説明

建物の外壁材および外壁構造

【課題】 採光機能と目隠し機能とを備え、且つ、火災発生時には火の廻りを長時間に亘って阻止することができる建物の外壁材とこの外壁材による外壁構造を提供する。
【解決手段】 外壁材Aは、矩形状の内外透光性合成樹脂板1、1'間に、幅方向に山部2aと谷部2bとを連続形成し、且つ、これらの山部2aと谷部2bとに多数の透孔3を穿設している金属板2を介在させてなり、この外壁材Aを複数枚、建物の開口部10に並列させて外壁を形成し、透光性合成樹脂板1、1'と金属板2の多数の透孔3を通じて屋内側に採光すると共に金属板2とこれらの透光性合成樹脂板1、1'とによって適度の目隠し機能を具備させ、さらに、火災発生時に透光性合成樹脂板1、1'が溶融しても金属板2によって火の廻りを防止するように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採光機能と目隠し機能とを兼備している建物の外壁材とその外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種の外壁材としては一定厚みを有する四角形状の不透明なガラスブロックが知られており、このガラスブロックを互いに対向端面を密着させながら縦横に張りめぐらせることによって採光機能と目隠し機能とを兼ね備えている外壁を構成しているが、ガラスブロックは耐衝撃性に劣り、衝撃を受けると欠損や破損を生じる虞れがある。このため、例えば、特許文献1に記載されているように、耐衝撃性を有するポリカーボネート樹脂板とガラス板との複層透明体からなる建材が開発されている。
【特許文献1】特開2001−18326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなポリカーボネート樹脂板とガラス板との複層板からなる建材を外壁材として使用した場合、ポリカーボネート樹脂板は耐熱性に劣るため、火災が発生した場合には短時間で溶融し、また、ガラス板も直接火に曝されると溶融して火が廻り、類焼が生じ易くなるといった問題点があった。また、建物の外壁はその高さ及び幅が大きく、その高さに相当する長さを有する大版サイズの矩形状の外壁材を上記ポリカーボネート樹脂板とガラス板との複層板から形成したした場合、この外壁材を施工すると撓みや座屈が生じる虞れがあるために、金属製の補強材を介在、或いは積層しておく必要があり、そうすると、採光機能が損なわれて初期の目的を達成することができなくなる。
【0004】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、採光機能と目隠し機能とを兼備した上で、火災発生時における高熱にも耐えて火の廻りを長時間に亘り阻止することができ、さらに、自立性を有する強固な外壁材とその外壁構造を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の建物の外壁材は、請求項1に記載したように、採光機能を有する建物の外壁を構成する外壁材であって、矩形状の透光性合成樹脂板を建物の内外方向に一定の隙間を存して配置し、その隙間内に多数の透孔を穿設している金属板を介在させた構造としている。
【0006】
上記のように構成した建物の外壁材において、請求項2に係る発明は、上記内外透光性合成樹脂板を内部に多数の空間部を有する複層板によって形成している一方、金属板を幅方向に山部と谷部とが順次、連続するように折り曲げたパンチィング板から形成してあり、この金属板の谷部と山部を内外透光性合成樹脂板の対向面に当接させた状態で介在させて内外透光性合成樹脂板間の隙間を金属板の山部と谷部とによって複数の空気室に区画、形成していることを特徴とする。
【0007】
さらに、請求項3に係る発明は、上記内外透光性合成樹脂板の両側端部を互いに接近する方向に屈折させてフランジ部に形成し、これらのフランジ部間に金属板の両側端部を挟着させていることを特徴とする一方、請求項4に係る発明は、上記内外透光性合成樹脂板間の隙間の内外方向の中間部にガラス板を介在させて上記隙間を内外に二分割した空気室に形成していると共に、一方の空気室に山部と谷部とが順次、連続するようにジグザグ状に折り曲げたパンチィング板からなる金属板を配して該金属板の谷部と山部を対向するガラス板と透光性合成樹脂板との対向面に交互に当接させてこの金属板により一方の空気室を複数の空気室に区画、形成していることを特徴とする。
【0008】
請求項5に係る発明は上記外壁材によって施工した建物の外壁構造であって、矩形状の透光性合成樹脂板を内外方向に一定の隙間を存して配置し、その隙間内に多数の透孔を穿設している金属板を介在させてなる外壁材を複数枚、施工すべき建物の開口部に、互いに隣接する外壁材の対向側端面を接合させた状態にして横方向に並設し、これらの外壁材の上下端部を開口部の上下端面に固着したフレーム材に固定してなる構造を有している。
【0009】
このように構成した建物の外壁構造において、請求項6に係る発明は、外壁材を構成している内外透光性合成樹脂板として、内部に多数の空間を有し、且つ、両側端部を互いに近接する方向に屈折させてフランジ部に形成した複層板を採用している一方、金属板として、幅方向に山部と谷部とが順次、連続するように折り曲げたパンチィング板を用い、この金属板の谷部と山部を内外透光性合成樹脂板の対向面に当接させた状態で介在させて内外透光性合成樹脂板間の隙間を金属板の山部と谷部とによって複数の空気室に区画、形成していると共に該金属板の両側端部を上記内外透光性合成樹脂板のフランジ部間に挟着させていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項7に係る発明は、上記内外透光性合成樹脂板の対向面間の隙間に上記金属板を二枚、互いに内外方向に重ね合わせた状態で介在させていると共に、一方の金属板を上側のフレーム材に、火災発生時の高熱によって溶融する可溶性材料を介して吊支させてこれらの金属板に設けている透孔を連通させた状態に配設してあり、火災発生時に上記可溶性材料の溶融により該金属板を降下させて他方の金属板との透孔の連通状態を遮断するように構成している。
【0011】
さらに、上記請求項5又は請求項7に記載の建物の外壁構造において、請求項8に係る発明は、外壁材を構成している内外透光性合成樹脂板間の隙間の内外方向の中間部にガラス板を介在させて上記隙間を内外に二分割した空気室に形成していると共に、一方の空気室に山部と谷部とが順次、連続するように折り曲げたパンチィング板からなり金属板を配して該金属板の谷部と山部を対向するガラス板と透光性合成樹脂板との対向面に交互に当接させてこの金属板により一方の空気室を複数の空気室に区画、形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の建物の外壁材及びその外壁構造によれば、請求項1、請求項5に記載したように、外壁材は矩形状の透光性合成樹脂板を建物の内外方向に一定の隙間を存して配置し、その隙間内に多数の透孔を穿設している金属板を介在させてなるものであるから、屋外側に面している透光性合成樹脂板によって優れた外観を呈する外壁を構成することができると共に耐衝撃性も良好で欠損や破損が生じ難いのは勿論、内外の透光性合成樹脂板間の隙間内に介在している金属板によって強度的にも優れた外壁を形成することができると共に外部に対する目隠し機能を発揮させることができ、その上、この金属板には多数の透孔を穿設しているので、内外に配した透光性合成樹脂板と共にこの透孔を通じて適度の採光機能を発揮させることができる。さらに、火災が発生した時に、透光性合成樹脂板が溶融しても金属板が残存して長時間に亘って火の廻りを遮断し、類焼をできる限り防止することができる。
【0013】
上記建物の外壁材とこの外壁材を使用した外壁構造において、請求項2、請求項3及び請求項6に係る発明によれば、内外透光性合成樹脂板は内部に多数の空間部を有する複層板からなるので、この多数の空間部が断熱機能を発揮して建物内が外気に殆ど影響されない環境にすることができると共に、この内外透光性合成樹脂板の両側端部が互いに接近する方向に屈折させてフランジ部に形成しているので、これらの内外透光性合成樹脂板の耐曲強度が増大して矩形状に形成しているにもかかわらず、座屈等が生じる虞れのない剛直性を備えることができ、従って、外壁を施工する際には建物の開口部に対する施工作業が正確に能率よく行うことができる。
【0014】
さらに、内外透光性合成樹脂板間に介在させた金属板は、幅方向に山部と谷部とが順次、連続するように折り曲げたパンチィング板からなるので、この金属板も起立状態に配設しても座屈等が生じることなく自立させることができ、その上、この金属板の谷部と山部を内外透光性合成樹脂板の対向面に当接させた状態で介在させるので、上記内外透光性合成樹脂板と共に外壁の施工が一層能率よく行え、且つ、外壁が一定の厚みとなるように精度よく施工することができると共に、火災が発生して透光性合成樹脂板が溶融しても金属板が起立した状態で残存して長時間に亘理、防火機能を発揮することができる。また、内外透光性合成樹脂板間の隙間を金属板の山部と谷部とによって複数の空気室に区画、形成しているので、内外透光性合成樹脂板が上述したように多数の空間を有する複層板からなることと相まって、内部に全体的に多層の空気層を有する外壁を形成することができ、大きな断熱作用を奏する外壁を施工することができる。
【0015】
請求項4、請求項8に係る発明によれば、内外透光性合成樹脂板間の隙間の内外方向の中間部にガラス板を介在させて上記隙間を内外に二分割した空気室に形成しているので、断熱性及び不透明による目隠し機能を有するガラス板と共に優れた断熱機能、目隠し機能を有する外壁材や外壁を形成することができ、さらに、一方の空気室に山部と谷部とが順次、連続するように折り曲げたパンチィング板からなる金属板を配して該金属板の谷部と山部を対向するガラス板と透光性合成樹脂板との対向面に交互に当接させてこの金属板により一方の空気室を複数の空気室に区画、形成しているので、空気室による断熱効果と共に強度的にも優れた外壁構造を得ることができる。
【0016】
また、請求項7に係る発明によれば、内外透光性合成樹脂板の対向面間の隙間に金属板を二枚、互いに内外方向に重ね合わせた状態で介在させていると共に、一方の金属板を上側のフレーム材に、火災発生時の高熱によって溶融する可溶性材料を介して吊支させてこれらの金属板に設けている透孔を連通させた状態に配設してあり、火災発生時に上記可溶性材料の溶融により該金属板を降下させて他方の金属板との透孔の連通状態を遮断するように構成しているので、常態においては二枚の金属板における互いに連通している透孔によって適度の採光機能を発揮させることができる一方、火災発生時には上側フレーム材によって吊支されている金属板が可溶性材料の溶融によってその支持が解かれて降下し、これらの二枚の金属板が互いにその透孔の連通を遮断させるので、火の廻りを確実に遮断することができ、類焼を阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1は建物の外壁構造の簡略縦断側面図、図2はその簡略横断面図であって、建物の外壁を構成する外壁材Aは、一定厚みを有する二枚の縦長長方形である矩形状の透光性合成樹脂板1、1'と、多数の透孔3を穿設している金属板2とを備え、上記二枚の透光性合成樹脂板1、1'を建物の内外方向に一定の隙間を存して配置し、この隙間内に上記金属板2を介在、配設して、該金属板2の両側端部を上記内外透光性合成樹脂板1、1'の両側端部間に直接、或いは、パッキングを介して挟着させている。なお、この外壁材Aの長さは後述する建物の開口部10の縦幅に略等しいか僅かに短く形成されてあり、横幅はこの開口部10の横幅を複数分割した幅に形成されている。
【0018】
上記矩形状の透光性合成樹脂板1、1'は、ポリカーボネート、結晶性又は非晶質ポリエチレンテレフタレートなどの透光性を有する樹脂より製されており、中実の1枚の平板や波板などであってもよいが、図4の横断面図に示すように、上下端面が開口した中空板に形成して、その中空内部を中空板の板面に並行な中間板1a、1aと中空板の対向面間に接続している複数枚のリブ部1bとで多数の空間部1cを区画、形成してなる複層板を採用している。さらに、これらの内外透光性合成樹脂板1、1'の両側端部は互いに接近する方向に屈折させてフランジ部1d、1dに形成している。即ち、建物の内側(屋内側)に配設される透光性合成樹脂板1の両側フランジ部1dは外側(室外側)に向かって突出させてあり、建物の外側(屋外側)に配設される透光性合成樹脂板1の両側フランジ部1dは内側(屋内側)に向かって突出させている。なお、上記複層板において、両側フランジ部が形成されていない上下面が平坦な複層板であってもよい。
【0019】
一方、金属板2は図2に示すように、一定厚みを有するアルミニウム板又は鉄板或いは鋼板からなり、一定幅毎に内外方向に交互に屈折させることにより、横断面コ字状の山部2aと谷部2bとを順次、幅方向に連続形成している。即ち、透光性合成樹脂板1、1'の対向面に平行な一定幅の山部2aを形成したのち、この山部2aの一側端部を該山部2aに対して略直角に内方に向かって屈折させて内端と外端間の幅寸法が上記内外透光性合成樹脂板1、1'の対向面間の隙間の幅寸法に等しい側面板部2cを形成し、この側面板部2cの内端部を上記山部2aとは反対方向に該側面板部2cに対して略直角に屈折させて山部2aと同一幅を有する谷部2bを形成し、さらに、この谷部2bの一側端部を該谷部2bに対して略直角に外方に向かって屈折させて内外端間の幅寸法が上記側面板部2cと同一寸法である側面板部2cを形成し、この側面板部2cの外端を上記谷部2bとは反対方向に該側面板部2cに対して略直角に屈折させて次の山部2aを形成し、以下、同様にして側面板部2cを介して山部2aと谷部2bとを順次、連続形成してなるものである。
【0020】
さらに、この金属板2の両側端部を最も両側端に形成されている山部2a又は谷部2bの外側端から横断面L字状に屈折して、山部2aの頂面と谷部2bの外底面との間の中間部で外側方に向けている小幅の側端縁部2d、2dを形成している。そして、この金属板2の幅、即ち、両側の側端縁部2d、2d間の幅を内外透光性合成樹脂板1、1'の幅に等しくしていると共に高さは内外透光性合成樹脂板1、1'に等しい高さに形成されてあり、この金属板2を内外透光性合成樹脂板1、1'間に介在させてその山部2aの頂面を外側の透光性合成樹脂板1の内面に、谷部2bの外底面を内側の透光性合成樹脂板1'の内面(外側の透光性合成樹脂板1と対向する面)にそれぞれ当接させ、且つ両側端縁部2d、2dを内外透光性合成樹脂板1、1'の両側フランジ部1d、1dの突出端面間でそれぞれ挟持された一定厚みを有する矩形状の外壁材Aを構成している。なお、透光性合成樹脂板1、1'が平板や波板や内外面が平坦な複層板などのようにフランジ部がない場合は、パッキンなどのスペーサ材を介して金属板2を平板で挟持する。
【0021】
このように構成した外壁材Aにおいては、内外透光性合成樹脂板1、1'内の隙間が金属板2における山部2aと谷部2bを連設させている側面板部2cによって幅方向に複数の空気室4、4・・・に区画、形成されている。また、金属板2に設けられている多数の透孔3は、内外透光性合成樹脂板1、1'にそれぞれ重ね合わせ状態で接触させている山部2aと谷部2bとに全面に亘り上下方向及び幅方向に所定間隔毎に設けられてあり、外側透光性合成樹脂板1を透過した光を山部2aと谷部2bとに設けている多数の透孔3から内側の透光性合成樹脂板1'を透過させて屋内側に採光するように形成している。この透孔3は金属板2の投影面積の10%以上、好ましくは20〜80%が開孔となるようにしておくことが望ましい。
【0022】
なお、山部2aと谷部2bを連設させている側面板部2cは、図に示すように、内外透光性合成樹脂板1、1'の対向面に対して直角方向に設けられている場合には、この側面板部2cに透孔3を設けても殆ど採光機能を発揮することがないので、透孔3を設けていなくてもよいが、山部2aや谷部2bが横断面台形状となるように側面板部2cを傾斜させている場合には、透孔3を設けておくことが望ましい。また、金属板2として山部2aと谷部2bとが円弧状の波形状に湾曲した形状としておいてもよく、この場合にもこの金属板の全面に亘って縦横に多数の透孔を設けておけぱよい。いずれにしても、金属板としては山部と谷部とが連続形成され且つ多数の透孔を穿設しているパンチング板を採用している。
【0023】
次に、このように構成した外壁材Aを複数枚使用することによって構成された建物の外壁構造について説明すると、外壁を形成すべき建物の開口部10は図1〜3に示すように、建物の隣接する柱11、11と上下躯体12、13とで囲まれた空間部によって形成されてあり、隣接する柱11、11の対向側面には外壁材Aの側端部を挿嵌させる縦溝14a を全長に亘って設けている縦桟部材14が固着されていると共に、上下躯体12、13の上下水平対向面には、外壁材Aの上下端部をそれぞれ挿嵌させる横溝15a 、16a を有する上下フレーム材15、16が固着されている。なお、上側フレーム材15の横溝15a の深さを下側フレーム材16の横溝16a の深さよりも深く形成されていて、後述するようにこれらの上下フレーム材15、16の横溝15a 、16a 内への外壁材Aの嵌め込みが容易に行えるようにしている。
【0024】
そして、左右に隣接する外壁材A、Aの対向側面を突き合わせ接合するようにして複数枚の外壁材Aを並列させていると共に、各外壁材Aの上下端部を上記上下フレーム材15、16の横溝15a 、16a にそれぞれ挿嵌させてあり、外壁材Aの内外透光性合成樹脂板1、1'の上下端部と横溝15a 、16a との間の隙間に図1に示すよう、パッキン17a をセットした後にコーキング材17b を充填して外壁材Aを固定している。さらに、両側縦桟部材14、14の縦溝14a 、14a に外側端部を挿嵌させている最も両側端側に配した外壁材A、Aは、その内外透光性合成樹脂板1、1'の外側端部を縦溝14a 内に、図2に示すように、パッキン18a をセットした後にシーリング材18b を介して挿嵌、固定されている。また、左右に隣接した外壁材A、Aの対向側面間もパッキン18a をセットした後にシーリング材18b を充填して接続している。
【0025】
この外壁の施工方法の一例を簡単に述べると、屋内側からまず、外側の透光性合成樹脂板1をその両側フランジ部1d、1dが屋内側に向けた状態となるように開口部10内に配設する。その際、この外側透光性合成樹脂板1の上端部を上側フレーム材15の横溝15a 内に挿入して下端部を下側フレーム材16の横溝16a 上に臨ませた状態にしたのち落とし込むことにより、該外側透光性合成樹脂板1の上下端部を上下フレーム材15、16の横溝15a 、16a 内に配設すると共に、この外側透光性合成樹脂板1を下側横溝16a 上でこの横溝16a 内の外側に向かって押し進めることにより、その上下端部を上下フレーム材15、16の外側垂直面部の内面に当接させる。
【0026】
次いで、屋内側から金属板2を上記外側透光性合成樹脂板1の場合と同様にしてその上下端部を上下フレーム材15、16の横溝15a 、16a 間に挿入し、この金属板2を押し進めてその山部2aの垂直な頂面を外側透光性合成樹脂板1の内面に重ね合わせ状態に当接させる。同様にして、内側透光性合成樹脂板1'を、その両側フランジ部1d、1dを屋外側に向けた状態にして上下フレーム材15、16の横溝15a 、16a 間に挿入、配設し、金属板2の谷部2bの垂直な外底面に重ね合わせ状態に当接させると共に、これらの内外透光性合成樹脂板1、1'の両側のフランジ部1d、1dの突出端面によって金属板2の両側端縁部2d、2dをそれぞれ挟持される。
【0027】
なお、内外透光性合成樹脂板1、1'は、その両側端部にフランジ部1d、1dを形成しているので、大版サイズの縦長長方形であるにもかかわらず、上下フレーム材15、16の横溝15a 、16a 間に挿入した場合、自立状態で起立させておくことができると共に耐曲げ力が大きいので座屈や撓みが生じる虞れもない。同様に、金属板2も幅方向に山部2aと谷部2bとを連続形成しているので、剛直性を有して座屈や撓みが生じることなく起立状態を維持しておくことができ、従って、外壁材Aの施工作業が能率よく行うことができる。
【0028】
こうして、上下フレーム材15、16の横溝15a 、16a 間に建て込まれた外壁材Aは、これらの横溝15a 、16a 内で横方向にスライドさせてその外側端部を一方の縦桟部材14の縦溝14a 内に挿嵌させたのち、次の外壁材Aを上記同様にして上下フレーム材15、16の横溝15a 、16a 間にその上下端部を挿嵌させることにより建て込み、先に建て込んだ外壁材Aに接合させる。以下、同様にして開口部10内に複数枚の外壁材Aを横方向に並列状態に建て込んで外壁を構成したのち、上下フレーム材15、16の横溝15a 、16a 及び縦桟部材14、14と全ての外壁材Aの内外面側における上下端部との間の隙間にパッキン17a 、18a をセットした後にコーキング材17b 、18b を充填し、さらに、外壁材A、A同士の対向側面間にパッキン18a をセットした後に、シーリング材18b を充填する。
【0029】
このようにして施工された外壁は屋内側、屋外側共に透光性合成樹脂板1、1'を全面的に配しているので、長期に亘り体裁のよい外観を呈すると共に、これらの内外透光性合成樹脂板1、1'間に山部2aと谷部2bとを幅方向に連続的に屈折形成してなる金属板2を介在しているので、この金属板2によって全体が補強され、優れた剛直性を有する外壁を構成することができる。また、負圧の発生によって、或いは、自立性が小さい場合等によって透光性合成樹脂板1、1'が膨らみ状に湾曲する虞れがある時には、図5に示すように、透光性合成樹脂板の適所にボルト19を貫通させて該ボルト19の先端部を金属板2に固定することにより、透光性合成樹脂板1、1'を金属板2に連結、支持させておいてもよい。なお、透光性合成樹脂板1、1'がポリカーボネート樹脂により製されていると、耐衝撃性に優れていて欠損や破損が生じ難いという利点がある。
【0030】
屋外側に面している透光性合成樹脂板1に光が当たると、この透光性合成樹脂板1を透過して金属板2の山部2aと谷部2bとに穿設している多数の透孔3から屋内側の透光性合成樹脂板1'を透光し、屋内に採光することができる。そして、金属板2における透孔3を設けていない部分によって適度の目隠し機能を発揮する。なお、透光性合成樹脂板1、1'を着色して半透明にすることにより透光性を調整してもよい。また、内外透光性合成樹脂板1、1'の対向面間の隙間内の空気層が断熱効果を奏する。さらに、火災が発生すると透光性合成樹脂板1、1'が溶融するが、金属板2はそれ自体の自立性と上下フレーム材15、16により支持されて倒れることがなく、そのまま開口部10内に該開口部10を全面的に閉止した状態で残存し、火の廻りを長時間に亘り阻止し、類焼を防止する。
【0031】
図6、図7は本発明外壁材の別な実施の形態を示すもので、上記実施の形態においては、内外透光性合成樹脂板1、1'間に一枚のパンチング板からなる金属板2を介在、配設しているが、この実施の形態の外壁材A1においては、二枚の金属板2、2'を重ね合わせた状態で且つ一方の金属板2'を建物の開口部10における上側フレーム材15に吊支させて内外透光性合成樹脂板1、1'間に介在、配設してなり、この吊支状態では、二枚の金属板2、2'の山部2a、2a' と谷部2b、2b' とに穿設している透孔3、3'同士を連通させている共に、火災が発生して吊支状態が解かれた時に、これらの金属板2、2'の透孔3、3'同士の連通を遮断するように構成している。
【0032】
詳しくは、内外透光性合成樹脂板1、1'と他方の金属板2とにより上記実施の形態の外壁材Aと同じ構造の外壁材を形成し、この外壁材に一方の金属板2'をその両側端部が内外透光性合成樹脂板1、1'のフランジ部1d、1d間に挟着させることなく他方の金属板2に重ね合わせ状態にして上下動可能に配設し、施工時においてこの一方の金属板2'を吊り上げた状態で開口部10における上側フレーム15の下面に固着した吊り金具20の下端部に鉛や樹脂製のピンやビス等の固定具等の可溶性材料21によってその上端部を連結、固定し、金属板2、2'の山部2a、2a' と谷部2b、2b' とに設けている透孔3、3'同士を連通させた状態に維持している。
【0033】
この一方の金属板2'の形状は上記他方の金属板2と同様に、山部2a' と谷部2b' とを側面板部2c' を介して順次、連続的に屈折、形成してなり、その山部2a' と側面板部2c' とを外側の透光性合成樹脂板1に当接している他方の金属板2の山部2aの内面と側面板部2cに上下摺動自在に重ね合わせていると共に、その谷部2b' を他方の金属板2の谷部2b' に被せた状態にしてその垂直な外底面を内側の透光性合成樹脂板1'に上下摺動自在に当接させている。
【0034】
さらに、この一方の金属板2'の山部2a' と谷部2b' とに、上記他方の金属板2の山部2aと谷部2bとに設けている透孔3と同大、同一形状で且つ上下左右方向に同一間隔、即ち、透孔3と同一配設状態でもって多数の透孔3'を穿設している。なお、これらの金属板2、2'に設けている透孔3、3'の径よりも、上下、左右に隣接する透孔3(3')、3(3')間、の間隔を大きくして両金属板2、2'を上下にずらした時に、透孔3、3'の連通が遮断されるように構成している。
【0035】
このように構成した外壁材A1は、通常においては、図6に示すように、上側フレーム材15に固着した吊り金具20に可溶性材料21を介して一方の金属板2'を吊支させて両金属板2、2'に穿設している透孔3、3'を連通させた状態に維持し、上記実施の形態と同様にこれらの透孔3、3'を通じて採光する。また、火災が発生すると、透光性合成樹脂板1、1'が溶融すると共に、一方の金属板2'を吊支している可溶性材料21が溶融してこの金属板2'が降下し、その下端が下側フレーム材16上に受止された状態になると共にこの金属板2'に設けている透孔3'が下方にずれて他方の金属板2の透孔3、3間の部分によって閉止され、該他方の金属板2の透孔3も一方の金属板2'の透孔3'、3'間の部分によって閉止されて互いに連通が遮断された状態となる。従って、透孔3、3'を通じての火の廻りが確実に遮断され、長時間に亘って類焼を防止することができる。
【0036】
図8〜図10は本発明のさらに別な実施の形態の外壁材A2を示すもので、上記実施の形態における外壁材A、A1は、いずれも内外透光性合成樹脂板1、1'と金属板2とによって構成しているが、この外壁材A2においては、内外透光性合成樹脂板1、1'間の隙間の中間部に一定厚みを有する一枚の縦長長方形である矩形状のガラス板5を介在させてこのガラス板5によって上記内外透光性合成樹脂板1、1'間の隙間を二分割して内外空気室6、7に形成していると共に一方の空気室6に山部2aと谷部2bとが側面板部2cを介して順次連続するように折り曲げ形成してなるパンチング板からなる金属板2'' を配設し、この金属板2'' の両側端縁部2d' 、2d' を横断面コ字状に折り返して互いに対向した条溝部2e、2eに形成し、山部2aと谷部2bとを透光性合成樹脂板1'とガラス板5との対向面に交互に当接させた状態にしてこの金属板2'' により上記一方の空気室6を横幅方向に複数の空気室に区画、形成している。上記ガラス板5としては、網入りガラスや強化(防火用)ガラスが特に好ましく用いられる。
【0037】
さらに、この金属板2'' の両側端縁部2d' 、2d' を内外透光性合成樹脂板1、1'の両側フランジ部1d、1dの突出端面によって挟持させていると共にその条溝部2e内にシーリング材18b を介して上記ガラス板5の両側端部を挿入、支持させている。さらに、このガラス板5は、建物の開口部10における下側フレーム材16上にその下端面を受止させた起立状態に配設した場合、重量の大きい大版サイズの縦長長方形に形成されているので、その自重によって撓みが生じる虞れがあるので、開口部10における上側フレーム材15に吊り金具9を介して吊り下げている。なお、この吊り下げは必ずしも必要でない。その他の構造については上記外壁材Aと同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0038】
この外壁材A2によれば、内外透光性合成樹脂板1、1'間の隙間をガラス板5によって内外に2分割した空気室6、7に形成しているので、ガラス板5のもつ断熱性、耐火性と共にこれらの内外空気室6、7により優れた断熱機能を発揮させることができ、また、ガラス板5と共に金属板2'' によって外壁材としての充分な強度を備え、且つ、効果的な目隠し機能を奏することができる。なお、金属板2'' の山部2aと谷部2bとに設けている透孔3を通じての採光機能については上記外壁材A、A1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】外壁材による外壁構造の一部省略縦断側面図。
【図2】その横断面図。
【図3】外壁構造の簡略正面図。
【図4】透光性合成樹脂板の横断面図。
【図5】外壁材の一部の分解斜視図。
【図6】二枚の金属板を備えている外壁材による外壁構造の一部省略縦断側面図。
【図7】その外壁材の一部の分割斜視図。
【図8】ガラス板を備えている外壁材による外壁構造の一部省略縦断側面図。
【図9】その横断面図。
【図10】その外壁材の一部の斜視図。
【符号の説明】
【0040】
A 外壁材
1、1' 内外透光性合成樹脂板
2 金属板
2a 山部
2b 谷部
3 透孔
4 空気室
5 ガラス板
10 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採光機能を有する建物の外壁を構成する外壁材であって、矩形状の透光性合成樹脂板を建物の内外方向に一定の隙間を存して配置し、その隙間内に多数の透孔を穿設している金属板を介在させていることを特徴とする建物の外壁材。
【請求項2】
内外の透光性合成樹脂板は内部に多数の空間部を有する複層板からなる一方、金属板は幅方向に山部と谷部とが順次、連続するように折り曲げたパンチィング板からなり、この金属板の谷部と山部を内外透光性合成樹脂板の対向面に当接させた状態で介在させて内外透光性合成樹脂板間の隙間を金属板の山部と谷部とによって複数の空気室に区画、形成していることを特徴とする請求項1に記載の建物の外壁材。
【請求項3】
内外透光性合成樹脂板の両側端部を互いに接近する方向に屈折させてフランジ部に形成し、これらのフランジ部間に金属板の両側端部を挟着させていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建物の外壁材。
【請求項4】
内外透光性合成樹脂板間の隙間の内外方向の中間部にガラス板を介在させて上記隙間を内外に二分割した空気室に形成していると共に、一方の空気室に山部と谷部とが順次、連続するように折り曲げたパンチィング板からなる金属板を配して該金属板の谷部と山部を対向するガラス板と透光性合成樹脂板との対向面に交互に当接させてこの金属板により一方の空気室を複数の空気室に区画、形成していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の建物の外壁材。
【請求項5】
矩形状の透光性合成樹脂板を内外方向に一定の隙間を存して配置せ、その隙間内に多数の透孔を穿設している金属板を介在させてなる外壁材を複数枚、施工すべき建物の開口部に、互いに隣接する外壁材の対向側端面を接合させた状態にして横方向に並設し、これらの外壁材の上下端部を上記建物の開口部の上下端面に固着したフレーム材に固定していることを特徴とする建物の外壁構造。
【請求項6】
外壁材を構成している内外透光性合成樹脂板は内部に多数の空間を有し、且つ、両側端部を互いに近接する方向に屈折させてフランジ部に形成した複層板からなる一方、金属板は幅方向に山部と谷部とが順次、連続するように折り曲げたパンチィング板からなり、この金属板の谷部と山部を内外透光性合成樹脂板の対向面に当接させた状態で介在させて内外透光性合成樹脂板間の隙間を金属板の山部と谷部とによって複数の空気室に区画、形成していると共に該金属板の両側端部を上記内外透光性合成樹脂板のフランジ部間に挟着させていることを特徴とする請求項5に記載の建物の外壁材。
【請求項7】
内外透光性合成樹脂板の対向面間の隙間に金属板を二枚、互いに内外方向に重ね合わせた状態で介在させていると共に、一方の金属板を上側のフレーム材に、火災発生時の高熱によって溶融する可溶性材料を介して吊支させてこれらの金属板に設けている透孔を連通させた状態に配設してあり、火災発生時に上記可溶性材料の溶融により該金属板を降下させて他方の金属板との透孔の連通状態を遮断するように構成していることを特徴とする請求項5に記載の建物の外壁構造。
【請求項8】
外壁材を構成している内外透光性合成樹脂板間の隙間の内外方向の中間部にガラス板を介在させて上記隙間を内外に二分割した空気室に形成していると共に、一方の空気室に山部と谷部とが順次、連続するように折り曲げたパンチィング板からなり金属板を配して該金属板の谷部と山部を対向するガラス板と透光性合成樹脂板との対向面に交互に当接させてこの金属板により一方の空気室を複数の空気室に区画、形成していることを特徴とする請求項5又は請求項7に記載の建物の外壁材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−28735(P2006−28735A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204219(P2004−204219)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】