説明

建築用係止具

【課題】建築材料同士を建築現場に合わせて、任意の位置で容易に固定することができる建築用係止具を提供する。
【解決手段】一端に鈎状とした係止突起を有し、他端に前記一端を回動自在とする支点を有する引掛け部と、引掛け部の支点が係合され、支点に対して回動するカム状外形部と、カム状外形部より延設された延設部とを有した回動レバー部と、からなる建築用係止具であって、係止突起を第一の部材に係止し、回動レバー部のカム形状部を、係止突起とカム状外形部との間に配置された第二の部材に当接させ、回動レバー部がカム状外形部と第二の部材との当接点を摺動させながら回動し、支点と係止突起との距離が最長となる位置を越えた後、延設部が第一の部材又は第二の部材に当接し、引掛け部の弾性力により、第一の部材と第二の部材とを圧接固定することを特徴とした建築用係止具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用材料同士を任意の位置で固定する際に使用される建築用係止具係止具に関する。
【背景技術】
【0002】
係止具に関しては、従来、様々な形状、構造のものが提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、図4に示すような実用新案公報1記載の「引掛け留め金具」などがある。図4に示す引掛け留め金具部品9は、回動軸を固定して、引掛け留め金具部品9を、支点を中心として回動することで、容器本体に蓋をして、容器本体を密封に保つ構造である。
【0003】
また、建築用材料同士を係止する部材としては、図5の30に示すようなねじで固定する固定具によるものが従来、知られている。この固定具30は固定具本体30aとねじ部30bを備えている。図5では建築材料の棒材32と棒材33を圧接している。固定具本体30aは略コの字形状をしており、係止突起を有した引掛け部(図示せず)と雌ねじ部を備えており、ねじ部30bは雌ネジに螺合する雄ねじ部とつまみ部を備えている。図5では、固定具本体30aのコの字部内に棒材33を収納した状態で、引掛け部の係止突起を棒材32に引掛けられている。つまみを回すことにより、上方よりねじ部30bで棒材33を押さえ、棒材32と棒材33を圧接するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3145385
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実用新案公報1では、図4に示すように、蓋の直径上の外側2ヶ所に引掛け部分を有した引掛け留め金具を装備させて、この引掛け部分に、引掛け留め金具部品の一部を引掛けて、引掛け留め金具部品を回動し引っ張り力を利用して、容器本体に蓋部で蓋をしており、引掛け留め金具部品の回動の支点は、容器本体に固定されている。しかしながら、建築現場で、建築材料同士を固定する場合、それらの固定位置は建築現場において固定作業を行いながら決めていくため、実用新案公報1での引掛け留め金具のように、どちらか一方の固定部材に対して、支点を予め固定、つまり係止具を予め固定しておくことができないのが実状である。そのため、建築材料同士を固定する係止具としては、建築現場に合わして任意の位置で容易に固定できる建築用係止具が必要である。
【0006】
また、上記を鑑みて図5のような係止具が従来、知られているが、図5のようなねじを用いた固定具ではその固定時間が多くかかり、またつまみを手で締めこむ場合は、十分な強度で固定できない可能性や、手を怪我する危険性がある。
【0007】
本発明の解決しようとする課題は、建築材料同士を建築現場の状況に合わせて、任意の位置で容易に強固な固定をすることができる建築用係止具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の建築用係止具は、一端に鈎状とした係止突起を有し、他端に前記一端を回動自在とする支点を有する引掛け部と、前記引掛け部の支点が係合され前記支点に対して回動するカム状外形部と、前記カム状外形部より延設された延設部とを有した回動レバー部と、からなる建築用係止具であって、前記係止突起を第一の部材に係止し、前記回動レバー部の前記カム形状部を、前記係止突起と前記カム状外形部との間に配置された第二の部材に当接させ、前記回動レバー部が前記カム状外形部と前記第二の部材との当接点を摺動させながら回動し、前記支点と前記係止突起との距離が最長となる位置を越えた後、前記延設部が前記第一の部材又は前記第二の部材に当接し、前記引掛け部の弾性力により、前記第一の部材と前記第二の部材とを圧接固定することを特徴とする。
【0009】
このような構成とすることで、建築用係止具の係止突起を第一の部材に係止させて、係止突起と前記カム状外形部との間に第二の部材を配置し、第一の部材と第二の部材の固定位置が決まったら、カム状外形部と第二の部材との当接点を摺動させながら、支点と係止突起との距離が最長となる位置を越えた後、前記延設部が前記第一の部材又は前記第二の部材に当接するまで回動レバー部を回転させることで、引掛け部の弾性力により第一の部材と第二の部材を圧接固定することができるので、第一の部材と第二の部材、つまり、建築材料同士を建築現場の状況に合わせて、任意の位置で容易に強固な固定をすることができる さらに、このような建築用係止具の構成により、第一の部材と第二の部材には建築用係止具を固定するための特別な形状の部位を必要としないため、より建築現場の状況に合わして任意の位置で容易に、建築用部材同士を固定することができる。
【0010】
ここでいう第一の部材、第二の部材としては、一方は柱や天井材(特に野縁など)、また他方はスプリンクラー設備、照明設備、空調設備や給排水管設備などが挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、建築材料同士を建築現場に合わして、任意の位置で容易に固定することができる建築用係止具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態である係止具を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態である係止具に、第一の部材と第二の部材が固定された状態を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態である係止具により第一の部材と第二の部材が配置された状態を示す斜視図
【図4】従来の係止具により固定された状態を示す正面図である。
【図5】従来の係止具により固定された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明に係る係止具の一例を示す斜視図である。
【0014】
図1に示すようにレバー式の係止具1は、回動する支点である回動軸1cを中心に互いに回動可能に取り付けられた回動レバー部1aと、引掛け部1bとを有している。回動レバー部1aは一枚の金属板からなり、断面略コ字形状になっており。、延設部12とカム状外形部11とからなっている。回動レバー部1aは回動軸1cに沿った視線において細長い略直角三角形状をしており、直角頂点部近傍に回動軸1c、鋭角頂点部には力点部1g、鈍角頂点部には円弧形をしている円弧形状部1kを備えている。この円弧形状部1kの一端から直角頂点部までは直線部1eにて繋がっている。また円弧形状部1kの他端には、前述の直線部1eと平行に直線部1mが滑らかに繋がっている。この回動軸1cと円弧形状部1kと直線部1eと直線部1mにより、回動レバー部1aのカム状外形部11が構成されており、このカム状外形部11から力点部1gに延設された箇所が延設部12を構成している。
【0015】
引掛け部1bは、折り曲げられた棒材からなり、回動軸1c一方の側から下側に延びる第一の側部1iと回動軸1cの他方の側から下側に延びる第二の側部1jと第一の側部の端部と第二の側部の端部とをほぼ横方向に連結する係止突起であるループ部1fとを有しており、回動軸1cに沿った視線において略鈎状をしている。このため係止具1は、回動レバー部1a、第一の側部1i、第二の側部1jおよびループ部1fによって囲まれる開口1nを備えている。
【0016】
つぎに図2及び図3を用いて本発明の係止具1の使用例について説明する。図2aは係止具1を用いて建築用部材である、野縁2(第一の部材)と角バー3(第二の部材)を固定した状態の斜視図であり、図2bはその状態での断面図、図3は係止具1がまだ開放状態であり野縁2と角バー3を固定する位置を仮決めした状態の斜視図である。
【0017】
図3において、野縁2は断面コ字形状をした金属製の部材であり、底面部2aとその両端部から立ち上げられる2つの側面部2b、側面部2bの上端部に上面部2cと、上面部2cの内側端部に折り返し部2dと、が設けられている。この野縁2の底面には天井板4が下方からねじ止めされている(図示せず)。角バー3は、野縁2に固定される部材であり、この角バー3には、天井裏に設置したい様々なものを予め固定しておくことが可能である。例えばスプリンクラーなどがあるが、その部分についての説明は省略する。以下係止具1により野縁2と角バー3とを固定する手順に沿って説明する。
【0018】
まず、係止具1の係止突起であるループ部1fを野縁2の上面部2cの下面に引っ掛ける。次に係止具1の空間1nに角バー3を挿入し、固定したい位置で上面部2cの上面に置く。このとき、係止具1の回転レバー部1aは角バー3に接触していない。この状態が図3である。
そして回転レバー部1aを回動軸1cを軸として、P視で時計回り方向に回動させる。この回動に伴い、回転レバー部1aのカム状外形部11を構成する円弧形状部1kが角バー3に接近し、当接する。
当接後、更に回動させると、回転レバー部1aと角バー3との当接点が摺動し、さらに移動していく。この際、回転レバー部1aの当接点は円弧形状部1k上を直線部1eから遠ざかる方向に移動する。そして、支点である回転軸1cと係止突起であるループ部1fとの距離が最長となる位置を越えた後、回動レバー部1aの延設部12を構成する力点部1gが角バー3に当接することによりこの回転は止まる。この状態が図2a、bである。
【0019】
次にこの回動に伴う、野縁2と角バー3への圧接力について説明する。回動前は前述のように回転レバー部1aは角バー3に当接しておらず、圧接力は作用しない。回動に伴い、円弧形状部1kが角バー3に当接した時点で圧接力が発生しする。これは引掛け部1bの弾性力によるものである。また回動角が大きくなるに従い圧接力も大きくなっていくが、これは回転レバー部1aの形状、特にカム状外形部11の形状に起因する。
【0020】
円弧形状部1kの円弧上の各点と回動軸1cとの距離は同一ではなく、角バー3との当接点が最初の位置から回動するに伴い、途中までは距離が長くなっていく。そして当接点が円弧形状部1k上の回動軸1cとの距離が最長の点を過ぎると、その後は小さくなっていく。力点部1gが角バー3と当接するのは、上記最長の点を過ぎた後である。
この距離の変化に伴い、係止具1の第一の側面1iと第二の側面1jが変形する。距離の変化が大きくなるにつれて、この変形が大きくなる。
【0021】
この変形により形状を復元しようとする弾性力が発生する。この弾性力の方向は、ループ部1fと回動軸1cとを結ぶ直線(以下弾性力線と記述)方向になるため、前述の圧接力になるのである。
【0022】
図2bにおいて、回動レバー部1aと角バー3との当接点は円弧形状1kと力点部1gの2点である。この状態において野縁2を下方からループ部1fで、上方から角バー3を前記当接点2点により接しており、引っ掛け部1bの弾性力により野縁2と角バー3とを圧接している。またそれと同時に回転レバー部1aには、引掛け部1bの弾性力により回動軸1cとループ部1fとを結ぶ直線方向の力がかかっているが、それに垂直な方向の力はほとんどかかっていない。この理由は、回転レバー部1aを回動させる際に、回転レバー部1aと角バー3の当接点が摺動することに起因する。
【0023】
前述のように回動レバー部1aの回動に伴い、弾性力線方向に力が発生するが、仮に当接点の摺動が無ければ、角バー3当接面の法線3aと弾性力線の方向がずれていくことになる。これにより法線3aに対して垂直方向の力が発生し、摺動していくという関係になる。この摺動により、前記直線と垂直方向の力が弱くなるのである。
【0024】
このように図3に示したような係止具1を開放した状態から図2に示したような係止具1を閉止した状態へはレバー部1aを回動させることにより脚部1dが角バー3上で摺動し、最長部を乗り越えることにより容易に遷移させることができる。
【0025】
また、図2に示すような係止具1の閉止状態においては、係止具1の力点部1gが角バー3に接することによりレバー部1aは突起1dの支点1cからの最長部を若干越えた位置で止まることにより、レバー部1aが過剰な回動をしてしまうことによる固定力の低下を防止でき、最適な固定力を発揮させることができ、かつ、野縁2と角バー3を引き離す方向に外力がかかった場合もレバー部1aは係止具1の開放方向に回転してしまうことがないため信頼性の高い固定力を発揮することができる。
【0026】
また、以上の構成において、円弧形状部材1kと回動軸1cとの距離および引掛け部1bの弾性を適宜調整することにより固定力の調整が可能になり、回動軸1cから力点1gまでの寸法を調整することにより係止具1を開放した状態から閉止した状態へ遷移させるための操作力を調整することができる。したがって、被固定対象の形状・使用目的に応じた係止具を用意することにより簡易で確実な固定力を発揮できる係止具1が提供可能である。
【0027】
なお、本実施の形態では、係止具1の材質として、金属を用いているが、それに限定されるものではなく、樹脂材料などを使用しても問題はない。
【0028】
また本実施の形態では、回動レバー部1aの力点部1gが角バー3に当接するが、当接するものが角バー3という第二の部材に限定されるものではなく、第一の部材に当接するように構成しても良い。例えば本実施の形態のうち、第二の部材が角バー30ではなく薄い板形状で長さが短い場合、円弧形状部1kとの当接点近傍までで、力点部1g付近まで到達しないことが考えられるが、そのときは力点部1gは第一の部材である野縁2に当接する。このときも第一の部材と第二の部材を圧接することができ、特許請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の建築用係止具は、建築用材料同士を固定する際に使用される建築用係止具などにおいて広く利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 建築用係止具
1a 回動レバー部
1b 引掛け部
1c 回動軸
1e 直線部
1f ループ部(係止突起)
1g 力点部
1i 第一の側面部
1j 第二の側面部
1k 円弧形状部
1m 直線部
1n 開口部
2 野縁(第一の部材)
3 角バー(第二の部材)
4 天井板
11 カム状外形部
12 延設部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に鈎状とした係止突起を有し、他端に前記一端を回動自在とする支点を有する引掛け部と、
前記引掛け部の支点が係合され、前記支点に対して回動するカム状外形部と、前記カム状外形部より延設された延設部とを有した回動レバー部と、からなる建築用係止具であって、
前記係止突起を第一の部材に係止し、前記回動レバー部の前記カム形状部を、前記係止突起と前記カム状外形部との間に配置された第二の部材に当接させ、前記回動レバー部が前記カム状外形部と前記第二の部材との当接点を摺動させながら回動し、前記支点と前記係止突起との距離が最長となる位置を越えた後、前記延設部が前記第一の部材又は前記第二の部材に当接し、前記引掛け部の弾性力により、前記第一の部材と前記第二の部材とを圧接固定することを特徴とした建築用係止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−168763(P2010−168763A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10576(P2009−10576)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】