広幅偏光板およびその製法
【課題】１００インチ級液晶表示パネルに適用可能な広幅偏光板およびその製法を提供する。
【解決手段】広幅偏光板は、ロールから巻き出されたＰＶＡフィルムにロール幅方向に延伸しロール巻回方向に収縮させる延伸処理を施し、延伸処理後のＰＶＡフィルムの両面をタックフィルムでラミネート処理して製造される。
【解決手段】広幅偏光板は、ロールから巻き出されたＰＶＡフィルムにロール幅方向に延伸しロール巻回方向に収縮させる延伸処理を施し、延伸処理後のＰＶＡフィルムの両面をタックフィルムでラミネート処理して製造される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ＰＶＡ（ポリビニルアルコール）を使用した偏光板およびその製法に係り、特に１００インチ級液晶表示パネルに適用可能な広幅偏光板およびその製法に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年高精細度テレビジョン放送に対応したテレビジョン放送受像装置にあっては画面の大型化が進み、１００インチ級の液晶表示パネルを搭載した受像機も出現している。
【０００３】
液晶表示パネルは、背面から前面に向かって、白色光を発光するバックライト、バックライトの発光した白色光を第１の方向（例えば縦方向）の偏光に変換する第１の偏光板、第１の透明電極、液晶、第２の透明電極、および第１の方向と直交する第２の方向（例えば横方向）の偏光だけを透過する第２の偏光板を順次積層した構造を有する。
【０００４】
バックライトの発光した白色光は、第１の偏光板で縦偏光に変換されて液晶層に入射する。
【０００５】
第１の透明電極と第２の透明電極との間に電圧が印加されていない場合は、縦偏光は縦偏光のまま液晶層を透過し第２の偏光板に入射するが、第２の偏光板は横偏光だけを透過する性質を有するため、縦偏光は遮蔽され、バックライト光は表示面に暗点を表示する。
【０００６】
逆に、第１の透明電極と第２の透明電極との間に電圧が印加された場合は、縦偏光は液晶層を通過する間に横偏光に変換され第２の偏光板を透過するため、バックライト光は表示面に明点を表示することとなる。
【０００７】
上記の液晶表示パネルに使用する偏光板としては、ＰＶＡ偏光板を使用することが一般的である。
【０００８】
本出願人は、ＰＶＡフィルムを膨潤し、ヨウ素を染着した後、ＰＶＡフィルムを巻回方向に延伸させるとともに幅方向に収縮させる延伸処理を施して偏光性を付与し、両面をタックフィルムでラミネートすることにより、ＰＶＡ偏光板を製造する方法を既に提案している（例えば、特許文献１参照）。
【０００９】
延伸処理前のＰＶＡフィルムの幅をＷ、長さをＨとし、延伸処理後のＰＶＡフィルムの幅をｗ、長さをｈとすると、次の式を満足するように延伸処理を行えば９９．９９％以上の偏光率、４３％以上の透過率を有する偏光板を製造できることが知られている。
【００１０】
ｗ＝Ｗ／２ ｈ＝５．５
即ち、ＰＶＡフィルム巻回方向に５．５倍延伸することにより液晶表示パネルに適用可能な偏光率９９．９９％以上、透過率４３％以上の偏光板を製造することができるが、偏光板の幅は延伸処理前のＰＶＡフィルムの幅の半分に収縮することとなる。
【００１１】
現在ＰＶＡ製造者から調達可能なＰＶＡフィルムロールの最大幅は３１００ミリメートルであるため、現在製造可能な偏光板の最大幅は３１００÷２＝１５５０ミリメートルとなる。
【００１２】
ところが、１００インチ級の液晶表示パネルには、幅２３００ミリメートル、高さ１３００ミリメートルの縦方向偏光板および横方向偏光板が必要となる。
【００１３】
図４は幅１５５０ミリメートルの偏光板ロール５０から幅２３００ミリメートル、高さ１３００ミリメートルの縦方向偏光板および横方向偏光板を裁断する場合の裁断図であって、横方向偏光板５１は継ぎ目なしで製造可能であるものの、縦方向偏光板５２は少なくとも１箇所の継ぎ目があるものとせざるを得なかった。
【特許文献１】特開２００２−３５０６３８公報（［０００９］、図３）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１４】
しかしながら、縦方向偏光板の継ぎ目からバックライト光が漏洩することを回避できないため、１００インチ級の液晶表示パネルでは縦方向に細い白線が生じ、画質の劣化を招来するという課題があった。
【００１５】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、１００インチ級液晶表示パネルに適用可能な広幅偏光板およびその製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１６】
本発明に係る広幅偏光板は、ロールから巻き出されたポリビニルアルコール（ＰＶＡ）フィルムにロール幅方向に延伸しロール巻回方向に収縮させる延伸処理を施し、延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両面をタックフィルムでラミネート処理して製造される。
【００１７】
これにより、広幅の偏光板を製造できることとなる。
【００１８】
本発明に係る広幅偏光板は、前記延伸処理が、延伸槽において、前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持して前記ＰＶＡフィルムをロール幅方向に延伸し、前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽からの排出速度を前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽への供給速度より小として前記ＰＶＡフィルムをロール巻回方向に収縮させる２軸同時延伸処理により製造される。
【００１９】
これにより、連続で広幅偏光板を製造することができる。
【００２０】
本発明に係る広幅偏光板は、前記２軸同時延伸処理が、前記ＰＶＡフィルムを幅方向に５．５倍延伸し、前記ＰＶＡフィルをロール巻回方向に半分に収縮させる処理により製造される。
【００２１】
これにより、偏光率が９９．９９％以上、透過率が４３％以上の広幅偏光板を製造することができる。
【００２２】
本発明に係る広幅偏光板は、前記２軸同時延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの幅が１８００ミリメートル以上である。
【００２３】
これにより、１００インチ級の液晶表示パネルに適用可能な偏光板を継ぎ目なしで製造することができる。
【００２４】
本発明に係る広幅偏光板は、前記ラミネート処理が、延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持した状態で前記タックフィルムをラミネートする処理により製造される。
【００２５】
これにより、ＰＶＡフィルムに皺を生じることなくラミネートすることができる。
【００２６】
本発明に係る広幅偏光板の製造方法は、ロールから送り出されたＰＶＡフィルムをロール幅方向に延伸しロール巻回方向に収縮させる延伸処理段階と、前記延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両面をタックフィルムでラミネートするラミネート処理段階とを含む。
【００２７】
これにより、広幅の偏光板を製造できることとなる。
【００２８】
本発明に係る広幅偏光板の製造方法は、前記延伸処理段階が、延伸槽において、前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持して前記ＰＶＡフィルムをロール幅方向に延伸し、前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽からの排出速度を前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽への供給速度より小として前記ＰＶＡフィルムをロール巻き出し方向に収縮させる２軸同時延伸処理段階である。
【００２９】
これにより、連続で広幅偏光板を製造することができる。
【００３０】
本発明に係る広幅偏光板の製造方法は、前記２軸同時延伸処理段階が、前記ＰＶＡフィルムを幅方向に５．５倍延伸し、前記ＰＶＡフィルをロール巻回方向に半分に収縮させる処理である。
【００３１】
これにより、偏光率が９９．９９％以上、透過率が４３％以上の広幅偏光板を製造することができる。
【００３２】
本発明に係る広幅偏光板の製造方法は、ラミネート処理が、前記延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持した状態で前記タックフィルムをラミネートする処理である。
【００３３】
これにより、ＰＶＡフィルムに皺を生じることなくラミネートすることができる。
【発明の効果】
【００３４】
本発明は、ロールから巻き出されたＰＶＡフィルムにロール幅方向に延伸しロール巻き出し方向に収縮させる延伸処理を施し、延伸処理後のＰＶＡフィルムの両面をタックフィルムでラミネート処理して製造することにより、１００インチ級液晶表示パネルに適用できる偏光板を製造できるという効果を有する広幅偏光板を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【００３５】
以下、本発明に係る偏光板の製造方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【００３６】
図１は、本発明に係る広幅偏光板製造装置１の上面図（Ａ）および側面図（Ｂ）である。
【００３７】
図２は本発明に係る広幅偏光板製造工程を示す流れ図であって、本発明に係る広幅偏光板は以下の工程を経て製造される。
１．ＰＶＡフィルム巻き出し装置１１から巻き出されたＰＶＡフィルム１０を、水洗槽１２内で水洗する。
２．水洗したＰＶＡフィルム１０を、膨潤槽１３内で膨潤する。
３．膨潤したＰＶＡフィルム１０に、染色槽１４内においてヨウ素で染色する。
４．ヨウ素で染色されたＰＶＡフィルム１０を、ホウ酸水溶液を満たした洗浄槽１５内で洗浄する。
５．洗浄されたＰＶＡフィルム１０を、延伸槽２において液体雰囲気中で２軸同時延伸処理する。
【００３８】
２軸同時延伸処理では、ＰＶＡフィルム１０の両側端を把持手段の１実施例である把持具２１で把持してＰＶＡフィルム１０を幅方向に延伸するとともに、延伸槽２からのＰＡＶフィルム１０の排出速度を延伸槽２へのＰＶＡフィルム１０の供給速度より低速としてＰＶＡフィルム１０を巻回方向に収縮して、架橋状態を維持したまま、ＰＶＡ分子およびヨウ素を幅方向に配向してＰＶＡフィルム１０に偏光性を付与する。
【００３９】
なお、９９．９９％以上の偏光率および４３％以上の透過率を実現するためには、ＰＶＡフィルムを幅方向に５．５倍以上に延伸する必要がある。
【００４０】
そして、幅方向に５．５倍以上に延伸した場合にＰＶＡフィルムが裂けることを防止するために、ＰＶＡフィルムを巻回方向に半分に収縮させることが必要となる。
【００４１】
従って、延伸槽２からのＰＡＶフィルム１０の取り出し速度を延伸槽２へのＰＶＡフィルム１０の供給速度の半分に制御することが必要となる。
６．延伸処理したＰＶＡフィルム１０を、脱水装置１６で脱水する。
７．脱水後のＰＶＡフィルム１０を、第１の乾燥装置１７で乾燥する。
８．ラミネート装置３において、乾燥後のＰＶＡフィルム１０の両面をタックフィルム巻き出し装置３１から巻き出されたタックフィルム３２でラミネートする。
【００４２】
ラミネートする際には、撓み、緩み等が発生しないようにＰＶＡフィルム１０に張力を加えた状態にしておく必要がある。しかし、ＰＶＡフィルム１０をＰＶＡ分子の配向方向の直交方向（即ち、ＰＶＡフィルム１０の巻回方向）に張力をかけ過ぎるとＰＶＡフィルム１０は幅方向に裂けることを回避できない。
【００４３】
そこで、本発明に係る偏光板の製造方法にあっては、延伸処理において使用した把持具２１でＰＶＡフィルム１０の両側端を把持したまま、脱水、乾燥およびラミネート処理を行い、ラミネート処理後に把持具２１を取り外すようにしている。
９．ラミネート後のＰＶＡフィルム１０を、第２の乾燥装置１８で乾燥する。
１０．トリミング装置４において、耳切り装置４１によって乾燥後のＰＶＡフィルム１０の両側端の耳を切り落とす。なお、切り落とされた耳屑は耳屑巻き取り装置４２で巻き取られる。
１１．トリミング後のＰＶＡフィルム１０を巻き取り装置１９でロール状に巻き取り、偏光板ロールとする。
【００４４】
以上説明したように、本発明に係る偏光板の製造方法によれば、延伸処理前の幅が４２０ミリメートルのＰＶＡフィルムを使用して幅２３００ミリメートルの偏光板を作成することができることとなる。
【００４５】
図３は、本発明に係る偏光板の製造方法により製造した偏光板ロールから１００インチ級の液晶表示装置に使用する偏光板を裁断する場合の裁断図であって、１００インチ級の液晶表示装置に使用する幅２３００ミリメートル、高さ１３００ミリメートルの横方向偏光板２２および縦方向偏光板２３を継ぎ目無しで製造することが可能となる。
【００４６】
さらに、現在入手可能な最大幅である幅３１００ミリメートルのＰＶＡフィルムを使用すれば、１７０００ミリメートル幅の偏光板を継ぎ目無しで製造することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【００４７】
以上のように、本発明に係る広幅偏光板およびその製法は、１００インチ級の液晶表示装置に使用可能な広幅偏光板を継ぎ目無しで製造できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【００４８】
【図１】本発明に係る広幅偏光板製造装置の上面図（Ａ）および側面図（Ｂ）
【図２】本発明に係る広幅偏光板製造工程を示す流れ図
【図３】本発明に係る偏光板の製造方法により製造した偏光板ロールから１００インチ級の液晶表示装置に使用する偏光板を裁断する場合の裁断図
【図４】幅１５５０ミリメートルの偏光板ロールから幅２３００ミリメートル、高さ１３００ミリメートルの縦方向偏光板および横方向偏光板を裁断する場合の裁断図
【符号の説明】
【００４９】
１ 広幅偏光板製造装置
１０ ＰＶＡフィルム
１１ ＰＶＡフィルム巻き出し装置
１２ 水洗槽
１３ 膨潤槽
１４ 染色槽
１５ 洗浄槽
１６ 脱水装置
１７ 第１の乾燥装置
１８ 第２の乾燥装置
１９ 巻き取り装置
２ 延伸槽
２１ 把持具
３ ラミネート装置
３１ タックフィルム巻き出し装置
３２ タックフィルム
４ トリミング装置
４１ 耳切り装置
４２ 耳屑巻き取り装置
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ＰＶＡ（ポリビニルアルコール）を使用した偏光板およびその製法に係り、特に１００インチ級液晶表示パネルに適用可能な広幅偏光板およびその製法に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年高精細度テレビジョン放送に対応したテレビジョン放送受像装置にあっては画面の大型化が進み、１００インチ級の液晶表示パネルを搭載した受像機も出現している。
【０００３】
液晶表示パネルは、背面から前面に向かって、白色光を発光するバックライト、バックライトの発光した白色光を第１の方向（例えば縦方向）の偏光に変換する第１の偏光板、第１の透明電極、液晶、第２の透明電極、および第１の方向と直交する第２の方向（例えば横方向）の偏光だけを透過する第２の偏光板を順次積層した構造を有する。
【０００４】
バックライトの発光した白色光は、第１の偏光板で縦偏光に変換されて液晶層に入射する。
【０００５】
第１の透明電極と第２の透明電極との間に電圧が印加されていない場合は、縦偏光は縦偏光のまま液晶層を透過し第２の偏光板に入射するが、第２の偏光板は横偏光だけを透過する性質を有するため、縦偏光は遮蔽され、バックライト光は表示面に暗点を表示する。
【０００６】
逆に、第１の透明電極と第２の透明電極との間に電圧が印加された場合は、縦偏光は液晶層を通過する間に横偏光に変換され第２の偏光板を透過するため、バックライト光は表示面に明点を表示することとなる。
【０００７】
上記の液晶表示パネルに使用する偏光板としては、ＰＶＡ偏光板を使用することが一般的である。
【０００８】
本出願人は、ＰＶＡフィルムを膨潤し、ヨウ素を染着した後、ＰＶＡフィルムを巻回方向に延伸させるとともに幅方向に収縮させる延伸処理を施して偏光性を付与し、両面をタックフィルムでラミネートすることにより、ＰＶＡ偏光板を製造する方法を既に提案している（例えば、特許文献１参照）。
【０００９】
延伸処理前のＰＶＡフィルムの幅をＷ、長さをＨとし、延伸処理後のＰＶＡフィルムの幅をｗ、長さをｈとすると、次の式を満足するように延伸処理を行えば９９．９９％以上の偏光率、４３％以上の透過率を有する偏光板を製造できることが知られている。
【００１０】
ｗ＝Ｗ／２ ｈ＝５．５
即ち、ＰＶＡフィルム巻回方向に５．５倍延伸することにより液晶表示パネルに適用可能な偏光率９９．９９％以上、透過率４３％以上の偏光板を製造することができるが、偏光板の幅は延伸処理前のＰＶＡフィルムの幅の半分に収縮することとなる。
【００１１】
現在ＰＶＡ製造者から調達可能なＰＶＡフィルムロールの最大幅は３１００ミリメートルであるため、現在製造可能な偏光板の最大幅は３１００÷２＝１５５０ミリメートルとなる。
【００１２】
ところが、１００インチ級の液晶表示パネルには、幅２３００ミリメートル、高さ１３００ミリメートルの縦方向偏光板および横方向偏光板が必要となる。
【００１３】
図４は幅１５５０ミリメートルの偏光板ロール５０から幅２３００ミリメートル、高さ１３００ミリメートルの縦方向偏光板および横方向偏光板を裁断する場合の裁断図であって、横方向偏光板５１は継ぎ目なしで製造可能であるものの、縦方向偏光板５２は少なくとも１箇所の継ぎ目があるものとせざるを得なかった。
【特許文献１】特開２００２−３５０６３８公報（［０００９］、図３）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１４】
しかしながら、縦方向偏光板の継ぎ目からバックライト光が漏洩することを回避できないため、１００インチ級の液晶表示パネルでは縦方向に細い白線が生じ、画質の劣化を招来するという課題があった。
【００１５】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、１００インチ級液晶表示パネルに適用可能な広幅偏光板およびその製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１６】
本発明に係る広幅偏光板は、ロールから巻き出されたポリビニルアルコール（ＰＶＡ）フィルムにロール幅方向に延伸しロール巻回方向に収縮させる延伸処理を施し、延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両面をタックフィルムでラミネート処理して製造される。
【００１７】
これにより、広幅の偏光板を製造できることとなる。
【００１８】
本発明に係る広幅偏光板は、前記延伸処理が、延伸槽において、前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持して前記ＰＶＡフィルムをロール幅方向に延伸し、前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽からの排出速度を前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽への供給速度より小として前記ＰＶＡフィルムをロール巻回方向に収縮させる２軸同時延伸処理により製造される。
【００１９】
これにより、連続で広幅偏光板を製造することができる。
【００２０】
本発明に係る広幅偏光板は、前記２軸同時延伸処理が、前記ＰＶＡフィルムを幅方向に５．５倍延伸し、前記ＰＶＡフィルをロール巻回方向に半分に収縮させる処理により製造される。
【００２１】
これにより、偏光率が９９．９９％以上、透過率が４３％以上の広幅偏光板を製造することができる。
【００２２】
本発明に係る広幅偏光板は、前記２軸同時延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの幅が１８００ミリメートル以上である。
【００２３】
これにより、１００インチ級の液晶表示パネルに適用可能な偏光板を継ぎ目なしで製造することができる。
【００２４】
本発明に係る広幅偏光板は、前記ラミネート処理が、延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持した状態で前記タックフィルムをラミネートする処理により製造される。
【００２５】
これにより、ＰＶＡフィルムに皺を生じることなくラミネートすることができる。
【００２６】
本発明に係る広幅偏光板の製造方法は、ロールから送り出されたＰＶＡフィルムをロール幅方向に延伸しロール巻回方向に収縮させる延伸処理段階と、前記延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両面をタックフィルムでラミネートするラミネート処理段階とを含む。
【００２７】
これにより、広幅の偏光板を製造できることとなる。
【００２８】
本発明に係る広幅偏光板の製造方法は、前記延伸処理段階が、延伸槽において、前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持して前記ＰＶＡフィルムをロール幅方向に延伸し、前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽からの排出速度を前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽への供給速度より小として前記ＰＶＡフィルムをロール巻き出し方向に収縮させる２軸同時延伸処理段階である。
【００２９】
これにより、連続で広幅偏光板を製造することができる。
【００３０】
本発明に係る広幅偏光板の製造方法は、前記２軸同時延伸処理段階が、前記ＰＶＡフィルムを幅方向に５．５倍延伸し、前記ＰＶＡフィルをロール巻回方向に半分に収縮させる処理である。
【００３１】
これにより、偏光率が９９．９９％以上、透過率が４３％以上の広幅偏光板を製造することができる。
【００３２】
本発明に係る広幅偏光板の製造方法は、ラミネート処理が、前記延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持した状態で前記タックフィルムをラミネートする処理である。
【００３３】
これにより、ＰＶＡフィルムに皺を生じることなくラミネートすることができる。
【発明の効果】
【００３４】
本発明は、ロールから巻き出されたＰＶＡフィルムにロール幅方向に延伸しロール巻き出し方向に収縮させる延伸処理を施し、延伸処理後のＰＶＡフィルムの両面をタックフィルムでラミネート処理して製造することにより、１００インチ級液晶表示パネルに適用できる偏光板を製造できるという効果を有する広幅偏光板を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【００３５】
以下、本発明に係る偏光板の製造方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【００３６】
図１は、本発明に係る広幅偏光板製造装置１の上面図（Ａ）および側面図（Ｂ）である。
【００３７】
図２は本発明に係る広幅偏光板製造工程を示す流れ図であって、本発明に係る広幅偏光板は以下の工程を経て製造される。
１．ＰＶＡフィルム巻き出し装置１１から巻き出されたＰＶＡフィルム１０を、水洗槽１２内で水洗する。
２．水洗したＰＶＡフィルム１０を、膨潤槽１３内で膨潤する。
３．膨潤したＰＶＡフィルム１０に、染色槽１４内においてヨウ素で染色する。
４．ヨウ素で染色されたＰＶＡフィルム１０を、ホウ酸水溶液を満たした洗浄槽１５内で洗浄する。
５．洗浄されたＰＶＡフィルム１０を、延伸槽２において液体雰囲気中で２軸同時延伸処理する。
【００３８】
２軸同時延伸処理では、ＰＶＡフィルム１０の両側端を把持手段の１実施例である把持具２１で把持してＰＶＡフィルム１０を幅方向に延伸するとともに、延伸槽２からのＰＡＶフィルム１０の排出速度を延伸槽２へのＰＶＡフィルム１０の供給速度より低速としてＰＶＡフィルム１０を巻回方向に収縮して、架橋状態を維持したまま、ＰＶＡ分子およびヨウ素を幅方向に配向してＰＶＡフィルム１０に偏光性を付与する。
【００３９】
なお、９９．９９％以上の偏光率および４３％以上の透過率を実現するためには、ＰＶＡフィルムを幅方向に５．５倍以上に延伸する必要がある。
【００４０】
そして、幅方向に５．５倍以上に延伸した場合にＰＶＡフィルムが裂けることを防止するために、ＰＶＡフィルムを巻回方向に半分に収縮させることが必要となる。
【００４１】
従って、延伸槽２からのＰＡＶフィルム１０の取り出し速度を延伸槽２へのＰＶＡフィルム１０の供給速度の半分に制御することが必要となる。
６．延伸処理したＰＶＡフィルム１０を、脱水装置１６で脱水する。
７．脱水後のＰＶＡフィルム１０を、第１の乾燥装置１７で乾燥する。
８．ラミネート装置３において、乾燥後のＰＶＡフィルム１０の両面をタックフィルム巻き出し装置３１から巻き出されたタックフィルム３２でラミネートする。
【００４２】
ラミネートする際には、撓み、緩み等が発生しないようにＰＶＡフィルム１０に張力を加えた状態にしておく必要がある。しかし、ＰＶＡフィルム１０をＰＶＡ分子の配向方向の直交方向（即ち、ＰＶＡフィルム１０の巻回方向）に張力をかけ過ぎるとＰＶＡフィルム１０は幅方向に裂けることを回避できない。
【００４３】
そこで、本発明に係る偏光板の製造方法にあっては、延伸処理において使用した把持具２１でＰＶＡフィルム１０の両側端を把持したまま、脱水、乾燥およびラミネート処理を行い、ラミネート処理後に把持具２１を取り外すようにしている。
９．ラミネート後のＰＶＡフィルム１０を、第２の乾燥装置１８で乾燥する。
１０．トリミング装置４において、耳切り装置４１によって乾燥後のＰＶＡフィルム１０の両側端の耳を切り落とす。なお、切り落とされた耳屑は耳屑巻き取り装置４２で巻き取られる。
１１．トリミング後のＰＶＡフィルム１０を巻き取り装置１９でロール状に巻き取り、偏光板ロールとする。
【００４４】
以上説明したように、本発明に係る偏光板の製造方法によれば、延伸処理前の幅が４２０ミリメートルのＰＶＡフィルムを使用して幅２３００ミリメートルの偏光板を作成することができることとなる。
【００４５】
図３は、本発明に係る偏光板の製造方法により製造した偏光板ロールから１００インチ級の液晶表示装置に使用する偏光板を裁断する場合の裁断図であって、１００インチ級の液晶表示装置に使用する幅２３００ミリメートル、高さ１３００ミリメートルの横方向偏光板２２および縦方向偏光板２３を継ぎ目無しで製造することが可能となる。
【００４６】
さらに、現在入手可能な最大幅である幅３１００ミリメートルのＰＶＡフィルムを使用すれば、１７０００ミリメートル幅の偏光板を継ぎ目無しで製造することも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【００４７】
以上のように、本発明に係る広幅偏光板およびその製法は、１００インチ級の液晶表示装置に使用可能な広幅偏光板を継ぎ目無しで製造できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【００４８】
【図１】本発明に係る広幅偏光板製造装置の上面図（Ａ）および側面図（Ｂ）
【図２】本発明に係る広幅偏光板製造工程を示す流れ図
【図３】本発明に係る偏光板の製造方法により製造した偏光板ロールから１００インチ級の液晶表示装置に使用する偏光板を裁断する場合の裁断図
【図４】幅１５５０ミリメートルの偏光板ロールから幅２３００ミリメートル、高さ１３００ミリメートルの縦方向偏光板および横方向偏光板を裁断する場合の裁断図
【符号の説明】
【００４９】
１ 広幅偏光板製造装置
１０ ＰＶＡフィルム
１１ ＰＶＡフィルム巻き出し装置
１２ 水洗槽
１３ 膨潤槽
１４ 染色槽
１５ 洗浄槽
１６ 脱水装置
１７ 第１の乾燥装置
１８ 第２の乾燥装置
１９ 巻き取り装置
２ 延伸槽
２１ 把持具
３ ラミネート装置
３１ タックフィルム巻き出し装置
３２ タックフィルム
４ トリミング装置
４１ 耳切り装置
４２ 耳屑巻き取り装置
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ロールから巻き出されたポリビニルアルコール（ＰＶＡ）フィルムにロール幅方向に延伸しロール巻回方向に収縮させる延伸処理を施し、延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両面をタックフィルムでラミネート処理して製造された広幅偏光板。
【請求項２】
前記延伸処理が、延伸槽において、前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持して前記ＰＶＡフィルムをロール幅方向に延伸し、前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽からの排出速度を前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽への供給速度より小として前記ＰＶＡフィルムをロール巻回方向に収縮させる２軸同時延伸処理である請求項１に記載の広幅偏光板。
【請求項３】
前記２軸同時延伸処理が、前記ＰＶＡフィルムを幅方向に５．５倍延伸し、前記ＰＶＡフィルをロール巻回方向に半分に収縮させる処理である請求項２に記載の広幅偏光板。
【請求項４】
前記２軸同時延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの幅が１８００ミリメートル以上である請求項３に記載の広幅偏光板。
【請求項５】
前記ラミネート処理が、延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持した状態で前記タックフィルムをラミネートする処理である請求項２から請求項４のいずれか１項に記載の広幅偏光板。
【請求項６】
ロールから送り出されたＰＶＡフィルムをロール幅方向に延伸しロール巻回方向に収縮させる延伸処理段階と、
前記延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両面をタックフィルムでラミネートするラミネート処理段階とを含む広幅偏光板の製造方法。
【請求項７】
前記延伸処理段階が、延伸槽において、前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持して前記ＰＶＡフィルムをロール幅方向に延伸し、前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽からの排出速度を前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽への供給速度より小として前記ＰＶＡフィルムをロール巻き出し方向に収縮させる２軸同時延伸処理段階である請求項６に記載の広幅偏光板の製造方法。
【請求項８】
前記２軸同時延伸処理段階が、前記ＰＶＡフィルムを幅方向に５．５倍延伸し、前記ＰＶＡフィルをロール巻回方向に半分に収縮させる処理である請求項７に記載の広幅偏光板の製造方法。
【請求項９】
ラミネート処理が、前記延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持した状態で前記タックフィルムをラミネートする処理である請求項７または請求項８に記載の広幅偏光板の製造方法。
【請求項１】
ロールから巻き出されたポリビニルアルコール（ＰＶＡ）フィルムにロール幅方向に延伸しロール巻回方向に収縮させる延伸処理を施し、延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両面をタックフィルムでラミネート処理して製造された広幅偏光板。
【請求項２】
前記延伸処理が、延伸槽において、前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持して前記ＰＶＡフィルムをロール幅方向に延伸し、前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽からの排出速度を前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽への供給速度より小として前記ＰＶＡフィルムをロール巻回方向に収縮させる２軸同時延伸処理である請求項１に記載の広幅偏光板。
【請求項３】
前記２軸同時延伸処理が、前記ＰＶＡフィルムを幅方向に５．５倍延伸し、前記ＰＶＡフィルをロール巻回方向に半分に収縮させる処理である請求項２に記載の広幅偏光板。
【請求項４】
前記２軸同時延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの幅が１８００ミリメートル以上である請求項３に記載の広幅偏光板。
【請求項５】
前記ラミネート処理が、延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持した状態で前記タックフィルムをラミネートする処理である請求項２から請求項４のいずれか１項に記載の広幅偏光板。
【請求項６】
ロールから送り出されたＰＶＡフィルムをロール幅方向に延伸しロール巻回方向に収縮させる延伸処理段階と、
前記延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両面をタックフィルムでラミネートするラミネート処理段階とを含む広幅偏光板の製造方法。
【請求項７】
前記延伸処理段階が、延伸槽において、前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持して前記ＰＶＡフィルムをロール幅方向に延伸し、前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽からの排出速度を前記ＰＶＡフィルムの前記延伸槽への供給速度より小として前記ＰＶＡフィルムをロール巻き出し方向に収縮させる２軸同時延伸処理段階である請求項６に記載の広幅偏光板の製造方法。
【請求項８】
前記２軸同時延伸処理段階が、前記ＰＶＡフィルムを幅方向に５．５倍延伸し、前記ＰＶＡフィルをロール巻回方向に半分に収縮させる処理である請求項７に記載の広幅偏光板の製造方法。
【請求項９】
ラミネート処理が、前記延伸処理後の前記ＰＶＡフィルムの両側端を把持手段で把持した状態で前記タックフィルムをラミネートする処理である請求項７または請求項８に記載の広幅偏光板の製造方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００９−８９２２（Ｐ２００９−８９２２Ａ）
【公開日】平成２１年１月１５日（２００９．１．１５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−１７０７３６（Ｐ２００７−１７０７３６）
【出願日】平成１９年６月２８日（２００７．６．２８）
【特許番号】特許第４１４７２６６号（Ｐ４１４７２６６）
【特許公報発行日】平成２０年９月１０日（２００８．９．１０）
【出願人】（５０１２１２５７５）西工業株式会社 (4)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年１月１５日（２００９．１．１５）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年６月２８日（２００７．６．２８）
【特許番号】特許第４１４７２６６号（Ｐ４１４７２６６）
【特許公報発行日】平成２０年９月１０日（２００８．９．１０）
【出願人】（５０１２１２５７５）西工業株式会社 (4)
【Ｆターム（参考）】
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