説明

床材の敷設方法とその床構造

【課題】床材表面に白化現象と膨れが生じにくく、伸縮目地を跨いで床材をコンクリート床に敷設することのできる床材の敷設方法とその床構造を提供する。
【解決手段】伸縮目地Jが形成されたコンクリート床Fの下地面F1に合成樹脂製の床材1を敷設する床材の敷設方法であって、伸縮目地Jを跨ぐように帯体2を載置し、コンクリート床Fの下地面F1と床材1裏面の間であって、帯体2両側の外縁2a外側に接し、且つ、帯体2の全長に亘ってコンクリート床Fの下地面F1と床材2裏面とを接着しない非接着領域4を設け、伸縮目地Jを跨いでコンクリート床Fの下地面F1に床材1を接着固定した構成とする。伸縮目地Jが床材1で被覆されるので防水性が高い。帯体2を載置することで、伸縮目地の伸縮応力が帯体2両側の外縁2aに2分して分散される。伸縮応力が床材1の一部に集中することなく非接着領域4全体に分散され、床材1に白化現象や膨れが生じにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伸縮を吸収するために形成された伸縮目地を跨いでコンクリート床の下地面に床材を敷設する床材の敷設方法とその床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の通路やバルコニー、屋上、或いは室内の床面には、床面の防水性や防滑性、遮音性、遮熱性、美観の向上、転倒時の怪我防止などのために、軟質系合成樹脂製の床材を接着固定することが一般的になっている。
【0003】
建物がマンションなどのコンクリート構造物である場合、コンクリート躯体の熱伸縮によって、コンクリート面に亀裂が入ったり圧壊しないように、伸縮目地が形成されている。また、低層の集合住宅の開放廊下等では、プレキャストコンクリート板を根太上に配設・固定して床面を構成することがあるが、このようなコンクリート板の接合箇所はコンクリート板の熱伸縮による変動を吸収できるように、伸縮目地となっている。これらの伸縮目地を跨いで床材をコンクリート床の下地面に接着固定すると、コンクリートの熱伸縮によって伸縮目地の目地幅が拡縮し、目地に沿って床材表面に白化現象が生じたり、目地幅が拡がると酷い場合には床材がちぎれたり、また、目地幅が縮まった場合には床材表面に膨れが生じるといった問題があった。
【0004】
このような問題に対処するため、従来は、図7に示すように、伸縮目地Jを跨いで床材1を接着固定することなく、伸縮目地Jを挟んだ両側で床材1,1の縁を切って接着固定していた。このようにすると、上記の問題は解決するものの、床材1の捲れ防止や防水性確保のために、床材1の端部にシーリング材7でのシーリング処理を施すことが必要となるため、施工の手間が増える上に、美観の上でもあまり好ましくなかった。また、伸縮目地Jが露出しているので、その隙間に歩行者の靴のヒールが落ち込むという問題もあった。近年は、コンクリート床Fの防水性を向上させるために、コンクリート床Fの全面に床材1を接着固定する事例が急増しており、伸縮目地Jで床材1の縁を切る方法では、防水性の向上に寄与できない点も問題であった。
【0005】
コンクリート床の全面に床材を接着固定する方法として、例えば、接合部に設けた伸縮目地及びその周囲に弾性シール材を充填塗布し、FRP補強層を介してその表面を塗り床材で被覆する目地処理方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
上記目地処理方法は、伸縮目地を跨いでコンクリート床の下地面に敷設することができるので、床材の縁を切ったり、シーリング処理を施したりする必要がなく、また、コンクリート床の全面に床材を敷設することができるので、防水性も良好であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−037114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記目地処理方法は、コンクリート床の下地面にエポキシ樹脂系のプライマーを塗布したり、伸縮目地とその周囲に弾性シール材を充填塗布したり、FRP補強層に補強用繊維を介在させたり、塗り床材と弾性シール材の間にFRP補強層を介したり、FRP補強層の分だけ塗り床材をくり抜いたりする必要があるので、手順が多く、施工性が良好とはいえず、費用の面でも好ましくなかった。また、上記特許文献1には、その作用効果として、塗り床材に剥離や亀裂を生じさせることはないとしているが、これは想定する目地の伸縮量が小さいためであると推測され、本発明が想定する、±0.1〜3mmの伸縮が想定される伸縮目地を有するコンクリート床に採用すると、伸縮に追従することができず、そのような作用効果を奏することができるのか疑問が残る。
【0009】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、伸縮目地の伸縮寸法が大きな場合でも床材表面に白化現象が生じにくく、また、膨れも目立たず、伸縮目地を跨いで床材を簡単にコンクリート床に敷設することができる、施工性、防水性の良好な床材の敷設方法とその床構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る床材の敷設方法は、伸縮目地が形成されたコンクリート床の下地面に合成樹脂製の床材を敷設する床材の敷設方法であって、上記伸縮目地を跨ぐように帯体を載置し、コンクリート床の下地面と床材裏面の間であって、上記帯体両側の外縁外側に接し、且つ、帯体の全長に亘ってコンクリート床の下地面と床材裏面とを接着しない非接着領域を設け、上記伸縮目地を跨いでコンクリート床の下地面に合成樹脂製の床材を接着固定することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の床材の敷設方法においては、上記非接着領域が、帯体両側の外縁内側と床材裏面との間まで連続して設けられていることが好ましい。また、上記非接着領域を設ける箇所に粘着テープを貼着し、床材をコンクリート床の下地面に接着固定する床材用接着剤を、コンクリート床の下地面、粘着テープの上、帯体の上に塗布したのち、床材を敷設することがより好ましい。
【0012】
次に、本発明の床構造は、伸縮目地が形成されたコンクリート床の下地面において、上記いずれかの床材の敷設方法を用いることで、合成樹脂製の床材が、伸縮目地を跨ぐようにコンクリート床の下地面に敷設されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の床材の敷設方法は、伸縮目地を跨いでコンクリート床の下地面に合成樹脂製の床材を接着固定するので、図7に示す従来の敷設方法のように、床材1,1の縁を切ったり、シーリング材7でのシーリング処理が不要となるので施工性が良好で、伸縮目地Jは床材で完全に被覆されているので、防水性も高く、歩行者の靴のヒールが落ち込んで転倒する心配もない。また、新たに必要となる部材は帯体だけであるので、施工手順も少なくて済み、費用を抑えることもできる。
【0014】
帯体を設けることなく床材をコンクリート床の下地面に直接接着固定した場合、伸縮目地の伸縮に対する伸縮応力は、伸縮目地の真上に位置する床材の一部分に集中する。これに対して、本発明のように帯体を伸縮目地を跨ぐように載置することで、伸縮目地の伸縮応力が帯体の外縁両側に2分して分散され、床材の白化現象や膨れを低減することができる。そして、帯体の外縁より外側に非接着領域が設けられているので、床材にかかる伸縮応力が一部分に集中することなく非接着領域全体に分散され、床材表面に白化現象が生じにくく、膨れも目立ちにくくなる。また、非接着領域を設けていない場合、目地の伸縮によって目地が狭くなると、帯体の外縁が床材裏面や下地面と床材裏面との間の接着材層に突き当たって、床材裏面を傷つけたり突き上げたりすることになるが、本発明は、帯体の外縁外側に非接着領域が設けられているので、帯体の外縁はコンクリート床の下地面上をスムーズにスライドし、床材に余計な応力を与えることがない。従って、±0.1〜3mmの伸縮が想定される伸縮目地を有するコンクリート床に本発明の敷設方法を採用したとしても、伸縮に充分追従することができて、不具合が生じる恐れはない。
【0015】
また、上記非接着領域が、帯体両側の外縁内側と床材裏面との間まで連続して設けられている床材の敷設方法は、帯体外縁に接する下地面と床材裏面との間の非接着領域が、連続して帯体外縁内側と床材裏面との間にも設けられることで、伸縮応力を分散する範囲が大きくなるので、より一層床材表面に白化現象が生じにくくなり、また、膨れも目立たなくすることができる。
【0016】
更に、上記非接着領域を設ける箇所に粘着テープを貼着し、床材をコンクリート床の下地面に接着固定する床材用接着剤を、コンクリート床の下地面、粘着テープの上、帯体の上に塗布したのち、床材を敷設する床材の敷設方法は、粘着テープが、下地面や帯体外縁に床材用接着剤が接することを妨げるので、当該粘着テープが貼着された部分と床材裏面とが接着固定されることなく、容易に非接着領域を形成することができる。また、粘着テープを貼着することで、床材用接着剤の塗布時や、床材を強固に下地面に接着し噛み込んだエアを抜くために床材を下地面に圧接する際に、帯体が移動するのを防止することができる。
尚、ここでいう「接着」の用語は、床材用途で多用される硬化型接着剤による接着固定の意で、非硬化型の粘着剤による「粘着」とは概念が異なるものである。
【0017】
次に、本発明の床構造は、前述のように優れた効果を奏する敷設方法を用いて構築されるので、コンクリート床が熱伸縮しても床材表面に白化現象や膨れが生じにくく、伸縮目地を跨いで床材を敷設しているので、防水性が非常に良好で、伸縮目地の隙間に歩行者の靴のヒールが落ち込む心配もない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る床材の敷設方法を説明する断面図である。
【図2】同敷設方法で用いられる帯体を示す斜視図である。
【図3】同敷設方法を用いて構築した床構造を示す概略図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る床材の敷設方法を説明する断面図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る床材の敷設方法を説明する断面図である。
【図6】本発明の更に他の実施形態に係る床材の敷設方法を説明する断面図である。
【図7】従来の床材の敷設方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0020】
図1に示す本発明の床材の敷設方法は、防水性や防滑性、遮音性、遮熱性、美観を向上させると共に、転倒時の怪我を防止するため、マンションなどのコンクリート構造物の通路やバルコニー、屋上、或いは室内の床面など、伸縮目地Jが形成されたコンクリート床Fの下地面F1に合成樹脂製の床材1を敷設する方法であって、図3に示すように、伸縮目地Jを跨いでコンクリート床Fの下地面F1に床材1を接着固定するようにしたものである。
【0021】
コンクリート床Fの下地面F1に敷設される床材1は、軟質塩化ビニル樹脂やポリオレフィン系樹脂で成形された、厚みが1〜3mmで、中間層としてガラス繊維層を積層したり、裏面に不織布層を積層したものが好適に用いられる。
【0022】
また、コンクリート床Fに形成される伸縮目地Jは、幅が3〜40mm程度で、図1に示すように、この伸縮目地Jには目地シール材5が充填されている。目地シール材5としては、シリコン系、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系などの弾性シール材が好適に用いられる。このようにコンクリート床Fに伸縮目地Jを形成し、目地シール材5を充填することで、コンクリート床Fの熱伸縮を充分吸収することができ、コンクリート床Fに亀裂が入ったり圧壊したりするのを防止している。
【0023】
通常、上記伸縮目地Jを跨いで床材1をコンクリート床Fの下地面F1に接着固定すると、コンクリート床Fが寒暖による温度差によって伸縮するため、その熱伸縮によって伸縮目地Jの目地幅が拡縮し、伸縮目地Jに沿って床材1の表面に白化現象が生じたり、目地幅が拡がると酷い場合には床材1がちぎれたり、また、目地幅が縮まった場合には床材1の表面に膨れが生じるといった問題が生じる。この問題に対処するため、本発明の床材の敷設方法は、コンクリート床Fに形成された伸縮目地Jを跨ぐように図2に示す帯体2を載置し、コンクリート床Fの下地面F1と床材1裏面の間に、コンクリート床の下地面F1と床材1裏面とを接着しない非接着領域4を設けている。
【0024】
図2に示す帯体2は、外縁2aに向うほど厚みが薄くなるように傾斜した、横断面形状が下広がりの長尺の台形体(帯体2は、その表面を円弧状に形成してもよい)で、このように外縁2aの厚みを薄く形成することで、外縁2aの肉厚によって生じる床材1表面の膨れが目立たないようになっている。この帯体2は、施工現場で切断したり継ぎ足したりすることで、伸縮目地Jの長さ寸法に合わせるようにすればよい。
【0025】
上記帯体2裏面の中点近傍には、図1、図2に示すように、凸条2bが帯体2の全長に亘って設けられている。この凸条2bは、帯体2を伸縮目地Jの上に載置するとき、帯体2裏面の凸条2bが伸縮目地J内に嵌まりこんでガイドの役目を果たすので、適切な位置で伸縮目地Jを帯体2で覆うことができる。また、歩行者が靴のヒールで踏んでも、凸条2bが伸縮目地Jの目地シール材5に接して支持するので、帯体2の撓みも軽減され、万一、当該部上の床材1が鋭利なもので突かれても床材1の破損を防ぐこともできる。従って、この凸条2bの下端は、伸縮目地Jの目地シール材5に接触した際、その目地シール材5を傷つけることがないように、丸みを帯びるように形成されている。
尚、この凸条2bの幅寸法が、伸縮目地Jの幅寸法と略同等であると、コンクリート床Fが膨張して伸縮目地Jの幅が縮まった場合に、凸条2bが伸縮目地Jに挟まれるといった不具合が生じるので、その幅寸法は、伸縮目地Jの想定される伸縮量を考慮して設定されている。
【0026】
また、上記帯体2の幅寸法(裏面の幅寸法)は、伸縮目地Jの幅が前述したように3〜40mm程度であるため、それを充分に覆える10〜200mm程度に形成すればよい。そして、その厚み(裏面から上面までの高さ)は、床材1の表面の膨らみが目立たないようにするために極力薄い方が望ましいが、一定以上の強度と剛性が必要となるので、0.3〜3mm程度にすることが適当である。
【0027】
上記構成の帯体2の材質は、ヒール付の靴で帯体2を踏んだ場合でも極端に撓んだり、破損しない程度の強度と剛性を有し、耐水性や防錆性のあるものであれば特に限定されるものではないが、金属であれば、ステンレスやメッキを施した鉄、アルミなど、合成樹脂であれば、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂などのオレフィン系樹脂が好適に用いられる。この帯体2は、公知の方法で成形することができ、金属製であれば、板金プレスや折り曲げ、押出成形で形成されることが多く、合成樹脂製であれば、押出成形や射出成形で形成されることが多い。
【0028】
本発明の床材の敷設方法は、上記帯体2を、図1の(a)に示すように、コンクリート床Fに形成された伸縮目地Jを跨ぐように載置する。このとき、帯体2裏面の凸条2bが伸縮目地Jの中間に位置するように載置する。そして、図1の(b)に示すように、コンクリート床Fの下地面F1と帯体2の表面に床材用接着剤3を塗布すると共に、コンクリート床の下地面F1と床材1裏面とを接着しない非接着領域4を設ける。
【0029】
床材1をコンクリート床Fの下地面F1に接着固定する床材用接着剤3は、反応開始剤と混合したり、湿気によって反応が開始される硬化型の接着剤で、硬化後は硬くなるタイプのものが用いられるが、硬化後も柔軟なタイプのものを用いてもよい。代表的な接着剤としては、湿気硬化型一液ウレタン系接着剤、二液混合硬化型エポキシ接着剤、湿気硬化型シリコン系接着剤等が挙げられる。
【0030】
また、上記非接着領域4は、図1の(b),(c)に示す実施形態では、コンクリート床Fの下地面F1と床材1の裏面との間に床材用接着剤3を塗布しないことで設けられる領域のことをいい、伸縮応力を適切に2分して分散する観点から、この非接着領域4は、帯体2両側の外縁2a,2aから外側に向かい、且つ、帯体2の全長に亘って設けられている。
【0031】
非接着領域4の幅寸法(帯体2の外縁2aから接着剤3までの距離)は、3〜50mm程度に設定することが好ましく、非接着領域4の幅寸法が50mmよりも大きいと、床材1の膨れの発生する範囲が大きくなりすぎて膨れが逆に目立ってしまう。逆に、非接着領域4の幅寸法が3mmよりも小さいと、伸縮応力を適切に分散させることが困難になって、膨れの生じる範囲が大きくなったり、床材1の表面が白化しやすくなってしまうという不具合が生じるので、非接着領域4の幅寸法は、上記寸法に設定することが好ましい。
【0032】
非接着領域4を設ける手段は、非接着領域4を設けたい箇所に床材用接着剤3を塗らないことでも設けることができるが、これだと施工性があまり良くない。従って、非接着領域4を設けたい箇所にマスキングテープを被覆し、その上から床材用接着剤3を塗布し、その後、そのマスキンテープを剥離して床材用接着剤3を取り除くことで、非接着領域4を設ける手段が好適に行われる。
【0033】
上記のように、非接着領域4を設けたのちに、図1の(c)に示すように、上から床材1を敷設して接着固定することで、床材1の敷設が完了する。
【0034】
以上のような床材の敷設方法は、伸縮目地Jを跨いでコンクリート床Fの下地面F1に合成樹脂製の床材1を接着固定するので、床材1の縁を切ったり、シーリング材7でのシーリング処理が不要となり施工性が良好で、費用を抑えることもできる。また、伸縮目地Jは床材1で完全に被覆されているので、防水性も高く、歩行者の靴のヒールが落ち込んで転倒する心配もない。また、帯体2を、伸縮目地Jを跨ぐように載置することで、伸縮目地Jの伸縮応力が帯体2両側の外縁2a,2aに2分して分散され、それに加えて、帯体2の外縁2aより外側に非接着領域4が設けられているので、床材1にかかる伸縮応力は、床材1の一部分に集中することなく非接着領域4全体に分散されて、床材1の表面に白化現象が生じにくく、膨れも目立ちにくくなる。この非接着領域4を設けることで、伸縮目地Jの伸縮によって目地幅が狭くなっても、帯体2の外縁2aは下地面F1の上をスムーズにスライドし、帯体2の外縁2aが床材1の裏面を傷つけたり、突き上げたりすることがないため、±0.1〜3mmの熱伸縮が想定される伸縮目地Jを有するコンクリート床Fに好適に採用することができる。
【0035】
図4は本発明の他の実施形態に係る床材の敷設方法を説明する断面図である。
【0036】
前述した実施形態の床材の敷設方法が、非接着領域4を帯体2両側の外縁2a,2aから外側に向かってのみ設けているのに対して、この実施形態に係る床材の敷設方法は、図4に示すように、非接着領域4を帯体2両側の外縁2a,2aの外側だけでなく、床材1の裏面と帯体2表面との間であって、帯体2両側の外縁2a,2aの内側に向って連続して設けている。この実施形態の非接着領域4は、帯体2の外縁2aから帯体2の表面にある床材用接着剤3までの距離を、3〜20mm程度に設定することが好ましく、帯体2の表面全体を非接着領域4にしてしまうと、床材1の膨れの範囲が広くなりすぎて、逆に床材1の膨れが目立ってしまうので、帯体2の表面にも床材用接着剤3を塗布することが好ましい。
この実施形態に係る床材の敷設方法のその他の敷設方法は、前述した実施形態の敷設方法と同様であるので、同一部材に同一符号を附して説明を省略する。
【0037】
この実施形態の床材の敷設方法は、帯体2の外縁2aの内側と床材1の裏面との間にも非接着領域4を設けることで、伸縮応力を分散する範囲が大きくなるので、より一層床材1の表面に白化現象が生じにくくなり、膨れも目立たなくすることができる。
【0038】
図5は本発明の更に他の実施形態に係る床材の敷設方法を説明する断面図である。
【0039】
この実施形態に係る床材の敷設方法は、前述した図4に示す実施形態の非接着領域4を設ける箇所(帯体2両側の外縁2a,2aの外側と内側)に粘着テープ6を貼着すると共に、帯体2の裏面とコンクリート床Fの下地面F1との間にも粘着テープ6を貼着したのち、非接着領域4を設ける箇所に貼着した粘着テープ6の表面、コンクリート床Fの下地面F1、及び、帯体2の表面に床材用接着剤3を塗布し、その上から床材1を敷設したものである。
【0040】
床材1を敷設する際に、帯体2がコンクリート床Fの下地面F1の上を簡単にスライドしてしまう状態では施工性があまり良好とはいえず、帯体2と下地面F1との間に隙間が生じてしまうような場合は、その上を歩行したときに、帯体2と下地面F1が接触して音が鳴る恐れがある。しかも、この実施形態に用いる帯体2は、図5に示すように、帯体2裏面に凸条2bが設けられていないタイプのものを使用しているので、粘着テープ6によって帯体2とコンクリート床Fの下地面F1を粘着固定しておくことが好ましい。
尚、ここでいう「粘着固定」とは、床材1と帯体2がある程度の自由をもったスライドが可能で、且つ、弱い力が負荷されても容易に動かない状態で継続的に固定することを意味し、床材用接着剤3による強固な「接着固定」とは異なる。
【0041】
粘着テープ6は、樹脂製のテープ基材に粘着剤層を設けたもので、厚みが0.1〜3mm、幅寸法が3〜100mm程度のものが好適に用いられる。粘着テープ6を構成するテープ基材は必ずしも必須の要件とはならないが、施工性の観点からテープ基材がある粘着テープ6が好ましく、そのテープ基材の材質として、紙、織布、不織布、樹脂、発泡樹脂、ゴム、金属箔など、公知のものが好適に用いられる。また、粘着テープ6を構成する粘着剤の材質は、アクリル系、ゴム系(特にブチルゴム系が最適)、ウレタン系など、公知の粘着剤を適用することができ、耐水、耐老化、耐熱性のあるものが特に好ましい。このような粘着テープ6を上記箇所に貼着することで、床材用接着剤3の塗布時や、床材1を強固にコンクリート床Fの下地面F1に接着固定し、噛み込んだエアを抜くために床材1を下地面F1に圧接する際に、帯体2が移動することを防止することができる。
この実施形態に係る床材の敷設方法のその他の敷設方法は、前述した図1、図4に示す実施形態の敷設方法と同様であるので、同一部材に同一符号を附して説明を省略する。
【0042】
以上のような床材の敷設方法は、粘着テープ6が、コンクリート床Fの下地面F1や帯体2両側の外縁2a,2aの外側及び内側に床材用接着剤3が接することを妨げるので、この床材用接着剤3が接しない部分と床材1裏面とを接着固定することなく、容易に非接着領域4を形成することができる。
【0043】
図6は本発明の更に他の実施形態に係る床材の敷設方法を説明する断面図である。
【0044】
この実施形態では、図6に示すように、左右の外縁2a,2aの高さが異なる帯体20を用いる。低層アパートの廊下などは、鉄で組んだ枠にプレキャストコンクリートを載置し、ボルトとナットで固定していることが多い。このような構造では、プレキャストコンクリートが強固な地盤に固定されていないので、人が歩くとプレキャストコンクリートが上下に動き、伸縮目地Jの左右で段差が生じてしまう場合がある。前述した図1、図4、図5に示す実施形態の床材の敷設方法は、コンクリート床Fが左右に伸縮することは想定しているが、上下に段差がある場合は想定しておらず、上下に段差がある場合を想定したのが本実施形態の敷設方法である。この敷設方法に用いる帯体20は、表面が一方の外縁2aから他方の外縁2aに向ってなだらかに傾斜していると共に、その裏面がコンクリート床Fの熱伸縮分を考慮して切欠かれている。このような帯体20を用いると、伸縮目地Jの隣り合うコンクリート床F,Fに段差がある場合でも、帯体2の片側が浮き上がるという現象を防ぐことができ、また、伸縮目地Jの挟んで両側の段差をなだらかな傾斜に緩和することで、歩行時の躓きを防止することもできる。
尚、上記のように、左右の厚み調整は、上記のように、帯体20の外縁2a,2aの高さを左右で異ならせることで行うことができるが、一方の外縁2aの裏面にスペーサーを貼り付けるなど、介在物を設けることによって行うことも可能である。
この実施形態に係る床材の敷設方法のその他の敷設方法は、前述した図1、図4、図6に示す実施形態の敷設方法と同様であるので、同一部材に同一符号を附して説明を省略する。
【0045】
以上のような床材の敷設方法を用いて床材1を敷設すると、伸縮目地Jを挟んでコンクリート床Fの左右に段差があるような場合でも、伸縮目地Jを跨いで床材1をコンクリート床Fの下地面F1に敷設することができる。
【符号の説明】
【0046】
F コンクリート床
F1 下地面
J 伸縮目地
1 床材
2,20 帯体
2a 外縁
2b 凸条
3 床材用接着剤
4 非接着領域
5 目地シール材
6 粘着テープ
7 シーリング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮目地が形成されたコンクリート床の下地面に合成樹脂製の床材を敷設する床材の敷設方法であって、
上記伸縮目地を跨ぐように帯体を載置し、
コンクリート床の下地面と床材裏面の間であって、上記帯体両側の外縁外側に接し、且つ、帯体の全長に亘ってコンクリート床の下地面と床材裏面とを接着しない非接着領域を設け、
上記伸縮目地を跨いでコンクリート床の下地面に合成樹脂製の床材を接着固定することを特徴とする床材の敷設方法。
【請求項2】
上記非接着領域が、帯体両側の外縁内側と床材裏面との間まで連続して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の床材の敷設方法。
【請求項3】
上記非接着領域を設ける箇所に粘着テープを貼着し、床材をコンクリート床の下地面に接着固定する床材用接着剤を、コンクリート床の下地面、粘着テープの上、帯体の上に塗布したのち、床材を敷設することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の床材の敷設方法。
【請求項4】
伸縮目地が形成されたコンクリート床の下地面において、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の床材の敷設方法を用いることで、合成樹脂製の床材が、伸縮目地を跨ぐようにコンクリート床の下地面に敷設されていることを特徴とする床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−69139(P2011−69139A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221963(P2009−221963)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】