説明

建築材料およびその製造方法

【課題】表面に欠陥がある、あるいは、強度不足な木質基材を用いたとしても、強度的に優れ、表面形状に優れるとともに、耐熱性に優れ、製造が容易な建築材料およびその製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】木質基材と意匠性を付与するシート材料との間に、融点50℃以上の結晶性成分およびガラス転移点30℃以上の非結晶性成分の少なくともいずれかを骨格中に有するプレポリマーを含有する反応型ホットメルト接着剤を介在させた状態で、木質基材と意匠性を付与するシート材料とを熱プレスする工程を備える製造方法で得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材、壁材、天井材等として使用される建築材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
床材、壁材、天井材等に使用される建築材料として、木質基材の表面に意匠性を付与するシート材料を接着剤により貼着したものが用いられている(たとえば、特許文献1,2参照)。
すなわち、比較的安価な樹木から得られる無垢材あるいは合板等の合成木材を木質基材として用い、この木質基材の表面に意匠性を付与するシート材料を貼り付けることにより、意匠性を大きく改善し、高級な樹木から得られる無垢材調とするなど意匠性の高い建築部材を安価に得ることができるようにしている。
【0003】
しかしながら、近年、環境への配慮から森林伐採が縮小する傾向にあり、木質基材となる良質で安価な木材が入手し難くなりつつある。
特に、無垢材や合板等のように、元の木材品質に大きく左右されるような材料については、品質の低下が懸念されている。すなわち、表面に節穴が形成されていたり、表面が平滑でなかったり、強度的に不十分な木質基材を使用せざるを得ない場合が生じる。
【0004】
したがって、表面の欠陥や強度の低下した木質基材を用いた場合においても、表面の節穴や凹部などの欠陥や強度の低下を如何にカバーし、良質の建築材料とするかが重要な課題になりつつある。
【0005】
また、上記の建築材料では、従来、接着剤として酢酸ビニルエマルジョン系の接着剤が一般的に用いられている。しかしながら、酢酸ビニルエマルジョン系の接着剤を用いて木質基材に意匠性を付与するシート材料を接着した場合、木質基材表面の節穴や凹部などの欠陥を埋めるには到らず、また、十分な表面強度向上効果を得ることは難しい状況にあった。また、木質基材表面の節穴や凹部等の欠陥を埋める方法として、節穴や凹部等にパテ材を充填する方法があるが、パテ材を充填する工程や節穴や凹部からはみ出たパテ材を研磨等により取り除くとともに平滑化する工程などが余分に必要となり、製造作業が煩雑になるという問題が発生する。
【0006】
【特許文献1】特開2000−190309号公報
【特許文献2】特開2002−276140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の発明者は、ホットメルト接着剤を用いて意匠性を付与するシート材料を木質基材の表面に貼着するようにすれば、上記問題を解決できるのではないかと考えた。すなわち、通常、ホットメルト接着剤は、100%固形であり、冷却固化による体積収縮の小さいものを選択することにより、接着と同時に木質基材表面の穴や凹部に入り込み、平滑性を向上することができると考えられる。
【0008】
しかし、ホットメルト接着剤としては、従来からEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)系接着剤が広く用いられているが、EVAは、熱可塑性であるために、耐熱性を発現し難く、床暖房や、直射日光等により温度が高くなる部材への適用は難しい。また、一般的には冷却時の体積収縮も比較的大きく、本件の目的にはあまり適さない。
そこで、種々の接着剤を鋭意検討した結果、特定の性状を有する、反応型ホットメルト接着剤を用いることが効果的であることを見いだし、本発明を完成するに到った。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みて、表面に欠陥がある、あるいは、強度不足な木質基材を用いたとしても、強度的に優れ、表面形状に優れるとともに、耐熱性に優れ、製造が容易な建築材料およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の建築材料(以下、「請求項1の建築材料」と記す)は、木質基材表面に接着剤層を介して意匠性を付与するシート材料が貼り合わされている建築材料であって、接着剤層が、融点50℃以上の結晶性成分およびガラス転移点30℃以上の非結晶性成分の少なくともいずれかを骨格中に有するプレポリマー(A)を含有する反応型ホットメルト接着剤によって形成されていることを特徴としている。
【0011】
本発明の請求項2に記載の建築材料(以下、「請求項2の建築材料」と記す)は、請求項1の建築材料において、反応型ホットメルト接着剤が、成分中にプレポリマー(A)を40重量%以上含有することを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項3に記載の建築材料(以下、「請求項3の建築材料」と記す)は、請求項1または請求項2の建築材料において、プレポリマー(A)が、主鎖が実質的にポリエステル骨格であり、平均数で1を超える水酸基を有する化合物(B)の水酸基部に複数のイソシアネート基を有する化合物(C)を付加したものであることを特徴としている。
【0013】
本発明の請求項4に記載の建築材料(以下、「請求項4の建築材料」と記す)は、請求項1〜請求項3のいずれかの建築材料において、木質基材の衝撃強度が、20℃60%Rhの環境下で24時間以上放置した木質基材上に、20℃60%Rhの環境下で、デュポン衝撃試験機を用い、重さ500g、撃芯先端径φ6.3mmの重錘を300mmの高さから落下させたときに形成される凹み深さが平均で0.5mm以上であることを特徴としている。
【0014】
本発明の請求項5に記載の建築材料(以下、「請求項5の建築材料」と記す)は、請求項1〜請求項4のいずれかの建築材料において、意匠性を付与するシート材料が、1平方メートルあたり50g以下の重量の紙質系材料であることを特徴としている。
【0015】
本発明の請求項6に記載の建築材料の製造方法は、請求項1〜請求項5のいずれかの建築材料の製造するにあたり、木質基材と意匠性を付与するシート材料との間に、融点50℃以上の結晶性成分およびガラス転移点30℃以上の非結晶性成分の少なくともいずれかを骨格中に有するプレポリマー(A)を含有する反応型ホットメルト接着剤を介在させた状態で、木質基材と意匠性を付与するシート材料とを熱プレスする工程を備えることを特徴としている。
【0016】
本発明において使用される反応型ホットメルト接着剤としては、融点50℃以上の結晶性成分およびガラス転移点(以下、「Tg」と記す)30℃以上の非結晶性成分の少なくともいずれかを骨格中に有するプレポリマー(A)を含有していれば、特に限定されないが、上記プレポリマー(A)を40重量%以上含有していることが好ましい。
すなわち、上記プレポリマー(A)が0重量%を超え40重量%未満の含有では、貼り合わされた建築材料の表面硬度の向上効果が十分に得られない虞がある。特に、製造工程において、冷却固化後から湿気硬化反応が進むまでの硬度を維持する上で重要である。また、実質的に湿気硬化が終了した時点においても、本発明の建築材料の表面硬度を維持する上で重要でもある。
【0017】
上記プレポリマー(A)において、結晶性成分の融点は、50℃以上に限定されるが、
その理由は、融点が50℃未満の場合は、貼り合わされた建築材料の表面硬度の向上効果が得られないためである。また、結晶性成分の融点は、建築材料表面の温度が上昇し、結晶性成分の融点を超えると結晶が融解し表面硬度が低下するため、できるだけ高いことが望ましいが、結晶性成分の融点が高すぎると、オープンタイムが短くなり、塗布温度を高く設定したり、又、加熱プレスする際の加熱温度を高く設定する必要があるため、接着時の作業性低下や、接着性の低下、及び接着剤の加熱劣化等の問題が発生し易くなる。したがって、結晶性成分の融点は、好ましくは50℃以上150℃以下、より好ましくは55℃以上130℃以下、さらに好ましくは60℃以上100℃以下である。また、反応型ホットメルト接着剤中のプレポリマー(A)の含有量を決定する際には、接着剤全体の融点が一つの指標となるため、接着剤全体の融点が50℃以上、より好適には60℃以上、更に好適には70℃以上になるようにプレポリマー(A)の含有量を設定することが望ましい。また、接着剤全体の融点の上限としては、反応型ホットメルト接着剤としての作業性を良好に保つため、120℃以下、好適には100℃以下にすることが好ましい。なお、結晶性成分の融点が高ければ、プレポリマー(A)の含有量が少なくても硬化が得やすく、逆に結晶性成分の融点の低いものを使用する場合はプレポリマー(A)の含有量が多い方が望ましい。
【0018】
一方、プレポリマー(A)において、非結晶性成分のTgは、30℃以上に限定され、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは45℃以上であるが、その理由は、Tgが30℃未満の場合は、貼り合わされた建築材料の表面硬度の向上効果が得られないためである。すなわち、非結晶性成分のTgが低すぎると、常温での硬度が得られない虞がある。ただ、非結晶性のTgを超えて加熱された場合、接着剤の硬度の低下は生じるが、結晶性成分の融点を超えた場合に比べて影響は比較的小さい。また、非結晶性成分の含有量についても、結晶性成分と同様の理由から、Tgの高いものほど含有量は小さくできる。
【0019】
本発明において使用される反応型ホットメルト接着剤は、接着剤としての種々の特性(接着性、耐クリープ性など)や冷却固化時及び湿気硬化後の硬度等を同時に満たすために、プレポリマー(A)として、融点50℃以上の結晶性成分およびTg30℃以上の非結晶性成分の両成分を同一分子内に持つプレポリマーを使用してもよいし、両成分をそれぞれの主骨格とするプレポリマーを適宜混合したものを使用しても、あるいはいずれかを単独で使用してもよい。
【0020】
また、本発明において使用される反応型ホットメルト接着剤は、上記プレポリマー(A)以外のプレポリマーを加えてもよく、接着性や流動性、又粘着物性を改善するため、粘着付与樹脂、各種可塑剤、触媒等の各種添加剤等を加えてもよい。但し、上記プレポリマー(A)以外の成分を加える際には、接着剤自体の硬度を必要以上に低下させないように注意が必要である。
【0021】
上記プレポリマー(A)の具体例としては、二塩基酸とポリオールとからなるポリエステル骨格を持つものが代表的である。すなわち、二塩基酸とポリオールとを、適宜組み合わせて用いることにより、結晶性、非結晶性のポリエステル骨格を得ることができる。
なお、上記二塩基酸としてはアジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられ、ポリオールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
具体的には、例えば、アジピン酸とヘキサンジオールとを反応させることにより融点が55〜65℃の結晶性ポリエステルが得られ、アジピン酸及びイソフタル酸と、エチレングリコール及びネオペンチルグリコールとを適宜反応させることによって、Tg約50℃の非結晶性ポリエステルを得ることができる。
【0022】
上記結晶性ポリエステルの融点は、大きくは選択する二塩基酸とポリオールの種類に依存するが、分子量によってもある程度制御は可能である。また、上記非結晶性ポリエステルのTgについても、組み合わせる二塩基酸とポリオールの種類、またその配合比、及び分子量によって制御することが可能である。
【0023】
そして、プレポリマー(A)は、これらのポリエステル骨格の両末端を水酸基とした化合物(ポリエステルポリオール)に対して、ジイソシアネート化合物などを反応することによって得ることができ、融点やガラス転移点の制御がし易いため、請求項3の建築材料のように、前記主鎖が実質的にポリエステル骨格であり、平均数で1を超える水酸基を有する化合物(B)の水酸基部に複数のイソシアネート基を有する化合物(C)を付加したものが好適である。
また、プレポリマー(A)の両末端は、反応性があれば特に限定されないが、例えば、イソシアネート基、アルコキシシリル基、エポキシ基などとすることができる。
【0024】
上記化合物(B)としては、特に限定されないが、より耐熱性や耐久性を発現するために、ポリエステル骨格が元来有する水酸基数の平均数は2以上が好ましく、実質的に両末端が水酸基であるものが工業的には入手しやすい。
一方、上記化合物(C)としては、特に限定されず、種々のものが使用可能であるが、一般的にはMDI(4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート)やTDI(トリレンジイソシアネート)、HDI(1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)などが入手しやすい。
例えば、両末端が水酸基である化合物(B)の両端に、ジイソシアネート化合物であるMDIをそれぞれ付加した場合、実質的には両末端がイソシアネート基となり、両末端がイソシアネート基であるプレポリマー(A)を得ることができる。両末端がイソシアネート基である場合には、雰囲気中の水分によって反応し、プレポリマー(A)が付加していくことにより高分子量化し、反応型ホットメルト接着剤は硬化することができる。硬化したものは、容易に熱溶融しにくくなり、耐熱性や耐久性が著しく向上する。
【0025】
上記プレポリマー(A)を構成する結晶性ポリエステルとしては、分子量1000以上のものが好ましいが、溶融粘度、粘着性、長オープンタイム化をバランス良く実現するためには分子量1500〜9000がより好ましく、分子量1500〜7500がさらに好ましく、分子量2000〜4500が特に好ましい。すなわち、分子量が低すぎると再結晶化が起こりにくくなり、溶融状態から冷却された後、長時間経過しても冷却固化しにくくなり、表面材の初期接着強度が得られない場合や、プレス工程で発現した表面平滑性が失われる等の問題が発生し易くなる。また、クリープ性も低下する虞があり、上記と同様に初期接着性や、表面材の浮き、剥がれ、表面平滑性の低下などの問題が発生する虞がある。逆に、分子量が高すぎると、溶融粘度が上昇するため作業性が悪くなり、塗布性や作業性が低下するほか、糸引きが発生し表面材を汚染したり、被着材への濡れ性の低下により(常態)接着強度が低下してしまう虞がある。
【0026】
また、融点50℃以上の結晶性ポリエステルと、Tg30℃以上の非結晶性ポリエステルとをを骨格中に有するプレポリマー(A)としては、特に限定されないが、たとえば、ブタンジオールとアジピン酸とからなるポリエステルの両末端をOHとした融点50℃以上の両末端水酸基の結晶性ポリエステルと、酸成分としてのテレフタル酸及びイソフタル酸と、ジオール成分としてエチレングリコール及びネオペンチルグリコールとからなるTgが30℃以上の両末端水酸基の非結晶性ポリエステルとを混合し、ジイソシアネート等の架橋剤により部分架橋させることによって得ることが可能である。
【0027】

また、非結晶性骨格部分を構成するポリエステルのTgは、接着剤製造工程において他の原料と溶融混合することを鑑みると、30℃以上120℃以下が好ましく、35℃以上100℃以下がより好ましく、40℃以上80℃以下が特に好ましい。
さらに、目的とする建築材料が床材の場合でかつ床暖房等の加熱を伴う用途に使用される場合、非結晶性骨格部分を構成するポリエステルのTgは50℃以上が望ましい。更に望ましくは、60℃以上、特に望ましくは70℃以上である。
【0028】
本発明において使用される反応型ホットメルト接着剤には、上記プレポリマー(A)に加えて、初期粘着物性を改善する目的で、熱可塑性樹脂及び/または粘着付与樹脂を添加することが可能である。
【0029】
上記熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、たとえば、分子量が20000〜100000程度のポリカプロラクトン、ポリエステル類、ポリウレタンやスチレン系ブロックポリマー等を使用することが出来る。
【0030】
これらの熱可塑性樹脂としては、分子量が比較的高いものを選択する方が好ましいが、その際添加量を多くすると得られる接着剤の溶融粘度が高くなり作業性が低下するため、添加量は1〜15重量%が好ましく、2〜10重量%がより好ましい。
【0031】
上記粘着付与樹脂としては、上記ウレタンプレポリマーに相溶または部分相溶するものであれば、特に限定されるものではないが、たとえば、ロジンエステル、テルペン樹脂、スチレン系樹脂等の石油樹脂類、またはこれらの共重合物や、これらの樹脂の部分もしくは完全水添された樹脂等を用いることができる。
【0032】
これらの粘着付与樹脂としては、分子量が比較的小さいため、添加量は3〜25重量%が好ましく、4〜15重量%がより好ましい。ここで、Tgの高い粘着付与樹脂の添加量があまり多すぎると上記プレポリマーの再結晶化を妨げ、非粘着化し難くなるため注意が必要である。
【0033】
また、上記粘着付与樹脂のTgとしては、30℃以上80℃以下の範囲が好ましく、40℃以上70℃以下の範囲がより好ましい。粘着付与樹脂の軟化温度としては、樹脂の化学組成にもよるが一般的には90℃以上120℃以下程度である。
【0034】
本発明において使用される反応型ホットメルト接着剤の場合、得られる接着剤の溶融粘度を低く調整するために、常温で液状のウレタンプレポリマーや液体及び固体の可塑剤等を本発明の効果を失わない範囲で適宜添加してもよい。また、必要に応じて、たとえば、pH調整剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、防カビ剤、着色剤、増粘剤、消泡剤、難燃剤、香料等を添加するようにしても構わない。
【0035】
本発明で使用される木質基材としては、特に限定されないが、たとえば、無垢材、合板、パーティクルボード(以下、「パーチ材」と記す)、ミディアムデンシティーファイバーボード(以下、「MDF」と記す)、集成材等が挙げられ、中でも、元々表面硬度が低くかつ、多孔質である方がその改善効果が高いため、請求項4の建築材料のように、20℃60%Rhの環境下で24時間以上放置した木質基材上に、20℃60%Rhの環境下で、デュポン衝撃試験機を用い、重さ500g、撃芯先端径φ6.3mmの重錘を300mmの高さから落下させたときに形成される凹み深さが平均で0.5mm以上であるものが好ましい。
表面硬度が低いものほど、得られる効果は大きくなるため、より好ましくは凹み深さの平均が0.7mm以上、更に好ましくは0.9mm以上である。
しかしながら、たとえば、密度の高い、もしくは樹脂含有質の高いMDFやパーチ材などのように、表面硬度が元々高く表面平滑性の高い材料を木質基材として用いた場合、その効果は小さくなるもののある程度の効果は得られるため、より凹み量の小さいものへも使用は可能である。
また、上記の理由から、無垢材や合板についても、杉や松などの堅い針葉樹よりも、広葉樹や南洋材等への効果が特に期待できる。
【0036】
本発明に使用される意匠性を付与するシート材料(以下、「意匠シート」と記す)としては、紙、不織布、合成樹脂シート等のシートに塗装、絵柄印刷、凹凸模様エンボス等の装飾処理を施したもの等公知のものが適宜選択できるが、請求項5の建築材料のように、1平方メートルあたり50g以下(より好ましくは40g以下)の坪量の比較的薄い紙質系材料を用いることが好ましい。すなわち、木質基材表面の凹凸が影響するような薄い材料を用いる方が、本発明の効果をより期待できる。
【0037】
本発明の建築材料を製造する場合、接着剤は、木質基材および意匠シートのいずれに塗布しても構わない。また、塗布方法としては、面状に塗布できる方法であれば特に限定されない。さらに、貼り合わせ時に熱プレスを行う場合は、接着剤が熱プレス時の熱によって熱溶融し、プレスに伴って流動することによって実質上、連続した面状に広がるようにしてもよい。
【0038】
木質基材と意匠シートとを貼り合わせる方法については、特に限定されないが、本発明の製造方法のように、熱プレスを行うことが好ましい。すなわち、熱プレスを行うことで、更なる表面硬度の向上や意匠シートと木質基材との密着性を向上することができるとともに、高い平滑性を発現することができる。
【0039】
プレス温度としては、接着剤を十分に軟化させ、木質基材および意匠シートの微細な凹凸に入り込ませるために、接着剤の軟化温度よりも高い温度にすることが必要である。効果的には、接着剤の軟化温度よりも約10℃、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上高い温度で熱プレスを行う方がよい。但し、プレス温度が必要以上に高いと後述のプレス時間が長い場合と同様の問題が発生するほか、接着剤の冷却収縮が必要以上に大きくなるため表面平滑性が低下する虞がある。その為、プレス温度の上限は150℃以下であることが望ましい。又、後述のように材質によっては更に低い温度でプレスすることが効果的な場合もある。プレス時間は温度と部材の熱量とによって左右されるが、一般的には15秒以上行うことが好ましい。より効果的には25秒以上さらに好ましくは30秒以上である。但し、熱プレス時間が必要以上に長すぎると、反応型ホットメルト接着剤が垂れてしまい、接着性や表面の平滑性に悪影響を及ぼすので、適宜調整する必要がある。また、木質基材自身が加熱され過ぎると冷却時間に必要以上の時間を要するため工程時間が長くなるなどの問題も起き易くなる。
また、木質材料及び紙質の材料はかなりの水分を含有するため、100℃以下の温度でプレスする方が効果的な場合もある。また、必要に応じて、熱プレス後に冷プレス工程を設けてもよい。
【0040】
また、本発明の建築材料は、意匠シートの表面にさらに、保護層等を設けるようにしても構わない。たとえば、意匠シートの上からさらに透明な塗装を施したり、透明なフィルムを積層したり、また既に表面層を積層したシート材を用いてもよい。
【発明の効果】
【0041】
本発明にかかる建築材料は、以上のように、接着剤層が、融点50℃以上の結晶性成分およびTg30℃以上の非結晶性成分の少なくともいずれかを骨格中に有するプレポリマー(A)を成分中に含有する反応型ホットメルト接着剤によって形成されているので、表面に欠陥がある、あるいは、強度不足な木質基材を用いたとしても、パテ材を使用することなく、強度的に優れ、表面形状に優れるとともに、耐熱性に優れたものとすることができる。
【0042】
すなわち、100%固形の接着剤成分を用いるため、木質基材表面の傷や、虫穴をある程度埋めることができるため、化粧合板等にした場合、パテ材等を使用しなくても、表面の平滑性が増し、意匠性が向上する。しかも、貼り付け後にプレポリマーが反応して接着剤が硬化するため、紙質などの伸びの少ないシート材料を用いた場合でも、凹み変形量が少なくかつ、シート材料にも強固に接着するため、シートが破れにくく、板材が衝撃変形を受けた場合でも、大きく意匠性を損なうことがない。
【0043】
本発明にかかる建築材料の製造方法は、木質基材と意匠性を付与するシート材料との間に、融点50℃以上の結晶性成分およびTg30℃以上の非結晶性成分の少なくともいずれかを骨格中に有するプレポリマー(A)を成分中に含有する反応型ホットメルト接着剤を介在させた状態で、木質基材と意匠性を付与するシート材料とを熱プレスする工程を備えるので、更なる表面硬度の向上や意匠シートと木質基材との密着性を向上することができるとともに、高い平滑性を発現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に、本発明にかかる建築材料およびその製造方法の実施の形態を図面に基づき、詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる建築材料の製造方法の1つの実施の形態をあらわしている。
【0045】
図1に示すように、この建築材料1の製造方法は、所望長さの板状をした木質基材2を、接着剤塗布装置3のところに搬送し、ロールコーターによって木質基材2の一方の面に、融点50℃以上の結晶性成分およびTg30℃以上の非結晶性成分の少なくともいずれかを骨格中に有するプレポリマー(A)を40重量%以上含有する反応型ホットメルト接着剤4を溶融状態で塗布する。
【0046】
つぎに、長尺の帯状をした意匠シート5を塗布された反応型ホットメルト接着剤4の上に連続的に供給し、押圧ローラ6によって圧接したのち、意匠シート5を木質基材2に合わせて裁断する。
そして、必要に応じて熱プレス装置7によって熱プレスし、さらに、冷熱プレス装置8によってプレスしたのち、雰囲気中の水分によって反応型ホットメルト接着剤4を養生硬化させる。
【0047】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記の実施の形態では、 木質基材が板状をしていたが、立体的なものでも構わない。また、意匠シートの木質基材への貼り付けは、上記のように連続的に行わず、バッチ式に行うようにしても構わない。
【0048】
以下に、本発明の具体的な実施例をその比較例と対比させて詳しく説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1〜9、比較例1〜4)
以下に示す、木質基材A,B、接着剤A〜D、意匠シート、架橋剤を用意した。
・木質基材A:7層合板、厚さ12mm、
デュポン式衝撃試験による凹み値平均0.6mm以上
・木質基材B:5層合板、厚さ12mm、
デュポン式衝撃試験による凹み値平均0.9mm以上
なお、上記凹み値平均は、木質基材A,Bの試験片を20℃60%Rhの環境下で24時間以上放置したのち、測定時の雰囲気も、同様に20℃60%Rhで、落下距離300mm、落下錘500g、撃芯径6.3mmの条件で行い、測定は1/100mmまで測定できるデジタル表示式のノギスを用いてn=5で測定し、その平均を求めた。
【0050】
・接着剤A:積水フーラー社製変性酢酸ビニルエマルジョン系接着剤
商品名エスダイン5800(不揮発分43%)
・接着剤B、C、D:以下の原料A〜原料Dおよび架橋剤を下記表1に示す配合比でそれ ぞれ調整した。具体的な調整方法としては、架橋剤以外を加熱溶融 混合し、減圧脱水を行った後、架橋剤を計量し投入する。投入後は 、直ちに窒素置換し100℃にて2時間攪拌混合を行いジオールの 両末端に架橋剤を反応付加せしめて、ウレタンプレポリマーを生成 し、反応型ホットメルト接着剤を得た。
・原料A:ブタンジオールとアジピン酸とからなる分子量3000のポリエステルの
両末端をOHとしたもの。
・原料B:酸成分としてのテレフタル酸及びイソフタル酸と、ジオール成分として のエチレングリコール及びネオペンチルグリコールとからなるTg34℃のポリエステルジオール。
・原料C:分子量2000のポリブタジエン‐ジオールの両末端にアイソネート125M を反応させて得た。
・原料D:大日本インキ社製ポリエステル系樹脂ODX-2547
・架橋剤:ダウケミカル社製ジイソシアネート商品名アイソネート125M
・意匠シート:重量50g/m2の化粧紙
【0051】
【表1】

【0052】
つぎに、表2〜表4に示す条件で建築材料サンプルを作製し、得られた建築材料サンプルの意匠シート側のデュポン式衝撃試験による凹み値平均を木質基材と同様にして求めるとともに、意匠シートと木質基材との接着性を確認するために、2mm角のクロスカット試験を行い100マス中で剥離の認められなかったマス目数で評価しその結果を表2〜表4に併せて示した。また、得られた建築材料サンプルの意匠シート側の面の表面状態を目視で調べ、その結果も併せて表2〜表4に示した。
なお、接着剤の木質基材あるいは意匠シートへの塗布は、ロールコーターを使用した。
また、表面状態の評価は、非常に微妙な凹凸はあるもののほぼ鏡面状態に見えるものを○、ほぼ平面であるが若干凹凸が見えるものを△、木目や欠陥の凹凸が表に出てしまっていると感じられるものを×とした。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
上記表2〜表4から、本発明の建築材料のように、接着剤として融点50℃以上の結晶性成分およびTg30℃以上の非結晶性成分の少なくともいずれかを骨格中に有するプレポリマー(A)を含有する反応型ホットメルト接着剤を用いるようにすれば、表面強度に優れたものにできることがよくわかる。また、貼り合わせ時に熱プレスするようにすれば、意匠シートと木質基材とをより確実に接着できることがよくわかる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明にかかる建築材料の製造方法の1つの実施の形態を模式的にあらわす説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 建築材料
2 木質基材
4 反応型ホットメルト接着剤
5 意匠シート(意匠性を付与するシート材料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材表面に接着剤層を介して意匠性を付与するシート材料が貼り合わされている建築材料であって、接着剤層が、融点50℃以上の結晶性成分およびガラス転移点30℃以上の非結晶性成分の少なくともいずれかを骨格中に有するプレポリマー(A)を含有する反応型ホットメルト接着剤によって形成されていることを特徴とする建築材料。
【請求項2】
反応型ホットメルト接着剤が、プレポリマー(A)を40重量%以上含有する請求項1に記載の建築材料。
【請求項3】
プレポリマー(A)が、主鎖が実質的にポリエステル骨格であり、平均数で1を超える水酸基を有する化合物(B)の水酸基部に複数のイソシアネート基を有する化合物(C)を付加したものである請求項1または請求項2に記載の建築材料。
【請求項4】
木質基材の衝撃強度が、20℃60%Rhの環境下で24時間以上放置した木質基材上に、20℃60%Rhの環境下で、デュポン衝撃試験機を用い、重さ500g、撃芯先端径φ6.3mmの重錘を300mmの高さから落下させたときに形成される凹み深さが平均で0.5mm以上である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の建築材料。
【請求項5】
意匠性を付与するシート材料が、1平方メートルあたり50g以下の重量の紙質系材料である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の建築材料。
【請求項6】
木質基材と意匠性を付与するシート材料との間に、融点50℃以上の結晶性成分およびガラス転移点30℃以上の非結晶性成分の少なくともいずれかを骨格中に有するプレポリマー(A)を含有する反応型ホットメルト接着剤を介在させた状態で、木質基材と意匠性を付与するシート材料とを熱プレスする工程を備える請求項1〜請求項5のいずれかに記載の建築材料の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−138461(P2007−138461A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331131(P2005−331131)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【出願人】(305044143)積水フーラー株式会社 (27)
【Fターム(参考)】