説明

建物の骨組

【課題】採光部の形成が可能な建物の骨組であって、比較的大きな曲げ強度を有する建物の骨組を提供すること。
【解決手段】建物の骨組は、縦方向及び横方向に間隔を置いて配置された少なくとも4本の柱と、縦方向及び横方向の一方に伸び、隣接する2本の柱を連結する第1の大梁と、縦方向及び横方向の他方に伸び、隣接する2本の柱を連結する第2の大梁とを含む。前記第1の大梁の頂部は中央部分及び2つの端部分を有し、各端部分は前記中央部分から外方に向けて梁高さが漸増するように傾斜しており、前記第2の大梁の頂部は前記第1の大梁の頂部と同じ高さに位置しかつほぼ水平である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の骨組、特に、採光部の形成が可能な建物の骨組に関する。
【背景技術】
【0002】
工場のような比較的大規模な建物には、該建物内の明るさを確保するために、採光部の形成が可能な骨組が採用されている。この採光部は、一定の方向、特に北側に向けられることが多く、これにより日差しが弱くかつ一日中明るさの変化が少ない光を取り入れることができる。
【0003】
従来、採光部の形成が可能な建物の骨組として、鋸屋根を有する建物の骨組がある(特許文献1参照)。図4に示す例では、鋸屋根を有する建物の骨組100は、間隔を置いて配置された複数の柱102と、隣接する2本の柱102を連結する梁104とを含む。梁104の梁高さは、鋸歯のような形状の屋根を形成するように、梁104の一端部から他端部に向けて漸増する。
【特許文献1】特開昭62−111058号公報
【0004】
鋸屋根を有する建物の骨組100は、隣接する2つの梁104a、104bを有し、柱102は、一方の梁104aの頂部106と他方の梁104bの頂部108との間に、採光部110を形成することができる。採光部110は一定の方向に向いているため、採光部110を経て一定の方向からの光112を取り入れることができる。図示の例では、柱102には、一方の梁104aの頂部106と他方の梁104bの頂部108との間に、採光窓114を有する壁部材116が取り付けられ、各梁104a、104bの頂部106、108には屋根板118が取り付けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鋸屋根を有する建物の骨組100は、梁104の一端部の梁高さが比較的低いため、梁104の前記一端部の曲げ強度は比較的小さいという問題がある。なお、梁104の前記一端部の梁高さを高くすると、その分採光面積が小さくなるという問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、採光部の形成が可能な建物の骨組であって、比較的大きな曲げ強度を有する建物の骨組を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために、建物の採光面積を低減させることなく、前記梁の各端部の梁高さが比較的高くなるように前記梁の形状を変更する。
【0008】
本発明に係る建物の骨組は、縦方向及び横方向に間隔を置いて配置された少なくとも4本の柱と、縦方向及び横方向の一方に伸び、隣接する2本の柱を連結する第1の大梁と、縦方向及び横方向の他方に伸び、隣接する2本の柱を連結する第2の大梁とを含む。前記第1の大梁の頂部は中央部分及び2つの端部分を有し、各端部分は前記中央部分から外方に向けて梁高さが漸増するように傾斜しており、前記第2の大梁の頂部は前記第1の大梁の頂部と同じ高さに位置しかつほぼ水平である。
【0009】
前記第1の大梁の梁高さが該第1の大梁の中央部から外方に向けて漸増することにより、前記第1の大梁の2つの端部のそれぞれは比較的大きな曲げ強度を備えることができる。これにより建物の耐震性の向上を図ることができる。また、前記第1の大梁の頂部の一方の端部分は建物の採光部を形成することができ、これにより建物は所望の大きさの採光面積を確保することができる。前記第1の大梁の頂部の各端部分が傾斜していることにより、前記採光部を経て一定の方向から光を取り入れることができる。
【0010】
前記第2の大梁は前記第1の大梁と同じ梁高さを有することができる。これにより前記第2の大梁は比較的高い梁高さを備えることができるため、前記第2の大梁によって連結される前記柱の間隔を比較的大きくすることができる。これにより前記柱の本数を低減することができ、建物を経済的に建てることができる。前記第1及び前記第2の大梁の各底部は水平にすることができ、これにより床から前記第1及び前記第2の大梁の各底部までの高さを高くすることができる。その結果、建物内により広い作業空間を確保することができ、作業の効率化を図ることができる。前記第1及び前記第2の大梁の各底部は、水平である上記の例に代え、端部分が傾斜していてもよい。前記建物の骨組は、前記第2の大梁を連結する少なくとも1本の小梁を含むことができ、前記小梁の頂部はその中央部分から外方に向けて梁高さが漸増するように傾斜する端部分を有する。
【0011】
前記第1の大梁は上弦材及び下弦材と前記上弦材及び前記下弦材を連結する少なくとも1本の斜材とを含むことができ、前記上弦材は前記下弦材に平行な中央部分と該中央部分に対して傾斜する端部分とからなる。前記第2の大梁は水平な上弦材と該上弦材に平行な下弦材と前記上弦材及び前記下弦材を連結する少なくとも1本の斜材とを含むことができる。前記小梁は上弦材及び下弦材と前記上弦材及び前記下弦材を連結する少なくとも1本の斜材とを含むことができ、前記上弦材は、前記第1の大梁の上弦材と同様に、前記下弦材に平行な中央部分と該中央部分に対して傾斜する端部分とからなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、建物は所望の大きさの採光面積を確保することができ、前記第1の大梁の各端部は比較的高い梁高さを有する。したがって、建物の骨組は比較的大きな曲げ強度を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示すように、建物の骨組10は、平面上において縦方向及び横方向に間隔を置いて配置された4本の柱12、すなわち矩形の頂点に位置するように配置された4本の柱12と、横方向に伸び、隣接する2本の柱12を連結する第1の大梁14と、縦方向に伸び、隣接する2本の柱を連結する第2の大梁16とを含む。図示の例では、4本の柱12、第1の大梁14及び第2の大梁16からなるユニットが縦方向及び横方向に連続している。これにより比較的大きな建物内の空間を形成することができる。このユニットは、縦方向及び横方向に連続している図示の例に代え、縦方向及び横方向の一方に連続していてもよいし、連続していなくてもよい。建物の骨組10は、第1の大梁14が横方向に伸び、第2の大梁16が縦方向に伸びる上記の例に代え、第1の大梁14が縦方向に伸び、第2の大梁16が横方向に伸びてもよい。
【0014】
第1の大梁14の頂部18は中央部分20及び2つの端部分22を有し、各端部分22は中央部分20から外方に向けて梁高さが漸増するように傾斜している。第1の大梁14の梁高さが該第1の大梁の中央部から外方に向けて漸増することによって、第1の大梁14の各端部は比較的大きい曲げ強度を備えることができる。
【0015】
また、第1の大梁14の各端部が比較的大きな曲げ強度を有することによって、第1の大梁14は、該第1の大梁の底部32がハンチを形成しなくても、十分な曲げ強度を確保することができる。図示の例では、第1の大梁14の底部32は、水平であり、ハンチを形成していない。底部32を水平にすることによって、床から底部32までの高さを第1の大梁14の全体に亘って比較的高くすることができる。これにより、建物内により広い作業空間を確保することができ、作業の効率化を図ることができる。なお、第1の大梁14の底部32は、水平である上記の例に代え、ハンチを形成するように端部分を傾斜させてもよい。
【0016】
第1の大梁14は、例えば、第1上弦材24及び第1下弦材26とそれぞれが第1上弦材24及び第1下弦材26を連結する複数の第1斜材28とを含む。第1上弦材24は第1下弦材26に平行な中央部分20と該中央部分に対して傾斜する端部分22とからなる。第1の大梁14は第1上弦材24及び第1下弦材26を連結する第1垂直材30を含んでもよい。
【0017】
第2の大梁16の頂部34はほぼ水平である。すなわち、水平でもよいし、雨水の排水のための勾配を設けるために若干傾斜させてもよい。また、第2の大梁16の頂部34は第1の大梁14の頂部18と同じ高さに位置する。第2の大梁16の底部36は、第1の大梁14と同様、水平でもよいし、端部分が傾斜していてもよい。第2の大梁16の梁高さは、第1の大梁14と同じ梁高さとすることができる。これにより、第2の大梁16は比較的高い梁高さを備えることができる。したがって、第2の大梁16が連結する柱12の間隔が一定であるとすれば、第2の大梁16の軸線と直交する断面の断面積をより小さくすることができ、建物をより経済的に構築することができる。また、第2の大梁16の前記断面積が一定であるとすれば、第2の大梁16が連結する柱12の間隔をより大きくすることができる。これにより、柱12の本数を低減することができ、建物をより経済的に構築することができる。また、柱12の本数を低減することによって、例えば、工場では、製品の搬送、機械の配置等を行うとき、柱12による制約を減らすことができる。これにより作業空間を拡大し、作業者による作業の効率化を図ることができる。
【0018】
第2の大梁16は、例えば、水平な第2上弦材38と該第2上弦材に平行な第2下弦材40とそれぞれが第2上弦材38及び第2下弦材40を連結する複数の第2斜材42とを含む。また、第2の大梁16は第2上弦材38及び第2下弦材40を連結する第2垂直材44を含んでもよい。
【0019】
建物の骨組10は、第2の大梁16を連結する少なくとも1本の小梁46を含むことができる。小梁46の頂部48は、第1の大梁14と同様、中央部分50から外方に向けて梁高さが漸増するように傾斜する端部分52を有する。小梁46は、図示の例では、第3上弦材54及び第3下弦材56と第3上弦材54及び第3下弦材56を連結する複数の第3斜材58とを含む。第3上弦材54は第3下弦材56に平行な中央部分50と該中央部分に対して傾斜する端部分52とからなる。小梁46は第3上弦材54及び第3下弦材56を連結する第3垂直材60を含んでもよい。なお、建物の骨組10は、第2の大梁16を連結する小梁46を含む上記の例に代え、第1の大梁14を連結する小梁を含んでもよい。
【0020】
図2に示すように、第1の大梁14の頂部18の一方の端部分22’は建物の採光部62を形成することができる。これにより、建物は所望の大きさの採光面積を確保することができる。図示の例では、一方の端部分22’には、採光窓を有する屋根部材、透明又は半透明な屋根部材等の透光性の部材64が取り付けられ、一方の端部分22’を除く第1の大梁14の頂部18には屋根板66が取り付けられている。第1の大梁14の頂部18の各端部分22が傾斜していることによって、透光性の部材64は一定の方向に向けられ、透光性の部材64を経て一定の方向から光68を取り入れることができる。このとき、屋根板66によって他の方向からの光が遮断される。
【0021】
図3に示す例では、建物の骨組10は、隣接する2つの第1の大梁14a、14b間の柱12に、一方の第1の大梁14aの頂部18aの端部分22aを延長するように該端部分の傾斜方向に伸びる延長部材70が取り付けられ、該延長部材と他方の第1の大梁14bの頂部18bとは連結部材72で連結されている。連結部材72は建物の採光部74を形成する。連結部材72の下端部は、他方の第1の大梁14bの頂部18bの中央部分20bに固定されていてもよいし、端部分22bに固定されていてもよい。
【0022】
連結部材72には、採光窓を有する壁部材、透明又は半透明な板部材等の透光性の部材76が取り付けられている。透光性の部材76は一定の方向に向いているため、透光性の部材76を経て一定の方向から光78を取り入れることができる。一方の第1の大梁14aの頂部18aと、延長部材70と連結部材72との間を除く他方の第1の大梁14bの頂部18bとには、第1屋根板80が配置され、延長部材70には第2屋根板82が配置されている。第2屋根板82があることによって、より多くの光を遮断することができる。このため、第2屋根板82がない図2に示した例と比較して、取り入れる光の方向をさらに制限することができる。例えば、透光性の部材76が北側に向けられている場合、第2屋根板82によって直射日光を完全に遮断することができ、建物に直射日光が入ることはない。
【0023】
図示の例において、第1の大梁14の各端部は比較的高い梁高さを有する。したがって、建物の骨組10は比較的大きい曲げ強度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る建物の骨組の斜視図。
【図2】本発明に係る建物の骨組の正面図。
【図3】本発明の他の実施例における建物の骨組の正面図。
【図4】従来の建物の骨組の正面図。
【符号の説明】
【0025】
10 建物の骨組
12 柱
14 第1の大梁
16 第2の大梁
18 第1の大梁の頂部
20 第1の大梁の頂部の中央部分
22 第1の大梁の頂部の端部分
24 第1上弦材
26 第1下弦材
28 第1斜材
32 第1の大梁の底部
34 第2の大梁の頂部
36 第2の大梁の底部
38 第2上弦材
40 第2下弦材
42 第2斜材
46 小梁
48 小梁の頂部
50 小梁の頂部の中央部分
52 小梁の頂部の端部分
54 第3上弦材
56 第3下弦材
58 第3斜材
62 採光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向及び横方向に間隔を置いて配置された少なくとも4本の柱と、縦方向及び横方向の一方に伸び、隣接する2本の柱を連結する第1の大梁と、縦方向及び横方向の他方に伸び、隣接する2本の柱を連結する第2の大梁とを含む建物の骨組であって、前記第1の大梁の頂部は中央部分及び2つの端部分を有し、各端部分は前記中央部分から外方に向けて梁高さが漸増するように傾斜しており、前記第2の大梁の頂部は前記第1の大梁の頂部と同じ高さに位置しかつほぼ水平である、建物の骨組。
【請求項2】
前記第2の大梁は前記第1の大梁と同じ梁高さを有する、請求項1に記載の建物の骨組。
【請求項3】
前記第1及び前記第2の大梁の各底部は水平であるか又は端部分が傾斜している、請求項1に記載の建物の骨組。
【請求項4】
前記第2の大梁を連結する少なくとも1本の小梁を含み、該小梁の頂部はその中央部分から外方に向けて梁高さが漸増するように傾斜する端部分を有する、請求項1に記載の建物の骨組。
【請求項5】
前記第1の大梁は上弦材及び下弦材と前記上弦材及び前記下弦材を連結する少なくとも1本の斜材とを含み、前記上弦材は前記下弦材に平行な中央部分と該中央部分に対して傾斜する端部分とからなる、請求項1に記載の建物の骨組。
【請求項6】
前記第2の大梁は水平な上弦材と該上弦材に平行な下弦材と前記上弦材及び前記下弦材を連結する少なくとも1本の斜材とを含む、請求項1に記載の建物の骨組。
【請求項7】
前記小梁は上弦材及び下弦材と前記上弦材及び前記下弦材を連結する少なくとも1本の斜材とを含み、前記上弦材は前記下弦材に平行な中央部分と該中央部分に対して傾斜する端部分とからなる、請求項4に記載の建物の骨組。
【請求項8】
前記第1の大梁の頂部の一方の端部分は建物の採光部を形成する、請求項1に記載の建物の骨組。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−270504(P2007−270504A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−97049(P2006−97049)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】