説明

廃触媒からの金属の回収方法

この発明の方法は、非担持廃触媒からの金属の除去に向けられている。触媒は浸出反応に付される。バナジウムが沈殿として除去され、他方モリブデンおよびニッケルを含む溶液がこれら金属の除去のためのさらなる抽出工程に付される。それに代えて、モリブデンは沈殿によって除去することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
この発明は、廃非担持触媒から金属を回収する方法に向けられる。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
精製および化学処理工業においては触媒が長年の間広く使われてきた。水素化精製触媒および水素化分解触媒を含めて水素化処理触媒が、今や、諸施設で世界的に広く用いられている。これらの水素化処理触媒は、典型的には、原油を精製製品に転化する以前の(無触媒の熱的)方法と比較するとき、増加した収率、より速い反応時間および改善された製品特性をもたらす。
【0003】
商業用途で典型的に用いられる水素化処理触媒は、今日、“担持” 触媒に分類されている。これら触媒担体は一般にSAPO類またはゼオライト類のような分子篩であるが、それら担体はシリカ、アルミナ、ジルコニア、クレーまたはこれらのある種の混成物から構成されることが多い。この担体上には実触媒活性の大部分を付与するより高価な物質が含浸される。これらの触媒物質に、典型的には、ニッケル、モリブデンおよびコバルトのような金属がある。ある場合には、白金、パラジウムおよびタングステンが用いられることもある。
【0004】
最近、新しい世代の水素化処理触媒が現れた。これらの触媒は担体物質を必要としない。代わりに、この触媒は、硫化モリブデンまたは硫化ニッケルのような担持されていない、ミクロンサイズの触媒粒子から成る。これらの触媒は、増加した表面積およびここでは論じられない他の因子のような諸因子に因り、在来の担持触媒よりも活性が何倍も高い。転化運転中の性能は、在来の担持触媒と比較するとき著しく改善されている。これらの高活性の非担持触媒が現在用いられている1つの分野は、真空残油水素化分解(vacuum residuum hydrocracking)である。残油水素化分解の運転で利用されている方法においては、これらの非担持触媒は、新しい構成触媒の必要を高める多量の金属(特にバナジウム)およびコークスの沈積を被ることが多い。
【0005】
担持および非担持の両触媒の1つの欠点はそれらのコストである。典型的には、高価な貴金属触媒に取り替えるコストは、精油所または化学プラントにおける主要な操業費用項目であるだろう。かくして、廃触媒、具体的には廃水素化処理触媒を再生し、その結果価値のある金属をリサイクルすることができる市場が現れた。色々な金属の最近の高価格はこの必要をなおもさらに推し進めた。数種の廃触媒の再生装置(reclaimer)が、現在、世界中の色々な地域でビジネスになっている。しかし、残念ながら、これらの焙焼(または乾式冶金)に基礎を置く再生装置は、担持触媒から金属を回収するように設計されている。
【0006】
この新世代の非担持触媒で使用される金属、具体的にはモリブデンおよびニッケルは高濃度であるために、経済的な非担持触媒金属の回収方法の必要が明らかになった。本発明者は、主としてMoS2またはNiSから構成されるこのクラスの高度に活性な非担持触媒からこれらの金属を回収する新規な方法を開発した。この方法は、バナジウムのような沈積金属のみならず、モリブデンおよびニッケルが挙げられる両触媒金属の回収が可能である。
【0007】
触媒からバナジウム、ニッケルおよびモリブデンを回収する手段は他の特許明細書に開示されている。例えば、米国特許第4,762,812号明細書は、ニッケルおよびバナジウムを含有する炭化水素質の鉱油を改善するための水素化プロセスから硫化モリブデンを含む廃担持触媒を回収する方法を開示する。この触媒はモリブデンを除去するためにさらに処理される。この方法はモリブデンを優先的に回収するが、他方バナジウムを大部分触媒中に残す。
【0008】
米国特許第4,544,533号明細書は、廃担持水素化処理触媒から金属を回収する方法を開示する。回収される金属は、モリブデン、コバルトまたはニッケルのような触媒金属のみならず、鉄、ニッケル、バナジウムおよびタングステンを含めて原油から得られるものであることができる。その触媒は、炭質および硫黄残渣を除去するために焙焼され、次いで諸金属が廃触媒から同時に浸出される。
【0009】
米国特許第4,514,369号明細書は、廃担持触媒を浸出してコバルト、ニッケル、モリブデンおよびバナジウムを含有する液を得ることを開示する。金属は液/液抽出技術によって抽出、単離および精製される。
【0010】
米国特許第4,432,949号明細書は、前もって焙焼された触媒担体から金属を浸出することを開示する。バナジウムは沈殿によって除去され、次いでニッケル、コバルトおよびモリブデンが逐次イオン交換によって除去される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
硫化モリブデンおよび硫化ニッケルを含む廃非担持触媒から触媒金属並びに沈積金属の経済的回収を可能にする新規な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の概要
水素化処理プロセスで使用された、水を含む流体でスラリー化されている廃非担持触媒からバナジウム、ニッケルおよびモリブデンを回収する方法であって、該方法は、
【0013】
a)該廃スラリー化触媒を浸出ゾーン中で浸出条件において水性溶媒および酸化剤で処理し;
【0014】
b)液体物質と固体物質を含む工程(a)の流出液を濾過ゾーンに送り、そのゾーンから固体物質をフィルターケークとして回収し;
【0015】
c)メタバナジン酸アンモニウムを含む工程(b)のフィルターケークを溶解ゾーンに送り、そのゾーンにアンモニアを溶解条件下で加え;
【0016】
d)工程(c)の流出液を、ケーク汚染物を除去するための第一濾過ゾーンに送り;
【0017】
e)工程(d)の流出液を結晶化ゾーンに送り、その中でその流出液をpH調整し、するとメタバナジン酸アンモニウムが固体として結晶化し;
【0018】
f)工程(e)の流出液を、メタバナジン酸アンモニウム固体を除去するための第二濾過ゾーンに送り;
【0019】
g)メタバナジン酸アンモニウム固体を乾燥し;
【0020】
h)乾燥したメタバナジン酸アンモニウム固体を焼成して五酸化バナジウムを生成させ、これを製品として除去し;
【0021】
i)水性相と有機相とを含む工程(b)の液体物質をミキサー−沈降タンクゾーンに送り;
【0022】
k)モリブデンを含む工程(i)の水性相を、ニッケルを含む有機相から分離し;
【0023】
l)ミキサー−沈降タンクゾーン中に残っている工程(k)の有機相を、製品としての硫酸ニッケル溶液の除去に先立って、抽出、スクラビングおよびストリッピングの少なくとも1つのサイクルに付し;
【0024】
m)工程(i)の水性相から溶媒抽出または沈殿によってモリブデン化合物を除去する
工程を含む。
【0025】
発明の詳細な説明
廃非担持水素化処理触媒から金属、具体的にはモリブデン、ニッケルおよび沈積バナジウムの回収を可能にする新規な方法が構想された。特許請求される方法は、オートクレーブを基にした、アンモニアによる金属浸出(autoclave-based ammoniacal metals leach)、バナジウム金属の回収、ニッケル金属の溶媒抽出およびモリブデン金属の溶媒抽出の各工程を含む。図1はこの方法の一般的なアウトラインを示す。以下で議論される図2および3はより具体的である。
【0026】
本発明の方法の簡単なアウトラインである図1は、アンモニア(ライン20)および追加の酸素を含む富化空気(30)と共にオートクレーブ40に入る廃触媒、即ち水中にスラリー化されているMoS2(ライン10)を示す。浸出反応はオートクレーブ40中で起こり、その反応が、溶解状態で残り、そしてライン45を通って浸出残渣のフィルタープレス50に進むモリブデン酸アンモニウムと硫酸ニッケルアンモニウムを生成させる。浸出スラリー中にメタバナジン酸アンモニウムが固体として沈殿、析出する。浸出残渣フィルタープレス50中で固/液分離が起こる。固体は、ライン55を通って、焼成を含めて幾つかの工程を含むバナジウム回収60に進む。最後にV2O5が回収されるが、それはライン70を通って販売のための準備に進む。モリブデン酸アンモニウムおよび硫酸ニッケルアンモニウムを含有する液体溶液はライン75を通ってニッケル回収80に進み、そこで硫酸ニッケルがライン90中で除去される。モリブデン酸アンモニウムを含有する液体はライン85を通ってモリブデン回収95に送られる。モリブデン酸アンモニウムは、有機抽出技術の使用によって、ライン100中で精製された形態で回収される。水性物質はライン105で廃水に進む。本発明においては、ニッケルおよびモリブデンの両金属はミキサー−沈降タンク抽出技術を用いて除去される。モリブデン化合物は、しかし、上記に代わって沈殿技術によっても除去することができる。
【0027】
金属抽出に先立つ触媒の処理
廃非担持触媒は上流の水素化処理装置から回収され、そして炭化水素供給材料および生成物のオイルを除去するために洗浄または脱油される。このプロセスは図には示されていない。1つの脱油(deoiling)手段は溶媒脱油で、それはコークスを除去することなく石油炭化水素を除去する。廃油を含む触媒(spent oiled catalyst)をトルエン、キシレンまたはケロシンのような有機溶媒の存在下で脱油することによって、98%超の非常に高い脱油が成し遂げられる。(他の溶媒が使用できる)。脱油されると触媒は非常に反応性になることがあるから、窒素のような不活性雰囲気下で脱油することが好ましい。脱油は温度を上げることによって促進することができるが、これは圧力容器の使用が必要になるのでコストを上げる。それ故、脱油では時間対コストが考慮すべき事柄になり、この場合望ましい脱油時間は12時間未満である。脱油に次いで溶媒がストリッピングされ、そして炭化水素油から分離されて再循環される。回収された油は上流の水素化処理装置に再循環される。
【0028】
図2を参照
脱油された廃非担持触媒は次に水によりスラリー化される。スラリー化された廃触媒の連続流れはアンモニア圧力の浸出オートクレーブ10へとポンプ給送される(ライン1)。このオートクレーブはマルチチャンバーの攪拌されている容器であって、その中に浸出反応を誘発するためにアンモニア(ライン2)と酸素(ライン41)が供給される。これらの反応は色々な温度、好ましくは約20〜約315℃の範囲内、さらに好ましくは約35〜約250℃の範囲内、最も好ましくは約90〜約200℃の範囲内の温度で起こり得る。オートクレーブ容器の圧力範囲は、容器中での蒸着を抑えるのに十分な、好ましくは約0〜約1200psigの範囲内、さらに好ましくは約100〜約900psigの範囲内、最も好ましくは約300〜約700psigの範囲内である。プロセスpH値は約7〜約12、より好ましくは約8〜約11、最も好ましくは約9〜約10の範囲である。浸出反応は下記の式で特定されるように起こる。
【化1】

【0029】
バナジウム抽出
図2を参照
モリブデン酸アンモニウムおよび硫酸ニッケルアンモニウムは溶解状態で残り、そしてメタバナジン酸アンモニウムは浸出スラリー中に固体として沈殿、析出する。浸出されたスラリーはオートクレーブ10からポンピングされて、オートクレーブ排出槽(図示されず)へと特定ルートで送られる。ベントガス(vent gas)はライン43でオートクレーブを出て行く。スラリーは冷却され、そして浸出残渣フィルタープレス(濾過ゾーン20)へとポンプ給送され(ライン3)、そこで液が固体から分離される。濾過ゾーン20に追加の水がライン4で加えられる。不純なメタバナジン酸アンモニウムの沈殿を含んでいる固体フィルターケークはバナジウム溶解タンク30へと送られる(ライン5)。その溶解タンクにはメタバナジン酸アンモニウムを可溶化すべくpH調整するために追加のアンモニアおよび水が供給される。溶解タンクの温度は、好ましくは約0〜約90℃の範囲内、さらに好ましくは約5〜約65℃の範囲内、最も好ましくは約25〜約45℃の範囲内である。プロセスpH値は、好ましくは2〜7、さらに好ましくは3〜7、最も好ましくは4〜6の範囲内である。
【0030】
スラリー溶液(ライン8)は、廃棄または燃料用石油コークスとブレンドするための離れた場所に(offsite)運ばれて送られる(ライン14)固体フィルターケークを形成するコークス汚染物を除去するために、残渣フィルタープレス(フィルターゾーン60)へとポンプ給送される。フィルタープレスの濾液(ライン9)は酸性化容器(結晶化ゾーン70の一部)へとポンプ給送され、そこで硫酸(ライン11)が濾液と所望pHが達成されるまで混合される。所望pHは、好ましくは約6〜10、さらに好ましくは約6〜9、最も好ましくは約6〜8の範囲内である。このpH調整された濾液は、バッチ式で稼働する3つのバナジウム結晶化装置の容器(これらも結晶化ゾーン70の一部)の1つへ特定ルートで送られ、そこで精製されたメタバナジン酸アンモニウムが固体として結晶化する。バナジウム結晶化装置の温度は、好ましくは約10〜約40℃の範囲内、さらに好ましくは約15〜約35℃の範囲内、最も好ましくは20〜30℃の範囲内である。
【0031】
結晶化装置の流出液はフィルタープレス(濾過ゾーン80)へと前進し(ライン13)、そこで公称で純粋なメタバナジン酸アンモニウムが固体として回収される。残留メタバナジン酸アンモニウムの約10〜20%を含有する濾液(液)が、より多くのメタバナジン酸アンモニウムを回収するために硫酸アンモニウム塩と共にバナジウム結晶化装置に再循環されて戻される(ライン12)。再循環されない濾液は全てライン61を経由して除去される。
【0032】
フィルタープレス(濾過ゾーン80)から、メタバナジン酸アンモニウム固体がライン15を通ってバナジン酸塩乾燥機50へと搬送され、そこでその固体が温風で乾燥される。ベントガスはライン51で除去される。乾燥されたメタバナジン酸塩は次に(ライン61を経由して)バナジン酸塩焼成炉90に送られる。ベントガスはライン52で焼成炉から除去される。焼成炉90中で、メタバナジン酸アンモニウムが以下に明記される分解反応が起こる点まで加熱される。
【化2】

【0033】
乾燥機および焼成炉からのベントガス(ライン51および52)は掃除用のアンモニア回収装置に特定ルートで送られ、他方五酸化バナジウム製品(ライン17)は販売のためにフレークにされる。
【0034】
ニッケル抽出
図2を参照
アンモニアによる浸出からの、モリブデンおよびニッケルという金属有価物を含有する液は、ミキサー−沈降タンク溶媒抽出ループ(ニッケル抽出110)の第一段階へと特定ルートで送られる(ライン6経由)。その液は、随意に、ミキサー−沈降タンク溶媒抽出ループ(ニッケル抽出110)の第一段階に特定ルートで送られる前に、有機炭素のさらなる除去のために、犠牲溶媒、好ましくはケロシン希釈剤の使用によって予備処理することができる。ミキサー−沈降タンクは、よく混合した液体を得るために水溶液と有機溶液とを羽根車で合わせることによって機能する。この液体混合物はウェヤー(Weir)を越えて進んで水性相と有機相とに分離する。各ミキサー−沈降タンクは抽出段階(Ni抽出110)、スクラビング段階(Niスクラビング130)またはストリッピング段階(Niストリッパー140)として作動する。一般的には、所望とされる結果に影響を及ぼすには多段階が必要とされる。液体混合物はNi抽出からライン23を経由してNiスクラビングへと、そしてNiスクラビングからライン25を経由してNiストリッピングへと進む。
【0035】
Ni溶媒抽出ループの温度は、約20〜約50℃、好ましくは約30〜約45℃、最も好ましくは約35〜約40℃の範囲内である。所望とされるpHは、好ましくは約7〜約12、さらに好ましくは約7.5〜約11、最も好ましくは約8.5〜約10の範囲内である。
【0036】
Ni抽出ゾーン110において、液はオキシムおよびケロシンを含む希薄有機溶液(ライン28)と向流接触せしめられる。オキシムは、好ましくは2−ヒドロキシ−5−ノニルアセトフェノンオキシムのようなケトキシムである。このケトキシム溶液は商業的にはしばしばLIX-84-1として知られている。これに代わって、参照することによって含められる米国特許第4,432,949号明細書に開示されるもののようなヒドロキシオキシム類も使用することができる。オキシムは、一般に、米国特許第4,514,369号明細書に開示されている。上記希薄溶液はニッケルを有機相中に吸収させ、他方モリブデンは水性相中に留まる。そのモリブデン含有液は中間槽設備(ライン22)にポンプ給送され、その後でMo回収のために処理される(Mo結晶化ゾーン120)。
【0037】
Ni抽出ゾーン110からの流出液はスクラビングゾーン130に入り、そこでその流出液は濃(10%)硫酸溶液(ライン24)と向流接触せしめられる。スクラビングゾーン130からの流出液は(ライン25を経由して)Niストリッピングゾーン140に入り、再び濃(10%)硫酸溶液(ライン26)と向流接触せしめられる。両ゾーン130および140中で、硫酸は共に上記有機溶媒を再生させ、そしてニッケルを水性相に移すように作用する。混合と沈降がNiスクラバー130およびNiストリッパー140の両者の中で起こる。廃硫酸はライン29としてNiスクラバーを出て行くことが示されている。再生された希薄有機溶媒(ライン28)は回収され、そして中間槽設備に送られ、その後抽出ミキサー−沈降タンク(Ni抽出110)に再循環される。この点で、必要とされる全ての構成溶液が加えられる。硫酸ニッケル溶液を含有する水性相が、所望とされる回収ニッケル製品(ライン27)である。この技術分野で周知の硫酸ニッケル精製法が、ニッケルを他の所望状態に還元するためにさらに用いることができる。
【0038】
モリブデンの除去
初めに図2を参照されたい。図2は抽出技術によるMoの除去を説明する。
【0039】
水性モリブデン含有液(ライン22)は、随意に、ヒ素およびリン(ライン34)を除去するためにpHを8.5に調整し、その水性液をMgSO4(ライン31)と接触させてヒ素を酸化ヒ素マグネシウムアンモニア(magnesium ammonia arsenic oxide)として、またリンを燐酸マグネシウムアンモニア(magnesium ammonia phosphate)として沈殿させることによって予備処理する(Mo結晶化ゾーン120の一部、図示されず)ことができる。この予備処理方法は、多分、多量の廃触媒のリサイクル中に使用されるだろう。
【0040】
水性モリブデンを含有する液(ライン22)は酸性化容器(Mo結晶化ゾーン120の一部であって、別個には図示されていない)にポンプ給送され、そこで硫酸が水性モリブデン含有液と所望とされるpHが達成されるまで混合される。所望pHは、好ましくは約pH2〜約7、さらに好ましくは約pH2.5〜約6、最も好ましくは約pH3〜約5の範囲である。このpH調整液はバッチ式で稼働する3つのモリブデン結晶化装置の容器(Mo結晶化ゾーン120の一部)の1つに特定ルートで送られ、そこで精製されたモリブデン酸アンモニウムが固体として結晶化する。モリブデン結晶化装置の温度は、好ましくは約10〜約40℃の範囲、さらに好ましくは約15〜約35℃の範囲、最も好ましくは約20〜約30℃の範囲である。
【0041】
Mo結晶化装置からのモリブデン含有液は(ライン63を経由して)濾過ゾーン72に供給され、それよりモリブデン酸アンモニウム水溶液がライン66を経由して除去される。ライン66中のモリブデン酸アンモニウム溶液はライン35に合流する。溶媒はモリブデンをなおも含んでいるが、濾過後に(ライン64を経由して)モリブデンミキサー−沈降タンク溶媒抽出ループ(Mo抽出160)の第一段階へと進み、そこでその溶媒はイソデカノール(ライン36)およびケロシン(ライン32)と混合された水溶性の飽和直鎖アミン溶媒の希薄溶液と向流接触せしめられる。直鎖アミン溶媒は、好ましくは、商業製品であるAlamine(登録商標)336である。この溶媒の直鎖アルキル基はCアミンとC10アミンとの混合物であり、この場合C炭素鎖が2:1比で優勢である。モリブデンは有機相中に抽出され、他方非吸収成分は全て水性相中に留まる。抽出部からの水性ラフィネートは廃水処理設備(ライン37)へと離れた場所に送られる。
【0042】
Mo溶媒抽出ループの温度は、好ましくは約20〜約50℃、さらに好ましくは約30〜約45℃、最も好ましくは約35〜約40℃の範囲である。所望とされるpHは、好ましくは約pH7〜12、さらに好ましくはpH7.5〜11、最もこのpH8.5〜10の範囲である。
【0043】
Alamine336溶媒およびモリブデンを含有する有機溶液は、ストリッピングミキサー−沈降タンク150の第一段階に特定ルートで送られる(ライン33)。この有機溶液は濃アンモニア溶液(ライン38)と向流接触せしめられ、そのモリブデンを純粋な濃モリブデン酸アンモニウム水溶液(ライン35)中に効果的にストリッピングする。ストリッピングされた有機物は第一段階の抽出(ライン36)に再循環されて戻され、そこでそれは酸性化されたモリブデン供給物質(ライン64)によって再生される。モリブデン酸アンモニウムを含有するストリッピングされた溶液(ライン66と組み合わされているライン35)が、所望とされる回収モリブデン製品である。
【0044】
図3は、溶媒抽出によってではなくH2Sを用いる沈殿によるモリブデンの除去を説明している点でのみ図2と異なる。水性モリブデンを含有する液が(ライン22を経由して)Mo結晶化工程120に特定ルートで送られる。そこでその液は、ヒ素を酸化ヒ素マグネシウムアンモニアとして、またリンを燐酸マグネシウムアンモニアとして沈殿、析出させるために、図2で議論されたようにMgSO4(ライン31)で予備処理することができる。これらの沈殿はライン34を経由して除去される。
【0045】
Mo結晶化装置からのモリブデン含有液は(ライン41を経由して)濾過ゾーン200に供給され、そこからモリブデン酸アンモニウムを含む水溶液がライン42を経由して除去される。その溶液はMo沈殿ゾーン210中でH2S(ライン43)と接触せしめられ、その結果モリスルフィド(molysulfides)の沈殿が生ずる。この沈殿を含有する溶液はライン45を通って濾過ゾーン220に進む。モリスルフィドはライン46を経由して固体として除去される。モリブデンをなおも含んでいる残留溶液はライン47を経由して酸化ゾーン230に進む。そこでその溶液は酸素(ライン48)およびアンモニア(ライン49)と接触せしめられる。この溶液は、次に、ライン51を経由してモリブデン再混合段階240に進み、そこでその溶液はライン44からの濾液のみならずライン52からのアンモニアおよび水と接触せしめられる。モリブデン酸アンモニウム製品はライン62を経由して除去される。沈殿技術は米国特許第3,357,821号および同3,455,677号明細書中でさらに議論されている。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の方法の一般的なアウトラインを与える。
【図2】本発明の方法をより詳細に説明する。
【図3】図2の方法をモリブデンの回収に関するもっと多くの細部と共にさらに説明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化処理プロセスで使用された、水を含む流体でスラリー化されている廃非担持触媒からバナジウム、ニッケルおよびモリブデンを回収する方法であって、
a)該廃スラリー化触媒を浸出ゾーン中で浸出条件において水性溶媒および酸化剤で処理し;
b)液体物質と固体物質を含む工程(a)の流出液を濾過ゾーンに送り、そのゾーンから固体物質をフィルターケークとして回収し;
c)メタバナジン酸アンモニウムを含む工程(b)のフィルターケークを溶解ゾーンに送り、そのゾーンにアンモニアを溶解条件下で加え;
d)工程(c)の流出液を、ケーク汚染物を除去するための第一濾過ゾーンに送り;
e)工程(d)の流出液を結晶化ゾーンに送り、その中でその流出液をpH調整し、するとメタバナジン酸アンモニウムが固体として結晶化し;
f)工程(e)の流出液を、メタバナジン酸アンモニウム固体を除去するための第二濾過ゾーンに送り;
g)メタバナジン酸アンモニウム固体を乾燥し;
h)乾燥したメタバナジン酸アンモニウム固体を焼成して五酸化バナジウムを生成させ、これを製品として除去し;
i)水性相と有機相とを含む工程(b)の液体物質をミキサー−沈降タンクゾーンに送り;
k)モリブデンを含む工程(i)の水性相を、ニッケルを含む有機相から分離し;
l)ミキサー−沈降タンクゾーン中に残っている工程(k)の有機相を、製品としての硫酸ニッケル溶液の除去に先立って、抽出、スクラビングおよびストリッピングの少なくとも1つのサイクルに付し;
m)工程(i)の水性相から溶媒抽出または沈殿によってモリブデン化合物を除去する
工程を含む上記の方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属回収方法に先立って、非担持触媒を洗浄または脱油して炭化水素供給材料および生成物のオイルを除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
脱油が有機溶媒を不活性雰囲気中で使用すると起こる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
有機溶媒がトルエン、キシレンおよびケロシンより成る群から選ばれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
浸出ゾーンがオートクレーブであり、水性溶媒がアンモニアを含み、そして酸化剤が酸素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
浸出反応が20〜315℃の範囲内の温度、0〜1200psigの範囲内の圧力および7〜12の範囲内のpHにおいて起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(i)に先だって、工程(b)の液体物質を有機炭素除去用のケロシン希釈剤で処理することができる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(i)の条件が約20〜約50℃の範囲内の温度を含み、そしてpHが7〜12の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)の液体物質がオキシムおよびケロシンを含む希薄有機溶液と接触せしめられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
オキシムがケトキシムである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ケトキシムが2−ヒドロキシ−5−ノニルアセトフェノンオキシムである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)の液体物質が希薄有機溶液と接触せしめられる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)の液体物質が希薄有機溶液と向流接触せしめられる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
工程(k)の有機相がミキサー−沈降タンクゾーン中におけるスクラビングおよびストリッピング中に硫酸と向流接触せしめられる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
モリブデンの溶媒抽出に先立って、工程(i)の水性相が、マグネシウムおよびリンを除去するために、塩基性pHに調整し、続いて硫酸マグネシウムと接触せしめられる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ヒ素が酸化ヒ素マグネシウムアンモニアとして除去され、そしてリンがリン酸マグネシウムアンモニアとして除去される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
溶媒抽出による工程(i)の水性相からのモリブデンの除去が
(a)工程(i)の水性相を約2〜約7の範囲内のpHを得るために硫酸と混合し;
(b)工程(i)の水性相からモリブデン酸アンモニウム固体を結晶化させ、それを残留液体から分離し;
(c)上記残留液体をイソデカノールおよびケロシンと混和している水溶性の飽和直鎖アミン溶媒の希薄溶液と向流接触させ、それによって水性相と有機相とを生成させ、ここでその有機相中にはモリブデンが抽出され;
(d)上記の水性相と有機相とを分離し;
(e)上記有機溶液を少なくとも1つのミキサー−沈降タンクゾーン中で濃アンモニア溶液と向流接触させ;
(f)モリブデン酸アンモニウムを製品として回収する
工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
溶媒の直鎖アルキル基がCアミンとC10アミンとの混合物であり、この場合C炭素鎖が2:1で優勢である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
沈殿による工程(i)の水性相からのモリブデンの除去が、
(a)工程(i)の水性相を沈殿による1種または2種以上の汚染物の除去のための結晶化ゾーンに送り;
(b)工程(a)の流出液を濾過ゾーンに送り、そこで濾液のみならず、モリブデン酸アンモニウムを含む水溶液を回収し;
(c)モリブデン酸アンモニウムを含む水溶液をモリブデン沈殿ゾーン中でH2Sと接触させ、それによって液体の上澄み液のみならず硫化モリブデン沈殿を得;
(d)工程(c)の沈殿および上澄み液を濾過ゾーンに送り、そこで沈殿を固体として除去し;
(e)工程(d)の上澄み液を酸化ゾーンに送り、そこでその上澄み液を酸素およびアンモニアと接触させ;
(f)工程(e)の流出液をモリブデンの再混合ゾーンに送り、そこでその流出液を工程(b)の濾液と合わせ、その混合物をアンモニアおよび水と接触させてモリブデン酸アンモニウムを含む製品を生成させる
工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
汚染物がヒ素およびリンより成る群から選ばれる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
モリブデン酸塩製品が八モリブデン酸塩を含む、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−506880(P2009−506880A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523895(P2008−523895)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/025148
【国際公開番号】WO2007/018805
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】