説明

床暖房パネル

【課題】上面に張り付けられた床仕上げ材の更新を容易に行え、且つ、該床仕上げ材が強く踏まれることによって生じる音の発生を抑制できる、床暖房パネルを提供する。
【解決手段】溝が刻設された板状体と、板状体に並列して一方向に略平行に配設される小根太と、溝に配設される熱媒体流通管と、熱媒体流通管が、小根太に対して略直交方向に配設される配管渡り部を覆う保護カバーとを備え、板状体の上面に均熱シートが接着され、均熱シートの上面において、小根太及び保護カバーの両側にPETからなる基材の上面に非接着層を有する帯状の非接着シートが接着され、非接着シート、小根太、及び保護カバーの上面に接着剤塗布用シートが接着される床暖房パネルであって、保護カバーと隣接する板状体の保護カバー隣接部分において、板状体と均熱シートとの間に、粘着材吸収シートが介在し、非接着シートが金属層を備えることを特徴とする、床暖房パネルとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面に張り付けられた床仕上げ材の更新を容易に行え、且つ、該床仕上げ材が強く踏まれることによって生じる音の発生を抑制できる、床暖房パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、温暖地方の寒冷期および寒冷地の住宅などの構造物における居住空間の居住性を向上させる目的で、多様な暖房技術が提案され、実用化されている。その大部分は、居住空間の床面に配置する床暖房システムである。床暖房システムの例としては、発泡合成樹脂製板状体や木製板状体などを基体としており、その一方の面に刻設された溝に熱媒体流通管を埋設し、これらの表面を、アルミニウム箔などの可撓性薄板(均熱シート)で被覆した構造の床暖房パネルを備えるものが挙げられる。これは、床暖房システムの床暖房パネルに配設された熱媒体流通管を流れる熱媒体によって、床暖房パネルの上面に貼り付けられた床仕上げ材が暖められ、その床仕上げ材の表面からの輻射熱により、室内を暖房するものである。
【0003】
このような床暖房システムが備えられる構造物で、床仕上げ材に傷が付いた場合や、賃貸物件において借主が入れ替わった場合などに、床仕上げ材の張り替えを行うことがある。その際、まだ使用できる床暖房パネルを同時に交換すると余分なコストがかかるため、床暖房パネルに傷を付けずに床仕上げ材を剥がす技術がこれまでにいくつか提案されている。
【0004】
床暖房パネルに傷を付けずに床仕上げ材を剥がす技術として具体的には、例えば、特許文献1には、加熱用長尺体が装備され且つ表面にシート状のパネル形成体用均熱体が止着されたパネル形成体と小根太とが並設されている床暖房パネルであって、パネル形成体用均熱体における小根太に隣接する小根太隣接部分に止着される状態で帯状の分離用非接着層が備えられ、小根太とそれに隣接する分離用非接着層とからなる小根太対応箇所に、小根太及び分離用非接着層を覆う状態で、且つ、パネル形成体用均熱体がパネル形成体に止着される止着力よりも弱い接着力にて分離用非接着層に貼着される状態で帯状の接着シートが備えられる床暖房パネル、が開示されている。
【特許文献1】特願2007−010601
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示されている床暖房装置(床暖房パネル)では、分離用非接着層(多層シート)として、シリコーン樹脂を塗布したポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられており、かかる多層シートの上面に床仕上げ材を敷設した場合、該床仕上げ材を上から強く踏むと音が鳴ることがあった。この音の発生原因について、以下に、より具体的に説明する。多層シートと多層シートの下面に配設されるパネル形成体用均熱体(均熱シート)は、それらの界面に空気が溜まることを防ぐために、界面全面が接着されているわけではない。床仕上げ材の上から強く踏まれると、多層シートと均熱シートの界面の接着層が存在しない部分において多層シートが変形する。そして、踏まれることで多層シートに加えられていた力がなくなると、多層シートは反発力が強いため元の状態に戻る。その際に音が発せられていた。また、小根太に対して略直交方向に、熱媒体流通管が配設される配管渡り部では、床仕上げ材の上から強く踏まれると、保護カバーが撓むことで熱媒体流通管が押さえられ、粘着性を有する均熱シートから熱媒体流通管が離れる際に音が発せられていた。
【0006】
そこで、本発明は、上面に張り付けられた床仕上げ材の更新を容易に行え、且つ、床仕上げ材が強く踏まれることによって生じる音の発生を抑制できる、床暖房パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0008】
第1の本発明は、溝(1)が刻設された複数の板状体(3)と、板状体に並列して一方向に略平行に配設される複数の小根太(4)と、溝に配設される熱媒体流通管(2)と、熱媒体流通管が、小根太に対して略直交方向に、板状体から他の板状体に渡って配設される配管渡り部(5)、を覆う保護カバー(7)と、を備え、板状体の上面に均熱シート(6)が接着され、均熱シートの上面において、小根太及び保護カバーの両側に、ポリエチレンテレフタレートからなる基材(14)の上面に非接着層(13)を有する帯状の非接着シート(8)、が接着され、非接着シート、小根太、及び保護カバーの上面に、接着剤塗布用シート(9)が接着される、床暖房パネル(10)であって、非接着シートが、さらに基材の下面に金属層(15)を備えることを特徴とする床暖房パネル、を提供することによって、上記課題を解決する。
【0009】
第1の本発明及び以下の本発明(以下、単に「本発明」という。)において、「溝が刻設された板状体」とは、熱媒体を流通させる熱媒体流通管を配設させるための溝が刻設された板状の部材を意味する。板状体の形状や刻設される溝の形状は、特に限定されず、目的に応じて適当に選択される。また、「熱媒体流通管が、小根太に対して略直交方向に、板状体から他の板状体に渡って配設される」とは、板状体と板状体との間で小根太が配設されていない部分において、小根太に対して略直交方向に熱媒体流通管を配設させることで、該小根太の両側に備えられる板状体を熱媒体流通管で繋ぐように、熱媒体流通管が配設されることを意味する。したがって、「配管渡り部」は、小根太の長手方向の延長線上にある。また、「保護カバー」とは、配管渡り部において、熱媒体流通管がむき出しになるのを防ぐ部材を意味する。さらに、「均熱シート」とは、熱伝導性が高いシート状の部材であり、「板状体の上面には均熱シートが接着され」とは、複数の板状体の上面に、複数の板状体が一体化するように均熱シートが張られることを意味する。さらに、「非接着シート」とは、均熱シートと板状体とが接着される接着力より弱い接着力で、接着性シートと接着される、複層のシート状の部材を意味する。さらに、「非接着シート、小根太、及び保護カバーの上面に、接着剤塗布用シートが接着される」とは、小根太、及び保護カバーの上面側全体と、少なくとも非接着シートの一部を覆うように接着剤塗布用シートが接着され、該接着剤塗布用シートは、非接着シート下から露出している均熱シートには接着されないように備えられることを意味する。さらに、「接着剤塗布用シート」とは、床暖房パネルと床仕上げ材を接着させる際に、上面に接着剤が塗布されるシート状の部材を意味する。
【0010】
第2の本発明は、溝(1)が刻設された複数の板状体(3)と、板状体に並列して一方向に略平行に配設される複数の小根太(4)と、溝に配設される熱媒体流通管(2)と、熱媒体流通管が、小根太に対して略直交方向に、板状体から他の板状体に渡って配設される配管渡り部(5)、を覆う保護カバー(7)と、を備える、床暖房パネル(10)であって、保護カバーと隣接する板状体の保護カバー隣接部分(11)の上面に、粘着材吸収シート(12)が備えられるとともに、板状体及び粘着材吸収シートの上面に、均熱シート(6)が接着されることを特徴とする、床暖房パネル、を提供することによって、上記課題を解決する。
【0011】
本発明において、「保護カバーと隣接する板状体の保護カバー隣接部分」とは、保護カバーに隣接する板状体のうち、該板状体の保護カバーに近い部分を意味する。また、「粘着材吸収シート」とは、均熱シートの裏面に塗布されている接着剤が熱媒体流通管に付着することを防げ、それ自体が柔らかくて踏まれても音がならないものであれば特に限定されない。粘着材吸収シートの具体例としては、不織布や紙などを挙げることができる。
【0012】
第3の本発明は、溝(1)が刻設された複数の板状体(3)と、板状体に並列して一方向に略平行に配設される複数の小根太(4)と、溝に配設される熱媒体流通管(2)と、熱媒体流通管が、小根太に対して略直交方向に、板状体から他の板状体に渡って配設される配管渡り部(5)、を覆う保護カバー(7)と、を備え、板状体の上面に均熱シート(6)が接着され、均熱シートの上面において、小根太及び前記保護カバーの両側に、ポリエチレンテレフタレートからなる基材(14)の上面に非接着層(13)を有する帯状の非接着シート(8)、が接着され、非接着シート、小根太、及び保護カバーの上面に、接着剤塗布用シート(9)が接着される、床暖房パネル(10)であって、保護カバーと隣接する板状体の保護カバー隣接部分(11)において、板状体と均熱シートとの間に、粘着材吸収シート(12)が介在し、非接着シートが、さらに基材の下面に金属層(15)を備えることを特徴とする、床暖房パネル、を提供することによって、上記課題を解決する。
【0013】
上記第1又は第3の本発明において、非接着シート(8)に、接着剤塗布用シート(9)の配設位置を一意的に決められる手段が備えられていることが好ましい。
【0014】
ここに、「接着剤塗布用シートの配設位置を一意的に決められる手段」とは、接着剤塗布用シートを張る際に、張る位置を明確にできる手段であれば特に限定されない。具体的には、接着剤塗布用シートの端部を合わせるために、非接着シートに備えられた直線状の目印などを挙げることができる。
【発明の効果】
【0015】
上記第1の本発明の床暖房パネルによれば、非接着シートが備えられることで上面に張り付けられた床仕上げ材の更新を容易に行え、また、非接着シートに金属層を備えることで非接着シートが形状を保持しやすくなり、床仕上げ材の上から強く踏まれても非接着シートが反発しないため、音の発生を抑制できる。したがって、第1の本発明によれば、上面に張り付けられた床仕上げ材の更新を容易に行え、且つ、該床仕上げ材が強く踏まれることによって生じる音の発生を抑制できる、床暖房パネルを提供することができる。
【0016】
上記第2の本発明の床暖房パネルによれば、保護カバーと隣接する板状体の保護カバー隣接部分の上面に、粘着材吸収シートを介して均熱シートが接着されることで、保護カバー隣接部分において、熱媒体流通管と均熱シートが接着するのを防げる。したがって、床仕上げ材の上から強く踏まれた際に、保護カバーが撓んで熱媒体流通管が押さえられることで、粘着性を有する均熱シートから熱媒体流通管が離れる際に発せられていた音の発生を防止できる。
【0017】
上記第3の本発明の床暖房パネルによれば、非接着シートが備えられることで上面に張り付けられた床仕上げ材の更新を容易に行え、また、非接着シートに金属層を備えることで非接着シートが形状を保持しやすくなり、床仕上げ材の上から強く踏まれても非接着シートが反発しないため、音の発生を抑制できる。また、保護カバーと隣接する板状体の保護カバー隣接部分の上面に、粘着材吸収シートを介して均熱シートが接着されることで、保護カバー隣接部分において、熱媒体流通管と均熱シートが接着するのを防げる。よって、床仕上げ材の上から強く踏まれた際に、保護カバーが撓んで熱媒体流通管が押さえられることで、粘着性を有する均熱シートから熱媒体流通管が離れる際に発せられていた音の発生を防止できる。したがって、第3の本発明によれば、上面に張り付けられた床仕上げ材の更新を容易に行え、且つ、該床仕上げ材が強く踏まれることによって生じる音の発生を抑制できる、床暖房パネルを提供することができる。
【0018】
上記第1又は第3の本発明において、非接着シートに、接着剤塗布用シートの配設位置を一意的に決められる手段が備えられていることによって、床仕上げ材を更新する際に、非接着シートの上面に新たな接着剤塗布用シートを配設することが容易になる。
【0019】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づき説明するが、以下に説明するものは本発明の実施形態の一例であって、本発明はその要旨を超えない限り以下の説明になんら限定されるものではない。
【0021】
本発明の床暖房パネル10は、熱媒体流通管2、板状体3、小根太4、及び保護カバー7、並びに、それらの上面側に積層される複数の部材を備えている。まず、熱媒体流通管2、板状体3、小根太4、及び保護カバー7について、図1を参照しつつ、以下に具体的に説明する。
【0022】
図1は、本発明の床暖房パネル10の上面の一部を概略的に示す図である。図1では、説明を容易にするため、熱媒体流通管2、板状体3、小根太4、及び保護カバー7が露出した状態を示している。
【0023】
図1に示すように、本発明の床暖房パネル10は、溝1が刻設された複数の板状体3と、板状体3に並列して一方向に略平行に配設される複数の小根太4と、を備えている。そして、溝1には熱媒体流通管2が配設され、熱媒体流通管2が小根太4に対して略直交方向に、板状体3から他の板状体3に渡って配設される配管渡り部5には、熱媒体流通管2を覆うように保護カバー7が備えられている。
【0024】
(板状体3)
板状体3は、後述する熱媒体流通管2を配設させるための溝1が備えられている板状の部材であれば特に限定されないが、熱伝導性が低い発泡ポリスチレン等の発泡性樹脂からなる形態が好ましい。かかる形態とすることによって、断熱性を高められることに加えて、軽量化を図ることができる。
【0025】
(熱媒体流通管2)
熱媒体流通管2は、床暖房パネル10を備える床暖房システムの運転時に熱媒体(温水など)を流通させるための配管であって、熱媒体を流通させることが可能で、板状体3に形成されている溝1に配設できる程度の可撓性を有し、床暖房システムの運転中の環境に耐え得るものであれば特に限定されない。熱媒体流通管2の具体例としては、架橋ポリエチレンやポリブテン等の樹脂製の配管を挙げることができる。
【0026】
(保護カバー7)
床暖房パネル10の上面に張られた床仕上げ材19(図6参照)を剥がす際には、小根太4が備えられる位置の上からバールなどを挿し込むので、配管渡り部5において熱媒体流通管2が傷つけられるのを防ぐため、保護カバー7が備えられている。保護カバー7の具体例としては、ポリプロピレン製のカバーなどを挙げることができる。
【0027】
(小根太4)
小根太4は、床暖房パネル10の強度を確保するためや、床暖房パネル10を設置する際に、設置場所に床暖房パネル10を固定するのに用いる釘を打つために備えられており、木質材からなる。床暖房パネル10を設置する際には、小根太4に釘が打たれるため、小根太4の長手方向の延長線上において小根太4が存在しない部分(配管渡り部5、保護カバー7)の上面側には、そこが釘を打ってはならない場所であるということを明示する目印(不図示)を付すことが好ましい。
【0028】
図1では省略したが、熱媒体流通管2、板状体3、小根太4、及び保護カバー7の上面側には、複数の部材が積層されている。熱媒体流通管2、板状体3、小根太4、及び保護カバー7の上面に積層される、それら複数の部材について、図2〜図5を参照しつつ、以下に具体的に説明する。
【0029】
図2(a)〜(d)は、図1中にIIで示した箇所での各部材の重なりを説明する図であって、紙面手前/奥方向が床暖房パネル10の上下方向である。図2(a)は、板状体3、及び小根太4の上面に何も積層されていない状態を示している。図2(b)は、板状体3の上面に均熱シート6が配設された状態を示している。図2(c)は、均熱シート6の上面に、非接着シート8が配設された状態を示している。図2(d)は、小根太4及び非接着シート8の上面に、接着剤塗布用シート9が配設された状態を示している。図3は、図1中にIII−III´で示した箇所での断面を概略的に示す図である。図3において、紙面上下方向が床暖房パネル10の上下方向である。図4は、図1中にIV−IV´で示した箇所での断面の一部を概略的に示す図である。図4において、紙面上下方向が床暖房パネル10の上下方向である。図5は、図3中にVで示した箇所を概略的に示す拡大図である。図6(a)は、床暖房パネル10の上面に床仕上げ材19を配設する前の床暖房パネル10の断面の一部を概略的に示す図である。図6(b)は、床暖房パネル10の上面に床仕上げ材19を配設した後の床暖房パネル10及び床仕上げ材19の断面の一部を概略的に示す図である。図6(a)及び図6(b)において、紙面上下方向が床暖房パネル10の上下方向である。
【0030】
(均熱シート6)
板状体3、及び小根太4の上面に何も積層されていない状態では、図2(a)に示すように、熱媒体流通管2、及び板状体3が露出した状態となるが、実際には、図2(b)及び図3に示すように、板状体3の上面全体に均熱シート6が接着されている。ただし、保護カバー7と隣接する板状体3の保護カバー隣接部分11(図1参照)では、熱媒体流通管2と均熱シート6の間に、粘着材吸収シート12が配設されている(図4参照)。粘着材吸収シート12については、後述する。
【0031】
均熱シート6は、床暖房パネル10に備えられる全ての板状体3の上面全体を覆うように配設されていることが好ましい。かかる形態とすることで、熱媒体流通管2を流通する熱媒体の熱を、床暖房パネル10の上面に張られる床仕上げ材19へと効率良く伝えることができる。本発明に用いることができる均熱シート6は、熱伝導性が高いシート状の部材であれば特に限定されない。均熱シート6の具体例としては、アルミニウムや銅などからなる金属箔の裏面(板状体3側の面)に接着材層を備えたものを挙げることができる。
【0032】
(粘着材吸収シート12)
上述した粘着材吸収シート12は、均熱シート6の裏面に塗布されている接着剤が熱媒体流通管2に付着することを防げ、それ自体が柔らかくて踏まれても音がならないものであれば特に限定されない。本発明に用いることができる粘着材吸収シート12の具体例としては、不織布や紙などを挙げることができる。粘着材吸収シート12が熱媒体流通管2と均熱シート6の間に備えられることによって、熱媒体流通管2が均熱シート6と接着されることを防げるので、保護カバー7の上から力を加えられることによって、均熱シート6から熱媒体流通管2が離れる際に発せられていた音の発生を防止できる。より具体的に説明すると、床暖房パネル10の上面に張られる床仕上げ材19の上から保護カバー7付近を強く踏まれると、保護カバー7が撓むため、保護カバー7の下を通っている熱媒体流通管2も下方向へ押さえつけられることになる。このとき、熱媒体流通管2が均熱シート6と接着されていると、熱媒体流通管2が下方向に押さえられることで熱媒体流通管2が均熱シート6から離れ、その際に、均熱シート6の裏面に塗布されている接着剤が粘るため、音が発せられていた。床暖房パネル10では、保護カバー隣接部分11に粘着材吸収シート12を備えることで熱媒体流通管2が均熱シート6と接着されることを防げるので、熱媒体流通管2が下方向に押さえられても音が発生しない。
【0033】
(非接着シート8)
均熱シート6の上面には、図2(c)及び図3に示すように、非接着シート8が接着されている。非接着シート8は、小根太4、及び保護カバー7の両側で、小根太4、及び保護カバー7に沿って、床暖房パネル10の端から端まで配設されている。非接着シート8は、均熱シート6に対する接着力より、次に説明する接着剤塗布用シート9に対する接着力が弱くなるように接着されている。以下に、図5を用いて、非接着シート8についてより具体的に説明する。
【0034】
図5に示すように、非接着シート8の裏面(均熱シート6側の面)には、接着剤が塗布された接着部16、16、…と接着剤が塗布されていない非接着部17、17、…が存在する。接着部16、16、…と非接着部17、17、…は、交互に縞状に設けられており、かかる形態とすることによって、非接着シート8と均熱シート6の間に空気溜りが形成されるのを防止している。この空気溜りは、床暖房パネル10が設置された後に、床暖房パネル10の上面に張られる床仕上げ材19の上から踏まれた際に、音を発生させる原因となるものである。
【0035】
しかし、従来の床暖房パネルでは、上述したように、非接着シートと均熱シートの間に接着部と非接着部を設けることによって、床仕上げ材の上から踏まれた際に、非接着部で非接着シートが変形することによって音が発生していた。これは、従来の非接着シートが、高反発性を有する基材と該基材の上面に形成された非接着層のみからなる構成であったため、非接着シートが高反発性を有することになり、その非接着シートが変形することで音を発していたと考えられる。
【0036】
床暖房パネル10では、非接着シート8は、図5に示すように、基材14の上面に非接着層13が形成されるとともに、下面に金属層15が備えられる複層構造となっている。金属層15が備えられることによって、非接着シート8に形状保持性が付加され、変形しても音を発することがなくなる。より具体的には、非接着シート8に上から押さえつける力が加えられることで非接着シート8が変形しても、金属層15が備えられていることで、その変形後の形状を保持し、反発することがないため、音が発せられない。
【0037】
基材14は、ポリエチレンテレフタレートからなるシート状の部材であり、非接着層13は、後述する接着剤塗布用シート9との接着力を弱め、非接着シート8から接着剤塗布用シート9を剥がし易くできるものであれば特に限定されない。非接着層13の具体例としては、シリコーン樹脂からなる層などを挙げることができる。また、金属層15の具体例としては、アルミニウムや銅などからなる金属箔を挙げることができる。
【0038】
さらに、非接着シート8には、後述する接着剤塗布用シート9の配設位置を一意的に決められる手段が備えられていることが好ましい。かかる形態とすることによって、接着剤塗布用シート9をずらさずに張ることができ、接着剤塗布用シート9が均熱シート6に接着されることを防止できる。接着剤塗布用シート9の配設位置を一意的に決められる手段の具体例としては、接着剤塗布用シート9の端部を合わせるために、非接着シート8に備えられた直線状の目印などを挙げることができる。このような直線状の目印を設ける簡単な方法としては、例えば、非接着層13をシリコーン樹脂などの透明な樹脂からなる層とする場合、基材14に目印となる線を付した後、基材14の上面に非接着層13を形成させ、基材14の下面に金属層15を配設して、非接着シート8とする方法を挙げられる。
【0039】
(接着剤塗布用シート9)
小根太4及び非接着シート8の上面には、図2(d)及び図3に示すように、接着剤塗布用シート9が接着されている。接着剤塗布用シート9は、小根太4、及び保護カバー7に沿って、床暖房パネル10の端から端まで配設されている。また、接着剤塗布用シート9の幅方向(小根太4の長手方向に対して直行する方向)の長さは、小根太4の幅方向長さと、小根太4の両側に備えられた非接着シート8の幅方向の長さの合計より短くなっており、接着剤塗布用シート9は、均熱シート6に触れないように配設されている。本発明に用いることができる接着剤塗布用シート9は、後述する接着剤18を浸透させないシート状の部材であって、熱伝導性が高い部材であることが好ましい。かかる形態とすることで、熱媒体流通管2を流れる熱媒体の熱を、上面に張られた床仕上げ材19に効率よく伝えることができる。接着剤塗布用シート9の具体例としては、アルミニウムや銅などからなる金属箔の裏面(非接着シート8側の面)に接着材層を備えたものを挙げることができる。
【0040】
図6(a)に示すように、床暖房パネル10の上面に床仕上げ材19を配設する際には、接着剤塗布用シート9の上面に接着剤18を塗布して、接着剤18によって、床暖房パネル10と床仕上げ材19を接着する。床暖房パネル10と床仕上げ材19が接着されると、接着剤18は、図6(b)に示すように、接着剤塗布用シート9の上面のみで広がり、非接着シート8や均熱シート6には接着剤が付着しない。
【0041】
床仕上げ材19を更新する際には、上述したように、接着剤18が接着剤塗布用シート9の上面のみで広がっており、非接着シート8と接着剤塗布用シート9の間の接着力は弱いため、床仕上げ材19を剥がすと、接着剤塗布用シート9は床仕上げ材19に接着されたままの状態で、接着剤塗布用シート9と非接着シート8が離れる。そのため、均熱シート6及び板状体3に損傷を与えずに床仕上げ材19を剥がすことができる。
【0042】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う床暖房パネルもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の床暖房パネルの一部を概略的に示す上面図である。
【図2】図1中にIIで示した箇所での各部材の重なりを説明する図である。
【図3】図1中にIII−III´で示した箇所での断面を概略的に示す図である。
【図4】図1中にIV−IV´で示した箇所での断面の一部を概略的に示す図である。
【図5】図3中にVで示した箇所を概略的に示す拡大図である。
【図6】(a)は、床暖房パネル10の上面に床仕上げ材19を配設する前の床暖房パネル10の断面の一部を概略的に示す図である。(b)は、床暖房パネル10の上面に床仕上げ材19を配設した後の床暖房パネル10及び床仕上げ材19の断面の一部を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 溝
2 熱媒体流通管
3 板状体
4 小根太
5 配管渡り部
6 均熱シート
7 保護カバー
8 非接着シート
9 接着剤塗布用シート
10 床暖房パネル
11 保護カバー隣接部分
12 粘着材吸収シート
13 非接着層
14 基材
15 金属層
16 接着部
17 非接着部
18 接着剤
19 床仕上げ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝が刻設された複数の板状体と、前記板状体に並列して一方向に略平行に配設される複数の小根太と、前記溝に配設される熱媒体流通管と、前記熱媒体流通管が、前記小根太に対して略直交方向に、前記板状体から他の前記板状体に渡って配設される配管渡り部、を覆う保護カバーと、を備え、
前記板状体の上面に均熱シートが接着され、
前記均熱シートの上面において、前記小根太及び前記保護カバーの両側に、ポリエチレンテレフタレートからなる基材の上面に非接着層を有する帯状の非接着シート、が接着され、
前記非接着シート、前記小根太、及び前記保護カバーの上面に、接着剤塗布用シートが接着される、床暖房パネルであって、
前記非接着シートが、さらに前記基材の下面に金属層を備えることを特徴とする、床暖房パネル。
【請求項2】
溝が刻設された複数の板状体と、前記板状体に並列して一方向に略平行に配設される複数の小根太と、前記溝に配設される熱媒体流通管と、前記熱媒体流通管が、前記小根太に対して略直交方向に、前記板状体から他の前記板状体に渡って配設される配管渡り部、を覆う保護カバーと、を備える、床暖房パネルであって、
前記保護カバーと隣接する前記板状体の保護カバー隣接部分の上面に、粘着材吸収シートが備えられるとともに、前記板状体及び前記粘着材吸収シートの上面に、均熱シートが接着されることを特徴とする、床暖房パネル。
【請求項3】
溝が刻設された複数の板状体と、前記板状体に並列して一方向に略平行に配設される複数の小根太と、前記溝に配設される熱媒体流通管と、前記熱媒体流通管が、前記小根太に対して略直交方向に、前記板状体から他の前記板状体に渡って配設される配管渡り部、を覆う保護カバーと、を備え、
前記板状体の上面に均熱シートが接着され、
前記均熱シートの上面において、前記小根太及び前記保護カバーの両側に、ポリエチレンテレフタレートからなる基材の上面に非接着層を有する帯状の非接着シート、が接着され、
前記非接着シート、前記小根太、及び前記保護カバーの上面に、接着剤塗布用シートが接着される、床暖房パネルであって、
前記保護カバーと隣接する前記板状体の保護カバー隣接部分において、前記板状体と前記均熱シートとの間に、粘着材吸収シートが介在し、
前記非接着シートが、さらに前記基材の下面に金属層を備えることを特徴とする、床暖房パネル。
【請求項4】
前記非接着シートに、前記接着剤塗布用シートの配設位置を一意的に決められる手段が備えられていることを特徴とする、請求項1又は3に記載の床暖房パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−127885(P2009−127885A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300631(P2007−300631)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】