説明

座席のペットボトルホルダ

【課題】座席の部品点数や組立工数を徒に増やすことなく、容易かつ確実にペットボトルを保持することができ、座席背面の障害物とならない座席のペットボトルホルダを提供する。
【解決手段】シートバック3の背面上に、ペットボトルAが収まるように表面より凹む状態の収納凹部11を形成した。収納凹部11を、規格化された所定容量のペットボトルAが全長に亘り、該ペットボトルAの少なくとも外周略半分が収まる大きさおよび形状に形成されている。このような収納凹部11は、シートバック3の成形時に該シートバック3の外形と一緒に一体成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席のシートバックに設けられ、ペットボトルを保持するためのペットボトルホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
近年エコノミークラス症候群として知られるようになった、深部静脈血栓症は、飛行中に同じ姿勢のまま動かずにいることや、水分をとらないことが原因となって起きることが知られている。この予防のために、飛行前にあらかじめ各座席にペットボトル入りの水を配置することが考えられるが、従来ペットボトルを座席周囲に収納するためのホルダとしては、例えば、特許文献1〜3に開示されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に開示されたものは、シートバックの背面側に設けたシート状の大ポケットの内側に、表面より窪んだ小ポケットを付設したものであり、これらのポケットにペットボトルを収納することができた。
【0004】
また、特許文献2に開示されたものは、主に飲料容器を収納するための物入れであり、座席シートバックの背面に、縦方向に沿って取り付けられる横断面が波状に屈曲する縦板と水平面を有する底板とにより形成した凹窪部を設け、かつ該凹窪部の後方に向かって開口する部分の横方向に向かって伸縮自在バンドを張装して成る。
【0005】
さらに、特許文献3に開示されたものは、車両内装部材の所要位置に、基材部に各種物品に固有の形状・サイズに見合った収容保持部を形成して、これら基材部および収容保持部の外面に成形表皮材を被着し、成形表皮材における収容保持部を臨む部位に、収容した物品の外面に弾性的に係着する係着部を設けて、前記収容保持部へ物品を収容した際に、前記係着部が物品の外面に弾性的に係着することで、ガタつきが生ずることなく保持し得るよう構成した物品ホルダである。
【0006】
【特許文献1】実開昭57−52341号公報
【特許文献2】実開昭50−79128号公報
【特許文献3】特開2001−322473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1〜3に記載の何れの従来技術であっても、小物用のポケットやホルダにペットボトルを収納することは、飛行中に乱気流等で、ペットボトルがポケットやホルダにおける収納場所から飛び出して乗客にぶつかり、けがをするおそれがある等、安全上好ましくなかった。
【0008】
また、前述した特許文献2に記載の従来技術では、凹窪部に飲料容器を収めた際に、該飲料容器の外側への突出度合いが大きく、安全上問題であった。さらに、前述した特許文献3に記載の従来技術では、部品点数が多く構成が複雑であり組立工数も多く、コストアップを招くという問題があった。
【0009】
このように、従来の小物用のポケットやホルダがペットボトルの収納には不向きである事情に鑑みて、同じく座席のシートバックの背面側あるいは肘掛け等に専用のドリンクホルダを別途設けることも行われていたが、専用部品の後付けでは部品点数が多くなり組立工数が増大し、座席製造に係わるコストアップの要因となるという新たな問題が発生していた。
【0010】
本発明は、以上のような従来技術が有する問題点に着目してなされたもので、座席の部品点数や組立工数を徒に増やすことなく、容易かつ確実にペットボトルを保持することができ、座席背面の障害物とならない座席のペットボトルホルダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
[1]座席(1)のシートバック(3)に設けられ、ペットボトル(A)を保持するためのペットボトルホルダ(10)であって、
前記シートバック(3)の背もたれ面以外の表面上に、ペットボトル(A)が収まるように、シートバック(3)の表面より凹む状態で収納凹部(11)を形成したことを特徴とする座席(1)のペットボトルホルダ(10)。
【0012】
[2]前記収納凹部(11)を、規格化された所定容量のペットボトル(A)が全長に亘り、該ペットボトル(A)の少なくとも外周略半分が収まる大きさおよび形状に形成したことを特徴とする[1]に記載の座席(1)のペットボトルホルダ(10)。
【0013】
[3]前記収納凹部(11)を、前記シートバック(3)の成形時に該シートバック(3)の外形と一緒に一体成形したことを特徴とする[1]または[2]に記載の座席(1)のペットボトルホルダ(10)。
【0014】
前記本発明は次のように作用する。
前記[1]に記載の座席(1)のペットボトルホルダ(10)は、シートバック(3)の背もたれ面以外の表面上に、ペットボトル(A)が収まる収納凹部(11)を形成するだけで、部品点数や組立工数が増えることなく簡易に構成することができる。ここで収納凹部(11)は、ペットボトル(A)が収まるようにシートバック(3)の表面より凹む状態に形成される。
【0015】
収納凹部(11)は、例えば前記[2]に記載したように規格化された所定容量のペットボトル(A)が全長に亘り、該ペットボトル(A)の少なくとも外周略半分が収まる大きさおよび形状に形成すれば良い。より具体的には、一般に携帯される大きさの市販の500mlペットボトル(A)が、その外周方向の全部ないし一部がはまる程度に、シートバック(3)の背面ないし側面の表面より内側に窪む形状に形成すれば良い。
【0016】
これにより、収納凹部(11)に挿入されたペットボトル(A)は、収納凹部(11)自体の窪む形状によって横方向の動きが規制されることによって、収納凹部(11)にはまる方向へしっかりと押さえ付けられるから、ペットボトル(A)を安定して保持することができる。また、ペットボトル(A)は、シートバック(3)の表面側より大きく出っ張って障害物となることもない。さらに、収納凹部(11)の開口よりペットボトル(A)の存在を容易に確認することができる。
【0017】
さらに、前記[3]に記載のペットボトルホルダ(10)によれば、前記収納凹部(11)を、シートバック(3)の成形時に該シートバック(3)の外形と一緒に一体成形することにより、前記収納凹部(11)を形成するに際して、新たな工具や部品、それに工数を発生させることなく、コストアップを招くことなく極めて簡易に製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る座席のペットボトルホルダによれば、部品点数や組立工数を徒に増やすことなくコスト低減が可能であり、ペットボトルを容易かつ確実に保持することができて使い勝手に優れ、高い安全性も確保することができる。
【0019】
また、前記収納凹部を、シートバックの成形時に該シートバックの外形と一緒に一体成形することにより、前記収納凹部を形成するに際して、新たな工具や部品、それに工数を発生させることなく、極めて簡易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明を代表する実施の形態を説明する。
図1〜図3は本発明の一実施の形態を示している。
本実施の形態に係る座席1のペットボトルホルダ10は、シートバック3の背面側に設けられ、ペットボトルAを保持するための構造である。ここで座席1とは、バスや鉄道等の車両や、船舶、航空機等を含む各種乗物に装備される座席1の他、劇場や映画館等に装備される座席1をも含む概念とする。
【0021】
図1に示すように、ペットボトルホルダ10の設置対象である座席1は、フロア上に据え付けられるシートクッション2と、その後端より斜め後方に立ち上がるシートバック3とから成る。ここでシートバック3とは、傾動角度を調整可能に支持するようにしても良い。シートバック3の下部両側には、それぞれ前方に向けて伸びる一対のアームレスト4,4も支持されている。
【0022】
シートクッション2は、図示省略したフレーム材で発泡ウレタン等により所定形状に成形したクッション体を保形し、該クッション体の表面を表生地で被覆して成る。シートバック3も同様に、図示省略したフレーム材で発泡ウレタン等により所定形状に成形したクッション体を保形し、該クッション体の表面を表生地で被覆して成るが、背もたれ面の反対側である背面側には、所定の位置にペットボトルホルダ10を成す収納凹部11が形成されている。
【0023】
収納凹部11は、ペットボトルAが縦方向に収まるように、シートバック3の表面より凹む状態で上下方向に延びるように形成されている。収納凹部11の側面開口12は、ペットボトルAの外周の一部を露出させた状態で、両側縁がペットボトルAの外周に沿って迫り出して弾発的に圧着挟持する形状となっている。このような収納凹部11は、詳しくは後述するが、シートバック3を成すクッション体の成型時に、該クッション体の外形の一部として同時に一体成形される。
【0024】
図2,図3に示すように、前記収納凹部11は、規格化された所定容量のペットボトルAが全長に亘って、立てた状態で埋め込まれるように収まる大きさおよび形状に形成されている。ここでペットボトルAは、本実施の形態では一般に携帯される大きさで市販されている飲料水や清涼飲料、茶、コーヒー等の各種飲料を密封した500mlペットボトルを想定している。もちろん、同程度の大きさに規格化されているボトル缶、あるいは缶等の収納容器であってもかまわない。
【0025】
次に、ペットボトルホルダ10の作用について説明する。
図1において、ペットボトルホルダ10は、座席1のシートバック3の背面側に、ペットボトルAが縦方向に収まるように凹む状態で上下方向に延びる収納凹部11を形成することにより、部品点数や組立工数が増えることなく簡易に設けることができる。
【0026】
前記シートバック3のクッション体の成形は、切り出し成形でも良く、成形型を用いても良い。何れの成型法にせよ、前記収納凹部11は、シートバック3の外表面の形状の一部として容易に成形可能である。従って、ペットボトルホルダ10を設けるに際して、新たな部品や工数が増大することもなく、極めて簡易に設けることが可能となる。
【0027】
図2,図3に示すように、収納凹部11には、その側面開口12よりペットボトルAを容易に挿入したり取り出すことができる。この側面開口12は、ペットボトルAの外周の一部を露出させた状態で、両側縁がペットボトルAの外周に沿って迫り出して弾発的に圧着挟持する。
【0028】
これにより、収納凹部11に挿入されたペットボトルAは、収納凹部11自体の窪む形状によって、安定した状態で横方向にも縦方向にもずれないように確実に保持することができる。また、ペットボトルAは収納凹部11に埋め込まれるように収納されるため、シートバック3の背面側より出っ張って障害物となることもない。さらに、側面開口12からペットボトルAの存在を容易に確認することができる。しかも、収納凹部11を設けたシートクッション2のクッション体の素材の特質により、結果として保温や衝撃吸収にも優れる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は前述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、収納凹部11を設ける部位は、シートバック3の背面側における図示した位置に限定されるものではなく、シートバック3の背面側であれば、他の任意の位置に設けるようにしても良い。
【0030】
また、前記収納凹部11は、シートバック3の表面より内側に窪む形状であって、ペットボトルAが立てた状態でその外周方向の少なくとも半分以上がはまる程度に設定すれば良く、ペットボトルAのほぼ外周全体が収まる深さ(図3参照)よりも、もっと浅くすることでペットボトルAの外周略半分が収まる深さに形成しても良い。もちろん、収納対象とするペットボトルAも市販の500mlペットボトルに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態に係る座席のペットボトルホルダを設けた座席を背面側から観た斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る座席のペットボトルホルダを示す縦断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る座席のペットボトルホルダを示す横断面図である。
【符号の説明】
【0032】
A…ペットボトル
1…座席
2…シートクッション
3…シートバック
4…アームレスト
10…ペットボトルホルダ
11…収納凹部
12…側面開口
13…底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席のシートバックに設けられ、ペットボトルを保持するためのペットボトルホルダであって、
前記シートバックの背もたれ面以外の表面上に、ペットボトルが収まるように、シートバックの表面より凹む状態で収納凹部を形成したことを特徴とする座席のペットボトルホルダ。
【請求項2】
前記収納凹部を、規格化された所定容量のペットボトルが全長に亘り、該ペットボトルの少なくとも外周略半分が収まる大きさおよび形状に形成したことを特徴とする請求項1に記載の座席のペットボトルホルダ。
【請求項3】
前記収納凹部を、前記シートバックの成形時に該シートバックの外形と一緒に一体成形したことを特徴とする請求項1または2に記載の座席のペットボトルホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−142307(P2008−142307A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332910(P2006−332910)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】