説明

広角光学系、撮像レンズ装置、モニタカメラ及びデジタル機器

【課題】 広画角でありながら光学全長が短く、かつ収差が良好に補正された広角光学系を提供する。
【解決手段】 光学像を電気的な信号に変換する撮像素子の受光面上に被写体の光学像を形成する広角光学系を、物体側から順に配置される、負の光学的パワーを有する第1レンズと、正の光学的パワーを有するレンズ群とから構成する。その第1レンズは少なくとも1面の非球面を備え、第1レンズの像側の面の光軸近傍は光軸を中心軸とした凹面である。さらに、全系の光学全長T(mm)、半画角θ、及び全系の焦点距離ftot(mm)は以下の条件式を満たす。
10 mm < T ×sinθ < 30 mm
7 < T/ftot < 20

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広画角でコンパクトな広角光学系、その広角光学系を備える撮像レンズ装置、並びにその撮像レンズ装置を搭載し監視カメラや車載カメラ等に好適なモニタカメラ及びデジタル機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、少ないカメラであっても大きな撮影画角(広画角)で撮像することにより、周囲の映像情報を広範囲に撮像することが可能となる。そのため、監視カメラや車載カメラなどにおけるレンズとしては、広い撮影範囲が得られるよう、広画角を有する広角光学系(広角レンズ)を用いることが好ましい。
【0003】
さらに、例えば車のバックモニター用の車載カメラ等であれば、広画角であるばかりではなく、運転者の視界を遮らないという実用的な面や、車のデザインを壊さないという美的な面などから、よりコンパクトであることが要求されている。
【0004】
このような広角光学系としては、例えば、特許文献1〜3において、物体側から順に配置される、負の光学的パワーを有する第1レンズ群、負の光学的パワーを有する第2レンズ群、正の光学的パワーを有する第3レンズ群、負の光学的パワーを有する第4レンズ群、正の光学的パワーを有する第5レンズ群、及び正の光学的パワーを有する第6レンズ群の6成分の広角光学系が提案されている。
【特許文献1】特開平5−264897号公報
【特許文献2】特開平11−249009号公報
【特許文献3】特開2000−352665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に係る広角光学系では、最大画角が60°〜65°程度と小さく、さらに光学全長は25mm以上と長い。特許文献3に係る広角光学系では、最大画角が80°を越えているが、監視カメラ等に用いるためにはさらなる広画角化が要求される。さらに、特許文献1及び特許文献2に係る広角光学系と同様に、この特許文献3に係る広角光学系でも光学全長が25mm程度とやはり長く、車載カメラ等のモニタカメラや携帯電話機に代表されるデジタル機器に搭載するにはより一層のコンパクト化が要求される。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、広画角でありながら光学全長が短く、かつ収差が良好に補正された広角光学系、その広角光学系を備える撮像レンズ装置、並びにその撮像レンズ装置を搭載し監視カメラや車載カメラ等に好適なモニタカメラ及びデジタル機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、光学像を電気的な信号に変換する撮像素子の受光面上に被写体の光学像を形成する広角光学系であって、物体側から順に配置される、負の光学的パワーを有する第1レンズと、正の光学的パワーを有するレンズ群とを含み、前記第1レンズは少なくとも1面の非球面を備え、当該第1レンズの像側の面の光軸近傍は前記光軸を中心軸とした凹面であり、以下の条件式を満たすことを特徴とする広角光学系。
10 mm < T ×sinθ < 30 mm ・・・(1)
7 < T/ftot < 20 ・・・(2)
ただし、
T:全系の光学全長(mm)
θ:半画角
tot:全系の焦点距離(mm)
である。
【0008】
この構成によれば、最も物体側に位置する第1レンズが負の光学的パワーを持った、いわゆる負リードの構成になっている。このため、物体側から大きな角度で入射してくる光線を、この第1レンズの負の光学的パワーによりいち早く緩め得る。さらに、負リードの構成では、サイズを小さくしても誤差感度の上昇を抑制し得る。
【0009】
また、第1レンズの像側の面は凹面であるので、上記の負リードの構成であることと併せて、物体側から大きな角度で入射してくる光線を緩める効果が一層高まる。さらに、第1レンズは非球面を備えるので、各種の収差を有効に抑え得る。
【0010】
ここで、条件式(1)の下限を下回ると光学全長が短くなり、各レンズの光学的パワーが強くなることにより発生する像面湾曲、非点収差の補正が困難となる。それに対して、条件式(1)の上限を超えると光学全長が長くなりコンパクトでなくなる。
【0011】
また、条件式(2)の下限を下回ると焦点距離に対して光学全長が短くなりすぎ、各レンズの光学的パワーが強くなるため像面湾曲、非点収差の補正が困難となり、さらに広角でなくなる。それに対して、条件式(2)の上限を超えると光学全長が長くなりコンパクトでなくなる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の広角光学系であって、前記第1レンズは、さらに以下の条件式を満たすことを特徴とする。
350 < Hk1 ・・・(3)
ただし、
Hk1:第1レンズのヌープ硬さ
である。
【0013】
ここで、ヌープ硬さ(Hk)とは、対稜角172°30’及び130°の断面が菱形のダイヤモンド四角錘圧子を用い、試験面(ガラス面)にくぼみをつけたときの荷重を、永久くぼみの長い方の対角線の長さから求めた投影面積で除した商で求められる硬さのことである。
【0014】
条件式(3)の下限を下回ると第1レンズの硬さが不足するため、第1レンズに傷が入り易くなる。そのため、傷に起因するフレアーが発生したり、撮像性能が悪化したりすることが危惧される。条件式(3)を満たすことにより、第1レンズの被写体側の面を別途カバーガラス等で保護するなどして、傷が入ることを防ぐための措置を講ずる必要をなくし得る。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の広角光学系であって、前記第1レンズ及び全系の焦点距離は、さらに以下の条件式を満たすことを特徴とする。
-0.6 <f1/ftot < -0.2 ・・・(4)
ただし、
1:第1レンズの焦点距離(mm)
である。
【0016】
ここで、条件式(4)の下限を下回ると第1レンズの負の光学的パワーが弱くなるため、物体側から大きな角度で入射する軸外光を撮像素子の方向へ緩める効果が弱くなる。そのため、軸外光を撮像素子へ有効に導くためには、第1レンズ径を大きくするか、又は光学全長を長くする必要がある。それに対して、条件式(4)の上限を超えると第1レンズの負の光学的パワーが強くなるので、この第1レンズで発生する像面湾曲を補正することが困難となる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の広角光学系であって、前記第1レンズは物体側の面に非球面を備え、当該非球面の周辺部は、中心部に比べて大きな正の光学的パワーを有することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、第1レンズの物体側の面における周辺部は大きな正の光学的パワーを有しているので、その周辺部に大きな角度で入射する軸外光を撮像素子の方向へ有効に緩め得る。そのため、その物体側の面で発生する像面湾曲や非点収差を小さく抑え得ることに加え、広画角な光学系を実現し得る。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の広角光学系であって、前記第1レンズは、さらに以下の条件式を満たすことを特徴とする。
30 < ν1 ・・・(5)
1.6 < N1 ・・・(6)
ただし、
ν1:第1レンズの分散
1:第1レンズの屈折率
である。
【0020】
ここで、条件式(5)の下限を下回ると第1レンズで発生する倍率色収差が大きくなり、他のレンズで補正することが困難となる。また、条件式(6)の下限を下回ると第1レンズで発生するぺッツバール和が大きくなり、像面湾曲の補正が困難となる。
【0021】
請求項6記載の発明は、撮像レンズ装置であって、請求項1乃至5のいずれかに記載の広角光学系を備え、前記広角光学系が所定の結像面上に被写体の光学像を形成可能な構成とされていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、監視カメラや車載カメラ等に搭載可能な、広画角かつコンパクトであり、さらに高精細な撮像レンズ装置を実現し得る。
【0023】
請求項7記載の発明は、所定位置に取り付けられ、取り付けられた位置周辺の所定領域の被写体を撮像するモニタカメラであって、請求項6に記載の撮像レンズ装置と、前記撮像レンズ装置により導かれた被写体の光学像を電気的な信号に変換する撮像素子とを具備することを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、広画角かつコンパクトであり、さらに高精細なレンズを備える監視カメラや車載カメラ等のモニタカメラを実現し得る。
【0025】
請求項8記載の発明は、デジタル機器であって、請求項6に記載の撮像レンズ装置と、撮像素子と、前記物体側の被写体の静止画撮影及び動画撮影の少なくとも一方の撮影を前記撮像レンズ装置及び撮像素子に実行させる機能部とを具備することを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、広画角かつコンパクトであり、さらに高精細なレンズを備えるデジタル機器を実現し得る。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明によれば、最も物体側に位置する第1レンズ群が負の光学的パワーを持った、いわゆる負リードの構成になっている。このため、物体側から大きな角度で入射してくる光線を、この第1レンズ群の負の光学的パワーによりいち早く緩めることができる。また、負リードの構成では光学全長を短くすることも可能であるので、正リードのものに比べ全体的にコンパクト化が可能となる。さらに、負リードの構成ではサイズを小さくしても誤差感度の上昇が抑制されるため、レンズ面の加工精度やレンズを鏡筒に配置する際の位置精度等に課される条件を緩くしても、高い光学性能を達成することができる。つまり、製造が容易となる。
【0028】
また、第1レンズの像側の面が凹面であること及び負リードの構成であることにより、物体側から大きな角度で入射してくる光線を緩める効果が一層高まるため、広画角な光学系を実現することができる。さらに、第1レンズの非球面の効果により、各種の収差を有効に抑えることが可能であるだけではなく、収差補正のために必要とされたレンズが不要となるために、コンパクト化も同時に実現する。
【0029】
また、条件式(1)及び(2)を満たすため、各レンズの光学的パワーが適切となり、像面湾曲や球面収差が良好に補正された広角光学系を得ることが可能となる。さらに、光学全長を抑えることができるので、コンパクト化が可能となる。
【0030】
請求項2記載の発明によれば、第1レンズの硬さが十分であるため、傷が付きにくく、傷に起因するフレアーが発生したり、撮像性能が悪化したりすることを抑えることができる。さらに、第1レンズの被写体側の面を別途カバーガラス等で保護する必要がなくなるので、光学系をコンパクトにすることができる。
【0031】
請求項3記載の発明によれば、第1レンズの負の光学的パワーが適切となり、物体側から大きな角度で入射する軸外光を撮像素子の方向へ有効に緩めることができる。そのため、第1レンズ径を大きくする必要も、光学全長を長くする必要もなくなり、光学系をコンパクトにすることができる。さらに、この第1レンズで発生する像面湾曲を有効に補正することが可能となる。
【0032】
請求項4記載の発明によれば、第1レンズの物体側の面における周辺部に大きな角度で入射する軸外光を撮像素子の方向へ有効に緩めることができるため、像面湾曲や非点収差を小さく抑えることが可能となる。さらに、広画角な光学系を実現することができる。
【0033】
請求項5記載の発明によれば、第1レンズで発生する倍率色収差を小さく抑えることができるので、他のレンズで補正することが容易になる。また、第1レンズで発生するぺッツバール和を小さくすることができるので、像面湾曲を有効に補正することが可能となる。つまり、倍率色収差や像面湾曲の小さな、高精細な光学系を実現できる。
【0034】
請求項6記載の発明によれば、監視カメラや車載カメラ等に搭載可能な、広画角かつコンパクトであり、さらに高精細な撮像レンズ装置を実現することができる。
【0035】
請求項7記載の発明によれば、広画角かつコンパクトであり、さらに高精細なレンズを備える監視カメラや車載カメラ等のモニタカメラを実現することができる。
【0036】
請求項8記載の発明によれば、広画角かつコンパクトであり、さらに高精細なレンズを備えるデジタル機器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明に係る広角光学系は、例えば、図1に示すように、車両2の周辺の領域を撮像する車載カメラ(モニタカメラの一実施例)1に好適に搭載される。車載カメラ1は、例えば車両2の後方を撮像するように、車両2の後部の所定位置に設置されており、撮像した被写体の画像は、例えばダッシュボードに設置されている図略のモニタに表示される。車載カメラ1は、車両2の上方への視野は要求されないことから、その光軸Lが斜め下方を向くように斜め下方に傾斜した姿勢で取り付けられている。そして、上下方向には、カメラの取り付け位置を通る水平線を上端とする画角2φを有する。また、本明細書においては、左右方向の画角も上下方向と同じく2φであるとするが、それに限られることなく、上下方向と左右方向とで画角が異なっていても構わない。
【0038】
図2は、本発明に係る広角光学系の搭載対象の一例である車載カメラの構成を示す機能ブロック図である。図2において、車載カメラ1は、撮像部10、画像生成部11、画像データバッファ12、画像処理部13、駆動部14、制御部15、記憶部16、及びI/F部17を備えて構成される。
【0039】
撮像部10は、撮像レンズ装置110と撮像素子102とを備えて構成される。ここで、撮像レンズ装置110と撮像素子102との間に、光学的ローパスフィルター等に相当する平行平面板を備えていても構わない。また、撮像レンズ装置110は、広角光学系101と、光軸方向にレンズを駆動しフォーカシングを行うための図略のレンズ駆動装置等とを備えて構成される。被写体からの光線は、広角光学系101によって撮像素子102の撮像面上に結像され、被写体の光像となる。
【0040】
撮像素子102は、受光した光をその光強度に従った電気信号に変換する複数の受光素子を例えばハニカム状又はマトリックス状等に2次元的に配置した光電変換素子であり、例えば、各光電変換素子の撮像面に、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)の色フィルタが1:2:1の比率で配設されたCCDカラーエリアセンサである。撮像素子102は、広角光学系101により結像された被写体の光像をR(赤),G(緑),B(青)の色成分の電気信号(画像信号)に変換し、R,G,B各色の画像信号として画像生成部11に出力する。撮像素子102は、制御部15の制御により、露出動作の開始及び終了や、撮像素子102における各画素の出力信号の読出し(水平同期、垂直同期、転送)等の撮像動作が制御される。
【0041】
なお、撮像装置102は、上述のCCDに限らずCMOSの固体撮像素子でもよく、またカラーの撮像素子に限らずモノクロの撮像素子であってもよい。
【0042】
画像生成部11は、画像全体に対して適正な黒レベルの決定、γ補正、ホワイトバランス調整(WB調整)、輪郭補正及び色ムラ補正等の周知の画像処理を行って、画像信号から各画素の画像データを生成する。画像生成部11で生成された画像データは、画像データバッファ12に出力される。
【0043】
画像データは、画素ごとに、画素の位置を表す位置データと画素の輝度を表す輝度データとが対応付けられて構成される。輝度データは、車載カメラ1がモノクロで撮影するものである場合には各画素の輝度値で構成され、車載カメラ1がカラーで撮影するものである場合には各画素における赤成分の輝度値、緑成分の輝度値及び青成分の輝度値、又は、輝度値と各色差の値で構成される。
【0044】
画像データバッファ12は、画像データを一時的に記憶するとともに、この画像データに対し画像処理部13により後述の処理を行うための作業領域として用いられるメモリであり、例えば、RAM等である。
【0045】
画像処理部13は、画像データバッファ12の画像データに対し、歪曲収差によって歪んだ画像を肉眼で見える光景と同様な相似形の略歪みのない自然な画像に補正する歪み補正処理及び解像度変換等の画像処理を行う回路である。駆動部14は、制御部15から出力される制御信号により、車載カメラ1の光軸Lを、例えば左右(パン)方向あるいは上下(チルト)方向に駆動する。
【0046】
記憶部16は、車載カメラ1の動作に必要な各種プログラム、プログラム実行中に必要なデータ、及び、プログラム実行中に生じたデータを記憶する記憶回路であり、例えば、ROMやRAMを備えて構成される。I/F部17は、外部機器と画像データを送受信するインターフェースであり、例えば、USBやIEEE1394等の規格に準拠したインターフェースである。
【0047】
制御部15は、例えば、マイクロプロセッサ等を備えて構成され、撮像部10、画像生成部11、画像データバッファ12、画像処理部13、駆動部14、記憶部16及びI/F部17の各部を制御する。
【0048】
ただし、上記の画像処理による歪曲補正、パン、チルト機構、及びフォーカス機構等は、必要に応じて省略可能である。
【0049】
このような構成の車載カメラ1をバックモニタとして用いた場合の処理の流れを以下に説明する。運転者(ユーザ)は、例えば車体2のダッシュボードに設置されている図略のモニタを見ながら、車体2をバックさせる。このとき、運転者が確認したい領域と車載カメラ1が撮像している領域とがずれている場合、運転者はダッシュボードに設けられたボタンを操作するなど所定の操作を行う。
【0050】
この操作を受けて制御部15は、駆動部14を制御し、撮像部10の向きを調整する。続いて、制御部15は、撮像レンズ装置110の図略のレンズ駆動装置を駆動し、フォーカシングを行う。これにより、ピントの合った光学像が撮像素子102の受光面に結像され、R、G、Bの色成分の画像信号に変換された後、画像生成部11に出力される。その画像信号は、画像データバッファ12に一時的に記憶され、画像処理部13により画像処理が行われる。このようにして、運転者が確認したい領域の自然な画像が、ダッシュボードに設置されている図略のモニタに表示される。
【0051】
上記では、本発明に係る広角光学系の搭載対象の一例として車載カメラを取り上げたが、これに限られることなく、本発明に係る広角光学系は監視カメラ等のモニタカメラやデジタル機器等にも適用可能である。デジタル機器としては、例えば、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ、モバイルコンピュータ、又はこれらの周辺機器等が想定される。
【0052】
図3は、本発明に係るデジタル機器の一実施形態を示す、カメラ付携帯電話機の外観構成図である。図3(a)は携帯電話機の操作面を、図3(b)は操作面の裏面、つまり背面を表している。携帯電話機本体200には、上部にアンテナ201、操作面にはディスプレイ202、画像撮影モードの起動及び静止画と動画撮影の切り替えを行う画像切替ボタン203、シャッターボタン205及びダイヤルボタン206が備えられている。さらに携帯電話機本体200には、本発明に係る広角光学系によって構成された撮像レンズ装置(カメラ)207が内装され、撮影レンズが背面に露呈している。
【0053】
静止画を撮影するときは、まず、画像切替ボタン203を押すことで、画像撮影モードを起動する。ここでは、画像切替ボタン203を一度押すことで静止画撮影モードが起動し、その状態でもう一度画像切替ボタン203を押すことで動画撮影モードに切り替わるとする。つまり、画像切替ボタン203からの指示を受けた携帯電話機本体200の制御部(図略)は、物体側の被写体の静止画撮影及び動画撮影の少なくとも一方の撮影を撮像レンズ装置及び撮像素子に実行させる機能を有する。
【0054】
静止画撮影モードが起動すると、撮像レンズ装置207を通して被写体の像がCCD等の撮像素子で周期的にくり返し撮像され、表示用メモリに転送された後に、ディスプレイ202に導かれる。ディスプレイ202を覗くことで、主被写体をその画面中の所望の位置に収まるように調整することができる。この状態でシャッターボタン205を押すことで、静止画像を得ることができる、すなわち、静止画用のメモリに画像データが格納される。
【0055】
また、動画撮影を行う場合には、画像切替ボタン203を一度押すことで静止画撮影モードを起動した後、もう一度画像切替ボタン203を押して動画撮影モードに切り替える。後は静止画撮影のときと同様にして、ディスプレイ202を覗き、撮像レンズ装置207を通して得た被写体の像が、その画面中の所望の位置に収まるように調整する。この状態でシャッターボタン205を押すことで、動画撮影が開始される。ここで、もう一度シャッターボタン205を押すことで、動画撮影は終了する。動画像は、ディスプレイ202のための表示メモリに導かれると共に、動画像用のメモリに導かれて格納される。
【0056】
本発明は、広角光学系、そしてその広角光学系を用い、光学像を電気的な信号に変換する撮像素子の受光面上に被写体の光学像を形成する構成とされている撮像レンズ装置、及び所定位置に取り付けられ、取り付けられた位置周辺の所定領域の被写体を撮像するモニタカメラであって、上記撮像レンズ装置と、撮像素子とを具備することを特徴とするモニタカメラ、さらには、上記撮像レンズ装置と、撮像素子と、前記物体側の被写体の静止画撮影及び動画撮影の少なくとも一方の撮影を前記撮像レンズ装置及び撮像素子に実行させる機能部とを具備することを特徴とするデジタル機器に関するものである。
【0057】
以下、図2に示した車載カメラ1の撮像レンズ装置110を構成する広角光学系101、及び図3に示した携帯電話機本体200の撮像レンズ装置207を構成する広角光学系を図面を参照しつつ説明する。
【0058】
また、本明細書を通じて、単レンズ及び接合レンズを構成している各単レンズの光学的パワー(屈折力)は、その単レンズのレンズ面の両側が空気との界面を備えている、つまりその単レンズが単独で存在しているときのパワーを指すものとする。さらに、以下では、正の光学的パワーを有するレンズを正レンズ、負の光学的パワーを有するレンズを負レンズという。
【0059】
[実施形態1]
図4は、実施形態1の広角光学系におけるレンズ群の配列を示す、光軸(AX)を縦断した断面図である。本実施形態を通じてこれらのレンズは、図の物体側(図4における左側)から順に、負の光学的パワーを持つ第1レンズ(L1)、及び全体として正の光学的パワーを持つレンズ群(L2〜L6)とから構成されている。また、各実施形態において、第3レンズ(L3)と第4レンズ(L4)との間には、光量を調節するための光学絞り(ST)が備えられている。そして、最も像側の第6レンズ(L6)のさらに像側には撮像素子(SR)が配置されている。
【0060】
以下本明細書においては、レンズについて、「凹」、「凸」又は「メニスカス」という術語を用いるが、これらは光軸近傍(レンズの中心付近)でのレンズ形状を表しているものであり、レンズ全体又はレンズの端付近の形状を表しているのではない。このことは、球面レンズでは問題にならないが、非球面レンズでは一般に、レンズの中心付近と端付近での形状が異なるので注意が必要である。
【0061】
図4に示した実施形態1の広角光学系は、各レンズ群が物体側から順に、以下のように構成されている。負の光学的パワーを持つ第1レンズ(L1)は物体側に凸の負メニスカスレンズ、第2レンズ(L2)は両凹の負レンズ、第3レンズ(L3)は両凸の正レンズ、第4レンズ(L4)は両凹の負レンズ、第5レンズ(L5)は両凸の正レンズ、及び第6レンズ(L6)は両凸の正レンズである。そして、第4レンズ(L4)及び第5レンズ(L5)は、固定的に一体化された接合レンズを構成している。
【0062】
接合レンズでは、レンズを支持するための支持部材の機械精度ではなく、レンズ接合時の精度を保つことが可能となる。その結果、長期の使用によっても、接合されたレンズ間で光軸がずれたりするような経年劣化が発生せず、光学的な調整も容易となる。さらに接合により、偏芯による誤差感度を低減することが可能である。それに加えて、接合によりレンズ面間に間隙が存在しないので、不要な面間反射光を抑えることが可能となり、良好な光学像が得られる。
【0063】
ここで、接合レンズにおけるレンズ枚数は、接合レンズ全体で1枚ではなく、接合レンズを構成する単レンズの枚数で表すこととする。例えば、3枚の単レンズで構成される接合レンズのレンズ枚数は、1枚ではなく3枚と数える。
【0064】
また、図4に示した番号ri(i=1,2,3,・・・)は、物体側から数えたときのi番目のレンズ面(ただし、レンズの接合面は1つの面として数えている。)であり、riに*が付された面は非球面である。
【0065】
このような構成の下で、図の物体側から入射した光線は、順に、第1〜第6レンズ(L1〜L6)を通過し、撮像素子(SR)の受光面上に被写体の光学像を形成する。このとき、第6レンズ(L6)と撮像素子(SR)との間に平行平面板(PL)を配置してもよい。これにより、光学像は、撮像素子(SR)において電気的な信号に変換される際に発生する、いわゆる折り返しノイズが最小化されるように修正される。この平行平面板(PL)は、光学的ローパスフィルター、赤外カットフィルター、撮像素子のカバーガラス等に相当するものである。
【0066】
最後に、撮像素子(SR)において、光学像が電気的な信号に変換される。この電気信号は、必要に応じて所定のデジタル画像処理や画像圧縮処理等が施されて、デジタル映像信号として車載カメラ1に内蔵される図略のメモリに記録される。
【0067】
以下、図面を参照しながら、実施形態1と同様にして、実施形態2及び実施形態3のレンズ構成を順に説明していく。このとき、図5及び図6の符号の意味は、図4と同様とする。
【0068】
[実施形態2]
図5は、実施形態2の広角光学系におけるレンズ群の配列を示す、光軸(AX)を縦断した断面図である。この実施形態2の広角光学系は、各レンズが物体側から順に、以下のように構成されている。負の光学的パワーを持つ第1レンズ(L1)は両凹の負レンズ、第2レンズ(L2)は両凹の負レンズ、第3レンズ(L3)は両凸の正レンズ、第4レンズ(L4)は両凹の負レンズ、第5レンズ(L5)は両凸の正レンズ、及び第6レンズ(L6)は両凸の正レンズである。そして、第4レンズ(L4)及び第5レンズ(L5)は、固定的に一体化された接合レンズを構成している。
【0069】
[実施形態3]
図6は、実施形態3の広角光学系におけるレンズ群の配列を示す、光軸(AX)を縦断した断面図である。この実施形態3の広角光学系は、各レンズ群が物体側から順に、以下のように構成されている。負の光学的パワーを持つ第1レンズ(L1)は両凹の負レンズ、第2レンズ(L2)は両凹の負レンズ、第3レンズ(L3)は像側に凸の正メニスカスレンズ、第4レンズ(L4)は両凹の負レンズ、第5レンズ(L5)は両凸の正レンズ、及び第6レンズ(L6)は両凸の正レンズである。そして、第4レンズ(L4)及び第5レンズ(L5)は、固定的に一体化された接合レンズを構成している。
【0070】
以下、本発明に係る広角光学系を構成するレンズ系に求められる光学特性の条件、又は条件式を列挙し、その条件の根拠(又は、数値範囲の根拠)について説明していく。
【0071】
物体側から順に配置される、負の光学的パワーを有する第1レンズと、正の光学的パワーを有するレンズ群とを含む広角光学系は、以下の条件式を満たすことがより望ましい。
14 mm < T ×sinθ < 22 mm ・・・(1)’
これは、条件式(1)’の下限を下回ると光学全長が短くなるため、各レンズに必要とされる光学的パワーが強くなり、レンズの誤差感度が高くなるためである。そのため、製造難易度が上昇し、量産時のコストアップにつながる。それに対して、条件式(1)’の上限を超えると光学全長が長くなるため、広角を維持するためには第1レンズ径を大きくする必要がある。その結果、光学ユニットの径方向の大きさがコンパクトでなくなる。
【0072】
また、上記広角光学系は、以下の条件式を満たすことがより望ましい。
9 < T/ftot < 15 ・・・(2)’
これは、条件式(2)’の下限を下回るとレトロフォーカス度合いが小さくなり、撮像素子への光線の入射角が大きくなるためである。その結果、撮像素子としてCCD等を使用した場合の周辺照度落ちが問題となる。それに対して、条件式(2)’の上限を超えると光学全長が長くなるため、広角を維持するためには第1レンズ径を大きくする必要がある。その結果、光学ユニットの径方向の大きさがコンパクトでなくなる。
【0073】
また、上記広角光学系は、
450 < Hk1 ・・・(3)’
を満たすことがより望ましく、さらには、
600 < Hk1 ・・・(3)''
を満たすことがより望ましい。これは、条件式(3)’を満たすと、第1レンズの硬さが増し、車載等の過酷な条件での使用においても最も物体側のレンズ面に傷が付きにくくなるため、傷に起因するフレアーが発生したり、撮像性能が悪化したりすることを抑えることができるからである。
【0074】
さらに、上記広角光学系において、最も物体側のレンズの非球面形状は、以下の条件式を満たすことが望ましい。
3.0E−2 < D /ftot < 3.0E−1 ・・・(7)
ただし、
D:撮像素子の受光面における最大像高(H)の80%の像高の主光線通過位置での、基準曲面(球面)からの非球面のズレ量(正パワーを強める方向が正、単位mm)
である。
【0075】
このDの定義を図7に示す。つまり、撮像素子の受光面における最大像高(H)の80%の位置に結像する光線のうち、主光線(光学絞りの中心を通る光線)であるものが、最も物体側のレンズ面において、球面からずれている光軸方向の長さを表すのがズレ量Dである。
【0076】
これは、条件式(7)の下限を下回ると負パワーの第1レンズで発生する像面湾曲を非球面で補正し切れずレンズ全体の性能が劣化するからである。それに対して、条件式(7)の上限を超えると負パワーの第1レンズで発生する像面湾曲を非球面で過剰補正となってレンズ全体の性能が劣化する。
【0077】
また、上記広角光学系においては、第1レンズの物体側のレンズ面が非球面であることが望ましい。これにより、最も各像高の光が分離している最も物体側のレンズ面において、広角光学系で問題となる像面湾曲の補正が効果的に行えるからである。
【0078】
さらに、第1レンズのいずれか一方の面が非球面、他方の面は球面であることが望ましい。これによりレンズ製造に必要な金型の加工負荷が軽減され、さらに評価の難しい非球面の数を少なくできるため、第1レンズの製造コストが低減できる。
【0079】
また第1レンズの像側の面を複合型非球面にて構成することで、レンズの耐久性を落とすことなく、第1レンズに非球面を導入することも可能である。ここで、複合型非球面レンズとは、基板となる球面ガラス材料の上に薄い樹脂材料を塗布して非球面形状としたレンズのことである。
【0080】
さらに上記広角光学系においては、最大画角が120°以上あることが望ましい。これにより1台のカメラで広い範囲の撮像が可能となり監視や車載用途に最適となる。
【0081】
また上記広角光学系においては、光学絞りより像面側に非球面レンズを配置することが望ましい。これにより第1レンズとは光線の通過位置が大きく異なる位置に非球面を配置できるため、収差補正の自由度が増し性能向上が図れる。
【0082】
さらに上記広角光学系においては、最も像面よりのレンズが非球面レンズであることが望ましい。これにより、軸外光の通過位置が最も像面側のレンズが各像高毎に違う高さとなり広角光学系で問題となる像面湾曲の補正が効果的に行える。
【0083】
また上記広角光学系においては、第1レンズ以外の非球面レンズは樹脂製であることが望ましい。これは、第1レンズ以外は外部から直接触れることがほとんどないため、樹脂製レンズでも耐久性の問題は生じないからである。第1レンズ以外を樹脂製レンズとすることにより、低コスト化が達成できる。
【0084】
さらに上記広角光学系においては、正、負少なくとも1枚づつの樹脂製レンズを有することが望ましい。これにより温度変化が生じた場合でも正負の樹脂レンズで温度による収差変動やレンズバック変動を打ち消すことが可能となり、動作環境温度を拡大することができる。
【0085】
また、2つ以上のレンズのレンズ面を密着させる場合には、そのレンズ面間に紫外線硬化樹脂等の接着剤を介在させてもよい。
【0086】
また、以上説明した実施形態においては、第1、第2及び第6レンズ(L1、L2及びL6)に非球面を有する構成としたが、それに限られることはなく、それ以外のレンズにも非球面を配置することで、軸上収差、特に球面収差の補正をさらに有効に行える。
【0087】
さらに、気体との界面を備えるすべてのレンズ面を非球面とすると、非球面の効果を有効に発揮させることができるのでより望ましい。これにより、コンパクト化と高画質化の両立を図ることができる。
【0088】
さらに、非球面を有するレンズは、モールドで成形しても構わないし、あるいはガラス材料と樹脂材料との複合型としても勿論構わない。モールドタイプは大量生産に向く反面、硝材が限定されてしまう。一方の複合型は、基板と成り得るガラス材料が非常に多く、設計の自由度が高い利点がある。
【0089】
さらに、上記実施形態において、光学絞り(ST)として、撮像素子(SR)に対して遮光を行う機能を有するメカニカルシャッターを配置してもよい。メカニカルシャッターは、例えば撮像素子としてCCD方式を用いた場合のスミア防止にも効果がある。
【0090】
尚、各実施形態を構成している広角光学系には、入射光線を屈折作用により偏向させる屈折型レンズ(つまり、異なる屈折率を有する媒質同士の界面で偏向が行われるタイプのレンズ)が用いられているが、使用可能なレンズはこれに限らない。例えば、回折作用により入射光線を偏向させる回折型レンズ、回折作用と屈折作用との組み合わせで入射光線を偏向させる屈折・回折ハイブリッド型レンズ、入射光線を媒質内の屈折率分布により偏向させる屈折率分布型レンズ等を用いてもよい。また、光学絞り(ST)の他に光束規制板等を必要に応じて配置してもよい。
【0091】
以下、本発明に係る広角光学系の実施例を、コンストラクション(構成)データ、収差図等を挙げて、さらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0092】
実施形態1(実施例1)における、各レンズの主なコンストラクションデータを表1に、非球面係数を表2にそれぞれ示す。尚、本実施例においては、第2レンズ(L2)及び第6レンズ(L6)がプラスチックレンズ(樹脂製レンズ)である。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
表1に示したものは、左から順に、各レンズ面の番号、各面の曲率半径(単位はmm)、光軸上での各レンズ面の間隔(軸上面間隔)(単位はmm)、各レンズの屈折率、そして分散である。ここで、各レンズ面の番号ri(i=1,2,3,・・・)は、図4にも示したように、物体側から数えてi番目のレンズ面であり、riに*が付された面は非球面である。
【0096】
表1からわかるように、この実施例1では、第1レンズ(L1)の物体側の面、第2レンズ(L2)の両面、及び第6レンズ(L6)の両面が非球面である。また、光学絞り(ST)、及び撮像素子(SR)の受光面の各面は平面であるために、それらの曲率半径は∞である。
【0097】
レンズの非球面形状は、面頂点を原点とし、物体から撮像素子に向かう向きをz軸の正の向きとするローカルな直交座標系(x,y,z)を用いた以下の式で定義する。
【0098】
【数1】

【0099】
ただし、
z:高さhの位置でのz軸方向の変位量(面頂点基準)
h:z軸に対して垂直な方向の高さ(h2=x2+y2
c:近軸曲率(=1/曲率半径)
A,B,C,D,E,F,G,H,J:それぞれ4,6,8,10,12,14,16,18,20次の非球面係数
k:円錐係数
である。表2には、円錐係数kと非球面係数A,B,C,Dのみを示したが、それ以外の非球面係数E,F,G,H,Jは0である。この数1からわかるように、表1に示した非球面レンズに対する曲率半径は、レンズの中心付近の値を示している。尚、表2において、例えば「E−01」は、10-1を表す。
【0100】
以上のようなレンズ配置、構成のもとでの、本実施例1の全光学系(第1レンズ〜第6レンズを合わせたもの)の球面収差(LONGITUDINAL SPHERICAL ABERRATION)、非点収差(ASTIGMATISM)そして歪曲収差(DISTORTION)を、図8の左側から順に示す。
【0101】
この図においては、球面収差と非点収差の横軸は焦点位置のずれをmm単位で表しており、歪曲収差の横軸は歪量を全体に対する%で表している。球面収差の縦軸は、入射高で規格化した値で示してあるが、非点収差と歪曲収差の縦軸は画角(°)で表してある。さらに球面収差の図には、一点鎖線で赤色(波長656.27nm)、実線で黄色(いわゆるd線;波長587.56nm)、そして破線で青色(波長435.83nm)と、波長の異なる3つの光を用いた場合の収差がそれぞれ示してある。また、非点収差の図中、符号SとTはそれぞれサジタル(ラディアル)面、タンジェンシャル(メリディオナル)面における結果を表している。
【0102】
さらに、非点収差及び歪曲収差の図は、上記黄線(d線)を用いた場合の結果である。この図8からわかるように、本実施例1の広角レンズは、球面収差がほぼ0.10mm以内、非点収差がほぼ0.40mm以内と優れた光学特性を示している。また、この実施例1におけるF値、焦点距離(単位mm)及び最大画角2θ(°)を表7に示す。この表から、本発明では、1.5mm程度の短焦点と、最大画角が172°という広画角な光学系が実現できていることがわかる。
【実施例2】
【0103】
次に、実施形態2(実施例2)における、各レンズのコンストラクションデータを表3及び表4に示す。これらの表からわかるように、この実施例2では、第1レンズ(L1)の物体側の面、第2レンズ(L2)の両面、及び第6レンズ(L6)の両面が非球面である。また、本実施例においては、第2レンズ(L2)及び第6レンズ(L6)がプラスチックレンズである。
【0104】
【表3】

【0105】
【表4】

【実施例3】
【0106】
実施形態3(実施例3)における、各レンズのコンストラクションデータを表5及び表6に示す。これらの表からわかるように、この実施例3では、第1レンズ(L1)の両面、第2レンズ(L2)の両面、及び第6レンズ(L6)の両面が非球面である。また、本実施例においては、第2レンズ(L2)及び第6レンズ(L6)がプラスチックレンズである。
【0107】
【表5】

【0108】
【表6】

【0109】
以上のようなレンズ配置、構成のもとでの、実施例2及び実施例3の全光学系(第1レンズ〜第6レンズを合わせたもの。)の球面収差、非点収差、そして歪曲収差を図9及び図10にそれぞれ示す。実施例2及び実施例3におけるレンズは、球面収差がほぼ0.10mm以内と優れた光学特性を示している。また、この実施例2及び3におけるF値、焦点距離(単位mm)及び最大画角(°)を表7に示す。この表から、実施例1同様、短焦点で広画角な光学系が実現できていることがわかる。
【0110】
さらに、これら実施例1〜3において得られた、前記条件式(1)〜(7)の値を表8に示す。本実施例はいずれの条件式においても、前述した望ましい値が得られていることがわかる。
【0111】
【表7】

【0112】
【表8】

【0113】
以上説明した実施例における広角光学系は、光学像を電気的な信号に変換する撮像素子の受光面上に被写体の光学像を形成する広角光学系であって、物体側から順に配置される、負の光学的パワーを有する第1レンズと、正の光学的パワーを有するレンズ群とを含んでいる。そして、第1レンズは少なくとも1面の非球面を備え、その第1レンズの像側の面の光軸近傍は前記光軸を中心軸とした凹面である。さらに、以下の条件式を満たしている。
10 mm < T ×sinθ < 30 mm ・・・(1)
7 < T/ftot < 20 ・・・(2)
【0114】
つまり、本発明に係る実施例における広角光学系は、最も物体側に位置する第1レンズ群が負の光学的パワーを持った、いわゆる負リードの構成になっている。このため、物体側から大きな角度で入射してくる光線を、この第1レンズ群の負の光学的パワーによりいち早く緩めることができる。また、負リードの構成では光学全長を短くすることも可能であるので、正リードのものに比べ全体的にコンパクト化が可能となる。さらに、負リードの構成ではサイズを小さくしても誤差感度の上昇が抑制されるため、レンズ面の加工精度やレンズを鏡筒に配置する際の位置精度等に課される条件を緩くしても、高い光学性能を達成することができる。つまり、製造が容易となる。
【0115】
また、第1レンズの像側の面が凹面であること及び負リードの構成であることにより、物体側から大きな角度で入射してくる光線を緩める効果が一層高まるため、広画角な光学系を実現することができる。さらに、第1レンズの非球面の効果により、各種の収差を有効に抑えることが可能であるだけではなく、収差補正のために必要とされたレンズが不要となるために、コンパクト化も同時に実現する。
【0116】
また、条件式(1)及び(2)を満たすため、各レンズの光学的パワーが適切となり、像面湾曲や球面収差が良好に補正された広角光学系を得ることが可能となる。さらに、光学全長を抑えることができるので、コンパクト化が可能となる。
【0117】
以上説明した実施例においては、最も物体側に位置するレンズをガラスで構成している。これは、特に広角光学系が車載カメラ1に搭載される場合において、レンズの最前面(最も物体側の面)が露出することが多く、このレンズ面や該レンズ面を有するレンズには頑健性・耐薬品性・防水性等が要求されるからである。ガラス製のレンズは、これらの諸特性に優れていることから、最も物体側のレンズをガラスレンズで構成している。
【0118】
さらに、以上説明した実施例においては、第1レンズのヌープ硬さは、
350 < Hk1 ・・・(3)
を満たしている。これにより、第1レンズの硬さが増し、車載等の過酷な条件での使用においても最も物体側のレンズ面に傷が付きにくくなるため、傷に起因するフレアーが発生したり、撮像性能が悪化したりすることを抑えることが可能となっている。
【0119】
以上説明した実施例においては、第1レンズ及び全系の焦点距離は、
-0.6 <f1/ftot < -0.2 ・・・(4)
を満たしている。これにより、第1レンズの負の光学的パワーが適切となり、物体側から大きな角度で入射する軸外光を撮像素子の方向へ有効に緩めることができる。そのため、第1レンズ径を大きくする必要も、光学全長を長くする必要もなくなり、光学系をコンパクトにすることができる。さらに、この第1レンズで発生する像面湾曲を有効に補正することが可能となる。
【0120】
以上説明した実施例においては、第1レンズの物体側の面に非球面を備え、その非球面の周辺部は、中心部に比べて大きな正の光学的パワーを有している。これにより、第1レンズの物体側の面における周辺部に大きな角度で入射する軸外光を撮像素子の方向へ有効に緩めることができるため、像面湾曲や非点収差を小さく抑えることが可能となる。さらに、広画角な光学系を実現することができる。
【0121】
以上説明した実施例においては、主にガラスレンズを用い、プラスチックレンズを併用している。しかし、本発明の実施例はこれに限定されることなく、第1レンズ(L1)を除いた1枚以上のレンズをプラスチックレンズとすることが可能である。特に、第1レンズ(L1)を除いた他のレンズ(L2〜L6)の光学的パワーは比較的弱いので、良好な収差補正を保ったまま、プラスチック製とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明に係る広角光学系の搭載対象の一例である車載カメラの概要を説明するための図である。
【図2】本発明に係る広角光学系の搭載対象の一例である車載カメラの構成を示す機能ブロック図である。
【図3】(a)は本発明に係る広角光学系を搭載したカメラ付携帯電話機の操作面を示す外観構成図である。(b)は本発明に係る広角光学系を搭載したカメラ付携帯電話機の操作面の裏面を示す外観構成図である。
【図4】実施形態1の広角光学系における光軸を縦断した断面図である。
【図5】実施形態2の広角光学系における光軸を縦断した断面図である。
【図6】実施形態3の広角光学系における光軸を縦断した断面図である。
【図7】最も物体側レンズにおける最大像高×0.8の像高の主光線通過位置での、基準曲面からの非球面のズレ量の定義を示す図である。
【図8】実施例1の広角光学系におけるレンズ群の球面収差、非点収差及び歪曲収差を示す収差図である。
【図9】実施例2の広角光学系におけるレンズ群の球面収差、非点収差及び歪曲収差を示す収差図である。
【図10】実施例3の広角光学系におけるレンズ群の球面収差、非点収差及び歪曲収差を示す収差図である。
【符号の説明】
【0123】
L1〜L6 第1レンズ〜第6レンズ
ST 光学絞り
AX 光軸
10 撮像レンズ装置
101 広角光学系
102 撮像素子(SR)
110、207 撮像レンズ装置(カメラ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学像を電気的な信号に変換する撮像素子の受光面上に被写体の光学像を形成する広角光学系であって、
物体側から順に配置される、負の光学的パワーを有する第1レンズと、正の光学的パワーを有するレンズ群とを含み、
前記第1レンズは少なくとも1面の非球面を備え、当該第1レンズの像側の面の光軸近傍は前記光軸を中心軸とした凹面であり、
以下の条件式を満たすことを特徴とする広角光学系。
10 mm < T ×sinθ < 30 mm
7 < T/ftot < 20
T:全系の光学全長(mm)
θ:半画角
tot:全系の焦点距離(mm)
【請求項2】
前記第1レンズは、さらに以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1記載の広角光学系。
350 < Hk1
Hk1:第1レンズのヌープ硬さ
【請求項3】
前記第1レンズ及び全系の焦点距離は、さらに以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の広角光学系。
-0.6 <f1/ftot < -0.2
1:第1レンズの焦点距離(mm)
【請求項4】
前記第1レンズは物体側の面に非球面を備え、当該非球面の周辺部は、中心部に比べて大きな正の光学的パワーを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の広角光学系。
【請求項5】
前記第1レンズは、さらに以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の広角光学系。
30 < ν1
1.6 < N1
ν1:第1レンズの分散
1:第1レンズの屈折率
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の広角光学系を備え、前記広角光学系が所定の結像面上に被写体の光学像を形成可能な構成とされていることを特徴とする撮像レンズ装置。
【請求項7】
所定位置に取り付けられ、取り付けられた位置周辺の所定領域の被写体を撮像するモニタカメラであって、請求項6に記載の撮像レンズ装置と、前記撮像レンズ装置により導かれた被写体の光学像を電気的な信号に変換する撮像素子とを具備することを特徴とするモニタカメラ。
【請求項8】
請求項6に記載の撮像レンズ装置と、撮像素子と、前記物体側の被写体の静止画撮影及び動画撮影の少なくとも一方の撮影を前記撮像レンズ装置及び撮像素子に実行させる機能部とを具備することを特徴とするデジタル機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−119368(P2006−119368A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307082(P2004−307082)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】