説明

建物位置表示装置

【課題】目的の建物近辺への接近経路を容易に判断できる地図を表示することで、緊急活動を迅速、かつ正確に行うことが可能な建物位置表示装置を提供する。
【解決手段】建物位置表示装置は、建物を識別するための識別情報およびこの建物の位置を示す位置情報を含む建物関連情報と、建物の外形線および道路の輪郭線を含む地図画像を示す地図データを含む地図情報とを格納した記憶手段と、目的の建物を特定するための特定情報を入力する入力手段と、入力された特定情報に基づいて建物関連情報を検索して目的の建物に対応する位置情報を特定し、特定された位置情報が示す位置を中心とした周辺地域に対応する地図データの範囲内で、所定範囲の道路の輪郭線および建物の外形線を強調した建物周辺地図画像G5を出力する制御手段と、制御手段から出力された建物周辺地図画像G5を表示する表示手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的の建物へ緊急車両を、正確に、かつ迅速に案内することができる建物位置表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
消防車などの緊急車両は、火災現場である目的の建物へ人命救助のためや延焼を阻止するために一刻も早く到着する必要がある。このような場合に緊急活動を支援するための従来の建物位置表示装置が特許文献1に記載されている。
【0003】
この特許文献1に記載された緊急活動支援システムは、火災発生位置までの地図情報と最適経路を示す画像情報と消防車位置を示す画像情報と火災発生位置を示す画像情報とが表示されている地図や、図面情報と消防車の位置を示す画像情報と侵入経路情報と水利情報とが重畳表示された地図などを表示するものである。
【0004】
【特許文献1】特開2002−373391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の建物位置表示装置では、特許文献1に記載された緊急活動支援システムの他にも、表示される地図上に火災現場までの最短経路を示すカーナビゲーションシステムのような装置が多い。しかし、大規模な火災では消防本部からの要請に応じて地区ごとに配置された消防署から多くの緊急車両が火災現場に駆けつけるので、火災現場に急行する緊急車両が一律同じ経路を辿って接近していくと、幹線道路から奥に入った火災現場近くの狭い幅の道路では緊急車両による交通渋滞が発生しかねない。このような事態に陥ると人命救助や延焼の防止の阻害要因となるおそれがある。
従って、表示される地図としては目的地までの最短経路が示されているよりも、火災現場付近の道路の状況がより明確に表示画面で判別できることで、どのような接近経路があるか容易に判断できる方が望ましい。
【0006】
そこで本発明は、目的の建物近辺への接近経路を容易に判断できる地図を表示することで、緊急活動を迅速、かつ正確に行うことが可能な建物位置表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建物位置表示装置は、建物を識別するための識別情報および前記建物の位置を示す位置情報を含む建物関連情報と、建物の外形線および道路の輪郭線を含む地図画像を示す地図データを含む地図情報とを格納した記憶手段と、目的の建物を特定するための特定情報を入力する入力手段と、前記入力された特定情報に基づいて前記建物関連情報を検索して前記目的の建物に対応する位置情報を特定し、特定された位置情報が示す位置を中心とした周辺地域に対応する地図データの範囲内で、所定範囲の道路の輪郭線および建物の外形線を強調した建物周辺地図画像を出力する制御手段と、前記制御手段から出力された建物周辺地図画像を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の建物位置表示装置は、制御手段が目的の建物を中心とした周辺地域に対応する地図データの範囲内で、所定範囲の建物の外形線および道路の輪郭線を強調した建物周辺地図画像を生成して表示手段に表示するので、目的の建物を含む所定範囲内の道路の敷設状態を容易に把握することができる。また、この強調された道路および建物は周辺地域でも周辺地域内の所定範囲に限定されているので、目的の建物に近い道路と遠い道路との区別がつきやすい。従って、目的の建物付近にどの程度接近しているのかが認識しやすい。
【0009】
前記制御手段は、前記建物周辺地図画像を出力するときに、前記地図情報に含まれる緊急水利情報が示す水源の位置も強調させる機能を備えることができる。建物周辺地図画像に水源の位置が示されることによって、目的の建物に到着する前に、どの水源を利用するかなどを予め決めておくことで、消火活動を迅速に開始することできる。
【0010】
前記制御手段は、前記建物周辺地図画像を出力するときに、前記建物周辺地図画像が示す範囲より狭い範囲を拡大した地図となる建物近辺地図画像と、前記建物関連情報に含まれる前記目的の建物の外観写真である外観画像とを、サムネイル形式の表示となる一覧画面として出力し、前記サムネイル画面うち前記入力手段により選択された一の情報を前記表示手段に拡大表示する機能を備えることもできる。見たい地図や外観写真をサムネイル形式の一覧画面から選択することができるので、全体の把握が早く、見たいものを素早く選択することができる。
【0011】
本発明の建物位置表示装置を、前記記憶手段と、前記入力手段と、前記制御手段と、前記制御手段が出力する建物周辺地図画像を無線信号で送信する無線送信手段とを備えた本部側送信装置、および前記無線信号を受信する無線受信手段と、前記受信した建物周辺地図画像を表示する前記表示手段とを備えた移動体側受信装置を備えたものとすることができる。
【0012】
本部側に設置される本部側送信装置に記憶手段が設けられているので、緊急車両のそれぞれに設置される移動体側受信装置には、一台ごとに記憶手段を設ける必要がない。従って、装置のコストを低く抑えることができる共に、記憶手段に格納された建物関連情報および地図情報を更新するなどのメンテナンスが容易である。
【0013】
また、本発明の建物位置表示装置を、前記入力手段と、前記入力手段により前記目的の建物の名称を無線信号で送信する無線送信手段とを備えた本部側送信装置、および前記記憶手段と、前記無線信号を受信する無線受信手段と、前記受信した建物の名称に基づいて前記建物関連情報を前記記憶手段から検索する前記制御手段と、前記表示手段とを備えた移動体側受信装置を備えたものとすることもできる。
【0014】
緊急車両のそれぞれに設置される移動体側受信装置に、記憶手段と制御手段と表示手段とが設けられているので、本部側送信装置からは建物関連情報の識別情報を検索するための特定情報を移動体側受信装置に送信するだけで、移動体側受信装置側で目的の建物に関する情報を検索することができる。従って、本部側送信装置から移動体側受信装置へ送信に要する時間を短くすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、目的の建物を含む所定範囲内の道路の敷設状態を容易に把握することができ、かつ目的の建物に近い道路と遠い道路との区別がつきやすいので、目的の建物近辺への接近経路を容易に判断できる地図を表示することで、緊急活動を迅速、かつ正確に行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る建物位置表示装置を、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る建物位置表示装置全体を示す図である。図2は、図1に示す建物位置表示装置の構成を示す図であり、(A)は本部側通信装置を示すブロック図、(B)は車両側通信装置を示すブロック図である。図3は、地図情報を示す図であり、(A)は地図データを示す図、(B)は道路輪郭線情報を示す図、(C)は建物外形情報を示す図、(D)は水源情報を示す図、(E)は文字情報を示す図である。図4は、建物近辺地図画像を示す図である。図5は、建物の見取図を示す図であり、(A)は1階平面図画像を示す図、(B)は2階平面図画像を示す図、(C)は3階平面図画像を示す図、(D)は屋上平面図画像を示す図である。図6は、外観写真を示す図であり、(A)は外観正面画像を示す図、(B)は外観西側画像を示す図である。
【0017】
図1に示すように建物位置表示装置10は、介護施設や病院などの要介護者を擁する施設からの火災発生や災害発生による出動の要請や、突発的な事故または病気による出動の要請に応じて、目的の建物へ緊急車両を迅速に案内するための支援装置である。
建物位置表示装置10は、消防本部に設置された本部側通信装置20(本部側送信装置)と、消防署から出動する移動体である消防車やポンプ車などのそれぞれの緊急車両に設置された車両側通信装置30(移動体側受信装置)とを備えている。
【0018】
図2(A)に示すように、本部側通信装置20は、入力手段21と、表示手段22と、装置本体23とを備えている。装置本体23は、無線手段23aと、記憶手段23bと、制御手段23cとを備えている。本実施の形態1では、本部側通信装置20を装置本体23に入力手段21および表示手段22が接続された構成としているが、入力手段21および表示手段22と、無線手段23aを除く装置本体23とを備えたパーソナルコンピュータに、無線手段23aを別体として設けた構成としてもよい。
【0019】
入力手段21は、キーボード、マウスとすることができ、入力されたデータは制御手段23cへ出力される。表示手段22は、CRT(Cathode Ray Tube)や、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)などが使用でき、制御手段23cからの表示データを表示する。
【0020】
無線手段23aは、制御手段23cから入力した送信データを変調して無線信号としてアンテナ23xを介して車両側通信装置30へ送信したり、車両側通信装置30からの無線信号をアンテナ23xを介して受信して、復調することで受信データを生成して制御手段23cへ出力したりする機能を備えている。
【0021】
記憶手段23bは、大容量の情報を高速に読み書き可能な不揮発性のメモリであり、例えばハードディスク装置や、光ディスク装置やフラッシュメモリなどとすることができる。記憶手段23bには、建物に関する情報である建物関連情報と、地図情報と、建物近辺地図画像と、見取図画像と、外観写真画像とを含む情報が格納されている。
【0022】
建物関連情報は、建物を識別するための識別情報として機能する建物の名称を示す名称情報および各建物に割り当てられた防火対象物コードと、地図上の位置を示す座標情報(位置情報)と、用途(介護施設、病院など)を示す用途情報とがそれぞれ関連付けられている。
【0023】
次に、地図情報について、図3を参照しながら説明する。
地図情報は、地図データと、道路輪郭線情報と、建物外形情報と、水源情報と、文字情報とがそれぞれ異なるレイヤに配置された地図を構成するデータである。
地図データは、道路の輪郭を示す輪郭線と、建物の外形を示す外形線と、地形の輪郭を示す地形線とに、道路名称、建物名称、を含む消防本部が管轄している地域全体をカバーする地図画像である。これらの線は、薄い灰色で、かつ表示手段32で表示されたときに約0.18mmとなる太さの属性を有している(図3(A)参照)。本実施の形態1では地図データとして大牟田市全体を範囲のデータが格納されている。
道路輪郭線情報は、大牟田市内のうちで建物関連情報として登録されているそれぞれの建物を中心として半径125mの円形内に含まれる道路の輪郭線のみのデータである。この線は、茶色で、かつ表示手段32で表示されたときに約0.3mmとなる太さの属性を有している(図3(B)参照)。
建物外形情報は、建物関連情報として登録されている建物の外形線のみのデータである。この線は、緑色で、かつ表示手段32で表示されたときに約0.5mmとなる太さの属性を有している(図3(C)参照)。
水源情報は、大牟田市内のうちで建物関連情報として登録されているそれぞれの建物を中心として半径125mの円形内に含まれる消火栓、プール、河川、貯水池などの消火活動の際に水源として利用可能なものを示すデータである。消火栓の場合は、消火栓の位置が黄色の円で示され、消火栓に割り当てられた消火栓コードも含まれている(図3(D)参照)。
文字情報は、国道、県道、市道などの名称を示す道路名や、市町村名や地区名などの地名が含まれている(図3(E)参照)。
【0024】
次に、建物近辺地図画像について図4に基づいて説明する。建物近辺地図画像G1は、消防本部に保管されている配置図をデータ化した画像データであり、建物(施設)の近辺を示す地図である。この建物近辺地図画像G1は、建物関連情報として登録された全ての建物について格納されている。建物近辺地図画像G1では、データ化する際に、道路の輪郭線を茶色で、目的の建物の輪郭線を緑色で、目的の建物の敷地の外形を赤色に、それぞれ太く縁取ることで地形の輪郭線より太くして、それぞれの位置関係を判別しやすいように作成されている。また、介護施設「カイゴ」Bに割り当てられた防災対象物コードである「6ロ−021」と、「鉄骨造」と、「3階建」とが付記され、周囲の建物の構造として「木造」が付記されている。そして、建物近辺地図画像G1には、詳細には後述する外観正面画像と縮小外観西側画像として撮影された外観写真の方向が、黄色の矢印F1,F2により示されている。
図5(A)〜同図(D)に示す見取図画像である1階平面図画像G21、2階平面図画像G22、3階平面図画像G23、屋上平面図画像G24は、建物の各階の見取図を示すものである。この見取図画像は、建物関連情報として登録された全ての建物について格納されている。
図6(A)および同図(B)に示す外観写真画像は、デジタルカメラなどで撮像した建物の外観を示す静止画像である。本実施の形態1では、図6(A)に示す正面から撮像した外観正面画像G31と、図6(B)斜め方向から撮像した外観西側画像G32との2枚としているが、必要に応じて様々な方向から建物を撮像した画像や、突入箇所を撮像した画像、または建物に設けられている消火設備を撮像した画像などとすることができる。
【0025】
図2(A)に戻って、制御手段23cは、本部側通信装置20全体を総括制御するものであり、入力手段21から入力された建物を特定する特定情報に基づいて記憶手段23bに格納された建物関連情報を検索する機能を有している。ここで、特定情報とは建物を特定できるものであればよく、例えば、特定情報を建物の名称としたり、建物に割り当てた防火対象物コードとしたり、建物がある住所としたりすることできる。
【0026】
次に、図2(B)に示す車両側通信装置30の構成について説明する。車両側通信装置30は、入力手段31と、表示手段32と、装置本体33とを備えている。装置本体33は、無線手段33aと、制御手段33bとを備えている。
【0027】
入力手段31は、本部側通信装置20の入力手段21と同様にキーボード、マウスとすることができるが車両内が狭いのでタッチパネルとする方がよい。入力手段31から入力されたデータは制御手段33bへ出力される。表示手段32は、CRTや、LCD、有機ELなどが使用でき、制御手段33bからの表示データを表示する。
【0028】
無線手段33aは、制御手段33bから入力した送信データを変調して無線信号としてアンテナ33xを介して本部側通信装置20へ送信したり、本部側通信装置20からの無線信号をアンテナ33xを介して受信して、復調することで受信データを生成して制御手段33bへ出力したりする機能を備えている。
【0029】
制御手段33bは、車両側通信装置30全体を統括制御するものであり、無線手段33aからの受信データに応じて表示手段32に表示したり、入力手段31からの入力データに応じて入力データを表示手段32に表示すると共に送信データとして無線手段33aへ出力する機能を備えている。
【0030】
車両側通信装置30では、記憶手段を有していないが、制御手段33bの制御内容に応じて設けるようにしてもよい。つまり、制御手段33b内でのメモリでは、制御の際のワーク領域、プログラム領域、地図情報を格納する格納領域が不足する場合には、記憶手段としてハードディスク装置を設け、各種情報を一時的に保存したり、OSやアプリケーションなどのプログラムを格納したりしておいてもよい。
【0031】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る建物位置表示装置の動作を、更に図7から図9を参照しながら説明する。図7は、初期画面の一例を示す図である。図8は、検索結果を示すサイムネイル画面を示す図である。図9は、建物周辺地図画像の一例を示す図である。
【0032】
まず、緊急事態が発生した通報者からの出動要請に応じて消防本部の受付者は出動先となる建物の名称(施設名称)、および住所などを聞く。受付者は、出動先の住所に近い地域の消防署や消防団に出動指令を出す。
【0033】
そして、受付者は、本部側通信装置20の制御手段23cにより表示手段22に表示された初期画面を操作して検索を開始する。この初期画面の一例を図7に示す。
【0034】
図7に示す初期画面G4では、右端の検索情報領域A1に、施設用途欄R11と、施設名欄R12と、防火対象物コード欄R13と、住所欄R14とが設けられている。受付者は、このいずれかの入力欄に入力手段21を操作して入力すると共に「検索」ボタンB11を押下して、目的の建物の検索を行う。
【0035】
施設名欄R12には建物の名称、防火対象コード欄R13には目的の建物に割り当てられた防火対象コード、住所欄R14には目的の建物の住所を入力する。この入力されたいずれかの情報を特定情報として、制御手段23cは記憶手段23bに格納された建物関連情報を検索する。
【0036】
例えば、建物の名称として施設名称「カイゴ」を入力して検索すると、制御手段23cは記憶手段23bを検索してその結果、図8に示すように、施設用途欄R11に用途情報から「介護施設」が表示され、防火対象物コード欄R13に防火対象物コード情報から「6ロ−021」が表示され、住所欄R14に「大牟田市A町B番地C号」が表示される。そして、左側のサムネイル表示領域A2に、一覧画面が表示される。
【0037】
この一覧画面には、縮小建物周辺地図画像G41と、縮小建物近辺地図画像G42と、縮小見取図画像G43と、縮小外観写真画像G44とが表示されている。
縮小見取図画像G43は、縮小1階平面図画像G43aと、縮小2階平面図画像G43bと、縮小3階平面図画像G43cと、縮小屋上平面図画像G43dとの4枚の画像であり、図5に示す平面図の縮小画像である。
る。
また、縮小外観写真画像G44は、縮小外観正面画像G44aと縮小外観西側画像G44bとの2枚の写真であり、図6に示す外観写真画像の縮小画像である。
【0038】
ここで、縮小建物周辺地図画像G41について詳細に説明する。この縮小建物周辺地図画像G41は、制御手段23cにより生成される建物周辺地図画像を縮小表示したものである。建物周辺地図画像を図9に示す。
図9に示す建物周辺地図画像G5は、制御手段23cによって目的の建物を検索したときに生成される画像である。制御手段23cは、検索された目的の建物の位置情報が示す位置を中心Oとして、縦270m、横350mの長方形状の範囲の地図データ(図3(A)参照)を記憶手段23bから取得する共に、この建物を示す建物関連情報に関連付けられた中心Oから半径125mの円形C内に含まれる道路輪郭線情報(図3(B)参照)と、建物外形情報(図3(C)参照)と、水源情報(図3(D)参照)と、文字情報(図3(E)参照)とを記憶手段23bから取得して重畳することで、建物周辺地図画像G5を生成する。
つまり、建物周辺地図画像G5は、目的の建物である施設「カイゴ」Bが目立つように緑色で強調される共に、必要な範囲の道路R1を茶色で縁取ることで強調された地図とすることができる。また、建物周辺地図画像G5には、消火活動に必要な消火栓Hも黄色で示されると共に消火栓コードも含まれているので、利用可能な消火栓の位置や種類が一目でわかる。
【0039】
なお、本実施の形態1では、建物周辺地図画像G5における強調させる範囲を中心Oから半径125mの円形内としているが、長方形内としてもよい。また、消防車が容易に走行可能な4m幅の道路がこの範囲内にないときには、4m幅の道路が強調される範囲に含まれるまで地図の縮尺の度合いを大きくするようにしてもよい。そうすることで、消防車が容易に近づける経路を、より詳細な情報に基づいて検討することができる。
【0040】
制御手段23cは、これらの建物周辺地図画像G5を生成して記憶手段23bに格納すると共に、建物周辺地図画像G5の縮小画像や、建物近辺地図画像G1と、見取図画像と、外観写真画像との縮小画像を生成して、サムネイル形式の一覧画面(図8参照)を表示する。
【0041】
受付者は、検索された結果を緊急車両に送信するために入力手段21を操作して、図8に示す画面の検索情報領域A1に設けられた「送信」ボタンB12を押下する。この「送信」ボタンB12は、検索が完了して検索結果であるサムネイル形式の一覧画面が表示されたことによって表示されるボタンである。
【0042】
制御手段23cは、「送信」ボタンB12の押下を受け、一覧画面を車両側通信装置30へ無線手段23aを介して送信する。各画像は一覧画面の状態で送信されるので、無線信号で送信されても多大な時間を要することがない。
【0043】
車両側通信装置30側では、本部側通信装置20から送信された一覧画面を無線手段33aにより受信し、制御手段33bにより表示手段32へ表示する。このときの一覧画面は、図8とほぼ同じなので省略する。
【0044】
そして、緊急車両に乗車する消防隊員は、一覧画面の中から拡大して見たい画像上を入力手段31であるタッチパネルにより押下することで選択する。この選択されたことを示す選択情報は、制御手段33bから無線手段33aを介して本部側通信装置20へ送信される。
【0045】
選択情報を無線手段23aを介して受信した制御手段23cは、選択情報に基づいて、選択された画像を記憶手段23bから取得して無線手段23aを介して車両側通信装置30へ送信する。
【0046】
車両側通信装置30側で、例えば一覧画面から縮小建物周辺地図画像G41を選択したとすると、図9に示す建物周辺地図画像G5が表示される。同様に、縮小建物近辺地図画像G42が選択されたとすると、図4に示す建物近辺地図画像G1が表示される。
【0047】
また、縮小1階平面図画像G43a、縮小2階平面図画像G43b、縮小3階平面図画像G43c、または縮小屋上平面図画像G43dのうち、いずれか一枚が選択されれば、図5(A)〜同図(D)に示す1階平面図画像G21、2階平面図画像G22、3階平面図画像G23、屋上平面図画像G24が表示される。
【0048】
また、縮小外観正面画像G44a、縮小外観西側画像G44bの2枚の写真画像のうちいずれかが選択されれば、図6(A)または同図(B)に示す外観正面画像G31、外観西側画像G32が表示される。
【0049】
緊急車両では、まず、目的の建物である介護施設「カイゴ」Bまでの接近経路を判断するために、建物周辺地図画像G5(図9参照)を表示させる。
【0050】
建物周辺地図画像G5では、介護施設「カイゴ」Bを中心とした半径125mの道路の輪郭線が強調されているので、所定範囲内の道路R1の敷設状態を容易に把握することができる。また、この強調された道路R1および建物は周辺地域でも周辺地域内の所定範囲に限定されているので、介護施設「カイゴ」Bに近い道路R1と遠い道路R2との区別がつきやすい。従って、介護施設「カイゴ」Bにどの程度接近しているのかが認識しやすい。
【0051】
また、建物周辺地図画像G5では、消火栓Hの位置が強調されていることで明示されているので、介護施設「カイゴ」Bに到着する前に、どの消火栓Hを利用するかなどを予め決めておくことができる。従って、消火活動を迅速に開始することできる。また、消火栓コードも付記されているので、管径が太い主管に接続された消火栓か管径が細い支管に接続された消火栓かの区別が容易に判別することができる。
【0052】
そして、緊急車両が介護施設「カイゴ」Bに接近したときには、建物近辺地図画像G1(図4参照)を表示させる。建物近辺地図画像G1では、介護施設「カイゴ」Bの周囲の建物の構造が明示されているので、延焼などを防止する策などを事前に検討することができる。
【0053】
そして、建物近辺地図画像G1に黄色の矢印F1,F2として示された外観写真の方向と対応した外観正面画像G31および外観西側画像G32を表示させて介護施設「カイゴ」Bへ到着する前に見ておくことで、目的の建物の状況を事前に把握することができる。
【0054】
更に、図5(A)〜同図(D)に示す1階平面図画像G21、2階平面図画像G22、3階平面図画像G23、屋上平面図画像G24に基づいて突入経路や救助方針において検討することも可能である。
このように、本発明の実施の形態1に係る建物位置表示装置10によれば、目的の建物近辺への接近経路を容易に判断できる建物周辺地図画像G5などを表示することができるので、緊急活動を迅速、かつ正確に行うことが可能である。
【0055】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2に係る建物位置表示装置を、図10に基づいて説明する。図10は、本発明の実施の形態2に係る建物位置表示装置の構成を示す図であり、(A)は本部側通信装置を示すブロック図、(B)は車両側通信装置を示すブロック図である。なお、図10においては、図2とほぼ同じ構成は同符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
本実施の形態2に係る建物位置表示装置は、本部側通信装置20xに記憶手段を備えずに、車両側通信装置30xに記憶手段23bを設けたものである。
つまり、本部側通信装置20xでは入力手段21により入力された特定情報に基づいて検索を行わず、特定情報を車両側通信装置30xへ無線信号により送信する。そして、車両側通信装置30xにおいて、受信した特定情報に基づいて制御手段33bxが記憶手段23b内の建物関連情報に基づいて検索し、その結果に基づいて建物周辺の地図情報を取得する。
【0057】
このように建物位置表示装置を構成することで、本部側通信装置20xと車両側通信装置30xとの通信に必要なデータ量が少なくてすむので、本部側通信装置20xから車両側通信装置30xへ送信に要する時間を短くすることができる。従って、サムネイル形式の表示から拡大した画像を表示するまでの時間が短い。また、大容量のデータでも問題はないので、外観写真の代わりに建物の周囲を撮像した動画を表示するようにしてもよい。
【0058】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3に係る建物位置表示装置を、図11に基づいて説明する。図11は、本発明の実施の形態3に係る建物位置表示装置の構成を示すブロック図である。なお、図11においては、図2および図10とほぼ同じ構成は同符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
本実施の形態3は、消防本部と緊急車両との間で通信して地図情報と建物関連情報を送受信するものではなく、緊急車両のみに搭載される建物位置表示装置10xで検索および表示を行うものである。つまり、消防本部へ通報があれば電話または無線による緊急通報が各消防署に通知され、この通報に基づいて緊急車両内に設置された建物位置表示装置10xの入力手段21を操作することで、制御手段23cが記憶手段23bを検索し、建物周辺地図画像G5を生成し表示手段22へ表示する。こうすることで、無線手段を有しないので装置の小型化が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、火災や災害、突発的な事故または病気などにより緊急出動する消防関係だけでなく、警察などの緊急を要する車両の移動に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態1に係る建物位置表示装置全体を示す図である。
【図2】図1に示す建物位置表示装置の構成を示す図であり、(A)は本部側通信装置を示すブロック図、(B)は車両側通信装置を示すブロック図である。
【図3】地図情報を示す図であり、(A)は地図データを示す図、(B)は道路輪郭線情報を示す図、(C)は建物外形情報を示す図、(D)は水源情報を示す図、(E)は文字情報を示す図である。
【図4】建物近辺地図画像を示す図である。
【図5】建物の見取図を示す図であり、(A)は1階平面図画像を示す図、(B)は2階平面図画像を示す図、(C)は3階平面図画像を示す図、(D)は屋上平面図画像を示す図である。
【図6】外観写真を示す図であり、(A)は外観正面画像を示す図、(B)は外観西側画像を示す図である。
【図7】初期画面の一例を示す図である。
【図8】検索結果を示すサイムネイル画面を示す図である。
【図9】建物周辺地図画像の一例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る建物位置表示装置の構成を示す図であり、(A)は本部側通信装置を示すブロック図、(B)は車両側通信装置を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係る建物位置表示装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0062】
10,10x 建物位置表示装置
20,20x 本部側通信装置
21 入力手段
22 表示手段
23 装置本体
23a 無線手段
23b 記憶手段
23c 制御手段
23x アンテナ
30,30x 車両側通信装置
31 入力手段
32 表示手段
33 装置本体
33a 無線手段
33b,33bx 制御手段
33x アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を識別するための識別情報および前記建物の位置を示す位置情報を含む建物関連情報と、建物の外形線および道路の輪郭線を含む地図画像を示す地図データを含む地図情報とを格納した記憶手段と、
目的の建物を特定するための特定情報を入力する入力手段と、
前記入力された特定情報に基づいて前記建物関連情報を検索して前記目的の建物に対応する位置情報を特定し、特定された位置情報が示す位置を中心とした周辺地域に対応する地図データの範囲内で、所定範囲の道路の輪郭線および建物の外形線を強調した建物周辺地図画像を出力する制御手段と、
前記制御手段から出力された建物周辺地図画像を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする建物位置表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記建物周辺地図画像を出力するときに、前記地図情報に含まれる緊急水利情報が示す水源の位置も強調させる機能を備えた請求項1記載の建物位置表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記建物周辺地図画像を出力するときに、前記建物周辺地図画像が示す範囲より狭い範囲を拡大した地図となる建物近辺地図画像と、前記建物関連情報に含まれる前記目的の建物の外観写真である外観画像とを、サムネイル形式の表示となる一覧画面として出力し、前記サムネイル画面うち前記入力手段により選択された一の情報を前記表示手段に拡大表示する機能を備えた請求項1または2記載の建物位置表示装置。
【請求項4】
前記記憶手段と、前記入力手段と、前記制御手段と、前記制御手段が出力する建物周辺地図画像を無線信号で送信する無線送信手段とを備えた本部側送信装置、および前記無線信号を受信する無線受信手段と、前記受信した建物周辺地図画像を表示する前記表示手段とを備えた移動体側受信装置を備えた請求項1記載の建物位置表示装置。
【請求項5】
前記入力手段と、前記入力手段により前記目的の建物の名称を無線信号で送信する無線送信手段とを備えた本部側送信装置、および前記記憶手段と、前記無線信号を受信する無線受信手段と、前記受信した建物の名称に基づいて前記建物関連情報を前記記憶手段から検索する前記制御手段と、前記表示手段とを備えた移動体側受信装置を備えた請求項1記載の建物位置表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−157636(P2009−157636A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334856(P2007−334856)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(307010694)トモデータサービス有限会社 (5)
【Fターム(参考)】