説明

廃水処理装置

【課題】蛋白質などの発泡性物質が含まれている廃水であっても、発泡を防止して、アンモニアなどの揮発性物質を気相中に減圧状態でストリッピングすることを課題とする。
【解決手段】揮発性汚濁物質及び発泡性物質を含有する廃水をストリッピング槽11内に供給し、前記ストリッピング槽11内を減圧状態にした状態で前記廃水を加温ガスと接触させることにより、前記揮発性汚濁物質を気相中にストリッピングする構成であることを特徴とする廃水処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア等の揮発性汚濁物質と、蛋白質等の発泡性物質の両方を含む廃水
処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性汚濁物質に対して、ガスを供給してストリッピングして処理する廃水処理装置は、種々開発されている。
図14は、従来の廃水処理装置の一例を示す(特許文献1)。有機性廃水は、嫌気処理槽1に供給されて有機性廃水中の有機物質が除去される。嫌気処理槽1で発生した硫化水素などの揮発性物質は、空気源から曝気散気装置2を介してストリッピング槽3内に供給される空気と接触することによって、気相に追い出される(ストリッピング)。このストリッピングされたガス中の硫化水素は、脱臭装置4によって除去される。硫化水素を除去された処理水は、ストリッピング槽3から放流水として排出される。
【0003】
図15は、従来の他の廃水処理装置の例を示す(特許文献2)。この廃水処理装置では、ストリッピング槽3の下流側に散気装置5を備えた好気性処理槽6を配置し、この好気性処理槽6から処理水を放流水として排出するものである。
【特許文献1】特開平7−16594号公報
【特許文献2】特開平7−16593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの従来の廃水処理装置では、以下の問題が生じた。
(1)水中に蛋白質や界面活性剤などの発泡性物質が含まれている場合、空気源から供給される空気とこれらの発泡性物質とが接触して、気泡が発生する発泡状態になった。この気泡はストリッピング槽3内に充満し、ストリッピング効率の低下を生じた。また、この発泡状態によって、放流水への汚濁物質の流出による水質悪化、脱臭装置への泡の混入により脱臭装置4の運転不能などの問題も生じた。
【0005】
(2)また、ストリッピング槽3の下流側に、空気源から散気装置5を介して空気を供給して好気処理する、好気性処理槽6を設置しているような廃水処理装置の場合、気泡などの原因で揮発性物質,即ちアンモニア(NH)がストリッピング槽3で十分除去されない場合があった。このような場合、下流側の好気性処理槽6内へのアンモニア濃度が高くなって硝化反応の必要酸素量が増大し(下記式(1))、運転電力の約50%を占める空気量が増大し、ランニングコストが増大するといった問題もあった。
【0006】
NH+2O → NO+HO+2H …(1)
(3)さらに、図15のように下流側に好気性処理槽6が有る場合、炭素濃度と窒素濃度との比率(C/N比)が高い方が処理効率は高くなるが、アンモニア濃度が増大するとC/N比が低くなり、下流側の好気性処理槽6の処理効率が低下し、放流水中の水質が悪化するといった問題も生じた。
【0007】
本発明はこうした事情を考慮してなされたもので、蛋白質などの発泡性物質が含まれている廃水であっても、発泡を防止して、アンモニアなどの揮発性物質を気相中に減圧状態でストリッピングする廃水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、図16に示すように、アンモニアと蛋白質を含む廃水中を真空ポンプにより減圧状態として加温してストリッピングすることによって、温度(図中の線a)及びpH(図中の線b)が時間の経過とともにどのように変化するかについて実験を行った。その結果、まずCOのストリッピングに伴うpHの上昇が発生した。なお、ストリッピングのスタート時には気泡が発生したが、この状態で気泡が消失した。さらに、ストリッピングを継続すると、約35分後からpHが低下し始め、アンモニアの減少が生じた。この実験では、アンモニアイオン濃度が2000mg/Lから1000mg/Lまで減少した。
【0009】
よって、廃水を減圧下で加温してエアレーション(空気供給)または散水することによって気泡を脱気させ、pHを上昇させることによって、気泡を発生することなく、アンモニアをストリッピングする可能性があることを見出した。
【0010】
本発明に係る廃水処理装置は、揮発性汚濁物質及び発泡性物質を含有する廃水をストリッピング槽内に供給し、前記ストリッピング槽内を減圧状態にした状態で前記廃水を加温ガスと接触させることにより、前記揮発性汚濁物質を気相中にストリッピングする構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蛋白質や界面活性剤などの発泡性物質を含む廃水であっても、発泡抑制剤などの薬品の添加なしに、発泡を防止しながら、アンモニアなどの揮発性物質のストリッピングが可能となる。また、廃水処理装置の前処理としてアンモニア濃度を低減させることによって、後段の廃水処理装置の空気動力を大幅に削減したり、廃水のC/N比を高くして廃水処理効率を高めたりすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の廃水処理装置について更に詳しく説明する。
(1) 上述したように、本発明の廃水処理装置は、揮発性汚濁物質及び発泡性物質を含有する廃水をストリッピング槽内に供給し、ストリッピング槽内を減圧状態にした状態で廃水を加温ガスと接触させて揮発性汚濁物質を気相中にストリッピングするものである。
(2) 上記(1)の廃水処理装置において、ストリッピング槽内に隔壁を設置することが好ましい。ここで、隔壁とは、空隙部を有した隔壁、あるいは多数の孔を有した隔壁を示す。なお、前者の場合、複数の隔壁を上下方向に空隙部が交互に位置するように配置することが好ましい。上記隔壁を設置することにより、水のストリッピング槽内での滞留時間が長くなり、それによって反応時間も長くなり、ストリッピング効率が増加する。
【0013】
(3) 上記(1)の廃水処理装置において、揮発性汚濁物質及び発泡性物質を含有する廃水を減圧状態で加温ガスと接触させて廃水中のCOをストリッピングする第1のストリッピング槽と、この第1のストリッピング槽内で処理された処理水が供給され、この処理水を減圧状態で加温ガスと接触させて処理水中のアンモニアをストリッピングする第2のストリッピング槽を具備した構成にすることが好ましい。こうした構成によれば、第1のストリッピング槽でCOをストリッピングできるので、第2のストリッピング槽でのアンモニアの除去効率を高めることができる。
【0014】
(4) 上記(1)の廃水処理装置において、減圧状態で加温ガスと接触させる際、金属イオンを添加させることにより、金属化合物を生成することが好ましい。こうした構成によれば、金属化合物を処理水とともに排出して有価物として回収できる。
(5) 上記(1)の廃水処理装置において、ストリッピングした揮発性汚濁物質を除去する揮発性汚濁物質除去装置を具備することが好ましい。こうした構成によれば、除去装置で揮発性汚濁物質例えばアンモニアを含むガスを吸着除去できるので、その濃度を薄めた状態で大気に放散することが可能となる。
【0015】
(6) 上記(1)の廃水処理装置において、発泡性物質が蛋白質であって、この蛋白質を加熱凝固させる温度で加温ガスを接触させることが好ましい。こうした構成によれば、蛋白質凝固の制御を簡易に行うことができる。
(7) 上記(1)の廃水処理装置において、ストリッピング槽の下流側に嫌気性処理槽を有することが好ましい。こうした構成によれば、ストリッピング槽を経た有機性排水中に残存したアンモニアや有機物を嫌気性処理槽で分解除去することができる。
(8) 上記(1)の廃水処理装置において、ストリッピング槽の下流側に好気性処理槽を有することが好ましい。こうした構成によれば、下水処理プロセスにおいては、ブロア等の動力を低減することができる。また、C/N比を高くできるので、有機性排水中の有機物除去効率が高まり、処理水中の有機物濃度を低減して清澄な処理水が得られる。
【0016】
(9) 上記(1)の廃水処理装置において、ストリッピング槽の下流側に嫌気性処理槽及び好気性処理槽が順次を有することが好ましい。こうした構成によれば、嫌気性処理槽では高濃度の有機性排水の処理に強く、好気性処理槽では低濃度の有機性排水の処理に強いので、高濃度廃水を河川放流できるまで処理することができる。
(10) 上記(1)の廃水処理装置において、ストリッピング槽の上流側に嫌気性処理槽を配置し、ストリッピング槽の下流側に好気性処理槽を配置することが好ましい。こうした構成によれば、有機性廃水中に含まれるアンモニアなどの揮発性汚濁物質のみならず、嫌気性処理槽で発生した硫化水素、メルカプタンなどの副生成物もストリッピング槽で除去されるため、イオウ成分などの処理も可能となる。
【0017】
次に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、本実施形態は下記に述べることに限定されない。
(第1の実施形態):請求項1に対応
図1を参照する。図中の符番11は、ストリッピング槽を示す。このストリッピング槽11内の上部には、散水装置12が配置されている。散水装置12には、揮発性汚濁物質と発泡性物質を含有する有機性廃水Aを供給する給水管13が接続されている。ストリッピング槽11の下部には、処理水Bを排出する排水管14が接続されている。ストリッピング槽11の下部には、例えば水蒸気等の加温ガスCをストリッピング槽11内に供給するガス供給管15が接続されている。ストリッピング槽11の天井部には、真空ポンプ16を介装したガス排出管17が接続されている。このガス排出管17からストリッピングガスDが排出される。
【0018】
次に、こうした構成の廃水処理装置の作用について説明する。
図1に示すように、散水装置12から散水された有機性排水Aは、ストリッピング槽11の下部から供給された供給された加温ガスCと接触する。この接触の過程で、有機性排水A中のCOがストリッピングされて、pHが上昇した後に、有機性廃水A中のアンモニアもストリッピングされることとなる。ストリッピングガスDは、真空ポンプ16を介装したガス排出管17を介して排出される。一方、有機性排水A中のアンモニアが低減した水は、ストリッピング槽11を流下して、排水管14を介して処理水Bとして排出される。
【0019】
第1の実施形態によれば、1つのストリッピング槽11のみで、COのストリッピングとアンモニアのストリッピングを両方行うので、システムがシンプルかつ低コストになる。また、上部に散水装置12、下部に加温ガスCを供給するガス供給管15を接続して、水とガスの流れが逆である向流方式を適用したので、水とガスとの接触効率が増加するためにストリッピング効率が高くなる。
【0020】
(第2の実施形態):請求項2に対応
図2を参照する。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略する。
図2中の符番21,22,23は、ストリッピング槽11内に上部側から順次水平に設けられた隔壁を示す。隔壁21,22,23は交互に空隙部21a,22a,23aを有するように配置されている。
こうした構成の廃水処理装置の作用は次のとおりである。即ち、散水装置12で散水された有機性排水Aが隔壁21〜23に衝突する際、水滴が小さくなることによって水中の表面積が小さくなる。従って、表面積が小さくなることによって、加温ガスとの接触効率が高まるので、COやアンモニアの気相中へのストリッピング効率も上昇する。
【0021】
第2の実施形態によれば、隔壁21〜23をそれらの空隙部21a,22a,23aが交互に位置するようにストリッピング槽11内に配置したので、水の滞留時間が長くなり、それによって反応時間も長くなり、ストリッピング効率が増加する。
なお、図2の変形例として、図3のように、隔壁21〜23の代わりに、複数の孔24aを有する隔壁24を複数個高さ方向に配置した構成にしてもよい。こうした構成にすれば、有機性排水は孔部分で散水されるので、散水効率が高まり、表面積が小さくなる。
【0022】
(第3の実施形態):請求項3に対応
図4を参照する。但し、図1,2と同部材は同符番を付して説明を省略する。
図中の符番31は、揮発性汚濁物質及び発泡性物質を含有する有機性排水Aを、減圧状態で加温ガスCと接触させて有機性排水A中のCOをストリッピングする第1のストリッピング槽を示す。また、符番32は、第1のストリッピング槽31で処理した処理水を、減圧状態で加温ガスCと接触させてアンモニアをストリッピングする第2のストリッピング槽を示す。第1,第2のストリッピング槽31,32内の上部には、夫々散水装置12が配置されている。第1のストリッピング槽31の下部と第2のストリッピング槽32の散水装置12とはポンプ33を介装した水配管34により接続されている。
【0023】
第1のストリッピング槽31の上部には、第1の真空ポンプ35aを介装したガス排出管36が接続されている。第2のストリッピング槽32の上部には、第2の真空ポンプ35bを介装したガス排出管37が接続されている。前記ガス排出管36,37からは夫々ストリッピングガスD1,D2が排出される。第2のストリッピング槽32の下部には排水管38が接続され、この排水管39より処理水が排出される。
【0024】
こうした構成の廃水処理装置の作用は次のとおりである。即ち、第1のストリッピング槽31では、有機性排水A中のCOをストリッピングさせる。それによって、COが低減した水はpHが高い状態になる。この水は、ポンプ33を駆動することによって水配管34を介して第2のストリッピング槽32内上部に供給され、この槽32内でアンモニアがストリッピングされる。アンモニアが除去された水は、排水管38を介して処理水Bとして排出される。
【0025】
第3の実施形態によれば、COのストリッピングを第1のストリッピング槽31で、アンモニアのストリッピングを第2のストリッピング槽32で別々に行うことによって、pHや温度管理によってアンモニアの除去効率を高めることができる。
なお、図示しないが、第3の実施形態の変形例として、図4のように真空ポンプ35a,35bを用いる代わりに、ガス排出管36,37の各々に開閉弁を有する真空ポンプを用いることもできる。
【0026】
(第4の実施形態):請求項4に対応
図5を参照する。但し、図1,2と同部材は同符番を付して説明を省略する。
図中の符番41は、給水管13の途中に接続された水配管を示す。この水配管41にはマグネシウム溶液42を貯留した貯留槽43が接続されている。この貯留槽43のマグネシウム溶液42は、水配管41を介して給水管13内の有機性排水Aと混合する。
【0027】
こうした構成の廃水処理装置の作用は次のとおりである。即ち、マグネシウム水溶液42と有機性排水A中のリン及びアンモニアは、下記式(2)のように反応して、マグネシウムアンモニウムリン酸(MAP)を生成する。このMAPは、処理水Bとともに排出され、有価物として回収される。
Mg+PO3−+NH+6HO → MgNHPO・6HO …(2)
なお、第4の実施形態の変形例として、図6の構成の廃水処理装置とすることも可能である。即ち、この廃水処理装置は、図6のように、ストリッピング槽11の上流側に、攪拌装置44を有する反応槽45を配して、この反応槽45に水配管41を介して前記貯留槽43を連結する構成である。この場合、反応槽45の反応時間が長くなるので、上記(2)式の反応が十分に行えるというメリットを有する。また、マグネシウム水溶液42のみならず、下記(3)式のようにカルシウムや、アルミニウムなどの他の金属化合物を適用することができる。マグネシウムの場合には、MAPのような有価物も生成することが可能となる。
Ca+PO3−+2OH → Ca10(OH)(PO …(3)
(第5の実施形態):請求項5に対応
図7を参照する。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略する。
図中の符番51は、ガス排出管17に接続されたアンモニア吸着槽を示す。このアンモニア吸着槽51には、該吸着槽51で処理された処理ガスEが排出されるガス排出管52が接続されている。
こうした構成の廃水処理装置において、ガス排出管17中にストリッピングされたアンモニアを含むガスが、アンモニア吸着槽51によって吸着除去される。
従って、第5の実施形態によれば、以下の効果を有する。即ち、ガス排出管17中のアンモニアガス濃度が、規制値(悪臭防止法でアンモニア1〜5ppm以下)を超えるような高い場合がある。このような場合、そのまま大気に放散することはできないが、上記アンモニア吸着槽51を設けることにより、アンモニアを規制値以下に抑えることができ、大気に放散することが可能となる。
【0028】
(第6の実施形態):請求項6に対応
図8を参照する。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略する。
図中の符番53は、ストリッピング槽11内に配置された温度計を示す。また、符番54は、ガス排出管17に介装された真空ポンプ16に電気的に接続された制御装置を示す。前記温度計53と制御装置54は電気的に接続され、温度計53からの出力信号は制御装置54の入力端子に出力されるようになっている。また、制御装置54からの出力信号は真空ポンプ16の入力端子に出力されるようになっている。
【0029】
第6の実施形態において、温度計53が蛋白質凝固する70℃前後になるように、真空ポンプ16の圧力を制御するように制御装置54に予め設定しておく。そして、温度計53が70℃になるように、真空ポンプ16の圧力を制御する。
第6の実施形態によれば、温度計53と真空ポンプ16の圧力のみでストリッピング槽11内の温度を制御できるので、簡易に蛋白質凝固を制御することが可能となる。なお、第6の実施形態の変形例として、加温ガスCの温度制御や加温ガスCの供給量制御により、70℃に制御することも可能である。
【0030】
(第7の実施形態):請求項7に対応
図9を参照する。なお、図9ではストリッピング槽11は概略図で示しているが、詳細は図1のとおりである。但し、図1と同部材は同符番を付して説明を省略する。
図中の符番61は、ストリッピング槽11の下流側に配置された嫌気性処理槽を示す。有機性排水は、この嫌気性処理槽61を経た後、処理水Bとして排出される。
【0031】
第7の実施形態では、有機性排水A中のアンモニアは、ストリッピング装置11で低減された後、有機性排水A中の有機物が、嫌気性処理槽61で分解除去される。その後、処理水Bとして排出される。
第7の実施形態によれば、ストリッピング槽11の下流側に嫌気性処理槽61を配置した構成になっているので、有機性排水A中に河川放流や下水道放流の規制値以上の有機物を含む場合、放流可能な処理水が得られるとのメリットを有する。また、ストリンピング槽11によるアンモニア除去により、下流側の嫌気性処理槽61へ流入するアンモニア濃度が低くなるため、嫌気性処理槽61のC/N比が高くなり、有機物除去効率が高くなるとのメリットも有する。
【0032】
(第8の実施形態):請求項8に対応
図10を参照する。なお、図10ではストリッピング槽11は概略図で示しているが、詳細は図1のとおりである。但し、図1,図9と同部材は同符番を付して説明を省略する。
図中の符番62,63は、夫々ストリッピング槽11の下流側に順次接続された好気性処理槽、沈殿槽を示す。前記好気性処理槽62の底部には、ブロア64と配管65を介して接続する散気装置66が配置されている。前記沈殿槽63の底部には返送ポンプ67を介装した配管68が接続され、該配管68はストリッピング槽11と好気性処理槽62を連結する配管69に接続されている。
【0033】
第8の実施形態では、有機性排水A中のアンモニアはストリッピング槽11で低減された後、好気性処理槽62で、残存したアンモニアと有機物とがブロア64から供給される空気と接触して好気性微生物による酸化処理され、分解除去される。その過程で増殖した好気性微生物は沈殿槽63で処理水Bと分離されて、一部返送ポンプ67により好気性処理槽62の流入部分に返送される。
【0034】
第8の実施形態によれば、好気性処理槽62を含む後段での処理は、標準活性汚泥法といわれる最も日本国内で普及した下水処理プロセスであり、この前段部分にストリッピング槽11を配置することで、このような下水処理プロセスのブロア64の動力を低減することができる。また、C/N比を高くできるため、有機性排水A中の有機物除去効率が高まり、処理水B中の有機物濃度が低減でき、清澄な処理水が得られるとのメリットも有する。
【0035】
なお、第8の実施形態の変形例として、例えば図11の構成の廃水処理装置が挙げられる。図11中の符番70は、好気性処理槽62内に配置された膜分離装置を示す。この膜分離装置70には、ポンプ71が介装された配管72が接続されている。
図11の廃水処理装置において、アンモニアや有機物の除去は図10と同様であるが、膜分離装置70を有しているので、処理水B中に好気性処理槽62内に存在する好気性微生物や、有機性排水A中に含まれる固形物が、処理水中に流出することなく、清澄な処理水Bとして排出される。
図11の廃水処理装置によれば、好気性処理槽62内に膜分離装置70を有しているので、ストリッピング槽11でのアンモニア除去率の下がりC/N比が高くなって好気性処理槽62の効率が下がって、好気性微生物が浮上、流出しやすくなっても、固形物(SS)が流出することなく、清澄な処理水Bが得られる。
【0036】
(第9の実施形態):請求項9に対応
図12を参照する。なお、図12ではストリッピング槽11は概略図で示しているが、詳細は図1のとおりである。但し、図1,図9〜図11と同部材は同符番を付して説明を省略する。
第9の実施形態に係る廃水処理装置は、ストリッピング槽11の下流側に嫌気性処理槽61,膜分離装置70を備えた好気性処理槽62を順次配置し、ポンプ71を介装した配管72を前記膜分離装置70に接続した構成となっている。
【0037】
第9の実施形態では、前述した図9〜図11と同様に、有機性廃水A中のアンモニアや有機物が除去されるが、嫌気性処理槽61に流入する有機性廃水Aは、BOD(生化学的酸素要求量)が1000mg/L以上と高濃度の廃水を適用し、好気性処理槽62から排出する処理水BはBODが15mg/L以下と河川放流できるまで処理される。
第9の実施形態によれば、前段に高濃度の有機性廃水Aの処理に強い嫌気性処理槽61を有し、低濃度の有機性廃水Aの処理に強い好気性処理槽62を有しているため、従来高濃度廃水では河川放流できなかったのに対して、本発明では河川放流できるまで処理することが可能となるメリットを有する。
なお、第9の実施形態では、好気性処理槽62が膜分離装置70を有するものであったが、図10のような沈殿槽63を有する標準活性汚泥法を適用することもできる。
【0038】
(第10の実施形態):請求項10に対応
図13を参照する。なお、図13ではストリッピング槽11は概略図で示しているが、詳細は図1のとおりである。但し、図1,図9〜図11と同部材は同符番を付して説明を省略する。
第10の実施形態に係る廃水処理装置は、ストリッピング槽11の上流側に嫌気性処理層61を配置するとともに、ストリッピング槽11の下流側に膜分離装置70を有する好気性処理槽62を配置し、ポンプ71を介装した配管72を前記膜分離装置70に接続した構成となっている。
【0039】
第10の実施形態において、有機性廃水A中の有機物は、嫌気性処理槽61で低減された後、アンモニアや嫌気性処理槽61で発生した硫化水素(HS)がストリッピング槽11で除去される。その後、好気性処理槽62で残存した有機物が除去されて清澄な処理水Bが排出される。
第10の実施形態によれば、有機性廃水A中に含まれるアンモニアなどの揮発性汚濁物質のみならず、嫌気性処理槽61で発生した硫化水素、メルカプタンなどの副生成物もこのストリッピング槽11で除去されるため、イオウ成分などの処理も可能となるとのメリットを有する。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る廃水処理装置の概略的な説明図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る廃水処理装置の概略的な説明図。
【図3】図2の変形例に係る廃水処理装置の概略的な説明図。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る廃水処理装置の概略的な説明図。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る廃水処理装置の概略的な説明図。
【図6】図5の変形例に係る廃水処理装置の概略的な説明図。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る廃水処理装置の概略的な説明図。
【図8】本発明の第6の実施形態に係る廃水処理装置の概略的な説明図。
【図9】本発明の第7の実施形態に係る廃水処理装置の概略的な説明図。
【図10】本発明の第8の実施形態に係る廃水処理装置の概略的な説明図。
【図11】図10の変形例に係る廃水処理装置の概略的な説明図。
【図12】本発明の第9の実施形態に係る廃水処理装置の概略的な説明図。
【図13】本発明の第10の実施形態に係る廃水処理装置の概略的な説明図。
【図14】従来に係る廃水処理装置の概略的な説明図。
【図15】従来に係る他の廃水処理装置の概略的な説明図。
【図16】本発明による実験データによる時刻とpH,温度との関係を示す特性図。
【符号の説明】
【0042】
11…ストリッピング装置、12…散水装置、13…給水配管、14…排水管、15…ガス供給管、16,35a,35b…真空ポンプ、17,36,37…ガス排出管、21〜26…隔壁、31…第1のストリッピング槽、32…第2のストリッピング槽、34,41…水配管、43…貯留槽、44…攪拌装置、45…反応槽、51…アンモニア吸着槽、53…温度計、54…制御装置、61…嫌気性処理槽、62…好気性処理槽、63…沈殿槽、64…ブロア、66…散気装置、67…返送ポンプ、70…膜分離装置、71…ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性汚濁物質及び発泡性物質を含有する廃水をストリッピング槽内に供給し、前記ストリッピング槽内を減圧状態にした状態で前記廃水を加温ガスと接触させることにより、前記揮発性汚濁物質を気相中にストリッピングする構成であることを特徴とする廃水処理装置。
【請求項2】
前記ストリッピング槽内に隔壁を設置したことを特徴とする請求項1記載の廃水処理装置。
【請求項3】
揮発性汚濁物質及び発泡性物質を含有する廃水を減圧状態で加温ガスと接触させて廃水中のCOをストリッピングする第1のストリッピング槽と、この第1のストリッピング槽内で処理された処理水が供給され、この処理水を減圧状態で加温ガスと接触させて処理水中のアンモニアをストリッピングする第2のストリッピング槽を具備することを特徴とする請求項1もしくは2記載の廃水処理装置。
【請求項4】
減圧状態で加温ガスと接触させる際、金属イオンを添加させることにより、金属化合物を生成することを特徴とする請求項1記載の廃水処理装置。
【請求項5】
ストリッピングした揮発性汚濁物質を除去する揮発性汚濁物質除去装置を具備することを特徴とする請求項1記載の廃水処理装置。
【請求項6】
発泡性物質が蛋白質であって、この蛋白質を加熱凝固させる温度で加温ガスを接触させることを特徴とする請求項1記載の廃水処理装置。
【請求項7】
前記ストリッピング槽の下流側に嫌気性処理槽を有することを特徴とする請求項1記載の廃水処理装置。
【請求項8】
前記ストリッピング槽の下流側に好気性処理槽を有することを特徴とする請求項1記載の廃水処理装置。
【請求項9】
前記ストリッピング槽の下流側に嫌気性処理槽及び好気性処理槽が順次配置されていることを特徴とする請求項1記載の廃水処理装置。
【請求項10】
前記ストリッピング槽の上流側に嫌気性処理槽が配置され、前記ストリッピング槽の下流側に好気性処理槽が配置されていることを特徴とする請求項1記載の廃水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−89020(P2010−89020A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262051(P2008−262051)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】