的な競合、非競合、不競合、及び緩速結合機構(slow tight binding mechanism)、並びに非可逆的な活性部位指向型及び機構ベース型又は自殺型機構を介して、小分子によって阻害され得る。このような阻害薬分子は、β−ラクタマーゼ反応の触媒速度を低下させるか、或いはβ−ラクタマーゼがなんらかの触媒作用を少しでも実行することを完全に阻止する。可逆的競合阻害薬の例には、ボロン酸が含まれる。活性部位指向型の非可逆的阻害薬の例には、リン酸又はホスホン酸のエステルが含まれる。機構ベース型阻害薬の例には、クラブラン酸、スルバクタム及びタゾバクタムが含まれる。
【0076】
[00124]本発明の当該β−ラクタム系化合物は、1種又は複数のβ−ラクタマーゼの阻害を示すもの、及び好ましくは、それらの活性及び/又は抗菌活性の両方を示すものである。本発明のβ−ラクタマーゼ阻害薬は、クラブラン酸、スルバクタム及びタゾバクタムを包含しないが、本発明の1種又は複数の化合物は、医薬組成物又は医療用薬剤中で1種又は複数のこれらの既知阻害薬と組み合わせることができる。
【0077】
[00125]本発明の化合物は、本明細書に記載のような方法を採用して、或いは各種部類の既知のβ−ラクタム阻害薬及び既知のβ−ラクタム系抗生物質の合成に関して当技術分野で一般に周知であることを考慮して当技術分野で周知又は市販の出発原料及び試薬を用いるこれらの方法の定形的な構成を使用して、合成することができる。例えば、本発明の化合物を合成するための、さらには本発明の化合物の合成における出発原料の合成は、March;Larock「Comprehensive Organic Transformations」(VCH Publishers、1989年);Larock「Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations」第2版、(John Wiley & Sons,Inc.、1999年);Smith,March「March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure」第6版(John Wiley & Sons,Inc.、2007年);G.I.Georg「The Organic Chemistry Of.Beta−Lactams」(VCH 1992年),Page「Chemistry of Beta−Lactams」(Springer、1992年);Smith,Smith「Organic Synthesis」第2版(McGraw−Hill Science/Engineering/Math、2001年);Bruggink A,「Synthesis of[beta]−lactam Antibiotics:Chemistry,Biocatalysis & Process Integration」(Springer、2001年)中に提供されているような、周知の方法、及び容易に入手可能な原料を使用して達成できる。
【0078】
[00126]本発明の化合物、例えば、本明細書中の式のR−NH−基としてフェニルアセチル基を有する化合物を、環のこの位置に種々のアミノアシル基を有するβ−ラクタム系化合物の合成における中間体として使用できる。例えば、母核環系の7位(又は等価位)のRアミノアシル基の修飾は、当業者が、当技術分野で認識されている技術、市販の出発原料及び試薬を使用して、又は当技術分野で周知の合成方法を適用することによって完遂できる。フェニルアセチル基の除去を、例えば、PCl5、ペニシリンアミダーゼ、セファロスポリンCアミダーゼ又はペニシリンアシラーゼの使用を含むいくつかの方法の1つを介する脱アミド化によって完遂し、7位(又は等価位)に遊離のアミンを得ることができる。次いで、アミノ基を、酸性条件下でペニシリンアミダーゼの存在下で官能化されたカルボン酸を反応させることによって、或いは官能化されたカルボン酸をシクロヘキシルカルボジイミドなどの活性化剤で活性化することによって修飾できる。
【0079】
[00127]β−ラクタマーゼの阻害機構
本明細書中の化合物に関するいずれか特定の作用機構によって拘束されることを望むものではないが、次の機構的考察は、本発明の化合物によるβ−ラクタマーゼの阻害に関する本発明者らの現在の見解を提示するために提供される。高度に反応性のある求電子又は求核部位(例えば、化学部分又は基)が、特に1種又は複数のベータラクタマーゼによるβ−ラクタム環の開環によって、本発明の化合物中に生じると考えられる。ラクタム環の開環によって生じる種は、本発明の化合物中のラクタム環に共役しているいくつかの潜在的に反応性のある部分又は基から生じる。これらの部位は、それぞれ、β−ラクタマーゼ酵素の求核剤又は求電子剤に共有結合で結合する能力を有すると考えられる。
【0080】
[00128]スキーム1及び2は、酵素のセリン、チロシン、ヒスチジン、チオール、アミン又はこれらの組合せなどの基と反応する反応性求核剤の生成例を図示する。本発明の化合物との共有結合が、酵素を阻害すると考えられる。
【0081】
[00129]スキーム3及び4は、ラクタム環の開環による高度に反応性のある求核性部分の生成例を図示する。これらの化合物は、セリンβ−ラクタマーゼ酵素に対して特に良好に機能する。これら化合物の非選択性及び高い反応性のため、これらの化合物は、安定なアシル化酵素中間体を介して進行することのないメタロ−β−ラクタマーゼも標的とする。これらは、タンパク質中に豊富に存在する求電子性中心、例えば、アミド(ペプチド)結合のカルボニルと反応することのできる強力な求核剤である。
【0082】
[00130]スキーム5は、β−ラクタム環の開裂によって複数部位が活性化され、それによってβ−ラクタマーゼ酵素をアルキル化するのに利用できるようになる、多機能性自殺型阻害薬である本発明の阻害薬化合物を図示する。
【0083】
[00131]
【化13】
【0084】
[00132]
【化14】
【0085】
[00133]
【化15】
【0086】
[00134]
【化16】
【0087】
[00135]
【化17】
【0088】
[00136]当業者は、上記スキーム1〜5を概観して、そこに示した種々のβ−ラクタム環系上のビニル置換基上に、β−ラクタマーゼによるβ−ラクタム環の開裂で求電子又は求核性部位を生成する、潜在的反応性のある代替の部分及び基を導入できることを認識するであろう。
【0089】
[00137]本発明の化合物は、典型的には、医薬組成物の形態で患者に投与される。したがって、本発明は、薬学上許容される担体又は賦形剤及び治療有効量の式I〜Vの化合物又はその薬学上許容される塩を含有する医薬組成物を提供する。
【0090】
[00138]本発明の医薬組成物では、任意の従来の担体又は賦形剤を使用できる。個々の担体又は賦形剤、或いは担体又は賦形剤の組合せの選択は、個々の患者を治療するのに使用される投与方式又は細菌感染症の種類に左右される。経口、局所、吸入、又は非経口投与などの個々の投与方式に適した医薬組成物の調製は、製薬分野の当業者の知識範囲に十分に包含される。さらに、このような組成物の成分は、市販されている。例えば、従来の製剤及び製剤技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第17版(Mace Publishing Co.、1985年)及びBanker,Rhodes(編)「Modern Pharmaceutics」第4版(Marcel Dekker,Inc.2002年)中に記載されている。
【0091】
[00139]本発明の医薬組成物は、典型的には、治療有効量の式I〜Vの化合物又はその薬学上許容される塩を含有する。本発明の医薬組成物は、併用療法で有効な量の2種又はそれ以上の式I〜Vの化合物或いはその薬学上許容される塩を含有することができる。本発明の医薬組成物は、併用療法で有効な量の1種又はそれ以上の式I〜Vの化合物或いはその薬学上許容される塩を、1種又は複数の既知β−ラクタム系抗生物質と組み合わせて含有することができる。典型的には、このような医薬組成物は、約0.01%〜約99.99%、約0.1%〜約99.9%、約1%〜99%、約5%〜約95%、約10%〜約10%、又は約10%〜約50%の本発明の活性薬剤(複数可)を含有する。当業者は、既知β−ラクタム系抗生物質の治療有効量を把握しているか、或いは容易に判断できる。本発明の化合物は、抗菌活性及び/又はβ−ラクタマーゼ阻害を示すことができる。抗菌効果のための本発明の化合物の量又は併用治療で有効な量は、β−ラクタマーゼ阻害のための量と異なる可能性がある。当業者は、過度の実験なしに当技術分野で周知の技術を使用して、本発明の化合物の治療有効量を判断できる。本発明のβ−ラクタマーゼ阻害薬を、既知のβ−ラクタマーゼ抗生物質又は本発明のβ−ラクタマーゼ抗生物質と組み合わせた医薬組成物において、典型的に採用される治療有効量は、β−ラクタマーゼの阻害を達成するための量である。
【0092】
[00140]本発明の医薬組成物には、非経口投与、特に静脈内投与に適した医薬組成物が含まれる。このような医薬組成物には、典型的には、治療有効量又は併用量の式I〜Vの化合物、或いはその薬学上許容される塩を含む、無菌の生理学上許容される水性溶液が含まれる。活性薬剤の静脈内投与に適した生理学上許容される水性担体溶液は、当技術分野で周知である。このような水性溶液には、数ある中でも、5%デキストロース、リンガー溶液(乳酸加リンガー注射液、乳酸加リンガー+5%デキストロース注射液、アシル化リンガー注射液)、ノルモソル(Normosol)−M、イソライト(Isolyte)Eなどが含まれる。このような水性溶液は、任意選択で、共溶媒(例えば、ポリエチレングリコール)、キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)、可溶化剤(例えば、シクロデキストリン)、抗酸化剤(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム)などを含むことができる。
【0093】
[00141]本発明の水性医薬組成物は、凍結乾燥し、その後、投与に先立って適切な担体で再構成することができる。この組成物中の担体は、例えば、蔗糖、マンニトール、デキストロース、デキストラン、乳糖、又はこれらの組合せを含む。
【0094】
[00142]本発明の医薬組成物には、活性成分を固体の担体又は賦形剤と組み合わせた、経口投与のための医薬組成物が含まれる。経口剤形のための担体及び賦形剤の選択は、当業者の知識範囲に包含される。
【0095】
[00143]本発明の医薬組成物は、単位剤形の状態で包装できる。この用語は、患者に投与するのに適した物理的に別個の単位、即ち、単独で、又は1種又は複数の付加的単位と併用して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性薬剤を含有するそれぞれの単位を指す。単位剤形には、数ある中でも、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、エリキシル、シロップ、クリーム、ローション、軟膏、スプレー及びエアロゾルが含まれる。例えば、このような単位剤形は、無菌の瓶、バイアル瓶、チューブ、噴霧器、エアロゾルディスペンサー、密閉アンプル中などに包装できる。
【0096】
[00144]本発明の化合物は、抗生物質として有用である。例えば、本発明の化合物は、ヒト及び動物(即ち、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタなど)を含む哺乳動物における、本発明の化合物に敏感な微生物によって引き起こされる細菌感染症及びその他の細菌関連性の医学的状態を治療又は予防するのに有用である。本発明は、哺乳動物における細菌感染症の治療方法を提供し、該方法は、治療を必要とする哺乳動物に、薬学上許容される担体、及び治療有効量又は併用して治療有効量の1種又は複数の式I〜Vの化合物或いはその薬学上許容される塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。
【0097】
[00145]本発明の化合物は、抗菌組成物の成分として有用である。例えば、本発明の化合物は、ヒト及び動物(即ち、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタなど)を含む哺乳動物における、本発明の化合物に敏感な微生物によって引き起こされる細菌感染症及びその他の細菌関連性の医学的状態を、既知のβ−ラクタム系抗生物質と組み合わせて治療又は予防するのに有用である。本発明は、哺乳動物における細菌感染症の治療方法を提供し、該方法は、治療を必要とする哺乳動物に、薬学上許容される担体、及び併用して治療有効量の、本発明のβ−ラクタム系抗生物質を含む既知のβ−ラクタム系抗生物質、及び1種又は複数の式I〜Vのβ−ラクタマーゼ阻害薬又はその薬学上許容される塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。
【0098】
[00146]本発明の化合物は、グラム陽性細菌及び関連微生物によって引き起こされる感染症を治療又は予防するのに有用である。例えば、本発明の化合物は、特定のエンテロコッカス属、スタフィロコッカス属(凝固酵素陰性ブドウ球菌(CNS)を含む)、ストレプトコッカス属、リステリア属、クロストリジウム属、バチルス属などによって引き起こされる感染症を治療又は予防するのに有効である。本発明の化合物で効果的に治療される細菌種の例には、限定はされないが、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)、グリコペプチド中間体感受性黄色ブドウ球菌(GISA)、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermitis)(MRSE)、メチシリン感受性表皮ブドウ球菌(MSSE)、バンコマイシン感受性腸球菌(Enterococcus faecalis)(EFSVS)、バンコマイシン感受性腸球菌(Enterococcus faecium)(EFMVS)、ペニシリン耐性肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)(PRSP)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、炭素菌(Bacillus anthracis)などが含まれる。
【0099】
本発明の化合物は、グラム陰性細菌及び関連微生物によって引き起こされる感染症を治療又は予防するのに有用である。例えば、本発明の化合物は、特定のエシェリキア属、サルモネラ属、ナイセリア属、ヘリコバクター属などによって引き起こされる感染症を治療又は予防するのに有効である。本発明の化合物で効果的に治療される細菌種の例には、限定はされないが、大腸菌(Escherichia coli)0157:H7、サルモネラエンテリカ菌(Salmonella enterica)、チフス菌(Salmonella typhi)、赤痢菌(Shigella dysenteriae)、ペスト菌(Yersinia pestis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、百日咳菌(Bordetalla petussis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクターピロリ菌(Helicobacter pylori)、ヘリコバクターフェリス菌(Helicobacter felis)、カンピロバクタージェジュニ菌(Campylobacter jejuni)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、バクテロイデスフラジリス菌(Bacteroides fragilis)などが含まれる。
【0100】
[00147]本発明の化合物は、また、限定はされないが、梅毒トレポネーマ菌(Treponema pallidum)、ライム病菌(Borrelia burgdorferi)、リケッチア属などを含む、グラム染色によって伝統的には類別されない細菌によって引き起こされる感染症を治療又は予防するのに有用である。
【0101】
[00148]本発明の化合物で治療又は予防できる感染症又は細菌関連性の医学的状態の典型的な種類には、限定はされないが、皮膚及び皮膚構造体の感染症、尿路感染症、肺炎、心内膜炎、カテーテル関連血流感染症、骨髄炎などが含まれる。このような状態を治療する際に、患者は、治療されるべき微生物に既に感染していても、微生物に感染していると疑われていても、或いは単に、活性薬剤を予防的に投与する感染症に敏感であるだけであってもよい。
【0102】
[00149]本発明の化合物は、典型的には、治療有効量で、任意の許容される投与経路で投与される。化合物は、1日1回の投与、又は1日に複数回の投与で投与することができる。治療計画は、長期間にわたる、例えば、数日間又は1〜6週間若しくはそれ以上の投与を必要とすることもある。1回当たり投与される活性薬剤量、又は総投与量は、典型的には、患者の主治医によって決定され、感染症の性質及び重症度、患者の年齢、体重及び全体的健康状態、活性薬剤に対する患者の耐容性、感染症を引き起こしている微生物(複数可)、投与経路などの要因によって左右される。β−ラクタム系抗生物質に関する典型的な投与量範囲は、100mg〜数gである。
【0103】
[00150]さらに、本発明の化合物は、一般に、細菌の増殖を阻害するのに有効である。この実施形態では、細菌を、インビトロ(in vitro)又はインビボで、増殖を阻害する量の式I〜Vの化合物又はその薬学上許容される塩と接触させる。細菌増殖の阻害は、典型的には、細菌による繁殖の減少又は欠如によって、及び/又は細菌の溶解によって、即ち、所定容積中での所定期間(即ち、時間当たり)にわたるコロニー形成単位の、未処理細菌と比較した減少によって証明される。本発明の化合物は、静菌性又は殺菌性でもよい。細菌増殖を阻害するのに有効なβ−ラクタム系抗生物質の典型的な濃度は、mL当たりでマイクログラムの数十分の1〜数十倍の範囲である。
【0104】
[00151]加えて、本発明の化合物は、一般に、β−ラクタマーゼを阻害するのに有効である。この実施形態では、β−ラクタマーゼを、インビトロで又はインビボで、阻害量の式I〜Vの化合物又はその薬学上許容される塩と接触させる。β−ラクタマーゼを阻害するためのβ−ラクタム阻害薬の典型的な有効濃度は、mL当たりでマイクログラムの数十分の1〜数十倍の範囲である。
【0105】
[00152]本発明の化合物は、また、細菌における細胞壁の生合成を阻害することができる。この実施形態では、細菌を、インビトロ又はインビボで、細胞壁の生合成を阻害する量の式Iの化合物又はその薬学上許容される塩と接触させる。細胞壁の生合成を阻害するためのβ−ラクタム阻害薬の典型的な有効濃度は、mL当たりでマイクログラムの数十分の1〜数十倍の範囲である。
【0106】
[00153]本発明は、さらに、微生物感染症、特に細菌感染症、特に、β−ラクタマーゼが存在するために1種又は複数のβ−ラクタム系抗生物質に対して耐性を示す細菌感染症を治療するための医療用薬剤の製造における、1種又は複数の本発明の化合物の使用に関する。該医療用薬剤は、治療有効量又は併用量の1種又は複数の本発明の化合物、特に、微生物及び/又は細菌の阻害を示すそれらの化合物を含有する。より具体的には、本発明は、このような微生物及び細菌感染症を治療するための医療用薬剤の製造における、1種又は複数の本明細書中の式の化合物の使用に関する。特定の実施形態において、製造される医療用薬剤は、経口、光学、非経口、又は錠剤、カプセル、溶液、クリーム、軟膏のようなその他の適切な形態の投与に適した剤形、或いはその他の適切な剤形である。特定の実施形態において、医療用薬剤は、さらに、薬学上許容される担体、賦形剤、又は希釈剤、特に、経口又は非経口投与に適した担体又は希釈剤を含有する。
【0107】
[00154]本発明は、さらに、微生物感染症、特に細菌感染症、特に、β−ラクタマーゼが存在するために1種又は複数のβ−ラクタム系抗生物質に対して耐性を示す細菌感染症を治療するための医療用薬剤の製造における、1種又は複数の本発明の化合物のβ−ラクタマーゼ阻害薬としての使用に関する。本実施形態において、該医療用薬物は、治療有効量のβ−ラクタム系抗生物質をさらに含有する。より具体的には、本発明は、このような微生物及び細菌感染症を治療するための医療用薬剤の製造における、1種又は複数の本明細書中の式の化合物の使用に関する。特定の実施形態において、製造される医療用薬剤は、経口、光学、非経口、又は錠剤、カプセル、溶液、クリーム、軟膏のようなその他の適切な形態の投与に適した剤形、或いはその他の適切な剤形である。特定の実施形態において、医療用薬剤は、さらに、薬学上許容される担体、賦形剤、又は希釈剤、特に、経口又は非経口投与に適した担体又は希釈剤を含有する。
【0108】
[00155]特定の実施形態において、本発明は、微生物感染症、特に細菌感染症、特に、β−ラクタマーゼが存在するために1種又は複数のβ−ラクタム系抗生物質に対して耐性を示す細菌感染症を治療するための医療用薬剤の製造における、1種又は複数の本発明の化合物の使用を提供する。特定の実施形態において、製造される医療用薬剤は、錠剤、カプセル又は溶液などの経口又は非経口剤形である。特定の実施形態において、医療用薬剤は、さらに、薬学上許容される担体又は希釈剤、特に経口又は非経口投与に適した担体又は希釈剤を含有する。
【0109】
[00156]なんらかの特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明に関して根底をなす原理及び作用機構の確信又は理解について、本明細書中で考察することができる。本発明の実施形態は、なんらかの機構的説明又は仮説の最終的正確性に関係なく、それでもなお、効果をもたらし、有用であり得ることが認識される。
【0110】
[00157]本明細書中で置換基の群を開示する場合、その群及びすべての下位群中の全個別メンバーは、群メンバーの任意の異性体、エナンチオマー及びジアステレオマーを含めて、個別的に開示されていると解される。本明細書中でマーカッシュ群又はその他の群分けを使用する場合、群の全個別メンバー及び群メンバーの可能なすべての組合せ及び下位組合せは、該開示中に個別的に包含されていると解釈される。多様な定義中のいくつかの具体的な基は、本明細書中に記載されている。多様な定義中の具体的な基のすべての組合せ及び下位組合せは、本開示中に個別的に含まれると解釈される。当業者は、同一化合物を様々に命名する場合があることが知られているので、特定の化合物名は、例示的であると解釈される。
【0111】
[00158]本明細書に記載の化合物は、1種又は複数の異性形態、例えば、構造又は光学異性体で存在できる。本明細書中で、化合物が、その化合物の個々の異性体、エナンチオマー又はジアステレオマーを、例えば、式又は化学名で特定しないように説明される場合、その説明は、個々に又は任意の組合せで説明される化合物のそれぞれの異性体及びエナンチオマー(例えば、シス/トランス異性体、R/Sエナンチオマー)を含むと解釈される。
【0112】
[00159]さらに、特記しない限り、本明細書中で開示される化合物のすべての同位体バリアントは、該開示に包含されると解釈される。例えば、開示された分子中の任意の1つ又は複数の水素を、重水素又は三重水素で代替できると解される。分子の同位体バリアントは、分子のアッセイにおける、及び分子又はその使用に関する化学的及び生物学的研究における基準品として一般に有用である。同位体バリアントは、また、放射性同位元素を含むものを含め、生物学的研究、診断アッセイ、及び治療学において有用である可能性がある。このような同位体バリアントの調製方法は当技術分野で周知である。
【0113】
[00160]本明細書中で開示される分子は、1つ又は複数のイオン化可能な基[それからプロトンを除去できる基(例えば、−COOH)、又はプロトンを付加できる基(例えば、アミン)、又は四級化できる基(例えば、アミン)]を含むことができる。このような分子の考え得るすべてのイオン性形態、及びその塩は、本明細書中の開示中に個別的に含まれると解釈される。本明細書中の化合物の塩に関して、当業者は、広範な種類の利用可能な対イオンの中から、所定の応用に向けて本発明の塩を調製するのに適切である対イオンを選択できる。特定の応用において、塩を調製するのに所定のアニオン又はカチオンを選択すると、その塩の溶解性の増減をもたらす可能性がある。
【0114】
[00161]当業者は、具体的に例示されたもの以外の、合成方法、出発原料、試薬、β−ラクタマーゼ、β−ラクタム系抗生物質、市販のβ−ラクタム系抗生物質、酵素アッセイ、β−ラクタマーゼ活性のアッセイ、医薬製剤及び剤形を、過度な実験に頼ることなく、本発明を実施するのに採用できることを認識するであろう。任意のこのようなアッセイ方法、出発原料、合成方法、出発原料、試薬、β−ラクタマーゼ、β−ラクタム系抗生物質、市販のβ−ラクタム系抗生物質、酵素アッセイ、β−ラクタマーゼ活性のアッセイ、医薬製剤及び剤形の当技術分野で周知のすべての機能的同等物は、本発明中に包含されると解釈される。
【0115】
[00162]本明細書中で、範囲、例えば、化学基又は部分中の元素数の範囲(例えば、炭素数の範囲(例えば、C1〜C3))、任意の整数の範囲、任意の置換基数の範囲、温度範囲、時間範囲、又は組成範囲が示される場合にはいつでも、すべての中間範囲及び下位範囲、並びに示された範囲に含まれるすべての個別値は、その開示に包含されると解釈される。任意の下位範囲又は個別値、或いは説明中に包含される範囲又は下位範囲中の値は、本発明のクレームから排除できると解される。
【0116】
[00163]本明細書中で使用する場合、「含んでいる」は、「包含する」、「含む」又は「特徴とする」と同義であり、包括的である、即ち限界がなく、列挙されていない付加的な要素又は方法のステップを除外しない。本明細書中で使用する場合、「〜からなる」は、クレーム要素中で特定していない任意の要素、ステップ又は成分を除外する。本明細書中で使用する場合、「本質的には〜からなる」は、クレームの基本的で新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップを除外しない。特に、組成物の成分の説明、又はデバイス要素の説明において、本明細書中で広義の用語「含んでいる」を使用する場合には、いつでも、用語「本質的には〜からなる」又は「〜からなる」を包含し、記述すると解釈される。本明細書中で例示的に説明される本発明は、適切には、本明細書中で具体的に開示されない任意の要素又は要素群、制約又は制約群の不在下で実施できる。
【0117】
[00164]本明細書中の説明は、多くの詳細を含むが、これらの詳細は、本発明の範囲を限定するものではなく、単に、本発明の若干の実施形態に関する実例を提供するものと解釈すべきである。優先権を主張する特許文書以外の、本明細書中で引用されるすべての参考文献は、ここで、参照により本明細書の開示と矛盾がない程度まで組み込まれる。本明細書中で提供される若干の参考文献は、本発明のさらなる出発原料、さらなる合成方法、さらなる分析方法、及びさらなる使用に関する詳細を提供するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
[00165]採用してきた用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、このような用語及び表現の使用において、示され且つ説明される特徴の任意の同等物、又はその部分を除外する意図はなく、種々の修正形態が、クレームされる本発明の範囲に包含される可能性があると認識される。したがって、本発明は、実施例によって具体的に開示されているが、当業者は、好ましい実施形態及び任意選択の特徴、本明細書中で開示される概念の修正形態及び変形形態に至ることができ、このような修正形態及び変形形態は、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲に包含されると考えられると理解されたい。
【0119】
[00166]本明細書中で言及されるすべての特許及び刊行物は、本発明が属する技術分野の当業者の技術レベルを示す。本明細書中で引用される参考文献は、それらの刊行又は提出時点での技術水準を示すために、参照によりそれらの全体で本明細書中に組み込まれ、この情報は、必要なら、先行技術中に存在する特定の実施形態を除外するために、本明細書中で採用できると解釈される。例えば、化合物をクレームする場合、本出願人の発明に先立って当技術分野で周知で利用可能な化合物を、権能を付与する開示が本明細書中で引用される参考文献中に提供されている化合物を含めて、本明細書中の化合物クレーム中に含めて除外することができると理解されたい。本明細書中で提供されるいくつかの参考文献は、参照により組み込まれ、合成方法、出発原料、試薬、既知のβ−ラクタム系抗生物質、医薬製剤及びこのような製剤の成分、このような医薬組成物の投与方法、精製方法、及び分析方法、並びに本発明のさらなる用途に関する詳細を提供する。
【実施例】
【0120】
実施例1
[00167]β−ラクタマーゼ活性のアッセイ(I)
発色性セファロスポリン、セフェゾン(Cefesone)は、Suttonらによって発表されているように合成、単離され、p−ラクタマーゼ活性をモニターするのに使用される。典型的なアッセイは、486nmに吸収を有する種(モル吸光度定数16,000)の形成を介してセフェゾンの加水分解をモニターする。吸収は、0.1Mリン酸ナトリウム(pH7.0)、0.2mMセフェゾン及び4容積%のDMSO共溶媒中で、30℃でキュベットホルダーに連結された循環水浴を備えたBeckman DU−40分光光度計を使用して、時間の関数としてモニターされる。アッセイは、適切な量のβ−ラクタマーゼの添加及び混合によって開始される。
【0121】
[00168]β−ラクタマーゼ活性のアッセイ(II)
β−ラクタマーゼ活性をモニターする別の方法には、十分なセフェゾンを酢酸エチルに溶解して3μg/μLの溶液を調製することを含めた。次いで、10μLのこの溶液を6mmの拡散ディスクに塗り広げた。活性をモニターするには、ディスクを水で湿らせ、β−ラクタマーゼを含む溶液の少量のアリコートを、ディスクに塗り広げ、明黄色から深赤紫色への色変化を視覚でモニターする。典型的には、最初の検出可能な可視の色変化までの時間を記録する。
【0122】
実施例2
[00169]次の実施例は、式Iの化合物の1つの好ましいサブセットに属する化合物(XX)
【化18】
(該化合物は、セフェム母核を有し、M基は、シクロプロパン環を有する)の合成を対象とし、
[00170]式中、変数は、前に各種の式中で定義された通りである。該方法は、より具体的には、式中のRが、R’−NH−、アミンであり、式XX中のR’、最も一般的にはRが、プロトン又は薬理学上許容される官能基又は塩であり、各R1、R2、各R’’、R6及びR7が、水素、ハロゲン又は有機官能基(官能化されたアルキル、カルボニル、エステル、カルバメート、及びその他の電子求引基を含む)から独立に選択される、式XXの化合物に適用される。該方法は、より具体的には、式中の各R’’、R6、及びR7が、水素、ハロゲン、カルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、芳香族カルボニル基、カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、第一級、第二級及び第三級の脂肪族及び芳香族アミンからなる群から選択される、式XXの化合物に適用される。このサブセットの化合物において、β−ラクタム環系のNは、π電子系を介してM中の電子求引性シクロプロピル基に共役している。この共役は、(例えば、β−ラクタマーゼ酵素により)ラクタム環が開環された後に、シクロプロピル環を開環するための電子再配置を容易にする。
【0123】
[00171]セフェム化合物(式XX)の1つの合成方法は、式XXI若しくは式XXIIの化合物
【化19】
[00172](ここで、式XXI及びXXII中のXXは、塩素、臭素又はヨウ素などの任意のハロゲンを表し、4−カルボン酸基(−CO−Y)は、反応を実施するのに必要なら保護されていてもよい)又はその反応性誘導体を、
[00173]式XXIIIの化合物
【化20】
又はその反応性誘導体と反応させることによる。
【0124】
[00174]式XXの化合物は、また、式XXIVの化合物又はその反応性誘導体を式XXVの化合物
【化21】
と反応させることによっても合成できる。
【0125】
[00175]反応後に、従来の当技術分野で周知の方法によって、4−カルボキレート基の任意の保護基を除去できる。当業者は、Rがアミンである場合、従来の方法により、7−アミノ位をアシル基などの基で官能化してアミノアシル基を形成することを完遂できる。当業者は、また、Rがアシル基である場合、従来の方法により、あるアミノアシル基を他のアミノアシル基に転換する方法を完遂できる。当業者は、構造XXの化合物の合成において形成される不飽和結合の異性化を、従来の方法で実行できる。当業者は、示された方法を、水素以外のR1及びR2基を得るように容易に構成することができる。
【0126】
代表的合成例:3−ビニルシクロプロパン−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸の合成
【0127】
[00176]20mLの塩化メチレン及び10mLのTHF中に、1g(2mmol)の3−クロロメチル−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸4−メトキシベンジル、800mg(3mmol)のトリフェニルホスフィン、及び1.4g(20mmol)のシクロプロパンカルボキシアルデヒドを溶解した。この溶液に、400mg(2.5mmol)のKI及び5mLの10%重炭酸ナトリウムを添加した。Kameyamaの米国特許第6417351号明細書(2002年7月9日)の方法に従って、混合物を、暗所で一夜、激しく撹拌した。水相を、分離し、廃棄した。有機相を、水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。生成物を、最初に塩化メチレンで過剰のトリフェニルホスフィン及びシクロプロパンカルボキシアルデヒドを溶出させ、続いてクロロホルムで所望の生成物を溶出させるフラッシュ真空クロマトグラフィーによって精製した。5/1(v/v)のトルエン/酢酸エチルを用いるシリカゲルTLCで同じRfを有する生成物画分を集め、溶媒を蒸発させて、4−カルボキシルが保護された化合物(1)
【化22】
を得た。ここで、セフェム環の立体化学は、具体的に示していないが、式XX中で示したものである。
【0128】
[00177]保護された生成物(1)を、塩化メチレンに溶解し、Leeら(2005)J.Organ.Chem.70(1):367〜369の方法に従って、TFA及びアニソールで処理した。溶媒を急速に蒸発させ、石油エーテルと共に磨り潰して、3−ビニルシクロプロパン−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸(2)
【化23】
(やはり、セフェム環の立体化学は、具体的に示していないが、式XX中のものである)を黄色固体として単離した。
【0129】
[00178]示した方法を採用してβ−ラクタム分子を修飾し、それらの分子上に、ラクタム環系の開環によってβ−ラクタム化合物中に1つ又は複数の反応性中間体を形成する特性を付与することができる。該反応性中間体は、次いで、1種又は複数のβ−ラクタマーゼと反応して、それらを不可逆的に阻害することができる。
【0130】
実施例3
β−ラクタマーゼの産生阻害
[00179]エンテロバクター・クロアカ(Enterobactercloacae)由来の酵素(Sigma−Aldrich社、St.Louis、ミズーリ州)を使用するβ−ラクタマーゼのアッセイを、化合物(2)について前記実施例1(アッセイI)の通り実施した。初速度を測定した後、反応を2時間継続した。486nmでの最大理論吸光度は、ほぼ1.6であるが、観測された最終吸光度は、一貫して0.26であった。この結果は、次式
【化24】
で示されるような生成物阻害と矛盾しない。
【0131】
[00180]上式中、Eは酵素であり、Sは基質であり、Pは生成物であり、ESは酵素−基質複合体であり、EPは酵素−生成物複合体であり、k1、k−1、k2及びk−2は、速度定数であり、kcatは触媒速度定数である。生成物阻害の場合、k−2は、k2に比べて大きく、その結果、酵素−生成物が蓄積し、より多くの酵素が、酵素−生成物複合体中に結び付けられ、触媒として利用できない。
【0132】
実施例4
3−ビニルシクロプロパン−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸(2)によるβ−ラクタマーゼの時間依存性阻害
[00181]阻害薬なしでの初期対照速度は、1μLの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)、10μLのDMSO、及びエンテロバクター・クロアカに由来する5μLの0.1単位/mLβ−ラクタマーゼに30℃で添加することによって測定される。反応は、20μLの0.1mMセフェゾン/DMSOを添加して開始され、初期速度が測定される。阻害反応は、DMSOを、0.1mMの3−ビニルシクロプロパン−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸(2)/DMSOで代替すること、及び長時間インキュベートした後にセフェゾンを添加して反応を開始することによって測定される。200μMの3−ビニルシクロプロパン−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸での不活性化プロフィールを図1に示す。500μMの阻害薬を含む又は含まない10mLの0.1単位/mLβ−ラクタマーゼの、1Lの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に対する透析(交換1回)は、活性の復帰を示さなかった。
【0133】
実施例5
[00182]次の実施例は、式Iの化合物の1つの好ましいサブセットに属する化合物の合成を対象とし、それらの化合物(XXVI)
【化25】
は、セフェム母核を有し、M基は、1つ又は複数の適切に配置された脱離基をもつフェニル環を有する。フェニル環及びその脱離基は、π−電子系を介してβ−ラクタム環のNに共役している。
【0134】
[00183]式XXVIにおいて、最も一般的には、変数は、前の式Iに関して定義した通りである。より具体的には、R10及びR8は、水素、ハロゲン、チオール、カルボニルをもつ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、芳香族基、置換芳香族基、カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、第一級、第二級及び第三級脂肪族及び芳香族アミンで例示され、式中、XXは、ラクタムの窒素に共役した適切な脱離基を表す。より具体的には、R、Y、R1及びR2は、実施例2で式XXについて定義した通りである。やはり、−CO−Y基は、所望なら、保護されたカルボニルであることができる。特定の実施形態において、R10及びR8は、水素又はメチル基である。特定の方法において、脱離基は、ハロゲン、特にI、Br又はCl、ピリジニウム、或いはチオール基、最も特定的にはBrである。
【0135】
[00184]合成方法は、実施例2の方法に類似している。セフェム系化合物(XXVI)の1つの合成方法は、式XXI又はXXII(前記実施例2)の化合物又はその反応性誘導体を、式XXVII
【化26】
の化合物又はその反応性誘導体と反応させることによる。
【0136】
[00185]式XXVIの化合物は、また、式XXIV(実施例2)の化合物又はその反応性誘導体を、式XXVIII
【化27】
の化合物と反応させることによって合成することができ、
[00186]式中、変数XXは、それぞれ、同一の脱離基、例えば、Brである。当業者は、所望なら、該方法を、生成物XXVIの脱離基が中間体XXVIIIの脱離基と異なるように構成することができる。
【0137】
[00187]反応後に、従来の当技術分野で周知の方法によって、4−カルボキシレート基の任意の保護基を除去できる。当業者は、Rがアミンである場合、従来の方法により、7−アミノ位をアシル基などの基で官能化してアミノアシル基を形成することを完遂できる。当業者は、また、Rがアシル基である場合、従来の方法により、あるアミノアシル基を他のアミノアシル基に転換する方法を完遂できる。当業者は、構造XXVIの化合物の合成において形成される不飽和結合の異性化を、従来の方法で実行できる。当業者は、示された方法を、水素以外のR1及びR2基を得るように容易に構成することができる。
【0138】
代表的合成例:3−(1−ブロモメチル−4−ビニルベンゼン)−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸の合成
[00188](1)75mLのアセトン中に、972mg(2mmol)の3−クロロメチル−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸4−メトキシベンジル及び410mgのKIを溶解した。直ちに、微細な雲状沈殿が形成された。混合物を3時間撹拌し、アセトンを蒸発させ、混合物を35mLの塩化メチレンに溶解した。混合物を濾過し、固体を廃棄すると、母液は、生成物である3−ヨードメチル−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸4−メトキシベンジルを含んでいた。
【0139】
[00189](2)トリフェニルホスフィン(0.81g)を母液に溶解し、溶液を、暗所で一夜撹拌して、3−ホスホニウムブロミドメチル−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸4−メトキシベンジルの塩を形成した。
【0140】
[00190](3)溶液を、追加の50mL塩化メチレンで希釈し、次いで、50mLの飽和重炭酸ナトリウムと共に激しく撹拌した。このスラリーに、31mLの塩化メチレンに溶解した1.22gの4−ブロモメチルベンズアルデヒドを0.5〜1時間にわたってゆっくり添加した。次いで、反応物を一夜撹拌した。
【0141】
[00191](4)有機層を、分離、保持し、1.0NのNaClで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで、溶媒を蒸発させてオイル状の残留物を収得し、次いで、該残留物を、最小量の塩化メチレンに溶解した。生成物を、最初に塩化メチレンで過剰のトリフェニルホスフィン及びシクロプロパンカルボキシアルデヒドを溶出させ、続いてクロロホルムで所望の生成物を溶出させるフラッシュ真空クロマトグラフィーによって精製した。5/1(v/v)のトルエン/酢酸エチルを用いるシリカゲルTLCで同じRfを有する生成物画分を集め、溶媒を蒸発させて、保護された生成物(3)
【化28】
を得た。
【0142】
[00192]生成物(3)を、塩化メチレンに溶解し、Leeらの方法に従って、TFA及びアニソールで処理した。溶媒を急速に蒸発させ、石油エーテルと共に磨り潰して、3−(1−ブロモメチル−4−ビニルベンゼン)−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸(4)
【化29】
を黄色固体として単離した。
【0143】
実施例6
[00193]化合物(4)のβ−ラクタマーゼ阻害に関するアッセイは、やはりエンテロバクター・クロアカ由来の酵素を使用して実施例3のように実施する。
[00194]化合物XIによるβ−ラクタマーゼの時間依存性阻害は、実施例4のように実施する。100μMの3−(1−ブロモメチル−4−ビニルベンゼン)−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸での不活性化プロフィールを図2に示す。
【0144】
[00195]500μMの阻害薬を含む又は含まない10mLの0.1単位/mLβ−ラクタマーゼの、1Lの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)(交換1回)に対する透析は、活性の復帰を示さなかった。
【0145】
実施例7
4−ジフェニルメチル−3−[2−(3,3−ジクロルオキシラン−2−イル)ビニル]−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボキシレートの合成
[00196]20mLの塩化メチレン及び10mLのTHF中に、1g(2mmol)の4−ジフェニルメチル−3−クロロメチル−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボキシレート、800mg(3mmol)のトリフェニルホスフィン、及び2.8g(20mmol)の3,3−ジクロロオキシラン−2−カルボキシアルデヒドを溶解する。この溶液に、400mg(2.5mmol)のKI及び5mLの10%重炭酸ナトリウムを添加する。混合物を、Kameyamaの方法(同上)に従って、暗所で一夜、激しく撹拌する。水相を、分離し、廃棄する。有機相を、水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮する。生成物を、最初に塩化メチレンで過剰のトリフェニルホスフィン及びアルデヒドを溶出させ、続いてクロロホルムで所望の生成物を溶出させるフラッシュ真空クロマトグラフィーによって精製する。5/1(v/v)のトルエン/酢酸エチルを用いるシリカゲルTLCで同じRfを有する生成物画分を集め、溶媒を蒸発させて、保護された生成物(5)
【化30】
を得る。
【0146】
3−[2−(3,3−ジクロルオキシラン−2−イル)ビニル]−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸の合成
[00197]生成物(5)を、塩化メチレン中に溶解し、Leeらの方法に従ってTFA及びアニソールで処理する。溶媒を急速に蒸発させ、石油エーテルと共に磨り潰して標題化合物(6)
【化31】
を単離する。
【0147】
実施例8
4−ジフェニルメチル−3−[2−(2−メチル−5−オキソイソキサゾリジン−3−イル)ビニル]−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボキシレートの合成
[00198]20mLの塩化メチレン及び10mLのTHF中に、1g(2mmol)の4−ジフェニルメチル−3−クロロメチル−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボキシレート、800mg(3mmol)のトリフェニルホスフィン、及び2.8g(20mmol)の3,3−ジクロロオキシラン−2−カルボキシアルデヒドを溶解する。この溶液に、400mg(2.5mmol)のKI及び5mLの10%重炭酸ナトリウムを添加する。混合物を、Kameyamaの方法(同上)に従って、暗所で一夜、激しく撹拌する。水相を、分離し、廃棄する。有機相を、水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮する。生成物を、最初に塩化メチレンで過剰のトリフェニルホスフィン及びアルデヒドを溶出させ、続いてクロロホルムで標題化合物(7)を溶出させるフラッシュ真空クロマトグラフィーによって精製する。5/1のトルエン/酢酸エチルを用いるシリカゲルTLCで同じRfを有する生成物画分を集め、溶媒を蒸発させて、保護された生成物(7)
【化32】
を得る。
【0148】
3−[2−(2−メチル−5−オキソイソキサゾリジン−3−イル)ビニル]−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボキシレートの合成
[00199]保護された生成物(7)を、塩化メチレンに溶解し、Leeらの方法(同上)に従ってTFA及びアニソールで処理する。溶媒を急速に蒸発させ、石油エーテルと共に磨り潰して標題化合物(8)
【化33】
を単離する。
【0149】
実施例9
4−メトキシベンジル−3−(1−ピリジニウムメチル−4−ビニルベンゼン)−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボキシレートの合成
[00200]20mLの塩化メチレン中に、1.21g(2mmol)の4−メトキシベンジル−3−(1−ブロモメチル−4−ビニルベンゼン)−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボキシレート及び160mgのピリジンを溶解し、暗くした容器中で一夜撹拌する。塩化メチレンを真空下で除去し、標題化合物(9)
【化34】
を集める。
【0150】
3−(1−ピリジニウムメチル−4−ビニルベンゼン)−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸(臭化物塩として)の合成
[00201]保護された生成物(9)を塩化メチレンに溶解し、Leeらの方法(同上)に従ってTFA及びアニソールで処理する。溶媒を急速に蒸発させ、石油エーテルと共に磨り潰して、標題化合物(10)
【化35】
を単離する。
【0151】
前述の実施例は、本発明の方法及び化合物を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されない。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、両方とも2007年10月9日に出願の米国特許仮出願第60/997898号及び60/997941号明細書に基づく利益を主張する。これらの特許出願はそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[発明の背景]
[0002]本発明は、β−ラクタマーゼ阻害薬化合物、それらの製造及び使用に関する。
【0003】
[0003]本発明、及び細菌によって引き起こされる感染性疾患を治療するための抗生物質の使用は、現代の医学及び科学技術の画期的出来事の1つである。β−ラクタム系の抗生物質は、最も重要なものの1つであり続けている。抗生物質に対する耐性は、世界的に大きな問題になっている。β−ラクタム系抗生物質に対する最も重要な耐性機構の1つが、細菌によるβ−ラクタマーゼ(ラクタム環の加水分解を触媒し、抗生物質の標的であるペニシリン結合タンパク質への結合に関して抗生物質を無能にすることによって、β−ラクタム系抗生物質を不活性化する酵素)の産生である。
【0004】
[0004]β−ラクタマーゼによる不活性化を回避するためのこれまでの試みは、β−ラクタム系化合物を種々の有機基で官能化することによってそれらの化合物を改変し、抗菌力を維持しながらβ−ラクタムの加水分解に対する耐性を付与することであった。しかし、β−ラクタマーゼの進化は着実に進み、今や、臨床で利用可能な既知のあらゆるβ−ラクタム系抗生物質を不活性化できるβ−ラクタマーゼが存在し、500種を超えるβ−ラクタマーゼが報告されている。
【0005】
[0005]機構によっておおまかに定義すれば、2つの基本的部類のβ−ラクタマーゼ、即ち、セリンヒドロラーゼ及びメタロ−ヒドロラーゼが存在する。該酵素は、β−ラクタム系化合物に対するそれらの酵素の活性スペクトルによってグループに細別して、さらに分類することができる。セリンヒドロラーゼは、ペニシリナーゼであるBushクラスAに下位分類される。クラスCの酵素は、セファロスポリナーゼを指す。一方、クラスDの酵素は、広帯域型又は基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ(ESBL)である。BushクラスBのβ−ラクタマーゼは、活性のために1つ又は2つのZn2+イオンを必要とし、さらにβ−ラクタム系抗生物質に対して広帯域の活性を示す、金属酵素を指す。別の戦略は、β−ラクタマーゼの阻害薬を開発し、使用することであった。3種の化合物、即ち、クラブラン酸、スルバクタム及びタゾバクタムが、現在、臨床で使用されている。
【0006】
[0006]これらの化合物は、クラスAのペニシリナーゼを非可逆的に阻害する。既知阻害薬の欠点は、それらの阻害薬が、本質的な抗菌活性をほとんど有さず、したがって、β−ラクタム系抗生物質と組み合わせて使用しなければならないことである。第2の欠点は、それらの阻害薬が、ますます重要になりつつあるクラスB、C及びDの酵素を阻害することにおいて臨床的に有効でないことである。
【0007】
[0007]したがって、当技術分野では、抗菌力を維持しながらβ−ラクタマーゼを強力に阻害する付加的機能を示す、強力なβ−ラクタム系抗菌組成物に対する重要な必要性が存在する。
【0008】
[発明の概要]
[0008]本発明は、β−ラクタマーゼ阻害薬である化合物に関するものであり、詳細には、β−ラクタマーゼの阻害をも示すβ−ラクタム系抗生物質に関する。本発明は、さらに、このような化合物の調製方法、及び微生物増殖の阻害に向けたこのような化合物の使用方法を対象とする。
【0009】
[0009]実施形態において、本発明は、式Iの化合物
【化1】
及びその薬理学上許容される塩を提供し、式中、
[0010]Rは、アシルアミノ基及びその薬学上許容される塩を含む薬学上許容される官能基であり、
[0011]R1、R2、R3、R4及びR5は、水素又は広範な範囲の有機基から選択され、
[0012]nは、1〜5の範囲の整数、好ましくは1であり、
[0013]---Z---は、指定した2つの原子間のリンカーであり、存在するか、又は存在せず、Zが存在しない場合、yは2であり、Zが存在する場合、yは1であり、
[0014]---Z---は、5又は6員環を形成する1つ又は2つの原子からなるリンカーであり、Zは、2つの炭素原子、1つの炭素及び1つの硫黄原子、1つの炭素及び1つの窒素、又は1つの炭素及び1つの酸素であってよく(ここで、任意の残りの原子価は、原子を水素又は有機置換基、例えばアルキル基で代替することによって満たされる)、
[0015]Mは、R1に対してシス又はトランスでよく、
[0016]Mは、最も一般的には、β−ラクタム環の開裂によって開始されるMの改変(modification)により、1種又は複数の反応種、例えば求電子又は求核部位を生じるように、化合物の母核であるβ−ラクタム環系の窒素と共役している化学種を表す。
【0010】
[0017]特定の実施形態において、Rは、既知β−ラクタム系抗生物質のアミノアシル基である。広範な種類のβ−ラクタム系抗生物質は、当技術分野で周知である。代表的な既知β−ラクタム系抗生物質のアミノアシル基については、後で説明する。
【0011】
[0018]本発明のいくつかのM基は、β−ラクタム環の開裂によってM基からの開裂を引き起こす適切な化学脱離基を含む。β−ラクタムの開裂は、化合物に対するβ−ラクタマーゼ酵素の攻撃によって開始される。β−ラクタム環の開裂によりM中に作り出される反応性のある基は、β−ラクタマーゼとの反応に利用可能であり、β−ラクタマーゼの活性を阻害するように機能する。
【0012】
[0019]本発明の化合物のβ−ラクタム環系には、セフェム系、セファマイシン系、カルバセフェム系、ペネム系、及びモノバクタム系のβ−ラクタム環系が含まれる。
【0013】
[0020]本発明は、β−ラクタマーゼ阻害薬及びβ−ラクタム系抗生物質として使用するための、前に一般的に説明したような及び後でより具体的に説明するような式Iの化合物を提供する。本発明の化合物は、これらの機能の一方又は両方を示すことができ、かくして、微生物感染症及びその合併症を治療するための種々の治療的応用(ヒト及び獣医学的)で有用である。本発明の化合物は、微生物、特に、1種又は複数のβ−ラクタム系抗生物質に耐性を示すことが知られている細菌への感染症を治療するのに特に有用である。本発明の化合物は、インビボ又はインビトロでの応用において、細菌を含む微生物の増殖を阻害するのに有用である。本発明のβ−ラクタム阻害薬をβ−ラクタム系抗生物質と組み合わせて、インビボ又はインビボでの応用において、β−ラクタマーゼの阻害を提供することができる。
【0014】
[0021]前に記載のようなM基を含み、Rがアミノアシル基ではなく、RがA−CO−NH(ここでAは、非置換のアルキル又はアリール基(例えば、フェニル基)である)である本発明の化合物は、β−ラクタマーゼの阻害を示し、アミノアシル基が既知のβ−ラクタム系抗生物質のものである、β−ラクタム阻害薬及びβ−ラクタム系抗生物質の合成における中間体として有用である。抗生物質の活性を示さない、或いは抗生物質の活性を向上させることが望まれるβ−ラクタム阻害薬は、M基を含む本発明の化合物から、そのR基を当技術分野で周知であるβ−ラクタム系抗生物質中に見出される選ばれたアミノアシルで代替することによって調製できる。したがって、本発明は、抗菌活性に加えてβ−ラクタマーゼの阻害を示す、改善されたβ−ラクタム系抗生物質の調製方法を提供する。
【0015】
[0022]本発明は、さらに、本発明の式I及び後で説明するその他の式の1種又は複数の化合物を含有する医薬組成物に関する。
【0016】
[0023]本発明は、また、治療有効量又は併用量の本発明の1種又は複数の化合物を、任意選択で治療有効量又は併用量の1種又は複数の既知β−ラクタム系抗生物質と併用して投与することによる、感染症及び関連する障害、疾患又は合併症の治療方法に関する。
【0017】
[0024]本発明は、さらに、微生物を、インビボ又はインビトロで、ある量の本発明の1種又は複数の化合物と、任意選択で既知のβ−ラクタム系抗生物質、特に、過去に使用された、又は現在、治療的応用(ヒト又は動物)に使用されている抗生物質と併用して接触させることによって、微生物、特に細菌の増殖を阻害する方法に関する。
【0018】
[0025]本発明は、また、特に感染症及びその関連障害、その疾患又は合併症を治療するための、本発明の1種又は複数の化合物を含有する医療用薬剤の調製方法に関する。
【0019】
[0026]本発明を、さらに、限定することを意図したものではない、以下の詳細な説明、実施例及び図面で説明し図示する。本発明のさらなる態様及び実施形態は、明細書を全体的に検討することで明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】3−ビニルシクロプロパン−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸(IX)によるβ−ラクタマーゼの時間依存性阻害のグラフである。
【図2】3−(1−ブロモメチル−4−ビニルベンゼン)−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸(XI)によるβ−ラクタマーゼの時間依存性阻害のグラフである。
【図3】本明細書中の式の化合物における典型的なアシル基を示す図である。
【図4】本発明の化合物のさらなる典型的な構造を示す図である。
【図5】本発明の化合物のさらなる典型的なM基を示す図である。
【図6】本発明の式において母核である種々のβ−ラクタム環構造の好ましい立体化学を示す図である。
【0021】
[発明の詳細な説明]
[0033]本発明は、抗菌活性に加えて1種又は複数のβ−ラクタマーゼの阻害を示す改善されたβ−ラクタム系抗生物質の調製方法に関する。本発明は、また、1種又は複数のβ−ラクタマーゼの阻害を示すいくつかのβ−ラクタム系化合物に関する。本発明は、さらに、β−ラクタマーゼの阻害及び抗菌活性を示すいくつかのβ−ラクタム系化合物に関する。特定の実施形態において、本発明の化合物は、クラスAのペニシリナーゼに加えて1種又は複数のβ−ラクタマーゼを阻害する。特定の実施形態において、本発明の化合物は、クラスAのペニシリナーゼ以外のβ−ラクタマーゼを阻害する。特定の実施形態において、本発明の化合物は、1種又は複数のクラスB、C又はDのβ−ラクタマーゼの阻害を示す。特定の実施形態において、本発明の化合物は、異なるクラスの1種又は複数のβ−ラクタマーゼの広帯域阻害を示す。特定の実施形態において、本発明の化合物は、1種又は複数のβ−ラクタマーゼの非可逆的阻害を示す。
【0022】
[0034]特定の実施形態において、本発明は、式
【化2】
のβ−ラクタム系化合物
[0035]及びその薬理学上許容される塩に関するものであり、式中、
[0036]---Z---は、存在しないか、或いは存在して−O−(CH2)x−、−C−(CH2)x−、−NR’−(CH2)x−、−S−(CH2)x−、−SO−(CH2)x−、又は−SO2−(CH2)x−(ここで、xは0又は1であり、R’は、水素又はC1〜C6アルキルであり、---Z---が存在するならyは1であり、存在しないならyは2である)であり、
[0037]nは、1〜5の整数であり、
[0038]R1及びR2は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ及び(C1〜C6)チオアルコキシ(−S−アルキル)からなる群から独立に選択され、
[0039]Yは、O−C+又はOR3(ここで、R3は、水素、又は置換されていてもよいアルキル若しくはアリール基であり、C+は薬理学上許容されるカチオンである)であり、
[0040]R4は、水素、(C1〜C6)アルキル、OR’(ここで、R’は、水素又は(C1〜C6)アルキルである)であり、
[0041]R5は、水素、(C1〜C6)アルキルであり、
[0042]Rは、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基、−CO−R’’、−CO2R’’、−CO−N(R’)2;−N(R’’)2、−NRCO2−R’’(ここで、各R’’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは、置換されていてもよい)、及びアシルアミン基A−CO−NH−から選択され、
[0043]Mは、R1に対してシス又はトランスの位置でよく、次の通りの基P、B、BZ、D、E、Fから選択され、
[0044]基Pは
【化3】
であり、
[0045]式中、
[0046]Wは、O又はC(R’’)(ここで、各R’’は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基及び6〜10員複素環式芳香族基からなる群から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)であり、
[0047]R6及びR7は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基、−COR’−、
[0048]−COOR’’、−CON(R’’)2(ここで、各R’’は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基からなる群から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)から独立に選択され、
[0049]基D、B、BZ、E、Fは、
【化4】
であり、式中、
[0050]Z2は、O、NR11、又はS(ここで、R11は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、及び(C2〜C6)アルキニル基からなる群から選択され、各基は置換されていてもよい)であり、
[0051]各R8は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)から独立に選択され、
[0052]各R9は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基(ここで、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)から独立に選択され、
[0053]各R10は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)、及び−CH2−X基からなる群から独立に選択され、
[0054]R12は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)、及びXからなる群から選択され、
[0055]R13及びR14は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)、及びXからなる群から独立に選択され、
[0056]Xは、後に定義するような脱離基であり、
[0057]ここで、構造V中で、R10の少なくとも1つは−CH2−X基であり、R12はX又は両方であり、構造VI中で、R13又はR14の一方はXである。
【0023】
[0058]特定の実施形態において、Aは、
【化5】
からなる群から選択され、式中、
[0059]R’’は、これらの構造に関して、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基から選択され、
[0060]R’’’は、これらの構造に関して、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)からなる群から選択され、A8ではsyn/anti異性体が含まれ、VはN又はCHであり、UはCH、CH2、NH又はNである。
【0024】
[0061]他の特定の実施形態において、Aは、
【化6】
から選択され、ここで、
[0062]変数は、前に定義した通りである。
【0025】
[0063]他の特定の実施形態において、Aは、
【化7】
から選択され、ここで、
[0064]変数は、前に定義した通りである。
【0026】
[0065]他の特定の実施形態において、Aは、図3に列挙して示した基からなる群(A15〜A29)から選択され、ここで、
[0066]XXは、−OR’’、−CN、−NH2、−N(R’)2、ハロゲン、−SR’’、−COR’’’、−COOR’’、及び−CON(R’’)2からなる群から選択される置換基であり、
[0067]YYは、ハロゲン又は−CNであり、
[0068]R’は、水素、(C1〜C6)アルキル、又は(C6〜C12)アリールであり、
[0069]R’’及びR’’’は、A基の定義において前に定義した通りである。
【0027】
[0070]特定の実施形態において、XXはOHであり、YYはClであり、A24の場合、R’は(C1〜C3)アルキルである。
【0028】
[0071]別の実施形態において、Aは、ベンジル基又は置換されていてもよいベンジル基である。A基中の1つ又は複数の部分又は基は、1つ又は複数の保護基で保護される。
【0029】
[0072]特定の実施形態において、Yは水素であるか、或いはY−CO−は、インビボ(in vivo)で容易に加水分解されるエステルである。
【0030】
[0073]別の実施形態において、本発明は、式
【化8】
の化合物
[0074]及びその薬学上許容される塩を提供し、式中、変数は前に定義した通りである。特定の実施形態において、R4及びR5は両方とも水素である。特定の実施形態において、RはA−CO−NH−である。特定の実施形態において、Rはベンジル−NHである。
【0031】
[0075]別の実施形態において、本発明は、式
【化9】
の化合物
[0076]及びその薬学上許容される塩を提供し、式中、変数は前に定義した通りである。特定の実施形態において、R4及びR5は両方とも水素である。特定の実施形態において、RはA−CO−NH−である。特定の実施形態において、Rはベンジル−NH−である。
【0032】
[0077]別の実施形態において、本発明は、式
【化10】
の化合物
[0078]及びその薬学上許容される塩を提供し、式中、変数は前に定義した通りである。特定の実施形態において、R4及びR5は両方とも水素である。特定の実施形態において、RはA−CO−NH−である。特定の実施形態において、Rはベンジル−NH−である。
【0033】
[0079]別の実施形態において、本発明は、式
【化11】
の化合物
[0080]及びその薬学上許容される塩を提供し、式中、変数は前に定義した通りである。特定の実施形態において、R4及び各R5は水素である。特定の実施形態において、RはA−CO−NH−である。特定の実施形態において、Rはベンジル−NH−である。特定の実施形態において、M基であるB、BZ、又はF中のR8〜10は、電子求引基、例えば、エステル、カーバメート及びカルボニル基で官能化されたアルキルである。
【0034】
[0081]さらなる実施形態において、本発明は、図4中の式C1〜C11の化合物を提供する。C1〜C11のそれぞれに関する特定の実施形態において、R4は水素である。特定の実施形態において、RはA−CO−NH−である。特定の実施形態において、Rはベンジル−NH−である。
【0035】
[0082]特定の実施形態において、本発明は、いくつかの環置換基の立体化学が示された式S1、S2及びS3の化合物(図4)を提供する。特定の実施形態において、R4及び各R5は、水素である。特定の実施形態において、RはA−CO−NH−である。特定の実施形態において、Rはベンジル−NH−(ここで、ベンジル基は置換されていてもよい)である。任意選択の置換には、1つ又は複数のC1〜C3アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C3ハロアルキル(例えば、−CF3)、ハロゲン(I、Cl、Br、F)、−OH、又は−NH2での置換が含まれる。
【0036】
[0083]特定の実施形態において、本発明は、本明細書中の式I、II、III、IV、V、C1〜C11、及びS1〜S3のいずれかの化合物(ここで、Mは、P1〜P12(図5)の1つから選択され、各Haは、独立に、ハロゲンであり、X、及びP1〜P12中のR’は、前に定義した通りである)を提供する。特定の実施形態において、各Xは、独立に、本明細書中で定義するような好適な脱離基である。特定の実施形態において、各Haは、独立に、I、Br又はClである。特定の実施形態において、各XはClである。特定の実施形態において、各XはBrである。特定の実施形態において、各Xはピリジニウム基である。特定の実施形態において、1つのXはピリジニウム基である。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素、C1〜C6アルキル、又はC6〜C12アリールであり、その両方は置換されていてもよい。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素又は置換されていてもよいC1〜C3アルキルである。特定の実施形態において、各R’は水素である。特定の実施形態において、Xはすべて同一である。任意選択の置換には、1つ又は複数のC1〜C3アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C3ハロアルキル(例えば、−CF3)、ハロゲン(I、Cl、Br、F)、−OH、又は−NH2での置換が含まれる。
【0037】
[0084]特定の実施形態において、本発明は、式I、II、III、IV、V、C1〜C11、及びS1〜S3のいずれかの化合物(ここで、Mは、B1〜B5(図5)の1つから選択され、B1〜B5中のX及びR’は、前に定義した通りである)を提供する。特定の実施形態において、各Xは、独立に、本明細書中で定義するような好適な脱離基である。特定の実施形態において、各Xは、独立に、I、Br又はClである、特定の実施形態において、各XはClである。特定の実施形態において、各XはBrである。特定の実施形態において、各Xはピリジニウム基である。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素、C1〜C6アルキル、又はC6〜C12アリールであり、その両方は置換されていてもよい。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素又は置換されていてもよいC1〜C3アルキルである。特定の実施形態において、各R’は、水素である。特定の実施形態において、Xはすべて同一である。特定の実施形態において、2つのXは同一である。任意選択の置換には、1つ又は複数のC1〜C3アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C3ハロアルキル(例えば、−CF3)、ハロゲン(I、Cl、Br、F)、−OH、又は−NH2での置換が含まれる。
【0038】
[0085]特定の実施形態において、本発明は、式I、II、III、IV、V、C1〜C11、及びS1〜S3のいずれかの化合物(ここで、Mは、BZ1〜BZ5(図5)の1つから選択され、BZ1〜BZ5中のX及びR’は、前に定義した通りである)を提供する。特定の実施形態において、各Xは、独立に、本明細書中で定義するような好適な脱離基である。特定の実施形態において、各Xは、独立に、I、Br又はClである。特定の実施形態において、各XはClである。特定の実施形態において、各XはBrである。特定の実施形態において、各Xはピリジニウム基である。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素、C1〜C6アルキル、又はC6〜C12アリールであり、その両方は置換されていてもよい。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素又は置換されていてもよいC1〜C3アルキルである。特定の実施形態において、各R’は水素である。特定の実施形態において、Xはすべて同一である。特定の実施形態において、2つのXは同一である。任意選択の置換には、1つ又は複数のC1〜C3アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C3ハロアルキル(例えば、−CF3)、ハロゲン(I、Cl、Br、F)、−OH、又は−NH2での置換が含まれる。
【0039】
[0086]特定の実施形態において、本発明は、式I、II、III、IV、V、C1〜C11、及びS1〜S3のいずれかの化合物(ここで、Mは、D1〜D3(図5)の1つから選択され、D1〜D3中のR’は、前に定義した通りである)を提供する。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素、C1〜C6アルキル、又はC6〜C12アリールであり、その両方は置換されていてもよい。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素又は置換されていてもよいC1〜C3アルキルである。特定の実施形態において、各R’は水素である。特定の実施形態において、R’はすべて同一である。
【0040】
[0087]特定の実施形態において、本発明は、式I、II、III、IV、V、C1〜C11、及びS1〜S3のいずれかの化合物(ここで、Mは、E1〜E8(図5)の1つから選択され、E1〜E8中のX及びR’は、前に定義した通りである)を提供する。特定の実施形態において、各Xは、独立に、本明細書中で定義するような好適な脱離基である。特定の実施形態において、各Xは、独立に、I、Br又はClである。特定の実施形態において、各XはClである。特定の実施形態において、各XはBrである。特定の実施形態において、各Xはピリジニウム基である。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素、C1〜C6アルキル又はC6〜C12アリールであり、その両方は置換されていてもよい。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素又は置換されていてもよいC1〜C3アルキルである。特定の実施形態において、各R’は水素である。特定の実施形態において、Xはすべて同一である。特定の実施形態において、2つのXは同一である。特定の実施形態において、環に直接結合されたXは、環に間接結合されたXと異なる。特定の実施形態において、環に直接結合されたXは、ハロゲンであり、環に間接結合されたXはハロゲンでない。任意選択の置換には、1つ又は複数のC1〜C3アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C3ハロアルキル(例えば、−CF3)、ハロゲン(I、Cl、Br、F)、−OH、又は−NH2での置換が含まれる。
【0041】
[0088]特定の実施形態において、本発明は、式I、II、III、IV、V、C1〜C11、及びS1〜S3のいずれかの化合物(ここで、Mは、F1〜F8(図5)の1つから選択され、F1〜F8中のX及びR’は、前に定義した通りである)を提供する。特定の実施形態において、各Xは、独立に、本明細書中で定義するような好適な脱離基である。特定の実施形態において、各Xは、独立に、I、Br又はClである。特定の実施形態において、各XはClである。特定の実施形態において、各XはBrである。特定の実施形態において、各Xはピリジニウム基である。特定の実施形態において、1つのXはピリジニウム基である。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素、C1〜C6アルキル、又はC6〜C12アリールであり、その両方は置換されていてもよい。特定の実施形態において、各R’は、独立に、水素又は置換されていてもよいC1〜C3アルキルである。特定の実施形態において、各R’は水素である。特定の実施形態において、Xはすべて同一である。特定の実施形態において、2つのXは同一である。特定の実施形態において、環に直接結合されたXは、環に間接結合されたXと異なる。特定の実施形態において、環に直接結合されたXは、ハロゲンであり、環に間接結合されたXはハロゲンではない。任意選択の置換に関して好ましい置換基には、中でも、1つ又は複数のC1〜C3アルキル、C6〜C12アリール、C1〜C3ハロアルキル(例えば、−CF3)、ハロゲン(I、Cl、Br、F)、−CN、−OH、C1〜C3アルコキシ、−O−アリール、−O−ベンジル、−フェノキシ、−SH、−SR(ここで、Rは、C1〜C3アルキル、ベンジル又はフェニルである)、−NH2、−N(R)2(ここで、各RはC1〜C3アルキル、ベンジル又はフェニルである)での置換が含まれる。これらの置換基のアルキル、アリール、ベンジル、フェニル基も、同様に、置換されていてよい。
【0042】
[0089]特定の実施形態において、式II〜V、C1〜C11、及びS1〜S3の化合物(そのM基は、R1基に対してシスである)の異性体も提供される。
【0043】
[0090]特定の実施形態において、式Iの化合物には、セフプロジル、セフジニル、セフジトレン、セフィキシム及びセフトビプロールは含まれない。しかし、式Iの他の化合物を、医薬組成物中で又は医療用薬剤中で、セフプロジル、セフジニル、セフジトレン、セフィキシム又はセフトビプロールの1つ又は複数と組み合わせることができる。
【0044】
[0091]図6は、本発明の式における母核である各種β−ラクタム構造の好ましい立体化学を示す。特定の実施形態において、本発明の化合物には、図6に示した好ましい立体化学も有する本明細書中の任意の式の化合物が含まれる。
【0045】
[0092]用語「アルキル」は、分枝又は非分枝(直鎖又は線状)の一価飽和炭化水素基、及び1つ又は複数の環を有するシクロアルキル基を指す。特記しない限り、好ましいアルキル基は、1〜22個の炭素原子(C1〜C22)を有し、より好ましくは1〜12個の炭素原子(C1〜C12)を含むものである。短いアルキル基は、1〜6個の炭素原子を有する基、1〜3個の炭素原子(C1〜C3)を有する基、例えば、そのすべての異性体を含めたメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシル基である。長いアルキル基は、8〜30個の炭素原子を有する基、好ましくは12〜22個の炭素原子(C12〜C22)を有する基である。用語「シクロアルキル」は、好ましくは3〜12個の炭素原子(C3〜C12)を有し、1つの環式環又は複数の縮合環を有する環式アルキル基を指す。アルケニル基に関する本明細書中での説明は、シクロアルケニル基に対して一般に適用される。シクロアルキル基には、例として挙げれば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどの単環構造体、又はアダマンタニルなどの多環構造体が含まれる。特記しない限り、シクロアルキル基をはじめとするアルキル基は、後で定義するように置換されていてもよい。
【0046】
[0093]用語「アルケニル」は、1つ又は複数の二重結合を有する分枝又は非分枝の一価不飽和炭化水素基、及びその中の少なくとも1つの環が二重結合を含む1つ又は複数の環を有するシクロアルケニル基を指す。特記しない限り、アルキル基は、2〜22個の炭素原子(C2〜22)を有し、より好ましいのは、2〜12個の炭素原子(C2〜12)を含む基である。アルケニル基は、共役又は非共役であることのできる1つ又は複数の二重結合(C=C)を含むことができる。置換基として好ましいアルケニル基は、1〜2個の二重結合を有し、ω−アルケニル基を有する基である。アルケニル基は、2〜5個、4、3、又は2個の共役二重結合を含むことができる。アルケニル基には、2〜6個の炭素原子(C2〜C6)を有する基、及び2〜3個の炭素原子(C2〜C3)を有する基、例えば、そのすべての異性体を含めたエチレン(ビニル)、プロピレン、ブチレン、ペンチレン及びヘキシレン基が含まれる。用語「シクロアルケニル」は、3〜22個の炭素原子(C3〜C22)からなり、1つの環式環、又は複数の縮合環(その中の少なくとも1つの環は二重結合(C=C)を含む)を有する環式アルケニル基を指す。アルケニル基に関する本明細書中の説明は、一般には、シクロアルケニル基に対して適用される。シクロアルケニル基は、好ましくは、3〜12個の炭素原子(C3〜C12)を有する。シクロアルケニル基には、例を挙げれば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル及びシクロオクタトリエニルなどの単環構造体(単環式)、並びに多環構造体が含まれる。特記しない限り、シクロアルケニル基をはじめとするアルケニル基は、後で定義するように置換されていてもよい。
【0047】
[0094]用語「アルキニル」は、1つ又は複数の三重結合(C≡C)を有する一価不飽和炭化水素基を指す。特記しない限り、好ましいアルキル基は、2〜22個の炭素原子を有し、より好ましいのは2〜12個の炭素原子を含む基である。アルキニル基には、エチニル、プロパルギルなどが含まれる。短いアルキニル基は、2〜6個の炭素原子(C2〜C6)を有する基、そのすべての異性体を含め2又は3個の炭素原子(C2〜C3)を含む基である。長いアルキニル基は、6〜12個の炭素原子(C6〜C12)を有する基である。用語「シクロアルキニル」は、3〜22個の炭素原子(C3〜C22)を含み、1つの環式環又は複数の縮合環(その中の少なくとも1つの環は三重結合(C≡C)を含む)を有する環式アルキニル基を指す。アルキニル基に関する本明細書中の説明は、一般には、シクロアルキニル基に対して適用される。特記しない限り、シクロアルキニル基をはじめとするアルキニル基は、後で定義するように置換されていてもよい。
【0048】
[0095]用語「アリール」は、単一の環(例えば、フェニル)、1つ又は複数の環(例えば、ビフェニル)或いは複数の縮合(ヒューズド)環(その少なくとも1つの環は、芳香族(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル、又はアントリル)である)を有する6〜22個の炭素原子(C6〜C22)を含む、不飽和芳香族炭素環式基を含む化学基を指す。アリール基は、形式上、アリール化合物から水素を除去することによって形成される。アリールには、フェニル、ナフチルなどが含まれる。アリール基は、不飽和芳香族環(複数可)に加えて、アルキル、アルケニル又はアルキニルである部分を含むことができる。用語「アルカリール」は、アルキル部分を含むアリール基、即ち−アルキレン−アリール及び−置換アルキレン−アリールを指す。このようなアルカリール基は、ベンジル、フェネチルなどによって例示される。
【0049】
[0096]用語「ヘテロシクリル」は、総称的には、飽和又は不飽和環(例えば、二重結合を含む)でもよい、原子からなる少なくとも1つの環、典型的には3〜10員環、好ましくは5、6又は7員環を含み、ここで、その環は、1つ又は複数の炭素原子及び1つ又は複数のへテロ原子(非炭素原子)を含むことができる一価の基を指す。ヘテロシクリル(複素環)基は、その少なくとも1つが複素環である1、2又は3個の環(2個又はそれ以上の環は環系と呼ぶことができる)を含むことができる。原子価を満たすために、へテロ原子にH又は置換基を結合することができる。環炭素は、中でも−O−、−S−、−NR−、−N=(ここで、Rは、水素、アルキル、アリール、ヘテロシクリル又はヘテロアリール基である)で代替できる。いくつかの複素環基、環及び環系については、本明細書中でより具体的に説明される。
【0050】
[0097]用語「ヘテロアリール」は、少なくとも1つの芳香族環(典型的には、5又は6員環)を含み、その環の1つ又は複数の環炭素がヘテロ原子(非炭素原子)で代替されている基を指す。原子価を満たすために、へテロ原子にH又は置換基を結合することができる。環炭素は、数ある中でも、−O−、−S−、−NR−、−N=(この定義において、Rは、水素、アルキル、アリール、ヘテロシクリル又はヘテロアリール基である)で代替できる。ヘテロアリール基は、1つ又は複数のアリール基(全部が炭素の芳香族環)又はヘテロアリール環を含むことができ、ヘテロアリール基のアリール環は、単結合又はリンカー基(例えば、アルキレン(CH2)n)によって連結されていても、或いは縮合されていてもよい。ヘテロアリール基には、その1〜3個の環原子がヘテロ原子である5又は6個の環原子を有する芳香族環を有する基が含まれる。好ましいヘテロ原子は、−O−、−S−、−NR−及び−N=である。ヘテロアリール基には、5〜12個の炭素原子を含む基が含まれる。特記しない限り、ヘテロアリール基は、本明細書に記載のように置換されていてもよい。
【0051】
[0098]「ハロアルキル」は、本明細書中で定義されるような同一又は異なってもよい1つ又は複数のハロ基によって置換された本明細書中で定義されるようなアルキルを指す。代表的なハロアルキル基には、例を挙げれば、ペルフルオロアルキル基、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、クロロメチル、ブロモメチル、クロロエチル、ブロモエチル、クロロシクロプロピル、2,3−ジクロロシクロプロピルなどが含まれる。ハロアルキル基には、1〜6個の(C1〜C6)及び1〜3個の(C1〜C3)炭素原子を有し、1、2、3、5、7、9、11、13個(例えばペルクロロ基)、1〜6個又は1〜13個のハロゲンを含む基が含まれる。ハロゲンには、数ある中でも、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素が含まれる。いくつかの実施形態では、塩素、臭素及びヨウ素が、好ましいハロゲンである。
【0052】
[0099]用語「ハロアリール」は、同様に、本明細書中で定義されるような同一又は異なってもよい1つ又は複数のハロ基によって置換された本明細書中で定義されるようなアリール基を指す。代表的なハロアリール基には、数ある中でも、p−ハロフェニル、o−ハロフェニル、m−ハロフェニル、及びオルト、メタ、パラの位置又はこれらの組合せの位置に2〜5個のハロゲンの組合せを保持するフェニル環が含まれる。ハロアリール基には、6又は12個の炭素原子(C6又はC12)を有し、1〜5又は1〜9個のハロゲンを所持することのできる基が含まれる。ハロアリールには、ペルハロゲン化アリール基が含まれる。ハロゲンには、数ある中でも、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素が含まれる。いくつかの実施形態では、塩素、臭素及びヨウ素が、好ましいハロゲンである。
【0053】
[00100]用語「アルコキシ(又はアルコキシド)」は、−O−アルキル基(ここで、アルキル基は、前に定義した通りである)を指す。用語「アルケノキシ(アルケノキシド)」は、−O−アルケニル基(ここで、アルケニル基は、前に定義した通りであり、その二重結合は、いくつかの実施形態において、酸素に結合された炭素の位置に配置されることができる)を指す。アルケンオキシ基であるほとんどの置換基において、二重結合は、好ましくは、酸素に結合された炭素の位置に配置されない。用語「アルキノキシ(アルキノキシド)」は、−O−アルキニル基(ここで、アルキニル基は、前に定義した通りであり、三重結合は、好ましくは、酸素に結合された炭素の位置に配置されない)を指す。用語「アリールオキシ」は、−O−アリール基を指す。用語「ヘテロアリールオキシ」は、−O−ヘテロアリール基を指す。用語「ヘテロシクリルオキシ」は、−O−ヘテロシクリル基を指す。
【0054】
[00101]用語「アミノ」は、総称的には、−N(R)2基(この定義において、Rは、他方のRと独立に、水素、前に説明した通りのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール基である)を指す。2つのRは、連結されて環を形成できる。「アルキルアミノ」基は、その中の少なくとも1つのRがアルキルであるアミノ基を指す。「アリールアミノ」基は、その中の少なくとも1つのRがアリールであるアミノ基を指す。
【0055】
[00102]用語「アミド」は、総称的には、−CO−N(R)2基(この定義において、Rは、他方のRと独立に、水素、前に説明した通りのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールラジカルである)を指す。2つのRは、連結されて環を形成できる。「アルキルアミド」基は、その中の少なくとも1つのRがアルキルであるアミド基を指す。「アリールアミド」基は、その中の少なくとも1つのRがアリールであるアミド基を指す。
【0056】
[00103]用語「アミノアシル」基は、総称的には、−NR−CO−R基(この定義において、各Rは、独立に、水素、前に説明した通りのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールラジカルである)を指す。「アルキルアミノアシル」基は、その中の少なくとも1つがアルキルであるアミノアシル基を指す。「アリールアミド」基は、その中の少なくとも1つのR’’がアリールであるアミノアシル基を指す。種々のアミノアシル基が、本明細書中でより具体的に説明される。
【0057】
[00104]用語「イミン」は、総称的には、−N=CR’’2基又は−CR’’=NR’’基(この定義において、各R’’は、他方のR’’とは独立に、水素、前に説明した通りのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール基である)を指す。2つのR’’は、連結されて環を形成できる。「アルキルイミン」基は、その中の少なくとも1つのR’’がアルキルであるイミン基を指す。「アリールイミン」基は、その中の少なくとも1つのR’’がアリールであるイミン基を指す。いくつかのイミン基が、本明細書中でより具体的に説明される。
【0058】
[00105]用語「スルフェニル」は、基−S−R(この定義において、Rは、前に説明したようなアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリールラジカルである)を指す。用語「スルフヒドリル」は、−SH基を指す。
【0059】
[00106]用語「スルホニル」は、ラジカル−SO2−R(この定義において、Rは、前に説明したようなアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール基である)を指す。
【0060】
[00107]用語「スルホネート」は、ラジカル−SO3−R(この定義において、Rは、水素、前に説明したようなアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール基である)を指す。「アルキルスルホネート」基は、その中のRがアルキルであるスルホネート基を指す。「アリールスルホネート」基は、その中の少なくとも1つのRがアリールであるスルホネート基を指す。基−SO3Hは、イオン形態−SO3−であってもよい。
【0061】
[00108]アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環基、或いは基中のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環部分は、本明細書に記載のように置換されていてもよく(特記しない限り)、該基中の炭素原子数及び該基の不飽和度に応じて、水素でない1〜8個の置換基を含むことができる。アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び複素環基は、非置換であってもよい。
【0062】
[00109]任意選択の置換とは、次の官能基、即ち、
[00110]ハロゲン、ヒドロキシル(−OH)、−CN、−SH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルコキシ、アルケノキシ、アルキノキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、スルフェニル、スルホニル、スルホネート、アミン、アミド、アミノアシル、イミン、−COR、−COOR、−CON(R)2、−OCOR、−OCOR、−OCN(R)2、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアリール、−CO−C(R)2−CO−、−NRCOR、−NRCOOR、−COO−C+(この定義において、各Rは、水素、(置換されていてもよい)アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリールから選択され、C+は、(薬学上許容される塩の)薬学上許容されるカチオンである)、1つ又は複数での置換を指す(本明細書中では、水素は、官能基とは考えない)。
その他?
【0063】
[00111]1つ又は複数の置換基を含む任意の上記基に関して、このような基は、立体的に実在できない、及び/又は合成的に不可能である、いかなる置換又は置換パターンも含まないと解される。加えて、本発明の化合物は、これらの化合物の置換に由来するすべての立体化学的異性体を包含する。
【0064】
[00112]本発明の化合物は、1つ又は複数のキラル中心を含むことができる。したがって、本発明は、ラセミ混合物、ジアステレオマー、エナンチオマー、及び1種又は複数の立体異性体を豊富に有する混合物を包含すると解釈される。説明し、特許を請求する本発明の範囲には、ラセミ形態の化合物、及び個々のエナンチオマー及びその非ラセミ混合物が包含される。
【0065】
[00113]本発明の化合物は、塩を形成し、その塩も本発明の範囲に包含される。本明細書中の式(I〜V)の化合物に対する言及は、特記しない限り、その塩に対する言及を包含すると解される。用語「塩(複数可)」は、本明細書中で使用する場合、無機及び/又は有機の酸及び塩基を用いて形成される酸及び/又は塩基の塩を意味する。さらに、化合物が、塩基性部分(例えば、限定はされないが、アミン又はピリジン環)及び酸性部分(例えば、限定はされないが、カルボン酸)の両方を含む場合、双性イオン(「内部塩」)が形成される可能性があり、該双性イオンも、本明細書中で使用される用語「塩(複数可)」に包含される。薬学上許容される(即ち、非毒性で生理学上許容される)塩が好ましいが、その他の塩も、例えば、調製中に採用される可能性がある単離又は精製ステップにおいて有用である。式Iの化合物の塩は、例えば、式Iの化合物をある量(例えば、等量)の酸又は塩基と、塩が沈殿するような媒質中又は水性媒質中で反応させ、続いて凍結乾燥することによって形成することができる。
【0066】
[00114]典型的な酸付加塩には、酢酸塩類(例えば、酢酸又はトリハロ酢酸、例えば、トリフルオロ酢酸などを用いて形成される塩)、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩(塩酸を用いて形成される)、臭化水素酸塩(臭化水素を用いて形成される)、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩(マレイン酸を用いて形成される)、メタンスルホン酸塩(メタンスルホン酸を用いて形成される)、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩(硫酸を用いて形成される塩など)、スルホン酸塩(本明細書中で言及される塩など)、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシル酸塩など)、ウンデカン酸塩などが含まれる。
【0067】
[00115]典型的な塩基性塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム、リチウム、及びカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム及びマグネシウム塩など)、有機塩基(例えば、ベンザチン、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラバミン(N,N−ビス(デヒドロ−アビエチル)エチレンジアミンから形成される)、N−メチル−D−グルカミン、N−メチル−D−グルカミド、t−ブチルアミンなどの有機アミン)との塩、及びアミノ酸(アルギニン、リシンなど)との塩が含まれる。塩基性窒素を含む基は、低級アルキルハライド(例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチルの塩化物、臭化物及びヨウ化物)、硫酸ジアルキル(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミル硫酸)、長鎖ハライド(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルの塩化物、臭化物及びヨウ化物)、アラルキルハライド(例えば、ベンジル及びフェネチルブロミド)などの薬剤を用いて四級化できる。
【0068】
[00116]本発明の化合物及びその塩は、それらの互変異性形で存在することができ、その中の水素原子は、分子の他の部分に輸送され、結果的に、該分子中での原子間の化学結合は再配置される。すべての互変異性形は、それらが存在できるなら、本発明に包含されると解されたい。さらに、本発明の化合物は、シス及びトランス異性体を有することがあり、1つ又は複数のキラル中心を含み、したがって、エナンチオマー及びジアステレオマーの形態で存在する可能性がある。本発明は、すべてのこのような異性体、並びにシスとトランス異性体との混合物、ジアステレオマーの混合物、及びエナンチオマー(光学異性体)のラセミ混合物を包含する。化合物(又は不斉炭素)の立体配置(シス、トランス、又はR若しくはS)について具体的に言及していないなら、異性体のいずれか1つ、又は1種を超える異性体の混合物を指している。調製工程では、出発原料としてラセミ化合物、エナンチオマー、又はジアステレオマーを使用できる。エナンチオマー性又はジアステレオマー性の生成物が調製されるなら、それらの生成物を、通常の方法、例えば、クロマトグラフィー又は分別結晶化によって分離できる。本発明の化合物は、遊離又は水和物の形態であってもよい。
【0069】
[00117]典型的な塩基性塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム、リチウム、及びカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム及びマグネシウム塩など)、有機塩基(例えば、ベンザチン、ジシクロヘキシルアミン、ヒドラバミン(N,N−ビス(デヒドロ−アビエチル)エチレンジアミンから形成される)、N−メチル−D−グルカミン、N−メチル−D−グルカミド、t−ブチルアミンなどの有機アミン)との塩、及びアミノ酸(アルギニン、リシンなど)との塩が含まれる。塩基性窒素を含む基は、低級アルキルハライド(例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチルの塩化物、臭化物及びヨウ化物)、硫酸ジアルキル(例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミル硫酸)、長鎖ハライド(例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルの塩化物、臭化物及びヨウ化物)、アラルキルハライド(例えば、ベンジル及びフェネチルブロミド)などの薬剤を用いて四級化できる。
【0070】
[00118]本発明は、また、本明細書中の式I〜Vの化合物のプロドラッグ形態に関する。用語「プロドラッグ」は、インビボで親薬物に転換される薬剤を指す。プロドラッグは、生物学上、薬学上又は治療上活性な形態の化合物に代謝され、又はそうでなければ転換される。プロドラッグを製造するには、薬学上活性な化合物を、代謝過程によって該活性化合物を再生するように改変する。プロドラッグは、薬物の代謝安定性又は輸送特性を変更し、副作用又は毒性を遮蔽し、薬物の風味を改善し、或いは薬物のその他の特徴又は特性を変更するように設計することができる。プロドラッグは、いくつかの状況において、親薬物に比べてより容易に投与できることがある。例えば、プロドラッグは、経口投与によって生物学的利用能があるが、親薬物ではそうでないことがあり、或いはプロドラッグは、溶解性を改善して静脈内投与を可能にすることがある。インビボでの薬力学的過程及び薬物代謝に関する知識は、当業者が、一旦薬学上活性な化合物を知ったなら、化合物のプロドラッグを設計することを可能にする。プロドラッグの各種形態は、当技術分野で周知である。このようなプロドラッグ誘導体の例については、H.Bundgaard編「Design of Prodrugs」(Elsevier、1985年)、K.Widderら編「Methods in Enzymology」42巻、309〜396頁(Academic Press、1985年);Krosgaard−Larsen及びH.Bundgaard編「A Textbook of Drug Design and Development」中のH.Bundgaardによる第5章「Design and Application of Prodrugs」113〜191頁(1991年);H.Bundgaard、Advanced Drug Delivery Reviews、第8巻、1〜38頁(1992年);H.Bundgaardら、Journal of Pharmaceutical Sciences、77巻、285頁(1988年);及びNogrady(1985年)「Medicinal Chemistry A Biochemical Approach」、Oxford University Press、ニューヨーク、388〜392頁を参照されたい。
【0071】
[00119]脱離基は、典型的には、安定な弱塩基性種として脱離できる置換基である。いくつかの事例において、脱離基はアニオンとして脱離し、他の事例では、中性分子として脱離する。「好適な脱離基」は、強酸の共役塩基であると認識できる。好適な脱離基には、数ある中でも、ハロゲン(特にI、Br及びCl)、−CC(O)R’、−SC(O)R’、−OCOR’、チオール(−SH)、スルフェニル(−SR’)、フェノキシ、ペンタフルオルフェノキシ、トシル及びトシル変形体(p−フルオロトシル、p−ブロモトシル、p−ニトロベンジルトシル、ペンタフルオロトシルを含む)が含まれ、この定義において、R’は、置換されていてもよいアルキル及びアリール基から選択することができ、具体的なR’には、C1〜C3アルキル、特にメチル基、又はピリジニウム基
【化12】
が含まれ、式中、Rは、この定義において、水素、又は水素ではない1〜5個の基を表し、数ある中でも、C1〜C3アルキル基が含まれる。本明細書中で使用されるような脱離基には、さらに、その「脱離」の結合開裂に開環が含まれる、シクロプロピル基(置換されたシクロプロピル基を含む)のような種が含まれる。この場合、混成及び電子求引性の変化で生じる環の歪みが、シクロプロピル環の開環を引き起こす。
【0072】
[00120]用語「β−ラクタム系抗生物質」は、本明細書中で広義的に使用され、β−ラクタム環構造、例えば、図6で示される環構造を含むと当技術分野で認識され、1種又は複数の微生物、特に細菌に対して抗菌活性を示す任意の化合物を指す。β−ラクタム系抗生物質には、次の参考文献、Queenerら「Beta−lactam Antibiotics for Clinical Use」1986年(Informa Health Care);及びMitsuhashi「Beta−lactam Antibiotics」1981年(学会出版センター)中に記載されているものが含まれる。
【0073】
[00121]β−ラクタム系化合物は、最も一般的には、β−ラクタム環を含む化合物であり、図4及び6中の典型的な環を参照されたい。本発明中の当該β−ラクタム系化合物は、抗菌活性及び/又は1種又は複数のβ−ラクタマーゼの阻害を示すもの、好ましくは両方の活性を示すものである。
【0074】
[00122]用語「β−ラクタマーゼ」は、本明細書中では広義的に使用され、βーラクタム環の開環を触媒する、任意の供給源に由来する酵素を指す。β−ラクタマーゼ(EC3.5.2.6)は、最も一般的には細菌によって産生される酵素である。β−ラクタマーゼは、β−ラクタム環の加水分解性開環を触媒し、ペニシリン系、ペナム系、ペネム系、セフェム系、セファロスポリン系、カルバセフェム系、セファマイシン系、及びモノバクタム系などのβ−ラクタム系抗生物質に細菌耐性を付与する原因である。いくつかのβ−ラクタマーゼは、β−ラクタムのβ−ラクタマーゼへの拡散が律速段階である熱力学的成熟に向かって進化している。遺伝子及び機構的スキームを含む多くの異なる分類系を使用して、β−ラクタマーゼを分類してきた。最も単純なレベルでは、β−ラクタマーゼを2つのカテゴリーに分類できる。セリンヒドロラーゼは、反応中に、水が基質と見なされるならPing−Pong−Bi−Bi機構で、又は溶媒水分子が無視されるならUni−Bi−Bi機構でアシル化される活性部位であるセリンを使用することによって、それらの反応を触媒する。メタロβ−ラクタマーゼは、1つ又は2つのZn++イオンを使用する水分子の直接求核攻撃を介して、ラクタム環のアミド結合の加水分解を触媒する。水が考えられるならこのBi−Bi機構、又は水が無視されるならUni−Bi機構は、アシル化された酵素中間体を介して進行しない。
【0075】
[00123]β−ラクタマーゼ阻害薬は、また、本明細書中では広義的に使用され、化学種、特に小分子(例えば、ペプチド又はタンパク質以外の分子)を指す。β−ラクタマーゼは、可逆的な競合、非競合、不競合、及び緩速結合機構(slow tight binding mechanism)、並びに非可逆的な活性部位指向型及び機構ベース型又は自殺型機構を介して、小分子によって阻害され得る。このような阻害薬分子は、β−ラクタマーゼ反応の触媒速度を低下させるか、或いはβ−ラクタマーゼがなんらかの触媒作用を少しでも実行することを完全に阻止する。可逆的競合阻害薬の例には、ボロン酸が含まれる。活性部位指向型の非可逆的阻害薬の例には、リン酸又はホスホン酸のエステルが含まれる。機構ベース型阻害薬の例には、クラブラン酸、スルバクタム及びタゾバクタムが含まれる。
【0076】
[00124]本発明の当該β−ラクタム系化合物は、1種又は複数のβ−ラクタマーゼの阻害を示すもの、及び好ましくは、それらの活性及び/又は抗菌活性の両方を示すものである。本発明のβ−ラクタマーゼ阻害薬は、クラブラン酸、スルバクタム及びタゾバクタムを包含しないが、本発明の1種又は複数の化合物は、医薬組成物又は医療用薬剤中で1種又は複数のこれらの既知阻害薬と組み合わせることができる。
【0077】
[00125]本発明の化合物は、本明細書に記載のような方法を採用して、或いは各種部類の既知のβ−ラクタム阻害薬及び既知のβ−ラクタム系抗生物質の合成に関して当技術分野で一般に周知であることを考慮して当技術分野で周知又は市販の出発原料及び試薬を用いるこれらの方法の定形的な構成を使用して、合成することができる。例えば、本発明の化合物を合成するための、さらには本発明の化合物の合成における出発原料の合成は、March;Larock「Comprehensive Organic Transformations」(VCH Publishers、1989年);Larock「Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations」第2版、(John Wiley & Sons,Inc.、1999年);Smith,March「March’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure」第6版(John Wiley & Sons,Inc.、2007年);G.I.Georg「The Organic Chemistry Of.Beta−Lactams」(VCH 1992年),Page「Chemistry of Beta−Lactams」(Springer、1992年);Smith,Smith「Organic Synthesis」第2版(McGraw−Hill Science/Engineering/Math、2001年);Bruggink A,「Synthesis of[beta]−lactam Antibiotics:Chemistry,Biocatalysis & Process Integration」(Springer、2001年)中に提供されているような、周知の方法、及び容易に入手可能な原料を使用して達成できる。
【0078】
[00126]本発明の化合物、例えば、本明細書中の式のR−NH−基としてフェニルアセチル基を有する化合物を、環のこの位置に種々のアミノアシル基を有するβ−ラクタム系化合物の合成における中間体として使用できる。例えば、母核環系の7位(又は等価位)のRアミノアシル基の修飾は、当業者が、当技術分野で認識されている技術、市販の出発原料及び試薬を使用して、又は当技術分野で周知の合成方法を適用することによって完遂できる。フェニルアセチル基の除去を、例えば、PCl5、ペニシリンアミダーゼ、セファロスポリンCアミダーゼ又はペニシリンアシラーゼの使用を含むいくつかの方法の1つを介する脱アミド化によって完遂し、7位(又は等価位)に遊離のアミンを得ることができる。次いで、アミノ基を、酸性条件下でペニシリンアミダーゼの存在下で官能化されたカルボン酸を反応させることによって、或いは官能化されたカルボン酸をシクロヘキシルカルボジイミドなどの活性化剤で活性化することによって修飾できる。
【0079】
[00127]β−ラクタマーゼの阻害機構
本明細書中の化合物に関するいずれか特定の作用機構によって拘束されることを望むものではないが、次の機構的考察は、本発明の化合物によるβ−ラクタマーゼの阻害に関する本発明者らの現在の見解を提示するために提供される。高度に反応性のある求電子又は求核部位(例えば、化学部分又は基)が、特に1種又は複数のベータラクタマーゼによるβ−ラクタム環の開環によって、本発明の化合物中に生じると考えられる。ラクタム環の開環によって生じる種は、本発明の化合物中のラクタム環に共役しているいくつかの潜在的に反応性のある部分又は基から生じる。これらの部位は、それぞれ、β−ラクタマーゼ酵素の求核剤又は求電子剤に共有結合で結合する能力を有すると考えられる。
【0080】
[00128]スキーム1及び2は、酵素のセリン、チロシン、ヒスチジン、チオール、アミン又はこれらの組合せなどの基と反応する反応性求核剤の生成例を図示する。本発明の化合物との共有結合が、酵素を阻害すると考えられる。
【0081】
[00129]スキーム3及び4は、ラクタム環の開環による高度に反応性のある求核性部分の生成例を図示する。これらの化合物は、セリンβ−ラクタマーゼ酵素に対して特に良好に機能する。これら化合物の非選択性及び高い反応性のため、これらの化合物は、安定なアシル化酵素中間体を介して進行することのないメタロ−β−ラクタマーゼも標的とする。これらは、タンパク質中に豊富に存在する求電子性中心、例えば、アミド(ペプチド)結合のカルボニルと反応することのできる強力な求核剤である。
【0082】
[00130]スキーム5は、β−ラクタム環の開裂によって複数部位が活性化され、それによってβ−ラクタマーゼ酵素をアルキル化するのに利用できるようになる、多機能性自殺型阻害薬である本発明の阻害薬化合物を図示する。
【0083】
[00131]
【化13】
【0084】
[00132]
【化14】
【0085】
[00133]
【化15】
【0086】
[00134]
【化16】
【0087】
[00135]
【化17】
【0088】
[00136]当業者は、上記スキーム1〜5を概観して、そこに示した種々のβ−ラクタム環系上のビニル置換基上に、β−ラクタマーゼによるβ−ラクタム環の開裂で求電子又は求核性部位を生成する、潜在的反応性のある代替の部分及び基を導入できることを認識するであろう。
【0089】
[00137]本発明の化合物は、典型的には、医薬組成物の形態で患者に投与される。したがって、本発明は、薬学上許容される担体又は賦形剤及び治療有効量の式I〜Vの化合物又はその薬学上許容される塩を含有する医薬組成物を提供する。
【0090】
[00138]本発明の医薬組成物では、任意の従来の担体又は賦形剤を使用できる。個々の担体又は賦形剤、或いは担体又は賦形剤の組合せの選択は、個々の患者を治療するのに使用される投与方式又は細菌感染症の種類に左右される。経口、局所、吸入、又は非経口投与などの個々の投与方式に適した医薬組成物の調製は、製薬分野の当業者の知識範囲に十分に包含される。さらに、このような組成物の成分は、市販されている。例えば、従来の製剤及び製剤技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第17版(Mace Publishing Co.、1985年)及びBanker,Rhodes(編)「Modern Pharmaceutics」第4版(Marcel Dekker,Inc.2002年)中に記載されている。
【0091】
[00139]本発明の医薬組成物は、典型的には、治療有効量の式I〜Vの化合物又はその薬学上許容される塩を含有する。本発明の医薬組成物は、併用療法で有効な量の2種又はそれ以上の式I〜Vの化合物或いはその薬学上許容される塩を含有することができる。本発明の医薬組成物は、併用療法で有効な量の1種又はそれ以上の式I〜Vの化合物或いはその薬学上許容される塩を、1種又は複数の既知β−ラクタム系抗生物質と組み合わせて含有することができる。典型的には、このような医薬組成物は、約0.01%〜約99.99%、約0.1%〜約99.9%、約1%〜99%、約5%〜約95%、約10%〜約10%、又は約10%〜約50%の本発明の活性薬剤(複数可)を含有する。当業者は、既知β−ラクタム系抗生物質の治療有効量を把握しているか、或いは容易に判断できる。本発明の化合物は、抗菌活性及び/又はβ−ラクタマーゼ阻害を示すことができる。抗菌効果のための本発明の化合物の量又は併用治療で有効な量は、β−ラクタマーゼ阻害のための量と異なる可能性がある。当業者は、過度の実験なしに当技術分野で周知の技術を使用して、本発明の化合物の治療有効量を判断できる。本発明のβ−ラクタマーゼ阻害薬を、既知のβ−ラクタマーゼ抗生物質又は本発明のβ−ラクタマーゼ抗生物質と組み合わせた医薬組成物において、典型的に採用される治療有効量は、β−ラクタマーゼの阻害を達成するための量である。
【0092】
[00140]本発明の医薬組成物には、非経口投与、特に静脈内投与に適した医薬組成物が含まれる。このような医薬組成物には、典型的には、治療有効量又は併用量の式I〜Vの化合物、或いはその薬学上許容される塩を含む、無菌の生理学上許容される水性溶液が含まれる。活性薬剤の静脈内投与に適した生理学上許容される水性担体溶液は、当技術分野で周知である。このような水性溶液には、数ある中でも、5%デキストロース、リンガー溶液(乳酸加リンガー注射液、乳酸加リンガー+5%デキストロース注射液、アシル化リンガー注射液)、ノルモソル(Normosol)−M、イソライト(Isolyte)Eなどが含まれる。このような水性溶液は、任意選択で、共溶媒(例えば、ポリエチレングリコール)、キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)、可溶化剤(例えば、シクロデキストリン)、抗酸化剤(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム)などを含むことができる。
【0093】
[00141]本発明の水性医薬組成物は、凍結乾燥し、その後、投与に先立って適切な担体で再構成することができる。この組成物中の担体は、例えば、蔗糖、マンニトール、デキストロース、デキストラン、乳糖、又はこれらの組合せを含む。
【0094】
[00142]本発明の医薬組成物には、活性成分を固体の担体又は賦形剤と組み合わせた、経口投与のための医薬組成物が含まれる。経口剤形のための担体及び賦形剤の選択は、当業者の知識範囲に包含される。
【0095】
[00143]本発明の医薬組成物は、単位剤形の状態で包装できる。この用語は、患者に投与するのに適した物理的に別個の単位、即ち、単独で、又は1種又は複数の付加的単位と併用して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性薬剤を含有するそれぞれの単位を指す。単位剤形には、数ある中でも、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、エリキシル、シロップ、クリーム、ローション、軟膏、スプレー及びエアロゾルが含まれる。例えば、このような単位剤形は、無菌の瓶、バイアル瓶、チューブ、噴霧器、エアロゾルディスペンサー、密閉アンプル中などに包装できる。
【0096】
[00144]本発明の化合物は、抗生物質として有用である。例えば、本発明の化合物は、ヒト及び動物(即ち、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタなど)を含む哺乳動物における、本発明の化合物に敏感な微生物によって引き起こされる細菌感染症及びその他の細菌関連性の医学的状態を治療又は予防するのに有用である。本発明は、哺乳動物における細菌感染症の治療方法を提供し、該方法は、治療を必要とする哺乳動物に、薬学上許容される担体、及び治療有効量又は併用して治療有効量の1種又は複数の式I〜Vの化合物或いはその薬学上許容される塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。
【0097】
[00145]本発明の化合物は、抗菌組成物の成分として有用である。例えば、本発明の化合物は、ヒト及び動物(即ち、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタなど)を含む哺乳動物における、本発明の化合物に敏感な微生物によって引き起こされる細菌感染症及びその他の細菌関連性の医学的状態を、既知のβ−ラクタム系抗生物質と組み合わせて治療又は予防するのに有用である。本発明は、哺乳動物における細菌感染症の治療方法を提供し、該方法は、治療を必要とする哺乳動物に、薬学上許容される担体、及び併用して治療有効量の、本発明のβ−ラクタム系抗生物質を含む既知のβ−ラクタム系抗生物質、及び1種又は複数の式I〜Vのβ−ラクタマーゼ阻害薬又はその薬学上許容される塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。
【0098】
[00146]本発明の化合物は、グラム陽性細菌及び関連微生物によって引き起こされる感染症を治療又は予防するのに有用である。例えば、本発明の化合物は、特定のエンテロコッカス属、スタフィロコッカス属(凝固酵素陰性ブドウ球菌(CNS)を含む)、ストレプトコッカス属、リステリア属、クロストリジウム属、バチルス属などによって引き起こされる感染症を治療又は予防するのに有効である。本発明の化合物で効果的に治療される細菌種の例には、限定はされないが、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(MRSA)、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)、グリコペプチド中間体感受性黄色ブドウ球菌(GISA)、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermitis)(MRSE)、メチシリン感受性表皮ブドウ球菌(MSSE)、バンコマイシン感受性腸球菌(Enterococcus faecalis)(EFSVS)、バンコマイシン感受性腸球菌(Enterococcus faecium)(EFMVS)、ペニシリン耐性肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)(PRSP)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、炭素菌(Bacillus anthracis)などが含まれる。
【0099】
本発明の化合物は、グラム陰性細菌及び関連微生物によって引き起こされる感染症を治療又は予防するのに有用である。例えば、本発明の化合物は、特定のエシェリキア属、サルモネラ属、ナイセリア属、ヘリコバクター属などによって引き起こされる感染症を治療又は予防するのに有効である。本発明の化合物で効果的に治療される細菌種の例には、限定はされないが、大腸菌(Escherichia coli)0157:H7、サルモネラエンテリカ菌(Salmonella enterica)、チフス菌(Salmonella typhi)、赤痢菌(Shigella dysenteriae)、ペスト菌(Yersinia pestis)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、百日咳菌(Bordetalla petussis)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、ヘリコバクターピロリ菌(Helicobacter pylori)、ヘリコバクターフェリス菌(Helicobacter felis)、カンピロバクタージェジュニ菌(Campylobacter jejuni)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、バクテロイデスフラジリス菌(Bacteroides fragilis)などが含まれる。
【0100】
[00147]本発明の化合物は、また、限定はされないが、梅毒トレポネーマ菌(Treponema pallidum)、ライム病菌(Borrelia burgdorferi)、リケッチア属などを含む、グラム染色によって伝統的には類別されない細菌によって引き起こされる感染症を治療又は予防するのに有用である。
【0101】
[00148]本発明の化合物で治療又は予防できる感染症又は細菌関連性の医学的状態の典型的な種類には、限定はされないが、皮膚及び皮膚構造体の感染症、尿路感染症、肺炎、心内膜炎、カテーテル関連血流感染症、骨髄炎などが含まれる。このような状態を治療する際に、患者は、治療されるべき微生物に既に感染していても、微生物に感染していると疑われていても、或いは単に、活性薬剤を予防的に投与する感染症に敏感であるだけであってもよい。
【0102】
[00149]本発明の化合物は、典型的には、治療有効量で、任意の許容される投与経路で投与される。化合物は、1日1回の投与、又は1日に複数回の投与で投与することができる。治療計画は、長期間にわたる、例えば、数日間又は1〜6週間若しくはそれ以上の投与を必要とすることもある。1回当たり投与される活性薬剤量、又は総投与量は、典型的には、患者の主治医によって決定され、感染症の性質及び重症度、患者の年齢、体重及び全体的健康状態、活性薬剤に対する患者の耐容性、感染症を引き起こしている微生物(複数可)、投与経路などの要因によって左右される。β−ラクタム系抗生物質に関する典型的な投与量範囲は、100mg〜数gである。
【0103】
[00150]さらに、本発明の化合物は、一般に、細菌の増殖を阻害するのに有効である。この実施形態では、細菌を、インビトロ(in vitro)又はインビボで、増殖を阻害する量の式I〜Vの化合物又はその薬学上許容される塩と接触させる。細菌増殖の阻害は、典型的には、細菌による繁殖の減少又は欠如によって、及び/又は細菌の溶解によって、即ち、所定容積中での所定期間(即ち、時間当たり)にわたるコロニー形成単位の、未処理細菌と比較した減少によって証明される。本発明の化合物は、静菌性又は殺菌性でもよい。細菌増殖を阻害するのに有効なβ−ラクタム系抗生物質の典型的な濃度は、mL当たりでマイクログラムの数十分の1〜数十倍の範囲である。
【0104】
[00151]加えて、本発明の化合物は、一般に、β−ラクタマーゼを阻害するのに有効である。この実施形態では、β−ラクタマーゼを、インビトロで又はインビボで、阻害量の式I〜Vの化合物又はその薬学上許容される塩と接触させる。β−ラクタマーゼを阻害するためのβ−ラクタム阻害薬の典型的な有効濃度は、mL当たりでマイクログラムの数十分の1〜数十倍の範囲である。
【0105】
[00152]本発明の化合物は、また、細菌における細胞壁の生合成を阻害することができる。この実施形態では、細菌を、インビトロ又はインビボで、細胞壁の生合成を阻害する量の式Iの化合物又はその薬学上許容される塩と接触させる。細胞壁の生合成を阻害するためのβ−ラクタム阻害薬の典型的な有効濃度は、mL当たりでマイクログラムの数十分の1〜数十倍の範囲である。
【0106】
[00153]本発明は、さらに、微生物感染症、特に細菌感染症、特に、β−ラクタマーゼが存在するために1種又は複数のβ−ラクタム系抗生物質に対して耐性を示す細菌感染症を治療するための医療用薬剤の製造における、1種又は複数の本発明の化合物の使用に関する。該医療用薬剤は、治療有効量又は併用量の1種又は複数の本発明の化合物、特に、微生物及び/又は細菌の阻害を示すそれらの化合物を含有する。より具体的には、本発明は、このような微生物及び細菌感染症を治療するための医療用薬剤の製造における、1種又は複数の本明細書中の式の化合物の使用に関する。特定の実施形態において、製造される医療用薬剤は、経口、光学、非経口、又は錠剤、カプセル、溶液、クリーム、軟膏のようなその他の適切な形態の投与に適した剤形、或いはその他の適切な剤形である。特定の実施形態において、医療用薬剤は、さらに、薬学上許容される担体、賦形剤、又は希釈剤、特に、経口又は非経口投与に適した担体又は希釈剤を含有する。
【0107】
[00154]本発明は、さらに、微生物感染症、特に細菌感染症、特に、β−ラクタマーゼが存在するために1種又は複数のβ−ラクタム系抗生物質に対して耐性を示す細菌感染症を治療するための医療用薬剤の製造における、1種又は複数の本発明の化合物のβ−ラクタマーゼ阻害薬としての使用に関する。本実施形態において、該医療用薬物は、治療有効量のβ−ラクタム系抗生物質をさらに含有する。より具体的には、本発明は、このような微生物及び細菌感染症を治療するための医療用薬剤の製造における、1種又は複数の本明細書中の式の化合物の使用に関する。特定の実施形態において、製造される医療用薬剤は、経口、光学、非経口、又は錠剤、カプセル、溶液、クリーム、軟膏のようなその他の適切な形態の投与に適した剤形、或いはその他の適切な剤形である。特定の実施形態において、医療用薬剤は、さらに、薬学上許容される担体、賦形剤、又は希釈剤、特に、経口又は非経口投与に適した担体又は希釈剤を含有する。
【0108】
[00155]特定の実施形態において、本発明は、微生物感染症、特に細菌感染症、特に、β−ラクタマーゼが存在するために1種又は複数のβ−ラクタム系抗生物質に対して耐性を示す細菌感染症を治療するための医療用薬剤の製造における、1種又は複数の本発明の化合物の使用を提供する。特定の実施形態において、製造される医療用薬剤は、錠剤、カプセル又は溶液などの経口又は非経口剤形である。特定の実施形態において、医療用薬剤は、さらに、薬学上許容される担体又は希釈剤、特に経口又は非経口投与に適した担体又は希釈剤を含有する。
【0109】
[00156]なんらかの特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明に関して根底をなす原理及び作用機構の確信又は理解について、本明細書中で考察することができる。本発明の実施形態は、なんらかの機構的説明又は仮説の最終的正確性に関係なく、それでもなお、効果をもたらし、有用であり得ることが認識される。
【0110】
[00157]本明細書中で置換基の群を開示する場合、その群及びすべての下位群中の全個別メンバーは、群メンバーの任意の異性体、エナンチオマー及びジアステレオマーを含めて、個別的に開示されていると解される。本明細書中でマーカッシュ群又はその他の群分けを使用する場合、群の全個別メンバー及び群メンバーの可能なすべての組合せ及び下位組合せは、該開示中に個別的に包含されていると解釈される。多様な定義中のいくつかの具体的な基は、本明細書中に記載されている。多様な定義中の具体的な基のすべての組合せ及び下位組合せは、本開示中に個別的に含まれると解釈される。当業者は、同一化合物を様々に命名する場合があることが知られているので、特定の化合物名は、例示的であると解釈される。
【0111】
[00158]本明細書に記載の化合物は、1種又は複数の異性形態、例えば、構造又は光学異性体で存在できる。本明細書中で、化合物が、その化合物の個々の異性体、エナンチオマー又はジアステレオマーを、例えば、式又は化学名で特定しないように説明される場合、その説明は、個々に又は任意の組合せで説明される化合物のそれぞれの異性体及びエナンチオマー(例えば、シス/トランス異性体、R/Sエナンチオマー)を含むと解釈される。
【0112】
[00159]さらに、特記しない限り、本明細書中で開示される化合物のすべての同位体バリアントは、該開示に包含されると解釈される。例えば、開示された分子中の任意の1つ又は複数の水素を、重水素又は三重水素で代替できると解される。分子の同位体バリアントは、分子のアッセイにおける、及び分子又はその使用に関する化学的及び生物学的研究における基準品として一般に有用である。同位体バリアントは、また、放射性同位元素を含むものを含め、生物学的研究、診断アッセイ、及び治療学において有用である可能性がある。このような同位体バリアントの調製方法は当技術分野で周知である。
【0113】
[00160]本明細書中で開示される分子は、1つ又は複数のイオン化可能な基[それからプロトンを除去できる基(例えば、−COOH)、又はプロトンを付加できる基(例えば、アミン)、又は四級化できる基(例えば、アミン)]を含むことができる。このような分子の考え得るすべてのイオン性形態、及びその塩は、本明細書中の開示中に個別的に含まれると解釈される。本明細書中の化合物の塩に関して、当業者は、広範な種類の利用可能な対イオンの中から、所定の応用に向けて本発明の塩を調製するのに適切である対イオンを選択できる。特定の応用において、塩を調製するのに所定のアニオン又はカチオンを選択すると、その塩の溶解性の増減をもたらす可能性がある。
【0114】
[00161]当業者は、具体的に例示されたもの以外の、合成方法、出発原料、試薬、β−ラクタマーゼ、β−ラクタム系抗生物質、市販のβ−ラクタム系抗生物質、酵素アッセイ、β−ラクタマーゼ活性のアッセイ、医薬製剤及び剤形を、過度な実験に頼ることなく、本発明を実施するのに採用できることを認識するであろう。任意のこのようなアッセイ方法、出発原料、合成方法、出発原料、試薬、β−ラクタマーゼ、β−ラクタム系抗生物質、市販のβ−ラクタム系抗生物質、酵素アッセイ、β−ラクタマーゼ活性のアッセイ、医薬製剤及び剤形の当技術分野で周知のすべての機能的同等物は、本発明中に包含されると解釈される。
【0115】
[00162]本明細書中で、範囲、例えば、化学基又は部分中の元素数の範囲(例えば、炭素数の範囲(例えば、C1〜C3))、任意の整数の範囲、任意の置換基数の範囲、温度範囲、時間範囲、又は組成範囲が示される場合にはいつでも、すべての中間範囲及び下位範囲、並びに示された範囲に含まれるすべての個別値は、その開示に包含されると解釈される。任意の下位範囲又は個別値、或いは説明中に包含される範囲又は下位範囲中の値は、本発明のクレームから排除できると解される。
【0116】
[00163]本明細書中で使用する場合、「含んでいる」は、「包含する」、「含む」又は「特徴とする」と同義であり、包括的である、即ち限界がなく、列挙されていない付加的な要素又は方法のステップを除外しない。本明細書中で使用する場合、「〜からなる」は、クレーム要素中で特定していない任意の要素、ステップ又は成分を除外する。本明細書中で使用する場合、「本質的には〜からなる」は、クレームの基本的で新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップを除外しない。特に、組成物の成分の説明、又はデバイス要素の説明において、本明細書中で広義の用語「含んでいる」を使用する場合には、いつでも、用語「本質的には〜からなる」又は「〜からなる」を包含し、記述すると解釈される。本明細書中で例示的に説明される本発明は、適切には、本明細書中で具体的に開示されない任意の要素又は要素群、制約又は制約群の不在下で実施できる。
【0117】
[00164]本明細書中の説明は、多くの詳細を含むが、これらの詳細は、本発明の範囲を限定するものではなく、単に、本発明の若干の実施形態に関する実例を提供するものと解釈すべきである。優先権を主張する特許文書以外の、本明細書中で引用されるすべての参考文献は、ここで、参照により本明細書の開示と矛盾がない程度まで組み込まれる。本明細書中で提供される若干の参考文献は、本発明のさらなる出発原料、さらなる合成方法、さらなる分析方法、及びさらなる使用に関する詳細を提供するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
[00165]採用してきた用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、このような用語及び表現の使用において、示され且つ説明される特徴の任意の同等物、又はその部分を除外する意図はなく、種々の修正形態が、クレームされる本発明の範囲に包含される可能性があると認識される。したがって、本発明は、実施例によって具体的に開示されているが、当業者は、好ましい実施形態及び任意選択の特徴、本明細書中で開示される概念の修正形態及び変形形態に至ることができ、このような修正形態及び変形形態は、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の範囲に包含されると考えられると理解されたい。
【0119】
[00166]本明細書中で言及されるすべての特許及び刊行物は、本発明が属する技術分野の当業者の技術レベルを示す。本明細書中で引用される参考文献は、それらの刊行又は提出時点での技術水準を示すために、参照によりそれらの全体で本明細書中に組み込まれ、この情報は、必要なら、先行技術中に存在する特定の実施形態を除外するために、本明細書中で採用できると解釈される。例えば、化合物をクレームする場合、本出願人の発明に先立って当技術分野で周知で利用可能な化合物を、権能を付与する開示が本明細書中で引用される参考文献中に提供されている化合物を含めて、本明細書中の化合物クレーム中に含めて除外することができると理解されたい。本明細書中で提供されるいくつかの参考文献は、参照により組み込まれ、合成方法、出発原料、試薬、既知のβ−ラクタム系抗生物質、医薬製剤及びこのような製剤の成分、このような医薬組成物の投与方法、精製方法、及び分析方法、並びに本発明のさらなる用途に関する詳細を提供する。
【実施例】
【0120】
実施例1
[00167]β−ラクタマーゼ活性のアッセイ(I)
発色性セファロスポリン、セフェゾン(Cefesone)は、Suttonらによって発表されているように合成、単離され、p−ラクタマーゼ活性をモニターするのに使用される。典型的なアッセイは、486nmに吸収を有する種(モル吸光度定数16,000)の形成を介してセフェゾンの加水分解をモニターする。吸収は、0.1Mリン酸ナトリウム(pH7.0)、0.2mMセフェゾン及び4容積%のDMSO共溶媒中で、30℃でキュベットホルダーに連結された循環水浴を備えたBeckman DU−40分光光度計を使用して、時間の関数としてモニターされる。アッセイは、適切な量のβ−ラクタマーゼの添加及び混合によって開始される。
【0121】
[00168]β−ラクタマーゼ活性のアッセイ(II)
β−ラクタマーゼ活性をモニターする別の方法には、十分なセフェゾンを酢酸エチルに溶解して3μg/μLの溶液を調製することを含めた。次いで、10μLのこの溶液を6mmの拡散ディスクに塗り広げた。活性をモニターするには、ディスクを水で湿らせ、β−ラクタマーゼを含む溶液の少量のアリコートを、ディスクに塗り広げ、明黄色から深赤紫色への色変化を視覚でモニターする。典型的には、最初の検出可能な可視の色変化までの時間を記録する。
【0122】
実施例2
[00169]次の実施例は、式Iの化合物の1つの好ましいサブセットに属する化合物(XX)
【化18】
(該化合物は、セフェム母核を有し、M基は、シクロプロパン環を有する)の合成を対象とし、
[00170]式中、変数は、前に各種の式中で定義された通りである。該方法は、より具体的には、式中のRが、R’−NH−、アミンであり、式XX中のR’、最も一般的にはRが、プロトン又は薬理学上許容される官能基又は塩であり、各R1、R2、各R’’、R6及びR7が、水素、ハロゲン又は有機官能基(官能化されたアルキル、カルボニル、エステル、カルバメート、及びその他の電子求引基を含む)から独立に選択される、式XXの化合物に適用される。該方法は、より具体的には、式中の各R’’、R6、及びR7が、水素、ハロゲン、カルボニル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、芳香族カルボニル基、カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、第一級、第二級及び第三級の脂肪族及び芳香族アミンからなる群から選択される、式XXの化合物に適用される。このサブセットの化合物において、β−ラクタム環系のNは、π電子系を介してM中の電子求引性シクロプロピル基に共役している。この共役は、(例えば、β−ラクタマーゼ酵素により)ラクタム環が開環された後に、シクロプロピル環を開環するための電子再配置を容易にする。
【0123】
[00171]セフェム化合物(式XX)の1つの合成方法は、式XXI若しくは式XXIIの化合物
【化19】
[00172](ここで、式XXI及びXXII中のXXは、塩素、臭素又はヨウ素などの任意のハロゲンを表し、4−カルボン酸基(−CO−Y)は、反応を実施するのに必要なら保護されていてもよい)又はその反応性誘導体を、
[00173]式XXIIIの化合物
【化20】
又はその反応性誘導体と反応させることによる。
【0124】
[00174]式XXの化合物は、また、式XXIVの化合物又はその反応性誘導体を式XXVの化合物
【化21】
と反応させることによっても合成できる。
【0125】
[00175]反応後に、従来の当技術分野で周知の方法によって、4−カルボキレート基の任意の保護基を除去できる。当業者は、Rがアミンである場合、従来の方法により、7−アミノ位をアシル基などの基で官能化してアミノアシル基を形成することを完遂できる。当業者は、また、Rがアシル基である場合、従来の方法により、あるアミノアシル基を他のアミノアシル基に転換する方法を完遂できる。当業者は、構造XXの化合物の合成において形成される不飽和結合の異性化を、従来の方法で実行できる。当業者は、示された方法を、水素以外のR1及びR2基を得るように容易に構成することができる。
【0126】
代表的合成例:3−ビニルシクロプロパン−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸の合成
【0127】
[00176]20mLの塩化メチレン及び10mLのTHF中に、1g(2mmol)の3−クロロメチル−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸4−メトキシベンジル、800mg(3mmol)のトリフェニルホスフィン、及び1.4g(20mmol)のシクロプロパンカルボキシアルデヒドを溶解した。この溶液に、400mg(2.5mmol)のKI及び5mLの10%重炭酸ナトリウムを添加した。Kameyamaの米国特許第6417351号明細書(2002年7月9日)の方法に従って、混合物を、暗所で一夜、激しく撹拌した。水相を、分離し、廃棄した。有機相を、水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮した。生成物を、最初に塩化メチレンで過剰のトリフェニルホスフィン及びシクロプロパンカルボキシアルデヒドを溶出させ、続いてクロロホルムで所望の生成物を溶出させるフラッシュ真空クロマトグラフィーによって精製した。5/1(v/v)のトルエン/酢酸エチルを用いるシリカゲルTLCで同じRfを有する生成物画分を集め、溶媒を蒸発させて、4−カルボキシルが保護された化合物(1)
【化22】
を得た。ここで、セフェム環の立体化学は、具体的に示していないが、式XX中で示したものである。
【0128】
[00177]保護された生成物(1)を、塩化メチレンに溶解し、Leeら(2005)J.Organ.Chem.70(1):367〜369の方法に従って、TFA及びアニソールで処理した。溶媒を急速に蒸発させ、石油エーテルと共に磨り潰して、3−ビニルシクロプロパン−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸(2)
【化23】
(やはり、セフェム環の立体化学は、具体的に示していないが、式XX中のものである)を黄色固体として単離した。
【0129】
[00178]示した方法を採用してβ−ラクタム分子を修飾し、それらの分子上に、ラクタム環系の開環によってβ−ラクタム化合物中に1つ又は複数の反応性中間体を形成する特性を付与することができる。該反応性中間体は、次いで、1種又は複数のβ−ラクタマーゼと反応して、それらを不可逆的に阻害することができる。
【0130】
実施例3
β−ラクタマーゼの産生阻害
[00179]エンテロバクター・クロアカ(Enterobactercloacae)由来の酵素(Sigma−Aldrich社、St.Louis、ミズーリ州)を使用するβ−ラクタマーゼのアッセイを、化合物(2)について前記実施例1(アッセイI)の通り実施した。初速度を測定した後、反応を2時間継続した。486nmでの最大理論吸光度は、ほぼ1.6であるが、観測された最終吸光度は、一貫して0.26であった。この結果は、次式
【化24】
で示されるような生成物阻害と矛盾しない。
【0131】
[00180]上式中、Eは酵素であり、Sは基質であり、Pは生成物であり、ESは酵素−基質複合体であり、EPは酵素−生成物複合体であり、k1、k−1、k2及びk−2は、速度定数であり、kcatは触媒速度定数である。生成物阻害の場合、k−2は、k2に比べて大きく、その結果、酵素−生成物が蓄積し、より多くの酵素が、酵素−生成物複合体中に結び付けられ、触媒として利用できない。
【0132】
実施例4
3−ビニルシクロプロパン−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸(2)によるβ−ラクタマーゼの時間依存性阻害
[00181]阻害薬なしでの初期対照速度は、1μLの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)、10μLのDMSO、及びエンテロバクター・クロアカに由来する5μLの0.1単位/mLβ−ラクタマーゼに30℃で添加することによって測定される。反応は、20μLの0.1mMセフェゾン/DMSOを添加して開始され、初期速度が測定される。阻害反応は、DMSOを、0.1mMの3−ビニルシクロプロパン−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸(2)/DMSOで代替すること、及び長時間インキュベートした後にセフェゾンを添加して反応を開始することによって測定される。200μMの3−ビニルシクロプロパン−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸での不活性化プロフィールを図1に示す。500μMの阻害薬を含む又は含まない10mLの0.1単位/mLβ−ラクタマーゼの、1Lの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)に対する透析(交換1回)は、活性の復帰を示さなかった。
【0133】
実施例5
[00182]次の実施例は、式Iの化合物の1つの好ましいサブセットに属する化合物の合成を対象とし、それらの化合物(XXVI)
【化25】
は、セフェム母核を有し、M基は、1つ又は複数の適切に配置された脱離基をもつフェニル環を有する。フェニル環及びその脱離基は、π−電子系を介してβ−ラクタム環のNに共役している。
【0134】
[00183]式XXVIにおいて、最も一般的には、変数は、前の式Iに関して定義した通りである。より具体的には、R10及びR8は、水素、ハロゲン、チオール、カルボニルをもつ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、芳香族基、置換芳香族基、カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、第一級、第二級及び第三級脂肪族及び芳香族アミンで例示され、式中、XXは、ラクタムの窒素に共役した適切な脱離基を表す。より具体的には、R、Y、R1及びR2は、実施例2で式XXについて定義した通りである。やはり、−CO−Y基は、所望なら、保護されたカルボニルであることができる。特定の実施形態において、R10及びR8は、水素又はメチル基である。特定の方法において、脱離基は、ハロゲン、特にI、Br又はCl、ピリジニウム、或いはチオール基、最も特定的にはBrである。
【0135】
[00184]合成方法は、実施例2の方法に類似している。セフェム系化合物(XXVI)の1つの合成方法は、式XXI又はXXII(前記実施例2)の化合物又はその反応性誘導体を、式XXVII
【化26】
の化合物又はその反応性誘導体と反応させることによる。
【0136】
[00185]式XXVIの化合物は、また、式XXIV(実施例2)の化合物又はその反応性誘導体を、式XXVIII
【化27】
の化合物と反応させることによって合成することができ、
[00186]式中、変数XXは、それぞれ、同一の脱離基、例えば、Brである。当業者は、所望なら、該方法を、生成物XXVIの脱離基が中間体XXVIIIの脱離基と異なるように構成することができる。
【0137】
[00187]反応後に、従来の当技術分野で周知の方法によって、4−カルボキシレート基の任意の保護基を除去できる。当業者は、Rがアミンである場合、従来の方法により、7−アミノ位をアシル基などの基で官能化してアミノアシル基を形成することを完遂できる。当業者は、また、Rがアシル基である場合、従来の方法により、あるアミノアシル基を他のアミノアシル基に転換する方法を完遂できる。当業者は、構造XXVIの化合物の合成において形成される不飽和結合の異性化を、従来の方法で実行できる。当業者は、示された方法を、水素以外のR1及びR2基を得るように容易に構成することができる。
【0138】
代表的合成例:3−(1−ブロモメチル−4−ビニルベンゼン)−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸の合成
[00188](1)75mLのアセトン中に、972mg(2mmol)の3−クロロメチル−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸4−メトキシベンジル及び410mgのKIを溶解した。直ちに、微細な雲状沈殿が形成された。混合物を3時間撹拌し、アセトンを蒸発させ、混合物を35mLの塩化メチレンに溶解した。混合物を濾過し、固体を廃棄すると、母液は、生成物である3−ヨードメチル−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸4−メトキシベンジルを含んでいた。
【0139】
[00189](2)トリフェニルホスフィン(0.81g)を母液に溶解し、溶液を、暗所で一夜撹拌して、3−ホスホニウムブロミドメチル−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸4−メトキシベンジルの塩を形成した。
【0140】
[00190](3)溶液を、追加の50mL塩化メチレンで希釈し、次いで、50mLの飽和重炭酸ナトリウムと共に激しく撹拌した。このスラリーに、31mLの塩化メチレンに溶解した1.22gの4−ブロモメチルベンズアルデヒドを0.5〜1時間にわたってゆっくり添加した。次いで、反応物を一夜撹拌した。
【0141】
[00191](4)有機層を、分離、保持し、1.0NのNaClで2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで、溶媒を蒸発させてオイル状の残留物を収得し、次いで、該残留物を、最小量の塩化メチレンに溶解した。生成物を、最初に塩化メチレンで過剰のトリフェニルホスフィン及びシクロプロパンカルボキシアルデヒドを溶出させ、続いてクロロホルムで所望の生成物を溶出させるフラッシュ真空クロマトグラフィーによって精製した。5/1(v/v)のトルエン/酢酸エチルを用いるシリカゲルTLCで同じRfを有する生成物画分を集め、溶媒を蒸発させて、保護された生成物(3)
【化28】
を得た。
【0142】
[00192]生成物(3)を、塩化メチレンに溶解し、Leeらの方法に従って、TFA及びアニソールで処理した。溶媒を急速に蒸発させ、石油エーテルと共に磨り潰して、3−(1−ブロモメチル−4−ビニルベンゼン)−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸(4)
【化29】
を黄色固体として単離した。
【0143】
実施例6
[00193]化合物(4)のβ−ラクタマーゼ阻害に関するアッセイは、やはりエンテロバクター・クロアカ由来の酵素を使用して実施例3のように実施する。
[00194]化合物XIによるβ−ラクタマーゼの時間依存性阻害は、実施例4のように実施する。100μMの3−(1−ブロモメチル−4−ビニルベンゼン)−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸での不活性化プロフィールを図2に示す。
【0144】
[00195]500μMの阻害薬を含む又は含まない10mLの0.1単位/mLβ−ラクタマーゼの、1Lの0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)(交換1回)に対する透析は、活性の復帰を示さなかった。
【0145】
実施例7
4−ジフェニルメチル−3−[2−(3,3−ジクロルオキシラン−2−イル)ビニル]−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボキシレートの合成
[00196]20mLの塩化メチレン及び10mLのTHF中に、1g(2mmol)の4−ジフェニルメチル−3−クロロメチル−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボキシレート、800mg(3mmol)のトリフェニルホスフィン、及び2.8g(20mmol)の3,3−ジクロロオキシラン−2−カルボキシアルデヒドを溶解する。この溶液に、400mg(2.5mmol)のKI及び5mLの10%重炭酸ナトリウムを添加する。混合物を、Kameyamaの方法(同上)に従って、暗所で一夜、激しく撹拌する。水相を、分離し、廃棄する。有機相を、水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮する。生成物を、最初に塩化メチレンで過剰のトリフェニルホスフィン及びアルデヒドを溶出させ、続いてクロロホルムで所望の生成物を溶出させるフラッシュ真空クロマトグラフィーによって精製する。5/1(v/v)のトルエン/酢酸エチルを用いるシリカゲルTLCで同じRfを有する生成物画分を集め、溶媒を蒸発させて、保護された生成物(5)
【化30】
を得る。
【0146】
3−[2−(3,3−ジクロルオキシラン−2−イル)ビニル]−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸の合成
[00197]生成物(5)を、塩化メチレン中に溶解し、Leeらの方法に従ってTFA及びアニソールで処理する。溶媒を急速に蒸発させ、石油エーテルと共に磨り潰して標題化合物(6)
【化31】
を単離する。
【0147】
実施例8
4−ジフェニルメチル−3−[2−(2−メチル−5−オキソイソキサゾリジン−3−イル)ビニル]−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボキシレートの合成
[00198]20mLの塩化メチレン及び10mLのTHF中に、1g(2mmol)の4−ジフェニルメチル−3−クロロメチル−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボキシレート、800mg(3mmol)のトリフェニルホスフィン、及び2.8g(20mmol)の3,3−ジクロロオキシラン−2−カルボキシアルデヒドを溶解する。この溶液に、400mg(2.5mmol)のKI及び5mLの10%重炭酸ナトリウムを添加する。混合物を、Kameyamaの方法(同上)に従って、暗所で一夜、激しく撹拌する。水相を、分離し、廃棄する。有機相を、水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮する。生成物を、最初に塩化メチレンで過剰のトリフェニルホスフィン及びアルデヒドを溶出させ、続いてクロロホルムで標題化合物(7)を溶出させるフラッシュ真空クロマトグラフィーによって精製する。5/1のトルエン/酢酸エチルを用いるシリカゲルTLCで同じRfを有する生成物画分を集め、溶媒を蒸発させて、保護された生成物(7)
【化32】
を得る。
【0148】
3−[2−(2−メチル−5−オキソイソキサゾリジン−3−イル)ビニル]−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボキシレートの合成
[00199]保護された生成物(7)を、塩化メチレンに溶解し、Leeらの方法(同上)に従ってTFA及びアニソールで処理する。溶媒を急速に蒸発させ、石油エーテルと共に磨り潰して標題化合物(8)
【化33】
を単離する。
【0149】
実施例9
4−メトキシベンジル−3−(1−ピリジニウムメチル−4−ビニルベンゼン)−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボキシレートの合成
[00200]20mLの塩化メチレン中に、1.21g(2mmol)の4−メトキシベンジル−3−(1−ブロモメチル−4−ビニルベンゼン)−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボキシレート及び160mgのピリジンを溶解し、暗くした容器中で一夜撹拌する。塩化メチレンを真空下で除去し、標題化合物(9)
【化34】
を集める。
【0150】
3−(1−ピリジニウムメチル−4−ビニルベンゼン)−7−(2−フェニルアセトアミド)−3−セフェム−4−カルボン酸(臭化物塩として)の合成
[00201]保護された生成物(9)を塩化メチレンに溶解し、Leeらの方法(同上)に従ってTFA及びアニソールで処理する。溶媒を急速に蒸発させ、石油エーテルと共に磨り潰して、標題化合物(10)
【化35】
を単離する。
【0151】
前述の実施例は、本発明の方法及び化合物を例示するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
の化合物及びその薬理学上許容される塩
[式中、
Rは、アシルアミノ基及びその薬学上許容される塩を含む薬学上許容される官能基であり、
R1、R2、R3、R4及びR5は、水素又は有機基から選択され、
nは、1〜5の範囲の整数であり、
---Z---は、指定した2つの原子間のリンカーであり、存在するか、又は存在せず、Zが存在しない場合、yは2であり、Zが存在する場合、yは1であり、
---Z---は、5又は6員環を形成する1つ又は2つの原子からなるリンカーであり、Zは、2つの炭素原子、1つの炭素及び1つの硫黄原子、1つの炭素及び1つの窒素、又は1つの炭素及び1つの酸素であってよく、
Mは、β−ラクタム環の開裂によって開始されるMの改変で1種又は複数の反応種が生じるように、化合物の母核であるβ−ラクタム環系の窒素と共役している化学種を表す]。
【請求項2】
---Z---が、存在しないか、或いは存在して−O−(CH2)x−、−C−(CH2)x−、−NR’−(CH2)x−、−S−(CH2)x−、−SO−(CH2)x−、又は−SO2−(CH2)x−を表し、ここで、xは0又は1であり、R’は水素又はC1〜C6アルキルであり、---Z---が存在する場合、yは1であり、Zが存在しない場合、yは2であり、
nは、1〜5の整数であり、
R1及びR2は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、及び(C1〜C6)チオアルコキシ(−S−アルキル)からなる群から独立に選択され、
Yは、O−C+又はOR3(ここで、R3は水素、又は置換されていてもよいアルキル若しくはアリール基であり、C+は薬理学上許容されるカチオンである)であり、
R4は、水素、(C1〜C6)アルキル、OR’(ここで、R’は水素又は(C1〜C6)アルキルである)であり、
R5は、水素、(C1〜C6)アルキルであり、
Rは、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基、−CO−R’’、−CO2R’’、−CO−N(R’)2、−N(R’’)2、−NRCO2−R’’(ここで、各R’’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは、置換されていてもよい)、及びアシルアミン基A−CO−NH−から選択され、
Mは、R1に対してシス又はトランスの位置でよく、次の通りの基P、B、BZ、D、E、Fから選択され:
【化2】
式中、
Wは、O又はC(R’’)であり、各R’’は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基及び6〜10員複素環式芳香族基(ここで、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)からなる群から独立に選択され、
R6及びR7は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基、−COR’、−COOR’’、−CON(R’’)2(ここで、各R’’は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基からなる群から独立に選択され、前記基のそれぞれは、置換されていてもよい)から独立に選択され、
【化3】
式中、
Z2は、O、NR11、又はS(ここで、R11は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、及び(C2〜C6)アルキニル基からなる群から選択され、その各基は置換されていてもよい)であり、
各R8は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)から独立に選択され、
各R9は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基(ここで、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)から独立に選択され、
各R10は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)、及び−CH2−X基からなる群から独立に選択され、
R12は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)、及びXからなる群から選択され、
R13及びR14は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)、及びXからなる群から独立に選択され、
Xは、脱離基であり、
ここで、構造V中で、R10の少なくとも1つは−CH2−X基であり、R12はX又は両方であり、構造VI中で、R13又はR14の一方はXである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが、既知のβ−ラクタム系抗生物質のアミノアシル基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
脱離基が、ハロゲン、−CC(O)R’、−SC(O)R’、−OCOR’、チオール、スルフェニル(−SR’)、フェノキシ、ペンタフルオルフェノキシ、トシル、p−フルオロトシル、p−ブロモトシル、p−ニトロベンジルトシル、ペンタフルオロトシル、シクロプロピル基、及びピリジニウム基(ここで、R’は、置換されていてもよいアルキル及びアリール基から選択される)から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Rが、A−CO−NH−であり、Aが、図3に列挙して示した基からなる群(A15〜A29)(ここで、XXは、OR’’、−CN、−NH2、−N(R’)2、ハロゲン、−SR’’、−COR’’’、−COOR’’、及び−CON(R’’)2からなる群から選択される置換基であり、
YYは、ハロゲン又は−CNであり、
R’は、水素、(C1〜C6)アルキル又は(C6〜C12)アリールである)から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Mが、基Pである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
Mが、基B又はBZである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Mが、基Dである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Mが、基E又はFである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
Mが、構造P1〜P12を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
Mが、構造B1〜B5を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
Mが、構造BZ1〜BZ5を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
Mが、構造D1〜D3を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Mが、構造E1〜E8を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
Mが、構造F1〜F8を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
化合物4、6、8又は10から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
治療有効量の請求項1〜16のいずれか一項に記載の1種又は複数の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項18】
治療を必要とする個体に、治療有効量の請求項1〜16のいずれか一項に記載の1種又は複数の化合物を投与するステップを含む、感染症及び関連障害の治療方法。
【請求項19】
微生物を、有効量の請求項1〜17のいずれか一項に記載の1種又は複数の化合物と接触させるステップを含む、微生物の増殖を阻害する方法。
【請求項20】
β−ラクタマーゼを、有効量の請求項1〜17のいずれか一項に記載の化合物と接触させるステップを含む、β−ラクタマーゼを阻害する方法。
【請求項21】
Rが、アミノアシル基以外の基である、請求項20に記載の方法。
【請求項1】
式I
【化1】
の化合物及びその薬理学上許容される塩
[式中、
Rは、アシルアミノ基及びその薬学上許容される塩を含む薬学上許容される官能基であり、
R1、R2、R3、R4及びR5は、水素又は有機基から選択され、
nは、1〜5の範囲の整数であり、
---Z---は、指定した2つの原子間のリンカーであり、存在するか、又は存在せず、Zが存在しない場合、yは2であり、Zが存在する場合、yは1であり、
---Z---は、5又は6員環を形成する1つ又は2つの原子からなるリンカーであり、Zは、2つの炭素原子、1つの炭素及び1つの硫黄原子、1つの炭素及び1つの窒素、又は1つの炭素及び1つの酸素であってよく、
Mは、β−ラクタム環の開裂によって開始されるMの改変で1種又は複数の反応種が生じるように、化合物の母核であるβ−ラクタム環系の窒素と共役している化学種を表す]。
【請求項2】
---Z---が、存在しないか、或いは存在して−O−(CH2)x−、−C−(CH2)x−、−NR’−(CH2)x−、−S−(CH2)x−、−SO−(CH2)x−、又は−SO2−(CH2)x−を表し、ここで、xは0又は1であり、R’は水素又はC1〜C6アルキルであり、---Z---が存在する場合、yは1であり、Zが存在しない場合、yは2であり、
nは、1〜5の整数であり、
R1及びR2は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、及び(C1〜C6)チオアルコキシ(−S−アルキル)からなる群から独立に選択され、
Yは、O−C+又はOR3(ここで、R3は水素、又は置換されていてもよいアルキル若しくはアリール基であり、C+は薬理学上許容されるカチオンである)であり、
R4は、水素、(C1〜C6)アルキル、OR’(ここで、R’は水素又は(C1〜C6)アルキルである)であり、
R5は、水素、(C1〜C6)アルキルであり、
Rは、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基、−CO−R’’、−CO2R’’、−CO−N(R’)2、−N(R’’)2、−NRCO2−R’’(ここで、各R’’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは、置換されていてもよい)、及びアシルアミン基A−CO−NH−から選択され、
Mは、R1に対してシス又はトランスの位置でよく、次の通りの基P、B、BZ、D、E、Fから選択され:
【化2】
式中、
Wは、O又はC(R’’)であり、各R’’は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基及び6〜10員複素環式芳香族基(ここで、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)からなる群から独立に選択され、
R6及びR7は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基、−COR’、−COOR’’、−CON(R’’)2(ここで、各R’’は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基からなる群から独立に選択され、前記基のそれぞれは、置換されていてもよい)から独立に選択され、
【化3】
式中、
Z2は、O、NR11、又はS(ここで、R11は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、及び(C2〜C6)アルキニル基からなる群から選択され、その各基は置換されていてもよい)であり、
各R8は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)から独立に選択され、
各R9は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基(ここで、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)から独立に選択され、
各R10は、水素、ハロゲン、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)、及び−CH2−X基からなる群から独立に選択され、
R12は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)、及びXからなる群から選択され、
R13及びR14は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、及び6〜10員複素環式芳香族基、(C1〜C6)アルコキシ基、(C1〜C6)チオアルキル基、−CO−R’、−CO2R’、−CO−N(R’)2;−N(R’)2、−NR−CO−R’、−NRCO2−R’(ここで、各R’は、水素、(C1〜C6)アルキル基、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、(C7〜C19)アラルキル基、3〜7員環環状炭化水素基、3〜7員複素環基、(C6〜C10)芳香族基、6〜10員複素環式芳香族基から独立に選択され、前記基のそれぞれは置換されていてもよい)、及びXからなる群から独立に選択され、
Xは、脱離基であり、
ここで、構造V中で、R10の少なくとも1つは−CH2−X基であり、R12はX又は両方であり、構造VI中で、R13又はR14の一方はXである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが、既知のβ−ラクタム系抗生物質のアミノアシル基である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
脱離基が、ハロゲン、−CC(O)R’、−SC(O)R’、−OCOR’、チオール、スルフェニル(−SR’)、フェノキシ、ペンタフルオルフェノキシ、トシル、p−フルオロトシル、p−ブロモトシル、p−ニトロベンジルトシル、ペンタフルオロトシル、シクロプロピル基、及びピリジニウム基(ここで、R’は、置換されていてもよいアルキル及びアリール基から選択される)から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Rが、A−CO−NH−であり、Aが、図3に列挙して示した基からなる群(A15〜A29)(ここで、XXは、OR’’、−CN、−NH2、−N(R’)2、ハロゲン、−SR’’、−COR’’’、−COOR’’、及び−CON(R’’)2からなる群から選択される置換基であり、
YYは、ハロゲン又は−CNであり、
R’は、水素、(C1〜C6)アルキル又は(C6〜C12)アリールである)から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
Mが、基Pである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
Mが、基B又はBZである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Mが、基Dである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Mが、基E又はFである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
Mが、構造P1〜P12を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
Mが、構造B1〜B5を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
Mが、構造BZ1〜BZ5を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
Mが、構造D1〜D3を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Mが、構造E1〜E8を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
Mが、構造F1〜F8を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
化合物4、6、8又は10から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
治療有効量の請求項1〜16のいずれか一項に記載の1種又は複数の化合物を含有する医薬組成物。
【請求項18】
治療を必要とする個体に、治療有効量の請求項1〜16のいずれか一項に記載の1種又は複数の化合物を投与するステップを含む、感染症及び関連障害の治療方法。
【請求項19】
微生物を、有効量の請求項1〜17のいずれか一項に記載の1種又は複数の化合物と接触させるステップを含む、微生物の増殖を阻害する方法。
【請求項20】
β−ラクタマーゼを、有効量の請求項1〜17のいずれか一項に記載の化合物と接触させるステップを含む、β−ラクタマーゼを阻害する方法。
【請求項21】
Rが、アミノアシル基以外の基である、請求項20に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3(page1)】
【図3(page2)】
【図4(page1)】
【図4(page2)】
【図5(page1)】
【図5(page2)】
【図5(page3)】
【図5(page4)】
【図5(page5)】
【図5(page6)】
【図6】
【図2】
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【公表番号】特表2011−500586(P2011−500586A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529054(P2010−529054)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/079410
【国際公開番号】WO2009/049086
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510098951)ソファーミア,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/079410
【国際公開番号】WO2009/049086
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510098951)ソファーミア,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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