説明

廃タイヤ溶融液状ゴムを用いた粘着性・柔軟性のあるアスファルト防水材組成物及びその製造方法

【課題】ゴムの架橋構造によってベントナイトの遺失を防止するとともに、ベントナイトの水和特性によって防水能力を極大化させた、廃タイヤ溶融液状ゴムを用いたアスファルト防水材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アスファルト10〜15重量部、油20〜50重量部、充填材8〜12重量部、増粘剤1〜3.5重量部、界面活性剤0.1〜0.5を150℃〜180℃で加熱した後、廃タイヤ溶融液25〜40重量部、硫黄0.5〜1重量部、加硫促進剤0.05〜1重量部、老化防止剤0.1〜0.4重量部を混合し、ベントナイト10〜20重量部、水溶性高分子樹脂1〜5重量部を混合して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃タイヤ溶融液状ゴムを用いた粘着性・柔軟性のあるアスファルト防水材組成物及びその製造方法に係り、さらに詳しくは、廃タイヤチップを潤滑油と共に溶解させて製造された溶融液状ゴム、アスファルトの溶融物、ベントナイト及び高分子樹脂を混合して抽出し、この抽出物を用いて製造した、廃タイヤ溶融液状ゴムを用いた粘着性・柔軟性のあるアスファルト防水材組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のゴムアスファルトは、アスファルトの欠点を補完するために、アスファルトに弾性体のゴムを結合することにより、伸率、衝撃、破損などに弱いアスファルトを改良しているが、このような改良製品も完全に硬化した状態では、構造体から浮き上がったり破損したりし易く、その浮き上がり及び破損のときに防水能力を失ってしまう。
【0003】
かかる問題点を改善するために、非硬化状態を半永久的に維持して防止材の破損を防止し且つ強い粘着性を与えて防水材の浮き上がりを発生させないよう、無機粉末のベントナイトを添加する。
【0004】
前記ベントナイトを用いた先行技術は、その技術的フォーカスが、主にベントナイトに対して防水施工に必要な所定のワーカビリティ(workability)を得るが、ベントナイトの非水和状態(非膨潤状態)を如何に達成するかに合わせられているので、施工後、ベントナイトの遺失による防水能力の毀損に対してはその対策の提示が不足している。
【0005】
すなわち、粉末状のベントナイトが非水性液体によって所定粘度の非膨潤状態となることにより施工上のワーカビリティを得ることはできるとしても、その非水性液体がベントナイトに対する保持力を持たないか非常に弱いため、施工後、ベントナイトが高流速の水に接し或いは所定の空間内に密閉されない場合、持続的に膨張してその密度を低下させるので、所望の防水能力を得ることができなくなるという問題点を抱えている。
【0006】
また、ベントナイト防水材は、その組成物として用いられるポリブテン、ブチルゴムなどは混合物に十分な粘着性を与えているが、長時間の経過後に乾燥状態になると硬化してベントナイトの膨潤性能を低下させるうえ、乾燥収縮を繰り返し行うと割れが発生するという欠点と、アスファルトに比べて10倍以上の高価品であって使用範囲が広くないという問題点も抱えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、従来の技術のかかる問題点を解決するためのもので、その目的は、ジェリー状の廃タイヤ溶融によって抽出されたスチレンブタジエンゴムにベントナイトとアスファルトを結合することにより、ゴムの架橋構造によってベントナイトの遺失を防止するとともに、ベントナイトの水和特性によって防水能力を極大化させた、廃タイヤ溶融液状ゴムを用いたアスファルト防水材及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、構造体に対する浮き上がり現象が起こりうる接着方式による既存の防水工法とは異なり、構造体に対する浮き上がりが殆ど発生しない粘着方式のベントナイトを主体としたもので、廃タイヤ溶融液にベントナイトを結合することにより、ゴムの架橋構造によってベントナイトの遺失を防止するとともに、ベントナイトの水和特性によって防水能力を向上させた、ベントナイト含有廃タイヤ溶融防水材を提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、施工後、防水層に損傷が発生し或いは構造体に対して浮き上がりが発生しても、ベントナイトの水和反応による膨張力及び水溶性高分子樹脂の水和反応による粘性によって損傷部位及び浮き上がり部位を自己修復することが可能な、ベントナイト及び廃タイヤ溶融液を含有した防水材を提供することにある。
【0010】
また、本発明の別の目的は、防水材を施工する環境が水中、湿潤下地であっても浮き上がりのない安定的な接着を可能とし、コンクリートのレイタンス層が存在しても別途の接着剤及びレイタンス層の除去なしで施工することが可能な防水能力及び施工性に優れた、ベントナイト及び廃タイヤ溶融液を含有した防水材を提供することにある。
【0011】
また、本発明の別の目的は、防水層に釘、鉄線、コンクリート屑、土砂、管などが貫通しても、その貫通部位に対して優れた防水能力を提供することが可能な、ベントナイト及び廃タイヤ溶融液を含有した防水材を提供することにある。
【0012】
また、本発明の別の目的は、上記目的を達成することが可能なベントナイト及び廃タイヤ溶融液を含有した防水材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のある観点によれば、アスファルト10〜15重量部、油20〜50重量部、充填材8〜12重量部、増粘剤1〜3.5重量部、界面活性剤0.1〜0.5を150℃〜180℃で加熱した後、廃タイヤ溶融液25〜40重量部、硫黄0.5〜1重量部、加硫促進剤0.05〜1重量部、老化防止剤0.1〜0.4重量部を混合し、ベントナイト10〜20重量部、水溶性高分子樹脂1〜5重量部を混合してなる、廃タイヤ溶融液状ゴムを用いた粘着性・柔軟性のあるアスファルト防水材組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の他の観点によれば、アスファルト、油、充填材及び界面活性剤を混合加熱してジェリー状のアスファルトを組成する第1段階と、前記第1段階により組成されたジェリー状のアスファルトを150℃〜180℃に維持しながら廃タイヤ溶融液、硫黄、加硫促進剤、老化防止剤を混合する第2段階と、前記第2段階によって組成された廃タイヤ溶融アスファルト防水材にベントナイト及び水溶性高分子樹脂を加えてよく攪拌する第3段階とを含んでなる、廃タイヤ溶融液状ゴムを用いた粘着性・柔軟性のあるアスファルト防水材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の防水材は、アスファルト、廃タイヤ溶融液及びベントナイトを結合させて粘着性を高めたジェリー状の高弾性物質であって、施工後、ゴムアスファルト、ウレタン、エポキシなどの既存の防水材よりも優れた防水性能を提供し、粘弾性性能によって構造体の挙動対応性が優秀である。
【0016】
また、既存の防水材は施工後には完全硬化するが、本発明の防水材は、施工後にもオイルがゴムアスファルトの完全硬化を妨害しており、構造体の表面が動き或いは亀裂しても浮き上がりまたは損傷が発生せず、たとえ老朽などにより構造体の表面から浮き上がったり破損したりして水が流入しても、含有されていたベントナイトと高分子樹脂が水和膨張すると同時に粘液質を発生するため、損傷部位と浮き上がり部位を自己修復し、コンクリートのレイタンス層及び水中、湿潤状態の下地とも別途の接着剤(プライマー)なしで安定的な接着力を保有することができる。
【0017】
また、本発明の防水材は、防水層に釘、鉄線、コンクリート屑、土砂、管などが貫通しても、その貫通部位に対して優れた防水能力を発揮することができる。
【0018】
また、本発明の防水材は、結合剤として廃タイヤ溶融によるスチレンブタジエンゴムを使用し、溶剤を添加しないため、廃材のリサイクルの面で非常に親環境的であり、ベントナイト組成液は、ベントナイト粒子以外にもその組成液の他の一成分として含有されたベントナイト凝集剤(水溶性高分子樹脂)自体が、水が存在する度に水と繰返し反応して粘液状態の不透過性樹脂膜を形成する一方、この粘液状態の不透水性樹脂膜がベントナイトの水和による潤圧を受けて構造体の表面に気密に接着され、特にこの樹脂膜がベントナイト粒子と共に構造体の空隙または微細なクラック内に押し込まれて構造体に気密に接着されるため、ベントナイトの水和膨潤能力を大きく倍加することができるうえ、この接着状態が解除される場合、例えば水が除去または蒸発されることにより、ベントナイト粉末及び前記樹脂膜が乾燥状態となる一方、構造体の挙動などによって前記樹脂膜の構造体の表面に対する接着が分離される場合でも、前記樹脂膜はさらに水に接する場合、反復的に粘液状態の不透水膜を形成して前記ベントナイト水和膨潤と相乗作用するシステムである。
【0019】
また、本発明によれば、特に高流速の水に接してもベントナイト粒子がゴムアスファルト及び水和して粘っこい粘膜質を形成している高分子樹脂の接着力によって強く把持されるため、過度な膨張を抑制させて遺失を防止し、ベントナイト間の密度を高めて水密性を高める上、粘膜質の高分子樹脂が、ベントナイトの膨張による空間に挿入されてベントナイト粒子の間への水の移動を遮断させるのは勿論、無機質が必然的に持っている毛細管現象を抑制することが可能な、廃タイヤ溶融液状ゴムを用いた粘着性・柔軟性のあるアスファルト防水材組成物及びその製造方法を提供することにより、非常に有用な発明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
本発明に係る廃タイヤ溶融液状ゴムを用いた粘着性・柔軟性のあるアスファルト防水材組成物は、アスファルト、油、充填材、増粘剤、界面活性剤、廃タイヤ溶融液、硫黄、加硫促進剤、老化防止剤、ベントナイト及び水溶性高分子樹脂を混合して製造する。
【0021】
この際、前記組成物は、アスファルト10〜15重量部、油20〜50重量部、充填材8〜12重量部、増粘剤1〜3.5重量部、界面活性剤0.1〜0.5重量部を150℃〜180℃で加熱した後、廃タイヤ溶融液25〜40重量部、硫黄0.5〜1重量部、加硫促進剤0.05〜1重量部、老化防止剤0.1〜0.4重量部を混合し、ベントナイト10〜20重量部、水溶性高分子樹脂1〜5重量部を混合して製造することが最も好ましい。
【0022】
前記のように組成される、廃タイヤ溶融液状ゴムを用いた粘着性・柔軟性のあるアスファルト防水材の製造方法は、3つの段階によって構成されるが、必要に応じてはさらに第4段階が含まれる。
【0023】
前記第1段階は、アスファルト、油、充填材及び界面活性剤を混合・加熱してジェリー状のアスファルトを組成する段階である。この際、前記アスファルトは、ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、天然アスファルト、アスファルトコンパウンド、カットバックアスファルトなどであり、この中でもカットバックアスファルト、ストレートアスファルト、ブローンアスファルトを使用することが最も好ましい。
【0024】
この際、前記アスファルトと混合される油は、鉱物油、動植物油、合成油など全ての油を使用することができるが、この中でもミネラルスピリットオイル、炭化水素系オイル(芳香族油、ナフテン油、パラフィン油)を使用することが最も好ましく、また脂肪酸金属塩(ロジン酸カルシウム、ロジン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム)、グリコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン)、ワセリンなどのオイルも使用可能であり、このような種類のオイルであれば廃オイルを使用してもよい。
【0025】
この際、前記組成物の混合割合は、全体割合のうち、アスファルト10〜15重量部、オイル20〜50重量部、充填材8〜12重量部、増粘剤1〜3.5重量部、界面活性剤0.1〜0.5重量部とすることが最も好ましい。
【0026】
また、前記第2段階は、第1段階によって組成されたジェリー状のアスファルトを150℃〜180℃に維持しながら廃タイヤ溶融液、硫黄、加硫促進剤、老化防止剤を混合する段階である。この際、前記廃タイヤ溶融液は、廃タイヤを熱分解してカーボンブラック含有のスチレンブタジエンゴムを抽出して利用するが、廃タイヤには耐酸化遮断及び紫外線遮断物質があり、第1段階で生成されたアスファルトと結合すると、材料的耐久性が向上するようにする。
【0027】
前記廃タイヤ溶融液を第1段階で組成された材料と混合するためには150℃〜180℃を維持することが好ましく、加硫剤として、一般にゴムに多く使用する硫黄を0.5〜1%添加し、加硫促進剤として酸化亜鉛、ステアリン酸、オレイン酸を使用する。結合剤の耐熱性及び耐候性を補強するために添加される老化防止剤としてアミン系、フェノール系などを使用することができるが、老化防止及び耐汚染性を考慮してフェノール系を使用することが好ましい。
【0028】
前記製造段階における混合割合は、全体割合の中、廃タイヤ溶融液25〜40重量部、硫黄0.5〜1重量部、加硫促進剤0.05〜1重量部、老化防止剤0.1〜0.4重量部とすることが最も好ましい。
【0029】
また、第3段階では、第2段階によって組成された廃タイヤ溶融アスファルト防水材にベントナイト及び水溶性高分子樹脂を加えてよく攪拌する段階である。
【0030】
この際、前記ベントナイトと共に添加される高分子樹脂は、水と反応して粘液状の不透水膜になる水溶性高分子樹脂であって、例えばアクリル酸ナトリウムゲル、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリビニールアルコールなどの高吸水性高分子樹脂(SAP)、またはポリアクリルアミド系、ポリアクリルエステール系などの水溶性高分子ポリマー凝集剤などが使用できるが、好ましくは前記高吸水性高分子樹脂グループの中から選択されるいずれか一つ、または水溶性高分子ポリマー凝集剤グループの中から選択されるいずれか一つを使用することが最も好ましい。
【0031】
また、前記水溶性高分子凝集剤は、陰イオン系、陽イオン系及び非イオン系のいずれも使用可能である。
【0032】
この際、前記ベントナイトは様々な種類があるが、特にベントナイトナトリウムはその層の厚さが4mm〜9mmの場合、透水係数が1×10−8cm/sec〜1×10−12cm/sec(厚さ30cmの泥土の100倍に相当する緻密性)に達する不透水層を形成する一方、水と反応して13倍〜16倍に達する体積膨張を行い、乾燥すると元の状態の体積に収縮し、水が加えられるとさらに水和膨潤する反復水和膨張性能を有する素材である。
【0033】
前記第3段階の混合割合は、全体割合のうち、ベントナイト10〜20重量部、水溶性高分子樹脂1〜5重量部とすることが最も好ましい。
【0034】
前記第3段階によって組成された廃タイヤ溶融液−ベントナイトの組成物に、水和膨潤速度を調節するための粘液状の不透水膜を形成する水溶性高分子樹脂を添加して混合使用してもよい。
【0035】
また、前記第3段階によって組成されたゴム−ベントナイト組成物に粘度及び水和反応速度調節用添加剤を加える第4段階をさらに含んでもよく、前記第3段階と第4段階との間或いは第4段階後にゴム老化防止剤及びゴム安定剤を加える段階を更に含んでもよい。これも本発明の範疇に属するのは勿論である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト10〜15重量部、油20〜50重量部、充填材8〜12重量部、増粘剤1〜3.5重量部、界面活性剤0.1〜0.5を150℃〜180℃で加熱した後、廃タイヤ溶融液25〜40重量部、硫黄0.5〜1重量部、加硫促進剤0.05〜1重量部、老化防止剤0.1〜0.4重量部を混合し、ベントナイト10〜20重量部、水溶性高分子樹脂1〜5重量部を混合してなることを特徴とする廃タイヤ溶融液状ゴムを用いた粘着性・柔軟性のあるアスファルト防水材組成物。
【請求項2】
アスファルト、油、充填材及び界面活性剤を混合加熱してジェリー状のアスファルトを組成する第1段階と、
前記第1段階によって組成されたジェリー状のアスファルトを150℃〜180℃に維持しながら廃タイヤ溶融液、硫黄、加硫促進剤、老化防止剤を混合する第2段階と、
前記第2段階によって組成された廃タイヤ溶融アスファルト防水材に対してベントナイト及び水溶性高分子樹脂を加えてよく攪拌する第3段階とを含んでなることを特徴とする廃タイヤ溶融液状ゴムを用いた粘着性・柔軟性のあるアスファルト防水材の製造方法。
【請求項3】
前記第3段階によって組成された廃タイヤ溶融液−ベントナイト組成物に、水和膨潤速度を調節するための粘液状の不透水膜を形成する水溶性高分子樹脂を添加して混合することを特徴とする請求項2に記載の廃タイヤ溶融液状ゴムを用いた粘着性・柔軟性のあるアスファルト防水材の製造方法。
【請求項4】
前記第3段階によって組成されたゴム−ベントナイト組成物に粘度及び水和反応速度調節用添加剤を加える第4段階をさらに含むことを特徴とする請求項2または3に記載の廃タイヤ溶融液状ゴムを用いた粘着性・柔軟性のあるアスファルト防水材の製造方法。
【請求項5】
前記第3段階と第4段階との間或いは第4段階後にゴム老化防止剤及びゴム安定剤を加える段階をさらに含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の廃タイヤ溶融液状ゴムを用いた粘着性・柔軟性のあるアスファルト防水材の製造方法。

【公開番号】特開2006−131864(P2006−131864A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379861(P2004−379861)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(505004547)リニュー システム カンパニー リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Renew System Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】