説明

建物内の検知対象の位置検知、行動認知システム

【課題】 建物内で移動する検知対象(人、物)の位置検知、行動認知が行え、必要に応じて検知対象に対して情報アシストを行えるシステムを提供する。
【解決手段】 天井版を格子状に取り付けたグリッド天井5を有する建物のフロア1内において、フロア1全体を検知範囲とする広域センサ15と、区画したゾーン間を通過する箇所に配置されたゲートセンサ16と、各ゾーン内の詳細検知可能にゾーン内に配置されたスポットセンサ17からなる検知手段を、グリッド天井5の天井板ごとに設ける。この検知手段を有する天井板を、グリッド天井5のレイアウトに応じて所定位置に配置する。各位置に配置された検知手段15,16,17により、検知対象者あるいは検知対象物の位置検知や行動認知を、段階的な精度で行える。さらに必要な情報を検知対象者に伝えることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物内で移動する検知対象(人、物)の位置検知、行動認知システムに係り、特にグリッド天井が採用された建物内において、各種の検知手段を前記グリッド天井の天井板にセットして検知対象の位置検知や行動認知でき、必要に応じて検知対象に対して情報アシストを行うことができる建物内の検知対象の位置検知、行動認知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロケーションシステムと呼ばれる、移動する検知対象(人、物)の位置を特定するための位置検知システムが種々開発、提案されている。その検知対象の移動範囲が屋外の場合には、GPSを利用したロケーションシステムが多く実用化されている。これに対して建物内に限られる場合には、その検知対象範囲、検知対象数の多少、検知機器の感度など種々の要因があるため、それぞれ特徴を有する各種の提案がなされているのが現状である(特許文献1〜3)。
【0003】
特許文献1には、物体を移動させる人間位置を特定する人間位置特定手段として、RFIDタグが付された物体と、その物体の位置読み込みを行うリーダ/ライタと、この読み込みデータを元に物体位置を算出する物体位置算出装置及び複数の撮像装置が開示されている。たとえば直接、人間の状態を認識する撮像装置は、室内の天井近傍の人間の平均身長よりも高い位置に設置されている。撮像装置で撮像された画像データは、物体位置算出装置へ送信され、物体位置算出装置は、同一領域が撮像されている複数の画像データから同一の対象物(人間)と推定される部分を例えば画像クラスタリング処理等により特定し、同一対象物間でステレオ処理を施すことにより、三角測量の原理を用いて対象物である人間の物理的位置を推算する機能を有する。
【0004】
特許文献2には、超音波タグと、RFIDタグとをその精度の違いで使い分けるようにした位置管理システムが開示されている。この複数の検知タグを用いることで、お互いの検知能を補完させることで、検知精度を高めることを目的としている。このとき、これらのタグの情報を検知する位置管理システムでは、種類の違うタグ用の検知装置を、それぞれ検知空間の天井に、交互に50cm間隔でグリッド状に配置している。このように、天井面に等間隔のグリッド状に配置することで、2種類の検知装置の配置位置での記憶/照合を容易に行えるようにしている。
【0005】
特許文献3には、検知対象の行動認知に着目した検知装置が開示されている。たとえば、トイレ、浴室、寝室などのように、限られた狭い空間において、その場所にいる対象者の姿勢を判別することにより、高齢者などが転倒したまま意識不明になるような危機的状態を早期に発見できる室内監視システムが開示されている。特許文献3では、たとえば、個室トイレの天井面に設置されたFG視覚センサにより、所定時間ごとに取得される輝点画像を、予め記憶されている基準面輝点画像と比較し、輝点が移動した領域を抽出する。そして、移動輝点領域の特徴量を算出し、個室トイレ内に居る人物の姿勢が「起立」、「着座」、「転倒」のいずれであるかを判別するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−275324号公報
【特許文献2】特開2007−17414号公報
【特許文献3】特開2001−28086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の発明では、空間内で位置を検知するためのセンサーが個々の目的別に設置されている。このため、個々のセンサー相互の関連がなく、その結果、個々のセンサーを組み合わせて、状況を検知して総合的な判断ができるシステムにはなっていない。また、各センサーの大きさや接続方法も目的の応じて多様であり、標準化されていない。このため、対象となるフロアの改修に応じ、検知範囲の変更等が自由に行えない。
【0008】
また、特許文献2の発明では、検知装置が検知空間の天井に所定の間隔でグリッド状かつ交互に設けられていることを特徴としているが、既設の天井部材に直接取付固定されているため、位置検知の範囲や、検知項目変更に対応するために、センサーの機能更新や取り付け位置の変更を行う場合、内装工事や電気工事を行う必要があり手間がかかる。
【0009】
特許文献3の発明では、監視範囲をトイレなど限定した対象空間内とし、その空間内で、人などの3次元形状を移動する輝点画像としてとらえる。この対象空間内に基準面輝点画像を予め準備しておく必要があるため、画像処理の能力から対象空間を広くとることが難しく、輝点の移動領域との照合にも膨大な演算処理が必要となる。
【0010】
そこで、本発明の目的は上述した従来の技術が有する問題点を解消し、格子状のグリッド天井を利用することで、それぞれの検知範囲を、その用途に応じて、検知対象の位置検知から特定された個人の行動認知まで段階的に対応でき、建物内のレイアウト変更等に応じてグリッド天井の天井板を再配置して、システム変更にを柔軟に対応できるようにした検知対象の位置検知、行動認知を可能にしたシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、グリッド天井が施工された建物内の検知対象となるフロアにおける特定IDが付された検知対象者あるいは検知対象物の位置、行動を検知する建物内の検知対象の位置検知、行動認知システムにおいて、複数種類の検知手段を、前記グリッド天井の天井板に設け、該天井板を前記グリッド天井の所定位置に配置し、各位置に配置された前記各検知手段により、前記検知対象者あるいは検知対象物の位置検知、行動認知を、段階的な精度で行うようにしたことを特徴とする。
【0012】
前記検知手段は、前記フロア全体を検知範囲とするように前記天井板に設けられた広域センサと、前記フロアを区画したゾーン間を通過する箇所に配置された天井板に設けられたゲートセンサと、各ゾーン内の詳細検知可能に前記ゾーン内の天井板に設けられたスポットセンサとを備え、前記各センサの検知範囲ごとの情報から前記検知対象者あるいは検知対象物の位置検知、行動認知を段階的な精度で行うことが好ましい。
【0013】
前記広域センサは、前記フロア内に存在する特定IDの位置検知を行い、前記ゲートセンサは、前記ゾーン毎での特定IDの移動、位置検知を行い、前記スポットセンサは、前記ゾーン内での特定IDの詳細位置検知、行動認知を行うことが好ましい。
【0014】
前記検知手段で得られた特定IDの位置情報、行動認知情報に応じて、前記特定IDの行動に対して支援情報を提供することが好ましい。
【0015】
前記支援情報は、前記特定IDの行動形態に応じて、前記特定IDの行動支援のために、前記特定IDへ情報提供されるか、他の特定IDへ情報提供されるようにすることが好ましい。
【0016】
前記フロア内でのレイアウトあるいはゾーンの変更等に合わせて、前記グリッド天井の天井板に設けられた各検知手段を、新たなシステム配置に応じて、前記天井板毎に増設、移設させ、変更後のレイアウトあるいはゾーンに対応した検知を行えるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、検知対象範囲のフロアのグリッド天井の天井板ごとに、その用途に応じた検知機器を設置することで、検知対象の位置検知から特定された個人の行動認知までを段階的に把握できる。また建物内の施設レイアウトの変更等に応じて、検知機器の設置されたグリッド天井の天井板の位置を置き換え変更することで、新しいシステムを容易に変更して、新たなレイアウトに対応できるため、統合的で可変性に富んだ建物内の検知対象の位置検知、行動認知を行えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の建物内の検知対象の位置検知、行動認知システムを適用したフロアのグリッド天井を透過して各種検知手段の配置例とフロアのゾーンレイアウトを示した平面レイアウト図。
【図2】グリッド天井と、各種検知手段の配置と、ゾーン内の各態様での検知対象者の関係を模式的に示した図1に示した室内でベッド配置例を斜視図で示した模式説明図。
【図3】グリッド天井の部分断面と、グリッド天井に設けられた各種検知手段の配置、配線例を拡大して模式的に示した部分側面図。
【図4】グリッド天井に設けられたゲートセンサおよび検知対象者の検知例を示した説明図。
【図5】グリッド天井に設けられたスポットセンサおよびその検知領域例を模式的に示した説明図。
【図6】本発明の建物内の検知対象の位置検知、行動認知システムのシステム構成の一実施例を示したブロック図。
【図7】フロア内での検知対象者の位置検知、行動認知の手順例を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の建物内の検知対象の位置検知、行動認知システムの実施するための形態として、以下の実施例について添付図面を参照して説明する。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明の建物内の検知対象の位置検知、行動認知システムを適用した一実施例を示した平面図である。同図は、適用例としての病院の特定階(以下、単にフロア)の平面図である。同図には、それぞれがゾーンとして独立して認識される3部屋の病室7Aと、中廊下7B、診察室7C、待合室7D、処置室7E、ナースステーション7Fとが配置されたフロア例が示されている。また、このフロアのグリッド天井5(破線表示)の所定位置に設置された、各対象者検知手段10が模式的に示されている。同図には、フロア内における対象者検知手段10としての広域センサ15と、ゾーン毎の検知対象を把握可能にするゲートセンサと、対象ゾーン内での検知対象者の詳細位置検知あるいは行動認知を行うことができるスポットセンサとが配置されている。
【0021】
以下、図1に示した各対象者検知手段10の配置、構成について説明する。
[広域センサ]
広域センサ15は、本実施例では、無線LANで構成された位置情報検知手段が用いられている。この位置情報検知手段は、検知対象(人、物)に付されたIDタグ等の発信手段と、グリッド天井5に設けられ、所定エリアをカバー可能なアクセスポイント15aと、アクセスポイント15aから送信された位置検知情報を処理する位置情報サーバ21とから構成されている。IDタグは、位置を特定するための機器や対象者につける送信機能を有するタグ(アクティブタグ)で所定のアクセスポイント15aに向け電波を発信する。本実施例のような病院施設であれば、IDタグは、医師、看護師などの医療従事者と、患者(入院患者、外来患者)とに区別して提供され、各人が所持または機器に装着される。医療従事者には後述する情報アシスト手段としてPDA(Personal Digital Assistant:携帯情報端末)を所持してもらうことが好ましい。一方、患者にはコンパクトなICカード、ボタンタグ、リストバンドタグなどを所持あるいは装着してもらうことが好ましい。また、位置特定や使用状況の確認が必要な医療機器、計測機器、医療機器台車等にも特定IDを付すためのタグ等の発信部を取り付ける。
【0022】
アクセスポイント15aは、IDタグやPDAの無線LANカードからの電波を受信し、位置情報サーバ21に送信するアンテナの役割を果たし、信号を受信可能なエリアを網羅するようにグリッド天井5に設置される。位置情報サーバ21は、各IDタグやPDAの位置の算出、位置情報データの蓄積、位置情報表示機能、後述する情報アシスト処理などの位置管理、情報管理のプラットフォームで、ナースステーション7Fに設けられたデータ処理手段20において制御機器の一つとして設置されている。
【0023】
[ゲートセンサ]
ゲートセンサ16としては、図1,図2,図4に示したように、病室7Aと中廊下7B、隣接した部屋間のように検知対象(人、機器)(以下、単に検知対象者と記す。)が通過する箇所の前後に位置するグリッド天井5にそれぞれ超音波リーダ16(以下、リーダ16と記す。)が設けられている。このリーダ16は図4に示したように、部屋間の通過部分(ゲート)を跨ぐような位置のグリッド天井5に設けられている。そして、このゲートを通過する検知対象者Pの所持するIDタグ8から発信される超音波を2個のリーダ16が通過に伴って受信した超音波の受信順位と受信波数から検知対象者の通過方向を特定する。リーダ16では超音波とIDタグ8との関係は得られないので、対象ゾーン内に存在するIDタグ8への微弱電波による発信指令により、IDタグ8から発信される超音波の発信を受けるようにする。このとき発信指令は、あらかじめ制御用コンピュータ22に、指令を出す対象IDタグ8や発信の間隔、発信指令の順番などの基本情報の設定をしておくことが好ましい。なお、複数のIDタグ8への発信指令は、予め決めた発信順位に基づいて行う。これにより、リーダ16が受信した超音波がどのIDタグ8から発信されたものなのかを判定する。なお、発信波は、超音波の他、弱電波、赤外線、無線LANなどを採用することできる。
【0024】
[スポットセンサ]
スポットセンサ17は、図1,図2,図5に示したように、各病室7Aや診察室7C等の部屋(ゾーン)単位で、それぞれの部屋のグリッド天井5に、各部屋の空間に向けて設置されている。本実施例では、スポットセンサ17として、図5(d)に示したようなドーム状ケース13が取り付けられ、その内部に、スポットセンサ17を構成する人感センサ17Aと3次元距離検知手段17Bとが収容されている。人感センサ17Aとしては、室内1内の全センシング領域(図5(a)、(b):領域2A,3A,4A)内での動作物体を認識可能な赤外線センサが用いられている。赤外線センサは、人体などが帯びている微弱な静電気を検知して反応するため、ベッド2上で人(対象者)が寝ていてほとんど動かないような場合にも、室内1に人が居ることを検知することができる。また、3次元距離検知手段17Bとしては、撮像領域内での多点合焦が可能なマルチフォーカス機能を有するCCDカメラが用いられている。
【0025】
検知手段17Bとしては、数cm程度での精度誤差で距離検出可能な装置であれば、多点合焦のCCDカメラの他、ステレオ方式カメラなど、受動的計測手法からなる各種の3次元距離センサを用いることができる。また、能動的計測手法として検知用ビーム(超音波、赤外線等)を天井からベッドおよびフロアに向けて発し、ビームを遮断する検知対象者の存在とその位置(高さ)を検知し、その検知高さと比較用基準高さ面との比較を行い、検知対象者の状況判断を行うこともできる。
【0026】
図2は、本発明の建物内の検知対象の位置検知、行動認知システムを適用したフロア1での病室7Aと中廊下7Bの配置状態を、グリッド天井5の上方から、説明のためにグリッド天井5を透視して示した模式説明図である。同図には、検知対象者の状況のために、複数の検知対象者の状況(ベッド2上での状況、ベッドサイドでの状況、個室内に入室した直後の状況)を同時に図示している。たとえば、ベッド2には、検知対象者P1が就寝中の状態が示されている。また、検知対象者P2がベッドサイド3の床に転落し、起きられない状態が示されている。さらに病室7Aの出入り口(ゲート)近くに検知対象者(あるいは来訪者)P3が立っている状態が示されている。
【0027】
さらに、同図には、この病室7Aに備えられた対象者状況の検知手段10としての、人感センサ11と3次元距離検知手段12(図5(d))とが天井面5のほぼ中央位置に設置された状態が示されている。そして、これらの装置の検知動作範囲(センシング領域)が略円錐形状のイメージで模式的に図示されている。
【0028】
ここで、グリッド天井5の構成およびグリッド天井5にセットされる各種センサの構成例について、図3を参照して説明する。図3は、本実施例のグリッド天井5の一部断面図を示している。このグリッド天井5は、公知の既製サイズからなるT字形のグリッドバー(クロスバー)50の支持フランジ50a部分に天井板端部5e(エッジ)を掛け載せるようにして支持させる構造からなる。グリッド天井5のグリッドサイズ(格子サイズ)は、近年多く普及している600mm×600mmモジュールからなる。図3にはグリッドバー50に支持された天井板上に広域センサ15のアクセスポイント15aと、アクセスポイント15aからLANケーブル51で接続されたハブ52及び、グリッドバー50間に架線されたLANケーブル幹線53が示されている。上述した広域センサ15、ゲートセンサ16は、図2に示したように、LANケーブル51と接続ポイントとなるハブ52を介してカスケード接続により、構築されたLAN内において自由に増設や移設することが可能である。なお、グリッド天井のモジュールには、たとえば640mm×640mmモジュール等もあり、本発明では規格が統一されていれば、上記寸法に限定されない。
【0029】
グリッド天井5の天井板を支持する格子状のグリッドバーは、同一寸法であるため、各センサが取り付けられた特定の天井板を新しいグリッド位置に置き換えた場合でも、その位置から直近のハブ等の接続ポイントに配線しなおすことで、すぐに各検出手段として使用することができる。
【0030】
図4は、上述したゲートセンサ16の動作状態を模式的に示した模式説明図である。同図に示したように、ゲートの通過方向に沿って、グリッド天井5の天井板5bにゲートセンサ16が設置されている。これらゲートセンサ16は、検知対象者Pが身につけているIDタグ8からの発信超音波を受信し、その受信タイムラグから検知対象者Pの通過方向を検知するとともに、それぞれのゾーン人数の増減を、位置情報サーバ21(図1)でカウントさせる機能を有する。上述したように、IDタグ情報と発生超音波とは対応していないので、それぞれの超音波と特定IDとの照合は位置情報サーバ21で行うようになっている。
【0031】
次に、上述したスポットセンサ17の動作について、図5(a)〜(c)を参照して説明する。図5(a),(b)は、図2に示した室内1でのベッド2の配置例を示した平面レイアウト図である。同図(c)は、室内1のグリッド天井5に設置されたスポットセンサ17の検知動作範囲(センシング領域)を模式的に示した正面図である。図5(a),(b)に示したように、ベッド2は、病室7Aの中央部あるいは隅部で、頭部側が壁近くに配置されている。そのベッド2の周囲には、ベッドサイド領域3Aとして認識される幅1m程度のコ字形をなしたセンシング領域が規定されている。
【0032】
このように、病室7A内は、ベッド2の平面寸法(たとえば幅0.9m×長さ2.2m)をベッド領域2A、その周囲を囲むようにベッドサイド領域3A、さらにその外側の床4全面を網羅する床領域4Aの3つのセンシング領域に区分されている。そして、それぞれのセンシング領域において、後述するように、スポットセンサ17によって得られた対象者の位置(高さ)データが領域内の基準高さと比較され、その占める比率が算定され、その結果をもとに、対象者の行動認知(たとえば起床状態、転倒・転落、または病室7Aへの来訪者の存在の可能性までも考慮した状況)判断を行うことができる。
【0033】
ここで、スポットセンサ17によって得られた検知対象者の行動認知情報をもとに、次段階で行える情報アシストについて説明する。
スポットセンサ17で検知対象者の行動認知あるいは詳細な位置情報が得られたら、その検知対象者の行動あるいは状況改善のための支援動作をとることができる。これを本明細書では、「情報アシスト」と呼ぶ。この情報アシストについて、以下、検知あるいは認知された対象者の位置あるいは行動の状況に応じて、その例について簡単に説明する。
検知対象者がたとえば医師、看護師等の医療従事者の場合には、その対象者の位置検知情報(手術室、処置室、病室)と、その際の医療行為に特殊な使用機器が同時に使用されているという情報(機器の位置情報から判断される)が得られた場合、位置情報サーバから、図示しない制御部にその組み合わせ照合がなされ、情報アシストとして使用機器の適正使用方法、必要に応じた医師等への情報が、制御部から医師等の所持するPDAやPHSに画像情報、文字情報、音声情報の適切なデータ形式の支援情報として提供される。一方、患者が身につけているIDタグからの情報の場合、たとえば徘徊行動による病棟外への移動が確認されたり、ベッド上の患者の場合、起床状態や転倒・転落事故の発生を遠隔的に把握できる。その際は、担当看護師や最も近い所にいる看護師やヘルパーの所持するPDAやPHSに緊急通報がなされる。これにより、看護師等が迅速に事故位置に到着して必要な処置を行うことができる。
【0034】
図6は、本発明の概略構成である、上述した各検知手段と、検知対象者の位置情報処理、行動認知情報を把握し、必要なアシスト情報を提供するための処理を行えるデータ処理手段と、情報アシスト手段との関係を示したブロック図である。同図、及び図7を参照して本発明の建物内の検知対象の位置検知、行動認知システムにおける位置検知、行動認知手法の手順について説明する。
【0035】
上述したように、建物の該当フロアの天井は、たとえば図1に示したようにグリッド天井5で構成され、該当フロアのレイアウトに応じて、グリッド天井5には所定位置に広域センサ15、ゲートセンサ16およびスポットセンサ17とが配置されている。この該当フロア(一例として図1のレイアウトのフロアとする、)における検知対象者の位置検知、行動認知について、図1,図7を参照して説明する。
当初、このフロアの病棟に入院している患者、病棟看護師、担当科医師、ヘルパー等の特定IDが初期設定登録される。また、見舞い来訪者等は、病院受付で来訪者IDタグを受け取り、当該フロアへの到着確認により、広域センサ15により検知され、位置情報サーバにおいて新規IDとして認証され、このフロアでの位置確認のためのIDとして位置情報サーバに追加登録される(ステップ100、以下S100と記す)。
【0036】
常時においては、広域センサ15によりフロア内の検知対象者(物)の位置確認が所定タイミングで繰り返して行われる(S110)。また、必要に応じてゾーン毎の人数把握、検知対象者の位置検知を行い、適正な人員配置、検知対象者の作業動線を確認することができる(S120)。その場合には、各ゾーン(部屋)を区画し、検知対象者が通過するゲートにおいて、ゲートセンサ16により検知対象者の移動方向、移動人数を確認し、所定タイミングにおける各ゾーンにおける人数確認、特定IDの位置検知を行う(S130)。
さらに特定IDの行動認知を行うかの確認が可能である(S140)。その選択により、スポットセンサ17による特定IDの詳細位置検知あるいは行動認知がなされる(S150,160)。この行動認知の結果、特定IDに対して支援情報の提供(情報アシスト)が必要かの判断を行う(S170)。この判断は、一定の判断基準があらかじめ設定されており、認知された行動と特定IDとの関係において、即座に判断され、適正なタイミングと手順、手段によって情報アシストがなされる(S180)。提供情報の内容、手段の例は上述の通りである。
【0037】
以上の説明では、病院の病棟フロアにおける各施設における検知対象者の位置検知、行動認知の手法を例に説明したが、養護施設、一般の事務所オフィス、研究所等の実験施設のフロア等においても適用できることはいうまでもない。すなわち、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能であり、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1 フロア
2 ベッド
3 ベッドサイド
4 床
5 グリッド天井
10 対象者検知手段
15 広域センサ
16 ゲートセンサ
17 スポットセンサ
17A 人感センサ
17B 3次元距離検知手段(検知カメラ)
20 データ処理手段
30 情報アシスト手段
P,P1,P2,P3 検知対象者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッド天井が施工された建物内の検知対象となるフロアにおける特定IDが付された検知対象者あるいは検知対象物の位置、行動を検知する建物内の検知対象の位置検知、行動認知システムにおいて、複数種類の検知手段を、前記グリッド天井の天井板に設け、該天井板を前記グリッド天井の所定位置に配置し、各位置に配置された前記各検知手段により、前記検知対象者あるいは検知対象物の位置検知、行動認知を、段階的な精度で行うようにしたことを特徴とする建物内の検知対象の位置検知、行動認知システム。
【請求項2】
前記検知手段は、前記フロア全体を検知範囲とするように前記天井板に設けられた広域センサと、前記フロアを区画したゾーン間を通過する箇所に配置された天井板に設けられたゲートセンサと、各ゾーン内の詳細検知可能に前記ゾーン内の天井板に設けられたスポットセンサとを備え、前記各センサの検知範囲ごとの情報から前記検知対象者あるいは検知対象物の位置検知、行動認知を段階的な精度で行うようにした請求項1に記載の建物内の検知対象の位置検知、行動認知システム。
【請求項3】
前記広域センサは、前記フロア内に存在する特定IDの位置検知を行うことを特徴とする請求項2に記載の建物内の検知対象の位置検知、行動認知システム。
【請求項4】
前記ゲートセンサは、前記ゾーン毎での特定IDの移動、位置検知を行うことを特徴とする請求項2に記載の建物内の検知対象の位置検知、行動認知システム。
【請求項5】
前記スポットセンサは、前記ゾーン内での特定IDの詳細位置検知、行動認知を行うことを特徴とする請求項2に記載の建物内の検知対象の位置検知、行動認知システム。
【請求項6】
前記検知手段で得られた特定IDの位置情報、行動認知情報に応じて、前記特定IDの行動に対して支援情報を提供することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の建物内の検知対象の位置検知、行動認知システム。
【請求項7】
前記支援情報は、前記特定IDの行動支援のために、前記特定IDへ情報提供されることを特徴とする請求項6に記載の建物内の検知対象の位置検知、行動認知システム。
【請求項8】
前記支援情報は、前記特定IDの行動支援のために、他の特定IDへ情報提供されることを特徴とする請求項6に記載の建物内の検知対象の位置検知、行動認知システム。
【請求項9】
前記フロア内でのレイアウトあるいはゾーンの変更等に合わせて、前記グリッド天井の天井板に設けられた各検知手段を、新たなシステム配置に応じて、前記天井板毎に増設、移設させ、変更後のレイアウトあるいはゾーンに対応した検知を行えるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の建物内の検知対象の位置検知、行動認知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−108137(P2011−108137A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264662(P2009−264662)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】