説明

床構造

【課題】 特別な電磁波シールド部材を使用しなくても第1対向部材と第2対向部材との間からの電磁波の漏洩を効果的に低減できる床構造を得る。
【解決手段】 床構造30では、複数の支持脚40に複数の床部材52が支持されて、室内36の下方に空間54が形成されている。ここで、隣設された各床部材52の周壁部58が、導通されない状態で下端を除く部分において対向することで、対向する各床部材52の周壁部58の対向面積を大きくしている。このため、対向する各床部材52の周壁部58により構成されるコンデンサのインピーダンスを小さくでき、隣設された各床部材52間からの電磁波の漏洩を効果的に低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
床構造としては、床スラブ上に固定された支持部材上に金属製のフロアパネルが支持されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この床構造では、フロアパネル間、及び、間仕切り壁の電磁遮蔽材とフロアパネルとの間を、金属箔によって導通させることで、フロアパネル間の隙間、及び、間仕切り壁の電磁遮蔽材とフロアパネルとの間の隙間において、電磁波をシールドしている。
【0004】
しかしながら、この床構造では、上記各隙間において電磁波をシールドするために、特別な電磁波シールド部材(金属箔)を使用する必要があるという問題がある。
【0005】
しかも、フロアパネルは、その目的から、フロアパネル下方と躯体側の床スラブとの間の空間にコンピュータ等のための電源用配線や通信用配線等を配設するための構成部材である。このため、コンピュータ等の移設や新設に伴いこれらの配線の交換や増設をする度に、広い範囲のフロアパネルを取り外してフロアパネル下方の空間を開放するために、金属箔を取り外す必要があり、フロアパネルの取り外し作業が煩雑であるという問題もある。
【0006】
また、床構造としては、上記各隙間において電磁波をシールドする必要をなくすために、床スラブ上に亜鉛鉄板等の金属板を敷き込むことで、電磁波をシールドするものもある。
【0007】
しかしながら、この床構造では、フロアパネルを支持する支持部材を床スラブ上に固定する際に、耐震性確保の点から、支持部材を床スラブ上に金属板を貫通する状態でアンカー固定又はコンクリートビス固定する必要がある。このため、金属板に開けられた貫通孔によって電磁波のシールド性能が低下するという問題が生じる可能性がある。
【特許文献1】特開平9−83179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事実を考慮し、特別な電磁波シールド部材を使用しなくても第1対向部材と第2対向部材との間からの電磁波の漏洩を効果的に低減できる床構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の床構造は、導電性を有し、下方に空間が形成される室内の床部分を構成する第1床部材の端部に設けられた第1対向部材と、導電性を有し、前記第1導電部材に導通されない状態で前記第1導電部材に対向する第2対向部材と、を備えている。
【0010】
請求項2に記載の床構造は、請求項1に記載の床構造において、前記第2対向部材は、前記室内の床部分を構成する第2床部材の端部に設けられた、ことを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の床構造は、導電性を有し、室内の床部分を構成する床部材に設けられた第1対向部材と、導電性を有し、前記床部材を支持する支持部材に設けられると共に、前記第1対向部材に導通されない状態で前記第1対向部材に対向する第2対向部材と、を備えている。
【0012】
請求項4に記載の床構造は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の床構造において、前記第1対向部材と前記第2対向部材との導通を阻止する阻止部材を備えた、ことを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載の床構造は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の床構造において、前記第1対向部材と前記第2対向部材とを互いに略平行に配置した、ことを特徴としている。
【0014】
請求項6に記載の床構造は、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の床構造において、前記第1対向部材と前記第2対向部材との間に誘電体を設けた、ことを特徴としている。
【0015】
請求項7に記載の床構造は、請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の床構造において、前記第1対向部材の前記第2対向部材との対向面及び前記第2対向部材の前記第1対向部材との対向面の幅を15mm以上にすると共に、前記第1対向部材と前記第2対向部材との間隔を3mm以下にした、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の床構造では、室内の下方に空間が形成されており、室内の床部分を構成する第1床部材の端部に第1対向部材が設けられている。
【0017】
ここで、導電性を有する第1対向部材と第2対向部材とが導通されない状態で対向することで、第1対向部材と第2対向部材との対向面積(対向方向(対面方向)に垂直な方向の面積(対面面積))を大きくしている。このため、第1対向部材と第2対向部材とにより構成されるコンデンサのインピーダンス(抵抗)を小さくすることができ、第1床部材(第1対向部材)と第2対向部材との間からの電磁波の漏洩を効果的に低減することができる。これにより、特別な電磁波シールド部材を使用する必要をなくすことができる。
【0018】
請求項2に記載の床構造では、室内の床部分を構成する第2床部材の端部に第2対向部材が設けられている。このため、第1床部材(第1対向部材)と第2床部材(第2対向部材)との間からの電磁波の漏洩を効果的に低減することができる。
【0019】
請求項3に記載の床構造では、室内の床部分を構成する床部材を支持部材が支持しており、床部材に第1対向部材が設けられると共に、支持部材に第2対向部材が設けられている。
【0020】
ここで、導電性を有する第1対向部材と第2対向部材とが導通されない状態で対向することで、第1対向部材と第2対向部材との対向面積(対向方向(対面方向)に垂直な方向の面積(対面面積))を大きくしている。このため、第1対向部材と第2対向部材とにより構成されるコンデンサのインピーダンス(抵抗)を小さくすることができ、床部材(第1対向部材)と支持部材(第2対向部材)との間からの電磁波の漏洩を効果的に低減することができる。これにより、特別な電磁波シールド部材を使用する必要をなくすことができる。
【0021】
請求項4に記載の床構造では、阻止部材が第1対向部材と第2対向部材との導通を阻止するため、第1対向部材と第2対向部材との導通を確実に防止することができる。
【0022】
請求項5に記載の床構造では、第1対向部材と第2対向部材とを互いに略平行に配置したため、第1対向部材と第2対向部材との対向面積が確実に大きくなり、第1対向部材と第2対向部材とにより構成されるコンデンサのインピーダンスを確実に小さくすることができる。これにより、第1対向部材と第2対向部材との間からの電磁波の漏洩を確実かつ効果的に低減することができる。
【0023】
請求項6に記載の床構造では、第1対向部材と第2対向部材との間に誘電体を設けたため、第1対向部材と第2対向部材とにより構成されるコンデンサのインピーダンスを一層小さくすることができ、第1対向部材と第2対向部材との間からの電磁波の漏洩を一層効果的に低減することができる。
【0024】
請求項7に記載の床構造では、第1対向部材の第2対向部材との対向面及び第2対向部材の第1対向部材との対向面の幅を15mm以上にすると共に、第1対向部材と第2対向部材との間隔を3mm以下にしたため、第1対向部材と第2対向部材とにより構成されるコンデンサのインピーダンスを確実に小さくすることができ、第1対向部材と第2対向部材との間からの電磁波の漏洩を確実かつ効果的に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(電磁波シールド原理)
図1には、本発明の電磁波シールド原理が適用された電磁波シールド構造10が断面図にて示されている。
【0026】
電磁波シールド構造10は、一対の導電性材料14を備えており、各導電性材料14は、導電性を有すると共に、互いに導通されていない。各導電性材料14は断面L字形板状にされており、各導電性材料14の上部(屈曲部分を含まない)は導電部16にされる一方、各導電性材料14の側部(屈曲部分を含む)は対向部18にされている。各導電部16は並列配置される一方、各対向部18は互いに平行に配置された状態で対向している。また、一対の対向部18(導電性材料14)間には、隙間20(空間)が形成された構成である。
【0027】
以上の構成の電磁波シールド構造10では、一対の対向部18間の間隔が電磁波の波長よりも小さい場合には、この電磁波シールド構造10に電磁波が到来すると、一方の導電性材料14に表面電流(図1の往復矢印A)が流れることで、隙間20に変位電流(図1の往復矢印B)が流れて、他方の導電性材料14に表面電流(図1の往復矢印A)が流れる。ところで、電磁波は交流であるため、変位電流の大きさと方向とは時間的に変化する。このため、この変位電流によって、隙間20には、磁界が発生して電界が発生することで、電磁波が発生する。この電磁波は、電磁波到来側へ伝搬すれば隙間20から電磁波が漏洩しないが、反電磁波到来側へ伝搬すると隙間20から電磁波が漏洩することになる。
【0028】
一般に、隙間20から漏洩する電磁波の強度は、一対の対向部18間の電位差が大きくなる程大きくなるため、隙間20から漏洩する電磁波の強度を小さくするためには、一対の対向部18により構成されるコンデンサのインピーダンスを小さくすればよい。
【0029】
コンデンサのインピーダンスRは、隙間20に存在する誘電体の誘電率をεとし、一対の対向部18間の間隔をdとし、一対の対向部18の対向面積をSとし、コンデンサの静電容量をC=ε・(S/d)とし、到来電磁波の周波数をfとし、到来電磁波の角周波数をω=2πfとすると、
R=1/(C・ω)=1/{ε・(S/d)・2πf} ・・・式(1)
となる。
【0030】
このため、コンデンサのインピーダンスRは、一対の対向部18の対向面積Sを大きくする程、一対の対向部18間の距離dを小さくする程、隙間20に存在する誘電体の誘電率εを大きくする程、小さくできる。なお、空気は誘電率εが最小の物質であり、空気以外の誘電体を隙間20に挿入することで、コンデンサのインピーダンスRを小さくすることができる。
【0031】
電磁波シールド構造10では、各対向部18が各導電部16に対して屈曲されて対向されているため、一対の対向部18の対向面積Sが大きくされている。このため、式(1)から、一対の対向部18により構成されるコンデンサのインピーダンスRが小さくなることで、隙間20から漏洩する電磁波の強度が小さくなり、隙間20からの電磁波の漏洩を効果的に低減することができる。
【0032】
さらに、一対の対向部18の対向面を互いに平行に配置したため、一対の対向部18の対向面積が確実に大きくなり、一対の対向部18により構成されるコンデンサのインピーダンスRを確実に小さくすることができる。これにより、隙間20からの電磁波の漏洩を確実かつ効果的に低減することができる。
【0033】
(実験例)
図2及び図3には、図1の電磁波シールド構造10において、各導電性材料14がアルミニウム製プレートにされた場合に、一対の対向部18の対向面の幅W(図面では「厚さ」と表示)を20mm、30mm、40mm、50mmにした毎に分けて、一対の対向部18 間の間隔(図面では「ギャップ」と表示)と、隙間20の電磁波シールド性能(電磁波が隙間20を透過することによる損失電界強度であり、図面では「挿入損失」と表示する)と、の関係の実験結果が示されている。この場合、電磁波は、各導電部16表面の垂直方向に沿って到来(入射)されており、隙間20の電磁波シールド性能は、到来する電磁波の電界強度と隙間20を透過した電磁波の電界強度とから算出されている。
【0034】
また、図2(A)には、到来する電磁波の周波数が2.45GHzにされると共に誘電率εが1.0F/mの誘電体(空気)が隙間20に挿入された場合が示されており、図2(B)には、到来する電磁波の周波数が5.2GHzにされると共に誘電率εが1.0F/mの誘電体(空気)が隙間20に挿入された場合が示されている。さらに、図3(A)には、到来する電磁波の周波数が2.45GHzにされると共に誘電率εが4.0F/mの誘電体が隙間20に挿入された場合が示されており、図3(B)には、到来する電磁波の周波数が5.2GHzにされると共に誘電率εが4.0F/mの誘電体が隙間20に挿入された場合が示されている。
【0035】
図2及び図3から、一対の対向部18間の間隔が3mm以下であると、隙間20の電磁波シールド性能が向上する傾向がある。さらに、一対の対向部18の対向面の幅W、一対の対向部18間の間隔及び到来する電磁波の周波数が同一である場合には、隙間20に空気以外の誘電体を挿入すると、隙間20の電磁波シールド性能が向上する傾向がある。
【0036】
(第1実施例)
図4には、本発明の第1実施例に係る床構造30が断面図にて示されている。
【0037】
本実施例に係る床構造30は、オフィスビル等の建築物の所謂OAフロアに適用されている。
【0038】
床構造30は、階構成部材としてのコンクリート製の床スラブ32を複数備えており、床スラブ32は、建築物の各階の上面及び下面を構成している。床スラブ32間には複数の側壁34が設けられており、側壁34は各階における室内36の側面を構成している。側壁34には第2対向部材としての電磁波シールド層38が設けられており、電磁波シールド層38は、側壁34の下部以外の部位において側壁34内に配置されると共に、側壁34の下端近傍の部位において室内36側へ露出している。電磁波シールド層38はアルミニウム製シート状等にされて導電性を有しており、電磁波シールド層38は電磁波をシールド(遮蔽)する。
【0039】
床スラブ32上には、支持脚40(支持部材)が複数設けられており、支持脚40は、室内36の下方において平面視で格子を構成する複数の直線(以下「格子線」という)の各交点部分に配置されると共に、金属製とされて導電性を有している。各支持脚40の下端には平板状の下端板42が設けられており、各下端板42は床スラブ32上に接着剤44によって接着されて耐震性を確保されている。各下端板42上には軸状の支持軸46が固定されており、各支持軸46上には平板状の上端板48が固定されている。各支持脚40の上端板48上には、阻止部材としての断面台形状の位置決め部材50が固定されており、上端板48及び位置決め部材50の露出された外面は、阻止部材としての導電性を有しない塗料(図示省略)によって塗装されている。
【0040】
図5(A)に示す如く、側壁34に隣設されない各支持脚40における上端板48上の位置決め部材50は、格子線に沿って平面視十字状に形成されている。図5(B)に示す如く、側壁34に隣設された各支持脚40のうち、側壁34同士の交差部位以外のものにおける上端板48は、隣設された側壁34側の周縁が当該側壁34に沿って平面視直線状に形成されると共に、当該上端板48上の位置決め部材50は、格子線に沿って平面視T字状(図5(A)の位置決め部材50を2等分にした形状)に形成されている。図5(C)に示す如く、側壁34に隣設された各支持脚40のうち、側壁34同士の交差部位のものにおける上端板48は、当該交差部位側の周縁が当該交差部位に沿って平面視L字状に形成されると共に、当該上端板48上の位置決め部材50は、当該交差部位及び格子線に沿って平面視L字状(図5(A)の位置決め部材50を4等分にした形状)に形成されている。
【0041】
複数の支持脚40上には、第1床部材または第2床部材としての平面視矩形状の床部材52が複数支持されており、床部材52の周面は格子線の近傍かつ格子線に平行に配置されて、複数の床部材52が室内36の床部分を構成すると共に、複数の床部材52の下方に床スラブ32との間において空間54が形成されている。また、床部材52は、アルミニウム製ダイカストにされて、導電性を有している。
【0042】
図6に詳細に示す如く、床部材52は、下面が開放された長方体形箱状にされており、1つの平板状の上壁部56(屈曲部を含まない)と、第1対向部材または第2対向部材としての4つの平板状の周壁部58(屈曲部を含む)と、を有している。床部材52の各周壁部58の下端外側には、断面台形状の切欠60が一様に形成されており、床部材52は、各角部が支持脚40の上端板48上に載置された状態で、各角部における切欠60が上端板48上の位置決め部材50に嵌合されて位置決めされている。これにより、隣設された床部材52と上端板48及び位置決め部材50との間は上記塗料によって導通されないと共に、隣設された床部材52間、及び、隣設された床部材52と側壁34下端近傍の電磁波シールド層38との間は、接触せずに導通されていない。さらに、隣設された各床部材52の周壁部58、及び、隣設された床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38とは、周壁部58の切欠60形成部分を除く部分において、互いに平行に配置されて対向しており、対向する各床部材52の周壁部58間の間隔D、及び、対向する床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38との間の間隔は、可能な限り小さくされて、例えば3mm以下にされている。また、対向する各床部材52の周壁部58の対向面の幅E、及び、対向する床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38との対向面の幅は、可能な限り大きくされて、例えば15mm以上50mm以下より好ましくは30mm以下にされている。
【0043】
複数の床部材52上には、絨毯62が敷かれおり、絨毯62は複数の床部材52上から取り外し可能にされた構成である。
【0044】
次に、本実施例の作用を説明する。
【0045】
以上の構成の床構造30では、複数の支持脚40上に室内36の床部分を構成する複数の床部材52が支持されており、室内36の下方には空間54が形成されている。また、側壁34の下端近傍において電磁波シールド層38が室内36側へ露出すると共に、床部材52の端部を周壁部58が構成している。
【0046】
ここで、隣設された各床部材52の周壁部58、及び、隣設された床部材52の周壁部58と側壁34下端近傍の電磁波シールド層38とが、導通されない状態で、周壁部58の切欠60形成部分を除く部分において対向することで、対向する各床部材52の周壁部58の対向面積、及び、対向する床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38との対向面積を、大きくしている。
【0047】
このため、対向する各床部材52の周壁部58により構成されるコンデンサ、及び、対向する床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38とにより構成されるコンデンサのインピーダンス(抵抗)を小さくすることができ、隣設された各床部材52間、及び、隣設された床部材52と当該電磁波シールド層38との間からの電磁波の漏洩を効果的に低減することができる。これにより、特別な電磁波シールド部材を使用する必要をなくすことができ、このため、低コスト化を図ることができ、かつ、簡単な工法で電磁波をシールド可能な床構造30を構築することができると共に、簡単に(絨毯62を取り外すのみで)床部材52を取り外して空間54を開放させることができる。
【0048】
また、支持脚40の上端板48及び位置決め部材50の露出外面における塗料、及び、位置決め部材50による床部材52の位置決めによって、隣設された各床部材52の周壁部58間、及び、隣設された床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38との間の導通が阻止されるため、対向する各床部材52の周壁部58間、及び、対向する床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38との間の導通を確実に防止することができる。
【0049】
さらに、対向する各床部材52の周壁部58の対向面、及び、対向する床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38との対向面が、互いに平行に配置されているため、対向する各床部材52の周壁部58の対向面積、及び、対向する床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38との対向面積が、確実に大きくなり、対向する各床部材52の周壁部58により構成されるコンデンサ、及び、対向する床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38とにより構成されるコンデンサのインピーダンスを確実に小さくすることができる。これにより、隣設された各床部材52間、及び、隣設された床部材52と当該電磁波シールド層38との間からの電磁波の漏洩を確実かつ効果的に低減することができる。
【0050】
しかも、対向する各床部材52の周壁部58間の間隔D、及び、対向する床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38との間の間隔が、可能な限り小さくされる(例えば3mm以下にされる)と共に、対向する各床部材52の周壁部58の対向面の幅E、及び、対向する床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38との対向面の幅が、可能な限り大きくされている(例えば15mm以上50mm以下より好ましくは30mm以下にされている)。このため、対向する各床部材52の周壁部58により構成されるコンデンサ、及び、対向する床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38とにより構成されるコンデンサのインピーダンスを確実に小さくすることができ、隣設された各床部材52間、及び、隣設された床部材52と当該電磁波シールド層38との間からの電磁波の漏洩を確実かつ効果的に低減することができる。
【0051】
なお、本実施例では、対向する各床部材52の周壁部58間、及び、対向する床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38との間に、誘電体としての空気が配置された構成としたが、対向する各床部材52の周壁部58間、及び、対向する床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38との間に、空気以外の誘電体が配置された構成としてもよい。これにより、対向する各床部材52の周壁部58により構成されるコンデンサ、及び、対向する床部材52の周壁部58と当該電磁波シールド層38とにより構成されるコンデンサのインピーダンスを一層小さくすることができ、隣設された各床部材52間、及び、隣設された床部材52と当該電磁波シールド層38との間からの電磁波の漏洩を一層効果的に低減することができる。
【0052】
(第2実施例)
図7には、本発明の第2実施例に係る床構造70が断面図にて示されている。
【0053】
本実施例に係る床構造70は、上記第1実施例と同様に、オフィスビル等の建築物の所謂OAフロアに適用されて、床スラブ32、複数の側壁34(電磁波シールド層38を含む)、室内36及び複数の支持脚40を備えている。
【0054】
床構造70では、支持脚40が支持部材を構成している。図8に示す如く、複数の支持脚40の支持軸46上には、上記第1実施例の複数の上端板48(位置決め部材50を含む)に代えて、第2床部材としての平面視格子状の格子枠72が固定されており、格子枠72は格子線に沿って配置されている。また、格子枠72の露出された外面は、阻止部材及び誘電体としての導電性を有しない塗料(図示省略)によって塗装されている。
【0055】
側壁34に隣設されない部分における格子枠72は、断面コ字状にされて下方に開放されている。側壁34に隣設された部分における格子枠72は、断面L字状にされて当該側壁34に対向しており、当該格子枠72は、側壁34下端近傍の露出された電磁波シールド層38に導通されている。
【0056】
格子枠72上には、第1床部材としての平面視矩形状の床部材74が複数支持されており、床部材74の周面は格子線に沿って配置されて、複数の床部材74が室内36の床部分を構成すると共に、複数の床部材74の下方に床スラブ32との間において空間54が形成されている。
【0057】
図9に詳細に示す如く、床部材74は、略長方体形容器状の外壁76を有しており、外壁76の内部にはモルタル78が充填されている。外壁76はスチール製にされて導電性を有しており、外壁76(床部材74)の外面は、阻止部材及び誘電体としての導電性を有しない塗料(図示省略)によって塗装されている。これにより、床部材74の外壁76と格子枠72とは、格子枠72の外面及び外壁76の外面の塗料によって導通されていない。さらに、隣設された床部材74の外壁76と格子枠72とは、互いに平行に配置されて対向しており、対向する床部材74の外壁76と格子枠72との間の間隔Fは、可能な限り小さくされて、例えば3mm以下にされている。また、対向する床部材74の外壁76と格子枠72との対向面の幅Gは、可能な限り大きくされて、例えば15mm以上30mm以下にされている。
【0058】
複数の床部材74上には、絨毯62が敷かれおり、絨毯62は複数の床部材74上から取り外し可能にされた構成である。
【0059】
次に、本実施例の作用を説明する。
【0060】
以上の構成の床構造70では、複数の支持脚40上に室内36の床部分を構成する複数の床部材74が支持されており、室内36の下方には空間54が形成されている。また、床部材74に外壁76が設けられると共に、複数の支持脚40の上端に格子枠72が設けられている。
【0061】
ここで、隣設された床部材74の外壁76と支持脚40の格子枠72とが導通されない状態で対向することで、対向する外壁76と格子枠72との対向面積を大きくしている。
【0062】
このため、対向する外壁76と格子枠72とにより構成されるコンデンサのインピーダンス(抵抗)を小さくすることができ、隣設された床部材74と支持脚40との間からの電磁波の漏洩を効果的に低減することができる。これにより、特別な電磁波シールド部材を使用する必要をなくすことができ、このため、低コスト化を図ることができ、かつ、簡単な工法で電磁波をシールド可能な床構造70を構築することができると共に、簡単に(絨毯62を取り外すのみで)床部材74を取り外して空間54を開放させることができる。
【0063】
また、格子枠72の露出外面及び床部材74の外壁76外面における塗料によって、隣設された床部材74と支持脚40との間の導通が阻止されるため、対向する外壁76と格子枠72との間の導通を確実に防止することができる。
【0064】
さらに、対向する外壁76と格子枠72との対向面が互いに平行に配置されているため、対向する外壁76と格子枠72との対向面積が確実に大きくなり、対向する外壁76と格子枠72とにより構成されるコンデンサのインピーダンスを確実に小さくすることができる。これにより、隣設された床部材74と支持脚40との間からの電磁波の漏洩を確実かつ効果的に低減することができる。
【0065】
また、対向する外壁76と格子枠72との間に空気以外の誘電体である上記各塗料が配置されている。これにより、対向する外壁76と格子枠72とにより構成されるコンデンサのインピーダンスを一層小さくすることができ、隣設された床部材74と支持脚40との間からの電磁波の漏洩を一層効果的に低減することができる。
【0066】
さらに、対向する外壁76と格子枠72との間の間隔Fが可能な限り小さくされる(例えば3mm以下にされる)と共に、対向する外壁76と格子枠72との対向面の幅Gが可能な限り大きくされている(例えば15mm以上30mm以下にされている)。このため、対向する外壁76と格子枠72とにより構成されるコンデンサのインピーダンスを確実に小さくすることができ、隣設された床部材74と支持脚40との間からの電磁波の漏洩を確実かつ効果的に低減することができる。
【0067】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、こうした実施例に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の電磁波シールド原理が適用された電磁波シールド構造を示す断面図である。
【図2】本発明の電磁波シールド原理が適用された電磁波シールド構造において誘電率が1.0F/mの誘電体が対向部間の隙間に挿入された場合における対向部間の間隔と対向部間の隙間の電磁波シールド性能との関係の実験結果を示すグラフであり、(A)は、到来する電磁波の周波数が2.45GHzにされた場合であり、(B)は、到来する電磁波の周波数が5.2GHzにされた場合である。
【図3】本発明の電磁波シールド原理が適用された電磁波シールド構造において誘電率が4.0F/mの誘電体が対向部間の隙間に挿入された場合における対向部間の間隔と対向部間の隙間の電磁波シールド性能との関係の実験結果を示すグラフであり、(A)は、到来する電磁波の周波数が2.45GHzにされた場合であり、(B)は、到来する電磁波の周波数が5.2GHzにされた場合である。
【図4】本発明の第1実施例に係る床構造を示す断面図である。
【図5】(A)乃至(C)は、本発明の第1実施例に係る床構造における支持脚を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1実施例に係る床構造の主要部を示す断面図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る床構造を示す断面図である。
【図8】本発明の第2実施例に係る床構造における支持脚を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2実施例に係る床構造の主要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0069】
30 床構造
36 室内
38 電磁波シールド層(第2対向部材)
40 支持脚(支持部材)
50 位置決め部材(阻止部材)
52 床部材(第1床部材または第2床部材)
54 空間
58 周壁部(第1対向部材または第2対向部材)
70 床構造
72 格子枠(第2対向部材)
74 床部材
76 外壁(第1対向部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有し、下方に空間が形成される室内の床部分を構成する第1床部材の端部に設けられた第1対向部材と、
導電性を有し、前記第1導電部材に導通されない状態で前記第1導電部材に対向する第2対向部材と、
を備えた床構造。
【請求項2】
前記第2対向部材は、前記室内の床部分を構成する第2床部材の端部に設けられた、ことを特徴とする請求項1記載の床構造。
【請求項3】
導電性を有し、室内の床部分を構成する床部材に設けられた第1対向部材と、
導電性を有し、前記床部材を支持する支持部材に設けられると共に、前記第1対向部材に導通されない状態で前記第1対向部材に対向する第2対向部材と、
を備えた床構造。
【請求項4】
前記第1対向部材と前記第2対向部材との導通を阻止する阻止部材を備えた、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の床構造。
【請求項5】
前記第1対向部材と前記第2対向部材とを互いに略平行に配置した、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の床構造。
【請求項6】
前記第1対向部材と前記第2対向部材との間に誘電体を設けた、ことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項記載の床構造。
【請求項7】
前記第1対向部材の前記第2対向部材との対向面及び前記第2対向部材の前記第1対向部材との対向面の幅を15mm以上にすると共に、前記第1対向部材と前記第2対向部材との間隔を3mm以下にした、ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項記載の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−37457(P2006−37457A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217327(P2004−217327)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】