説明

広帯域ビーム形成装置、広帯域ビームステアリング装置及び対応する方法

【課題】アクティブイメージング装置において、ビーム形成装置、方法及びビームステアリング装置、方法に関する。
【解決手段】環境5にむけて無線を送信する1つの送信アンテナ15を含む広帯域送信ユニット10と、送信信号の周波数は、広帯域周波数レンジ内で時間と共に変化することと、環境5から無線を受信し、受信される無線から受信信号を生成する2つの受信アンテナ25及び1つの受信エレメント21,22を含む受信ユニット20と、ビーム形成重みを使用することにより、ビーム形成を実行して、ビーム形成された出力信号を受信信号から取得するビーム形成ユニット30と、受信信号の後続サンプルのうちそれぞれ異なる周波数における受信信号をビーム形成のために周波数依存の重みが使用されることと、周波数依存の重みは、受信ビームの所定の形状を生み出すように適合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域ビーム形成装置及び方法、並びに、広帯域ビームステアリング装置及び方法に関する。本発明はまた、アクティブイメージング装置及び環境(scene)をイメージングするための対応する方法に関する。さらに、本発明は、コンピュータプログラム及びそのようなコンピュータプログラムを格納するコンピュータ読み取り可能な非一時的な媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ビーム形成を含むアクティブイメージングシステムは、医学的用途及びセキュリティ用途を含む様々な用途について、超音波周波数、マイクロ波周波数、ミリ波周波数及びテラヘルツ周波数において、より一般的になりつつある。
【0003】
アクティブイメージングシステムにおける送信器(本明細書では「送信エレメント」とも呼ばれる)と受信器(本明細書では「受信エレメント」とも呼ばれる)の構成は、多種多様な形態をとり得る。本発明に関連する一実施形態において、複数の送信器及び複数の受信器は、連携してMIMOレーダ(又はMIMOアクティブイメージングシステム)を形成する。MIMOレーダには主に2つのタイプがある。第1のタイプは、統計的(statistical)MIMOと呼ばれ、複数のアンテナ(一般に「送信エレメント」及び「受信エレメント」)が互いに遠く離間して配置されて、対象物(通常は「環境」)の異なるビューを提供する。第2のタイプのMIMOは、ビーム形成(又はコロケーテッド)MIMOと呼ばれ、複数のアンテナが互いに近接して配置され、且つ、連携して、「バーチャルな」ビーム形成アレイを形成する。
【0004】
ビーム形成装置の受信器においてビーム形成を行う場合、通常、複数の受信アンテナを用いてビーム形成を行う。このような構成では、1つの送信アンテナ又は複数の送信アンテナを複数の受信アンテナと組み合わせて用いて、MIMOビーム形成を行い得る。あるいは、ビーム形成は、複数の送信アンテナを用いて、ビームステアリング装置の送信器のみにおいて行ってもよい。以下、ビーム形成(ビームステアリング)が送信側のみで行われる場合をビームステアリング装置及び方法といい、また、ビーム形成が受信側のみで行われる場合をビーム形成装置及び方法という点に留意すべきである。より詳細には、ビーム形成とビームステアリングの双方は、重みを用いてビームパターンを形成する。その相違点は、送信側において、ビームステアリングは一般に1つの重みベクトルのみを用いて1つのビームパターンを形成し、当該ビームパターンを空間に放射する点である(即ち、1つの放射パターンのみが一度に物理的に存在できる)。受信側では、デジタルビーム形成は、複数の重みベクトルを用いて複数のビームパターンを同時に並行して形成し、複数のビーム形成された出力を取得し得る。
【0005】
1つの領域(dimension)におけるビーム形成は、通常、他の技術(即ち、合成開口レーダ)と組み合わされて2次元イメージを形成する。あるいは、ビーム形成を2次元で行って2次元イメージを形成することができる。対象物の完全な3次元イメージ(又は付加的な距離/深さ情報を有する2次元イメージ)を得るために、そのような構成は、通常、広帯域連続波(即ち、周波数変調連続波(FMCW:frequency modulated continuous wave))又は広帯域パルスを送信して、測距(距離)情報を提供する。
【0006】
広帯域ビーム形成を実現するための、最も一般的な従来の方法は、フィルタバンクを利用する。こうした方法は、2次元フィルタバンクを用いて時間領域(time domain)で、又は、(FFT後の)周波数領域(frequency domain)で機能し、各周波数帯を別々にフィルタリングする。こうした方法は、広帯域信号を個別に狭帯域フィルタリングされた複数のサブバンドに分割するか、又は、周波数不変ビーム形成を提供することをもくろむ。
【0007】
レーダ及び通信システムについて広帯域ビーム形成を実現する例示的な方法は、以下の文書に記載されている。
【0008】
非特許文献1には、2次元で時間フィルタリングを用いて、又は、FFTの後に1次元フィルタリングを用いて、広帯域ビーム形成を実現する方法が記載されている。特に、非特許文献1には、ADC後に2次元フィルタバンクを用いることが記載されている。広帯域ビーム形成をこのように実行するには、ADCのサンプリングレートを、送信信号の帯域幅の2倍よりも高く設定する必要がある。
【0009】
非特許文献2には、広帯域ビーム形成のロバストな最適化を実現する方法が記載されている。非特許文献1と同様、広帯域ビーム形成は、ADC後に2次元フィルタを用いて実現される。
【0010】
非特許文献3には、広帯域適応ビーム形成を行って広帯域妨害波の影響を軽減する方法が記載されている。具体的には、非特許文献3で提案される方法は、上記の非特許文献1及び非特許文献2に記載される方法(即ち、2次元フィルタリング又は周波数領域フィルタリング)を含み、さらに、広帯域共分散行列を算出して最適な重みを得ることも提案する。
【0011】
非特許文献4には、2次元アンテナアレイの各列がビーム形成アレイに連続的にスイッチングされる、2次元アンテナアレイを用いるFMCWシステムが記載されている。ビーム形成側の重みは、どの列が選択されたのかに応じて、及び、この期間に生じ得たチャープ波形中の対応する周波数差に応じて、変更される。なお、非特許文献4は、受信信号の共分散の算出を必要とするカポンビーム形成の使用を記載しているに過ぎない。
【0012】
特許文献1には、広帯域ビームステアリングマルチキャリア(又はOFDM)通信システムが記載されている。異なる周波数キャリアの各々は、同時に送信され、且つ、異なる重みベクトルが割り当てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第6,940,917号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Z. Hu et al、"Design of Look-up Table Based Architecture for Wideband Beam forming"、2010 International Waveform Diversity and Design Conference August、2010年8月13日
【非特許文献2】Z. Hu et al、"Robust Wideband Beam forming"、IEEE National Aerospace and Electronics Conference"、2010年7月14−16日
【非特許文献3】B. Matthews et al、"Wideband Radar Adaptive Beam forming using Frequency Domain derivative based updating"、Proceedings of Software defined Radio Forum、2007年11月
【非特許文献4】M. S. Lee、"Wideband Capon Beam forming for a planar phased radar array with antenna switching"、ETRI Journal、Volume 31、Number 3、2009年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、送信信号及び/又は受信信号について簡単で効果的なビーム形成を可能にする、受信側での広帯域デジタルビーム形成のための簡単で効果的なビーム形成装置及び対応する方法、並びに、送信側での広帯域デジタルビームステアリングのための簡単で効果的なビームステアリング装置及び対応する方法を提供することにある。本発明のさらなる目的は、対応するアクティブイメージング装置及び方法、並びに、上記ビーム形成方法をソフトウェアに実装するための対応するコンピュータプログラム、及び、そのようなコンピュータプログラムを格納する、コンピュータ読み取り可能な非一時的な媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の1つの観点によれば、環境に向けて無線を送信する少なくとも1つの送信アンテナを含む広帯域送信ユニットと、
前記無線の周波数は、広帯域周波数レンジ内で決定論的手法で時間と共に変化することと、
前記環境から無線を受信し、受信される前記無線から受信信号を生成する、少なくとも2つの受信アンテナ及び少なくとも1つの受信エレメントを含む受信ユニットと、
ビーム形成重みを使用することにより、ビーム形成を実行して、受信ビームを形成し、ビーム形成された出力信号を前記受信信号から取得するビーム形成ユニットと、
受信信号の後続サンプルのうちそれぞれ異なる周波数における受信信号を表現する異なるサンプル又はグループについて、ビーム形成のために周波数依存の重みが使用されることと、
前記周波数依存の重みは、前記受信ビームの所定の形状を生み出すように適合されることと、
を含む、環境をイメージングするためのビーム形成装置が提供される。
【0017】
本発明の別の観点によれば、環境に向けて無線を送信する少なくとも2つの送信アンテナを含む広帯域送信ユニットと、
前記無線の周波数は、広帯域周波数レンジ内で決定論的手法で時間と共に変化することと、
前記環境から無線を受信し、受信される前記無線から受信信号を生成する、少なくとも1つの受信アンテナ及び少なくとも1つの受信エレメントを含む受信ユニットと、
ビームステアリング重みを使用することにより、ビームステアリングを実行して、送信された前記無線から送信ビームを形成するビームステアリングユニットと、
送信された前記無線の後続サンプルのうちそれぞれ異なる周波数における送信された前記無線を表現する異なるサンプル又はグループについて、ビームステアリングのために周波数依存の重みが使用されることと、
前記周波数依存の重みは、前記送信ビームの所定の形状を生み出すように適合されることと、
を含む、環境をイメージングするためのビームステアリング装置が提供される。
【0018】
本発明の別の観点によれば、環境に向けて無線を送信する少なくとも2つの送信アンテナを含む広帯域送信ユニットと、
前記無線の周波数は、広帯域周波数レンジ内で決定論的手法で時間と共に変化することと、
前記環境から前記無線を受信し、受信される前記無線から受信信号を生成する、少なくとも2つの受信アンテナ及び少なくとも1つの受信エレメントを含む受信ユニットと、
ビームステアリング重みを使用することにより、ビームステアリングを実行して送信された前記無線から送信ビームを形成するビームステアリングユニットと、
送信された前記無線の後続サンプルのうちそれぞれ異なる周波数における送信された前記無線を表現する異なるサンプル又はグループについて、ビームステアリングのために周波数依存の重みが使用されることと、
前記周波数依存の重みは、前記送信ビームの所定の形状を生み出すように適合されることと、
ビーム形成重みを使用することにより、ビーム形成を実行して、受信ビームを形成し、ビーム形成された出力信号を前記受信信号から取得するビーム形成ユニットと、
受信信号の後続サンプルのうちそれぞれ異なる周波数における受信信号を表現する異なるサンプル又はグループについて、ビーム形成のために周波数依存の重みが使用されることと、
前記周波数依存の重みは、前記受信ビームの所定の形状を生み出すように適合されることと、
を含むビーム形成及びビームステアリング装置が提供される。
【0019】
本発明のまた別の観点によれば、本発明によって提案される、ビーム形成装置、ビームステアリング装置、及び/又は、ビーム形成及びビームステアリング装置と、これらの出力信号を処理するための処理装置とを備える、アクティブイメージング装置が提供される。
【0020】
方法に対応するまた別の観点によれば、コンピュータ上で実行されるときに、コンピュータに、本発明に係るビーム形成方法又はビームステアリング方法のステップを実行させるプログラム手段を備える、コンピュータプログラム、及び、コンピュータ上で実行されるときに、コンピュータに、本発明に係るビーム形成方法又はビームステアリング方法のステップを実行させる命令が格納された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な媒体が提供される。
【0021】
本発明の好適な実施形態は、従属項に記載される。請求項に記載された装置、請求項に記載された方法、請求項に記載されたコンピュータプログラム、及び、請求項に記載されたコンピュータ読み取り可能な媒体は全て、従属項に記載されるように、また、以下に記載されるように、同様の及び/又は同一の好適な実施形態を有することが理解されるべきである。
【0022】
いずれのビーム形成装置についても、大抵、帯域幅限界がある。なぜなら、特定のビームを形成するための(送信器において及び/又は受信器において使用される)複素重みは、1つの特定の周波数においてのみ有効だからである。そのため、広帯域信号を送信している又は受信しているシステムの場合、形成されたビームは著しく劣化する。この認識に基づいて、本発明は、送信信号及び/又は受信信号の周波数が公知の/決定論的手法で時間と共にスイープしているか又は変化している広帯域システムに適用可能な、(受信器側での)ビーム形成アプローチ及び/又は(送信器側での)ビームステアリングアプローチを使用するための概念に基づく。とり得る適用例は、FMCWレーダーシステム、周波数ホッピングされる通信システム又はチャープベースの通信システムである。
【0023】
従って、本発明は、公知の/決定論的手法で時間と共にその周波数を変化させる送信信号及び/又は受信信号について広帯域ビーム形成を実現する簡単で効率的な方法を提供する。公知の方法は、提案される解決手段よりもかなり複雑で、複雑なフィルタリング構成を必要とするか、及び/又は、同時に多くの周波数上で送信している信号を主に扱う。
【0024】
上述したように、広帯域ビーム形成の課題は、固定重みベクトルがビームを異なる周波数において異なる方向にステアリングすることである。(Z. Hu又はB. Matthewsの提案による)公知の解決手段は、2次元フィルタリング又は周波数領域フィルタを使用することを提案する。M.S. Leeは、受信信号の共分散の算出を必要とするカポンビーム形成を使用することを提案する。特許文献1は、マルチキャリアシステムを使用すること、及び異なるキャリアについては異なる重みベクトルを使用することを提案する。その一方、本発明は、受信(及び/又は送信)信号の周波数が時間と共にどのように変化するのかに応じて、ビーム形成重み(及び/又はビームステアリング重み)を変化させることを提案する。さらに、本発明によれば、1つの信号(即ち、1つの周波数における無線)のみが一度に送信されて、信号(無線(radiation))の送信が把握されるように、即ち、決定論的手法でなされるようにする。
【0025】
より具体的には、本発明は、異なる周波数について異なる重みをどのように用いるのかを教示する。公知の解決手段は、2次元フィルタリング又はFFTを使用することによって広帯域信号を処理して、受信信号及び/又は送信信号を異なる周波数帯域に分割し、次いで、異なる周波数帯域に異なる重みを適用する。即ち、公知の解決手段は、周波数領域における解決法を提供する。その一方で、本発明によれば、信号は広帯域幅でスイープし得るが、任意の時点に処理される信号は狭帯域信号に限定される。この制約に起因して、提案される解決手段は、提示された問題を時間領域において解決するので、はるかに簡単である。特に、FMCWが送信無線として用いられる場合、これは、RF周波数よりもずっと低いレートであるベースバンド(ビート周波数)で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るビーム形成装置を備える、アクティブイメージング装置の第1の実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明に係るビーム形成装置の一実施形態をより詳細に示すブロック図である。
【図3】ビーム形成の原理を説明するための図である。
【図4】固定重みを用いたビーム形成のビームスクイント効果を説明するための図である。
【図5】典型的なFMCW(frequency modulated continuous wave:周波数変調連続波)レーダーシステムを示す概略図である。
【図6】FMCWレーダのランプ関数とサンプリングを示す図である。
【図7】本発明に係る広帯域ビーム形成を説明するための図である。
【図8A】本発明を用いないポイントターゲットの再構築を説明するための図である。
【図8B】本発明を用いたポイントターゲットの再構築を説明するための図である。
【図8C】本発明を用いないポイントターゲットの再構築を説明するための図である。
【図8D】本発明を用いたポイントターゲットの再構築を説明するための図である。
【図9】ビーム形成方向における3つのターゲットのポイントターゲットレスポンスを説明するためのグラフである。
【図10】ビーム形成方向におけるポイントターゲットレスポンスをより詳細に説明するための図である。
【図11】レンジ方向における3つのターゲットのポイントターゲットレスポンスを説明するためのグラフである。
【図12】本発明に係るビームステアリング装置を備える、アクティブイメージング装置の第2の実施形態を示す概略図である。
【図13】本発明に係るビームステアリング装置の一実施形態をより詳細に示す図である。
【図14】本発明に係るビームステアリング装置及びビーム形成装置を備える、アクティブイメージング装置の第3の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の上記及び他の観点は、以下に記載される実施形態から明らかになり、また、当該実施形態に関して、より詳細に説明されるであろう。
【0028】
本発明に係るビーム形成装置2を備える、環境5をイメージングするための本発明に係るアクティブイメージング装置1aの一般的なレイアウトは、図1に示される。ビーム形成装置2は、環境5に向けて無線を送信する(当該無線は送信信号とも称される)少なくとも1つの送信エレメント11を含む、広帯域送信ユニット10を備える。当該無線の周波数は、広帯域周波数レンジ内で決定論的手法で時間と共に変化する。ビーム形成装置2はさらに、上記環境5から無線を受信し、受信した無線から受信信号を生成する、少なくとも2つの受信エレメント21、22を含む、受信ユニット20を備える。ビーム形成重みを使用することにより、ビーム形成を実行して、受信ビームを形成し、ビーム形成された出力信号を受信信号から取得するビーム形成ユニット30が設けられる。受信信号の異なるサンプル又は後続のサンプルのグループについて、ビーム形成のために周波数依存の重みが使用される(なお、各サンプルは、異なる周波数における当該受信信号を表現する)。この周波数依存の重みは、受信ビームの所定の形状を生み出すように適合される。さらに、例えば、環境5のイメージを再構築するために、ビーム形成ユニット30のビーム形成された出力信号を処理するための処理ユニット45が設けられる。しかしながら、ビーム形成された出力信号を、例えば、物体検出や距離測定等、他の目的のために、アクティブイメージング装置以外の装置で用いることもできる。
【0029】
ビーム形成装置2の一実施形態の、より詳細な例示的な実装の概略図が、図2に示される。送信器10(即ち、送信ユニット)は、少なくとも1つの送信エレメント、この例においては2つの送信エレメント11、12を備える。各送信エレメント11、12は、時間と共にその周波数を変化させる反復波形、通常はチャープパルスを生成する波形発生器13を備える。生成された波形は、次いで、受信ユニット20の(少なくとも2つの、ここでは3つの)受信エレメント21、22、23の各々、及び、送信エレメント11、12の(送信器フロントエンドとも呼ばれる)内部RFユニット14にも渡される。内部RFユニット14は、通常、この波形を増幅して、当該波形が送信用の正確な電力レベルを有するようにする。
【0030】
無線16は、送信アンテナ15を介して環境5に送信される。一般に、各送信器アンテナ15は、それ自身の送信エレメント11、12と接続される。しかしながら、他の実施形態において、2つ以上の送信アンテナ15は、単一の(共通の)送信エレメントに接続される/スイッチングされることができる。反射信号26は、次いで、様々な受信アンテナ25によって受信される。送信アンテナ15と同様に、受信アンテナ25は、一般にそれ自身の受信エレメント21、22、23に接続される。しかしながら、他の実施形態において、2つ以上の受信アンテナ25は、単一の(共通の)受信エレメントに接続される/スイッチングされることができる。
【0031】
受信器フロントエンド24における幾つかのRF増幅(及び/又はダウンコンバージョン)ステージの後、結果として得られる信号は、ミキサ27(好適には、I/Qミキサ、又は、ヒルベルト変換フィルタといった、I/Q生成回路及びミキサ)に渡される。ミキサ27は、(例えば、以下に説明されるように、通常のFMCW受信器原理を適用することによって)上記信号と送信エレメント11、12から直接受け取った波形とをミキシングして、その周波数が対象物の距離に対応する複素「ビート周波数」波形を生成する。
【0032】
ミキサ27の複素出力は、次いで、大まかにフィルタリングされ、2つのA/D(アナログ・デジタル)コンバータ28に渡される。A/Dコンバータ28は、デジタル出力29、好適にはI出力及びQ出力(即ち、同相出力及び直交出力)を生成する。これらの出力29は、ビーム形成ユニット30に渡される。ビーム形成ユニット30は、様々な受信信号29を増幅し及び位相シフトして、様々なビーム位置が形成されることができるようにする。ビーム形成された出力信号31は、次いで、さらなる処理の対象となり得る。ビーム形成された出力信号31は、例えば、上述したように、アクティブイメージング装置において環境5のイメージを再構築するために用いられ得る。
【0033】
本発明に係るビーム形成装置2aの本実施形態によれば、A/D出力29はまた、周波数判定ユニット50に渡される。周波数判定ユニット50は、対応する受信信号26のサンプルの瞬間的な周波数を測定し、推定し又は予測する。これに基づいて、ビーム形成ユニット30は、瞬間的な周波数に応じて複素重みを変化させて、所定の形状のビームを取得する。アンテナ形状及び周波数に基づいて、無線を特定の方向へビーム形成するための重みは、数学的に算出することができ、理論上は、各アンテナへの波伝搬遅延が補償される。重みは、キャリブレーション段階の間に最適化することができる。しかしながら、通常の動作期間中は、予め最適化された重みが一般に用いられるか、又は、重みは動的に数学的に算出されるであろう。
【0034】
送信された無線の決定論的な特質に起因して、瞬間的な周波数を予測することができる。あるいは、瞬間的な周波数は、例えば、周波数トラッキング回路を用いて測定することができる。瞬間的な周波数を判定するためのさらなる方法が存在し、ここで用いることができる。
【0035】
本発明のさらに詳細を説明する前に、ビーム形成がより詳細に説明されるべきである。
【0036】
ビーム形成は、エネルギーを特定の方向に沿って集中させて、当該方向の信号を受信するか、又は、当該方向へ信号を送信する一方で、他の方向からの信号は拒絶する。より小さなアンテナのセットからの無線信号は結合されて、より大きな指向性開口を実現する。これらのアンテナは、直線に沿って、平面上に、体系的に又はランダムに配置され得る。これらのアンテナはまた、SIMO(Single Input Multiple Output)システム、MISO(Multiple Input Single Output)システム又はMIMO(Multiple Input Multiple Output)システムとして配置することもできる。通信において、ビーム形成は、信号源におけるアンテナを指し示して干渉を低減し、且つ、通信品質を改善するために用いられる。イメージングシステムにおいて、ビーム形成は、アンテナを様々な方向にステアリング及び集中させて様々な位置においてイメージを形成するために用いられる。
【0037】
ビーム形成の基本的な概念は、アンテナアレイにおける波伝搬遅延を補償して、図3に示されるように、信号エネルギーの大部分が1つの角度方向に進む、何らかの干渉パターンを作ることである。
【0038】
信号をビーム形成するための様々なアプローチがある。1つのアプローチは、実時間遅延を用いて、時間遅延を補償することである。一定のグループ遅延を有する遅延構造が要求される。これは、しばしば光学的な手段によって生成される。従って、広帯域ビーム形成を、実時間遅延を用いて実現することができる。別のアプローチは、位相シフトを用いて時間遅延を補償する。この場合、各位相シフトは、アレイにおける各アンテナの受信信号の位相を、わずかに異なる量だけ変化させる。各受信(又は送信)信号についての位相シフトを変化させることで、アレイが最も高い感度を有する受信(又は送信)信号の角度を変化させることができるため、ビームをステアリングすることができる。
【0039】
位相シフトは、アナログ位相シフト器を用いて実装することができる。位相は、通常、固定されている。即ち、位相は、時間と共に変化しないか、又は、限られた形態での適応性を有する。最もよく用いられるビーム形成技法は、振幅重みを固定させ、且つ、位相重みのみを変化させて、ビームをステアリングすることである。この種の適応アンテナは、フェーズドアレイとして知られている。各アンテナエレメントの出力(又は、送信の場合は、入力)は位相シフト器に接続され、且つ、これらの出力が合計されて、所望の方向へのビームが得られる。この結果、単一のビームが得られる。より多くのビームが同時に必要とされる場合、より多くのビーム形成ネットワークが用いられる。
【0040】
一方、デジタルビーム形成は、デジタル信号処理技法を用いて位相シフトを実装する。アンテナからの受信信号は、RF周波数、IF周波数又はベースバンドにおける、アナログ領域からデジタル領域に変換される。アナログ信号がデジタル領域に変換された後、受信信号に所定の複素重みを乗算することで重みづけすることによって、ビーム形成が行われる。これらの複素重みは、予め決定されてもよく、また、適応的に変化させられてもよい。デジタルビーム形成は、アナログ領域において適用される単純な方法とは対照的に、非常に洗練された適応信号処理アルゴリズムを適用し得るため、魅力的である。付加的なハードウェアを追加することなく、複数のビームを同時に容易に生成することができる。
【0041】
本発明は、一般に、位相シフトを用いてデジタル領域の時間遅延を補償するデジタルビーム形成に関する。以下の議論は、ビーム形成受信器に焦点を当てるであろう。しかしながら、本発明はまた、ビーム形成送信器及びMIMOシステムにも適用される。
【0042】
ある時間遅延に関し、特定の周波数について固定の位相シフトが存在する。異なる周波数は異なる位相シフトを有する。狭帯域システムでは、位相シフトは周波数帯域において全ての周波数についてほぼ同一であるので、時間遅延は中央周波数の単一位相シフトとして概算することができる。広帯域システムでは、この概算はもはや有効ではない。なぜなら、周波数帯域における周波数の下限と上限との間の波長差があまりにも大きいからである。従って、ビームは、異なる周波数については異なる方向にステアリングされる。この効果はビームスクイント(beam squint)と呼ばれる。図4に見られるように、固定の重みベクトルを用いてビームがステアリングされる。ビームは、142.35GHzにおいて14.7度、140GHzにおいて15度、及び、137.65GHzにおいて15.25度にステアリングされる。ビームステアリング方向の差異は、周波数差が増加するにつれて、増加する。このような広帯域システムにおいて、固定の位相シフトを用いる従来のビーム形成方法は、もはや機能しない。
【0043】
本発明は、送信信号又は受信信号の周波数に応じて、その複素重みを変更する適応的なビーム形成アプローチを提案する。この方法は、送信信号又は受信信号の周波数が決定論的な方法で時間と共に変化している又はスイープしている広帯域システムに適用可能である。とり得る適用例は、FMCWレーダーシステム、周波数ホッピングされる通信システム又はチャープベースの通信システムであり得るが、一般的には如何なる種類のデータの送信にも適用し得る。さらに、本発明はまた、複数のスイープする信号又は時間的に変化する信号が同時に送信され、これらの信号を受信器において分割することができるシステムに適用されることができる。
【0044】
一例として、FMCWをここでより詳細に説明する。FMCWの詳細な説明は、G. Brooker著、"Understanding Millimeter Wave FMCW Radars"、1st International Conference on Sensing Technology、November 21-23、2005、Palmerston North、New Zealand、p. 152-157においてなされている。FMCWレーダは、図5に示されるように、周波数変調された(周波数は時間と共に変化している)連続波信号を送信して、チャープパルスを生成する。このチャープパルスは、調べられるべき対象物に送信され、且つ、結合器を介して受信器に与えられる。対象物の特性に応じて、送信信号は対象物によって反射され、FMCWレーダの受信器セクションによって受信されるであろう。送信されるチャープパルスは、その周波数を時間と共に変化させているため、任意の瞬間に受信される正確な周波数は、対象物がどれだけ離れて位置しているか、及び、対応する飛行時間(T)に依存する。この受信信号は、次いで、(結合器を介してミキサに供給される)送信されたチャープとミキシングされ、ミキサの出力は、送信信号と受信信号との間の周波数における差である周波数を有する。これはビート周波数(f)として知られ、FMCWレーダと対象物との間の距離に正比例する。
【0045】
ビート周波数信号は、アナログデジタルコンバータ(ADC)によって、アナログ領域からデジタル領域に変換される。ADCからの複素I/Q信号は、次いで、フーリエ変換によって周波数領域に変換されて、各周波数ビンが取得される。これらの周波数ビンは、対象物のレンジに直接関連する。
【0046】
送信信号(チャープパルス)及び受信信号の時間に対する周波数変動は、図6においてそれぞれ直線及び点線で示される。送信信号と受信信号との間の周波数の差、即ち、ビート周波数(f)もまたラベリングされている。図6から分かるように、送信信号及び受信信号の周波数は、時間と共に変動している。各サンプリングポイントにおいて、信号の周波数は既知であり、送信信号及び受信信号の帯域幅は、任意の瞬間について制限されている。そのため、異なるサンプルには異なる重みベクトルを用いることが提案され、これらの重みベクトルは(チャープ)波形の各サンプルの瞬間的な周波数について最適化される。
【0047】
FMCW信号についてのモデルは、次のように表され得る。
【0048】
【数1】

【0049】
ここで、Tはチャープパルス期間であり、ωは初期周波数であり、αはチャープレートである。パルスは送信され、対象物によって反射される。単一の対象物から受信されるエコー信号は、次の通りである。
【0050】
【数2】

【0051】
ここで、Tは送信信号の往復飛行時間である。対象物から反射される受信信号の瞬間的な周波数は、次式によって与えられる。
【0052】
【数3】

【0053】
補償されるべき時間遅延はτであると仮定すると、ビームをステアリングするために必要な位相シフトは、次式によって与えられる。
【0054】
【数4】

【0055】
デジタルビーム形成システムにおいて、サンプルはビーム形成が適用される前にデジタル化される。ADCサンプリングレートがfであると仮定すると、サンプリングインターバルはΔtであり、時間tは、式(4)においてt=Δt・nで置き換えることができる。結果として得られる位相シフトは、次式によって与えられる。
【0056】
【数5】

【0057】
ここで、nは時間サンプルの数である。上記の式から、異なる時間サンプルには異なる位相シフトが適用されることが分かる。好適には、位相シフトは、個々の瞬間的な周波数に応じて個々の時間サンプルの各々について最適化される。
【0058】
アンテナアレイにおいてM個のチャネルが利用可能であると仮定すると、各チャネルについての位相シフトは、次式によって与えられる。
【0059】
【数6】

【0060】
上記の式は、ベクトル形式で次のように書き換えることができる。
【0061】
【数7】

【0062】
図7は、本発明によって提案される広帯域ビーム形成方法を説明するブロック図を示す。方向θから到来する信号波は、アンテナのアレイによって受信される。隣接するアンテナ間の時間遅延はτである。受信信号はデチャープされ、次いで、デジタル領域に変換される。各チャネルからの複素デジタルサンプルは、これらの位相をシフトするために複素重みで乗算される。最後に、位相シフト後の全てのサンプルが合計されて、ビーム形成された信号が得られる。複素重みは、受信信号の瞬間的な周波数に応じて各時間サンプルについて最適化される。
【0063】
提案される広帯域ビーム形成方法のシミュレーション性能が、図8から図11に示される。シミュレーションの中央周波数は140GHzである。FMCW信号の帯域幅は15GHzである。9個のポイントターゲットが、0.3m×0.5mのサイズの2次元の環境において等間隔に置かれている。
【0064】
図8は、従来の固定重み方法(図8A及び図8C)と、提案される適応重み方法(図8B及び図8D)との双方を用いたポイントターゲットのシミュレーション再構築を示す。図から分かるように、適応重み方法は、ビーム形成方向及びレンジ方向の双方について、より良好なパフォーマンスを示す。図8C及び図8Dは、再構築されたポイントターゲットのうちの1つを示す。図8には、提案される適応重み方法が、固定重み方法と比べてかなり小さいポイントを生成することが明らかに示されている。このことは、適応重み方法が、かなり良好な空間分解能を有することを意味する。
【0065】
図9から図11は、従来の固定重み方法と、提案される適応重み方法との双方について、ビーム形成領域(図9及び図10)とレンジ領域(図11)のそれぞれにおけるポイントターゲットレスポンスを示す。
【0066】
図9には、同一のレンジ距離で異なるビーム形成方向における3個のターゲットのポイントターゲットレスポンスが示される。ビーム形成領域において、図9に示されるように、ビームが中央周波数(0°)に向けられている場合、両方法は違いを示さない。ビームが中心から遠ざかる限り、固定重み方法のパフォーマンスは低下する。ビーム幅は広がり、ビームのゲインは低下する。しかしながら、適応重み方法は、ビームが遠ざけられてもほぼ同じパフォーマンスを維持する。提案される方法のビーム幅は、図9に示されるように3つの方向全てについてほぼ同じである。ビームのゲインは、ビームが±14.5°にステアリングされるときに、わずかな量だけ低下するに過ぎず、従来の固定重み方法と比較すると、提案される方法のゲインの低下量はかなり小さい。
【0067】
ビーム形成領域において14.5°における1つのターゲットの拡大されたポイントターゲットレスポンスが、図10に示される。図から分かるように、ビームが14.5°にステアリングされると、提案される適応重みビーム形成方法の半電波強度ビーム幅(HPBW:half power beam width)は約0.7°である一方、従来の固定重みビーム形成方法のHPBWは約1.4°である。従って、提案される適応重み方法は、従来の方法と比べて2倍良好な空間分解能を実現する。
【0068】
レンジ領域において、図11に示されるように、提案される適応重み方法は、全ての異なるレンジについて従来の方法よりも良好なパフォーマンスを示す。提案される方法は、サイドローブについて、より狭いビーム幅及びより高い抑制の双方を示す。
【0069】
本発明に係るビームステアリング装置3を備える、本発明に係るアクティブイメージング装置1bの第2の実施形態は、図12に概略的に示される。ビームステアリング装置3は、広帯域送信器ユニット10と受信ユニット20とを備える。広帯域送信器ユニット10は、無線を環境5に向けて送信する少なくとも2つの送信エレメント11、12を含み、当該無線の周波数は、広帯域周波数レンジ内で決定論的手法で時間と共に変化する。受信器ユニット20は、環境5から無線を受信し、受信した無線から受信信号を生成する少なくとも1つの受信エレメント21を含む。さらに、ビームステアリング装置1bは、ビームステアリングを行って、ビームステアリング重みを用いることによって、送信された無線から送信ビームを形成するビームステアリングユニット40を備える。送信された無線の異なるサンプル又は後続のサンプルのグループについて、ビーム形成のために周波数依存の重みが使用される(なお、サンプルは、異なる周波数における当該送信された無線を表現する)。この周波数依存の重みは、送信ビームの所定の形状を生み出すように適合される。さらに、受信器ユニット20の受信信号を処理するために、例えば、環境5のイメージを再構築するために、処理ユニット45が設けられる。しかしながら、受信信号はまた、例えば、物体検出や距離測定等、他の目的のために、及び、アクティブイメージング装置以外の装置で用いられてもよい。
【0070】
ビームステアリング装置3aの一実施形態のより詳細な実装例は、図13に概略的に示される。図13は、ビーム形成装置30がビームステアリング装置40と置き換えられている以外は、大部分において、図2に示されるビーム形成装置2aの実装と同様である。しかしながら、随意的に、ビーム形成装置30を付加的に設けることができ、但し、受信エレメント21、22、23のデジタル出力29は、異なる方法で処理され、又は、他の目的に使用されてもよい。
【0071】
さらに、この実装においては、周波数依存の重みを格納するストレージユニット60が設けられる。このようなストレージユニット60を、ビーム形成装置2、2aに設けることもできる。一般に、これらの周波数依存の重みを、例えば、ビームステアリング装置3a(又はアクティブイメージング装置1b)のセットアップ期間に、製造及びインストール後に、又は、定期的に、前もって取得することができる。周波数依存の重みは、その結果、ストレージユニット60(どのような重みも格納される)から読み出され、装置の実際の動作期間にビームステアリングのためにビームステアリングユニット40によって使用されることができる。
【0072】
さらにまた、この実装において、ビームステアリング装置3aは、上述されたように数値計算によって周波数依存の重みを算出する重み算出ユニット70を備える。また、このような重み算出ユニット70は、ビーム形成装置2、2aに設けられてもよい。
【0073】
ビームステアリング装置3aの上記実施形態は、ストレージユニット60と重み算出ユニット70との双方を備えるが、ストレージユニット60及び重み算出ユニット70のうちの1つのみを設けることも可能である。同じことは、ビーム形成装置にも当てはまる。
【0074】
本発明に係るビームステアリング及びビーム形成装置4を備える、アクティブイメージング装置の第3の実施形態の概略図は、図14に示される。ビームステアリング及びビーム形成装置4は、送信器側及び受信器側の双方でビーム形成を実行するために、上述したようなビームステアリングユニット40と、ビーム形成ユニット30とを備える。
【0075】
一般に、ビームステアリング装置において、送信エレメント11、12は環境5に向けて同時に無線を送信するように構成され、異なる送信エレメントによって送信される無線は同一である。
【0076】
さらにまた、一実施形態において、ビームステアリングユニット40は、瞬間的な周波数に応じて重みを変更して、所定の形状の送信ビームを取得し、且つ、送信される無線の後続のサンプルのグループの平均周波数又は中央周波数に対して適合される重みを使用するように構成される。
【0077】
さらに、好適な実施形態において、送信ユニットは環境を照射(illuminate)するように構成された照射ユニットとして設計される。
【0078】
総括すると、本発明は、最適なビーム形成パフォーマンスを提供する、アクティブイメージング装置及び方法を提供するので、特に広帯域デジタルビーム形成について、送信器側及び受信器側の双方又は一方に高いイメージング空間分解能を提供する。また、適当に適合されたビームステアリング装置及び方法に加えて、適当に適合されたビーム形成装置及び方法が提案される。本発明の主要な利点は、最適なビーム形成を最小のビーム幅で(即ち、ビームスクイント無しに)実現できること、及び、本発明の実現が単純な実装で容易に可能であることである。
【0079】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に示され且つ記載されたが、そのような図示及び記載は、実例又は例示とみなされるべきであり、限定的なものとみなされるべきではない。本発明は開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の他のバリエーションは、図面、開示内容、及び添付の特許請求の範囲の研究から、請求項に記載された発明の実施の際に当業者によって理解され且つ達成されることができる。
【0080】
特許請求の範囲において、「備える」又は「含む」という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、複数であることが明示されていない用語は、複数を排除するものではない。単一の要素又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載される幾つかの項目の機能を実現してもよい。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。
【0081】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又は他のハードウェアの一部として供給される固体の媒体又は光学記憶媒体といった、適切な非一時的な媒体に格納され/配布されてもよく、インターネット又は他の有線若しくは無線通信システムを介して、他の形態で配布されてもよい。
【0082】
特許請求の範囲中の如何なる符号も、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0083】
1a,1b アクティブイメージング装置
2a ビーム形成装置
3a ビームステアリング装置
5 環境
10 送信器
13 波形発生器
15 送信アンテナ
20 受信器
21,22,23 受信エレメント
25 受信アンテナ
30 ビーム形成ユニット
40 ビームステアリングユニット
45 処理ユニット
50 周波数判定ユニット
60 ストレージ
70 重み算出ユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境(5)に向けて無線を送信する少なくとも1つの送信アンテナ(15)を含む広帯域送信ユニット(10)と、
前記無線の周波数は、広帯域周波数レンジ内で決定論的手法で時間と共に変化することと、
前記環境(5)から無線を受信し、受信される前記無線から受信信号を生成する、少なくとも2つの受信アンテナ(25)及び少なくとも1つの受信エレメント(21,22)を含む受信ユニット(20)と、
ビーム形成重みを使用することにより、ビーム形成を実行して、受信ビームを形成し、ビーム形成された出力信号を前記受信信号から取得するビーム形成ユニット(30)と、
受信信号の後続サンプルのうちそれぞれ異なる周波数における受信信号を表現する異なるサンプル又はグループについて、ビーム形成のために周波数依存の重みが使用されることと、
前記周波数依存の重みは、前記受信ビームの所定の形状を生み出すように適合されることと、
を含むビーム形成装置(1a,1b)。
【請求項2】
前記ビーム形成ユニット(30)は、瞬間的な周波数に従って前記重みを変化させて、前記所定の形状の前記受信ビームを取得するように構成される、
請求項1に記載のビーム形成装置。
【請求項3】
前記受信信号の前記サンプルの瞬間的な周波数を測定し、推定し又は予測する周波数判定ユニット(50)、をさらに備える、
請求項1又は2に記載のビーム形成装置。
【請求項4】
前記ビーム形成ユニット(30)は、前記受信信号の前記後続サンプルのグループの中央周波数又は平均周波数に適合される重みを使用するように適合される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のビーム形成装置。
【請求項5】
前記ビーム形成ユニット(30)は、ビーム形成のための前記重みの周波数依存の位相シフトを使用するように構成される、
請求項1に記載のビーム形成装置。
【請求項6】
前記周波数依存の重みを格納するストレージユニット(60)、をさらに備える、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のビーム形成装置。
【請求項7】
前記周波数依存の重みを数値計算によって算出する重み算出ユニット(70)、をさらに備える、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のビーム形成装置。
【請求項8】
前記ビーム形成装置は、MISO、SIMO又はMIMOビーム形成用に構成される、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のビーム形成装置。
【請求項9】
環境(5)に向けて無線を送信する少なくとも2つの送信アンテナ(15)を含む広帯域送信ユニット(10)と、
前記無線の周波数は、広帯域周波数レンジ内で決定論的手法で時間と共に変化することと、
前記環境(5)から無線を受信し、受信される前記無線から受信信号を生成する、少なくとも1つの受信アンテナ(26)及び少なくとも1つの受信エレメント(21)を含む受信ユニット(20)と、
ビームステアリング重みを使用することにより、ビームステアリングを実行して、送信された前記無線から送信ビームを形成するビームステアリングユニット(40)と、
送信信号の後続サンプルのうちそれぞれ異なる周波数における送信信号を表現する異なるサンプル又はグループについて、ビームステアリングのために周波数依存の重みが使用されることと、
前記周波数依存の重みは、前記送信ビームの所定の形状を生み出すように適合されることと、
を含むビームステアリング装置。
【請求項10】
前記ビームステアリングユニット(40)は、瞬間的な周波数に従って前記重みを変化させて、前記所定の形状の前記送信ビームを取得するように構成される、
請求項9に記載のビームステアリング装置。
【請求項11】
前記ビームステアリングユニット(40)は、前記送信信号の前記後続サンプルのグループの中央周波数又は平均周波数に適合される重みを使用するように適合される、請求項9又は10に記載のビーム形成装置。
【請求項12】
前記ビームステアリングユニット(40)は、ビームステアリングのための前記重みの周波数依存の位相シフトを使用するように構成される、
請求項9〜11のいずれか1項に記載のビームステアリング装置。
【請求項13】
前記送信アンテナ(15)は、前記環境(5)に向けて無線を同時に送信するように構成され、前記異なる送信アンテナによって送信される前記無線は同一である、
請求項9〜12のいずれか1項に記載のビームステアリング装置。
【請求項14】
前記周波数依存の重みを格納するストレージユニット(60)、をさらに備える、
請求項9〜13のいずれか1項に記載のビームステアリング装置。
【請求項15】
前記周波数依存の重みを数値計算によって算出する重み算出ユニット(70)、をさらに備える、
請求項9〜14のいずれか1項に記載のビームステアリング装置。
【請求項16】
前記ビームステアリング装置は、MISO又はMIMOビームステアリング用に構成される、
請求項9〜15のいずれか1項に記載のビームステアリング装置。
【請求項17】
環境(5)に向けて無線を送信する少なくとも2つの送信アンテナ(15)を含む広帯域送信ユニット(10)と、
前記無線の周波数は、広帯域周波数レンジ内で決定論的手法で時間と共に変化することと、
前記環境(5)から前記無線を受信し、受信される前記無線から受信信号を生成する、少なくとも2つの受信アンテナ(25)及び少なくとも1つの受信エレメント(21,22)を含む受信ユニット(20)と、
ビームステアリング重みを使用することにより、ビームステアリングを実行して送信信号から送信ビームを形成するビームステアリングユニット(40)と、
送信信号の後続サンプルのうちそれぞれ異なる周波数における送信信号を表現する異なるサンプル又はグループについて、ビームステアリングのために周波数依存の重みが使用されることと、
当該周波数依存の重みは、前記送信ビームの所定の形状を生み出すように適合されることと、
ビーム形成重みを使用することにより、ビーム形成を実行して、受信ビームを形成し、ビーム形成された出力信号を前記受信信号から取得するビーム形成ユニット(30)と、
受信信号の後続サンプルのうちそれぞれ異なる周波数における受信信号を表現する異なるサンプル又はグループについて、ビーム形成のために周波数依存の重みが使用されることと、
当該周波数依存の重みは、前記受信ビームの所定の形状を生み出すように適合されることと、
を含むビーム形成及びビームステアリング装置。
【請求項18】
環境(5)に向けて広帯域無線を送信するステップと、
前記無線の周波数は、広帯域周波数レンジ内で決定論的手法で時間と共に変化することと、
前記環境(5)から無線を受信するステップと、
受信される前記無線から受信信号を生成するステップと、
ビーム形成重みを使用することにより、受信ビームを形成し、ビーム形成された出力信号を前記受信信号から取得するためにビーム形成するステップと、
受信信号の後続サンプルのうちそれぞれ異なる周波数における受信信号を表現する異なるサンプル又はグループについて、ビーム形成のために周波数依存の重みが使用されることと、
前記周波数依存の重みは、前記受信ビームの所定の形状を生み出すように適合されることと、
を含むビーム形成方法。
【請求項19】
環境(5)に向けて広帯域無線を送信するステップと、
前記無線の周波数は、広帯域周波数レンジ内で決定論的手法で時間と共に変化することと、
前記環境(5)から無線を受信するステップと、
受信される前記無線から受信信号を生成するステップと、
ビームステアリング重みを使用することにより、送信された前記無線から送信ビームを形成するためにビームステアリングするステップと、
送信信号の後続サンプルのうちそれぞれ異なる周波数における送信信号を表現する異なるサンプル又はグループについて、ビームステアリングのために周波数依存の重みが使用されることと、
前記周波数依存の重みは、前記送信ビームの所定の形状を生み出すように適合されることと、
を含むビームステアリング方法。
【請求項20】
環境(5)に向けて広帯域無線を送信するステップと、
前記無線の周波数は、広帯域周波数レンジ内で決定論的手法で時間と共に変化することと、
前記環境(5)から前記無線を受信するステップと、
受信される前記無線から受信信号を生成するステップと、
ビームステアリング重みを使用することにより、送信された前記無線から送信ビームを形成するためにビームステアリングするステップと、
送信信号の後続サンプルのうちそれぞれ異なる周波数における送信信号を表現する異なるサンプル又はグループについて、ビームステアリングのために周波数依存の重みが使用されることと、
当該周波数依存の重みは、前記送信ビームの所定の形状を生み出すように適合されることと、
ビーム形成重みを使用することにより、受信ビームを形成し、ビーム形成された出力信号を前記受信信号から取得するためにビーム形成するステップと、
受信信号の後続サンプルのうちそれぞれ異なる周波数における受信信号を表現する異なるサンプル又はグループについて、ビーム形成のために周波数依存の重みが使用されることと、
当該周波数依存の重みは、前記受信ビームの所定の形状を生み出すように適合されることと、
を含むビーム形成及びビームステアリング方法。
【請求項21】
請求項1に記載のビーム形成装置、請求項9に記載のビームステアリング装置又は請求項17に記載のビーム形成及びビームステアリング装置と、
前記受信信号又は前記ビーム形成された出力信号をそれぞれ処理するための処理ユニットと、
を備える、環境(5)をイメージングするためのアクティブイメージング装置。
【請求項22】
請求項18に記載のビーム形成方法、請求項19に記載のビームステアリング方法又は請求項20に記載のビーム形成及びビームステアリング方法と、
前記受信信号又は前記ビーム形成された出力信号をそれぞれ処理するステップと、
を含む、環境(5)をイメージングするためのアクティブイメージング方法。
【請求項23】
コンピュータ上で実行されるときに、前記コンピュータに、請求項18に記載の方法のビーム形成するステップ、請求項19に記載の方法のビームステアリングするステップ、又は、請求項20に記載の方法のビーム形成するステップ及びビームステアリングするステップを実行させるプログラムコード手段を備える、コンピュータプログラム。
【請求項24】
コンピュータ上で実行されるときに、前記コンピュータに、請求項18に記載の方法のビーム形成するステップ、請求項19に記載の方法のビームステアリングするステップ、又は、請求項20に記載の方法のビーム形成するステップ及びビームステアリングするステップを実行させる命令が格納された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−15522(P2013−15522A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−146639(P2012−146639)
【出願日】平成24年6月29日(2012.6.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(397051508)ソニー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (140)
【Fターム(参考)】