説明

廃タイヤ構造体

【課題】廃タイヤに特段の加工を施すことなく、優れた振動吸収性能を発揮し得る廃タイヤ構造体を提供する。
【解決手段】建造物等の下に敷設され、地震などの振動を吸収する廃タイヤ構造体1である。複数の廃タイヤ10同士がワイヤ20で固定され、ユニット2を構成する。ユニット2が、廃タイヤのトレッドに形成された貫通孔にワイヤ20を挿通させることにより固定されることが好ましい。ユニット2は、7本の廃タイヤにて六角形に形成されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震などの振動を吸収する廃タイヤ構造体に関し、詳しくは、廃タイヤに特段の加工を施すことなく、優れた振動吸収性能を発揮し得る廃タイヤ構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
廃タイヤの再利用方法として、複数の廃タイヤを地中に敷設し、地震などの振動を吸収する免震構造体が知られており、かかる廃タイヤを敷き詰めた従来の構造体では、廃タイヤ同士が拘束されていないのが一般的である。
【0003】
また、本出願人により先に提案された特許文献1では、廃タイヤの構造体としての優れた機能である軽量性、保持性、組み合わせの自由度を活かすとともに、長期間の使用においても優れた形態保持性を示す、複数の廃タイヤを組み合わせて形成される構造体に係る地盤補強材が開示されている。この特許文献1記載の廃タイヤ利用地盤補強材は、平面的に隣接する廃タイヤ同士が係合しあうように、トレッド部の一部に、U字状または直線状の切り欠き部を有するものである。
【0004】
また、特許文献2では、廃タイヤを利用した構造体として、傾斜または軟弱地盤上に廃タイヤを用いて、強固かつ耐震性に優れた低コストで簡易に施工可能なタイヤ軽量盛土構造が開示されている。特許文献2記載のタイヤ軽量盛土構造は、複数本のタイヤ柱が互いに当接するように格子または千鳥状に縦横に配列され、このタイヤ柱は、積み重ねられた複数のタイヤと、ホイール孔内に内型枠を介して築造されたコンクリート芯柱とから成り、芯柱は、互いに隣接する芯柱と格子状またはトラス状の連結鉄筋で互いに連結されるとともに、芯柱の外周面は、タイヤの内縁によって外周から拘束されることによって、タイヤ軽量盛土構造体全体が、タイヤ柱と芯柱とともに一体に強固に結合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−170046号公報
【特許文献2】特開2001−3366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、地盤補強材として廃タイヤのトレッド部に一部切り欠き部を設ける場合、免震効果はあるものの、加工に手間がかかるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2のように、積み重ねられた複数のタイヤのホイール孔内にコンクリートまたは砂礫が充填されて形成される芯柱が配設されて成るタイヤ柱が、複数燐接して水平方向に並設する構造とした場合、現場での組み立てに多くの時間や手間が必要になるとともに、材料費や人件費が嵩み、コスト的に問題があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、上記課題を解決するために、廃タイヤに特段の加工を施すことなく、優れた振動吸収性能を発揮し得る廃タイヤ構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、複数の廃タイヤ同士をワイヤで固定することにより上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の廃タイヤ構造体は、建造物の下に敷設され、地震などの振動を吸収する廃タイヤ構造体であって、複数の廃タイヤ同士がワイヤで固定され、ユニットを構成することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の廃タイヤ構造体においては、前記ユニットが、廃タイヤのトレッドに形成された貫通孔にワイヤを挿通させることにより固定されることが好ましい。前記ユニットは、好ましくは7本の廃タイヤにて六角形に形成される。また、前記ユニットは、複数連結することができ、前記ユニット同士は、ワイヤ同士をクリップにて連結することにより互いに固定されることが好ましい。さらに、前記ユニット同士は、現場にて好適に固定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、廃タイヤに特段の加工を施すことなく、地震などの振動に対し優れた吸収性能を発揮し得る免震構造体を得ることができる。また、現場で容易に組み立てることができ、さらに、廃タイヤを再利用することで廃棄処理に伴う二酸化炭素の発生を生ずることがなく、環境面でも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例の形態に係る構造体の平面図である。
【図2】(a)は廃タイヤの平面図であり、(b)は矢視断面図である。
【図3】本発明に係るユニットの斜視図である。
【図4】ユニットを連結した廃タイヤ構造体の平面図である。
【図5】クリップの断面図である。
【図6】本発明の一好適実施形態に係る廃タイヤ構造体の使用状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の好適実施形態に係る廃タイヤ構造体の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好適実施形態について説明する。図1に、本発明の好適実施の形態にかかる廃タイヤ構造体の平面図を示す。図1に示す廃タイヤ構造体2は、複数の廃タイヤ10(図示する例では7個)を横にした状態で互いに密接させて配置するとともに、廃タイヤ10同士がワイヤ20で固定されてユニットを構成している。ユニット2を構成する廃タイヤ10の個数は、7個に限定されず、例えば、3個または4個としてもよい。
【0015】
ユニット2に使用される廃タイヤ10は、トラック・バス用タイヤ、乗用車用タイヤ、建設車両用タイヤ等、さまざまな廃タイヤを使用することができるが、工法上、タイヤの径やトレッド幅を統一した廃タイヤを用いることが望ましい。
【0016】
径やトレッド幅を統一した廃タイヤ10を、横にした状態で複数配置してユニット2を形成するにあたり、図示するように、中央部の廃タイヤ10aの周囲に、6個の廃タイヤ10bをそれぞれのトレッド11が接するように配置し、平面視で六角形状になるように形成することが望ましい。かかる配置により、それぞれの廃タイヤ同士のトレッド部分の接触面積が多くなり、連結保持状態を高めることができる。また、ユニット2を平面視で六角形状に形成することにより、図4に示すように、ユニット2を複数連結して構造体の拡張を図る際の作業性や連結効率を高めることができる。
【0017】
廃タイヤ10同士を固定するワイヤ20は、錆に強いステンレス製のワイヤを用いることが望ましい。また、ワイヤ20は、廃タイヤ10を強固に保持、固定し、長期間の使用を可能にするものを用途に応じ適宜選定すればよい。
【0018】
廃タイヤ10のトレッド11には、図示するように、貫通孔12が穿孔されていることが好ましい。この貫通孔12はワイヤ20を挿通させるものであり、図示例では廃タイヤ10(平面視で角部)の外周近傍に2箇所設けられている。かかる貫通孔12内にワイヤ20を挿通させ、それぞれの貫通孔12を通るようにそれぞれの廃タイヤ10のトレッド11を巻回することにより、複数の廃タイヤ10を一体的に連結保持することができる。また、中央に位置する廃タイヤ10aも周囲の廃タイヤ10bをワイヤ20で締め付けることで、強固に固定することが可能となる。
【0019】
本発明の廃タイヤ構造体1は、図4に示すように、ユニット2を複数連結することによりあらゆる面積にも対応することが可能となる。平面視で六角形状に配設させて形成したユニット2を角部が接する状態に配設し、それぞれのワイヤ20同士をクリップ21にて連結保持することで、ユニット2同士を固定することができる。
【0020】
クリップ21は、その形状は特に限定されるものではないが、図5の(a)に示す、
ワイヤ20を上下で挟持するクリップ22や、(b)に示す、開口部をテーパ状に形成した断面コ字状のクリップ23、または(c)に示す、先端部分に折返部24aを設けたクリップ24等を好適に使用することができる。なお、クリップ21は、強度や耐久性を考慮して、金属材料で形成することが望ましい。
【0021】
本発明の廃タイヤ構造体1は、平面視で六角形状のユニット2を角部が接する状態に配設し、それぞれのワイヤ20同士をクリップ21にて連結保持することで、建物の大きさや形状に応じ、敷設する面積を自在に調整することができるとともに、ユニット2を形成する際、廃タイヤ10に通孔12を設け、この貫通孔12にワイヤ20を通して固定するだけなので、加工工数が少なく、取り付けが容易である。また、廃タイヤ10同士が、トレッド11部分で固定されているため、トレッド11の凹凸により連結強度が高まり、振動によって廃タイヤ10同士が離れることがなく、免振構造体として良好に機能を果たすことができる。
【0022】
図6は、複数のユニット2をクリップ21にて連結保持した廃タイヤ構造体1を、一般住宅Aの下に敷設した状態を示すものである。住宅Aの下部に本発明の廃タイヤ構造体1を敷設することで、地震や車輌通過時における住宅Aへの振動伝播を軽減することができる。なお、強度や震度吸収性を高めるために、廃タイヤ10の空洞内に廃タイヤのカット片を充填してもよく、あるいは砂や現場土を充填してもよい。また、廃タイヤ構造体1を盛土で覆うことも可能である。
【0023】
図7は、廃タイヤ構造体1の上面に、基台Bを載置した状態を示すものである。図示するように、基台B上にコンクリート基材Cを敷設することで、道路として使用することができ、車輌通行の際に発生する振動を吸収できる。また、基台B上に列車のレール(図示せず)を敷設した場合、列車通過時の振動の伝播を軽減することができる。なお、道路や線路の下部に廃タイヤ構造体1を使用する場合、振動吸収性能を高めるため、廃タイヤ構造体1を垂直方向に複数積層してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 廃タイヤ構造体
2 ユニット(廃タイヤ構造体)
10 廃タイヤ
11 トレッド
12 貫通孔
20 ワイヤ
21 クリップ
22 クリップ
23 クリップ
24 クリップ
A 住宅
B 基台
C コンクリート基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物等の下に敷設され、地震などの振動を吸収する廃タイヤ構造体であって、複数の廃タイヤ同士がワイヤで固定され、ユニットを構成することを特徴とする廃タイヤ構造体。
【請求項2】
前記ユニットが、廃タイヤのトレッドに形成された貫通孔にワイヤを挿通させることにより固定される請求項1記載の廃タイヤ構造体。
【請求項3】
前記ユニットが、7本の廃タイヤにて六角形に形成される請求項1または2記載の廃タイヤ構造体。
【請求項4】
前記ユニットが複数連結される請求項1〜3のうちいずれか一項記載の廃タイヤ構造体。
【請求項5】
前記ユニット同士が、ワイヤ同士をクリップにて連結することにより互いに固定される請求項4記載の廃タイヤ構造体。
【請求項6】
前記ユニット同士が現場にて固定される請求項5記載の廃タイヤ構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−255183(P2010−255183A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102627(P2009−102627)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】