説明

廃棄物熱処理設備

【課題】 構成の小形化を図り、運転コストを低減することができる廃棄物熱処理設備を提供する。
【解決手段】 廃棄物が投入される1次燃焼炉4に、高温燃焼する溶融室3を下部に設け、低温燃焼する焼却室2を上部に設け、溶融室3と焼却室2とを流路断面積の小さい連通孔33によって連通させ、上部の焼却室2の未燃成分を含む含塵排ガスを2次燃焼炉7の燃焼室6に導いて、高温で熱分解する。ガス化溶融処理を行う場合には、第1および第2バーナ5,8を高負荷燃焼させ、焼却処理を行う場合には、第1および第2バーナ5,8を低負荷燃焼に切り換えて、焼却処理およびガス化溶融処理を1つの熱処理設備によって達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭ごみなどの一般廃棄物および医療廃棄物などの特別管理産業廃棄物を含む産業廃棄物のいずれであっても、廃棄物の種類および性状などに応じて焼却および溶融のいずれかを選択して熱処理することができる廃棄物熱処理設備に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な従来の技術は、特許文献1に記載されている。この特許文献1には、炉底に燃料として装填されたコークスの燃焼によって炉内に高温燃焼帯を形成し、この高温燃焼帯の上方から投入された廃棄物を熱分解してガス化し、その残渣を溶融する廃棄物ガス化溶融炉を含む廃棄物熱処理設備が開示される。
【0003】
この廃棄物熱処理設備では、高温燃焼帯へ吹き込まれる廃プラスチックの粒径10mm〜50mmとし、あるいは炉内の高温燃焼帯におけるガスの空塔速度が2.0m/sec以下となるように、高温燃焼帯への送風量を調節し、あるいは高温燃焼帯へ吹き込む熱風の温度を350℃以下にすることによって、廃プラスチックを燃料の一部として燃焼させ、コークスの消費量の低減を図ることができることを提案している。
【0004】
廃棄物ガス化溶融炉は、都市ごみ、産業廃棄物および廃棄物焼却残渣などの廃棄物、コークスおよび石灰石などが、炉頂部の中心に設けられた装入口から廃棄物投入装置によって炉内へ投入され、コークスが炉底部に堆積した状態で、主羽口から空気または酸素富化された空気の熱風が吹き込まれ、また廃プラスチック投入口から主羽口内へ廃プラスチックが投入されて、熱風とともに炉内へ吹き込まれ、コークスを燃焼させることによって高温燃焼帯を形成し、この高温燃焼帯の上に廃棄物を流動化して予熱する流動化層を形成して、投入された廃棄物を流動化層に滞留させて熱分解し、その残渣を高温燃焼帯において溶融する。
【0005】
高温燃焼帯および流動化層で発生した熱分解ガスは、流動化層の上方で、炉体の流動化層が形成される部分よりも拡径された部分によって外囲されるフリーボード部において、羽口から供給された空気によって燃焼し、850℃〜1000℃の高温の燃焼ガスとなって、炉体上部に設けられる燃焼ガス排出口から排出されて、2次燃焼炉に導かれ、この2次燃焼炉でさらに燃焼させてダイオキシン類が熱分解された後、ボイラなどの熱回収装置に送られて熱回収し、さらに排ガス浄化装置によって集塵し、酸性ガスを除去し、脱硝した後、大気放散される。
【0006】
高温燃焼帯には、主羽口から廃プラスチック投入装置によって粒径10mm〜50mmの廃プラスチックが熱風とともに吹き込まれ、この吹き込まれた廃プラスチックはコークスとともに燃焼する。このとき、前述したように、高温燃焼帯における炉内ガスの上昇速度が空塔換算で2.0m/sec以下となるように、熱風の吹き込み量を調節し、炉内ガスと投入物とを充分に熱交換させ、残渣を確実に溶融させることによって、安定した操業を図りながら、廃プラスチックをコークスの代替燃料として使用し、コークスの消費量を低減している。
【0007】
他の従来の技術は、特許文献2に記載されている。この特許文献2では、ガス化溶融炉の炉底部のコークスを堆積して燃焼させることによって高温燃焼帯を形成し、この高温燃焼帯の上方に、投入された廃棄物を熱分解してガス化する流動化層を形成し、さらにこの流動化層の上方に、炉体の流動化層が形成される部分よりも拡径された部分によってフリーボード部を形成する溶融炉においては、フリーボード部によって、熱分解ガスの上昇速度を遅くすることによって、ガス排出口からのダストの排出を防止し、あるいはフリーボード部に空気を吹き込んで熱分解ガスを燃焼させることによって、ダイオキシン類を分解するが、次の(a)〜(f)を課題として提起する。
【0008】
この引用文献2に記載される従来の技術において解決しようとする課題は、(a)フリーボード上から投入された廃棄物からダストがガス排出口へ直接飛散し、灰となって集塵機によって捕集されるため、この捕集された灰の処理に要するコストが高くなること、(b)炉内へ装入された装入物の層高を計測する場合にも、フリーボード上から炉内物の表層面までの距離が長いため、計測作業が困難であること、(c)フリーボード上から補助燃料を投入すると、落下衝撃によって補助燃料が砕けて粉状になり、炉底部に堆積した補助燃料の通気性が損なわれ、燃料ガスの通気性および溶融物の落下のための火格子としての機能が失われやすいこと、(d)大きなスペースを占有するフリーボードがガス化溶融炉の上部に設けられるので、廃棄物処理プラント全体が高くなり、建設コストが高くなること、(e)2次燃焼炉は、1段目の送風でガス中の全可燃成分を燃焼させ、2段目の送風で燃焼ガスの温度調節をしているが、ガス化溶融炉で発生する熱分解ガスは可燃成分が多く、発熱量が高いため、1段目の送風で燃焼ガス温度が1200℃を超える高温になり、ガスに含まれるダストが炉壁に融着すること、(f)1段目の送風段階では完全燃焼させることができず、2段目の送風段階では完全燃焼に必要な燃焼時間が確保されるように十分な空間が設けられていないため、熱分解ガスが完全燃焼されずに、COなどの未燃ガスがそのままガス処理系へ導入され、不完全な燃焼によってダイオキシン類が生成される、というものである。
【0009】
これらの課題(a)〜(f)を解決するために、この従来の技術では、(1)炉底部に高温燃焼帯を形成するための空気または酸素富化空気を吹き込む主羽口が設けられ、高温燃焼帯の上に廃棄物流動化層を形成させるための空気を吹き込む副羽口が設けられた廃棄物溶融炉と、この廃棄物溶融炉で発生した熱分解ガスを燃焼させる2次燃焼炉を有する廃棄物ガス化溶融設備において、流動化層で発生した熱分解ガスが直ちに導入されるようにし、(2)2次燃焼炉に燃焼用空気を吹き込む送風口が高さ方向に間隔をあけて少なくとも3段設けられ、(3)各段の送風口が2次燃焼炉の両側の側面に位置し、かつそれぞれの側の送風口からの燃焼用空気の噴出流が間隔をあけて逆方向に流れるように、送風口を2次燃焼炉の中心に対して点対称に配置し、(4)各段の送風口が2次燃焼炉の両側の側面に位置し、かつ一方の側の送風口と他方の側の送風口とを互いに異なる高さに配置することが提案されている。
【0010】
【特許文献1】特開2003−21313号公報
【特許文献2】特開2003−74817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述の特許文献1に記載される従来の技術では、コークスなどの燃料の消費量を削減するために、廃プラスチック投入装置によって所定粒径の廃プラスチックを炉内へ投入し、この廃プラスチックを、流動化層で熱分解した廃棄物の焼却残渣を溶融する高温燃焼帯で溶融することによって、廃プラスチックを燃料として用いることが提案されるが、廃プラスチックを炉内の高温燃焼帯上へ投入するための廃プラスチック投入装置が別途に必要であり、設備の構成が大型化および複雑化してしまうという問題がある。
【0012】
また、前述の特許文献2に記載される他の従来の技術では、ガス化溶融炉の上部に大きな空間を占有するフリーボード部をなくし、2次燃焼炉に熱分解ガスを徐々に燃焼させるというフリーボード部と同様な機能を持たせるために、2次燃焼炉に燃焼用空気を供給する送風口を3段以上設けることが提案されるが、1次燃焼炉から導かれる排ガス中のダイオキシン類などを850℃〜1000℃という高温で熱分解するため、2次燃焼炉内で1次燃焼炉からの燃焼排ガスが所定時間、すなわち2秒以上滞留するように、熱分解ガスの流速を遅くしなければならず、したがって2次燃焼炉の空塔断面積が1次燃焼炉よりも大きくなってしまい、1次燃焼炉の小形化は図れるが、2次燃焼炉は大形化してしまうという問題がある。
【0013】
さらに、前述の特許文献1,2に記載される各従来の技術は、高温でガス化溶融して無害化する必要のある産業廃棄物および一般廃棄物を処理対象とする設備を提案するものであるため、ガス化溶融する必要のない廃棄物、すなわち排煙中の煤煙濃度、硫黄酸化物濃度、窒素酸化物濃度、塩化水素濃度およびダイオキシン類濃度などの燃焼による生成物が環境基準などに関する各種の法規定の基準値未満に抑制することができ、かつ発熱量が低く、しかも1〜2t/日未満の少量の可燃ごみに対しては、過大設備となり、運転コストに無駄が生じるという問題がある。
【0014】
本発明の目的は、構成の小形化を図り、運転コストを低減することができる廃棄物熱処理設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、廃棄物が投入される焼却室と、焼却室の下方に設けられ、前記焼却室に連通し、かつ燃焼ガスが供給される溶融室とを有する1次燃焼炉と、
1次燃焼炉の前記溶融室内に、燃焼ガスを供給する第1バーナと、
1次燃焼炉の焼却室内の排ガスが導かれ、この排ガスを燃焼させる燃焼室を有する2次燃焼炉と、
2次燃焼炉の燃焼室内に、燃焼ガスを供給する第2バーナと、
1次燃焼炉の前記焼却室および2次燃焼炉の燃焼室に、燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給手段と、
第1および第2バーナの燃焼状態を、廃棄物を焼却する低負荷燃焼と、廃棄物をガス化溶融する高負荷燃焼とに切り換えるとともに、前記燃焼用空気供給手段の焼却室および燃焼室内への燃焼用空気の供給量を、廃棄物を焼却する低負荷インプット状態と、廃棄物をガス化溶融する高負荷インプット状態とに切り換える制御手段とを含むことを廃棄物熱処理設備である。
【0016】
本発明に従えば、1次燃焼炉の溶融室には、第1バーナから燃焼ガスが供給され、燃焼室には、燃焼用空気供給手段から燃焼用空気が供給される。燃焼用空気供給手段から溶融室に供給される燃焼用空気は、大気がそのまま用いられてもよく、酸素富化空気が用いられてもよい。2次燃焼炉の燃焼室には、第2バーナから燃焼ガスが供給される。
【0017】
第1および第2バーナならびに燃焼用空気供給手段は、制御手段によって制御される。第1および第2バーナの燃焼状態は、制御手段によって、廃棄物を焼却する低負荷燃焼と、廃棄物をガス化溶融する高負荷燃焼とに切り換えるとともに、燃焼用空気供給手段の燃焼室内への燃焼用空気の供給量を、廃棄物を焼却する低負荷インプット状態と、廃棄物をガス化溶融する高負荷インプット状態とに切り換えられる。
【0018】
これによって、高温でガス化溶融して無害化する必要のある産業廃棄物および一般廃棄物を処理対象とする場合には、制御手段によって、第1および第2バーナの燃焼状態が高負荷燃焼状態に設定されるとともに、燃焼用空気供給手段による燃焼室への燃焼用空気の供給が高負荷インプット状態に設定される。
【0019】
また、ガス化溶融する必要のない廃棄物、すなわち排煙中の煤煙濃度、硫黄酸化物濃度、窒素酸化物濃度、塩化水素濃度およびダイオキシン類濃度などの燃焼による生成物が環境基準などに関する各種の法規定の基準値未満に抑制することができ、かつ発熱量が低い廃棄物を処理対象とする場合には、制御手段によって、第1および第2バーナの燃焼状態が低負荷燃焼状態に設定されるとともに、燃焼用空気供給手段による焼却室および燃焼室への燃焼用空気の供給が低負荷インプット状態に設定される。
【0020】
このように第1および第2バーナならびに燃焼用空気供給手段の運転状態が制御手段によって切り換えられるので、廃棄物の種類、すなわち廃棄物の質、形状、性状、燃焼によって発生する排ガスのガス質、燃焼温度および燃焼生成物の有害性の有無などに応じて、最適な運転状態を選択して廃棄物を燃焼させて処理し、第1および第2バーナならびに燃焼用空気供給手段の無駄な運転を可及的に少なくして、運転コストを削減することができる。
【0021】
また、焼却処理とガス化溶融処理とを廃棄物の種類に応じて選択的に切り換えることができるので、焼却処理およびガス化溶融処理の専用設備を個別に設ける必要がなく、1つの設備によって焼却処理およびガス化溶融処理の両方の処理を行うことができ、構成が小形化される。
【0022】
また本発明は、前記1次燃焼炉の焼却室の容積をV1とし、1次燃焼炉の溶融室の容積をV2とし、2次燃焼炉の燃焼室の容積をV3としたとき、2次燃焼炉の燃焼室の容積V3は、1次燃焼炉の焼却室の容積V1と溶融室の容積V2との和(V1+V2)の2.0倍以上でかつ3.0倍以下に選ばれることを特徴とする。
【0023】
本発明に従えば、2次燃焼炉の燃焼室の容積V3は、1次燃焼炉の焼却室の容積V1と溶融室の容積V2との和(V1+V2)の2.0倍以上でかつ3.0倍以下に選ばれるので、1次燃焼炉から供給された排ガスを、2次燃焼炉の燃焼室内で第2バーナによって供給される高温の燃焼ガスと接触させて熱交換させ、ダイオキシン類などの有害ガス成分を熱分解し、要求されるダイオキシン類濃度の基準値に対して充分に低い濃度となるように処理することができる。これによって1次燃焼炉に容積の大きなフリーボード部を設ける必要がなくなり、1次燃焼炉を小形化することができる。
【0024】
さらに本発明は、前記2次燃焼炉の排ガスが供給され、この排ガスから微細な粒子を除去する集塵手段を含むことを特徴とする。
【0025】
本発明に従えば、2次燃焼炉の排ガスが集塵手段に供給され、排ガス中の微細な粒子が集塵され、排ガスから微細な粒子が除去される。
【0026】
さらに本発明は、前記1次燃焼炉は、廃棄物を焼却室へ投入する投入孔が形成される炉頂部を有し、この炉頂部には、焼却室からの熱分解ガスの漏洩を阻止した状態で、廃棄物を前記投入孔に供給する廃棄物供給手段が設けられることを特徴とする。
【0027】
本発明に従えば、1次燃焼炉の炉頂部に廃棄物供給手段が設けられるので、焼却室からの熱分解ガスの漏洩を阻止した状態で、廃棄物を投入孔に供給することができ、炉内からの高温のガスが外部へ漏洩してしまうことが防がれ、炉内温度の低下が抑制され、第1バーナの高負荷燃焼をなるべく少なくして燃料消費量を低減し、運転コストが低減される。
【0028】
さらに本発明は、前記1次燃焼炉には、焼却室と溶融室とを連通し、焼却室および溶融室よりも断面の小さい連通孔が形成されることを特徴とする。
【0029】
本発明に従えば、1次燃焼炉の焼却室と溶融室とは、焼却室および溶融室よりも断面の小さい連通孔によって連通するので、溶融室から燃焼室へ上昇する燃焼ガスの空塔速度が大きくなり、溶融室内での燃焼が促進されるとともに、燃焼室内での流動化が促進され、燃焼効率が向上される。
【0030】
さらに本発明は、前記1次燃焼炉の溶融室には、直円筒状の内周面が臨み、この内周面の軸線に垂直な仮想一平面上における内周円の接線方向に延びる炎孔が連通し、この炎孔を介して前記第1バーナから燃焼ガスが供給されることを特徴とする。
【0031】
本発明に従えば、1次燃焼炉の溶融室には炎孔を介して第1バーナからから燃焼ガスが供給されるので、溶融室内で第1バーナからの燃焼ガスは、溶融室に臨む内周面に沿って回転して渦状の流れとなる、いわばサイクロンと同様な働きを発生させる。これによって溶融室内における流動化層の流動化を促進することができる。また、流動化層を通過した熱分解ガスは、勢いよく上昇し、焼却室内に滞留する熱分解ガスと燃焼用空気供給手段から供給された燃焼用空気とが効率よく撹拌され、燃焼室内における廃棄物の燃焼が促進される。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、第1および第2バーナならびに燃焼用空気供給手段の運転状態が制御手段によって切り換えられるので、最適な運転状態を選択して廃棄物を燃焼させて処理し、第1および第2バーナならびに燃焼用空気供給手段の無駄な運転を可及的に少なくして、運転コストを削減することができる。また、焼却処理およびガス化溶融処理の専用設備を個別に設ける必要がなく、1つの設備によって焼却処理およびガス化溶融処理の両方の処理を行うことができ、構成が小形化される。
【0033】
また本発明によれば、2次燃焼炉の燃焼室の容積V3は、1次燃焼炉の焼却室の容積V1と溶融室の容積V2との和(V1+V2)の2.0倍以上でかつ3.0倍以下に選ばれるので、1次燃焼炉から供給された排ガスを、2次燃焼炉の燃焼室内で第2バーナによって供給される高温の燃焼ガスと接触させて熱交換させ、ダイオキシン類などの有害ガス成分を熱分解することができる。これによって1次燃焼炉に容積の大きなフリーボード部を設ける必要がなくなり、1次燃焼炉を小形化することができる。
【0034】
さらに本発明によれば、2次燃焼炉の排ガスが集塵手段に供給され、排ガス中の微細な粒子が集塵され、排ガスから微細な粒子を除去することができる。
【0035】
さらに本発明によれば、1次燃焼炉の炉頂部に廃棄物供給手段が設けられるので、焼却室からの熱分解ガスの漏洩を阻止した状態で、廃棄物を投入孔に供給することができ、炉内からの高温のガスが外部へ漏洩してしまうことが防がれ、炉内温度の低下が抑制され、第1バーナの運転コストを低減することができる。
【0036】
さらに本発明によれば、1次燃焼炉の焼却室と溶融室とは、焼却室および溶融室よりも断面の小さい連通孔によって連通するので、溶融室から燃焼室へ上昇する燃焼ガスの流速が大きくなり、溶融室内での燃焼が促進されるとともに、燃焼室内での流動化が促進され、燃焼効率を向上することができる。
【0037】
さらに本発明によれば、1次燃焼炉の溶融室には炎孔を介して第1バーナからから燃焼ガスが供給されるので、溶融室内で第1バーナからの燃焼ガスは、溶融室に臨む内周面に沿って回転して渦状の流れとなる、いわばサイクロンと同様な働きを発生させる。これによって溶融室内における流動化層の流動化を促進することができる。また、流動化層を通過した熱分解ガスは、勢いよく上昇し、焼却室内に滞留する熱分解ガスと燃焼用空気供給手段から供給された燃焼用空気とが効率よく撹拌され、燃焼室内における廃棄物の燃焼を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
図1は、本発明の実施の一形態の廃棄物熱処理設備1を示す一部を切欠いた平面図であり、図2は図1の切断面線II−IIから見た1次燃焼炉4の鉛直断面図である。本実施の形態の廃棄物熱処理設備1は、廃棄物が投入される焼却室2と、焼却室2の下方に設けられ、焼却室2に連通し、かつ燃焼ガスが供給される溶融室3とを有する1次燃焼炉4と、1次燃焼炉4の溶融室3内に、燃焼ガスを供給する第1バーナ5と、1次燃焼炉4の焼却室2内の排ガスが導かれ、この排ガスを燃焼させる燃焼室6を有する2次燃焼炉7と、2次燃焼炉7の燃焼室6内に、燃焼ガスを供給する第2バーナ8と、1次燃焼炉4の焼却室2および2次燃焼炉7の燃焼室6に、燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給手段であるファン9と、第1および第2バーナ7,8の燃焼状態を、廃棄物を焼却する低負荷燃焼と、廃棄物をガス化溶融する高負荷燃焼とのいずれか一方に切り換えるとともに、燃焼用空気供給手段9の焼却室2および燃焼室6への燃焼用空気の供給量を、廃棄物を焼却する低負荷インプット状態および廃棄物をガス化溶融する高負荷インプット状態のいずれかの一方に切り換える制御手段10と、2次燃焼炉7の排ガスが供給され、この排ガスから微細な粒子を除去する集塵手段11と、集塵手段11に除塵された清浄な排ガスを大気放散する煙突12と、1次燃焼炉4の焼却室6に上方から廃棄物を投入する廃棄物供給装置13とを含む。
【0039】
廃棄物は、都市ごみなどの一般廃棄物と産業廃棄物とを処理対象物とし、これらの廃棄物は、可燃物および不燃物の双方を含む。可燃物には、廃プラスチック、紙類、廃油および木質物などがあり、不燃物には、金属類およびガラスなどがあるが、本実施の形態では、可燃物だけあってもよく、不燃物だけであってもよく、可燃物と不燃物とが混在する廃棄物であってもよい。このような廃棄物を炉内へ投入するための前記廃棄物供給装置13は、手動で開閉することができる炉蓋によって実現されてもよく、ロータリフィーダによって実現されてもよい。
【0040】
本実施の形態では、含水量の多い生ごみ、使用済み紙おむつ、ガーゼ、プラスチック製注射器、金属製注射針、点滴用薬液パック、不要になった書類などの紙類などの可燃物と不燃物とが混在した廃棄物が発生する病院などの医療施設に設置される廃棄物熱処理設備について、一例として説明するが、設置対象はこれに限るものではなく、工場、村落などのごみ発生量が1〜2t/日以下の小規模地域および研究施設などに対しても、本発明に従う廃棄物熱処理設備を設置して、廃棄物を処理することができる。
【0041】
1次燃焼炉4は、耐火物層15の外表面が鉄皮16によって外囲される大略的に直円筒状の炉本体17と、炉本体17から半径方向外方に突出し、燃焼室6内を点検するための点検口部18と、炉本体17に、炉本体17の図1の紙面に垂直な中心軸線に関して点検口部18から周方向に第1角度θ1の位置に炉本体17から半径方向外方に突出して設けられ、焼却室2内の燃焼状況を外部から覗いて確認するための略円錐台状の確認口部19と、炉本体17の中心軸線に関して点検口部18から周方向に第2角度θ2をなす一半径線から平行に距離ΔL1だけずれた位置に、炉本体17から半径方向外方に突出して設けられる第1バーナ取付け部20と、炉本体17に、点検口部18とは中心軸線に関して軸対称の位置に炉本体17から半径方向外方に突出して設けられ、2次燃焼炉7が接続される円柱状の第1接続部21とを有する。点検口部18、確認口部19、第1バーナ取付け部20および第1接続部21は、炉本体17と同様に、耐火物の外周面が鉄皮によって覆われ、炉本体17と一体に形成される。
【0042】
点検口部18には、図示しない複数のボルトおよびナットによって点検用蓋体22が着脱自在に設けられ、点検時に点検用蓋体22を外して燃焼室6内の炉壁の熱による損耗状況および破損状況などの点検を行うことができる。この点検用蓋体22は、円板状の鋼板からなる。
【0043】
確認口部19には、円環状のフレームに透光性を有する耐熱性透過ガラスが嵌着された確認用パネル23が、図示しない複数のボルトおよびナットによって着脱自在に設けられる。確認口部19は、焼却室2に向かって拡開し、焼却室2に連通する円錐台状の透孔24を有し、外部から確認用パネル23の耐熱性および耐火性を有する透光性ガラスを介して、焼却室2内を全領域にわたって視認することができる。
【0044】
確認用パネル23は、確認口部19に着脱自在に設けられるので、耐熱性透過ガラスが高温の熱によって損耗し、あるいは廃棄物等の衝突などの機械的外力の作用によって破損したとき、確認用パネル23を確認口部19から外して損耗または破損した耐熱性透過ガラスを容易に交換することができる。
【0045】
第1バーナ取付け部20には、第1バーナ5が図示しない複数のボルトによって着脱自在に設けられる。この第1バーナ5は、燃料タンク27から供給される灯油などの液体燃料を霧化し、気化した燃料ガスと燃焼用空気とを混合して燃焼させ、その燃焼ガスを溶融室3内へ噴き付ける噴霧形油バーナによって実現される。
【0046】
このような第1バーナ5の燃焼ガスを1次燃焼炉4の溶融室3に導くために、炉本体17および第1バーナ取付け部20には、炉本体17および第1バーナ取付け部20を貫通して、溶融室3に向かって拡開する円錐台状の炎孔28が形成される。この炎孔28は、溶融室3に臨む直円筒状の内周面上で開口し、この内周面の軸線に垂直な仮想一水平面上における内周円に対する接線に平行な方向に延びる。
【0047】
第1接続部21は、燃焼室6からの排ガスを2次燃焼炉7に導く流出側排ガス通路29が形成される。この流出側排ガス通路29は、燃焼室6の炉頂部30付近の上部空間と第1接続部21の端面とに連通する。
【0048】
この流出側排ガス通路29を介して1次燃焼炉4から2次燃焼炉7へ供給される排ガスの流量は、その排ガス中のダイオキシン類を2次燃焼炉7の燃焼室6内で充分に熱分解して無害化するために必要とされる時間、たとえば2秒以上でかつ5秒以下の範囲で滞留するように、1次燃焼炉4の焼却室2へ燃焼用空気の供給量が調整される。
【0049】
このような焼却室2への燃焼用空気の供給量は、図示しない電磁弁の開度を制御手段10によって制御することによって達成される。この制御手段10は、機側操作盤31に実装されたシーケンスコントローラによって実現され、前記電磁弁の開度を予め設定した流量が達成されるように制御する。
【0050】
図3は、図2の切断面線III−IIIから見た1次燃焼炉4の水平断面図であり、図4は図2の切断面線IV−IVから見た1次燃焼炉4の水平断面図である。前述した1次燃焼炉4において、焼却室2と溶融室3とは、連通孔33によって上下に連通し、溶融室3内の燃焼ガスが連通孔33を介して上方の焼却室2に導かれる。このとき、連通孔33の図2の紙面に垂直な水平断面積A3は、焼却室2の水平断面積A1の5%以上でかつ15%以下でかつ溶融室3の水平断面積A2の10%以上でかつ20%以下に選ばれる。焼却室2の水平断面積A1は、溶融室3の水平断面積A2よりも大きく、溶融室3の水平断面積A2の1.5倍以上でかつ2.0倍以下に選ばれる。
【0051】
このように焼却室2、溶融室3および連通孔33の水平断面積A1,A2,A3が選ばれることによって、前記連通孔33はいわばオリフィスとして機能し、溶融室3内の高温の燃焼ガスを、焼却室2および溶融室3に比べて水平断面積A3が小さい(A3<A2<A1)連通孔33によって流速を大きくして焼却室2へ導き、焼却室2内の廃棄物を撹拌して、なるべく小さい容積の焼却室2で廃棄物を燃焼させ、2次燃焼炉7への未燃物の移送量を可及的に少なくすることができる。
【0052】
前述の焼却室2は、炉本体17の直円筒状の内周面と、内周面の上端に直角に連なる円形の炉頂面と、炉頂面に下方から臨み、内周面の下端に連なる円錐台状の底面とによって規定される。また、溶融室3は、炉本体17の直円筒状の内周面と、内周面の上端に直角に連なる円環状の上面と、上面に下方から臨み、内周面の下端に連なる円錐台状の炉底面とによって規定される。さらに、連通孔33は、炉本体17の直円筒状の内周面によって規定される。
【0053】
炉本体17の炉底部34には、溶融室3内で廃棄物から溶融分離された金属などの溶融スラグを炉外へ取り出すためのスラグ排出孔35が形成され、このスラグ排出孔35にはスラグ排出管36の上端部が同軸に接続され、スラグ排出管36の下端部は複数のジャッキによって開閉可能な蓋体37によって塞がれている。
【0054】
スラグ排出孔35は、溶融室3の円錐台状の炉底面の中央の最下部で開口し、溶融室3内で溶融した溶融金属などのスラグは前記炉底面によってスラグ排出孔35内に流れ込み、蓋体37を外してスラグ排出管37を開放することによって外部へ排出して、耐火物からなるスラグ回収容器に回収される。
【0055】
焼却室2は、炉本体17の中心軸線m1と同軸に配置され、溶融室3はその軸線m2が前記中心軸線m1に対して距離ΔL2だけ偏心して配置される。これによって、1次燃焼炉4の溶融室3に炎孔28を介して第1バーナ5の高温燃焼ガスが供給されと、溶融室3内で第1バーナ5からの燃焼ガスは、溶融室3に臨む内周面に沿って回転して渦状の流れとなり、いわばサイクロンと同様な働きを発生させる。これによって溶融室3内の流動化を促進することができる。また、流動化層を通過した熱分解ガスは、連通孔33を経て勢いよく上昇し、焼却室2内に滞留する熱分解ガスを撹拌し、燃焼用空気供給手段9から供給された燃焼用空気と混合して、焼却室2内における燃焼が促進され、廃棄物供給装置13から投入された廃棄物を高温で確実に燃焼させることができる。
【0056】
図5は、図1の切断面線V−Vから見た1次燃焼炉4および2次燃焼炉7の鉛直断面図であり、図6は図1の切断面線VI−VIから見た断面図である。前記2次燃焼炉7は、耐火物からなる耐火物層41の外表面が鉄皮42によって覆われた中空の略立方体状の炉本体43と、1次燃焼炉4の第1接続部21に複数のボルトおよびナットなどによって着脱可能にフランジ接合される第2接続部44と、点検口部45と、燃焼室6から排ガスを排気する排気口が形成される第3接続部46と、焼却灰を取り出すための焼却灰取出し口部47と、第2バーナ8が取り付けられる第2バーナ取付け部48とを有する。これらの第2接続部44、点検口部45、第3接続部46、焼却灰回収口部47および第2バーナ取付け部48は、前記炉本体43に一体に形成され、外表面が炉本体43と同様な鉄皮によって覆われている。
【0057】
前記炉本体43は、互いに直角に連なり、略鉛直に配置される水平断面が長方形の第1〜第4側壁部51,52,53,54と、各側壁部51〜54の各上端部に連なり、燃焼室6に上方から臨んで略水平に配置される炉頂部55と、各側壁部51〜54の各下端部に連なり、燃焼室6に下方から臨んで略水平に配置される炉底部56とを有する。
【0058】
第1側壁部51は、1次燃焼炉4に臨み、この第1側壁部51には前記第2接続部44と前記流出側排ガス通路29に連通する流入側排ガス通路57とが設けられ、これらの流出側排ガス通路29および流入側排ガス通路57を経て、1次燃焼炉4の焼却室6から2次燃焼炉7の燃焼室6の炉頂部55付近の上部空間へ、排ガスが導かれて供給される。この排ガスは、1次燃焼炉4の焼却室6において未燃の微細な粒子および不完全な熱分解成分を含む含塵ガスであり、この含塵ガスが2次燃焼炉7の燃焼室6において850℃〜950℃の高温で燃焼し、ダイオキシン類などの有害物質が熱分解される。
【0059】
第2側壁部52は、燃焼室6を挟んで前記第1側壁部52と水平方向に対向し、前記点検口部45と焼却灰取り出し口部47とが設けられる。これらの点検口部45および焼却灰取出し口部47には、複数のボルトなどによって蓋体58,59が着脱可能にそれぞれ装着され、燃焼室6内の点検・修理時には点検口部45の蓋体58を外して内部の点検・修復などの作業を行うことができ、また燃焼室6内の焼却灰を撤去するときには、焼却灰取出し口部47の蓋体59を外して、炉底部56に堆積した焼却灰の取出し作業を行うことができる。
【0060】
第3側壁部53には、壁面から突出し、第2バーナ8が取り付けられる第2バーナ取付け部48と、第2バーナ取付け部48に取り付けられた第2バーナ8の燃焼ガスを燃焼室6に導く円錐台状の炎孔61とが形成される。第2バーナ取付け部48には、第2バーナ8が図示しない複数のボルトによって着脱自在に設けられる。第2バーナ8には、前述の第1バーナ5と同様に、燃料タンク27から供給される灯油などの液体燃料を霧化し、気化した燃料ガスと外部から取り込んだ燃焼用空気とを混合して燃焼させ、その燃焼ガスを燃焼室6内へ噴き付ける噴霧形油バーナによって実現される。このような第2バーナ8の燃焼ガスを2次燃焼炉7の燃焼室6に導くために、炉本体43および第2バーナ取付け部48には、炉本体17および第2バーナ取付け部48を貫通して、燃焼室6に向かって拡開する円錐台状の前記炎孔61が形成される。
【0061】
第4側壁部54には、前記第3接続部46と、燃焼室6の排ガスを排出する流出側排ガス通路62とが設けられる。第3接続部46には、後述の集塵手段11に導くための排ガス誘導管63が接続される。
【0062】
このような2次燃焼炉7の燃焼室6の容積V3は、1次燃焼炉4の焼却室2の容積をV1とし、1次燃焼炉4の溶融室3の容積をV2とし、2次燃焼炉7の燃焼室6の容積をV3としたとき、1次燃焼炉4の焼却室2の容積V1と溶融室3の容積V2との和(V1+V2)の2.0倍以上でかつ3.0倍以下に選ばれる。
【0063】
これによって、1次燃焼炉4から供給された排ガスは、2次燃焼炉7の燃焼室6内で第2バーナ8によって供給される高温の燃焼ガスと接触して熱交換し、ダイオキシン類とそれらの前駆物質(塩化ベンゼンなど)が完全に酸化分解する高温とし、ダイオキシン類などの有害ガス成分を熱分解し、要求されるダイオキシン類濃度の基準値を満たす低い濃度となるように処理することができる。したがって1次燃焼炉4に燃焼ガスを熱分解するための高温還元雰囲気を維持するために容積の大きなフリーボード部を設ける必要がなくなり、小形で小規模の1次燃焼炉4によって、廃棄物を焼却または溶融して無害化し、減容化および減量化を図ることができる。
【0064】
図7は、集塵手段11の構成を示す正面図であり、図8は図7の右方から見た側面図である。前記集塵手段11は、煙管を介して2次燃焼炉7からの排ガスがそれぞれ供給される第1および第2サイクロン71,72と、第1および第2サイクロン71,72から排出される集塵後の排ガスが導かれるヘッダ73と、第1および第2サイクロン71,72の各下端部がそれぞれ接続される集塵ダクト74と、ヘッダ73内の排ガスを煙突12に導く誘導煙管75とを含む。
【0065】
前記2次燃焼炉7から排ガス誘導管63を介して第1および第2サイクロン71,72の上部空間内に供給された含塵ガスは、第1および第2サイクロン71,72内で強力な旋回下降流となり、コニカル部で反転・上昇し、この間にダストは強い遠心力を受けて外筒に達し、さらに旋回流とともに下降し、コニカル部の開口部から集塵ダクト74に排出される。反転旋回流は、サイクロン中心部を旋回しながら上昇し、排気筒76,77を経て清浄ガスとしてヘッダ73へ導かれ、このヘッダ73から煙突12へ導かれて、大気へ放散される。このような集塵手段11によって、2次燃焼炉7から供給された含塵ガス中の微細な粒子が集塵されて除去される。
【0066】
上記のように構成される廃棄物熱処理設備1において、1次燃焼炉4の溶融室3には、第1バーナ5から燃焼ガスが供給され、焼却室2には、燃焼用空気供給手段9から燃焼用空気が供給される。燃焼用空気供給手段9から溶融室3に供給される燃焼用空気は、大気がそのまま用いられてもよく、酸素富化空気が用いられてもよい。2次燃焼炉7の燃焼室6には、第2バーナ8から燃焼ガスが供給される。
【0067】
第1および第2バーナ5,8ならびに燃焼用空気供給手段9は、制御手段10によって制御される。第1および第2バーナ5,8の燃焼状態は、制御手段10によって、廃棄物を焼却する低負荷燃焼と、廃棄物をガス化溶融する高負荷燃焼とに切り換えるとともに、燃焼用空気供給手段9の燃焼室6内への燃焼用空気の供給量を、廃棄物を焼却する低負荷インプット状態と、廃棄物をガス化溶融する高負荷インプット状態とに切り換えられる。
【0068】
これによって、高温でガス化溶融して無害化する必要のある産業廃棄物および一般廃棄物を処理対象とする場合には、制御手段10によって、第1および第2バーナ5,8の燃焼状態が高負荷燃焼状態に設定されるとともに、燃焼用空気供給手段9による燃焼室6への燃焼用空気の供給が高負荷インプット状態に設定される。
【0069】
また、ガス化溶融する必要のない廃棄物、すなわち排煙中の煤煙濃度、硫黄酸化物濃度、窒素酸化物濃度、塩化水素濃度およびダイオキシン類濃度などの燃焼による生成物が環境基準などに関する各種の法規定の基準値未満に抑制することができ、かつ発熱量が低い廃棄物を処理対象とする場合には、制御手段10によって、第1および第2バーナ5,8の燃焼状態が低負荷燃焼状態に設定されるとともに、燃焼用空気供給手段9による燃焼室6への燃焼用空気の供給が低負荷インプット状態に設定される。
【0070】
このように第1および第2バーナ5,8ならびに燃焼用空気供給手段9の運転状態が制御手段10によって切り換えられるので、廃棄物の種類、すなわち廃棄物の質、形状、性状、燃焼によって発生する排ガスのガス質、燃焼温度および燃焼生成物の有害性の有無などに応じて、最適な運転状態を選択して廃棄物を燃焼させて処理し、第1および第2バーナ5,8ならびに燃焼用空気供給手段9の無駄な運転を可及的に少なくして、運転コストを削減することができる。
【0071】
また、焼却処理とガス化溶融処理とを廃棄物の種類に応じて選択的に切り換えることができるので、焼却処理およびガス化溶融処理の専用設備を個別に設ける必要がなく、1つの設備によって焼却処理およびガス化溶融処理の両方の処理を行うことができ、構成が小形化され、病院などの医療施設、村落などの小規模地域および工場などに対して、廃棄物の小形熱処理設備として設置し、1t/日程度以下の少量のごみを容易に低コストで処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の一形態の廃棄物熱処理設備1を示す一部を切欠いた平面図である。
【図2】図1の切断面線II−IIから見た1次燃焼炉4の鉛直断面図である。
【図3】図2の切断面線III−IIIから見た1次燃焼炉4の水平断面図である。
【図4】図2の切断面線IV−IVから見た1次燃焼炉4の水平断面図である。
【図5】図1の切断面線V−Vから見た1次燃焼炉4および2次燃焼炉7の鉛直断面図である。
【図6】図1の切断面線VI−VIから見た断面図である。
【図7】集塵手段11の構成を示す正面図である。
【図8】図7の右方から見た側面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 廃棄物熱処理設備
2 焼却室
3 溶融室
4 1次燃焼炉
5 第1バーナ
6 燃焼室
7 2次燃焼炉
8 第2バーナ
9 燃焼用空気供給手段
10 制御手段
11 集塵手段
12 煙突
13 廃棄物供給装置
15 耐火物層
16 鉄皮
17 炉本体
18 点検口部
19 確認口部
20 第1バーナ取付け部
21 第1接続部
27 燃料タンク
30 炉頂部
31 機側操作盤
44 第2接続部
46 第3接続部
48 第2バーナ取付け部
63 排ガス誘導管
71 第1サイクロン
71 第2サイクロン
73 ヘッダ
74 集塵ダクト
75 誘導煙管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物が投入される焼却室と、焼却室の下方に設けられ、前記焼却室に連通し、かつ燃焼ガスが供給される溶融室とを有する1次燃焼炉と、
1次燃焼炉の前記溶融室内に、燃焼ガスを供給する第1バーナと、
1次燃焼炉の焼却室内の排ガスが導かれ、この排ガスを燃焼させる燃焼室を有する2次燃焼炉と、
2次燃焼炉の燃焼室内に、燃焼ガスを供給する第2バーナと、
1次燃焼炉の前記焼却室および2次燃焼炉の燃焼室に、燃焼用空気を供給する燃焼用空気供給手段と、
第1および第2バーナの燃焼状態を、廃棄物を焼却する低負荷燃焼と、廃棄物をガス化溶融する高負荷燃焼とに切り換えるとともに、前記燃焼用空気供給手段の焼却室および燃焼室内への燃焼用空気の供給量を、廃棄物を焼却する低負荷インプット状態と、廃棄物をガス化溶融する高負荷インプット状態とに切り換える制御手段とを含むことを廃棄物熱処理設備。
【請求項2】
前記1次燃焼炉の焼却室の容積をV1とし、1次燃焼炉の溶融室の容積をV2とし、2次燃焼炉の燃焼室の容積をV3としたとき、2次燃焼炉の燃焼室の容積V3は、1次燃焼炉の焼却室の容積V1と溶融室の容積V2との和(V1+V2)の2.0倍以上でかつ3.0倍以下に選ばれることを特徴とする請求項1記載の廃棄物熱処理設備。
【請求項3】
前記2次燃焼炉の排ガスが供給され、この排ガスから微細な粒子を除去する集塵手段を含むことを特徴とする請求項1または2記載の廃棄物熱処理設備。
【請求項4】
前記1次燃焼炉は、廃棄物を焼却室へ投入する投入孔が形成される炉頂部を有し、この炉頂部には、焼却室からの熱分解ガスの漏洩を阻止した状態で、廃棄物を前記投入孔に供給する廃棄物供給手段が設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の廃棄物熱処理設備。
【請求項5】
前記1次燃焼炉には、焼却室と溶融室とを連通し、焼却室および溶融室よりも断面の小さい連通孔が形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の廃棄物熱処理設備。
【請求項6】
前記1次燃焼炉の溶融室には、直円筒状の内周面が臨み、この内周面の軸線に垂直な仮想一平面上における内周円の接線方向に延びる炎孔が連通し、この炎孔を介して前記第1バーナから燃焼ガスが供給されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の廃棄物熱処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−284152(P2006−284152A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108668(P2005−108668)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(505124535)横田建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】