説明

建築用中空板材とその製造方法

【課題】軽量で吸音性が良好であり、品質が低い木材を有効に活用した建築用中空板材とその製造方法を提供する。
【解決手段】品質が高い木材で作られた薄い表板12と、表板12の裏面に貼り合わされ品質が低い木材で作られ表板12よりも厚い裏板14を備える。裏板14の表板12との接着面には、互いに平行な溝部16が等間隔で設けられている。裏板14は、表板12に接着剤18を介して接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物に使用する建築用中空板材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の床、壁、天井等に使用される板材には、軽量化、断熱性・遮音性を得るために中空構造の板材がある。例えば、特許文献1に開示されている建材ボードは、一対の外側層が設けられ、一対の外側層の間に傾斜繊維コア層が取り付けられている。傾斜繊維コア層は、一対の外側層に直交する板材であり、一側面に等間隔に傾斜キャビティが等間隔に溝状に形成されている。傾斜繊維コア層は帯状にカットされた複数本が互いに平行に、板材の繊維方向が互いに異なるように取り付けられ、傾斜繊維コア層の間は中空部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−513383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記背景技術の場合、構造が複雑で製造工程が多いものである。また、外側層の木材と傾斜繊維コア層の材質を適宜変えることは考えられていなかった。
【0005】
一方、マンション内装材・パネルには、主に合板、MDF、PBなどのボード類が多用されているが、木材チップ不足、品質の低下等の問題を抱えている。そこで、従来利用されていなかった低級材料を有効活用した板材が求められていた。
【0006】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、軽量で吸音性があり、品質が低い木材を有効に活用した建築用中空板材とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、品質が高い木材で作られた薄い表板と、前記表板の裏面に貼り合わされ品質が低い木材で作られ前記表板よりも厚い裏板が設けられ、前記裏板の前記表板との接着面には、互いに平行な溝部が等間隔で設けられている建築用中空板材である。前記裏板は、前記表板に接着剤を介して接着されている。
【0008】
前記建築用中空板材の一対の側縁部は、同形の建築用中空板材が平行に並べられた状態で、隣接する建築用中空板材同士が互いに嵌合可能な形状である。前記溝部は、長手方向に平行に設けられているものである。
【0009】
またこの発明は、品質が高い木材を薄くカットして表板を作り、品質が低い木材を前記表板よりも厚くカットして裏板を作り、前記裏板の一方の面に溝切り加工機で前記裏板の側縁部と平行な溝部を複数本形成し、前記裏板の前記溝部が形成された面に接着剤を塗布し、前記表板の裏面に、前記裏板の前記溝部が形成された面を接着剤により接着する建築用中空板材の製造方法である。
【0010】
前記建築用中空板材は、前記表板と前記裏板が接着された後、一対の側縁部に、同形の建築用中空板材が平行に並べられた状態で、隣接する建築用中空板材同士が互いに嵌合する形状にカットするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の建築用中空板材は、簡単な構造で、軽量で作業性が良好であり、吸音性もあるものである。また、表板に品質が高い木材で薄い板材を使用し、裏板に品質が低い木材を厚くして使用し、外観は良好として強度を維持し、コストを下げることができる。さらに、同形の建築用中空板材が平行に並べられた時に互いに嵌合されるため施工も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態の建築用中空板材の製造方法を示す概略図である。
【図2】この実施形態の建築用中空板材の製造方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の建築用中空板材10は、図1(f)に示すように、表面には、木目がきれいで品質の高い木材で作られた薄い表板12と、表板12の裏面12aに貼り合わされ品質が低い木材で作られ、表板12よりも厚い裏板14が設けられている。裏板14の、表板12と貼り合わされる接着面14aには、裏板14の長手方向に沿う側縁部14bに対して平行な複数本の溝部16が互いに等間隔で設けられている。そして、裏板14は、接着面14aに接着剤18が塗布されて表板12の裏面12aに接着されている。
【0014】
建築用中空板材10の、長手方向に沿う一方の側縁部10aには、側縁部10aに沿って、係合溝部20が設けられている。建築用中空板材10の側縁部10aと反対側の側縁部10bには、側縁部10aの係合溝部20に嵌合される係合凸部22が形成されている。係合溝部20と係合凸部22は、同形の建築用中空板材10が平行に並べられた時に隣接する建築用中空板材10に互いに嵌合される形状である。
【0015】
次に、建築用中空板材10の製造方法について図1に基づいて説明する。先ず外表面に位置する品質が高い木材を薄くカットして図1(a)に示す表板12を作る。一方、品質が低い木材を表板12よりも厚くカットして図1(b)に示す裏板14を作る。裏板14の一方の面である接着面14aに、図2に示す溝切り加工機15により、裏板14の長手方向に沿って側縁部14bと平行な溝部16を複数本形成する(図1(c))。裏板14の接着面14aに、接着剤18を塗布し(図1(d))、表板12の裏面12aに、裏板14の接着面14aを重ねて貼り合わせ、プレスして接着剤18により接着する(図1(e))。そして、表板12と裏板14が接着された後、一方の側縁部14bに係合溝部20を図示しない溝切り加工機で形成する。さらに、反対側の14bに係合凸部22を残すように、周囲を溝切り加工機で削って係合凸部22を形成し、建築用中空板材10の製品が完成する(図1(f))。
【0016】
この実施形態の建築用中空板材10によれば、簡単な構造で中空構造となり、軽量で施工が容易である。中空構造であるため、寸法の安定性が向上し、吸音性も良好である。また、表面板12には品質が高い木材を薄くして使用し、裏面には品質が低い木材を厚く形成して使用し、外観は良好として強度を維持し、コストを下げることができる。また、裏板14は樹種を選ばず、小径木、端材、低質材、又は2m材として使用するためスギの曲がり材等B材、C材を活用することができ、いろいろな材質の木材を活用し、コストを下げることができる。さらに、従来使用されていない未利用材、低級材等を積極的に用いることができ、地域材の活用等林業の活性化が期待される。溝部16を切削する際に派生する鋸屑は素性が明確であり、ウッドプラスチック複合材料等の原料として有効利用することができる。
【0017】
さらに、この建築用中空板材10は、使用される部材等の要求品質に沿った設計が可能であり、マンション内装材等としての寸法安定性、耐久性、断熱性、遮音性、低ホルムアルデヒド性等について性能を持たせることにより、商品設計が容易に可能となり商品の拡大が期待できる。またマンション内装材だけでなく、戸建住宅の内装、ドア、ドア枠材、家具、部材など様々な用途開発が期待できる。そして、これらは商品化の拡大、地域材の活用につながり、木材の消費、地域材の使用量拡大が期待できる。
【0018】
また、同形の建築用中空板材10が平行に並べられた時に係合溝部20と係合凸部22が互いに嵌合されるため、施工が容易である。溝部16は中空部となり、熱媒体や熱交換パイプ等を通して冷暖房パネル等として使用することもできる。さらに、溝部16を通気層として換気や空調に利用することも可能であり、溝部16に断熱材を充填することにより高断熱の板材として用いることもできる。その他、地域産のスギ材等を使用しマンション内装材及び床下地材パネルの開発・商品化が可能であり、地域材を活用し林業と住宅産業の市場活性化を図ることができる。従来のパネルと比較してもより高い品質となり、施工性、経済性等を得ることができる。
【0019】
なお、この発明の建築用中空板材は上記実施の形態に限定されるものではなく、長さや幅、厚み等は自由に変更可能である。溝部の大きさや間隔等も自由に変更可能である。建築用中空板材の製造方法は、上記以外でもよく、係合溝部と係合凸部は、あらかじめ裏板の側縁部に形成されてもよく、また設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0020】
10 建築用中空板材
12 表板
14 裏板
14a 接着面
14b 側縁部
16 溝部
18 接着剤
20 係合溝部
22 係合凸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
品質が高い木材で作られた薄い表板と、前記表板の裏面に貼り合わされ品質が低い木材で作られ前記表板よりも厚い裏板が設けられ、前記裏板の前記表板との接着面には、互いに平行な溝部が等間隔で設けられていることを特徴とする建築用中空板材。
【請求項2】
前記裏板は、前記表板に接着剤を介して接着されている請求項1記載の建築用中空板材。
【請求項3】
前記建築用中空板材の一対の側縁部は、同形の建築用中空板材が平行に並べられた状態で、隣接する建築用中空板材同士が互いに嵌合可能な形状である請求項1記載の建築用中空板材。
【請求項4】
品質が高い木材を薄くカットして表板を作り、品質が低い木材を前記表板よりも厚くカットして裏板を作り、前記裏板の一方の面に溝切り加工機で前記裏板の側縁部と平行な溝部を複数本形成し、前記裏板の前記溝部が形成された面に接着剤を塗布し、前記表板の裏面に、前記裏板の前記溝部が形成された面を接着剤により接着することを特徴とする建築用中空板材の製造方法。
【請求項5】
前記建築用中空板材は、前記表板と前記裏板が接着された後、一対の側縁部に、同形の建築用中空板材が平行に並べられた状態で、隣接する建築用中空板材同士が互いに嵌合する形状にカットする請求項4記載の建築用中空板材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−64001(P2011−64001A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215745(P2009−215745)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(502217355)株式会社元尾商店 (2)
【Fターム(参考)】