説明

座席シート用サスペンション

【課題】オートレベリングと上下調整の座席シート用サスペンション。
【解決手段】ロアフレーム11、アッパフレーム12、交差リンク13a、エアータンク、第1給気側弁17、第1排気側弁18、一方のリンク部材21に枢着されたアーム部材22、アーム部材22の係止手段23と解除手段25、他方のリンク部材27に設けられ、給気制御用カム31、排気制御用カム32、第2給気側弁35、第2排気側弁36とを備え、アッパフレーム12が設定した高さより所定の距離だけ下降したときはアーム部材22が給気制御用カム31を介して第1給気側弁17を開き、所定の距離だけ上昇したときは排気制御用カム32介して第1排気側弁18を開くことにより設定高さ位置に保持し、アーム部材22の係止を解除し、第2給気側弁35又は第2排気側弁36の開閉により所定の高さ位置に予め設定する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートレベリング機能と所定の高さに調整する上下調整装置とを併せ持つ座席シート用サスペンションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の運転や搭乗を快適に行うためには、座席シートの高さを所望の位置に設定し、維持することが必要となる。この座席シートを支持する装置としては、クッション性や機械構成に利点のあるエアサスペンションが使用されている。エアサスペンションは装置構成として優れたものであるが、体重の異なる乗員が使用しても座席シートの高さを一定にするには所定の工夫が必要になってくる。
【0003】
このため座席シートのクッション性及び所望の高さを維持するためのオートレベリング装置が各種提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の装置は、オートレベリングシートサスペンションの上下伸縮位置を検知するものであり、具体的には、シートサスペンションにおける傾斜リンクのシャフトに固定されたピンにカムを係合させ、ピンのほぼ水平方向変位及び回動によりカムの変位位置をそれだけ増大させて、上下伸縮位置を検出するようにしたものである。このようにすることで上下伸縮位置を正確に検知することが可能となり、座席シートのオートレベリングを容易にしたものである。
【特許文献1】特許第3145604
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1によれば、オートレベリング装置必要な上下伸縮位置の検出が可能となったが、所望の座席シートの高さに設定する上下調整が提供されていない。この上下調整装置を別途設けることは可能であるが、座席シートのサスペンションが複雑な装置構成となってしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、装置構成が簡単な、オートレベリング機能と所定の高さに調整する上下調整機能とを併せ持つ座席シート用サスペンションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、サスペンションを構成する交差リンクに、アーム部材を係止させ、このアーム部材を交差リンクの回動方向により、エアータンクへの給気と排気とを制御する構造に工夫を加えることによって、前記課題の解決を図ったものである。
【0008】
すなわち、前記目的を達成するために本発明が提案するものは、オートレベリング機能と所定の高さに設定する位置調整機能とを併せ持つ座席シート用サスペンションであって、
床面に設置されるロアフレームと、座席シートの下部に設けられるアッパフレームと、
前記ロアフレームと前記アッパフレームとの間を左右両面でそれぞれ支持する、中心部で枢着された交差リンクと、前記ロアフレームに設置され前記サスペンションを給気と排気により上下方向に移動させるエアータンクと、該エアータンクに給気する第1の給気管路を開閉する第1の給気側弁と、前記エアータンクから排気する第1の排気管路を開閉する第1の排気側弁と、左右のうち何れか一つの交差リンクを形成する一方のリンク部材の前記中心部において枢着されたアーム部材と、該アーム部材を前記一方のリンク部材に係止する係止手段と、該係止手段による前記係止を解除する解除手段と、前記一方のリンク部材と交差する他方のリンク部材に設けられ、前記第1の給気側弁の開閉を制御する給気制御用カム及び、前記第1の排気側弁の開閉を制御する排気制御用カムと、前記エアータンクに給気する第2の給気管路を開閉する第2の給気側弁と、前記エアータンクから排気する第2の排気管路を開閉する第2の排気側弁とを備え、前記アッパフレームが予め設定した高さより所定の距離だけ下降したときはその下降に伴う前記一方のリンク部材の回動により前記アーム部材が前記給気制御用カムに当接して前記第1の給気側弁を開き、前記アッパフレーム12が予め設定した高さより所定の距離だけ上昇したときはその上昇に伴う前記一方のリンク部材の回動により前記アーム部材が前記排気制御用カムに当接して前記第1の排気側弁を開くことにより前記座席シートを設定された高さ位置に保持し、また前記解除手段により前記一方のリンク部材に対するアーム部材の係止を解除するとともに、前記第2の給気側弁の開閉または前記第2の排気側弁の開閉により前記エアータンクの圧力を変動させて前記座席シートを所定の高さ位置に設定する、ことを特徴とする座席シート用サスペンションである。
【0009】
上記構成にすることで、乗員が座席シートに着座し、その体重が座席シートに加わると、アッパフレームとロアフレームとの間を支持する交差リンクが収縮するように移動する。このとき交差リンクの一方のリンク部材に係止されたアーム部材は回動し、前記給気制御用カムに当接して前記第1の給気側弁を開き、エアータンクに給気する。
【0010】
この給気によるエアータンクの内圧上昇によってサスペンションが上昇するが、これに伴う交差リンク上昇による回動によってアーム部材の給気制御用カムへの当接が解除され、前記第1の給気側弁が閉じられてエアータンクへの給気が停止される。
【0011】
すなわち給気側弁を閉じた後に、着座乗員の体重とエアータンクの内圧が平衡し、サスペンションの上方への反転移動は停止し、乗員の体重差には関係なくサスペンションの高さは一定に保持されることになる。
【0012】
また乗員が座席シートから離れると、その体重による荷重が除去され、乗員の体重と平衡状態を保っていたエアータンクの内圧によりアッパフレームとロアフレームとの間に設けられた交差リンクが上方へ移動してサスペンションが上昇する。
【0013】
このとき交差リンクの一方のリンク部材に係止されたアーム部材は回動し、前記排気制御用カムに当接して前記第1の排気側弁を開き、エアータンクから排気する。
【0014】
エアータンクの内圧減少によってサスペンションが下降するが、交差リンク降下によるアーム部材の回動により排気制御用カムへの当接が解除され、前記第1の排気側弁を閉じてエアータンクへの排気が停止され、乗員の体重差には関係なくサスペンションの高さは一定に保持される。
【0015】
上記したように乗員が着座したり、座を離れたときでも、エアークッションの快適性を維持しつつ座席高さを一定に保つ、オートレベリング機能を発揮することができる。
【0016】
また前記解除手段により前記一方のリンク部材に対するアーム部材の係止を解除するとともに、前記第2の給気側弁の開閉または前記第2の排気側弁の開閉により前記エアータンクの圧力を変動させることで、座席シートを所定の高さ位置に予め設定することが可能となる。すなわち一方のリンク部材に対するアーム部材の係止を解除することで、オートレベリング機能を停止することができるので、第2の給気側弁の開閉または第2の排気側弁の開閉によってエアータンク内の圧力を変動させることで座席シートを上下させて、所定の高さに予め定め、これを基準高さとすることができる。
【0017】
また前記アーム部材はその先端に回動可能なローラー部材が設けられ、該ローラー部材の回動面が前記給気制御用カム又は前記排気制御用カムに当接して、前記第1の給気側弁又は前記第1の排気側弁を開くようにできる。回動可能なローラー部材による当接によってカムによる弁の開閉が円滑になされることになる。
【0018】
そして前記ローラー部材の回動面は、前記給気制御用カム及び前記排気制御用カムにそれぞれ設けられた曲面に当接して、前記第1の給気側弁の開閉及び前記第1の排気側弁の開閉を行ようにすることができる。
【0019】
さらに前記アッパフレームが予め設定した高さ位置付近にあるときは、前記ローラー部材の回動面が、前記給気制御用カム及び前記排気制御用カム前記曲面とは非接触となるように、前記給気制御用カム及び前記排気制御用カムにそれぞ凹部が設けられ、前記ローラー部材の回動面は前記凹部に対向する位置におかれるようにする。
【0020】
予め設定した位置、すなわち座席シートが基準位置にあるときは、前記ローラー部材の回動面が、前記給気制御用カム及び前記排気制御用カム前記曲面とは非接触となるようにしてエアータンクへの給排を停止するようにする。これにより上下動する無用なシーソ運動を防止することができる。
【0021】
また前記解除手段により前記一方のリンク部材に対するアーム部材の係止を解除して前記座席シートを所定の高さ位置に設定するときに、前記ローラー部材の回動面が前記曲面に接触することを防止するために、前記凹部と前記曲面との境界に突起壁を形成してなることが好ましい。
【0022】
オートレベリン機能を一時停止させて、座席シートの高さ設定すなわち基準高さ設定を行うようにしたものである。
【0023】
また前記係止手段は、前記一方のリンク部材に取付けられた弾性部材と、前記一方のリンク部材の表面をスライド可能に取付けられたロック片部材とを有してなり、前記弾性部材による弾性力によって前記ロック片部材の先端を前記アーム部材に形成された凹凸部に噛み合わせて係止するようにすることができる。
【0024】
そして前記解除手段は、前記ロック片部材に接続された線状部材と、この線状部材の延長部に設けられた把持部とを有してなり、該把持部の牽引操作により前記ロック片部材と前記アーム部材との前記噛み合わせを離すことで前記係止を解除することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、エアータンクへの給気と排気を制御する簡便な構成により、オートレベリング機能と所定の高さに調整する位置調整機能とを併せ持つ座席シート用サスペンションを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0027】
図1は本発明に係る座席シート用サスペンションの平面図、図2は図1のA−A側面図である。
【0028】
図1、図2に示すように、本発明に係る座席シート用サスペンションは、主として床面に設置されるロアフレーム11と、ロアフレーム11の上部に位置しかつ座席シート(図示せず)の下部に設けられるアッパフレーム12と、ロアフレーム11とアッパフレーム12との間を左右両面でそれぞれ支持する、中心部で枢着された交差リンク13a、13bと、ロアフレーム11に設置され交差リンク13a及び13bを給気と排気により上下方向に移動させる昇降式のエアータンク15と、エアータンク15に給気するエアーの管路を開閉する第1の給気側弁17と、エアータンク15からエアーを排気する第1の排気側弁18と、一の交差リンク13aを形成する一方のリンク部材21の中心部において枢着されたアーム部材22と、アーム部材22を一方のリンク部材21に係止する係止手段23と、係止手段23による係止を解除する解除手段25と、一方のリンク部材21と交差する他方のリンク部材27に設けられ、第1の給気側弁17の開閉を制御する給気制御用カム31及び、第1の排気側弁18の開閉を制御する排気制御用カム32と、エアータンク15に給気するエアーの管路を開閉する第2の給気側弁35(不図示、後述する図3に記載)と、エアータンク15からエアーを排気する第2の排気側弁36(不図示、後述する図3に記載)とを備えて構成されている。
【0029】
交差リンク13a、13bはそれぞれ、サスペンションの左右に設けられ、ロアフレーム11とアッパフレーム12とを支持するものである。交差リンク13aは、一方のリンク部材21と他方のリンク部材27とがそれぞれ中心付近で交差して回動可能に取り付けられ、X字形状を形成している(交差リンク13bも同様である)。一方のリンク部材21及び他方のリンク部材27は、長手方向に延びる板状の部材であり、交差位置20で枢着されている。この交差位置20が交差リンク13(13a、13bの総称として使用)の回動中心である。
【0030】
この交差位置20には、アーム部材22が交差リンク13と同軸に枢着されているが、後述するようにアーム部材22は係止手段23により一方のリンク部材21に係止されている。そのためアーム部材22は、一方のリンク部材21とともに回動するようになっている。
【0031】
アーム部材22は、2枚の板状部材を重ねて固着し略山形形状(逆V字形状)に形成されたもので、その中心付近が前記したように一方のリンク部材21に枢着されている。 アーム部材22の端部のうち一方のリンク部材21側は、端面が凹凸に形成されている。またアーム部材22の端部のうち他方のリンク部材27側には回動可能なローラ部材37が枢着されている。なお他の交差リンクbには、ショックアブソーバ19が取付けられている。
【0032】
図9はエアータンク15の概要を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は平面図、(c)は斜視図である。図9に示すように、エアータンク15は、上蓋部51と、下蓋部52と、これらの間に位置するゴム製のベローズ53とを備えてなるものであり、上蓋部51の中心にはエア流通口54が設けられている。このエア流通口54からエアータンク15の内部へ空気が供給され、または排気されることでベローズ53が伸縮し、接続部材55を介して交差リンク13(13a、13b)を回動させ、サスペンションの上下動を行うようになっている。
【0033】
一方のリンク部材21には、アーム部材22を一方のリンク部材21に係止する係止手段23が設けられている。この係止手段23は、図2に示すように、一方のリンク部材21に取付けられた弾性部材のスプリング部材24と、一方のリンク部材21の表面をスライド可能に取付けられた長手方向に延びる薄板状のロック片部材29とを有してなるものである。そしてスプリング部材24の弾性力によって一端が押圧されたロック片部材29の他端である先端をアーム部材22に形成された凹凸部に噛み合わせて係止させるようになっている。
【0034】
解除手段25は、ロック片部材29の一端に接続された線状部材33と、この線状部材33の延長部に設けられた把持部34(図示せず)とを有してなるものである。把持部34の牽引操作によりロック片部材29とアーム部材22との噛み合わせを離すことで係止を解除するようにしたものである。把持部34は線状部材33を延長して乗員による牽引操作が容易となる位置に設けられている。
【0035】
他方のリンク部材27には、エアータンク15に給気するエアーの管路を開閉する第1の給気側弁17と、エアータンク15からエアーを排気する第1の排気側弁18とを有する給排弁ユニット38が取り付けらている。
【0036】
そして他方のリンク部材27にはさらに、第1の給気側弁17の開閉を制御する給気制御用カム31及び、第1の排気側弁18の開閉を制御する排気制御用カム32とがそれぞれ取り付けられている。給気制御用カム31と排気制御用カム32とは同軸で他方のリンク部材27に枢着されている。この同軸の枢着部分はワッシャー41で締め付け可能になっている。
【0037】
給気制御用カム31と排気制御用カム32には、それぞれ曲面42、43が設けられ、この曲面42、43にアーム部材22のローラー部材37の回動面が回当接することで、給気制御用カム31と排気制御用カム32とを押圧し、第1の給気側弁17と第1の排気側弁18との開閉を行うようになっている。
【0038】
アッパフレーム12が基準の高さにあるときに、ローラー部材37による給気制御用カム31と排気制御用カム32への作用を防止するために、給気制御用カム31と排気制御用カム32とに凹部45、46を設け、ローラー部材37の回動面が凹部45、46に対向する位置、すなわち給気制御用カム31と排気制御用カム32とは非接触の状態にあるように調整するようになっている。これはオートレベリング機能発揮の際に、無用な上下シーソー運動が生じるのを防止するためである。つまりサスペンションが基準高さにあるときは、座席シートの上下移動を抑えるために、アーム部材22が給気制御用カム31及び排気制御用カム32とに非接触の状態になるようにしているものである。
【0039】
また給気制御用カム31及び排気制御用カム32の凹部45、46と曲面との境界に突起壁48、49が形成されている。これは、オートレベリン機能を一時停止させて、座席シートの高さ設定すなわち基準高さ設定のときに、ローラー部材37の回動面が給気制御用カム31及び排気制御用カム32とに非接触状態であることを維持するためのものである。詳細については位置調整機能の動作説明において併せて説明する。
【0040】
図3はエアータンク15への給排気管路図の概略図であり、エアータンク15には車載のコンプレッサー(図示)から給気されるようになっている。給気は他方のリンク部材に取付けられている給排弁ユニット38の第1の給気側弁17を介して行われ、排気は同じく第1の排気側弁18を介して外部に排気するようになっている。排気は第1の排気弁18から直接外部に排気できるようになっている。第1の給気側弁17及び第1の排気側弁18の操作は、上記したように給気制御用カム31と排気制御用カム32の押圧によって行われる。
【0041】
また高さ位置の設定、すなわち基準高さの設定の際におけるエアータンク15への給排は、給配弁ユニット39の第2の給気側弁35を介して行われ、排気は同じく第2の排気側弁36を介して外部に排気するようになっている。
【0042】
次に本発明に係る座席シート用サスペンションのオートレベリング機能の動作について図1、図2を参照して説明する。
【0043】
乗員がサスペンションへ着座しその体重が加わるとアッパフレーム12とロアフレーム11との間に設けられた交差リンク13a、13bが下方へ移動しサスペンションが下降する。
【0044】
交差リンク13a、13bの一の交差リンク13aに係止されたアーム部材22が一方のリンク部材21と共に時計方向へ回動移動し、交差リンク13aの他方のリンク部材27に設けられた給気制御用カム31を回動させ、同カム31が給排弁ユニット38の第1の給気側弁17を開き、一方のリンク部材21とロアフレーム11との間に設けられたエアータンク15へ空気を供給する。エアータンク15の内圧が上昇しサスペンションは上方向へ反転移動する。
【0045】
そして、サスペンションの上方向の反転移動に伴い上記とは逆にアーム部材22が交差リンク13aの一方のリンク部材21と共に時計方向へ回動移動し、アーム部材22に取り付けられた回動可能なローラー部材37を介し、同時に反時計方向へ回動移動する交差リンク13aの他方のリンク部材27に設けられた給気制御用カム31を回動させ同カム31がの第1の給気側弁17を閉じ、交差リンク13aの一方のリンク部材21とロアフレーム11との間に設けられたエアータンク15)への空気供給を停止する。
【0046】
第1の給気側弁17を閉じた高さ位置で着座乗員の体重とエアータンク15の内圧が平衡し、サスペンションの上方への反転移動は停止し、乗員の体重差には関係なくサスペンションの高さは一定に保持される。
【0047】
次に、乗員がサスペンションから離れるとその体重が除去され、乗員の体重と平衡状態を保っていたエアータンク15の内圧によりアッパフレーム12とロアフレーム11との間に設けられた交差リンク13a、13bが上方へ移動しサスペンションが上昇する。
【0048】
交差リンク13aの一方のリンク部材21に係止されたアーム部材22は、スプリング部材24の弾性力によるロック片部材29により一方のリンク部材21に係止されているので、一方のリンク部材21と共に時計方向へ回動移動する。
【0049】
そしてアーム部材22の先端に取り付けられた回動可能なローラー部材37を介し、同時に反時計方向へ回動移動する他方のリンク部材27に設けられた排気制御用カム32を回動させ同カム32が第1の排気側弁18を開き、交差リンク13aの一方のリンク部材21とロアフレーム11との間に設けられたエアータンク15内の空気を排出する。
【0050】
これによりエアータンク15の内圧が下がりサスペンションは自重により下方向へ反転移動する。
【0051】
サスペンションの下方向の反転移動に伴い、上記とは逆にアーム部材22が一方のリンク部材21と共に反時計方向へ回動移動しアーム部材21に取り付けられた回動可能なローラー部材37を介し、同時に時計方向へ回動移動するの他方のリンク部材27に設けられた排気制御用カム32を回動させ、同カム32が第1の排気側弁18を閉じ、交差リンク13aの一方のリンク部材21とロアフレーム11との間に設けられたエアータンク15内からの空気排出を停止する。
【0052】
第1の排気側弁18を閉じた高さ位置でサスペンションの自重とエアータンク15の内圧が平衡し、サスペンションの下方への反転移動は停止し、サスペンションの高さは一定に保持される。
【0053】
次に、サスペンションの高さ安定化の動作を図4、図5を参照して説明する。図4、5及び後述する図6〜8は、説明に直接関係のある部分を描き、その他の部分は図面上簡略、省略した状態にしてある。
図4は、乗員が座席シートへ着座しその体重が加わり、サスペンションが下降する状態を経時的に示す状態図で、(a)は着座時、(b)は給気側弁が開くとき、(c)は給気側弁が閉じるときを示すものである。
【0054】
図5は、乗員が座席シートから立ち上がり、サスペンションが上昇する状態を経時的に示す状態図で、(a)は立ち上がり時、(b)は排気側弁が開くとき、(c)は排気側弁が閉じるときを示すものである
オートレベリング装置により決定されるサスペンション高さ(基準高さ)の安定性はd第1の給気側弁17と第1の排気側弁18のそれぞれの開閉タイミングにより決定される。不適切な開閉タイミングの場合、サスペンション高さ(基準高さ)は上下に安定しないばかりか自動的に上下動(シーソー運動)を繰り返すことになるからである。
【0055】
高さ安定化のために第1の給気側弁17はサスペンションの基準高さより“A”の距離下がった位置で開き、“B”の距離下がった位置で閉じるようにする(A>B>0)。
【0056】
第1の排気側弁18はサスペンションの基準高さより“C”の距離上がった位置で開き、“D”の距離上がった位置で閉じるようにする(C>D>0)。
【0057】
それぞれの開閉タイミング“A”“B”“C”“D”を適正な距離に設定するとサスペンションは一定の高さ(基準高さ)で安定する。
【0058】
第1の給気側弁17と第1の排気側弁18のそれぞれの開閉タイミング“A”“B”“C”“D”の距離は同一にはならない。
【0059】
したがって上記開閉タイミング“A”“B”“C”“D”の距離が同一にならないことから、給気側、排気側それぞれ独立した給気制御用カム31と排気制御用カム32を設けたものである。
【0060】
給気側、排気側それぞれの弁の開く距離“A”“C”と閉じる距離“B”“D”が異なる為、アーム部材22に取り付けられた回動可能なローラー部材37と給気制御用カム31あるいは排気制御用カム32との間にそれぞれ隙間である凹部45、46が設けられている。
【0061】
ところで、この凹部45、46は給気制御用カム31と排気制御用カム32がアーム部材22に取り付けられた回動可能なローラー部材37に対しその隙間の量だけ、第1の給気側弁17、第1の排気側弁18の閉じようとする力によりそれぞれ回動可能なことを示している。
【0062】
第1の給気側弁17、第1の排気側弁18それぞれの弁の開閉タイミング“A”“B”“C”“D”はサスペンションの高さの変化をアッパフレーム12とロアフレーム11との間に設けられた交差リンク13の回動移動に置き換えられた相対角度(X)の変化として検知し、アーム部材22に取り付けられたローラー部材37により給気制御用カム31、排気制御用カム32を誘導して決定される。
【0063】
またローラー部材37の誘導ではなく、給気制御用カム31、排気制御用カム32が、第1の給気側弁17、第1の排気側弁18の閉じようとする力により、それぞれ回動移動してしまうと閉のタイミング“B”“D”の距離に狂いが生じサスペンションの高さ安定は望めない。そこで、給気制御用カム31、排気制御用カム32の回動当接部へワッシャー41を挿入し、給気制御用カム31、排気制御用カム32の閉じようとする力に抗する、給気制御用カム31、排気制御用カム32の回動方向へ抵抗を設ける。
【0064】
次に、サスペンションを所定の高さに設定する位置調整機能についての動作を、図6を参照して説明する。図6は、サスペンションを所定の高さに設定する位置調整機能についての動作を経時的に示した図である。
【0065】
サスペンションのオートレベリング装置に使用する第1の給気バルブ17、第1の排気バルブ18に使用する配管と並列に配管された管路に第2の給気バルブ35、第2の排気バルブ36を設ける(図3)。
【0066】
図6を参照してサスペンションの上方移動について説明する。
【0067】
乗員がサスペンションへ着座し、オートレベリング装置により基準高さ(図6(b))にある時、交差リンク13aの一方のリンク部材21にアーム部材22の回動を規制する係止手段23による係止を、解除手段25の把持部34を牽引することで解除し、さらに第2の給気側弁35を開くと、交差リンク13aの一方のリンク部材21とロアフレーム11との間に設けられたエアータンク15へ空気が供給され、エアータンク15の内圧が上がりサスペンションは上昇移動する(図6(c))。
回動規制を解除されたアーム部材22、はアーム部材22に取付けられた回動可能なローラー部材37を介し、他方のリンク部材27に設けられた給気制御用カム31、排気制御用カム32の突起壁48、49により凹部45、46に対向する位置におかれ、一方のリンク部材21に対し交差リンク13aの回動中心を中心として角度(Y)だけ回動移動させられる。
【0068】
サスペンションが上昇した状態で第2の給気側弁35を閉じ、アーム部材22をスプリング部材24の反力でロック片部材29により固定するとサスペンション高さは上方へ移動した任意の位置で保持される(図6(c))。
【0069】
次にサスペンションの下方移動について説明する。
【0070】
乗員がサスペンションへ着座し、オートレベリング装置により基準高さ(図6(b)にある時、交差リンク13aの一方のリンク部材21にアーム部材22の回動を規制する係止手段23による係止を、解除手段25の把持部34を牽引することで解除し、さらに第2の排気側弁36を開くと、交差リンク13aの一方のリンク部材21とロアフレーム11との間に設けられたエアータンク15内の空気が排出され、エアータンク15の内圧が下がりサスペンションは下降移動する。
【0071】
回動規制を解除されたアーム部材22、はアーム部材22に取付けられた回動可能なローラー部材37を介し、他方のリンク部材27に設けられた給気制御用カム31、排気制御用カム32の突起壁48、49により凹部45、46に対向する位置におかれ、一方のリンク部材21に対し交差リンク13aの回動中心を中心として角度(Z)だけ回動移動させられる。
【0072】
サスペンションが下降した状態で第2の排気側弁36を閉じ、アーム部材22をスプリング部材24の反力でロック片部材29により固定するとサスペンション高さは下方へ移動した任意の位置で保持される(図6(a))。
【0073】
乗員がサスペンションへ着座した高さ、サスペンションが上方へ移動し保持された任意の高さ、同下方へ移動し保持された任意の高さは、オートレベリング装置のサスペンションとしての上下動に対するそれぞれの基準高さでオートレベリングサスペンションとして機能する。
【0074】
次に、位置調整されたサスペンションの動作を、アーム部材22の先端に設けたローラー部材37と、給気制御用カム31及び排気制御用カム32の当接用の曲面42、43との関係を図7、図8を参照して説明する。図7は、乗員の着座後のサスペンションの動作を、図8は乗員の離席後のサスペンションの動作を、それぞれ動作の前後状態を示した図である。
【0075】
所定の高さに設定する位置調整機能により上段の基準高さに設定された状態(図7(a))のサスペンションへ乗員が着座し、その体重が加わると、サスペンションの自重と平衡状態を保っていたエアータンク15(不図示)の内圧が乗員の体重を支えることができずサスペンションは一旦、下端高さ位置(図7(b))まで下降し、アーム部材22に取り付けられたローラー部材37と給気制御用カム31の中心位置との距離が大きくずれる。
【0076】
また位置調整機能により下段の基準高さに設定された状態(図8(a))のサスペンションから乗員が離れると、その体重が除去され、乗員の体重と平衡状態を保っていたエアータンク15の内圧によりサスペンションは一旦、上端高さ位置(図8(b))まで上昇し、アーム部材22に取り付けられたローラー部材37と排気制御用カム32の中心位置との距離が大きくずれる。
【0077】
この大きくずれたローラー部材37の位置まで給気制御用カム31、排気制御カム32のそれぞれ一方向へローラー部材37の曲面を持った移動面である、曲面42、43をそれぞれ設けることで、本発明に係る座席シート用サスペンションの機能であるオートレベリングが円滑に行われる。そしてオートレベリング機能と、所定の高さに設定する位置調整機能とがあいまって簡略でかつ使い勝手のよい座席シート用サスペンションを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係る座席シート用サスペンションの平面図。
【図2】図1のA−A側面図。
【図3】エアータンクへの給排気管路図。
【図4】乗員が座席シートへ着座しその体重が加わり、サスペンションが下降する状態を経時的に示す状態図で、(a)は着座時、(b)は給気側弁が開くとき、(c)は給気側弁が閉じるときを示す図。
【図5】乗員が座席シートから立ち上がり、サスペンションが上昇する状態を経時的に示す状態図で、(a)は立ち上がり時、(b)は排気側弁が開くとき、(c)は排気側弁が閉じるときを示す図。
【図6】サスペンションを所定の高さに設定する位置調整機能についての動作を経時的に示した図。
【図7】乗員の着座後のサスペンションの動作示す図で、(a)は着座前、(b)は着座後の状態を示す図。
【図8】乗員の離席後のサスペンションの動作を示す図で、(a)は離席前、(b)は離席後の状態を示す図。
【図9】エアータンクの概要を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は平面図。
【図9c】エアータンクの斜視図。
【符号の説明】
【0079】
11 ロアフレーム11
12 アッパフレーム
13a、13b 交差リンク
15 エアータンク
17 第1の給気側弁
18 第1の排気側弁
21 一方のリンク部材
22 アーム部材
23 係止手段
25 解除手段
27 他方のリンク部材
31 給気制御用カム
32 排気制御用カム
35 第2の給気側弁
36 第2の排気側弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オートレベリング機能と所定の高さに設定する位置調整機能とを併せ持つ座席シート用サスペンションであって、
床面に設置されるロアフレームと、
座席シートの下部に設けられるアッパフレームと、
前記ロアフレームと前記アッパフレームとの間を左右両面でそれぞれ支持する、中心部で枢着された交差リンクと、
前記ロアフレームに設置され前記サスペンションを給気と排気により上下方向に移動させるエアータンクと、
該エアータンクに給気する第1の給気管路を開閉する第1の給気側弁と、前記エアータンクから排気する第1の排気管路を開閉する第1の排気側弁と、
左右のうち何れか一つの交差リンクを形成する一方のリンク部材の前記中心部において枢着されたアーム部材と、
該アーム部材を前記一方のリンク部材に係止する係止手段と、
該係止手段による前記係止を解除する解除手段と、
前記一方のリンク部材と交差する他方のリンク部材に設けられ、前記第1の給気側弁の開閉を制御する給気制御用カム及び、前記第1の排気側弁の開閉を制御する排気制御用カムと、
前記エアータンクに給気する第2の給気管路を開閉する第2の給気側弁と、前記エアータンクから排気する第2の排気管路を開閉する第2の排気側弁とを備え、
前記アッパフレームが予め設定した高さより所定の距離だけ下降したときはその下降に伴う前記一方のリンク部材の回動により前記アーム部材が前記給気制御用カムに当接して前記第1の給気側弁を開き、
前記アッパフレームが予め設定した高さより所定の距離だけ上昇したときはその上昇に伴う前記一方のリンク部材の回動により前記アーム部材が前記排気制御用カムに当接して前記第1の排気側弁を開くことにより前記座席シートを設定された高さ位置に保持し、
また前記解除手段により前記一方のリンク部材に対するアーム部材の係止を解除するとともに、前記第2の給気側弁の開閉または前記第2の排気側弁の開閉により前記エアータンクの圧力を変動させて前記座席シートを所定の高さ位置に設定する、ことを特徴とする座席シート用サスペンション。
【請求項2】
前記アーム部材の先端に回動可能なローラー部材が設けられ、該ローラー部材の回動面が、前記給気制御用カムに当接して前記第1の給気側弁の開閉を行い、前記排気制御用カムに当接して前記第1の排気側弁の開閉を行うことを特徴とする請求項1に記載の座席シート用サスペンション。
【請求項3】
前記ローラー部材の回動面は、前記給気制御用カム及び前記排気制御用カムにそれぞれ設けられた曲面に当接して、前記第1の給気側弁の開閉及び前記第1の排気側弁の開閉を行うことを特徴とする請求項2に記載の座席シート用サスペンション。
【請求項4】
前記アッパフレームが予め設定した高さ位置付近にあるときは、前記ローラー部材の回動面が、前記給気制御用カム及び前記排気制御用カム前記曲面とは非接触となるように、前記給気制御用カム及び前記排気制御用カムにそれぞ凹部が設けられ、前記ローラー部材の回動面は前記凹部に対向する位置におかれることを特徴とする請求項3に記載の座席シート用サスペンション。
【請求項5】
前記解除手段により前記一方のリンク部材に対するアーム部材の係止を解除して前記座席シートを所定の高さ位置に設定するときに、前記ローラー部材の回動面が前記曲面に接触することを防止するために、前記凹部と前記曲面との境界に突起壁を形成してなることを特徴とする請求項4に記載の座席シート用サスペンション。
【請求項6】
前記係止手段は、前記一方のリンク部材に取付けられた弾性部材と、前記一方のリンク部材の表面をスライド可能に取付けられたロック片部材とを有してなり、前記弾性部材による弾性力によって前記ロック片部材の先端を前記アーム部材に形成された凹凸部に噛み合わせて係止することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の座席シート用サスペンション。
【請求項7】
前記解除手段は、前記ロック片部材に接続された線状部材と、この線状部材の延長部に設けられた把持部とを有してなり、該把持部の牽引操作により前記ロック片部材と前記アーム部材との前記噛み合わせを離すことで前記係止を解除することを特徴とする請求項6に記載の座席シート用サスペンション。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図9c】
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【公開番号】特開2010−30473(P2010−30473A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195449(P2008−195449)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000225887)難波プレス工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】