説明

廃熱利用装置

【課題】高性能で搭載性に優れた廃熱利用装置を提供する。
【解決手段】実施例の廃熱利用装置は、車両に搭載されて車両の駆動系1に用いられている。この廃熱利用装置は、ランキンサイクル3を備えている。駆動系1は、エンジン5と、冷却液路7と、排気還流路9と、還流排気冷却器13と、ラジエータ15と、バイパス路17と、サーモスタット19とを有している。冷却液路7では冷却水が循環する。排気還流路9は、エンジン5で生じた排気の一部を還流排気として流通させる。排気還流路9には還流排気冷却器13が設けられている。還流排気冷却器13では、冷却水と還流排気とが熱交換を行い、還流排気が冷却される。また、ランキンサイクル3は冷却水と作動流体とで熱交換を行う冷却液ボイラ33を有している。この冷却液ボイラは、冷却液路7において、還流排気冷却器13に対し、冷却水の流通方向の上流側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃熱利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図4に従来の廃熱利用装置が開示されている。この廃熱利用装置は、駆動系に用いられ、ボイラを有して作動流体を配管に沿って循環させるランキンサイクルを備えている。駆動系は、内燃機関としてのエンジンと、冷却液路と、排気還流路と、還流排気冷却器とを有している。冷却液路は、エンジンに接続されており、冷却液を循環可能となっている。排気還流路は、エンジンで生じた排気の一部を還流排気として内燃機関に還流させる。還流排気冷却器は、排気還流路と冷却液路とに接続されており、冷却液と還流排気との間で熱交換を行う。この還流排気冷却器は、第1還流排気冷却器と第2還流排気冷却器とからなる。
【0003】
一方、ボイラは、ランキンサイクルの配管に接続されているとともに、冷却液路と接続され、第1還流排気冷却器内の還流排気で加熱された冷却液と作動流体との間で熱交換を行う。つまり、この廃熱利用装置において、ボイラは、第1還流排気冷却器に対し、冷却液の流通方向の下流側に配置されている。また、第2還流排気冷却器は、ボイラに対し、冷却液の流通方向の下流側に配置されている。
【0004】
このような廃熱利用装置では、第1、2還流排気冷却器において冷却液と還流排気との間で熱交換を行うことで、還流排気を冷却することが可能となっている。そして、第1還流排気冷却器で加熱された冷却液と、作動流体とがボイラにおいて熱交換され、作動流体の加熱が行われる。
【0005】
この廃熱利用装置では、還流排気が第1還流排気冷却器と第2還流排気冷却器とで二回に亘って冷却液と熱交換されるため、還流排気を十分に冷却することが可能となっている。また、冷却液路内の冷却液は、ボイラに至るよりも先に第1還流排気冷却器に至ることとなる。この際、還流排気は高温となることから、第1還流排気冷却器において冷却液が好適に加熱されるため、その後のボイラにおける熱交換により、冷却液は作動流体を好適に加熱することが可能となっている。こうして、この廃熱利用装置では、十分に冷却された状態で還流排気をエンジンに還流可能であるとともに、加熱された作動流体の熱に基づくエネルギーの回収量を大きくすることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−255278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、還流排気自体は気体であるため、熱容量が小さく、エンジン停止後にはすぐに排気冷却器や排気還流路が冷えてしまう。このため、例えば、上記従来の廃熱利用装置を搭載した車両を走行させた後、一定程度停車させてから再度走行させた場合には、第1還流排気冷却器や排気還流路の温度を上昇させることに排気の熱が使われるため、その分だけランキンサイクルの作動流体の温度上昇が遅くなり、エネルギーの回収に寄与する熱が減少してしまうこととなる。また、第1還流排気冷却器において、低温の還流排気に対して冷却液が逆に放熱してしまい、結果として、冷却液が低温の状態でボイラに流入することも生じ得る。これらの場合、冷却液はボイラにおいて作動流体を十分に加熱することができず、ランキンサイクルにおいて、エネルギーの回収が低下したり、エネルギーの回収自体を行えなくなったりするおそれがある。
【0008】
また、上記の廃熱利用装置では、例え、車両の走行中(エンジンの作動中)であったとしても、エンジンに対して還流排気を還流させない場合、すなわち、排気還流路に還流排気を流通させない場合には、第1還流排気冷却器において冷却液の加熱を行うことができない。この場合には、ランキンサイクルにおいて、エネルギーの回収を行うことが不可能となる。
【0009】
さらに、上記の廃熱利用装置には、第1、2還流排気冷却器と、ボイラとが設けられることとなるため、大型化し、車両等への搭載性も低下することとなる。
【0010】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、高性能で搭載性に優れた廃熱利用装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の廃熱利用装置は、駆動系に用いられ、ボイラを有して作動流体を配管に沿って循環させるランキンサイクルを備えた廃熱利用装置であって、
前記駆動系は、内燃機関と、該内燃機関に接続され、冷却液を循環可能な冷却液路と、該内燃機関で生じた排気の一部を還流排気として該内燃機関に還流させる排気還流路と、該冷却液路と接続されているとともに、該排気還流路と接続され、該冷却液と該還流排気との間で熱交換を行う単一の還流排気冷却器とを有し、
前記ボイラは、該内燃機関と該還流排気冷却器との間の該冷却液路と接続され、該内燃機関で加熱された該冷却液と前記作動流体との間で熱交換を行う冷却液ボイラを有していることを特徴とする(請求項1)。
【0012】
本発明の廃熱利用装置はランキンサイクルを備えている。このランキンサイクルは、駆動系に用いられ、ボイラを有して作動流体を配管に沿って循環させる。駆動系は、内燃機関と、冷却液路と、排気還流路と、単一の還流排気冷却器とを有している。冷却液路は、内燃機関に接続されるとともに、冷却液が循環可能となっている。排気還流路は、内燃機関で生じた排気の一部を還流排気として内燃機関に還流させる。還流排気冷却器は、冷却液路及び排気還流路と接続されており、冷却液と還流排気との間で熱交換を行う。
【0013】
また、ランキンサイクルにおけるボイラは、冷却液ボイラを有している。この冷却液ボイラは、内燃機関と還流排気冷却器との間の冷却液路と接続されており、内燃機関で加熱された冷却液と作動流体との間で熱交換を行う。そして、内燃機関と還流排気冷却器との間の冷却液路と接続されることで、この冷却液ボイラは、冷却液路において、還流排気冷却器に対し、冷却液の流通方向の上流側に配置される。
【0014】
これらのため、この廃熱利用装置では、内燃機関において加熱された冷却液は、冷却液路を流通し、還流排気冷却器に至るよりも先に冷却液ボイラに至ることとなる。この際、冷却液は内燃機関によって加熱された状態にあるため、冷却液ボイラにおける熱交換により、作動流体を好適に加熱することが可能となっている。このため、この廃熱利用装置におけるランキンサイクルにおいて、作動流体の熱に基づくエネルギーの回収量を多くすることが可能となる。
【0015】
一方、冷却液ボイラにおける熱交換、すなわち、作動流体に対する放熱によって冷却液は冷却されるため、還流排気冷却器では、低温の状態にある冷却液と還流排気とで熱交換を行うこととなる。このため、還流排気冷却器では、還流排気が低温の冷却液に対して好適に放熱を行うことが可能となる。これにより、還流排気は十分に冷却され、その密度が大きくなった状態で内燃機関に還流されることとなる。このため、この廃熱利用装置では、内燃機関の出力を向上できる他、最終的に大気中に放出された際の排気中における窒素酸化物の含有量を低減させることも可能となる。
【0016】
特に、この廃熱利用装置では、内燃機関によって加熱された冷却液が還流排気冷却器に至るよりも先に冷却液ボイラに至る。このため、例え、一定時間停止後に廃熱利用装置を再始動させた場合であっても、還流排気冷却器において、既に低温となった還流排気に対して冷却液が放熱するということが生じない。このため、この廃熱利用装置では、上記のような再始動後であっても冷却液は冷却液ボイラにおいて作動流体を十分に加熱すること可能となり、ランキンサイクルにおいてエネルギーの回収を好適に行うことが可能となる。
【0017】
さらに、この廃熱利用装置では、内燃機関によって冷却液の加熱を行うため、内燃機関の作動中に還流排気を内燃機関に還流させない場合であっても、冷却液ボイラにおいて作動流体を加熱することが可能となる。つまり、この廃熱利用装置では、内燃機関が作動しておれば、ランキンサイクルにおいてエネルギーの回収を行うことが可能となる。
【0018】
また、この廃熱利用装置に設けられる還流排気冷却器は一つであるため、廃熱利用装置が大型化することを抑制することが可能となる。
【0019】
したがって、本発明の廃熱利用装置は高性能で搭載性に優れている。
【0020】
本発明の廃熱利用装置において、内燃機関としては、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の他、種々の形式のエンジンを採用することができる。また、これらのエンジンはモータを組み合わせたハイブリッドエンジンでも良い。なお、内燃機関は複数であっても良い。
【0021】
また、冷却液としては、水(冷却水)の他、LLC(ロングライフクーラント)等を採用することができる。
【0022】
還流排気冷却器における熱交換によって、冷却液は再加熱されることとなる。このため、この再加熱された冷却液については、一定程度冷却した後に内燃機関に流入させることが好ましい。
【0023】
この点、上記特許文献1の図4記載の廃熱利用装置では、ラジエータによって冷却液を冷却することが可能であるものの、ラジエータによって冷却された冷却液の一部はエンジンを経由せず第1還流排気冷却器に直接流入し、その後、ボイラに流入するよう構成されている。このため、上記従来の廃熱利用装置では、還流排気が放熱により低温となっている場合の他、排気還流路に還流排気が流通していない状態では、ラジエータによって冷却された冷却液が低温の状態のままでボイラに流入することとなる。このため、上記従来の廃熱利用装置では、ランキンサイクルにおけるエネルギーの回収の効率がより低下し易くなる。
【0024】
そこで、本発明の廃熱利用装置において、駆動系はラジエータを有し得る。そして、冷却液路は、還流排気冷却器の下流側にラジエータを接続する第1液路と、ラジエータと内燃機関とを接続し、ラジエータを流出する全ての冷却液を内燃機関に流入させる第2液路とを有していることが好ましい(請求項2)。
【0025】
この場合、第1液路によって、還流排気冷却器の下流で還流排気冷却器とラジエータとが接続されるとともに、第2液路によって、ラジエータと内燃機関とが接続されることとなる。このため、還流排気冷却器における熱交換により再び加熱された冷却液は、ラジエータにおいて外気に放熱され、冷却されることとなる。そして、この冷却された冷却液は全て内燃機関に流入するため、内燃機関を好適に作動させることが可能となるとともに、冷却液は、内燃機関によって加熱された後に冷却液水ボイラに流入することとなる。このため、この廃熱利用装置では、ランキンサイクルにおけるエネルギーの回収を効率良く行うことが可能となる。
【0026】
上記のように、ラジエータを設けることにより冷却液を好適に冷却させることが可能である一方、内燃機関は一定程度の温度を有している状態の方が好適に作動する。このため、内燃機関に流入する冷却液は、内燃機関が好適に作動し得る程度の温度、すなわち、内燃機関の温度が一定範囲に維持され得る程度の温度を有していることが好ましい。また、冷却液がこれらのような温度を有することにより、内燃機関によって加熱された際の冷却液の温度を所望する温度、つまり、冷却液ボイラにおいて、作動流体を好適に加熱できる温度に調整し易くなる。
【0027】
このため、駆動系は、還流排気冷却器の下流で前記第1液路から分岐し、ラジエータを迂回して第2液路に合流するバイパス路と、内燃機関に流入する冷却液の温度又は内燃機関から流出する冷却液の温度により、ラジエータに流入する冷却液の流量とバイパス路に流入する冷却液の流量とを調整可能な流量調整装置を有していることが好ましい(請求項3)。
【0028】
この場合、内燃機関に流入する冷却液の温度や内燃機関から流出する冷却液の温度に基づき、流量調整装置がバイパス路に流入する冷却液の流量と、ラジエータに流入する冷却液の流量、すなわち、ラジエータにおける放熱により冷却される冷却液との流量を調整することが可能となる。これにより、流入した冷却液により内燃機関を好適に作動させることが可能となるとともに、内燃機関から流出する冷却液の温度について、冷却液ボイラにおける熱交換で作動流体を好適に加熱することが可能な温度に調整し易くなる。
【0029】
流量調整装置としては、流量調整弁の他、種々の切替弁や分岐弁等を採用することができる。特に、流量調整装置は、内燃機関に流入する冷却液の温度によって作動するサーモスタットであることが好ましい(請求項4)。
【0030】
上記のようなサーモスタットであれば、内燃機関に流入する冷却液の温度を調整し易くなり、内燃機関を好適に作動させ易くなるとともに、内燃機関から流出した冷却液によって、冷却液ボイラにおいて作動流体を好適に加熱し易くなる。また、流量調整装置を簡素化できるとともに、低コスト化も可能であるため、ひいては、廃熱利用装置を簡素化しつつ、低コスト化することも可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の廃熱利用装置は高性能で搭載性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例の廃熱利用装置を示す模式構造図である。
【図2】実施例の廃熱利用装置に係り、作動中の状態を示す模式構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0034】
(実施例)
実施例の廃熱利用装置は、車両に搭載され、図1に示すように、車両の駆動系1に用いられている。この廃熱利用装置は、ランキンサイクル3と、制御装置11とを備えている。
【0035】
駆動系1は、内燃機関としてのエンジン5と、冷却液路7と、排気還流路9と、還流排気冷却器13と、ラジエータ15と、バイパス路17と、公知のサーモスタット19とを有している。冷却液路7では冷却液としての冷却水が循環可能となっている。排気還流路9は、エンジン5で生じた排気の一部を還流排気として後述する配管28に流通させることで、この還流排気をエンジン5に還流させる。
【0036】
還流排気冷却器13はステンレス製である。この還流排気冷却器13には、第3流入口13a及び第3流出口13bと、第4流入口13c及び第4流出口13dとが形成されている。また、還流排気冷却器13内には、両端側でそれぞれ第3流入口13a及び第3流出口13bと連通する第3通路13eと、両端側でそれぞれ第4流入口13c及び第4流出口13dと連通する第4通路13fとが設けられている。この還流排気冷却器13では、第3通路13e内の還流排気と、第4通路13f内の冷却水との熱交換により、還流排気の冷却を行う。
【0037】
エンジン5は、公知の水冷式ディーゼルエンジンである。エンジン5の内部には冷却水が流通可能なウォータジャケット(図示略)が形成されている。エンジン5には、このウォータジャケットとそれぞれ連通する流出口5aと流入口5bとが形成されている。さらに、エンジン5には、排気を排出する排気口5cと、後述する混合空気を吸入する吸気口5dとが形成されている。
【0038】
ラジエータ15には、その内部に冷却水を流入させる流入口15aと、冷却水を流出させる流出口15bとが形成されている。ラジエータ15は、その内部を流通する冷却水と車外の空気との間で熱交換を行う。さらに、ラジエータ15の近傍には、電動ファン15cが設けられている。この電動ファン15cは、制御装置11と電気的に接続されている。
【0039】
冷却液路7は、配管21〜25によって構成されている。また、配管21と配管22との間には後述する冷却液ボイラ33が接続されている。より詳細に説明すると、配管21は、エンジン5の流出口5aと冷却液ボイラ33の第1流入口33aとに接続されている。配管22は、冷却液ボイラ33の第1流出口33bと還流排気冷却器13の第4流入口13cとに接続されている。配管23は、還流排気冷却器13の第4流出口13dとラジエータ15の流入口15aとに接続されている。配管24の一端側はラジエータ15の流出口15bに接続されており、その他端側は、サーモスタット19に接続されている。配管25の一端側はサーモスタット19に接続されており、その他端側はエンジン5の流入口5bに接続されている。なお、配管23が第1液路に相当しており、配管24、25が第2液路に相当している。
【0040】
また、配管23には、上記のバイパス路17の一端側が接続されている。このバイパス路17の他端側は、サーモスタット19を介して配管24及び配管25に接続されている。バイパス路17は、その内部に冷却水を流通させることにより、冷却水にラジエータ15を迂回させる。サーモスタット19は、冷却液路7を循環する冷却水の温度によって作動し、ラジエータ15に流入する冷却水の流量と、バイパス路17に流入する冷却水の流量とを調整する。より詳細に説明すると、サーモスタット19は、冷却液路7のうち、配管25を流通する冷却水の温度が所定値(100°C程度)となるように、ラジエータ15に流入する冷却水の流量と、バイパス路17に流入する冷却水の流量とを調整する。なお、このサーモスタット19が流量調整装置に相当する。
【0041】
配管25には、第1電動ポンプP1が設けられている。この第1電動ポンプP1は、制御装置11に電気的に接続されている。この第1ポンプP1を作動させることにより、図2に示すように、エンジン5の流出口5aから流出した冷却水は、冷却液ボイラ33及び還流排気冷却器13を経て、ラジエータ15又はバイパス路17を経て、配管25で互いに合流した後、エンジン5の流入口5bからエンジン5内(ウォータージャケット)に至ることとなる。つまり、この冷却液路7(配管21〜25)において、冷却液ボイラ33は、エンジン5と還流排気冷却器13との間で配管21及び配管22に接続されているとともに、この冷却液ボイラ33は、還流排気冷却器13に対し、冷却水の流通方向の上流側に配置されている。これにより、エンジン5によって加熱された冷却水は、配管21を経て、最初に冷却液ボイラ33に至ることとなる。なお、第1電動ポンプP1は、配管21又は配管22に設けられても良い。
【0042】
図1に示すように、排気還流路9は、配管26、27によって構成されている。配管26は、エンジン5の排気口5cと還流排気冷却器13の第3流入口13aとに接続されている。配管27の一端側は、還流排気冷却器13の第3流出口13bと接続されており、その他端側は配管28の一端側と接続されている。また、配管26には、配管29の一端側が接続されている。この配管29の他端側は図示しないマフラに接続されている。さらに、配管26において、上記の配管29との接続箇所よりも排気(還流排気)の流通方向の下流となる位置には公知の可変バルブ31が設けられている。この可変バルブ31は制御装置11と電気的に接続されている。
【0043】
配管28の他端側はエンジン5の吸気口5dに接続されている。また、配管28の一端側には、上記の配管27の他端側の他に配管33の一端側も接続されている。この配管33の他端側は図示しない車両のエアインテークに開いている。これにより、配管28内には還流排気のみならず、エアインテークから吸入された外気と配管27を経た還流排気との混合空気も流通することとなる。
【0044】
ランキンサイクル3は、第2電動ポンプP2と、冷却液ボイラ33と、膨張機35と、凝縮器37と、配管39〜41とを有している。配管39〜41には、作動流体としてのHFC134aが流通可能となっている。
【0045】
冷却液ボイラ33には、第1流入口33a及び第1流出口33bと、第2流入口33c及び第2流出口33dとが形成されている。また、冷却液ボイラ33内には、両端側でそれぞれ第1流入口33a及び第1流出口33bと連通する第1通路33eと、両端側でそれぞれ第2流入口33c及び第2流出口33dと連通する第2通路33fとが設けられている。この冷却液ボイラ33では、第1通路33e内の冷却水と、第2通路33f内の作動流体との熱交換により、冷却水の冷却と作動流体の加熱とを行う。
【0046】
膨張機35には、その内部に作動流体を流入させる流入口35aと、作動流体を流出させる流出口35bとが形成されている。膨張機35では、冷却液ボイラ33を経て加熱された作動流体を膨張させることにより回転駆動力を発生させる。この膨張機35には図示しない公知の発電機が接続されている。発電機は膨張機35の回転駆動力によって発電を行い、図示しないバッテリに電力を充電する。
【0047】
凝縮器37には、その内部に作動流体を流入させる流入口37aと、作動流体を流出させる流出口37bとが形成されている。凝縮器37は、その内部を流通する作動流体と車外の空気との間で熱交換を行い、膨張機35での膨張によって減圧された作動流体を冷却して液化させる。凝縮器37の近傍には電動ファン37cが設けられている。この電動ファン37cは制御装置11に電気的に接続されている。
【0048】
これらの冷却液ボイラ33、膨張機35及び凝縮器37は、配管39〜41によって接続されている。具体的には、凝縮器37の流出口37bと、冷却液ボイラ33の第2流入口33cとは配管39によって接続されている。冷却液ボイラ33の第2流出口33dと、膨張機35の流入口35aとは配管40によって接続されている。そして、膨張機35の流出口35bと凝縮器37の流入口37aとは配管41によって接続されている。
【0049】
第2電動ポンプP2は配管39に設けられている。この第2電動ポンプP2を作動させることにより、作動流体は、図2に示すように、第2電動ポンプP2から冷却液ボイラ33及び膨張機35を経て凝縮器37に至る順で配管39〜41内を循環する。
【0050】
図1に示すように、制御装置11は、可変バルブ31の開度を調整するマップを記憶している。制御装置11はこのマップに基づき、配管26を経て還流排気冷却器13に至る排気、すなわち、還流排気の流量を適宜調整する。また、制御装置11は電動ファン15c、37cの作動制御を行うことで、冷却水や作動流体が外気に放熱する熱量の調整を行う。さらに、制御装置11は、第1、2電動ポンプP1、P2の作動制御を行う。
【0051】
このように構成された廃熱利用装置では、車両を駆動させることにより以下のように作動する。
【0052】
図2に示すように、車両が駆動されることにより、駆動系1ではエンジン5が作動する。これにより、排気口5cから排出された排気が配管26内を流通する(同図の一点鎖線矢印参照)。この際、制御装置11は、上記のマップに基づいて可変バルブ31を開制御し、配管26を経て還流排気冷却器13に至る還流排気の流量と、配管29及びマフラを経て車外に排出される排気の流量とを調整する。
【0053】
また、制御装置11は、第1、2電動ポンプP1、P2及び電動ファン15c、37cをそれぞれ作動させる。これにより、配管21〜25及びバイパス路17において冷却水が循環し、冷却液路7では、エンジン5の流出口5aから流出した冷却水が冷却液ボイラ33の第1通路33e及び還流排気冷却器13の第4通路13fを経て、ラジエータ15又はバイパス路17に至り、その後、エンジン5の流入口5bからエンジン5内に流入することとなる(同図の破線矢印参照)。
【0054】
ランキンサイクル3では、同図の実線矢印に示すように、第2電動ポンプP2によって吐出された作動流体が配管39を経て、冷却液ボイラ33の第2流入口33cから第2通路33fに至る。そして、作動流体は冷却液ボイラ33において、第1通路33eを流通する冷却水との間で熱交換を行い、加熱される。この際、第1通路33eを流通する冷却水はエンジン5によって約105°C程度に加熱されているため、第2通路33f内の作動流体は好適に加熱されることとなる。一方、作動流体との熱交換によって冷却水は冷却されて第1流出口33bから流出する。この際の冷却水の温度は約80°C程度となっている。
【0055】
冷却液ボイラ33において加熱された作動流体は、高温高圧の状態で第2流出口33dから流出し、配管40を経て膨張機35の流入口35aから膨張機35内へ至る。そして、高温高圧の作動流体は膨張機35内で膨張し、減圧される。この際の圧力エネルギーにより、膨張機35に接続された発電機は発電を行う。
【0056】
膨張機35内で減圧された作動流体は流出口35bから流出し、配管41を経て凝縮器37の流入口37aから凝縮器37内へ至る。凝縮器37内の作動流体は、凝縮器37の周りの空気に放熱を行い、冷却される。この際、制御装置11は電動ファン37cの作動量を適宜変更して、作動流体を好適に放熱させて液化させる。冷却された作動流体は流出口37bから流出し、配管39を経て再び冷却液ボイラ33に至ることとなる。
【0057】
配管29へ流入せずに配管26へ流通する還流排気は、還流排気冷却器13の第3流入口13aから第3通路13eに至る。また、冷却液ボイラ33の第1流出口33bから流出した冷却水は、配管22を経て還流排気冷却器13の第4流入口13cから第4通路13fに至る。そして、還流排気は還流排気冷却器13において、第4通路13fを流通する冷却水との間で熱交換を行い、冷却される。この際、第4通路13fを流通する冷却水は上記のように、冷却液ボイラ33における作動流体との熱交換で約80°C程度となっているため、第3通路13e内の還流排気は好適に冷却されることとなる。
【0058】
還流排気冷却器13において冷却された還流排気は、第3流出口13bから流出し、配管27を経て配管28を流通する。この際、車両のエアインテークから吸入された外気が配管33を経て配管28に合流する(同図の二点鎖線矢印参照)ため、配管28を流通する還流排気はこの外気と混合され、混合空気としてエンジン5の吸気口5dからエンジン5へ還流されることとなる。
【0059】
還流排気冷却器13における熱交換によって、冷却水は再加熱された状態で第4流出口13dから流出して配管23に至る。そして、この冷却水の一部はラジエータ15の流入口15aからラジエータ15内に流入し、ラジエータ15内に流入しなかった残りの冷却水はパイパス路17に流入する。ここで、ラジエータ15内に流入した冷却水は、ラジエータ15周りの空気に放熱を行い、冷却される。この際、制御装置11は電動ファン9cの作動量を適宜変更して、冷却水を好適に冷却させる。ラジエータ15において冷却された冷却水は流出口15bから流出し、配管24を経て配管25に至る。一方、パイパス路17に流入した冷却水はラジエータ15を迂回することから、冷却されずに配管25に至り、ラジエータ15において冷却された冷却水と合流することとなる。つまり、配管25を流通する冷却水の温度は、第4流出口13bから流出した際の冷却水の温度よりも低い状態となる。
【0060】
そこで、サーモスタット19は、配管25を流通する冷却水の温度が約100°Cとなるように作動し、ラジエータ15に流入する冷却水の流量と、バイパス路17に流入する冷却水の流量とを調整する。これにより、約100°Cの温度を有した冷却水がエンジン5の流入口5bからエンジン5に流入することとなる。
【0061】
このように、この廃熱利用装置では、冷却液ボイラ33における熱交換により、作動流体を好適に加熱することが可能となっている。このため、膨張機35において作動流体を膨張及び減圧させた際の圧力エネルギーを大きくすることが可能となっており、この廃熱利用装置におけるランキンサイクル3では、電力の回収量を多くすることが可能となっている。
【0062】
一方、冷却液ボイラ33における作動流体との熱交換によって冷却水は冷却されるため、還流排気冷却器13では、低温の状態(約80°C)にある冷却水と還流排気とで熱交換を行うこととなる。このため、還流排気冷却器13では、還流排気が低温の冷却水に対して好適に放熱を行うことが可能となる。これにより、還流排気は十分に冷却され、その密度が大きくなった状態でエンジン5に還流されることとなる。このため、この廃熱利用装置では、エンジン5の出力を向上できる他、配管29及びマフラを経て、最終的に大気中に放出された際の排気中における窒素酸化物の含有量を低減させることも可能となっている。
【0063】
特に、この廃熱利用装置では、エンジン5によって加熱された冷却水が還流排気冷却器13に至るよりも先に冷却液ボイラ33に至る。このため、例え、車両を一定時間停止させた後に車両を再始動、すなわち、廃熱利用装置を再始動させた場合であっても、還流排気冷却器13において、既に低温となった還流排気に対して冷却水が放熱するということが生じない。このため、この廃熱利用装置では、上記のような再始動後であっても冷却水は冷却液ボイラ33において作動流体を十分に加熱することが可能となり、ランキンサイクル3において電力の回収を好適に行うことが可能となっている。
【0064】
さらに、この廃熱利用装置では、エンジン5によって冷却水の加熱を行うため、エンジン5の作動中に還流排気をエンジン5に還流させない場合であっても、冷却液ボイラ33において作動流体を加熱することが可能となる。つまり、この廃熱利用装置では、エンジン5が作動しておれば、ランキンサイクル3において電力の回収を行うことが可能となっている。
【0065】
また、この廃熱利用装置に設けられる還流排気冷却器13は一つであるため、廃熱利用装置が大型化することを抑制することが可能となっている。
【0066】
したがって、本発明の廃熱利用装置は高性能で車両への搭載性に優れている。
【0067】
特に、この廃熱利用装置では、還流排気冷却器13において再加熱された冷却水をラジエータ15によって冷却することが可能となっている。そして、サーモスタット19の作動によって、ラジエータ15に流入する冷却水の流量と、バイパス路17に流入する冷却水の流量とを調整、すなわち、配管25を経てエンジン5に流入する冷却水の温度を調整することが可能となっている。このため、この廃熱利用装置では、エンジン5が好適に作動し得る程度にエンジン5の温度を維持し易くなっている。また、エンジン5によって加熱された際の冷却水の温度を調整し易くなっているため、冷却液ボイラ33における熱交換で作動流体を好適に加熱することが可能となっている。
【0068】
さらに、流量調整装置が上記のサーモスタット19であるため、廃熱利用装置を簡素化しつつ、低コスト化することも可能となっている。
【0069】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0070】
例えば、エンジンに対して加圧空気を供給可能なターボチャージャ等の過給器を設けても良い。この場合、ターボチャージャは、配管29及び配管33に接続されることとなり、配管33には、ターボチャージャによって圧縮された加圧空気が流通することとなる。
【0071】
また、冷却液ボイラ33に加えて、上記の加圧空気と作動流体とで熱交換が可能な加圧空気ボイラ等を設けても良い。
【0072】
さらに、配管39における第2電動ポンプP2の上流側には、公知のレシーバを設けても良い。この場合、レシーバにより作動流体が好適に液化されるため、凝縮器37を経た作動流体は、第2電動ポンプP2によって好適に吐出されて、配管39〜41を好適に循環することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は車両等に利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
1…駆動系
3…ランキンサイクル
5…エンジン
7…冷却液路
9…排気還流路
13…還流排気冷却器
15…ラジエータ
17…バイパス路
19…サーモスタット
23…配管(第1液路)
24、25…配管(第2液路)
33…冷却液ボイラ
39〜41…配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動系に用いられ、ボイラを有して作動流体を配管に沿って循環させるランキンサイクルを備えた廃熱利用装置であって、
前記駆動系は、内燃機関と、該内燃機関に接続され、冷却液を循環可能な冷却液路と、該内燃機関で生じた排気の一部を還流排気として該内燃機関に還流させる排気還流路と、該冷却液路と接続されているとともに、該排気還流路と接続され、該冷却液と該還流排気との間で熱交換を行う単一の還流排気冷却器とを有し、
前記ボイラは、該内燃機関と該還流排気冷却器との間の該冷却液路と接続され、該内燃機関で加熱された該冷却液と前記作動流体との間で熱交換を行う冷却液ボイラを有していることを特徴とする廃熱利用装置。
【請求項2】
前記駆動系はラジエータを有し、
前記冷却液路は、前記還流排気冷却器の下流側に該ラジエータを接続する第1液路と、該ラジエータと該内燃機関とを接続し、該ラジエータを流出する全ての前記冷却液を該内燃機関に流入させる第2液路とを有している請求項1記載の廃熱利用装置。
【請求項3】
前記駆動系は、前記還流排気冷却器の下流で前記第1液路から分岐し、前記ラジエータを迂回して前記第2液路に合流するバイパス路と、前記内燃機関に流入する前記冷却液の温度又は該内燃機関から流出する該冷却液の温度により、該ラジエータに流入する該冷却液の流量と該バイパス路に流入する該冷却液の流量とを調整可能な流量調整装置を有している請求項2記載の廃熱利用装置。
【請求項4】
前記流量調整装置は、前記内燃機関に流入する前記冷却液の温度によって作動するサーモスタットである請求項3記載の廃熱利用装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−72295(P2013−72295A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209813(P2011−209813)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】