説明

建築用シール材及びそれを用いた建築物の防水構造

【課題】建築物の基礎部材の上部と、外壁の下部との間の空間を覆う水切り部材が有する立設片に対して取付けが極めて容易で、室内側への水の進入を防止する建築用シール材及びそれを用いた建築物の防水構造を提供する。
【解決手段】建築物の基礎部材101の上部と、基礎部材101より室外側に突出した位置に設けられる外壁102の下部との間の空間Mを室外側から覆うように配置されるとともに、立設片5cが形成された一端側が、基礎部材101の室外側に対向し、かつ他端側が外壁102の室外側に対向する、底面5aと立設面5bを有する断面略L字状で長尺状の水切り部材5に取付けられる建築用シール材10であって、水切り部材5の立設片5cに取付けられる断面略逆U字状の取付基部11と、取付基部11の室内側に一体成形され、基礎部材101に弾接するシール部12と、取付基部11の上方室外側に向けて傾斜して一体成形される起立部13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用シール材及び及びそれを用いた建築物の防水構造に関する。より詳しくは、建築物の基礎部材上部と外壁下部との間の空間をシールする建築用シール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5に示すように、建築物のコンクリート製の基礎部材101と、その基礎部材101より室外側に突出した位置に設けられる外壁102の下部との間には、空間Mが設けられている。外壁102の室内側で基礎部材101の上部には横柱103が設けられ、その上には縦柱104が設けられている。
そして、その空間Mを室外側から覆うように通常、アルミ製の水切り部材5が設けられている。水切り部材5は、底面5aと縦面5bを有する断面略L字状で、基礎部材101の延びる水平方向(図5の紙面に垂直な方向)に延びている。水切り部材5の一端側には室内側にスポンジSが設けられた立設片5cが形成され、基礎部材101の室外側に対向している。
また、水切り部材5の他端側には室内側に延びる受け片5dが形成され、外壁102の室外側に対向している。
なお、図示は省略したが、水切り部材5の底面5aには複数の穴(パンチング穴)が形成され、底面5a上に沿って流れる水を穴を介して室外に排出している。また、複数の穴は通気性を保つはたらきもしている。
【0003】
そして、水切り部材5を取付けた状態では、立設片5cに設けられたスポンジSが、基礎部材101の室外側上部に弾接するとともに、受け片5dで外壁102の室外側下部を支持している。
【0004】
しかし、スポンジSは水切り部材5の立設片5cに対して両面粘着テープなどによって固定されるため、固定に作業時間を要するとともに、離型紙がゴミとなるという問題がある。また、スポンジSを使用した場合には、雨水をスポンジSが吸収することによってスポンジSにカビや藻などが発生するといった心配もある。さらには、水切り部材5の底面5aに設けられた複数の穴Hから強風時などに雨水が室内側に進入するおそれもある。
【0005】
なお、雨水が室内側に進入することを防止する水返し片や水返し用ヒレ片を設けたシール構造が開示されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−123651号公報(図1)
【特許文献2】特開2007−92414号公報(図5)
【0007】
しかし、特許文献1に記載の発明は、外壁間の空間に設けられ、また特許文献2に記載の発明は、外壁と軒天井材の空間に設けられるものであるので、建築物の基礎部材の上部と、外壁の下部との間の空間に取付けられるものではない。
また、特許文献1,2に記載の水返し片や水返し用ヒレ片は、建築物の基礎部材の上部と、外壁の下部との間の空間を室外側から覆うようにして取付けられる水切り部材の立設片に取付けられるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、建築物の基礎部材の上部と、外壁の下部との間の空間を覆う水切り部材が有する立設片に対して取付けが極めて容易で、室内側への水の進入を防止する建築用シール材及びそれを用いた建築物の防水構造を提供することを目的にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために、請求項1に係る発明の建築用シール材は、建築物の基礎部材(101)の上部と、基礎部材(101)より室外側に突出した位置に設けられる外壁(102)の下部との間の空間(M)を室外側から覆うように配置されるとともに、立設片(5c)が形成された一端側が、前記基礎部材(101)の室外側に対向し、かつ他端側が前記外壁(102)の室外側に対向する、底面(5a)と立設面(5b)を有する断面略L字状で、前記底面(5a)に複数の穴(H)が形成されてなる長尺状の水切り部材(5)に取付けられる建築用シール材(10)であって、
前記水切り部材(5)の立設片(5c)に取付けられる断面略逆U字状で長尺状の取付基部(11)と、
前記取付基部(11)の室内側に一体成形され、前記基礎部材(101)に弾接するシール部(12)と、
前記取付基部(11)に一体成形され、上方に延びる起立部(13)と、を備え、前記起立部(13)は、室外側に向けて傾斜していることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の建築用シール材(10)を用いた建築物の防水構造である。
【0011】
なお、括弧内の記号は、発明を実施するための最良の形態および図面に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明の建築用シール材及びそれを用いた建築物の防水構造によれば、建築用シール材の断面略逆U字状の取付基部が、水切り部材に形成された立設片に取付けられるので、その取付けを極めて容易に行うことができる。
これによれば、特に両面テープなどの固定具を必要とすることがないので、取付作業を短時間で行うことができ、しかも離型紙が発生しないのでゴミとならない。
また、このとき、取付基部に一体成形されたシール部が、基礎部材に弾接するので、従来例で示したようなスポンジでなくても室内外を確実にシールすることができる。
これにより、建築用シール材にはスポンジを使用する必要がないので、長期間の使用により吸水し、カビや藻の発生を防止することができる。
また、水切り部材の底面には複数の穴が形成されているので、通気性に優れる。そして、強風などによって、その形成された穴を介して室外から室内に飛び込んでくる雨水は、建築用シール材の断面略逆U字状の取付基部に一体成形され上方に延びる起立部によって受け止められるとともにはね返されるので、さらに室内側に水が進入することが防止される。
また、起立部を室外側に向けて傾斜させることによって、形成された穴を介して室外から室内に飛び込んでくる雨水を有効にはね返すことができる。
【0013】
以上、本発明の建築用シール材及びそれを用いた建築物の防水構造によれば、既存の水切り部材に対して容易に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る建築用シール材を示す断面図である。
【図2】図1に示す建築用シール材が水切り部材に取付けられた状態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す建築用シール材の使用状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る別の建築用シール材を示す断面図であり、(a)は、水切り部材に取付ける前の状態を示し、(b)は、水切り部材に取付けた後の状態を示す。
【図5】従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態に係る建築用シール材及びそれを用いた建築物の防水構造について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る建築用シール材を示す断面図であり、図2は図1に示す建築用シール材が水切り部材に取付けられた状態を示す斜視図であり、図3は図1に示す建築用シール材の使用状態を示す断面図である。
【0016】
本発明の実施形態に係る建築用シール材は、図3に示すように、建築物の基礎部材101の上部と、基礎部材101より室外側に突出した位置に設けられる外壁102の下部との間の空間Mを、室外側から覆うように配置される水切り部材5に形成された立設片5cに取付けられている。
なお、ここでは、外壁102の室内側で基礎部材101の上部には横柱103が設けられ、その上には縦柱104が設けられている。
【0017】
水切り部材5は、底面5aと立設面5bを有する断面略L字状で、基礎部材101の延びる水平方向(図3の紙面に垂直な方向)に延びる長尺状で、底面5aには複数の穴H(パンチング穴)が形成されている。水切り部材5の底面5aに形成された複数の穴H(パンチング穴)は、底面5a上に沿って流れる水を穴Hを介して室外に排出するとともに、通気性を保つはたらきもしている。
水切り部材5の一端側、すなわち、底面5aの端部には底面5aの延びる方向に直交する立設片5cが形成され、基礎部材101の室外側に対向している。なお、立設片5cの先端には室外側に突出した係止突部5eが形成されている。
また、水切り部材5の他端側には室内側に延びる受け片5dが形成され、外壁102の室外側に対向している。
【0018】
建築用シール材10は、室内外に対して直交する長手方向に延びる長尺状のものであり、取付基部11とシール部12と起立部13を主に備えている。
【0019】
取付基部11は、断面略逆U字状でその開口部に、水切り部材5の立設片5cが挿入されるようにして立設片5に取付けられる。取付基部11の内方で室外側には凹部15が形成され、水切り部材5の係止突部5eに嵌合するようになっている。凹部15は、水切り部材5に建築用シール材10が取付けられたときに、水切り部材5の係止突部5eに嵌合するものであれば、どのような形状でもよいが、ここでは、取付基部11の室外側側壁における開口部側を奥壁側よりも室内側にすることによって奥壁側に凹部15を形成している。なお、取付基部11の室外側側壁の端部には、取付時に水切り部材5の底面5aに弾接するリップ部14が形成されている。
【0020】
シール部12は、断面略舌状であり取付基部11の室内側側壁の上下に2本一体成形されている。シール部12も、長尺状に連続したものであり、水切り部材5に建築用シール材10を取付けたときに、基礎部材101の室外側に弾接して、水が室内に進入しないようにしている。
なお、ここでは、シール部12を上下に2本設けたが、特にその数に限定されるものではなく、1本とすることもできる。また、断面略舌状としたが、中空状のシール部とすることも可能である。
【0021】
起立部13は、取付基部11の室外側側壁と奥壁を連結する部位に一体成形され、上方に、より具体的には室外側に向けて斜め上方に延び、先端部13aは斜め下方に向けて折れ曲がっている。先端部13aは先細になっている。起立部13は、水切り部材5の底面5aに形成された複数の孔Hを介して室外側から室内側に(下から上に)飛込んでくる雨水を防止する水返し効果を発揮するものであり、ここでは、起立部13の高さを、水切り部材5の底面5aから起立部13の付け根部までの高さと略同一にしている。また、起立部13の先端部13aの端部から水切り部材5の立設面5bまでの距離D(ここでは約15mmとした)を、起立部13の頂部から外壁102の下部までの距離Dと同一にして、水返し効果とともに通気性を保持している。
【0022】
なお、材質については特に限定されるものではないが、ここでは、建築用シール材10の取付基部11と起立部13については、硬質ゴム又は硬質樹脂とし、シール部12とリップ部14については、ゴム様弾性体(ゴム又は樹脂)とした。
【0023】
本実施形態に係る建築用シール材10の取付けについては、まず、図2に示すように、水切り部材5に形成された立設片5cに対して、建築用シール材10の取付基部11の開口部を下側にして真っ直に降ろしていく。そして、立設片5cの係止突部5eに、取付基部11に形成した凹部15が嵌合するまで差し込むようにして取付ける。このとき、取付基部11に形成されたリップ部14は、水切り部材5の底面5aに弾接する。
このように、水切り部材5に対する建築用シール材10の取付けは、立設片5cに建築用シール材10の取付基部11を差し込んでいくだけでよいので、両面テープなどの固定具を必要としない。
【0024】
次に、建築用シール材10が取付けられた水切り部材5を、建築物の基礎部材101と外壁102との間の空間Mに対して、斜め下方から上方に室外側から接近させ、図3に示すように、建築用シール材10の取付基部11に一体成形したシール部12を、基礎部材101の室外側上部に弾接させるとともに、水切り部材5の立設面5bに形成した受け片5dを外壁102の下に当接させ、外壁102の室外側下部コーナー部を受けるようにした状態で固定する。外壁102に対する水切り部材5の固定は、図示を省略するが、ねじ止めによって行う。
【0025】
また、図4に示すように、建築用シール材10の取付基部11の内方に複数(ここでは4本)の保持リップ部16を設け、水切り部材5に形成された立設片5cに建築用シール材10が取付けられた後に、保持リップ部16で立設片5cを強固に保持して容易に外れないようにすることもできる。
この場合には、図1及び図2で示したように、建築用シール材10の取付基部11に凹部15を設ける必要はないのに加え、水切り部材5の立設壁5cに係止突部5eを設ける必要もない。
なお、保持リップ部16を、図1及び図2で示した建築用シール材10の取付基部11に併用することも可能である。
【符号の説明】
【0026】
5 水切り部材
5a 底面
5b 縦面
5c 立設片
5d 受け片
5e 係止突部
10 建築用シール材
11 取付基部
12 シール部
13 起立部
15 凹部
16 保持リップ部
101 基礎部材
102 外壁
H 穴
M 空間
S スポンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の基礎部材の上部と、基礎部材より室外側に突出した位置に設けられる外壁の下部との間の空間を室外側から覆うように配置されるとともに、立設片が形成された一端側が、前記基礎部材の室外側に対向し、かつ他端側が前記外壁の室外側に対向する、底面と立設面を有する断面略L字状で、前記底面に複数の穴が形成されてなる長尺状の水切り部材に取付けられる建築用シール材であって、
前記水切り部材の立設片に取付けられる断面略逆U字状で長尺状の取付基部と、
前記取付基部の室内側に一体成形され、前記基礎部材に弾接するシール部と、
前記取付基部に一体成形され、上方に延びる起立部と、を備え、前記起立部は、室外側に向けて傾斜していることを特徴とする建築用シール材。
【請求項2】
前記請求項1に記載の建築用シール材を用いた建築物の防水構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−69092(P2011−69092A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220447(P2009−220447)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】