説明

床開口部の補強装置

【課題】開口部を補強して建物の強度を向上させ得るとともに、建物の火災時、下階で生じた炎が上階へ早い時間で到達してしまうのを抑制することができる床開口部の補強装置を提供する。
【解決手段】下階とその上の上階を有した建物に配設された床開口部の補強装置であって、下階と上階との間で開口した開口部1の縁部に沿って配設された骨組材から成り、当該開口部1を補強する補強手段2と、該補強手段2に配設され、建物の下階と上階とを遮蔽し得る遮蔽手段としてのシャッター3と、建物の何れかの部位に配設され、火災を検知する火災検知手段4と、該火災検知手段4にて火災が検知されるとシャッター3を動作させて下階と上階とを遮蔽させる制御手段5とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下階(例えば1階)とその上の上階(2階)を有した建物に配設された床開口部の補強装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2階建て住宅等の建物は、通常、1階の天井と2階の天井との間が貫通した吹き抜け構造、或いは1階から2階へ通じる階段が形成された箇所等のように、1階と2階との間で開口した開口部を有している。即ち、1階(下階)と2階(上階)との間には、開口部が形成されて、人の行き交い(特に階段部)や意匠性の向上(特に吹き抜け構造)等が図られているのである。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の建物においては、下階と上階との間で開口した開口部を有するため、その分剛性が低下して、建物自体の強度が低下してしまうという不具合があるとともに、建物の火災時、開口部により下階で生じた炎が上階へ早い時間で到達し、延焼速度を不用意に速めてしまうという問題があった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、開口部を補強して建物の強度を向上させ得るとともに、建物の火災時、下階で生じた炎が上階へ早い時間で到達してしまうのを抑制することができる床開口部の補強装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、下階とその上の上階を有した建物に配設された床開口部の補強装置であって、前記下階と上階との間で開口した開口部の縁部に沿って配設された骨組材から成り、当該開口部を補強する補強手段と、該補強手段に配設され、前記建物の下階と上階とを遮蔽し得る遮蔽手段と、建物の何れかの部位に配設され、火災を検知する火災検知手段と、該火災検知手段にて火災が検知されると前記遮蔽手段を動作させて前記下階と上階とを遮蔽させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の床開口部の補強装置において、前記遮蔽手段は、前記補強手段に取り付けられて電動で駆動可能とされ、前記火災検知手段で火災が検知されると前記開口部を閉塞して前記下階と上階とを遮蔽し得るシャッターから成ることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の床開口部の補強装置において、前記補強手段に沿って前記シャッターを案内する案内レールが形成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の床開口部の補強装置において、前記火災検知手段は、雰囲気温度を検知して火災を検知するセンサから成り、少なくとも建物内の何れかの部位、及び建物の外壁面に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、補強手段が開口部の縁部に沿って配設されたので、当該開口部を補強して建物の強度を向上させ得るとともに、火災の検知により遮蔽手段が建物の下階と上階とを遮蔽し得るので、建物の火災時、下階で生じた炎が上階へ早い時間で到達してしまうのを抑制することができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、遮蔽手段は、補強手段に取り付けられて電動で駆動可能とされ、火災検知手段で火災が検知されると開口部を閉塞して下階と上階とを遮蔽し得るシャッターから成るので、建物の火災時、下階で生じた炎が上階へ早い時間で到達してしまうのをより確実に抑制することができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、補強手段に沿ってシャッターを案内する案内レールが形成されたので、汎用的構成要素にて遮蔽手段を構成させることができ、製造コストを抑えることができるとともに、当該補強手段に対し、遮蔽手段を支持する支持機能と、シャッターを案内する案内機能とを兼ねさせることができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、火災検知手段は、雰囲気温度を検知して火災を検知するセンサから成り、少なくとも建物内の何れかの部位、及び建物の外壁面に設けられたので、確実に且つ安価に火災を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る床開口部の補強装置は、下階(例えば1階)とその上の上階(2階)を有した建物に配設されたものであり、図1〜4に示すように、建物の吹き抜け構造を構成すべく1階と2階との間で開口した開口部1に配設された補強手段2及び遮蔽手段としてのシャッター3と、火災検知手段4と、マイコン等から成る制御手段5と、モータMとから主に構成されている。
【0014】
補強手段2は、図1に示すように、開口部1の縁部(開口縁部)に沿って配設された骨組材から成り、当該開口部1を補強するためのものであり、例えば硬質の木材や鉄骨材等を用いることができる。具体的には、木材や鉄骨材などの骨組材を、汎用的な接続手段(ボルトなど)を用いて開口部1の縁部に沿って固定させ、当該開口部1における剛性を向上させ、建物自体の強度を向上させている。
【0015】
シャッター3は、補強手段2に配設され、建物の下階(1階)と上階(2階)とを遮蔽し得るものであり、モータMにて電動で駆動可能とされ、後述する火災検知手段4で火災が検知されると開口部1を閉塞して下階(1階)と上階(2階)とを遮蔽し得るよう構成されている。このシャッター3は、補強手段2に沿って形成された案内レール6にて案内されつつ動作(開口部1の開閉動作)し得るよう構成されている。
【0016】
火災検知手段4は、雰囲気温度を検知して火災を検知するセンサから成り、少なくとも建物内の何れかの部位、及び建物の外壁面(好ましくは4方に臨んだそれぞれの壁面の全て)に設けられたものである。このうち建物内の火災検知手段4は、建物の居住空間(好ましくは火を扱う台所等)に設けられ、例えば部屋の天井に設置されているのが好ましい。このように、火災検知手段4は、雰囲気温度を検知して火災を検知するセンサから成り、少なくとも建物内の何れかの部位、及び建物の外壁面に設けられたので、確実に且つ安価に火災を検知することができる。
【0017】
上記火災検知手段4は、制御手段5と電気的に接続されている。かかる制御手段5は、シャッター3を駆動させるモータMと電気的に接続されており、火災検知手段4にて火災が検知されるとシャッター3を動作(案内レール6に沿って摺動)させて下階(1階)と上階(2階)とを遮蔽させるためのものである。即ち、モータMが駆動することにより、シャッター3が案内レール6に沿って摺動し、開口部1を塞ぐよう構成されているのである。
【0018】
上記実施形態によれば、補強手段2が開口部1の縁部に沿って配設されたので、当該開口部1を補強して建物の強度を向上させ得るとともに、火災検知手段4による火災の検知により遮蔽手段としてのシャッター3が建物の下階(1階)と上階(2階)とを遮蔽し得るので、建物の火災時、下階で生じた炎が上階へ早い時間で到達してしまうのを抑制することができる。特に、本実施形態における遮蔽手段は、補強手段2に取り付けられて電動で駆動可能とされ、火災検知手段4で火災が検知されると開口部1を閉塞して下階(1階)と上階(2階)とを遮蔽し得るシャッター3から成るので、建物の火災時、下階で生じた炎が上階へ早い時間で到達してしまうのをより確実に抑制することができる。
【0019】
また、補強手段2に沿ってシャッター3を案内する案内レール6が形成されたので、汎用的構成要素にて遮蔽手段を構成させることができ、製造コストを抑えることができるとともに、当該補強手段2に対し、遮蔽手段としてのシャッター3を支持する支持機能と、シャッター3を案内する案内機能とを兼ねさせることができる。尚、シャッター3及び案内レール6の補強手段2に対する支持は、他の形態によるものであってもよい。
【0020】
補強手段2及び遮蔽手段としてのシャッター3等は、下階(1階)と上階(2階)との間で開口した他の開口部(例えば図5〜7で示すように、建物の直線状に延びた階段が形成された箇所の開口部1’)に配設するよう構成してもよい。この場合であっても、火災検知手段4、制御手段5、及びモータMを具備させ、火災検知手段4による火災の検知により遮蔽手段としてのシャッター3が建物の下階(1階)と上階(2階)とを遮蔽させることができる。
【0021】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態に係る床開口部の補強装置は、上記実施形態と同様、下階(例えば1階)とその上の上階(2階)を有した建物に配設されたものであり、図8、9に示すように、建物の階段(螺旋状に延びた階段)が形成された箇所の開口部1”に適用されたものである。尚、上記実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付すこととし、それらの詳細な説明を省略する。
【0022】
本実施形態に係るシャッター3’を案内する案内レール6’は、補強手段2から下方に延びて形成されており、火災報知手段4による火災の検知により当該シャッター3’が案内レール6’に沿って下方へ摺動し得るよう構成されている。即ち、螺旋状階段が形成された箇所においては、仕切り壁部A(図8参照)により開口部1”を開閉することができないので、シャッター3’を下方へ摺動させることにより、火災時、建物の下階(1階)と上階(2階)とを遮蔽し得るようになっているのである。
【0023】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されず、例えばシャッター3(3’)に代えて他の形態の遮蔽手段(板状部材のものが移動して開口部を塞ぐ形態のものや観音開きで開閉するもの等)としてもよく、或いは建物における他の開口部に適用したものであってもよい。この開口部は、1階と2階との間で開口した部位に限らず、2階と3階など上下に隣接する上階と下階の間で開口した部位であってもよい。尚、シャッター部材を用いる場合、難燃性部材や断熱部材等から成る防火シャッターが好ましいが、他の部材から成るものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0024】
下階と上階との間で開口した開口部の縁部に沿って配設された骨組材から成り、当該開口部を補強する補強手段と、該補強手段に配設され、建物の下階と上階とを遮蔽し得る遮蔽手段と、建物の何れかの部位に配設され、火災を検知する火災検知手段と、該火災検知手段にて火災が検知されると遮蔽手段を動作させて下階と上階とを遮蔽させる制御手段とを備えた床開口部の補強装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る床開口部の補強装置の遮蔽手段等を示す模式図
【図2】図1におけるII−II線断面図
【図3】図1におけるIII−III線断面図
【図4】同床開口部の補強装置を構成する構成要素の接続状態を示す全体模式図
【図5】他の実施形態における床開口部の補強装置の遮蔽手段等を示す模式図
【図6】図5におけるVI−VI線断面図
【図7】図5におけるVII−VII線断面図
【図8】本発明の第2の実施形態に係る床開口部の補強装置の遮蔽手段等を示す模式図
【図9】図8におけるIX−IX線断面図
【符号の説明】
【0026】
1、1’、1” 開口部
2 補強手段
3、3’ シャッター(遮蔽手段)
4 火災検知手段
5 制御手段
6、6’ 案内レール
M モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下階とその上の上階を有した建物に配設された床開口部の補強装置であって、
前記下階と上階との間で開口した開口部の縁部に沿って配設された骨組材から成り、当該開口部を補強する補強手段と、
該補強手段に配設され、前記建物の下階と上階とを遮蔽し得る遮蔽手段と、
建物の何れかの部位に配設され、火災を検知する火災検知手段と、
該火災検知手段にて火災が検知されると前記遮蔽手段を動作させて前記下階と上階とを遮蔽させる制御手段と、
を備えたことを特徴とする床開口部の補強装置。
【請求項2】
前記遮蔽手段は、前記補強手段に取り付けられて電動で駆動可能とされ、前記火災検知手段で火災が検知されると前記開口部を閉塞して前記下階と上階とを遮蔽し得るシャッターから成ることを特徴とする請求項1記載の床開口部の補強装置。
【請求項3】
前記補強手段に沿って前記シャッターを案内する案内レールが形成されたことを特徴とする請求項2記載の床開口部の補強装置。
【請求項4】
前記火災検知手段は、雰囲気温度を検知して火災を検知するセンサから成り、少なくとも建物内の何れかの部位、及び建物の外壁面に設けられたことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の床開口部の補強装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−41237(P2009−41237A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206109(P2007−206109)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(597078709)滝川木材株式会社 (3)
【出願人】(303023636)
【出願人】(500468434)
【出願人】(500251973)
【出願人】(507267768)
【Fターム(参考)】