説明

床パン用防振脚

【課題】本発明の目的は、防振ゴムを備えた床パンの防振脚に関し、床パンのアジャスタ脚本来の機能を損なうことなく施工性を向上させることを目的とする。
【解決手段】床パンの脚部を防振ゴム部で形成しつつ、この脚部を中空に形成し下方から床パン本体に施工用の工具を用いて容易に組付けることができる溝をアジャスタボルト下側の設けたので、集合住宅やマンション等のように1日に複数室のユニットバス等の施工を行う際に、作業者の施工負荷が軽減できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は浴室ユニット用床パン上で発生した振動が建築スラブに伝播するのを防止する防振脚に関し、更に詳しくは、床パンへの施工性に優れた防振脚を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
マンションを主とした集合住宅において、浴室ユニットの床パン上で発生した振動が支持脚、建築スラブを介して階下に伝わり、階下で騒音が発生するといった問題が発生している。また、近年、気泡混じりの噴流を浴槽内に噴出させる気泡浴槽が普及してきており、この気泡浴槽が振動源となって上記同様に階下に伝わり騒音の原因になっている。
【0003】
その対策として、図5のようにボルト等の支持材17と建築スラブ11との間にゴム等の防振材19を介在させ、その防振ゴムによって支持脚から建築スラブに伝わる振動を吸収することが行われている(例えば特許文献1参照)。
また、図6の防振支持構造のように防振ゴム材を環形状にして、床パンの設置高さの上昇を小さくしているものもある(例えば特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−324360
【特許文献2】
特開平9−242151
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
浴室ユニット用床パン本体に防振脚を取付ける際に、十分な強度を得られるように、アジャスタボルトの呑み込み寸法を通常30mm程度は必要な設計寸法としている。また、防振脚は更におおよその設置高さまでアジャスタボルトを回して調整しておく必要がある。
従来技術において、特許文献1のような支持脚の構造では+ドライバーや、−ドライバー等の施工用の工具で回すことができず、施工者がゴム部を手で回すしかなかったため防振脚の取付けに時間がかかてしまっていた。
また、通常の床パンでは一般的に防振脚は10本程度必要なため、マンションを主とした集合住宅で1日に複数の浴室ユニットを組立てしなければならない場合は、床パンに防振脚を取り付ける工程が施工者の多大な負荷となっていた。
【0006】
特許文献2の防振支持構造においては、施工の際に予め建築スラブ上の所定の位置に防振部材を配置しておく必要があり、位置決め作業に時間がかかってしまたり、また、ボルトの頭が防振部材上面の凹陥没部に入ってしまうため、高さの微調整作業がやり難い等の問題があった。
【0007】
【課題を解決するための手段及び効果】
上記課題を解決するため、本発明は防振脚の防振ゴム部に中空部を設け、上部金属板の裏面に+または−形状の溝を設けることにより、防振脚をドライバー等の工具を使用して床パンに取付けることができるようにした。また、建築スラブへ設置後の床パン高さの微調整はアジャスタボルトの頭を回して行うことができる。
また、防振ゴム部を中空形状にすることにより床パンで発生した振動を低減する効果が向上する。このためある振動低減効果を得ようとした場合、防振ゴムの厚みは薄くすることができ、床パンの設置高さの上昇を抑えることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図により説明する。
図1は防振脚の一部を断面とした正面図で、アジャスタボルト1と、前記アジャスタボルト1の下面に溶接等で固定された平板状の金属板2と、平板状の金属板2の下面に加硫接着された防振ゴム3、防振ゴム3の下面に加硫接着されたリング状の金属板4からなる。防振ゴム3にはアジャスタボルト下面部10と相対する位置に下面が開放された円柱状の中空部5が設けられ、平板状の金属板2の下面にはアジャスタボルトの回動を可能にする溝6を形成している。
【0009】
防振ゴム3を中空にすることにより、床パン上で発生した振動を低減する効果が向上する。防振ゴム3の中空の直径は、アジャスタボルト1の頭の外径と概略同一にすることが好ましい。中空の直径を小さくすると振動低減効果が低下し、大きくすると床パンに荷重した際の変位量が増大し好ましくない。防振ゴムの硬度は40〜60度が好ましく、硬度が大きい場合は振動低減効果が低下し、逆に小さい場合は床パンに荷重した際の変位量が増大するため好ましくない。
【0010】
防振ゴム3の材質としては、EPDM、SBR、NR等を使用することができるが、比重1.0以下のEPDMを使用することが好ましい。
防振ゴム3の下面に加硫接着されたリング状の金属板4は建築スラブに設置後接着剤により固定されるためリングの外径は防振ゴムの外径と同一または若干大きくすることが好ましい。また、振動の伝播を小さくするには、リング状の金属板4と建築スラブ11との接触面積を極力小さくすることが必要で、リングの幅は3mm程度にすることが好ましい。
【0011】
図2は防振脚の底面図で、平板状の金属板2の下面にはアジャスタボルトの回動を可能にする溝6を形成しており、(イ)は+ドライバー、(ロ)は−ドライバー用の溝を設けている。また、平板状の金属板2にφ10程度の穴を開け、アジャスタボルト下面10に+または−の溝を形成することもできる。
【0012】
図3は床パンを壁に立て掛けて防振脚を工具で取付けている図で、まず、防振脚12をアジャスタボルト螺合部7にねじ込み、電動ドライバー15等の工具を使用して回動し、おおよその設置高さにまで調節しておく。
【0013】
図4は防振脚を取付けた床パンを建築スラブに設置する図で、おおよその設定高さに調節された防振脚が取付けられた床パンを建築スラブ上に設置し、アジャスタボルトの頭部をスパナ等の工具で回して、床パンの水平レベルを調整する。
床パンの水平レベルの調整が完了したら、ナット9を締め付けてアジャスタボルト1とアジャスタボルト螺合部7とをしっかり固定する。
最後に防振脚底面のリング状の金属板4の周囲に接着剤を塗布して建築スラブ11に固定する。防振性能を落とさないためには接着剤の塗布は防振ゴム部に付着しない方が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】防振脚の一部を断面とした正面図
【図2】防振脚底面図
【図3】床パンを壁に立て掛けて防振脚を工具で回動している図
【図4】防振脚を取付けた床パンを建築スラブに設置する図
【図5】従来の防振脚の支持構造(特許文献1)
【図6】従来の防振脚の支持構造(特許文献2)
【符号の説明】
1…アジャスタボルト
2…平板状の金属板
3…防振ゴム
4…リング状の金属板
5…中空部
6…溝
7…アジャスタボルト螺合部
8…床パン下面
9…ナット
10…アジャスタボルト下面
11…建築スラブ
12…防振脚
13…床パン
14…壁
15…電動ドリル
16…接着剤
17…ボルト等の支持材
18…平板状の支持材
19…ゴム等の防振材
20…支持板
21…支持脚
22…防振部材
23…ゴムブロック
23a…中心孔
24,25…金属板
26…凹陥部
27…接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床パンを建築スラブ上に設置するための床パン用の防振脚であって、前記防振脚は床パン下面に形成したアジャスタボルト螺合部に螺合可能なアジャスタボルトと、前記アジャスタボルトと下方に形成された防振ゴムとを固定する平板状の金属板とを備え、前記防振ゴムは前記アジャスタボルト下面部と相対する位置に下面が開放された中空部を設け、前記中空部側から前記アジャスタボルトを回動可能にする溝を前記平板状の金属板の下面に形成したことを特徴とする床パン用防振脚。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2004−300749(P2004−300749A)
【公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−94432(P2003−94432)
【出願日】平成15年3月31日(2003.3.31)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】